説明

無線通信装置、無線通信システムおよび無線通信方法

【課題】送信アンテナ数を4本以上とした場合でも、伝送効率の低下を抑制し高いダイバーシチ効果が得られる無線通信装置を得ること。
【解決手段】リモート局1−1〜1−mを備え、リモート局1−1〜1−mは、送信アンテナ16−1,16−2と、1つのリモート局が備える2本の送信アンテナでアンテナペアを構成し、アンテナペアごとに同一の送信データを入力とし、アンテナペアを構成する送信アンテナ16−1,16−2で送信する2つのSTBC符号化送信データをSTBC処理により生成するSTBC処理部12と、STBC符号化送信データに対して、1つのアンテナペアを構成する送信アンテナ間では同一の値となりアンテナペアごとに異なる値となる周波数オフセットを付加する周波数オフセット付加部13と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置、無線通信システムおよび無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に無線通信を用いた移動通信においては、多重波伝搬により受信レベルが変動するフェージングが発生し、伝送品質が大きく劣化する。受信レベルの変動による伝送品質の劣化を軽減する技術としてダイバーシチ技術が知られている。
【0003】
ダイバーシチ技術の例として、受信側の演算量を増大させない送信ダイバーシチ方式が、下記特許文献1に開示されている。下記特許文献1の送信ダイバーシチ方式では、m(mは2以上の整数)本の送信アンテナにそれぞれ対応したm個の周波数オフセット付与手段を備え、m個の周波数オフセット付与手段が、生成した送信信号に対してそれぞれの送信アンテナに対応した周波数オフセットを付与する。このとき、付与する全ての周波数オフセット同士の差が所定の規則を満たすように付与することにより、受信側では周波数オフセット差に応じた周期の受信信号レベルの変動(うなり)が発生するが、下記特許文献1では、インタリーブと誤り訂正とを組み合わせることにより、高いダイバーシチ効果を得ている。
【0004】
送信ダイバーシチ方式の別の例として、非特許文献1に記載の方式がある。非特許文献1では、送信アンテナ0、1から時刻tにs0、s1をそれぞれ送信し、時刻t+T(Tはシンボル時間)に−s1*、s0*(*は複素共役を表す)を送信し、受信側では、時刻t、t+Tの受信信号をr0、r1として次式により送信信号s0,s1の推定値S0,S1を求める。これにより、最大比合成と同じダイバーシチ利得が得られる方式を提案している。なお、h0、h1は、送信アンテナ0、1と受信アンテナの間のチャネル推定値である。
0=h0*0+h11*
1=h1*0+h01*
【0005】
また、非特許文献1では2アンテナ送信であるのに対して、3アンテナ以上の送信に拡張した技術が、例えば非特許文献2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−325079号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】S.M.Alamouti,“A Simple Transmit Diversity Technique for Wireless Communications,”IEEE JOURNAL ON SELECT AREAS IN COMMUNICATIONS VOL.16,NO.8,pp.1451−1458,October 1998.
