説明

無線通信装置、無線通信方法、プログラム、および無線通信システム

【課題】無線通信装置、無線通信方法、プログラム、および無線通信システムを提供すること。
【解決手段】複数の無線通信装置を含む無線通信システムであって、前記複数の無線通信装置の各々に、特定の情報を含み、他の無線通信装置を届け先とするデータを生成するデータ生成部と、前記データ生成部により生成されたデータを、前記届け先に応じた無線通信装置へ無線でユニキャストする送信部と、他の無線通信装置を届け先として無線で送信されたデータを受信する受信部と、前記受信部により受信されたデータに前記特定の情報が含まれる場合、前記受信部により受信されたデータを、前記送信部に、前記届け先に応じた無線通信装置へユニキャストさせ、かつ、周囲の無線通信装置へブロードキャストさせる送信制御部とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置、無線通信方法、プログラム、および無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複数の無線通信装置が自律分散的に動作し、通信エリアを容易に拡大することが可能な無線マルチホップネットワークが注目されている。かかる無線マルチホップネットワークにおいては、送信元装置および受信先装置間の通信経路がルーティングプロトコルにより決定され、決定された通信経路に沿って送信元装置からデータが送信される。
【0003】
また、無線マルチホップネットワークを利用して様々なサービスやアプリケーションを提供する場合、フロー制御やQos(Quality Of Service)制御などの技術を導入する必要性が生じる。かかるフロー制御やQos制御を実現するために、例えば、ある無線通信装置のグループに対してフロー制御やQos制御に関する情報を含むメッセージがマルチキャストされる。なお、メッセージのブロードキャストについては、例えば特許文献1に記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−281030号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、ある無線通信装置と他の無線通信装置の通信経路の周辺に位置する無線通信装置に対してメッセージをマルチキャストするためには、上記周辺に位置する無線通信装置をグルーピングする必要があった。しかし、無線マルチホップネットワークにおいては、新たな無線通信装置の出現、消滅などが頻繁に繰り返され、ネットワークポロジーの変化が大きい。このため、無線通信装置をグルーピングするためには上記状況を想定した複雑な処理が必要であり、上記通信経路の周辺に位置する無線通信装置に対してメッセージをマルチキャストすることもグルーピング処理が追随できず困難であった。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、通信経路の周囲に位置する無線通信装置に対してグルーピングを行なうことなくデータを送信することが可能な、新規かつ改良された無線通信装置、無線通信方法、プログラム、および無線通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、データを無線で送信する送信部と、他の無線通信装置を届け先として無線でユニキャストされたデータを受信する受信部と、前記受信部により受信されたデータを、前記送信部に、前記届け先に応じた無線通信装置へユニキャストさせ、かつ、周囲の無線通信装置へブロードキャストさせる送信制御部と、を備える無線通信装置が提供される。
【0008】
かかる構成においては、他の無線通信装置を届け先とするデータの通信経路上に位置する無線通信装置が、該データを中継すると共に、該データを周囲の無線通信装置へブロードキャストする。したがって、当該無線通信装置によれば、他の無線通信装置を届け先とするデータの通信経路の周囲に位置する無線通信装置に対して該データを送信することが可能となる。
【0009】
前記送信制御部は、前記受信部により受信されたデータに特定の情報が含まれていない場合には前記送信部にブロードキャストをさせず、前記特定の情報が含まれている場合には前記送信部にブロードキャストをさせてもよい。かかる構成においては、通信経路の周囲に位置する無線通信装置に常にデータが送信されるわけでなく、データに特定の情報が含まれている場合に通信経路の周囲に位置する無線通信装置にデータを送信する。したがって、データごとに、必要に応じて通信経路の周囲に位置する無線通信装置へデータを送信するか否かを異ならせることが可能である。
【0010】
