説明

無線通信装置および制御プログラム

【課題】手作業で持ち物の存否を確認する手間を省き、かつ確実に持ち物の置き忘れを防止する。
【解決手段】一態様における無線通信装置である携帯電話1は、送信手段、受信手段、および報知手段を備えている。送信手段は、RFIDタグ2に対する問合せ信号を所定間隔で無線送信し、受信手段は、問合せ信号に対してRFIDタグ2から無線送信される応答信号を受信する。そして、報知手段は、予め指定されたRFIDタグ2からの応答信号が受信手段により所定時間受信されないことに応じてその旨を報知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、物品に取り付けられた無線タグと無線通信し、この無線通信により無線タグから得た情報を用いて各種の情報処理を行う無線通信装置およびその制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
アンテナを備え、このアンテナの交信領域内に存在する無線タグと電波を利用して無線通信を行うことにより、無線タグに実装されたメモリからデータを読み出したり同メモリにデータを書き込むことが可能な無線通信装置が開発され、実用化されている。各無線タグのメモリには固有のタグコードが記憶されており、そのタグコードを読み取ることにより、無線タグを個々に識別することができる。このような無線タグは、RFID(Radio Frequency Identification)などと称されている。また、無線通信装置は、RFIDリーダなどと称されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−216048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
我々の日常生活における様々な場面においては、その日に身に着けていたり、バッグ等に入れたりして携行している持ち物を、どこかに置き忘れてしまうことがしばしばある。このような置き忘れは、ある場所から移動するときなどの所定のタイミングで自分の持ち物を確認することで、ある程度防止できる。しかし、確認作業の実施は手間であるし、確認作業を実施し忘れたり急用のために確認作業を実施する時間がないこともある。さらに、確認作業を実施したとしても確認漏れが生じることもある。
【0005】
このような事情から、手作業で持ち物の存否を確認する手間を省き、かつ確実に持ち物の置き忘れを防止するための手段を講じる必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様における無線通信装置は、送信手段、受信手段、および報知手段を備えている。送信手段は、無線タグに対する問合せ信号を所定間隔で無線送信し、受信手段は、問合せ信号に対して無線タグから無線送信される応答信号を受信する。そして、報知手段は、予め指定された無線タグからの応答信号が受信手段により所定時間受信されないことに応じてその旨を報知する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】一実施形態におけるシステム構成を示す図。
【図2】同実施形態におけるRFIDタグを示す図。
【図3】同実施形態におけるRFIDタグを示す図。
【図4】同実施形態における携帯電話の制御回路を示すブロック図。
【図5】同実施形態における登録タグテーブルのデータ構造例を示す模式図。
【図6】同実施形態における登録処理の流れを示すフローチャート。
【図7】同実施形態における登録画面の一例を示す模式図。
【図8】同実施形態における指定画面の一例を示す模式図。
【図9】同実施形態における忘れ物警告処理の流れを示すフローチャート。
【図10】同実施形態における指定タグテーブルのデータ構造例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、一実施形態について図面を参照しながら説明する。
なお、この実施形態においては、無線通信装置の一例として、通話やパケット通信用の基地局との通信機能を備えた携帯電話を例示する。
【0009】
(第1の実施形態)
[システム構成]
本実施形態におけるシステム構成を図1に示す。このシステムは、本実施形態における無線通信装置として機能する携帯電話1と、物品に取り付けられた無線タグである複数のRFIDタグ2とで構成される。
