説明

無線通信装置、無線通信方法および無線通信システム

【課題】 無線通信における受信の待機に要する電力を低減する。
【解決手段】 本発明の無線通信装置、無線通信方法、および無線通信システムでは、外部からの電波で駆動し、外部からの電波を受けて起動すると、起動した記録を履歴情報として記憶する回路から履歴情報を読み出すことで、読み出された履歴情報に応じた無線通信を行うことができ、待機電力を低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信技術に関し、特に無線通信装置の受信待機に要する電力の低減に関する。
【背景技術】
【0002】
基地局と、無線通信装置とを有する無線通信システムとして、アクティブタグシステムがある。アクティブタグシステムは、無線通信装置であるアクティブタグと基地局の間で無線通信をするシステムであり、アクティブタグ側に電源があり、通信距離は一般的に数十メートルである。アクティブタグシステムでは、一般に、混信を防ぐために基地局毎に異なる搬送波周波数が用いられる。搬送波周波数はチャネルと呼ばれる。車両に搭載する無線通信装置において、運用される複数のチャネルの数に応じた受信手段を無線通信装置に備えるとコスト高になることを解決する、所定の検出時間毎に受信するチャネルを切替えて受信を待機する無線通信装置が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−307506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両に搭載される無線通信装置の場合には、一般に車両から電力の供給を得ることができるので、受信の待機に要する電力の消費は問題にならない。しかしながら、人が携帯するアクティブタグのように、電池などの限られた容量の電源になる無線通信装置の場合などには、受信の待機に要する電力の消費が問題となる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の無線通信装置は、外部からの電波で駆動し、外部からの電波を受けて起動すると、起動した記録を履歴情報として記憶する第1回路と、電源と、前記電源の電力で駆動し、前記履歴情報を読み出す第2回路とを備える。
【0006】
本発明の無線通信方法は、複数の搬送波周波数の候補の内の一の搬送波周波数で電波を送出して無線通信する基地局との無線通信方法であって、メモリを有し、候補の内のいずれの搬送波周波数の電波でも駆動する回路が起動した際に、起動した記録を履歴情報としてメモリに記憶する工程と、メモリを参照して、回路が起動した記録が有る場合には、基地局を探索する工程と、を有する。
【0007】
本発明の無線通信システムは、複数の搬送波周波数の候補の内の一の搬送波周波数の電波を送出して無線通信する基地局と、メモリを有し、候補の内のいずれの搬送波周波数の電波でも駆動し、基地局からの電波を受けて起動すると、起動した記録を履歴情報としてメモリに記憶する第1回路、およびメモリを参照して、起動した記録が有る場合には、基地局を探索する第2回路を有する無線通信装置と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、電池などの電源の電力に拠ることなく記録される履歴情報を利用するので、待機電力を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の無線通信システムの構成例を示す図である。
【図2】本発明の無線通信装置の構成例を示す図である。
【図3】本発明の無線通信装置における第1回路の構成例を示す図である。
【図4】本発明の無線通信装置における第1回路の動作の例を示す図である
【図5】本発明の無線通信装置の構成例を示す図である。
【図6】本発明の無線通信装置において、チャネルサーチの優先度を決定する手順の例を示す図である。
【図7】本発明の無線通信装置の例におけるメモリに記憶された通信履歴の一例を示す図である。
【図8】本発明の無線通信装置の構成例を示す図である。
【図9】入退室管理への適用例を示す図である。
【図10】測位システムへの適用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【実施例1】
【0011】