【非特許文献2】V.Tarokh,H.Jafarkhani,and R.A.Calderbank,“Space−time block codes from orthogonal designs,”IEEE Trans.Inform.Theory,vol.45,pp.1456−1467,July 1999.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の送信ダイバーシチ方式では、受信側において周波数オフセット差に応じた周期のうなりを強制的に発生させることにより、定常的な落ち込みを回避し、誤り訂正と組み合わせてダイバーシチ効果を得ている。このため、基本的にレベル変動自体が特性の劣化要因となりえるという問題がある。また、付加する周波数オフセットの組み合わせにより、受信信号のレベル変動の周期や変動の大きさが変化し、受信特性に差異が生じるが、付加する周波数オフセットの種類(数)には制限がある。このため、送信アンテナ数を増やすと、特性が良好でない周波数オフセットの組み合わせを使用する必要が生じてしまうという問題がある。
【0009】
また、非特許文献1に記載の方式は、2アンテナでの送信を意図したものであり、3アンテナ以上には適用できない。非特許文献1に記載の方式を3アンテナ以上に拡張したものとして非特許文献2がある。しかし、非特許文献2の方式では、伝送効率が低下するという欠点があり、また、符号化シンボルにマルチレベル特性を持たせる必要があるため、送信信号のピーク対平均電力比に対する要求が増大し、送信アンプに対する要求条件が厳しくなるという問題がある。
【0010】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、送信アンテナ数を4本以上とした場合でも、伝送効率の低下を抑制し高いダイバーシチ効果が得られる無線通信装置、無線通信システムおよび無線通信方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、2N(Nは2以上の整数)本の送信アンテナと、前記2N本の送信アンテナのうちの2本ずつでN組のアンテナペアを構成し、アンテナペアごとに同一の送信データを入力とし、アンテナペアごとに前記送信データに基づいてアンテナペアを構成する2本の前記送信アンテナで送信する2つのSTBC符号化送信データをSTBC処理により生成するSTBC処理部と、前記STBC符号化送信データに対して、1つのアンテナペアを構成する送信アンテナ間では同一の値となりアンテナペアごとに異なる値となる周波数オフセットを付加する周波数オフセット付加部と、を備え、周波数オフセット後の前記STBC符号化送信データを対応する前記送信アンテナから送信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、送信アンテナ数を4本以上とした場合でも、伝送効率の低下を抑制し高いダイバーシチ効果が得られるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、実施の形態1の無線通信システムの構成例を示す図である。
【図2】図2は、実施の形態1の集約局およびリモート局の構成例を示す図である。
【図3】図3は、実施の形態1の端末の構成例を示す図である。
【図4】図4は、実施の形態2の集約局およびリモート局の構成例を示す図である。
【図5】図5は、実施の形態2の端末の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明にかかる無線通信装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0015】
実施の形態1.
図1は、本発明にかかる無線通信システムの実施の形態1の構成例を示す図である。図1に示すように、本実施の形態の無線通信システムは、リモート局1−1〜1−3と、集約局2と、端末3と、を備える。セル4は、リモート局1−1〜1−3が形成するセル(無線通信圏)を示す。図1では、端末3がセル4内に存在する例を示しているが、セル内の端末数は1台に限定されない。集約局2は、光回線等の有線回線5−1〜5−3によりリモート局1−1〜1−3と接続されている。なお、図1では、リモート局を3局としているが、リモート局の数は3局に限定されない。
【0016】
図2は、集約局2およびリモート局1−1の構成例を示す図である。図2では、送信処理に関する構成要素を示しており、集約局2およびリモート局1−1は図2に示した以外の構成要素を備えていてもよい。集約局2は、リモート局1−1〜1−m(mは1以上の整数)と有線回線5−1〜5−mによりそれぞれ接続されている。図2では、リモート局1−1の構成を示しているが、リモート局1−2〜1−mの構成もリモート局1−1の構成と同様である。