【0010】
携帯電話1の筐体には、例えばLCD(Liquid Crystal Display)であるディスプレイ12と、複数の操作ボタンやディスプレイ12の表示面上に設けられたタッチパネルにて構成される入力部13と、上記基地局との通信用の携帯電話用アンテナ17とが設けられている。携帯電話1には、RFIDタグ2に問合せ信号を送信し、RFIDタグ2からの応答信号を受信するリーダユニット16が内蔵されている(図4参照)。このリーダユニット16からの上記問合せ信号は、携帯電話1の周囲に向けて送信され、携帯電話1を持つユーザを覆う程度の大きさの交信領域を形成する。
【0011】
物品に取り付けられる前のRFIDタグ2は、例えば図2に示すように樹脂材料等で形成されたタグ基材20に、IC21と一対のアンテナ22とを有するインレットを設けて構成される。IC21内のメモリには、各RFIDタグ2で重複しないタグコード、例えばRFIDタグ2の販売元のSGTIN(シリアルナンバ+JANコード)等が記憶されている。
【0012】
このような構成のRFIDタグ2は、例えばタグ基材20の裏面に粘着層が形成され、剥離紙3に複数枚並べて貼付された状態で保管されている。そして、ユーザが剥離紙3からRFIDタグ2を剥がし、所望の物品に貼り付けることで、その物品に取り付けられる。
【0013】
なお、RFIDタグ2は、例えば図3に示すように厚手のタグ基材23にIC21とアンテナ22とを有するインレットを埋め込み、同基材23に物品への取り付け用のリング24を設けたキーホルダー型であってもよい。このようにすれば、貼り付けが困難な物品、例えば図示したような鍵25に対しても容易にRFIDタグ2を取り付けることができる。その他にも、クリップにてRFIDタグ2を物品に取り付ける等、RFIDタグ2の取り付け方法としては種々のものを採用し得る。
【0014】
[制御回路]
図4に携帯電話1の制御回路を示す。携帯電話1は、CPU(Central Processing Unit)を主体として構成される主制御部10を備える。この主制御部10にメモリ11、上記ディスプレイ12、上記入力部13、通信部14、音声入出力部15、および上記リーダユニット16を接続し、通信部14に上記アンテナ17を接続し、音声入出力部15にスピーカ18およびマイク19を接続して、携帯電話1の制御回路が構成される。なお、当該制御回路を構成する各部は、例えば携帯電話1の筐体に着脱されるバッテリ100からの電源供給を受けて動作する。
【0015】
メモリ11は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)にて構成され、主制御部10によって実行される制御プログラムや、後述の登録タグテーブル111(図5参照)等を記憶する。
【0016】
通信部14は、アンテナ17を介して行われる携帯電話基地局との相互通信を制御する。
【0017】
マイク19は、携帯電話1の周囲の音声を集音して音声信号を生成し、音声入出力部15に出力する。音声入出力部15は、マイク19から入力される音声信号をA/D変換して主制御部10に出力する。また、音声入出力部15は、主制御部10からの指令に応じた音声信号を生成し、スピーカ18に出力する。スピーカ18は、音声入出力部15から入力される音声信号に応じて実際の音声を発生させる。
【0018】
リーダユニット16は、リーダ制御部160と、送信部161と、上記アンテナ162と、受信部163と、AGC(Automatic Gain Control)回路164と、を備える。
送信部161は、リーダ制御部160から供給されるアナログの送信データ信号で所定の搬送波を変調し、この変調した信号を増幅してアンテナ162に供給する。アンテナ162は、送信部161から供給される信号を電波(問合せ信号)として放射するとともに、自身の交信領域内に存在するRFIDタグ2から送信される電波(応答信号)を受信してアナログの受信データ信号を生成する。この受信データ信号は、受信部163に供給される。受信部163は、アンテナ162から供給される受信データ信号を増幅し、増幅した信号から所定の搬送波成分を除去する復調を行い、復調した信号のうち所定の低周波数帯の信号をLPF(Low Pass Filter)で抽出する処理を行う。この抽出後の信号が上記AGC回路164に供給される。AGC回路164は、受信部163から供給される信号を増幅するとともに、増幅後の信号レベルが一定の適正レベルとなるように利得を調整する。このAGC回路164の出力信号がリーダ制御部160に供給される。