図1に本発明の実施の形態の例として、無線通信システムであるアクティブタグシステム100を示す。アクティブタグシステム100では、複数の基地局101、102があり、基地局101、102は電波を送出して無線通信装置103や無線通信装置104と無線通信する。図1に示した例では、無線通信装置103が、基地局101から送出される電波に乗せて送信されるデータ105を受信する。また、他の無線通信装置104は、基地局102から送出される電波に乗せて送信されるデータ106を受信する。
【0012】
ここで、基地局101と基地局102とが互いに近接して設置されている場合、無線通信装置103は、基地局101の送信するデータ105に加えて、基地局102から送出される電波を妨害波107として受信することになる。したがって、無線通信装置103が、妨害波107の影響によって、データ105を正しく受信出来ない可能性がある。
【0013】
そこで、本実施例では、基地局101と基地局102のそれぞれが送出する電波の搬送波周波数(以降、チャネルという)には、それぞれ異なるチャネルを使用することで、受信誤りを防ぐ。すなわち、チャネルの候補は複数用意して、各基地局は複数のチャネルの候補の内のそれぞれ一のチャネルを使用する。本実施例では、950MHz帯の内から各チャネルの周波数帯域を選ぶ。
【0014】
したがって、無線通信装置103は、複数あるチャネル(例えば6チャネル)の中から、基地局101が送信するチャネルを探索(以降、チャネルサーチという)し、チャネルを選択することで、データ105を受信する。例えば、無線通信装置103は、無線通信装置103の受信回路を起動して、受信するチャネルを設定する。そして、無線通信装置103は、受信するチャネルを順次切替えて、基地局101の送信するデータ105を探索する。例えば、チャネル1乃至6の全部で6チャンネルある場合には、無線通信装置103は、チャネル1、チャネル2、チャネル3、チャネル4、チャネル5、チャネル6の順にスキャンしてチャネルサーチする。
【0015】
図2に、無線通信装置103の例として無線通信装置200を示した。図2に示すように、無線通信装置200は、外部からの電波で電力を生成して駆動する第1回路201と、電源202と、電源202で駆動し、第1回路201と通信する第2回路203とを有する。
【0016】
第1回路は、基地局101に使用されるチャネルの候補のいずれの周波数帯域でも、電力を生成して駆動する。すなわち、第1回路は、基地局101に使用されるチャネルの候補のいずれのチャネルでも駆動する。また、第1回路201にはメモリが備えられている。電源202には、例えば電池やキャパシタを用いることができる。本実施例では、電源202に電池を用いる。図2では、筐体内に第1回路201、電源202および第2回路203が含まれる例を示したが、実施例4にて後述するように、電源202および第2回路203は筐体の中に設けられ、第1回路201は該筐体に取り付けられているICカードなどの媒体に設けられていても良い。
【0017】
第1回路201の回路構成を、図3に示す。図3に示すように、第1回路201は、受信信号を整流する整流回路301と、整流回路301の出力の電力値を検出する電力検出回路302と、第1回路の起動の履歴情報などを記憶するメモリ303と、各回路に動作を命令する論理回路304と、後述するパッシブリーダライタ回路204からの信号を復調する復調回路305と、復調したデータに応じて論理回路304で生成された信号を送信する送信回路306と、アンテナ307とを備える。アンテナ307は例えばダイポールアンテナであり、本実施例の基地局が送出する950MHz帯の電波を受け、また、950MHz帯の電波を送出することができる。メモリ303には、例えばフラッシュメモリや相変化メモリなどの不揮発性メモリを用いる。
【0018】
第2回路203は、第1回路201と無線通信するパッシブリーダライタ(以降、パッシブR/Wという)回路204と、外部の無線通信機器である基地局と無線通信するアクティブタグ回路205と、パッシブR/W回路204およびアクティブタグ回路205を制御する制御回路206とを有する。パッシブR/W回路204、アクティブタグ回路205、および制御回路206は電源202から電力の供給を受ける。電源202とアクティブタグ回路205とで、アクティブタグを構成している。すなわち、電源202とアクティブタグ回路205とで、数10m程度の長距離での、リーダライタとなる基地局との信号の送受信が可能なICタグを構成している。また、パッシブR/W回路204は、950MHz帯の電波を送出してリード動作、ライト動作を行う。パッシブR/W回路204が基地局と同じ周波数帯の電波を使用することで、第1回路201は、共通の回路で基地局からでも第2回路203からでも電力の供給を受けることができる。よって、安価に無線通信装置103を製造できる。