前記受信部により受信されたデータには該データを識別する第1の識別情報、および前記第1の識別情報と異なる第2の識別情報が記載されており、前記送信部によりユニキャストされるデータには前記第1の識別情報が記載され、ブロードキャストされるデータには前記第2の識別情報が記載されてもよい。かかる構成においては、ブロードキャストされたデータを受信した無線通信装置が、第2の識別情報に基づき、該データが受信済みのデータであるか否かを判断することができる。
【0011】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、他の無線通信装置を届け先として無線でユニキャストされたデータを受信するステップと、前記受信部により受信されたデータを、前記届け先に応じた無線通信装置へユニキャストするステップと、前記受信部により受信されたデータを、周囲の無線通信装置へブロードキャストするステップと、を含む無線通信方法が提供される。
【0012】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、データを無線で送信する送信部、および他の無線通信装置を届け先として無線でユニキャストされたデータを受信する受信部を備える無線通信装置に設けられるコンピュータを、前記受信部により受信されたデータを、前記送信部に、前記届け先に応じた無線通信装置へユニキャストさせ、かつ、周囲の無線通信装置へブロードキャストさせる送信制御部として機能させるためのプログラムが提供される。
【0013】
かかるプログラムは、例えばCPU、ROMまたはRAMなどを含むコンピュータのハードウェア資源に、上記のような送信制御部の機能を実行させることができる。すなわち、当該プログラムを用いるコンピュータを、上述の送信制御部として機能させることが可能である。
【0014】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、特定の情報を含み、他の無線通信装置を届け先とするデータを生成するデータ生成部と、前記データ生成部により生成されたデータを、前記届け先に応じた無線通信装置へ無線でユニキャストする送信部とを備える無線通信装置が提供される。ここで、前記特定の情報は、前記送信部から送信されたデータを受信して中継する無線通信装置に対し、該データの周囲の無線通信装置へのブロードキャストを指示する情報である。
【0015】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、複数の無線通信装置を含む無線通信システムであって、前記複数の無線通信装置の各々は、特定の情報を含み、他の無線通信装置を届け先とするデータを生成するデータ生成部と、前記データ生成部により生成されたデータを、前記届け先に応じた無線通信装置へ無線でユニキャストする送信部と、他の無線通信装置を届け先として無線で送信されたデータを受信する受信部と、前記受信部により受信されたデータに前記特定の情報が含まれる場合、前記受信部により受信されたデータを、前記送信部に、前記届け先に応じた無線通信装置へユニキャストさせ、かつ、周囲の無線通信装置へブロードキャストさせる送信制御部と、を備える無線通信システムが提供される。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように本発明にかかる無線通信装置、無線通信方法、プログラム、および無線通信システムによれば、通信経路の周囲に位置する無線通信装置に対してグルーピングを行なうことなくデータを送信することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0018】
また、以下に示す項目順序に従って当該「発明を実施するための最良の形態」を説明する。
〔1〕本実施形態にかかる通信システムの概要
〔2〕無線通信装置の構成
〔3〕本実施形態にかかる通信システムの動作
〔4〕各無線通信装置の動作
〔5〕まとめ
【0019】
〔1〕本実施形態にかかる通信システムの概要
まず、図1および図2を参照し、本実施形態にかかる通信システム1について概略的に説明する。
【0020】
図1は、本実施形態にかかる通信システム1の構成を示した説明図である。図1に示したように、当該通信システム1は、複数の無線通信装置20A〜20Hを含む。なお、本明細書においては、各無線通信装置を区別するために、無線通信装置20A〜20Hのように符号の後に大文字のアルファベットを付しているが、各無線通信装置を特に区別する必要が無い場合、単に無線通信装置20と総称する。
【0021】