【0019】
主制御部10は、メモリ11に記憶された制御プログラムを実行することにより、選択部101、登録部102、指定部103、および警告部104(報知手段)として機能する。また、主制御部10は、計時手段として機能するタイマ105を備える。
選択部101は、RFIDタグ2の登録処理および忘れ物警告処理(報知処理)から実行すべき処理の選択を受け付ける。
登録部102は、選択部101で登録処理が選択されているときに登録処理を実行し、受信部163で受信される応答信号で識別されるRFIDタグ2を上記登録タグテーブル111に登録する。登録処理の詳細については、図6,図7の説明にて後述する。
指定部103は、登録タグテーブル111に登録されたRFIDタグ2の中から上記忘れ物警告処理での監視対象とすべきRFIDタグ2の指定を受け付ける。指定部103の動作の詳細については、図8の説明にて後述する。
警告部104は、指定部103により指定を受け付けた監視対象のRFIDタグ2からの応答信号がリーダユニット16で所定時間受信されないことに応じて警告を発する。警告部104の動作の詳細については、図9の説明にて後述する。
【0020】
メモリ11に記憶される上記登録タグテーブル111について説明する。
図5は、登録タグテーブル111のデータ構造例を示す模式図である。このテーブル111は、上記登録処理においてリーダユニット16でRFIDタグ2から読み取られるタグコードと、入力部13を介して入力される登録名称等の文字列とを対応付けたレコードで構成される。なお、図5には既にいくつかのレコードが生成された状態を示しているが、携帯電話1の出荷当初や所定の処理により登録タグテーブル111をクリアした後には、該テーブル111にレコードがない状態となる。
【0021】
次に、携帯電話1の動作について説明する。
携帯電話1のアイドル時においては、選択部101がタグコードの登録処理および忘れ物警告処理のいずれかの選択を受け付けている。このとき入力部13の操作により登録処理が選択されると、登録部102による登録処理が実行され、入力部13の操作により忘れ物警告処理が選択されると、指定部103および警告部104による忘れ物警告処理が実行される。
以下、各処理について説明する。
【0022】
[登録処理]
登録処理は、所定のRFIDタグ2を新たに登録タグテーブル111に登録する処理である。具体的には、登録しようとするRFIDタグ2のタグコードと、同RFIDタグ2を付して管理しようとする物品を識別可能な登録名称とを対応付けてなるレコードを、新たに登録タグテーブル111に追加する。
【0023】
図6は、登録処理の流れを示すフローチャートである。ユーザが入力部13を操作して登録処理の開始を指示すると、登録部102は、図7(a)に示す登録画面5をディスプレイ12に表示させる(ステップS101)。この登録画面5には、RFIDタグ2の読み取りを促すメッセージと、読み取られたタグコードを表示するためのエリア51と、入力された登録名称を表示するためのエリア52と、メニューボタン53および戻ボタン54とが配置されている。
【0024】
登録画面5を表示した後、登録部102は、リーダユニット16にリードコマンドを出力し(ステップS102)、RFIDタグ2からの応答を待つ(ステップS103のNo)。上記リードコマンドを受け、リーダ制御部160から送信データ信号が送信部161に出力され、アンテナ162から問合せ信号が無線送信される。このとき、アンテナ162の交信領域内に1つでもRFIDタグ2が存在していれば、そのRFIDタグ2から応答信号が無線送信される。
【0025】
ユーザがアンテナ162の交信領域内にRFIDタグ2を翳すと、そのRFIDタグ2から無線送信される応答信号がアンテナ162で受信され、受信部163およびAGC回路164を経てリーダ制御部160に入力される。リーダ制御部160は、入力された応答信号を主制御部10に出力する。このとき登録部102は、主制御部10に入力された応答信号で識別されるRFIDタグ2が登録タグテーブル111に登録済みであるか否かを判定する(ステップS104)。具体的には、主制御部10に入力された応答信号で示されるタグコードと、登録タグテーブル111の各レコードのタグコードとを比較し、一致するレコードが存在するならば当該RFIDタグ2が登録済みであると判定し、一致するレコードが存在しないならば当該RFIDタグ2が登録済みでないと判定する。