【0019】
無線通信装置103と基地局101の基本的な通信手順では、基地局101がデータ105を送信し、第1回路201がデータ105、すなわち基地局101からの電波で起動して、第1回路201のメモリ303に、起動した履歴を履歴情報として記憶する。例えば、メモリ303の1ビットを利用して、起動前の初期値として”0”を記憶させておき、起動した履歴を”1”として履歴情報を記憶させる。
【0020】
以下、基本通信手順における各回路の動作について、詳細を説明する。
【0021】
第1回路201の動作を、図4に示す。図4に示すように、第1回路201は、受信信号を整流回路301で整流し、内部動作電力を生成する(ステップS1)。そして整流回路301の出力は、電力検出回路302と復調回路305へと送信される。その後、電力検出回路302が、受信信号の電力値を検出する。また復調回路305が、受信信号を復調する(ステップS2)。次に、論理回路304は、復調回路305の復調信号がパッシブR/W回路204からの送信信号であるか判断する(ステップS3)。
【0022】
復調信号がパッシブR/W回路204からの送信信号であった場合、パッシブR/W回路204の送信信号に応じた処理を実施する(ステップS4)。例えば、メモリ303に記録されている履歴情報を要求する送信信号であれば、送信回路306が、アンテナ307を介して履歴情報を送信する。
【0023】
復調信号がパッシブR/W回路204の送信信号で無い場合、第1回路201のメモリ303に履歴情報として「起動あり」と記憶する(ステップS6)。履歴情報を1ビットで記憶させているのであれば、初期状態の”0”から”1”への書き換えを行う。ここで、ステップS5を設けることで、電力検出回路302で検出された電力値が予め設定されている閾値より低い場合に、履歴情報に「起動あり」と記憶させない処理を行うこともできる。これにより、第1回路201を起動させるに足る電力よりも、さらに大きい電力が供給される電波状態の場合に無線通信装置103が無線通信を開始するように設定することも可能となり、例えば、基地局と無線通信装置103の間で通信させる距離を調整することが可能となる。また、ステップS5での閾値を例えば0とすれば、単に「起動あり」の履歴情報を記憶させることができる。
【0024】
第2回路203では、制御回路206が、パッシブR/W回路204に対して、間欠的に(例えば数秒〜数分おきに)第1回路201のメモリ303に記憶されている上述の履歴情報の読取りを命令する。読取り命令を受けたパッシブR/W回路204は、第1回路201から履歴情報を読み取る。なお、履歴情報の読取り手順としては、例えば国際標準規格のISO/IEC18000−6Cに準拠した無線通信手順を用いる。
【0025】
パッシブR/W回路204は、第1回路201から読み取った履歴情報を制御回路206に送信する。読み取った履歴情報が起動した履歴である”1”であった場合には、制御回路206は、アクティブタグ回路205に対して基地局との無線通信開始を命令する。命令を受けたアクティブタグ回路205は、アクティブタグ回路205に含まれる受信回路を起動してチャネルサーチを行うことで、基地局の探索を行う。
【0026】
チャネルサーチによって基地局101が使用しているチャネルの同定に成功すると、アクティブタグ回路205は、同定したチャネルを選択してデータ105を受信する。また、制御回路206の制御によって、パッシブR/W回路204が、第1回路201のメモリ303の履歴情報をリセットする、すなわちメモリ303のビットを”0”に戻す。
【0027】
一方、履歴情報が起動した履歴が無い状態を示す”0”であった場合には、制御回路206はアクティブタグ回路205に対して基地局との無線通信開始を命令しない。よって、チャネルサーチは行われない。このように、通信可能な基地局が無い場合に無線通信装置103の動作を制限し、無線通信装置103の待機電力を抑制することができる。
