説明

無線通信装置および情報送信方法

【課題】交通点リンクと関連づけて情報を送信する際に、通信量を効果的に削減する。
【解決手段】交差点間の情報を送信する無線通信装置であって、交差点間の情報を、絶対座標で表した自端末の位置ならびに、自端末の位置との相対座標で表した当該情報の起点交差点の位置および終点交差点の位置とともに送信する送信手段、とを備える。ここで、終点交差点(あるいは起点交差点)が共通する複数の情報をまとめて送信し、1つのみの終点交差点(起点交差点)の位置と、各情報に対応した起点交差点(終点交差点)の位置を送信することも好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交差点間の情報を複数の無線通信装置間で効率的に共有するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両同士の間あるいは車両と路側機との間での無線通信を用いて衝突防止や交通情報配信などの運転支援を行うアプリケーションが研究・開発されている(特許文献1、非特許文献1等)。このような通信においては送信情報の中に、車両や路側機の位置情報を含めることが必要となる。ASV−4プロジェクト(第4期先進安全自動車推進計画)では、このようなアプリケーションで用いる送信データフォーマットの提案を行っている(図7,19左側参照)。この中で、位置情報はデータ量が大きいことが分かる。ASV−4では1/100秒(約30cm)精度での緯度経度情報を用いることを想定しているため、70ビット(緯度経度それぞれに28ビットと高度に14ビット)の情報量が必要となる。1パケットあたり399ビット(約50オクテット)のデータ構造の中で、位置情報が占める割合はとても大きい。
【0003】
上記のASV−4が提案するデータフォーマットは具体例の一つではあるが、車車間通信や路車間通信では各車両に割り当てられる通信容量が少ないことを考慮すると、位置情報の送信は通信容量を圧迫することが分かる。
【0004】
ところで、車両をセンサとして用い、車両が取得した情報を集約することで渋滞情報などを生成するプローブカーシステムが検討されている。車両が取得する情報として、平均走行速度や旅行時間、あるいはワイパーのオンオフなどを使用することが考えられる。どのような情報を収集する場合であっても、これらの情報を位置と関連づけることが必要である。特に、これらの情報を渋滞情報として使用することを考えると、始点と終点を指定したリンクと取得した情報とを関連づけることが必要となる。上記のように位置情報をデータ量が大きいので、効率的にデータ量を削減することが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−46875号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】佐藤雅明 他、「実車両を用いたセンタレスプローブ情報システムによる道路交通情報生成アルゴリズムの提案と評価」、情報処理学会論文誌、社団法人情報処理学会、平成20年1月15日、第49巻、第1号、p.253−264
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、情報を交差点リンクと関連づけて送信する際に、通信量を効果的に削減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様にかかる無線通信装置は、
交差点間の情報を送信する無線通信装置であって、
交差点間の情報を、絶対座標で表した自端末の位置ならびに、自端末の位置との相対座標で表した当該情報の起点交差点の位置および終点交差点の位置とともに送信する送信手
段、
を備える。
【0009】
なお、起点交差点と終点交差点の両方を、自端末の位置からの相対座標で表しても良い。あるいは、終点交差点を自端末の位置からの相対座標で表し、起点交差点を終点交差点の位置からの相対座標で表しても良い。また、この逆としても良い。
【0010】
また、送信する交差点間の情報は、自端末の計測手段が計測した情報であっても良いし、受信手段が他の無線通信装置から受信した情報であってもかまわない。交差点間の情報として例えば交通情報が挙げられる。交通情報としては、旅行時間(移動時間)、走行速度、車間距離、車両密度、断面交通量、混雑レベル、ワイパーやライトやABS(Antilock Brake System)などの車載機器のオンオフなどが考えられる。なお、交差点間の情報
は交通情報以外のどのような情報であっても良い。
【0011】
このように自端末の位置については絶対座標で表すものの、その他の位置情報を自端末の位置との相対座標で表すことで、データ量を削減することができる。
【0012】
また、本発明において、前記送信手段は、終点交差点が共通する複数の情報をまとめて送信し、1つのみの終点交差点の位置と、各情報に対応した起点交差点の位置を送信する、ことも好ましい。あるいは、前記送信手段は、起点交差点が共通する複数の情報をまとめて送信し、1つのみの起点交差点の位置と、各交報に対応した終点交差点の位置を送信する、ことも好ましい。
【0013】
n個の交差点間の情報を送信する場合、それぞれ起点交差点と終点交差点の位置情報を含めると2n個の位置情報が必要となるが、終点または起点が共通する複数の交差点間の情報をまとめて送信することで、1つの終点(起点)の位置情報とn個の起点(終点)の位置情報、合わせてn+1個の位置情報のみを送ればよいので通信量を削減することができる。
【0014】
本発明は、上記手段の少なくとも一部を含む無線通信装置や無線通信装置を搭載した車両(プローブカー)として捉えることができる。また、これらの処理を行う情報送信方法、さらには、これらの方法を実現するためのプログラムとして捉えることもできる。上記手段および処理の各々は可能な限り互いに組み合わせて本発明を構成することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、交差点間の情報を他の無線通信装置に送信する際に、通信量を効果的に削減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態にかかるプローブカーシステムの概要を示す図である。
【図2】交通情報が計測されるリンク(白矢印)と、その交通情報が集約されるべき交差点(黒丸)とを示す図である。