無線通信装置20は、特定の無線通信装置へデータを送信するユニキャストや、フラッディング通信を行うことができる。ここで、フラッディング通信は、例えば経路情報を含むデータを受信した各無線通信装置20が、該データをブロードキャストすることにより、該データを次々に中継伝播させる通信である。このようにデータがある無線通信装置20により中継されることは、ホップと表現される場合もある。
【0022】
具体的には、無線通信装置20は、図2に示すように、ルーティングプロトコルに従い、他の無線通信装置を経由して特定の無線通信装置と通信を行うことができる。
【0023】
図2は、通信システム1における通信例を示した説明図である。図2に示したように、無線通信装置20Aが無線通信装置20Dを届け先とするデータを送信すると、ルーティングプロトコルに従い、該データは無線通信装置20Bを経由して無線通信装置20Dに到達する。なお、本実施形態においては、プロアクティブ型、リアクティブ型、およびハイブリッド型など、任意のルーティングプロトコルを使用することができる。
【0024】
また、図1および図2においては無線通信装置20を丸印で簡略化して示しているが、無線通信装置20は、PC(Personal Computer)、家庭用映像処理装置(DVDレコーダ、ビデオデッキなど)、携帯電話、PHS(Personal Handyphone System)、携帯用音楽再生装置、携帯用映像処理装置、PDA(Personal Digital Assistants)、家庭用ゲーム機器、携帯用ゲーム機器、家電機器などの任意の情報処理装置であってもよい。
【0025】
また、無線通信装置20は、バックボーンネットワークと接続されていてもよい。バックボーンネットワークは、バックボーンネットワークに接続されている装置から送信されるデータの伝送路であって、該伝送路は有線であっても無線であってもよい。例えば、バックボーンネットワークは、インターネット、電話回線網、衛星通信網などの公衆回線網や、Ethernet(登録商標)、IEEE(Institute of Electrical and Electronic Engineers)802.11a、b、g、nを含む各種のLAN(Local Area Network)、IEEE802.16に企画されるWiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)などを含む各種のWAN(Wide Area Network)、IP−VPN(Internt Protocol−Virtual Private Network)などの専用回線網を含んでもよい。
【0026】
さらに、無線通信装置20は、不特定の無線通信装置に対してデータを送信するブロードキャストをすることもできる。かかるブロードキャストは、無線通信装置20が周囲の無線通信装置と例えばフロー制御、Qos制御、および帯域予約制御などに関する情報を共有する場合に利用されえる。
【0027】
特に、上記のようなフロー制御やQos制御などに関する情報は、ある通信路の周囲に位置する無線通信装置により共有されることが望まれる。例えば図2に示した例では、無線通信装置20Aから無線通信装置20Dへ至る通信経路の周囲に位置する無線通信装置20C、20Eおよび20F(点線内の無線通信装置)にも上記情報を含むデータを到達させることが有効な場合がある。
【0028】
無線通信装置20Aが無線通信装置20C、20Eおよび20Fにもデータを送信する方法としては、無線通信装置20C、20Eおよび20Fをグループ化(グルーピング)し、該グループに対してデータをマルチキャストする方法があげられる。しかし、無線マルチホップネットワークにおいては、新たな無線通信装置の出現、消滅などが頻繁に繰り返され、ネットワークポロジーの変化が大きい。このため、無線通信装置をグルーピングするためには上記状況を想定した複雑な処理が必要であり、上記通信経路の周辺に位置する無線通信装置に対してメッセージをマルチキャストすることもグルーピング処理が追随できず困難であった。
【0029】
そこで、上記のような事情を一着眼点にして本実施形態にかかる無線通信装置20を創作するに至った。本実施形態にかかる無線通信装置20によれば、通信経路の周囲に位置する無線通信装置に対してグルーピングを行なうことなくデータを送信することができる。以下、このような無線通信装置20の構成について詳細に説明する。
【0030】
〔2〕無線通信装置の構成
図3は、本実施形態にかかる無線通信装置20のハードウェア構成を示した説明図である。図3に示したように、無線通信装置20は、CPU(Central Processing Unit)201と、ROM(Read Only Memory)202と、RAM(Random Access Memory)203と、ホストバス204と、ブリッジ205と、外部バス206と、インタフェース207と、入力装置208と、出力装置210と、ストレージ装置(HDD)211と、ドライブ212と、通信装置215とを備える。