【0028】
以上の工程を経て、無線通信装置103と基地局101の無線通信は終了する。
【0029】
以上のように、本実施の形態の無線通信装置103は、基地局が送出する電波から生成した電力を利用することで、第1回路201を起動させ、起動の履歴を履歴情報としてメモリ303に残す。そして、無線通信装置103の第2回路203が、履歴情報を読み出す。無線通信装置103は、読み出された履歴情報に応じて無線通信を行う、すなわち、読み出された履歴情報に起動の履歴が含まれている場合に、アクティブタグ回路205に含まれる受信回路を起動して、基地局を探索し、基地局が送出する電波に乗せられているデータを受信する。
【0030】
無線通信装置103は、アクティブタグ回路205の受信回路を常時起動しておかなくても、間欠動作で第1回路201の履歴情報から基地局の存在を確認でき、低消費電力での受信待機を実現できる。また、無線通信装置103は、無線通信装置103と基地局との間の距離が想定している距離の範囲外にある場合など、履歴情報に起動した履歴が無い場合に、チャネルサーチを行わないなど、動作を制限することができ、さらなる待機電力の抑制を可能としている。したがって、無線通信装置103の電力の消費、すなわち電源202の電池の消耗を防ぐことができる。
【実施例2】
【0031】
図5は、実施例1の無線通信装置103の例として、さらにメモリ500を追加した無線通信装置501を示す。メモリ500には、アクティブタグ回路205の通信履歴が記録される。具体的には、アクティブタグ回路205が基地局101から受信したデータ105と受信チャネルの情報とが、制御回路206を介してメモリ500に記憶される。
【0032】
本発明の無線通信装置501と基地局101の無線通信手順は、基本的には実施例1の無線通信装置103と基地局101の無線通信手順と同じであるが、異なる点は、チャネルサーチにおける各チャネルのサーチの順をメモリ500に記憶されている受信チャネルの情報に応じて変える点にある。
【0033】
実施例1では、チャネルサーチの順の例として、チャネルが全部で6チャネルある場合には、チャネル1、チャネル2、チャネル3、チャネル4、チャネル5、チャネル6の順にチャネルサーチする順を示した。本実施例の無線通信装置501では、メモリ500に記憶されている前回の通信の受信チャネルを、制御回路206を介してアクティブタグ回路205の受信回路が参照して、前回の通信の受信チャネルよりも他のチャネルが優先されるように、チャネルサーチの順が設定される。チャネルがチャネル1乃至6の全部で6チャネルある場合であって、前回の受信チャネルがチャネル2の場合には、チャネル2を最後にして、例えば、チャネル3、チャネル4、チャネル5、チャネル6、チャネル1、チャネル2の順にチャネルサーチがなされる。また、基地局101との通信があると、アクティブタグ回路205は、基地局101の送信したデータ105と受信チャネルの情報を、制御回路206を介してメモリ500に記憶する。これにより、メモリ500に記憶されている受信チャネルの情報は、通信の度に更新される。
【0034】
以上、本実施例の無線通信装置501は、アクティブタグ回路205のチャネルサーチにおいて、メモリ500に記憶されている前回の通信の受信チャネルを参照して、前回通信の受信チャネル以外のチャネルを優先してチャネルサーチする。よって、無線通信装置501が複数の基地局の送信データを受信できる位置に存在する場合、無線通信装置501が、連続して同一の基地局の送信データを受信しない様にすることが可能である。
【実施例3】
【0035】
実施例1および実施例2では、複数の基地局が基地局毎に異なるチャネルを用いる場合を示したが、異なる基地局が同一チャネルを使用して送信時間の重ならない様にデータ送信する場合で、かつ、無線通信装置501が、連続して同じチャネルで、異なる基地局の送信データを受信する必要がある場合も存在する。
【0036】
そこで、本実施例では、無線通信装置501において、アクティブタグ回路205のチャネルサーチの優先度を、メモリ500に記憶されている受信チャネルだけでなく受信データも利用して、図6に示す手順で決定する。
【0037】