【図3】車両の機能構成ブロックを示す図である。
【図4】計測境界エリア(交差点エリア)を示す図である。
【図5】交通情報蓄積部のデータフォーマットを説明する図である。
【図6】滞留エリアを説明する図である。
【図7】送信パケットのフォーマットを説明する図である。
【図8】位置情報を相対表現で表す方法を説明する図である。
【図9】交通情報蓄積部に格納される交通情報から、送信パケットを生成する方法を説明する図である。
【図10】受信したパケットから、交通情報に格納する交通情報を生成する方法を説明する図である。
【図11】第1の実施形態にかかる車両の状態遷移図である。
【図12】第1の実施形態にかかる車両の処理動作を示すフローチャートである。
【図13】第1の実施形態にかかる車両の処理動作を示すフローチャートである。
【図14】本実施形態にかかるプローブカーシステムの動作例を説明する図である。
【図15】本実施形態にかかるプローブカーシステムの動作例を説明する図である。
【図16】第2の実施形態にかかる車両の状態遷移図である。
【図17】第2の実施形態にかかる車両の処理動作を示すフローチャートである。
【図18】第2の実施形態にかかる車両の処理動作を示すフローチャートである。
【図19】送信パケットフォーマットの変形例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1の実施形態)
[システム概要]
本実施形態に係るプローブシステムの概要を、図1を参照して説明する。本実施形態においては、プローブカーは交差点間の交通情報を取得し、車車間通信によって周囲の車両に通知する。後述する情報送信アルゴリズムによって、交差点間の交通情報が車両間でやりとりされて、終点となる交差点に集まるようにする。例えば、交差点Aから交差点Bまでの間の交通情報が交差点Bに集まるようにする。これにより、車両は、交差点を通過する際に、その交差点を終点する交通情報を得ることができる。図1に示される点線の円は、交差点に交通情報が集約されることを示している。
【0018】
このように交差点に交通情報が集約されているときに、車両101と車両102がリンクEHにおいてすれ違う状況を考える。車両101は交差点A,B,Eを通過してきているので、交差点A,B,Eを終点とする交通情報を得ることができる。つまり、車両101は、例えば、リンクBA,EB,HEに関する交通情報を入手できる(リンクABは交差点Aから交差点Bへ向かうリンクを意味し、リンクABとリンクBAは逆方向(反対車線)を表す)。同様に、車両102は、交差点M,J,Hを通過してきているので、例えば、リンクJM,HJ,EHに関する交通情報を入手できる。そして、車両101と車両102がすれ違うときに、これらの交通情報を相手の車両に送信する。つまり、各車両は、走行経路の反対車線についての交通情報を、対向車に通知する。情報を受け取る車両の観点からは、車両がこれから走行する(可能性のある)リンクについての、走行方向の車線に関する情報を得ることができる。なお、車両101は交差点A,B,Eを通過しているので、上記以外にも、リンクDA,AB,CB,DE,FEなどの交通情報も入手できる。同様に、車両102は交差点M,J,Hを通過しているので、上記以外にも、リンクLM,FJ,MJ,GH,LHの交通情報を入手できる。したがって、これらの情報も同様に対向車に通知しても良い。
【0019】
交通情報は、2つの交差点間における交通に関する情報であり、たとえば、走行所要時間、走行速度、車間距離、車両密度、断面交通量、混雑レベルなどが含まれる。どのような情報を取得するかは本発明においては本質的な事項ではなく、任意の情報を取得して良い。以下の説明では、交差点間の平均速度を例に説明する。リンク間の平均速度が分かると、そのリンクの混雑度合いが判断でき、例えば混雑度合い(渋滞)を考慮した経路探索などに役立てることができる。もちろん、平均速度以外の情報(複数であっても良い)を取得しても良いし、取得・交換した情報を経路探索以外の目的に用いてもかまわない。
【0020】
交通情報が集約される位置も種々の設計が可能である。図2に、交通情報と、その情報が集約される交差点との関係を示した。図2中、白矢印は交通情報が計測されるリンクを表し、黒丸はその交通情報が集約される交差点を表す。図2Aは、リンクABの情報を、
終点の交差点Bで集約する例である。図2Bは、リンクABの情報を、起点の交差点Aで集約する例である。図2Cは、リンクABの情報を、起点と終点の両方(交差点Aと交差点B)で集約する例である。なお、図2A〜図2Cの例において、リンクAB間に別の交差点があっても構わない点に留意されたい。なお、本明細書では、「交差点Pに集約される(べき)交通情報」の意味で、「交差点Pの交通情報」という表現を採用する。以下の説明では、交差点間の情報はリンクの終点となる交差点に集約される場合を例に説明する。従って、以下では特に断りのない限り「交差点Pの交通情報」は交差点Pを終点とするリンクの交通情報を意味する。
【0021】
[構成]
図3は、本実施形態における車両の機能ブロック図である。車両は、大略、プローブカーシステムECU200、車車間通信装置207、および各種センサ類から構成される。
【0022】
車車間通信装置207は通信部208によって周囲の車両と車車間通信を行う。車車間通信の通信方式は任意のものを採用可能である。採用可能な通信方式の一例は、5.8GHzや700MHz帯の電波を用いて、タイミング同期式CSMA方式によって定期的に送信する方式(送信周期は100〜1200ミリ秒程度であり一定である必要はない)である。
【0023】
プローブカーシステムECU(以下、単にECUとも表記する)200は、CPUなどの演算装置、RAMやROMなどの記憶装置から構成される。CPUがプログラムを実行することで、ECU200は、地図情報記憶部201、交通情報取得部202、蓄積情報更新部203、交通情報蓄積部204、車両状態判定部205、送信情報選択部206として機能する。なお、これら機能部の一部または全部は、専用のハードウェア回路によって実現されても構わない。
【0024】
〈地図情報〉