【0017】
図2に示すように、集約局2は、図示せぬ上位層からの送信データに対して符号化処理を行う符号化部21と、符号化処理後の送信データに対してインタリーブ処理を行うインタリーバ22と、を備える。
【0018】
リモート局1−1は、集約局2から受信したインタリーブ処理後の送信シンボル列に対してIQ平面上へのマッピングを行う変調マッピング部11と、変調マッピング後のデータに対してSTBC処理(時空間ブロック符号化処理)を行うSTBC処理部12と、STBC処理後のデータに対して周波数オフセットを付加する周波数オフセット付加部13と、を備える。また、リモート局1−1は、周波数オフセット後のデータに対して、フィルタ処理を行うデジタルフィルタ14−1,14−2と、デジタルフィルタ14−1,14−2からの出力に対してDA(Digital−Analog)変換、周波数変換、アナログフィルタ処理等を行うRF部15−1,15−2と、RF部15−1,15−2からの出力を空中へと放射する送信アンテナ16−1,16−2と、を備える。
【0019】
図3は、端末3の受信部の構成例を示す図である。図3に示すように、端末3は、受信アンテナ31と、受信アンテナ31で受信した受信信号に対してアナログフィルタ処理、周波数変換、AD(Analog−Digital)変換処理等を行うRF部32と、AD変換されたサンプルデータに対してフィルタ処理を行うデジタルフィルタ33と、を備える。また、端末3は、フィルタ処理後のデータに対して時間及び周波数同期処理を行う同期部34と、同期処理後のデータに基づいて送受信局間のチャネル特性を推定するチャネル推定部35と、チャネル推定結果に基づいて同期検波を行う同期検波部36と、同期検波後のデータに対してデインタリーブ処理を行うデインタリーバ37と、デインタリーブ処理後のデータに対して符号化方式に基づいて復号処理を行う復号化部38と、を備える。なお、同期検波部36では、STBC処理も併せて行う。
【0020】
次に本実施の形態の動作について説明する。集約局2では、符号化部21が送信データを符号化して、インタリーバ22が符号化後の送信データをインタリーブする。集約局2は、インタリーム後のデータを、有線回線5−1〜5−mを介してリモート局1−1,1−2,…,1−mに送信する。リモート局1−1〜1−mには、同じデータが送信される。
【0021】
リモート局1−1〜1−mでは、変調マッピング部11が、集約局2から受信したデータを変調マッピングし、STBC処理部12が、変調マッピング後のシンボルデータに対して、STBC処理を実施する。
【0022】
STBC処理部12では、入力シンボル列s={s0,s1,s2,…,si,si+1,…}に基づいて、2本の送信アンテナ16−1,16−2にそれぞれ対応する2つのシンボル列s1,s2を以下の式(1)に従って生成し、周波数オフセット付加部13へ出力する。
s1={s0,−s1*,s2,−s3*…,si,−si+1*,…}
s2={s1,s0*,s3,s2*…,si+1,si *,…} …(1)
【0023】
周波数オフセット付加部13は、STBC処理部12から入力される2つのシンボル列に対して、リモート局1−1〜1−m間でそれぞれ異なり、かつ自局の2つの入力シンボル列に対しては同じ値となる周波数オフセットを付加する。付加する周波数オフセットは、例えば、所定の周波数Δfの整数倍となるように定める。なお、Δfはシンボル周波数fsに対して十分小さい値とする。
【0024】
STBC処理後の2つのシンボル列をs1n、s2n(nはシンボル番号)とすると、周波数オフセット付加後のシンボル列so1n、so2n、は、例えば、以下の式(2)で表される。
【0025】
【数1】

【0026】
ここで、pはリモート局1−1〜1−m毎に異なる値とする。例えば、リモート局1−1,1−2,1−3,…においてそれぞれp=0,1,2,…とする。以下、リモート局1−1〜1−mにおいて、同一のリモート局が備える2つの送信アンテナをアンテナペアと呼ぶこととする。リモート局1−1の送信アンテナ16−1,16−2が1つのアンテナペアを構成し、m台のリモート局1−1〜1−mを備える場合には、m組のアンテナペアが存在することになる。
【0027】
周波数オフセット付加部13は、周波数オフセット付加後の2つのシンボル列so1n,so2nをそれぞれデジタルフィルタ14−1,14−2へ出力する。デジタルフィルタ14−j(j=1,2)は、入力されたシンボル列に対してオーバサンプル処理及び帯域制限処理などのフィルタリング処理を実施し、RF部15−jへ出力する。RF部15−jは、入力されたデータに対してDA変換、周波数変換、各周波数帯におけるフィルタリング処理、送信アンプによる増幅処理等を実施した後、送信アンテナ16−jを介して空中へ放射する。
