無線通信装置および無線通信システム
【課題】装置構成を大型化することなく、通信品質を良好に保つ無線通信装置および無線通信システムを提供する。
【解決手段】
アンテナAT11,AT12と、アンテナAT11,AT12にそれぞれ対応して設けられ、信号の振幅を調整する振幅調整手段と、アンテナAT11,AT12にそれぞれ接続され、信号の位相を調整する移相調整手段13,14と、振幅調整手段および移相調整手段13,14を制御し、アンテナAT11,AT12から送信される送信信号の振幅および位相を調整して、送信信号の相関係数を制御する制御手段18とを備えている。
【解決手段】
アンテナAT11,AT12と、アンテナAT11,AT12にそれぞれ対応して設けられ、信号の振幅を調整する振幅調整手段と、アンテナAT11,AT12にそれぞれ接続され、信号の位相を調整する移相調整手段13,14と、振幅調整手段および移相調整手段13,14を制御し、アンテナAT11,AT12から送信される送信信号の振幅および位相を調整して、送信信号の相関係数を制御する制御手段18とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置および無線通信システムに関し、特に、アダプティブアレイ通信またはMIMO(Multiple Input Multiple Output)通信などのマルチアンテナ技術が用いられる無線通信装置および無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線通信システムでは、有限な周波数帯域を効率的に利用するために、無線信号の送信側または受信側の少なくとも一方が複数のアンテナを用いるマルチアンテナ技術が利用されている。マルチアンテナ技術としては、アダプティブアレイ通信やMIMO通信が知られている。
【0003】
アダプティブアレイ通信では、アレイアンテナの指向性制御として、例えば、最小平均二乗誤差(MMSE;Minimum Mean-Squared Error)に基づいた適応アルゴリズム(RLSアルゴリズム、SMIアルゴリズム、LMSアルゴリズム等)を用い、移動局は、基地局から受信した受信信号について参照信号との二乗誤差を最小化するように、アレイアンテナの指向性パターンを形成するための各アンテナ素子の重み係数を適応アルゴリズムにより計算して求める。これにより、干渉波の到来方向にヌル点を向かせ、さらに所望波の到来方向にメインビームを向かせるようにアレイアンテナの指向性を制御している。
【0004】
MIMO通信も複数のアンテナを用いた無線通信技術であり、移動局と基地局の双方が複数のアンテナ素子からなるアレイアンテナを備え、移動局と基地局の間で、複数のパスを介して空間多重接続を行う。これにより、通信速度を上げることができる。例えば、4つのアンテナ素子からなるアンテナを移動局と基地局の双方が備えている場合、移動局と基地局の間で4つのパスを介して空間多重接続を行うことにより、1つのパスのみで接続するよりも4倍の通信速度を得ることが可能となる。
【0005】
アダプティブアレイ通信では、希望波と非希望波との相関係数が小さい方が通信品質が良好となり、MIMO通信では伝送路間の相関係数が小さい方が通信品質が良好となることが知られているが、相関係数は通信環境の影響を受け、相関係数が小さい場合もあれば、大きい場合もある。
【0006】
相関係数を小さくするには、例えば2つの伝送路があった場合、一方の伝送路の位相のみを変えることができれば、伝送路間の相関係数を小さくして伝送容量を大きくできる。このような方法については、例えば特許文献1に開示がある。
【0007】
特許文献1では、一方の伝送路中に空気と異なる比誘電率の誘電体板を配置して移相器とし、移相器を通過する電波の位相を変える構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−41083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した特許文献1の構成では、所定の伝送路の位相を変更するために、通信装置の外部に移相器を配置する必要があり、装置構成が大型化するとともに、伝送路が増えた場合には対応が難しいという問題があった。
【0010】
本発明は上記のような問題点を解消するためになされたもので、装置構成を大型化することなく、通信品質を良好に保つ無線通信装置および無線通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明に係る無線通信装置は、複数のアンテナと、前記複数のアンテナにそれぞれ対応して設けられ、信号の振幅を調整する振幅調整手段と、前記複数のアンテナにそれぞれ接続され、信号の位相を調整する移相調整手段と、前記振幅調整手段および前記移相調整手段を制御し、前記複数のアンテナから送信される送信信号の振幅および位相を調整して、前記送信信号の相関係数を制御する制御手段と、を備えている。