地図情報201には、交差点(ノード)の中心位置やノード同士の接続関係(リンク)などが格納されている。本実施形態においては、道路上に2種類のエリアが定義される。一つは、交差点の情報が滞留すべきエリアを表す「滞留エリア」である(図6)。これは、交差点中心から所定の距離以内の範囲として定義することができる。もう一つは、交通情報を計測する区間を定義するためのエリアであり、ここでは「計測境界エリア」と称する(請求項中の交差点エリアに相当)。図4Aに示すように、計測境界エリアは、交差点の中心31を含む交差点の内部であり、交差点に接続する道路に対する辺を有する多角形32として定義される。なお、図4Aは四叉路の例であるが、三叉路や五叉路など任意の交差点においても計測境界エリアは同様に定義される。計測境界エリアは、地図情報記憶部に合わせて記録される。
【0025】
〈交通情報取得部〉
交通情報取得部202は、交通情報計測部202aと交通情報受信部202bを有し、2通りの方法によって交通情報を取得する。第1の方法は、交通情報計測部202aが、自車両に備えられたセンサから交通情報を計測する方法である。第2の方法は、交通情報受信部202bが、車車間通信装置207によって他の車両から送信される交通情報を受信する方法である。
【0026】
・交通情報計測部
交通情報計測部202aは、交差点を通過するたびに交差点間の交通情報を取得する。具体的には、図4Bに示すように、交差点AB間の交通情報を、交差点Aの計測境界エリア34を退出した時点から、交差点Bの計測境界エリア35を退出した時点までの期間で計測する。図4Bでは、交差点Aの計測境界エリア33を退出した位置aで計測が開始さ
れ、交差点Bをどのように通過(左折・直進・右折)するかに応じて、交差点Bの計測境界エリア34を退出する点b1,b2,b3で計測が終了する。なお、交差点Bを退出した時点で、交差点AB間の交通情報の計測は終了するが、次の交差点までの間の交通情報の計測は即座に開始される。
【0027】
交通情報の計測は、取得する情報に応じた適切なセンサ類によって行えばよい。本実施形態では、交差点間リンクにおける平均速度を交通情報として計測するので、交差点間の旅行時間(移動時間)を計測し、交差点間距離を旅行時間で割って計測結果を得る。交差点間の距離については、交差点の中心位置間の距離を利用すればよい。他の交通情報を取得する場合は、適切なセンサから情報を取得すればいいことは当業者に明らかであろう。
【0028】
・交通情報受信部
交通情報受信部202bは、周囲の車両から送信される交通情報を、車車間通信装置207によって受信する。
【0029】
〈蓄積情報更新部〉
後述するように、車両内(交通情報蓄積部204)に記憶するデータフォーマットは絶対座標で表され、また所定の精度に丸められて記憶される。蓄積情報更新部203は、データのフォーマット変換や所定精度で丸める処理などを行う。交通情報計測部202aが計測する情報は比較的精度良く計測できるが、交通情報蓄積部204では精度を落として記憶するため、蓄積情報更新部203が精度を丸める処理を行う。また、交通情報受信部202bが受信する交通情報では、位置情報に相対座標が用いられるので、交通情報蓄積部204に格納する際に蓄積情報更新部203がデータフォーマットの変換を行う。
【0030】
蓄積情報更新部203は、また、明らかに異常な交通情報を取得した場合は交通情報蓄積部204を更新しないで、交通情報を破棄する。破棄する条件として、差分が大きすぎる(所定の閾値以上)場合や、異なりが続いていない(所定の回数以内)などが挙げられる。
【0031】
〈交通情報蓄積部〉
交通情報蓄積部204には、自車両が計測した交通情報や、他の車両から受信した交通情報が蓄積(記憶)される。蓄積情報更新部203は、交通情報取得部202が得た交通情報によって、交通情報蓄積部204内の情報を更新する。
【0032】
図5は交通情報蓄積部204に格納される交通情報のデータフォーマットを示す。なお、図中における括弧内の数字はデータのビット数を表す。交通情報蓄積部204には、起点位置41、終点位置42のペアごとに、登録情報43が複数個格納される。起点位置41は、交差点リンクの起点交差点の位置を、絶対座標として表した緯度・経度情報である。ここでは緯度・経度をそれぞれ1/10秒(緯度35度において約3メートル)精度で表わす。終点位置42は、交差点リンクの終点交差点の位置であり、上記と同様である。3メートルの精度があれば、道路における各車線を識別できると期待できる。
【0033】
登録情報43は、生成時刻44,平均速度45、初回登録時刻46、前回送受信時刻47を含む。生成時刻44は、この交通情報を実際に計測した時刻を表す。生成時刻44は、15秒精度の絶対時刻で表す。平均速度45は、交差点リンク間での平均速度であり2km/h精度で0〜64km/hの範囲で表す。なお、64km/h以上の場合は全て64km/hとして記録することとする。平均速度45が交差点リンク間で実際に計測される交通情報である。初回登録時刻46は、この登録情報が交通情報蓄積部204に初めて登録された時刻を表す。本システムにおいては、同じ交通情報が複数回配信されるため、最初に取得した時刻を記憶しておくことが有用である。なお、登録情報の同一性は、起点
位置・終点位置・生成時刻・平均速度の同一性で判断する。前回送受信時刻47は、この登録情報を送信又は受信した直近時刻を表す。以上のような登録情報は、起点位置41,終点位置42ごとに複数登録される。
【0034】
〈車両状態判定部〉
車両状態判定部205は、自車両が滞留エリア内に停止しているか否かを判定する。滞留エリアは、図6に示すように、交差点中心から所定の距離以内の範囲として定義されるエリアである。図6Aでは、交差点Aに対して滞留エリア61、交差点Bに対して滞留エリア62が定義されている。車両状態判定部205は、GPS装置209から自車の位置と、車速センサ213から車速とを取得し、車速がゼロであり、かつ、自車位置が滞留エリアに属するか否かを判定する。
【0035】
上記のように、滞留エリア内に属するか否かの判定は、位置情報取得手段(GPS装置)から得られる位置情報と、車速情報取得手段(車速センサ)から得られる車速情報と、地図情報から判定することが典型的である。しかしながら、その他の手法によって自車両が滞留エリアに属するか否かを判定しても良い。例えば、前方方向を一定間隔(例えば1/60秒毎)で撮影する車載カメラを車両が備えており、この車載カメラによって車両の