【0031】
CPU201は、演算処理装置および制御装置として機能し、各種プログラムに従って無線通信装置20内の動作全般を制御する。また、CPU201は、マイクロプロセッサであってもよい。ROM202は、CPU201が使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶する。RAM203は、CPU201の実行において使用するプログラムや、その実行において適宜変化するパラメータ等を一次記憶する。これらはCPUバスなどから構成されるホストバス204により相互に接続されている。
【0032】
ホストバス204は、ブリッジ205を介して、PCI(Peripheral Component Interconnect/Interface)バスなどの外部バス206に接続されている。なお、必ずしもホストバス204、ブリッジ205および外部バス206を分離構成する必要はなく、一のバスにこれらの機能を実装してもよい。
【0033】
入力装置208は、例えば、マウス、キーボード、タッチパネル、ボタン、マイク、スイッチおよびレバーなどユーザが情報を入力するための入力手段と、ユーザによる入力に基づいて入力信号を生成し、CPU201に出力する入力制御回路などから構成されている。無線通信装置20のユーザは、該入力装置208を操作することにより、無線通信装置20に対して各種のデータを入力したり処理動作を指示したりすることができる。
【0034】
出力装置210は、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ装置、液晶ディスプレイ(LCD)装置、OLED(Organic Light Emitting Display)装置およびランプなどの表示装置と、スピーカおよびヘッドホンなどの音声出力装置で構成される。出力装置210は、例えば、再生されたコンテンツを出力する。具体的には、表示装置は再生された映像データ等の各種情報をテキストまたはイメージで表示する。一方、音声出力装置は、再生された音声データ等を音声に変換して出力する。
【0035】
ストレージ装置211は、本実施形態にかかる無線通信装置20の記憶部の一例として構成されたデータ格納用の装置である。ストレージ装置211は、記憶媒体、記憶媒体にデータを記録する記録装置、記憶媒体からデータを読み出す読出し装置および記憶媒体に記録されたデータを削除する削除装置などを含んでもよい。ストレージ装置211は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)で構成される。このストレージ装置211は、ハードディスクを駆動し、CPU201が実行するプログラムや各種データを格納する。また、このストレージ装置211には、後述の経路テーブル、シーケンス番号などが記録される。
【0036】
ドライブ212は、記憶媒体用リーダライタであり、無線通信装置20に内蔵、あるいは外付けされる。ドライブ212は、装着されている磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、または半導体メモリ等のリムーバブル記憶媒体24に記録されている情報を読み出して、RAM203に出力する。
【0037】
通信装置215は、例えば、他の無線通信装置20と通信するための通信デバイス等で構成された通信インタフェースである。また、通信装置215は、無線LAN(Local Area Network)対応通信装置であっても、ワイヤレスUSB対応通信装置であっても、有線による通信を行うワイヤー通信装置であってもよい。この通信装置215は、他の無線通信装置20との間で各種データを送受信する。
【0038】
以上、図3を参照して本実施形態にかかる無線通信装置20のハードウェア構成について説明した。続いて、図4を参照し、本実施形態にかかる無線通信装置20の機能を説明する。
【0039】
図4は、本実施形態にかかる無線通信装置20の構成を示した機能ブロック図である。図4に示したように、当該無線通信装置20は、通信部216と、経路テーブル作成部220と、データ生成部228と、アドレス抽出部232と、受信制御部236と、送信制御部240と、を備える。
【0040】