図6に示すように、アクティブタグ回路205は、メモリ500に記憶されている通信履歴を制御回路206を介して読み出す(ステップS61)。そして、前回と前々回の受信チャネルが同一であるか否かを判断する(ステップS62)。図7にメモリ500に記憶されている通信履歴の一例を示す。図7に示すように、前回と前々回の受信チャネルが同一である場合、前回と前々回の受信データが同一であるか否かを判断する(ステップS63)。そして、図7のように前回と前々回の受信データが異なる場合、前回の受信チャネルを優先してチャネルサーチする(ステップS64)。例えば、図7の場合にチャネルが全部で6チャネルある場合、前回の受信チャネルがチャネル2なので、チャネル2を最初にし、例えば、チャネル2、チャネル3、チャネル4、チャネル5、チャネル6、チャネル1の順にチャネルサーチする。
【0038】
また、ステップS62の判断で前回と前々回の受信チャネルが異なる場合や、ステップS63の判断で前回と前々回の受信データが同じ場合、前回の受信チャネル以外を優先してチャネルサーチする(ステップS65)。
【0039】
以上、本実施例では、メモリ500に記憶された受信チャネルおよび受信データの通信履歴に基づいて、アクティブタグ回路205のチャネルサーチの優先度を決める。よって、異なる基地局が同一チャネルを使用して送信時間が重ならない様にデータを送信する場合に、無線通信装置501が、同一チャネルを使用する異なる基地局の送信データを連続して受信することが可能になる。
【実施例4】
【0040】
本実施例では、電源202および第2回路203は筐体の中に設けられ、第1回路201は該筐体に取り付けられているICカードなどの媒体に設けられている実施例を示す。この形態とすることで、既存の筐体やICカードなどの媒体を利用して、本発明の無線通信装置を低コストで実現できる。
【0041】
図8に、無線通信装置103の例として、第1回路201を、電源202および第2回路203を内蔵する筐体に取り付けられているICカード801に設けている無線通信装置802を示す。第1回路201が筐体内に内蔵されず、筐体に取り付けられている点を除いては、実施例1乃至3と変わりないので、動作の説明は省略する。
【0042】
なお、筐体への媒体の取り付けは、例えば、粘着剤による貼り付けで実現できる。また、筐体としては、図8に示すように携帯電話器の筐体を利用しても良い。さらに、携帯電話器の筐体を用いる場合には、アクティブタグ回路205に加えて、携帯電話器自体の無線通信機能も利用した無線通信システムを実現できる。
【実施例5】
【0043】
本実施例では、本発明の無線通信システムを入退室管理に用いた例を示す。
【0044】
図9に、入退室管理への適用例を示す。部屋901には基地局101を、部屋902には基地局102を設置する。それぞれの部屋の壁はそれぞれの基地局からの電波を遮蔽するものとする。また、基地局101および基地局102は、図示しないサーバに接続されている。サーバには、無線通信装置103を携帯する人物が各部屋を利用する時間の情報、例えば会議の開始と終了の時刻が保存されている。データ105には、部屋901の利用時間の情報が含まれる。
【0045】
部屋901の入り口付近にいる人物903が携帯する無線通信装置103は、基地局101の送信するデータ105の送信を利用して第1回路201を起動させ、起動の履歴をメモリ303に残す。そして、無線通信装置103の第2回路203が、履歴情報を読み出す。その後、アクティブタグ回路205に含まれる受信回路が起動され、データ105が受信される。以上により、無線通信装置103は、データ105から、部屋901の利用時間の情報を得る。ここで、例えば実施例4に示した携帯電話器を利用した場合には、携帯電話器の表示画面に利用時間の情報を表示でき、無線通信装置103を携帯する人物は、会議の場所に予定通りに到着できているかどうかを確認できる。
【0046】
一方、部屋901を退室した人物904が携帯する無線通信装置104は、部屋901の壁によって基地局101の送信データ105が遮断されるためにデータ105の受信はできない。ここで、無線通信装置104は無線通信装置103とは同型の装置であり、アクティブタグ回路205に記憶されているアクティブタグとしての識別番号が無線通信装置103とは異なるものとする。したがって、人物904が携帯する無線通信装置104では、第1回路201が起動されず、アクティブタグ回路205が休止されて,待機電力が抑えられる。よって、無線通信装置104の電力の消費、すなわち電源202の電池の消耗を防ぐことができる。