走行・停止と停止位置を判定しても良い。たとえば、撮影されるカメラ画像が変化しない場合を停止と判定することができる。また、カメラ画像において停止線や赤信号などを検知した場合を、交差点内に位置していると判定することができる。このように車載カメラを用いても滞留エリア内での停止を判定することができる。なお、走行・停止の判断は車載カメラではなくレーダでも代用が可能である。また、車載カメラとGPS装置や車速センサ等を適宜組み合わせて、滞留エリア内に属するか否かを判定しても良い。
【0036】
なお、図6Bに示すように、滞留エリアは重複することが考えられる。車両が重複する滞留エリア内に位置する場合に、どの滞留エリアに属すると判断するかはいくつかの手法が考えられる。
【0037】
第1の方法として、ある滞留エリアに進入したら、そのエリアを退出するまでは(重複する別の滞留エリアに進入したとしても)同じ滞留エリアに属するものと判断することが考えられる。本実施形態ではこの判断手法を採用する。
【0038】
第2の方法として、ある滞留エリアに進入した時点で、所属する滞留エリアを変更する手法が考えられる。
【0039】
第3の方法として、複数の滞留エリアが重複するエリアに位置する場合は、両方の滞留エリアに属すると判断する手法が考えられる。
【0040】
〈送信情報選択部〉
・送信情報選択アルゴリズム
ECU201は、交通情報蓄積部204内に格納された交通情報を車車間通信によって周囲にブロードキャスト送信する。送信情報選択部206は、交通情報蓄積部204に格納されている交通情報のうちどの情報を送信するかを選択する。送信する交通情報の選択は、種々のアルゴリズムにしたがって行うことが可能である。ただし、車両が滞留エリアに停止しているか否かによって、送信する交通情報の選択アルゴリズムに変化を付ける。
【0041】
ここでは、まず車両が滞留エリアに停止していない場合の選択アルゴリズムについて説明する。もっとも単純な選択アルゴリズムとして、交通情報蓄積部204に格納されている交通情報をランダムに選択して送信する手法が考えられる。
【0042】
より複雑なアルゴリズムとして、以下に示すような基準にしたがって送信する交通情報を選択する手法も考えられる。なお、以下の基準は複数組み合わせて利用することもできる。
・情報生成時刻(例:新しい情報ほど優先)
・情報生成場所(例:遠いほど優先、走行方向に対して後方の情報ほど優先)
・走行方向(例:対向方向の情報ほど優先)
・他の車両から傍受した時刻(例:長い間傍受していない情報ほど優先)
・前回送信した時刻(例:長い間送信していない情報ほど優先)
・情報内容(例:平均速度が遅い情報ほど優先)
・情報数(例:終点位置に接続する起点位置が多く存在するほど優先)
【0043】
このような送信情報選択アルゴリズムにより、走行中に取得した交通情報を他の車両に伝播することが可能となる。なお、上記の説明では新しいほど優先したり遠いほど優先したりする例を記載しているが、上記要素にしたがって優先順位を単調に変化させる必要はなく、情報生成時刻や情報生成場所などの要素が特定の範囲内にあるときに優先順位が最大(極大)となるようなアルゴリズムとしてもかまわない。
【0044】
上記の選択アルゴリズムに加えて、交差点を通過するとき(計測境界エリアから退出するとき)に、その交差点を終点とする交通情報を少なくとも1回送信することも好ましい。こうすることにより、交差点に停止している車両が、その交差点を終点とする交通情報を保持する確率が高まる。すなわち、交通情報が終点交差点で保持される確率が高まる。
【0045】
次に、車両が滞留エリア内に停止している場合の選択アルゴリズムについて説明する。この場合は、滞留エリア内に含まれる交差点を終点とする交通情報の送信頻度を高める。どの程度頻度を高めるかは設計にもよるが、例えば、N秒ごと(例えばNは1〜5秒)に、登録情報として保持している当該交差点を終点とする情報を全て少なくとも1回送信することが考えられる。
【0046】
・送信パケットフォーマット
交通情報を周囲の車両にブロードキャスト送信する際の送信パケットのフォーマットについて説明する。本実施形態では、1つのパケットの中に、終点交差点が共通する複数のリンクに関する交通情報をまとめて送信する。また、交差点位置を相対座標によって表す。これら2つの工夫によって、送信パケットのサイズを小さくして限られて通信機会を有効に利用した効率的な交通情報の交換を実現する。
【0047】
送信パケットの例を図7に示す。ここではASV−4で検討されているデータフォーマットに準拠した形式を採用する。ASV−4検討では、図7に示すようにパケットのデータ構造が定められており、この中に送信元の位置71と、任意に使用できる領域72とが存在する。送信元の位置71には、自車両の現在位置が絶対座標(緯度・経度情報)として格納される。それ以外の情報については、任意に使用できる領域72に格納する。ここで、この領域72は160ビットしか用意されていないためデータ量を削減することが重要となる。
【0048】
領域72には、終点位置73,伝達情報数74,伝達情報数74に示される数の伝達情報75が含まれる。終点位置73は、自車両の現在位置71からの相対座標として表される。ここでは、自車両位置から緯度経度で15分(緯度35度で約12km)以内の情報のみを扱い、かつ移動経度で1/10秒(緯度35度で約3m)の精度とすることで、データ容量を26ビットとすることができる。伝達情報数74には、このパケットにいくつのリンクについての交通情報が含まれるかが格納される。本実施形態では、最大4つの情報を1つのパケットに格納して送信することができる。伝達情報75は伝達情報数74の
数だけパケット内に作成され、それぞれが、経過時間75a、起点位置75b、平均速度75cのフィールドを有する。経過時間75aには、その交通情報が計測(生成)されてからの時間が15秒精度で格納される。ここでは直近15分間以内に生成された情報だけを送信することにすると、経過時間75aは6ビットとなる。起点位置75bは、その交通情報の始点交差点の位置を表す。始点交差点の位置は、終点交差点からの相対座標として表される。始点交差点も終点交差点と同様に1/10秒精度である。平均速度75cは計測された交通情報の内容である。
【0049】
・送信パケット生成手順