通信部216は、他の無線通信装置20Bなどとのインターフェースであって、他の無線通信装置20Bなどとの間で各種情報を送受信する送信部、および受信部としての機能を有する。例えば、通信部216は、他の無線通信装置20Bから送信された高周波の無線信号をベースバンド信号にダウンコンバージョンし、ベースバンド信号をビット列に変換する。また、通信部216は、データ生成部228により生成された各種データを無線でユニキャスト、あるいはブロードキャストする。
【0041】
なお、通信部216は、IEEE802.11a、b、gなどに規定される無線通信機能を有してもよいし、IEEE802.11nに規定されるMIMO(Multiple Input Multiple Output)通信機能を有してもよい。さらに、通信部216は、IEEE802.16に企画されるWiMAXに対応する通信機能を有してもよい。
【0042】
経路テーブル作成部220は、任意のルーティングプロトコルに従って他の無線通信装置20Bなどへの通信経路を決定し、決定した通信経路を経路テーブルとして記憶部224に記録する。経路テーブルにおいては、例えば、届け先となる無線通信装置20と、次ホップ装置と、届け先となる無線通信装置20へ至るまでのホップ数などが対応付けられていてもよい。
【0043】
記憶部224は、経路テーブル作成部220により作成された経路テーブルや、受信制御部236により取得されたシーケンス番号などが記録される記憶媒体である。このような記憶部224は、例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read−Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)などの不揮発性メモリや、ハードディスクおよび円盤型磁性体ディスクなどの磁気ディスクや、CD−R(Compact Disc Recordable)/RW(ReWritable)、DVD−R(Digital Versatile Disc Recordable)/RW/+R/+RW/RAM(Ramdom Access Memory)およびBD(Blu−Ray Disc(登録商標))―R/BD−REなどの光ディスクや、MO(Magneto Optical)ディスクなどの記憶媒体であってもよい。
【0044】
データ生成部228は、記憶部224に記録されている経路テーブルに基づき、特定の無線通信装置20へ送信するデータを生成する。かかるデータ生成部228により生成されるデータのフォーマット例を図5に示す。
【0045】
図5は、送信データのフォーマット例を示した説明図である。図5の中段に示したように、送信データは、ヘッダ40とペイロード50を含む。ヘッダ40には、図5の上段に示したように、従来から宛先アドレス72、送信元アドレス74、およびシーケンス番号76が含まれていた。
【0046】
ここで、宛先アドレス72には、ユニキャストの場合、最終的に到達することが期待される届け先となる無線通信装置20のアドレスが記載され、フラッディング通信の場合、ブロードキャストアドレスが記載される。送信元アドレス74には、当該メッセージの送信元である自装置のアドレスが記載される。シーケンス番号76には、当該メッセージを識別する例えば通し番号などの識別情報が記載される。なお、図5において次ホップ装置のアドレスの記載を省略している。
【0047】
一方図5の下段に示したように、本実施形態においては、ヘッダ40には宛先アドレス42、送信元アドレス44、およびシーケンス番号46に加え、同報通信フラグ48、および同報通信用シーケンス番号49が記載される。
【0048】
同報通信フラグ48には、該送信データを中継する無線通信装置、および該送信データの届け先の無線通信装置に対し、該送信データをブロードキャストすることを指示するための情報である。例えば、同報通信フラグ48がONである場合、該送信データを中継する無線通信装置は該送信データをユニキャストし、かつブロードキャストする。さらに、該送信データの届け先の無線通信装置も該送信データをブロードキャストする。
【0049】
同報通信用シーケンス番号49は、ONである同報通信フラグ48に基づいて該送信データを中継する無線通信装置がブロードキャスト用のデータを生成する際に、シーケンス番号46に記載される番号である。すなわち、送信データを中継する無線通信装置は、同報通信用シーケンス番号49に記載されているシーケンス番号をシーケンス番号46に記載してブロードキャスト用のデータを生成する。
【0050】
また、ペイロード50には、音楽、講演およびラジオ番組などの音楽データや、映画、テレビジョン番組、ビデオプログラム、写真、文書、絵画および図表などの映像データや、ゲームおよびソフトフェアなどの任意のデータが含まれる。
【0051】