【0047】
またここで、履歴情報を読み出した際に、第1回路201が起動された履歴が無い場合には、次に履歴情報を読み出すまでの間隔を例えば10秒とし、第1回路201が起動された履歴がある場合には、次に履歴情報を読み出すまでの間隔をより長くし、例えば60秒とすることで、本実施例のように会議の日時の情報のように頻繁には必要で無いデータを送受信する場合に、無線通信装置103が基地局と通信可能な場所にある場合の消費電力をさらに低減することができる。
【実施例6】
【0048】
本実施例では、本発明の無線通信システムを測位に用いた例を示す。
【0049】
図10に、測位への適用例を示す。基地局1001、1002、1003がそれぞれ配置され、図示しないサーバにはデータベースが設けられ、データベースには基地局1001、1002、1003それぞれの位置が格納されている。本実施例では、基地局1001、1002、1003のそれぞれの電波で無線通信装置103の第1回路201を起動できる距離を、それぞれ5mに設定する。それぞれの基地局が送信するデータにはそれぞれの基地局の情報が含まれる。
【0050】
基地局1001から5m以内の範囲にいる人物1004が携帯する無線通信装置103では、基地局1001からの電波により第1回路201が起動され、起動の履歴がメモリ303に残る。そして、無線通信装置103の第2回路203が、履歴情報を読み出す。その後、アクティブタグ回路205に含まれる受信回路が起動され、基地局1001からの送信データが受信される。以上により、無線通信装置103は、基地局1001から5m以内にあるという情報を得る。
【0051】
ここで、例えば実施例4に示した携帯電話器を利用した場合には、携帯電話器の表示画面に情報を表示でき、無線通信装置103を携帯する人物1004は、基地局1001の付近にいることを確認できる。また、無線通信装置103は、基地局1001、1002、1003の位置情報がデータベースに格納されているサーバに携帯電話回線を通じて接続して、基地局の位置の情報を取得し、現在位置を5m程度の分解能で測位することができる。さらに高精度に測位するために、基地局1001に加えて、基地局1002、1003の送信データをアクティブタグ回路205で受信し、各基地局の位置の情報と各基地局からの電波強度から無線通信装置103の位置を導出することもできる。携帯電話回線でサーバに接続をすることで、基地局とサーバの接続の配線の手間を省くことができ、低コストで測位システムを導入することができる。また、基地局自体に携帯電話回線に接続する機能を持たせることでも、アクティブタグ回路205から基地局を介してサーバに接続でき、かつ、基地局とサーバの接続の配線の手間を省くことができ、低コストで測位システムを導入することができる。本実施例のシステムは、特に、GPSの使用が困難な屋内での測位などに好適である。また、サーバのデータベースに、測定した無線通信装置103の位置を携帯電話回線を通じて格納することで、無線通信装置103の現在位置をサーバに接続して確認することもできる。
【0052】
一方、各基地局1001、1002、1003のいずれからも5mより離れた位置にいる人物1005が携帯する無線通信装置104は、現在位置を測位可能なエリアにいない。ここで、無線通信装置104は無線通信装置103とは同型の装置であり、アクティブタグ回路205に記憶されているアクティブタグとしての識別番号が無線通信装置103とは異なるものとする。この場合、人物1005が携帯する無線通信装置104では、第1回路201が起動されず、アクティブタグ回路205が休止されて,待機電力が抑えられる。したがって、無線通信装置104の電力の消費、すなわち電源202の電池の消耗を防ぐことができる。
【0053】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0054】
100…アクティブタグシステム、101、102…基地局、103、104…無線通信装置、105、106…データ、107…妨害波、201…第1回路、202…電源、203…第2回路、204…パッシブリーダライタ(パッシブR/W)回路、205…アクティブタグ回路、206…制御回路、301…整流回路、302…電力検出回路、303…メモリ、304…論理回路、305…復調回路、306…送信回路、307…アンテナ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部からの電波で駆動し、外部からの電波を受けて起動すると、起動した記録を履歴情報として記憶する第1回路と、