図8は、上記の相対座標による交通情報の表現を説明するための図である。また、図9は送信パケットを作成する手順を説明するための図である。ここでは、起点交差点Sと終点交差点Dの間の交通情報を、送信点Aに位置する車両が送信する場合を例に説明する。なお、図には緯度経度1/10秒(約3m)のグリッドも示されている。起点交差点Sおよび終点交差点Dの絶対位置は、例えば1/100秒精度などのより高い精度で取得することができるが、1/10秒単位に丸める。ここでは、メッシュ内の位置は左下(西南)の格子点に丸めるというポリシーを例として採用する。したがって、始点交差点Sおよび終点交差点Dの位置は、それぞれ位置S’および位置D’に補正される。送信点Aの絶対位置も1/100秒の精度で取得でき、この絶対座標が送信元の位置71に格納される。その後送信点Aを1/10秒精度に丸め(図9のS91)、位置D’との差分を取って終点位置(相対座標)73を算出する(S92)。また、位置S’と位置D’の差分を取って起点位置(相対座標)75bを算出する(S93)。また、現在時刻を15秒精度に丸め(S94)、交通情報の生成時刻(絶対時刻)44との差分を取って、経過時間75aを算出する。このようにして、送信パケットを作成することができる。
【0050】
・パケット受信時処理手順
次に、送信パケットを受信した車両が、受信した情報を基に交通情報蓄積部204に格納するデータを作成する手順を図10を参照して説明する。パケットを受信した車両は、送信元の位置71に含まれる絶対位置(1/100秒精度)を、1/10秒精度に丸める(図10のS101)。そして、終点位置73(相対座標)を1/10秒精度に丸めた送信元位置を足し合わせる(S102)ことで、終点位置42の絶対座標を1/10秒精度で求めることができる。また、終点交差点の絶対座標(1/10秒精度)に、起点位置75bを足し合わせることで(S103)、起点位置41の絶対座標を1/10秒精度で求めることができる。また、パケットを受信した時刻(送信した時刻と同一視できる)を15秒精度に丸め(S104)、経過時間75aを引くことで(S105)、その交通情報の生成時刻44を求めることができる。このようにして、受信したパケットから交通情報蓄積部204を更新することができる。
【0051】
[処理フロー]
本実施形態において車両が行う処理内容について説明する。図11は、本実施形態における車両の状態遷移図を示し、図12、図13は各状態において行う処理のフローチャートを示す。
【0052】
図11に示すように、本実施形態においては、待機状態1102と滞留中状態1103が定義される。電源投入によって処理が開始されると、まず待機状態1102に遷移する。そして、待機状態において、滞留エリア内に停止していると判定された場合に、滞留中状態1103へ遷移する。滞留エリア内に停止しているか否かは、車両状態判定部205が、GPS装置209から得られる位置情報と、車速センサ213から得られる車速と、地図情報201に定義される滞留エリアの位置とから判定できる。
【0053】
滞留中状態1103において、車両が走行を開始したら、待機状態1102へ遷移する
。この判定も車両状態判定部205が、車速センサ213から得られる車速に基づいて行う。
【0054】
待機状態1102であるか滞留中状態1103であるかは、以下で説明するように、交通情報送信時の送信情報を選択するアルゴリズムを決定する際に用いられる。
【0055】
次に、図12のフローチャートに従って、本実施形態における車両の動作を説明する。まず、電源投入によってプローブカーシステムECU200の動作が開始されると、待機状態に遷移する。
【0056】
待機状態において、車両の停止が検知される(S1202)と、自車両の位置が滞留エリア内であるか否かが判定される(S1204)。車両の停止は、車速センサ213から得られる車速がゼロになった時点として検出可能である。また、滞留エリアは交差点中心から所定距離以内の領域として定義されている。したがって、停止時の自車両の位置が滞留エリア内であるか否かは、GPS装置209から得られる位置情報が、地図情報201に格納されている最寄りの交差点中心位置からの距離が、所定距離以内か否かによって判断できる。
【0057】
ステップS1204において、自車両が滞留エリア内に位置しないと判定された場合(S1204−NO)は、待機状態を継続する。一方、自車両が滞留エリア内に位置すると判定された場合(S1204−YES)は、送信する交通情報を選択する際に滞留エリア内の交差点を終点する交通情報を優先的に送信するよう設定にする(S1206)。本明細書ではこのように設定することを、滞留配信を設定すると称する。具体的には、滞留配信が設定されていることを示すフラグを立てるなどする。このようにして、滞留エリア内での停止が検出されると、待機状態から滞留中状態へと遷移する。
【0058】
滞留中状態において、車両の走行開始が検知される(S1208)と、滞留配信の設定を解除し(S1210)、待機状態へと遷移する。車両の走行開始は、車速センサ213から得られる車速がゼロより大きくなった時点として検出可能である。
【0059】
図13のフローチャートは、任意の状態においてあるイベントが検出されたときの処理を示している。
【0060】
まず、計測境界エリアから退出することが検出された場合(S1302)の処理について説明する。計測境界エリアから退出したか否かは、GPS装置209から得られる自車両の位置と、地図情報201に定義されている計測境界エリアとから判定できる。
【0061】
計測境界エリアから退出すると、交通情報の計測を終了する(S1304)。本実施形態では、交差点間の平均時速を求めているので、計測境界エリアを退出した時刻を求めて、交差点間を通過するのに要した旅行時間を算出する。そして、交差点間距離(中心間距離)を旅行時間で割ることで、平均速度を算出する。
【0062】
このようにして計測された交通情報は、蓄積情報更新部203によって交通情報蓄積部204に登録される(S1306)。蓄積情報更新部203は、上述したように計測によって得られた情報を、交通情報蓄積部204のデータフォーマット(図5)に応じた形式に変換する。またこの際に、交通情報蓄積部204の整理も併せて行う。本実施形態においては、自車両位置から緯度経度15分(約12km)以内の交差点を終点とする交通情報であって、所定期間内(たとえば、2時間)に生成された情報を記憶する。したがって、この条件から外れた交通情報は交通情報蓄積部204から除外する。さらに、一つに交差点リンク(起点交差点と終点交差点のペア)についての交通情報数が、登録可能な上限