ここで、図4を参照して無線通信装置20の構成の説明に戻ると、アドレス抽出部232は、通信部216により受信されたデータの宛先アドレスを抽出する。
【0052】
受信制御部236は、無線通信装置20へ到達したデータを受信するか否かを制御する。例えば、受信制御部236は、無線通信装置20へ到達したデータのうちヘッダ部分をまず受信し、ヘッダ部分の内容に応じてペイロードを受信するか否かを制御する。受信制御部236は、ヘッダ部分に含まれるシーケンス番号として、既に受信済みのデータのシーケンス番号が記載されていた場合にはペイロードを受信しなくてもよい。なお、受信済みのデータのシーケンス番号は記憶部224に受信制御部236により記録されていてもよい。
【0053】
送信制御部240は、通信部216により受信されたデータの同報通信フラグがONされているか否かに応じて、該データの送信制御を行なう。具体的には、送信制御部240は、同報通信フラグがOFFである場合、経路テーブルに基づいて該データの宛先に対応する無線通信装置に該データをユニキャストする。さらに、送信制御部240は、同報通信フラグがONである場合、上記ユニキャストに加え、ブロードキャスト用のデータをデータ生成部228に生成させ、ブロードキャスト用のデータをブロードキャストする。
【0054】
その際、データ生成部228は、通信部216により受信されたデータに含まれる同報通信用シーケンス番号をシーケンス番号として記載してブロードキャスト用のデータを生成する。
【0055】
〔3〕本実施形態にかかる通信システムの動作
以上、本実施形態にかかる無線通信装置20の構成について説明した。続いて、図6〜図10を参照して無線通信装置20を含む通信システム1の動作を説明する。
【0056】
図6〜図10は、通信システム1の動作の流れを示した説明図である。まず、図6に示したように、同報通信フラグがONであるデータを無線通信装置20Dを宛先として無線通信装置20Aがユニキャストした場合を考える。なお、図6〜図10においては、ユニキャストによる通信を二重の矢印で、ブロードキャストによる通信を一本の矢印で示している。
【0057】
続いて無線通信装置20Aは、図7に示したように、ユニキャストしたデータと実質的に同一であるデータをブロードキャストする。無線通信装置20Aからブロードキャストされたデータは、無線通信装置20Bおよび無線通信装置20Cに到達する。なお、データの送信元装置である無線通信装置20Aは、ユニキャストしたデータと実質的に同一であるデータのブロードキャストを行なわなくてもよい。
【0058】
その後、無線通信装置20Aから無線通信装置20Dを宛先とするデータを受信した無線通信装置20Bは、図8に示したように、無線通信装置20Dへ当該データをユニキャストする。
【0059】
さらに、無線通信装置20Bは、図9に示したように無線通信装置20Aから受信したデータの同報通信フラグがONであるため、当該データと実質的に同一であるデータをブロードキャストする。その際、データのシーケンス番号には、無線通信装置20Aから受信したデータの同報通信用シーケンス番号として記載されていたシーケンス番号が記載される。無線通信装置20Bからブロードキャストされたデータは、無線通信装置20A、無線通信装置20D、無線通信装置20E、および無線通信装置20Fに到達する。
【0060】
続いて、無線通信装置20Bから自装置を宛先とするデータを受信した無線通信装置20Dは、宛先が自装置であるため、当該データの中継処理は行わない。一方、無線通信装置20Dは、無線通信装置20Bから受信したデータの同報通信フラグがONであるため、図10に示したように、当該データと実質的に同一であるデータをブロードキャストする。無線通信装置20Dからブロードキャストされたデータは、無線通信装置20Bおよび無線通信装置20Cに到達する。なお、データの宛先である無線通信装置20Dは、必ずしもデータのブロードキャストを行なわなくてもよい。この場合、無線通信装置20Dは、無線通信装置20Bから受信したデータの同報通信フラグを確認しなくてもよい。
【0061】
このように、本実施形態によれば、無線通信装置20Aから無線通信装置20Dへの通信経路の周囲に位置する無線通信装置20C、無線通信装置20E、および無線通信装置20Fに対してもデータを送信することが可能である。
【0062】
〔4〕各無線通信装置の動作
次に、図11および図12を参照し、本実施形態にかかる無線通信装置20において実行される送信処理および受信処理の流れを説明する。
【0063】