【0028】
端末3では、受信アンテナ31が、リモート局1−1〜1−mの送信アンテナ16−1,16−2から送信された信号の合成波を受信する。RF部32は、受信した合成波に対して周波数変換、アナログフィルタリング処理、AD変換処理等を実施して、デジタルフィルタ33へ出力する。デジタルフィルタ33は、AD変換後のサンプルデータに対してデジタルフィルタ処理を行い、同期部34が、デジタルフィルタ処理後のデータに対して時間及び周波数同期処理を行う。そして、チャネル推定部35は、同期処理後のフレーム中のパイロットシンボル等を用いて各送信アンテナと受信アンテナ間の伝搬路特性に対応したチャネル推定を行う。
【0029】
同期検波部36は、同期処理後のシンボル列をrsk(kはシンボル番号)、受信アンテナ31とSTBCを構成するアンテナペア(2送信アンテナ)との間のチャネル推定値をそれぞれh0,h1とすると、同期検波後のシンボル列sekを以下の式(3)により算出する。
【0030】
【数2】

【0031】
同期検波部36は、同期検波後のシンボル列sekをデインタリーバ37へ出力する。そして、シンボル列sekに対してデインタリーバ37によるデインタリーブ処理、復号化部38による復号処理が実施される。このようにして、端末3は送信データを得る。
【0032】
以上のように、本実施の形態では、1つのリモート局(リモート局1−1〜1−mのいずれか1つ)内の2つの送信アンテナからなるアンテナペアでSTBCを構成し、各アンテナペア同士、すなわち、各リモート局1−1〜1−m間では異なる周波数オフセットを付加して周波数オフセット送信ダイバーシチを構成するようした。これにより、例えば1つのリモート局の信号が支配的になるような位置に存在する端末においては、周波数オフセット送信ダイバーシチのレベル変動による受信特性の劣化は抑制され、高いダイバーシチ効果を得ることが可能となる。
【0033】
また、セル4内の端末の分布を考えた場合に、概して各リモート局1−1〜1−mからの信号が同等なレベルで受信される端末は少なく、特定のリモート局からの信号が支配的となる端末が多く存在する。このため、本実施の形態の動作を適用すると、周波数オフセット送信ダイバーシチだけで構成する場合に比べて、受信特性が良好となる端末が多くなる。また、アンテナペア間ではSTBCを構成するため、周波数オフセット送信ダイバーシチだけで構成する場合に比べて付加する周波数オフセットの種類を半分にすることができ、より受信特性が良好となる周波数オフセット量を選択することが可能となる。
【0034】
なお、本実施の形態では、各リモート局1−1〜1−mの送信アンテナは2本としたが、アンテナ本数はこれに限らず2N(N≧2)本で構成することができる。2N本の送信アンテナを備える場合には、各リモート局1−1〜1−mでは、送信アンテナをN組のアンテナペアに分類し、アンテナペアを構成する2つの送信アンテナでSTBCを構成し、各アンテナペア間ではそれぞれ異なる周波数オフセットを付加する。これにより、上述した例と同様に送信ダイバーシチを構成することができる。この場合、2アンテナの場合に比べ、周波数オフセット送信ダイバーシチによるダイバーシチ効果が増すことになる。
【0035】
また、本実施の形態では、リモート局1−1〜1−mと集約局2を備え、リモート局間が互いに遠隔に設置される分散基地局の例を示した。すなわち、集約局2およびリモート局1−1〜1−mが、全体で、STBCおよび周波数オフセット送信ダイバーシチを実現する基地局(無線通信装置)を構成していると考えることができる。この場合、各リモート局のSTBC処理部12が局内STBC処理部となり、m個のリモート局の局内STBC処理部が広義のSTBC処理部を構成する。同様に、各リモート局の周波数オフセット付加部13が局内周波数オフセット付加部となり、m個の局内周波数オフセット付加部が広義の周波数オフセット付加部を構成していると考えることができる。
【0036】
なお、本実施の形態は、このような構成に限らず、例えば、単一の基地局(無線通信装置)でセルをカバーする場合に、基地局が2N本のアンテナ(N≧2)を備えて、アンテナペアを構成する2つの送信アンテナでSTBCを構成し、各アンテナペア間ではそれぞれ異なる周波数オフセットを付加するようにしてもよい。その場合も、周波数オフセット送信ダイバーシチだけで構成する場合に比べてダイバーシチ効果は高くなる。
【0037】
実施の形態2.