電源と、
前記電源の電力で駆動し、前記履歴情報を読み出す第2回路とを備えることを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の無線通信装置において、
前記無線通信装置は複数の搬送波周波数の候補の内の一を選択して外部の無線通信機器と通信をし、
前記第1回路は前記候補の内のいずれの電波でも起動することを特徴とする無線通信装置。
【請求項3】
請求項1に記載の無線通信装置において、
前記履歴情報に応じて無線通信することを特徴とする無線通信装置。
【請求項4】
請求項1に記載の無線通信装置において、
前記無線通信装置は、前記第2回路が前記履歴情報を読み出した際に、前記履歴情報に前記第1回路が起動した記録がある場合には、外部からの電波の搬送波周波数を探索することを特徴とする無線通信装置。
【請求項5】
請求項1に記載の無線通信装置において、
前記第2回路は間欠的に前記履歴情報の読み出しを行い、
前記第2回路が前記履歴情報を読み出した際に、前記履歴情報に前記第1回路が起動した記録がある場合には、前記履歴情報に前記第1回路が起動した記録が無い場合に比べて、次回の前記履歴情報の読み出しまでの間の時間を長くすることを特徴とする無線通信装置。
【請求項6】
請求項1に記載の無線通信装置において、
前記第2回路は筐体内に設けられ、
前記第1回路は前記筐体に取り付けられる媒体に設けられていることを特徴とする無線通信装置。
【請求項7】
請求項6に記載の無線通信装置において、
前記筐体は携帯電話器の筐体であることを特徴とする無線通信装置。
【請求項8】
請求項6に記載の無線通信装置において、
前記媒体はICカードであることを特徴とする無線通信装置。
【請求項9】
請求項1に記載の無線通信装置において、
前記電源は電池であることを特徴とする無線通信装置。
【請求項10】
複数の搬送波周波数の候補の内の一の搬送波周波数で電波を送出して無線通信する基地局との無線通信方法であって、
メモリを有し、前記候補の内のいずれの搬送波周波数の電波でも駆動する回路が起動した際に、起動した記録を履歴情報として前記メモリに記憶する工程と、
前記メモリを参照して、前記回路が起動した記録が有る場合には、前記基地局を探索する工程とを有することを特徴とする無線通信方法。
【請求項11】
請求項10に記載の無線通信方法において、
前記探索を行う工程では、前記複数の搬送波周波数をスキャンすることを特徴とする無線通信方法。
【請求項12】
請求項10に記載の無線通信方法において、
前記メモリはフラッシュメモリであることを特徴とする無線通信方法。
【請求項13】
複数の搬送波周波数の候補の内の一の搬送波周波数の電波を送出して無線通信する基地局と、
メモリを有し、前記候補の内のいずれの搬送波周波数の電波でも駆動し、前記基地局からの電波を受けて起動すると、起動した記録を履歴情報として前記メモリに記憶する第1回路、および前記メモリを参照して、前記第1回路が起動した記録が有る場合には、前記基地局を探索する第2回路を有する無線通信装置と、を有することを特徴とする無線通信システム。
【請求項14】
請求項13に記載の無線通信システムにおいて、
前記基地局は部屋に設置され、
前記基地局は前記部屋の予約情報を記憶するサーバに接続され、
前記基地局は前記無線通信装置に前記予約情報を送信することを特徴とする無線通信システム。
【請求項15】
請求項13に記載の無線通信システムにおいて、
前記基地局の位置情報を格納するデータベースを有し、
前記位置情報に基づいて、前記無線通信装置の位置を測定することを特徴とする無線通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−26699(P2013−26699A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157392(P2011−157392)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】