図11は、データの送信元装置となる無線通信装置20において実行される処理の流れを示したフローチャートである。図11に示したように、無線通信装置20は、まず、宛先アドレスがブロードキャストアドレスである場合には(S304)、データの宛先アドレスにブロードキャストアドレスを記載してブロードキャスト用のデータを生成する(S308)。なお、ブロードキャストアドレスは既定の数値であってもよく、各無線通信装置20は、データの宛先アドレスとしてブロードキャストアドレスを示す既定の数値が記載されている場合、当該データの受信処理を行う。
【0064】
一方、無線通信装置20は、宛先アドレスがブロードキャストアドレスで無い場合、経路テーブルに宛先アドレスが存在するか否かを判断する(S312)。そして、無線通信装置20は、経路テーブルに宛先アドレスが存在する場合、該宛先アドレスを含むユニキャスト用のデータを生成する(S316)。その際、無線通信装置20は、当該データが通信経路の周囲の無線通信装置を対象に含む同報通信である場合(S320)、同報通信フラグをONにする(S324)。
【0065】
さらに、無線通信装置20は、同報通信用シーケンス番号を記載する(S328)。そして、無線通信装置20は、S320において同報通信でないと判断された場合、S308の後、またはS328の処理の後、生成されたデータを送信する(S332)。なお、無線通信装置20は、同報通信フラグがONであるデータをユニキャストする場合、さらに該データをブロードキャストしてもよい。
【0066】
図12は、データの受信先装置となる無線通信装置20において実行される処理の流れを示したフローチャートである。図12に示したように、無線通信装置20は、まず、周囲から送信されたデータの宛先アドレスがブロードキャストアドレスであるか否かを判断する(S404)。そして、無線通信装置20は、宛先アドレスがブロードキャストアドレスであった場合、該データの受信および転送処理を行う(S408)。
【0067】
一方、宛先アドレスがブロードキャストアドレスでなく、かつ、自装置のアドレスであった場合、無線通信装置20は当該データの受信処理を行う(S416)。一方、無線通信装置20は、宛先アドレスが自装置のアドレスでなく、かつ、経路テーブルに宛先アドレスが存在する場合(S420)、該データの転送(中継)処理を行う(S424)。
【0068】
続いて、無線通信装置20は、受信したデータの同報通信フラグがONであった場合、同報通信としてブロードキャスト用のデータを生成し(S432)、受信したデータに記載されている同報通信用シーケンス番号をシーケンス番号として該データに記載し(S436)、該データを送信する(S440)。
【0069】
〔5〕まとめ
以上説明したように、本実施形態によれば、他の無線通信装置を届け先とするデータの通信経路上に位置する無線通信装置20が、該データを中継すると共に、該データを周囲の無線通信装置へブロードキャストする。したがって、当該無線通信装置20によれば、他の無線通信装置を届け先とするデータの通信経路の周囲に位置する無線通信装置に対して該データを送信することが可能となる。その結果、例えば無線マルチホップネットワークにおけるフロー制御やQos制御などを容易に実現することができる。また、本実施形態は、無線通信装置20間でのシグナリングが不要であり、かつ、ルーティングプロトコルに依存しない手法であるため、比較的容易に無線マルチホップネットワークに適用することが可能である。
【0070】
なお、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0071】
例えば、本明細書の無線通信装置20の処理における各ステップは、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はない。例えば、無線通信装置20の処理における各ステップは、並列的あるいは個別に実行される処理(例えば、並列処理あるいはオブジェクトによる処理)を含んでもよい。
【0072】
また、無線通信装置20に内蔵されるCPU201、ROM202およびRAM203などのハードウェアを、上述した無線通信装置20の各構成と同等の機能を発揮させるためのコンピュータプログラムも作成可能である。また、該コンピュータプログラムを記憶させた記憶媒体も提供される。また、図4の機能ブロック図で示したそれぞれの機能ブロックをハードウェアで構成することで、一連の処理をハードウェアで実現することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本実施形態にかかる通信システムの構成を示した説明図である。
【図2】通信システムにおける通信例を示した説明図である。
【図3】本実施形態にかかる無線通信装置のハードウェア構成を示した説明図である
【図4】本実施形態にかかる無線通信装置の構成を示した機能ブロック図である。