図4は、本発明にかかるリモート局1a−1〜1a−mの実施の形態2の構成例を示す図である。図5は、本実施の形態の端末3aの構成例を示す図である。本実施の形態の無線通信システムの構成は、リモート局1−1〜1−m,端末3の代わりにリモート局1a−1〜1a−m,端末3aを備える以外は、実施の形態1と同様である。集約局2の構成は実施の形態1と同様である。実施の形態1と同様の機能を有する構成要素は、実施の形態1と同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0038】
本実施の形態では、リモート局1a−1〜1a−mにおいて差動符号化を行い、端末3aで遅延検波により検波を行う例を説明する。
【0039】
図4に示すように、リモート局1a−1は、実施の形態1のリモート局1−1の変調マッピング部11およびSTBC処理部12の代わりに差動符号化STBC処理部17を備える。また、図5に示すように、端末3aは、実施の形態1の端末3のチャネル推定部35および同期検波部36の代わりに遅延検波部39を備える。遅延検波部39は、STBCに関するデコード処理も実施する。
【0040】
次に本実施の形態の動作について説明する。リモート局1a−1〜1a−mが、集約部2からインタリーブ後の送信データを受信するまでの処理は実施の形態1と同様である。
リモート局1a−1〜1a−mでは、差動符号化STBC処理部17が、送信データに対してシンボルデータへのマッピングを行う。そして、差動符号化STBC処理部17は、マッピング後のシンボルデータ系列を{a0,a1,a2,a3,…}とし、送信アンテナ16−1に対応したSTBC処理後の送信シンボル列を{x0,−x1*,x2,−x3*,…}とし、送信アンテナ16−2に対応したSTBC処理後の送信シンボル列を{x1,x0*,x3,x2*,…}とするとき、以下の式(4)に従って漸化的に送信シンボル列を算出する。
【0041】
【数3】

【0042】
ただし、|a2i2+|a2i+12=1とする。また、|x02+|x12=1とする。ここで、a2i、a2i+1について解くと、以下の式(5)のようになる。
【0043】
【数4】

【0044】
各送信アンテナ16−1,16−2に対応したSTBC処理後の送信シンボル列に対して、実施の形態1と同様に周波数オフセット付加以降の処理を実施する。
【0045】
端末3aでは、実施の形態1と同様に同期処理まで行った後、遅延検波部39が、STBCを加味した遅延検波を行う。STBCを構成するアンテナペアの各々と受信アンテナ31間のチャネルをh0,h1、受信シンボル列をrkとすると、以下の式(6)のように表すことができる。
【0046】
【数5】

【0047】
従って、以下の式(7)によりシンボルデータ系列akを推定することができる。なお、|h02+|h12は定数であり、位相変調された信号をデマッピングするにあたり算出する必要のないものである。
【0048】
【数6】

【0049】
そして、遅延検波部39は、シンボルデータ系列から送信データへのデマッピングを行った後、実施の形態1と同様にデインタリーブ以降の処理を行う。
【0050】
なお、本実施の形態では、リモート局1a−1〜1a−mと集約局2を備え、リモート局間が互いに遠隔に設置される分散基地局の例を示したが、実施の形態1で述べたように、これに限らず、例えば、単一の基地局(無線通信装置)でセルをカバーする場合に基地局が2N本のアンテナ(N≧2)を備えて、アンテナペアを構成する2つの送信アンテナでSTBCを構成し、各アンテナペア間ではそれぞれ異なる周波数オフセットを付加するようにしてもよい。
【0051】
以上のように、本実施の形態では、リモート局1a−1〜1a−mにおいて差動符号化STBC処理を行って送信データを送信し、端末3aはSTBCを加味した遅延検波を行うようにした。このため、実施の形態1と同様の効果が得られるとともに、チャネル推定が不要となるため、端末3aの受信回路が簡単となり、端末3aを安価に実現することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上のように、本発明にかかる無線通信装置、無線通信システムおよび無線通信方法は、移動体通信に有用であり、特に、送信ダイバーシチを行う無線通信装置に適している。
【符号の説明】
【0053】
1−1〜1−m,1a−1〜1a−m リモート局
2 集約局