【0026】
応答信号で識別されるRFIDタグ2が登録済みでないと判定した場合(ステップS104のNo)、登録部102は、図7(b)に示すように当該応答信号で示されるタグコードを登録画面5のエリア51に表示する。そして、登録名称の入力を受け付ける状態で(ステップS105)、その入力の完了を待つ(ステップS106のNo)。このときユーザが入力部13を操作して登録名称を入力すると、入力された名称がエリア52に表示される。
【0027】
さらに、ユーザが入力部13を操作して登録画面5bに配置されたOKボタン55を操作すると、登録部102は、登録名称の入力が完了したと判定する(ステップS106のYes)。このとき、登録部102は、登録タグテーブル111を参照し、入力された登録名称が使用されているか否かを判定する(ステップS107)。使用されていないと判定した場合(ステップS107のYes)、登録部102は、エリア51に表示されているタグコードと、エリア52に表示されている登録名称とを対応付けたレコードを生成して登録タグテーブル111に追加する(ステップS108)。かくしてRFIDタグ2が新たに登録タグテーブル111に登録され、登録処理が終了する。
【0028】
一方、ステップS104の処理にてRFIDタグ2が登録タグテーブル111に登録済みであると判定した場合(ステップS104のYes)、およびステップS107の処理にて入力された登録名称が使用されていると判定した場合には(ステップS107のNo)、登録部102は、当該RFIDタグ2が登録済みである旨や、登録名称が既に使用されている旨を報知する(ステップS109)。この報知は、例えば図7(c)に示した「このタグは名称登録済みです」とのメッセージを登録画面5に表示することで行う。この報知の後、登録部102は、操作に応じた処理を実行する。例えば戻ボタン54が操作されたならばエリア51,52に表示中のタグコードおよび登録名称を破棄してステップS102の処理に戻り、再びRFIDタグ2の読み取りを試行する。また、メニューボタン53が操作されたならば図7(d)に示すように登録画面5上に「編集」ボタン,「削除」ボタンを表示させる。この登録画面5において、「編集」ボタンが操作されたならばエリア51,52に表示されたタグコード,登録名称の編集を受け付け、「削除」ボタンが操作されたならばエリア51,52に表示中のタグコードおよび登録名称を破棄してステップS102の処理に戻り、再びRFIDタグ2の読み取りを試行する。
【0029】
このような流れの登録処理により、ユーザは、所望のRFIDタグ2を携帯電話1による管理対象として登録することができる。
【0030】
[忘れ物警告処理]
忘れ物警告処理は、登録タグテーブル111に登録されたRFIDタグ2(すなわち、RFIDタグ2が取り付けられた物品)のうち、指定部103によって指定されたものをどこかに置き忘れたりした際に警告を発する処理である。
先ず、忘れ物警告処理の起動手順を説明する。
携帯電話1のアイドル時において、選択部101が入力部13の操作により忘れ物警告処理の選択を受け付けると、指定部103が図8(a)に示す監視対象の指定画面6をディスプレイ12に表示させる。この指定画面6には、登録タグテーブル111の各レコードの登録名称がチェックボックスとともに一覧表示される。さらに、一覧表示された各登録名称の下方にはメニューボタン61と、戻ボタン62とが配置され、各登録名称の右隣にはスクロールバー63が配置されている。入力部13によりいずれかの登録名称が指定されると、その登録名称に隣り合うチェックボックスがチェックされる。登録タグテーブル111に多数のレコードが登録されており、指定画面6中に一度に全ての登録名称を表示できない場合にはその一部のみ表示され、スクロールバー63を用いたスクローリング操作がなされた際に表示する登録名称が切り替わる。戻ボタン62が操作されると指定画面6が消去され、再び選択部101による処理の選択が行われる。