を超える場合には、初回登録時刻46が最も古い交通情報を削除して、新しい交通情報を追加する。
【0063】
また、このようにして計測された交通情報は、送信キューの先頭に追加されて、即座に周囲の車両に通知されるようにする(S1308)。送信キューに追加された交通情報は、送信タイミングが得られたときに優先的に送信される(後述するステップS1316−S1324)。
【0064】
計測境界エリアを退出すると、それまでの計測を終了すると同時に、次の計測を開始する(S1310)。本実施形態では、交差点リンク間の平均速度を計測しているので、計測境界エリアを退出した時刻を記憶しておく。
【0065】
以上の処理が計測境界エリアを退出したときに行われる処理である。これらの処理が終了したとき車両状態の変更はなく、元の状態(待機状態または滞留中状態)を維持する。
【0066】
次に、他の車両から交通情報を通知するパケットを受信した場合(S1312)の処理について説明する。受信したパケットに含まれる交通情報は、交通情報蓄積部204に登録される(S1314)。具体的には、まず、相対座標で表現されているパケット内の情報を絶対座標表現に変換する。そして、交通情報蓄積部204のデータフォーマット(図5)に応じた形式のデータに変換する。またこの際に、交通情報蓄積部204の整理もステップS1306と同様に行う。
【0067】
次に、送信タイミングが到来した場合(S1316)の処理について説明する。本実施形態においてはタイミング同期式CSMA方式を採用しているので、100ミリ秒に1回の送信機会が得られる。もちろん、どのようなタイミングで送信機会が得られるかは本発明では限定されない。
【0068】
まず、送信キューに情報があるか判定する(S1318)。送信キューに情報がない場合(S1318−NO)には、送信情報選択部206によって交通情報蓄積部204の中から送信する交通情報が選択される(S1320)。ここでの送信情報を選択するアルゴリズムは、滞留配信の設定がされているか否かによって異なる。滞留配信の設定がなされていない場合には、情報生成時刻や情報生成場所、走行方向、他の車両から傍受した時刻、前回送信時刻、情報内容、情報数の少なくともいずれかを考慮して送信する交通情報を選択する。滞留配信の設定がされている場合には、現在属している滞留エリアに関連する交差点を終点とする交通情報をより優先的に送信するよう選択する。このようにして選択された交通情報は送信キューに格納される。
【0069】
次に、送信キューのある交通情報から図7に示すフォーマットの送信パケットを作成する(S1322)。なお、送信キューにある交通情報はある1つの交差点間リンクについての交通情報であるが、この交差点間リンクと終点交差点が共通する他の交差点間リンクの情報についてもまとめて送信する。このことと、ある交差点リンク間での交通情報の計測が終わった場合にその交通情報が即座に送信されること(ステップS1308参照)を考慮すると、ある交差点を通過して時点で、その交差点を終点交差点とする交通情報が送信されることになる。したがって、車内に蓄積されている交通情報は、その終点交差点において送信されて、その交差点に停止している車両に伝達されることになる。このようにして、交通情報が終点交差点に蓄積される。
【0070】
なお、送信パケット生成に当たっては、絶対座標で表現された交通情報蓄積部204内の交通情報を、相対座標表現に変換する必要がある点は上記で図9を用いて説明したとおりである。変換処理の詳細についてはここでは繰り返さない。
【0071】
以上のようにして生成したパケットを送信(S1324)した後は、元の状態(待機状態または滞留中状態)に戻る。
【0072】
[動作例]
以下、本実施形態において、交差点に交通情報が集約されること、および、集約された交通情報が周囲の車両に伝播することを、動作例に基づいて説明する。
【0073】
図14は、車両が交差点間の交通情報を計測する動作を説明する図である。図に示す状況は、交差点31,32間の道路を車両10が走行している状況である。また、交差点31には車両11,12,13が停止しており、交差点32には車両14,15,16が停止している。なお、全ての車両が車車間通信機能を装備している必要がないことを示すために、車車間通信機能を有しない車両21〜26も示している。
【0074】
車両10は、交差点31の計測境界エリア31aを退出する時点で交通情報(リンク間に平均速度)の計測を開始する。車両10は、計測しながら走行を続け、やがて交差点32の計測境界エリア32aを通過する。この時点で、交通情報計測部202aは、交差点31・交差点32間の交通情報の計測を終了する。
【0075】
車両10は交差点32を通過して計測を終了すると、計測した交通情報を周囲に送信する。この際、交通情報蓄積部24に格納されている、交差点32を終点交差点とする交通情報も合わせて送信する。したがって、交差点32の交通情報が、交差点32に停止している車両14,15,16によって保持されるようになる。
【0076】
図15は、計測された交通情報が交差点に集約される動作を説明する図である。ここでは交差点32に着目して説明する。上述のように車両10が計測した交差点31・交差点32間の交通情報は交差点32に停止している車両14,15,16に保持される。これらの車両は、交差点32の滞留エリアに属しているため、交差点32を終点とするリンクの交通情報を優先的に配信している。したがって、車両40は交差点32を通過すると、交差点32を終点とするリンクの交通情報を受信することになる。
【0077】
車両40は、交通情報蓄積部204に登録してある交通情報を定期的に送信しながら走行するので、対向車線を走行する車両50に交差点32を終点とする交通情報を配信する機会がある。車両40から車両50に直接送信しなくても、車両40が交差点31(あるいは別の交差点でも良い)に停止している車両を介して車両50に送信することもあり得る。車両50はその後走行を続けて、交差点32を通過する際に、上述したように交差点32を終点とする交通情報を送信するので、交差点32を終点とする交通情報が交差点32に集約されることになる。
【0078】
[本実施形態の作用/効果]