3,3a 端末
4 セル
5−1〜5−m 有線回線
11 変調マッピング部
12 STBC処理部
13 周波数オフセット付加部
14−1,14−2,33 デジタルフィルタ
15−1,15−2,32 RF部
16−1,16−2 送信アンテナ
17 差動符号化STBC処理部
21 符号化部
22 インタリーバ
31 受信アンテナ
34 同期部
35 チャネル推定部
36 同期検波部
37 デインタリーバ
38 復号化部
39 遅延検波部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2N(Nは2以上の整数)本の送信アンテナと、
前記2N本の送信アンテナのうちの2本ずつでN組のアンテナペアを構成し、アンテナペアごとに同一の送信データを入力とし、アンテナペアごとに前記送信データに基づいてアンテナペアを構成する2本の前記送信アンテナで送信する2つのSTBC符号化送信データをSTBC処理により生成するSTBC処理部と、
前記STBC符号化送信データに対して、1つのアンテナペアを構成する送信アンテナ間では同一の値となりアンテナペアごとに異なる値となる周波数オフセットを付加する周波数オフセット付加部と、
を備え、
周波数オフセット後の前記STBC符号化送信データを対応する前記送信アンテナから送信することを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
前記無線通信装置は、2以上のリモート局と、前記送信データを前記リモート局へそれぞれ送信する集約局と、を備え、
前記リモート局は、
2M(Mは1以上の整数)本の前記送信アンテナと、
前記2M本の送信アンテナのうちの2本ずつでM組のアンテナペアを構成し、アンテナペアごとに、アンテナペアを構成する2本の前記送信アンテナで送信する2つの送信データをSTBC処理により生成する局内STBC処理部と、
前記STBCが生成した前記送信データに対して、1つのアンテナペアを構成する送信アンテナ間では同一の値となりアンテナペアごとに異なる値となる周波数オフセットを付加する局内周波数オフセット付加部と、
を備え、
前記2以上のリモート局の前記局内STBC処理部により前記STBC処理部を構成し、前記2以上のリモート局の前記局内周波数オフセット付加部により前記周波数オフセット付加部を構成する、ことを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記STBC処理を、前記送信データをシンボルにマッピングしたマッピングデータと前シンボルの各送信アンテナのSTBC符号化送信データとに基づいて次シンボルの各送信アンテナのSTBC符号化送信データを漸化的に算出する差動符号化STBC処理とする、ことを特徴とする請求項1または2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
請求項1、2または3に記載の無線通信装置と、
前記無線通信装置から送信された信号を受信し、前記信号に対してSTBC処理を実施して前記無線通信装置から送信された送信データを求める端末と、
を備えることを特徴とする無線通信システム。
【請求項5】
2N(Nは2以上の整数)本の送信アンテナを備える無線通信システムにおける無線通信方法であって、
前記2N本の送信アンテナのうちの2本ずつでN組のアンテナペアを構成し、アンテナペア間で同一となる送信データに基づいて、アンテナペアごとにアンテナペアを構成する2本の前記送信アンテナで送信する2つのSTBC符号化送信データをSTBC処理により生成するSTBC処理ステップと、
前記STBC符号化送信データに対して、1つのアンテナペアを構成する送信アンテナ間では同一の値となりアンテナペアごとに異なる値となる周波数オフセットを付加する周波数オフセット付加ステップと、
周波数オフセット後の前記STBC符号化送信データを対応する前記送信アンテナから送信する送信ステップと、
を含むことを特徴とする無線通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−102348(P2013−102348A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244713(P2011−244713)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】