【0031】
入力部13によりメニューボタン61が操作されると、図8(b)に示すように「忘れ物警告」,「リスト管理」,「絞り込み検索」,「削除」の中から実行すべき処理を選択させるためのリストとOKボタン64とが表示される。入力部13の操作により「リスト管理」が選択された状態でOKボタン64が操作されると、登録タグテーブル111の各レコードの編集処理が開始される。また、入力部13の操作により「絞り込み検索」が選択された状態でOKボタン64が操作されると、例えば入力部13により入力される文字列と全てあるいは一部が一致する登録名称を指定画面6の一覧表示中から検索し、発見した登録名称の表示色を変更するなどして検索結果を報知する検索処理が開始される。また、入力部13の操作により「削除」が選択された状態でOKボタン64が操作されると、チェックボックスがチェックされた登録名称に対応するレコードが登録タグテーブル111から消去される。
【0032】
入力部13の操作により少なくとも1つのチェックボックスがチェックされた状態で「忘れ物警告」が選択され、OKボタン64が操作されると、警告部104により上記忘れ物警告処理が開始される。この処理は、通話や電子メールの作成および送受信など、携帯電話1の各機能の使用中であっても、バックプロセスとして動作し続ける。
【0033】
図9は、忘れ物警告処理の流れを示すフローチャートである。処理開始当初において、先ず警告部104は、指定部103によって指定された監視対象のRFIDタグ2のタグコード、すなわち指定画面6においてチェックボックスがチェックされた登録名称に対応するタグコードを登録タグテーブル111から抽出する(ステップS201)。しかる後、警告部104は、抽出したタグコードを用いて図10に示す指定タグテーブル112をメモリ11に生成する(ステップS202)。このテーブル112は、上記抽出されたタグコード毎に、各タグコードで識別されるRFIDタグ2からの応答の有無を記述するためのエリアを設けて構成されている。各エリアには、直前3回の問合せ信号の送信に対する応答有無が、「1(応答有り)」又は「0(応答無し)」のいずれかで記述される。なお、図示した例は、図8の指定画面6にて「キーケース」,「USBメモリ」,「仕事用携帯電話」が指定された状態で忘れ物警告処理が起動された際に生成される指定タグテーブル112を示している。すなわち、図5に示した登録タグテーブル111においてそれぞれ「キーケース」,「USBメモリ」,「仕事用携帯電話」に対応するタグコード「コードC1」,「コードC4」,「コードC5」に対し、上記応答有無を記述するためのエリアが設けられている。
【0034】
このような構成の指定タグテーブル112を生成した後、警告部104は、リーダユニット16にリードコマンドを出力するとともに(ステップS203)、タイマ105にタイムカウントを開始させる(ステップS204)。
【0035】
上記リードコマンドを受け、リーダ制御部160から送信データ信号が送信部161に出力され、アンテナ162から問合せ信号が無線送信される。このとき、アンテナ162の交信領域内に存在する各RFIDタグ2から応答信号が無線送信され、これら応答信号がアンテナ162で受信され、受信部163およびAGC回路164を経てリーダ制御部160に入力される。リーダ制御部160は、入力された各応答信号を主制御部10に出力する。
【0036】
ステップS203,204の処理の後、警告部104は、リーダ制御部160から主制御部10に入力された応答信号で示されるタグコードと、監視対象のRFIDタグ2のタグコードとを照合し、監視対象のRFIDタグ2からの応答の有無を判定する(ステップS205)。判定した応答有無は、指定タグテーブル112に記述する(ステップS206)。今、忘れ物警告処理が開始された後、最初のリードコマンド出力に対する応答有無の判定であるので、ステップS206の処理においては、「今回」のエリアに応答有無が記述される。なお、アンテナ162の交信領域内にRFIDタグ2が1つも存在しない場合には、リーダ制御部160から主制御部10に応答信号が出力されない。この場合、全てのタグコードに対する「今回」のエリアに「0(応答無し)」が記述される。
【0037】