本実施形態によれば、交差点間の交通情報が終点交差点を効率的に蓄積できる。そして、交差点を通過する車両が、その交差点に停止している車両からこれらの情報を取得できる。さらに、車両間でも交通情報を交換することから、各車両は自車両近辺のリンクに関する交通情報を取得できる。このように本実施形態よれば、ローカルの交通情報の取得を、プローブセンターや路側機などを用いずに車車間通信のみによって実現できる。特に、本実施形態ではリンク間の平均速度を計測・通知しているので、リンクの混雑度合いを把握することができ、たとえば、混雑度合いを考慮した経路探索などに用いることができる。
【0079】
また、本実施形態においては、交通情報を送信する際に、送信パケットのフォーマット
を工夫することで通信量の削減を実現している。第1に起点交差点と終点交差点の位置を表す際に、自車両位置を基準とする相対座標で表すことでデータ量を削減している。現在提案されている車車間通信規格(ASV−4)では、自車両(送信車両)の位置は必ず格納することとされている。したがって、この情報を有効に使うことでデータ量をASV−4のパケットフォーマットにおけるオプション領域に格納するデータ量を削減している。
【0080】
また、1つのパケットの中で、終点交差点が共通の複数のリンクに関する交通情報をまとめて送信することによってもデータ量の削減を図っている。単純にN個のリンクの起点交差点と終点交差点の位置を格納すると2N個の位置情報を格納する必要が生じるが、本実施形態によればN個のリンクに関する交通情報を送信する際に、N+1の位置情報だけを格納すれば良くなる。
【0081】
また、本実施形態では、交通情報の計測を開始・終了するタイミングを、計測境界エリアを退出する時点、すなわち交差点から退出する時点としている。これにより、交差点間の交通情報(平均速度)を計測する際に、交差点を通過する間の旅行時間も適切に反映されるようになる。
【0082】
(第2の実施形態)
上記第1の実施形態では、計測境界エリア(交差点内部のエリア)と滞留エリア(交差点中心から所定距離以内のエリア)の2つのエリアを定義して、計測境界エリアを退出するタイミングを交通情報の計測開始/終了タイミングとしている。本実施形態では、計測境界エリアは用いずに、滞留エリアのみを用いて上記第1の実施形態とほぼ同様の効果が得られるシステムを実装する。すなわち、交通情報の計測開始/終了タイミングを滞留エリアへの進入や同エリアからの退出を基準に決定する。
【0083】
図16Aは本実施形態における車両の状態遷移図を示す。本実施形態においては、待機状態1602、計測中状態1603、滞留中状態1604が定義される。電源投入によって処理が開始されると、まず待機状態1602に遷移する。そして、待機状態において滞留エリアからの退出が検出されると計測中状態1603に遷移する。計測中状態1603に遷移した時点で交通情報の計測が開始される。そして、計測中状態1603において、滞留エリアへの進入が検出されると、待機状態1602へ遷移し、交通情報の計測を終了する。すなわち、本実施形態においては、滞留エリアを含まない交差点間リンクに位置する期間が、交通情報の計測期間になる。
【0084】
また、待機状態1602において、滞留エリア内に停止していると判定された場合に、滞留中状態1604へ遷移する。滞留中状態において、車両が走行を開始したら、待機状態1602へ遷移する。図16Bは、交差点に定義された滞留エリア1605を車両が通過する場合を示す図である。図16Bのうち、点Bは車両が滞留エリア1605に進入する位置、点Cは滞留エリア内で停止する位置、点Dは車両が滞留エリア1605から退出する位置を表す。ここで、車両が滞留エリア外である点A−B間に位置する間は計測中状態である。そして、滞留エリア1605内を走行している点B−C間に位置する間は待機状態である。車両が点Cにおいて停止している間が滞留中状態である。車両が点Cから走行を再開し滞留エリア1605から退出するまでの点C−Dに位置する間は待機状態である。また、車両が滞留エリア1605から退出した点D−E間に位置する間は計測中状態である。なお、滞留エリア外では車両が停止しても計測中状態が継続する。
【0085】
次に、本実施形態における車両動作を、図17,図18のフローチャートに従って説明する。基本的には第1の実施形態における処理(図12,図13)と同様であるため、異なる部分について主に説明する。
【0086】
第1の実施形態と異なる点の一つは、待機状態において滞留エリアからの退出を検出した場合(S1702)である。本実施形態においては、滞留エリアから退出した時点から交通情報の計測を開始する(S1704)。
【0087】
第1の実施形態と異なるもう一つの点は、計測中状態での処理である。計測中状態において、滞留エリアへ進入したことを検出する(S1712)と、計測を終了し(S1714)、計測した交通情報を交通情報蓄積部204に登録(S1716)するとともに、送信キューの先頭に追加する(S1716)。これらの処理の詳細は、第1の実施形態における境界エリア退出時の処理(図13のステップS1302〜S1308)と同様であり、計測終了後に即座に次の計測を開始しない点で異なるだけである。
【0088】
図18には、任意の状態において、他の車両から交通情報を通知するパケットを受信した場合の処理と、送信タイミングが到来した場合の処理が示されている。これらの処理は第1の実施形態における処理(図13)と同様であるため、説明は省略する。
【0089】
本実施形態においても第1の実施形態とほぼ同様の効果を得ることができる。滞留エリア内にいる期間が交通情報の計測期間に含まれないため、交差点を通過するために要する時間が計測されなくなるが、計測境界エリアを定義する必要がなくなるため実装が簡単になるという利点がある。
【0090】
(変形例)
上述の説明では、交差点間の情報が、終点の交差点に集約される場合を例に説明したが、起点の交差点に情報が集約される場合も、同様の作用・効果が得られることは明らかであろう。この場合、1つの送信パケットには、図19に示すように、起点交差点を共通する複数のリンクに関する交通情報がまとめて格納される。すなわち、起点交差点の位置が格納される。
【0091】
また、上記の説明では、起点交差点や終点交差点の位置をパケット送信車両の現在位置からの相対座標で表現しているが、これは必ずしも必須ではない。通信量が増えてもかまわない状況では、起点交差点や終点交差点の位置も絶対座標で表してもかまわない。
【0092】
交差点等の絶対座標は必ずしも緯度・経度情報によって表される必要もない。たとえば、交差点IDやマップコード(株式会社デンソーの商標)などを用いて位置の絶対座標を表すこともできる。