【図5】送信データのフォーマット例を示した説明図である。
【図6】通信システムの動作の流れを示した説明図である。
【図7】通信システムの動作の流れを示した説明図である。
【図8】通信システムの動作の流れを示した説明図である。
【図9】通信システムの動作の流れを示した説明図である。
【図10】通信システムの動作の流れを示した説明図である。
【図11】データの送信元装置となる無線通信装置において実行される処理の流れを示したフローチャートである。
【図12】データの受信先装置となる無線通信装置において実行される処理の流れを示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0074】
1 通信システム
20 無線通信装置
216 通信部
228 データ生成部
240 送信制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データを無線で送信する送信部と;
他の無線通信装置を届け先として無線でユニキャストされたデータを受信する受信部と;
前記受信部により受信されたデータを、前記送信部に、前記届け先に応じた無線通信装置へユニキャストさせ、かつ、周囲の無線通信装置へブロードキャストさせる送信制御部と;
を備えることを特徴とする、無線通信装置。
【請求項2】
前記送信制御部は、前記受信部により受信されたデータに特定の情報が含まれていない場合には前記送信部にブロードキャストをさせず、前記特定の情報が含まれている場合には前記送信部にブロードキャストをさせることを特徴とする、請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記受信部により受信されたデータには該データを識別する第1の識別情報、および前記第1の識別情報と異なる第2の識別情報が記載されており、
前記送信部によりユニキャストされるデータには前記第1の識別情報が記載され、ブロードキャストされるデータには前記第2の識別情報が記載されることを特徴とする、請求項2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
他の無線通信装置を届け先として無線でユニキャストされたデータを受信するステップと;
前記受信部により受信されたデータを、前記届け先に応じた無線通信装置へユニキャストするステップと;
前記受信部により受信されたデータを、周囲の無線通信装置へブロードキャストするステップと;
を含むことを特徴とする、無線通信方法。
【請求項5】
データを無線で送信する送信部、および他の無線通信装置を届け先として無線でユニキャストされたデータを受信する受信部を備える無線通信装置に設けられるコンピュータを、
前記受信部により受信されたデータを、前記送信部に、前記届け先に応じた無線通信装置へユニキャストさせ、かつ、周囲の無線通信装置へブロードキャストさせる送信制御部として機能させるための、プログラム。
【請求項6】
特定の情報を含み、他の無線通信装置を届け先とするデータを生成するデータ生成部と;
前記データ生成部により生成されたデータを、前記届け先に応じた無線通信装置へ無線でユニキャストする送信部と;
を備え、
前記特定の情報は、前記送信部から送信されたデータを受信して中継する無線通信装置に対し、該データの周囲の無線通信装置へのブロードキャストを指示する情報であることを特徴とする、無線通信装置。
【請求項7】
複数の無線通信装置を含む無線通信システムであって:
前記複数の無線通信装置の各々は、
特定の情報を含み、他の無線通信装置を届け先とするデータを生成するデータ生成部と;
前記データ生成部により生成されたデータを、前記届け先に応じた無線通信装置へ無線でユニキャストする送信部と;
他の無線通信装置を届け先として無線で送信されたデータを受信する受信部と;
前記受信部により受信されたデータに前記特定の情報が含まれる場合、前記受信部により受信されたデータを、前記送信部に、前記届け先に応じた無線通信装置へユニキャストさせ、かつ、周囲の無線通信装置へブロードキャストさせる送信制御部と;
を備えることを特徴とする、無線通信システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−188646(P2009−188646A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−25454(P2008−25454)
【出願日】平成20年2月5日(2008.2.5)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】