応答有無を指定タグテーブル112に記述した後、警告部104は、指定タグテーブル112を参照し、3回続けて応答無しとされたRFIDタグ2が有るか否かを判定する(ステップS207)。今、忘れ物警告処理が開始された後、最初のリードコマンド出力に対する処理であるので、「今回」のエリアにのみ応答有無が記述され、「前回」,「前々回」のエリアに応答有無が記述されていない。したがって、3回続けて応答無しとされたRFIDタグ2は無いと判定し(ステップS207のNo)、警告部104は、一連の処理の終了が指示されたか否かを判定する(ステップS208)。ユーザが処理の終了を指示していないならば(ステップS208のNo)、警告部104は、タイマ105のタイムカウントが予め定められた待ち時間T(T>0)に達するまで待機する(ステップS209のNo)。やがてタイマ105のタイムカウントが待ち時間Tに達すると(ステップS209のYes)、警告部104は、再びリードコマンドを出力し(ステップS203)、タイマ105のタイムカウントをリセットする(ステップS204)。上記待ち時間Tは、リードコマンドの出力間隔を調整するための時間であり、例えば2秒に設定される。この場合、リードコマンドが略2秒間隔で出力されることになる。
【0038】
第2回目のリードコマンド出力後におけるステップS206の処理において、警告部104は、指定タグテーブル112の「今回」のエリアに記述された応答有無を「前回」のエリアにずらし、「今回」のエリアに直前のステップS205の処理にて判定された応答有無を記述する。その後、ステップS207の処理においては、「前々回」のエリアに応答有無が記述されていないために3回続けて応答無しとされたRFIDタグ2は無いと判定し(ステップS207のNo)、ステップS208の処理に進む。
【0039】
第3回目以降のリードコマンド出力後におけるステップS206の処理において、警告部104は、指定タグテーブル112の「今回」および「前回」のエリアに記述された応答有無をそれぞれ「前回」および「前々回」のエリアにずらし、「今回」のエリアに直前のステップS205の処理にて判定された応答有無を記述する。その後、ステップS207の処理においては、指定タグテーブル112の各タグコードにつき「今回」,「前回」,「前々回」の全てに「0(応答無し)」が記述されたタグコードが有るか否かを判定する。このようなタグコードがないならば、ステップS208の処理に進む。
【0040】
一方、「今回」,「前回」,「前々回」の全てに「0(応答無し)」が記述されたタグコードが有る場合(ステップS207のYes)、警告部104は、現在、携帯電話1が通信部14による通話中であるか否かを判定する(ステップS210)。通話中でない場合(ステップS210のNo)、警告部104は、スピーカ18にビープ音等の警告音を発生させる(ステップS211)。これに合わせて、「今回」,「前回」,「前々回」の全てに「0(応答無し)」が記述されたタグコードの登録名称を登録タグテーブル111から抽出し、この抽出した登録名称を忘れ物が有る旨の警告メッセージとともにディスプレイ12に表示させる。かくして、指定されたRFIDタグ2の中に、3回続けて応答信号が得られないものがある旨が報知される。ステップS211の警告処理は、入力部13の操作により警告解除が指示されるまで継続して実行される。
【0041】
やがて警告解除が指示されると(ステップS212のYes)、警告部104は、警告音の発生を停止させるとともに、ディスプレイ12の警告メッセージ等を消去させる。しかる後、ステップS208の処理に進む。なお、スヌーズ機能を採用し、警告解除が指示された後にも一定時間置きに警告が発せられるようにしてもよい。また、このようなスヌーズ機能を採用する場合には、設定により当該スヌーズ機能のON/OFFを切り替えられるようにしてもよい。
【0042】
ステップS210の処理において、携帯電話1が通信部14による通話中である場合(ステップS210のYes)、警告部104は、ステップS208の処理に進む。すなわち、通話中にはいずれかの監視対象のRFIDタグ2から3回続けて応答信号が得られなかった場合であっても、警告を行わない。
【0043】
当該忘れ物警告処理が開始された後、ユーザが入力部13を操作して忘れ物警告処理の終了を指示すると(ステップS208)、警告部104は、図9に示した一連の処理を終了する。
【0044】