【0093】
上述のパケットフォーマットやデータ表現の精度などは例示に過ぎず、当業者であれば本発明の技術的思想の範囲の中で適宜変形することが容易であろう。特に、本実施形態では、ASV−4で提案される車車間通信方式に沿った方式を用いることとしているが、この規格とは無関係に本発明を実装してもかまわない。
【0094】
上記実施形態においては、交通情報のデータ量を抑制して送信する技術が開示されている。すなわち、交差点間の交通情報を送信する際に、送信車両の現在位置を絶対座標で表し、始点交差点および終点交差点の位置を相対座標で表すことでデータ量を抑制している。また、複数の交差点間の交通情報を送信する際に、終点(始点)を共通する複数のリンク間の交通情報をまとめて送信することでもデータ量を抑制している。これらの手法は、車両間で交通情報を共有するセンターレスプローブカーシステムとは独立して、複数の交差点間の情報を送信する際のデータ量削減方法として採用することができる。データ量削減手法として捉える場合、送信される交差点間の情報は必ずしも交通に関する情報に限られる必要はなく、交差点間のリンクと対応付けることのできる情報であれば任意の情報でかまわない。
【0095】
例えば、センター型プローブカーシステムにおいても、上記の方法によって複数の交差点間の交通情報を送信すれば、通信に必要なデータ量を抑制することができる。また、いわゆるプローブカーシステムに限られず車群通信や車群協調走行を行うシステムにおいても、交差点間の交通情報を送信する場合には上記の送信方法を適用することが有用である。
【0096】
また、一般に車車間通信あるいは路車間通信では、送信元車両の絶対座標で表した位置情報が有用である。したがって、車車間通信あるいは路車間通信の通信規格(データフォーマット)においては、ASV−4のように送信元車両の絶対座標を必須フィールドとすることが考えられる。交差点間の交通情報を送信するアプリケーションは、このように設計された通信規格を利用する際に、送信元車両の絶対座標は必須フィールドに格納し、始点交差点および終点交差点の相対座標のみを別途追加すればよい。
【0097】
また、交差点間の情報を送信する無線通信装置は、車両に備え付けられた無線通信装置(車載無線通信装置)に限られない。上記の無線通信装置は、携帯電話やスマートフォンなどの携帯端末や、通信機能を備えるノート型パソコンなどの持ち運び可能なコンピュータであってもかまわない。これらの機器を、車両内に持ち込んで有線あるいは無線(例えばBluetooth(登録商標))などで車載機器と連携させて、車載機器から得た位置情報や交差点間の情報を送信するようにしても良い。
【0098】
また、これらの機器を車両と対応付ける必要はなく、これらの機器を携帯して徒歩や車両以外の移動手段によって移動するユーザが交差点間の情報を送信する際にも本発明は適用できる。この場合、無線通信装置が備えるGPS装置などから取得される位置情報(絶対座標)が交差点間の情報と共に送信される。
【符号の説明】
【0099】
200 プローブシステムECU
201 地図情報
202 交通情報取得部
202a 交通情報計測部
202b 交通情報受信部
203 蓄積情報更新部
204 交通情報蓄積部
205 車両状態判定部
206 送信情報選択部
207 車車間通信装置
208 通信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交差点間の情報を送信する無線通信装置であって、
交差点間の情報を、絶対座標で表した自端末の位置ならびに、自端末の位置との相対座標で表した当該情報の起点交差点の位置および終点交差点の位置とともに送信する送信手段、
を備える、無線通信装置。
【請求項2】
前記送信手段は、終点交差点が共通する複数の情報をまとめて送信し、1つのみの終点交差点の位置と、各情報に対応した起点交差点の位置を送信する、
請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記送信手段は、起点交差点が共通する複数の情報をまとめて送信し、1つのみの起点交差点の位置と、各情報に対応した終点交差点の位置を送信する、
請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項4】
交差点間の情報を計測する計測手段と、
他の無線通信装置から送信される交差点間の情報を受信する受信手段と、
を備え、
前記送信手段は、前記計測手段が計測した交差点間の情報と前記受信手段が受信した交差点間の情報を送信する、
請求項1〜3のいずれかに記載の無線通信装置。
【請求項5】
交差点間の情報を送信する交通情報送信方法であって、
交差点間の情報を、絶対座標で表した自端末の位置ならびに、自端末の位置との相対座標で表した当該情報の起点交差点の位置および終点交差点の位置とともに送信する送信ステップ、
を含む、情報送信方法。
【請求項6】
前記送信ステップでは、終点交差点が共通する複数の情報をまとめて送信し、1つのみの終点交差点の位置と、各情報に対応した起点交差点の位置を送信する、
請求項5に記載の情報送信方法。
【請求項7】
前記送信ステップでは、起点交差点が共通する複数の情報をまとめて送信し、1つのみの起点交差点の位置と、各情報に対応した終点交差点の位置を送信する、
請求項5に記載の情報送信方法。
【請求項8】
交差点間の情報を計測する計測ステップと、
他の無線通信装置から送信される交差点間の情報を受信する受信ステップと、
を含み、
前記送信ステップでは、前記計測ステップにおいて計測した交差点間の情報と前記受信ステップにおいて受信した交差点間の情報を送信する、
請求項5〜7のいずれかに記載の情報送信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−226535(P2012−226535A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93167(P2011−93167)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(502087460)株式会社トヨタIT開発センター (232)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】