このように、警告部104は、監視対象のRFIDタグ2からの応答信号が所定時間(約待ち時間T×3)得られないことに応じて警告を発し、その旨を報知する。また、指定画面6にて複数のRFIDタグ2が指定されているとき、これら指定されたRFIDタグ2の中に応答信号が所定時間得られないものが1つでもあるならば警告を発し、その旨を報知する。
【0045】
[作用]
本実施形態の作用について説明する。
携帯電話1のユーザは、外出先等に置き忘れ易い物品等を携帯電話1にて管理すべく、それらにRFIDタグ2を取り付け、登録処理を実行して当該取り付けたRFIDタグ2を登録タグテーブル111に登録する。
【0046】
その後、例えば外出時に、その日の自分の持ち物に取り付けられたRFIDタグ2を指定画面6で監視対象として指定し、忘れ物警告処理を起動する。このとき、監視対象のRFIDタグ2が取り付けられた物品をユーザが持ち歩いているバッグ等に入れている場合には、当該RFIDタグ2からの応答信号が得られるので、警告は発せられない。
【0047】
ユーザが外出先で監視対象のRFIDタグ2が取り付けられた物品を使用し、バッグ等にしまい忘れたまま携帯電話1を持って当該外出先を立ち去ると、当該RFIDタグ2がリーダユニット16の交信領域から外れ、当該RFIDタグ2からの応答信号が得られなくなる。この場合には、3回続けて当該RFIDタグ2からの応答信号が得られなくなった際に、スピーカ18から警告音が発せられるので、ユーザは忘れ物があることを察知できる。
【0048】
また、図3に示したキーホルダー型のRFIDタグ2をジーンズのベルト通し穴等に取り付け、当該RFIDタグ2を監視対象として忘れ物警告処理を起動しておくとの使用方法も想定できる。この場合、携帯電話1をどこかに置いたままユーザがその場を立ち去ろうとすると監視対象のRFIDタグ2がリーダユニット16の交信領域から外れ、当該RFIDタグ2からの応答信号が得られなくなるので、スピーカ18から警告音が発せられ、ユーザは携帯電話1を置き忘れていることを察知できる。
【0049】
このように、本実施形態における携帯電話1は、警告部104による忘れ物警告処理を活用することで、リーダユニット16による無線通信により忘れ物の有無を容易かつ確実に察知できる。
なお、携帯電話1が通話中である場合には、忘れ物の警告がなされない。したがって、複数人での集まりの最中に通話のため一時離席したような場合には警告音が発せられず、通話の邪魔になることはない。
【0050】
(変形例)
上記実施形態にて開示した構成は、種々変形実施可能である。具体的な変形例としては、例えば次のようなものがある。
【0051】
(1)上記実施形態においては、携帯電話1にリーダユニット16を設け、この携帯電話1にて登録処理や忘れ物警告処理を実行する場合を例示した。しかしながら、リーダユニット16は携帯電話1の外部接続端子に外付けされてもよい。また、携帯電話以外の端末、例えば倉庫や店舗での物品管理に使用されるハンディターミナルにリーダユニット16を設け、このハンディターミナルに登録処理や忘れ物警告処理を実行させてもよい。
【0052】
(2)上記実施形態においては、携帯電話1にて登録処理を行い、管理対象のRFIDタグ2のタグデータ等を登録タグテーブル111に登録するとした。しかしながら、パーソナルコンピュータ等の端末を用いて登録タグテーブル111を作成しておき、作成後のテーブル111をインターネット等を介して携帯電話1に送信し、この送信されたテーブル111を用いて携帯電話1にて忘れ物警告処理が実行される構成としてもよい。
【0053】
(3)上記実施形態においては、指定画面6において指定されたRFIDタグ2を監視対象として忘れ物警告処理を実行するとした。しかしながら、予め携帯電話1やパーソナルコンピュータ等の端末を用いて監視対象とすべきRFIDタグ2を指定したファイルを作成しておき、所定の操作によりそのファイルを読み出して忘れ物警告処理における監視対象のRFIDタグ2を設定するようにしてもよい。
【0054】
(4)上記実施形態では、3回続けて監視対象のRFIDタグ2からの応答信号が得られないことを条件に警告を行うとした。しかしながら、当該条件に代え、1回,2回,あるいは4回以上で設定された所定回数続けて監視対象のRFIDタグ2からの応答信号が得られないことを条件に警告を行うようにしてもよい。
【0055】
(5)上記実施形態においては、3回続けて監視対象のRFIDタグ2からの応答信号が得られない場合であっても、通話中であれば警告を行わないとした。しかしながら、通話中の警告可否は、設定により変更できるようにしてもよい。通話中の警告が許可された場合にはステップS210の処理が省略される。また、ステップS210の処理においては、通話中であることを条件に警告を行わないとするのではなく、電子メールの作成中や送受信中であること、或いは他のアプリケーションの実行中であること等を条件に警告を行わないようにしてもよい。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0057】
1…携帯電話、2…RFIDタグ、10…主制御部、11…メモリ、12…ディスプレイ、13…入力部、16…リーダユニット、160…リーダ制御部、161…送信部、162…RFID用アンテナ、163…受信部、164…AGC回路、101…選択部、102…登録部、103…指定部、104…報知部、105…タイマ、111…登録タグテーブル、112…指定タグテーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線タグに対する問合せ信号を所定間隔で無線送信する送信手段と、
この送信手段から無線送信される問合せ信号に対して無線タグから無線送信される応答信号を受信する受信手段と、
予め指定された無線タグからの応答信号が前記受信手段により所定時間受信されないことに応じてその旨を報知する報知手段と、
を備えていることを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
1又は複数の無線タグが登録された記憶手段と、
前記記憶手段に登録された無線タグの中から任意の無線タグの指定を受け付ける指定手段と、
をさらに備え、
前記報知手段は、前記指定手段により指定された無線タグからの応答信号が前記受信手段により所定時間受信されないことに応じてその旨を報知することを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
無線タグの登録処理及び前記報知手段による報知処理のいずれかを選択する選択手段と、
この選択手段で前記登録処理が選択されているとき、前記受信手段で応答信号が受信された無線タグを前記記憶手段に登録する登録手段と、
をさらに備え、
前記報知手段は、前記選択手段で前記報知処理が選択されているとき、前記指定手段により指定された無線タグからの応答信号が前記受信手段により所定時間受信されないことに応じてその旨を報知することを特徴とする請求項2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記報知手段は、複数の無線タグが指定されているとき、これら指定された無線タグの中に応答信号が前記受信手段により所定時間受信されないものが1つでもあるならばその旨を報知することを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか1に記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記報知手段は、当該無線通信装置により所定の処理が実行されている間、報知を行わないことを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか1に記載の無線通信装置。
【請求項6】
無線タグに対する問合せ信号を所定間隔で無線送信する送信手段と、この送信手段から無線送信される問合せ信号に対して無線タグから無線送信される応答信号を受信する受信手段と、を備えたコンピュータに、
予め指定された無線タグからの応答信号が前記受信手段により所定時間受信されないことに応じてその旨を報知する報知機能を実現させるための制御プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−100164(P2012−100164A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−247726(P2010−247726)
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】