【0012】
本発明に係る無線通信装置の一態様は、前記複数のアンテナにそれぞれ対応して設けられ、前記複数のアンテナで受信される受信信号に基づいて各アンテナにおけるチャネル推定を行うチャネル推定手段と、前記チャネル推定手段でのチャネル推定結果に基づいて、前記複数のアンテナでそれぞれ受信される受信信号の相関係数を算出する相関係数算出手段と、を備え、前記制御手段は、前記相関係数算出手段で算出された前記相関係数が所定値を超える場合に、前記振幅調整手段および前記移相調整手段を制御する。
【0013】
本発明に係る無線通信装置の一態様は、前記移相調整手段での位相調整値および前記振幅調整手段での振幅調整値と、前記送信信号の相関係数との対応を表すデータを記憶する記憶手段をさらに備え、前記制御手段は、前記記憶手段から読み出した前記データに基づいて、前記振幅調整手段および前記移相調整手段を制御する。
【0014】
本発明に係る無線通信装置の一態様は、前記振幅調整手段が、前記移相調整手段に入力される前の前記送信信号を減衰させるアッテネータである。
【0015】
本発明に係る無線通信装置の一態様は、前記複数のアンテナが、指向性可変アンテナであって、前記振幅調整手段は、前記指向性可変アンテナの指向性を制御する指向性制御素子であって、前記指向性可変アンテナから送信される前記送信信号の指向性を変えることで、前記送信信号の振幅を調整する。
【0016】
本発明に係る無線通信装置の一態様は、前記複数のアンテナが、前記送信信号を受信信号として受けた他の無線通信装置で算出された、前記受信信号の相関係数の情報を含む信号を受け、前記制御手段は、前記受信信号の相関係数が所定値を超える場合に、前記振幅調整手段および前記移相調整手段を制御する。
【0017】
本発明に係る無線通信システムは、複数の第1のアンテナと、前記複数の第1のアンテナにそれぞれ対応して設けられ、信号の振幅を調整する振幅調整手段と、前記複数のアンテナにそれぞれ接続され、信号の位相を調整する移相調整手段と、前記振幅調整手段および前記移相調整手段を制御し、前記複数の第1のアンテナから送信される送信信号の振幅および位相を調整して、前記送信信号の相関係数を制御する制御手段とを備えた第1の無線通信装置と、複数の第2のアンテナと、前記複数の第2のアンテナにそれぞれ対応して設けられ、前記複数の第2のアンテナで受信される受信信号に基づいて各アンテナにおけるチャネル推定を行うチャネル推定手段と、前記チャネル推定手段でのチャネル推定結果に基づいて、前記複数の第2アンテナでそれぞれ受信される受信信号の相関係数を算出する相関係数算出手段とを備えた第2の無線通信装置と、を有した無線通信システムであって、前記第2の無線通信装置は、算出した前記受信信号の相関係数の情報を前記第1の無線通信装置に送信し、前記第1の無線通信装置の前記制御手段は、前記受信信号の相関係数が所定値を超える場合に、前記振幅調整手段および前記移相調整手段を制御する。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る無線通信装置によれば、送信信号の振幅および位相を調整して、送信信号の相関係数を制御することで通信品質を良好に保つことができる。また、移相調整手段および振幅調整手段を内部に備えることで、装置構成が大型化することを防止できるとともに、伝送路が増えた場合にも対応できる。
【0019】
本発明に係る無線通信システムによれば、第2の無線通信装置が算出した受信信号の相関係数の情報を第1の無線通信装置に送信し、第1の無線通信装置の制御手段では、受信信号の相関係数が所定値を超える場合に、振幅調整手段および移相調整手段を制御するので、第1の無線通信装置の複数の第1のアンテナから送信された信号の相関係数の大小を判断することとなり、送信系統と受信系統の違いに起因する影響を排除した相関係数に基づいて、新たな相関係数の制御を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】MIMO通信システムの概念を説明する図である。
【図2】送信された信号のD/U比と振幅誤差および位相誤差との関係を示す図である。
【図3】MIMO通信システムをさらに詳細に示したブロック図である。
【図4】本発明に係る実施の形態1の基地局の構成を示すブロック図である。
【図5】振幅調整器の構成例を示す図である。
【図6】相関係数と位相調整値、振幅調整値との対応を表す図である。
【図7】本発明に係る実施の形態1の基地局の動作を説明するフローチャートである。
【図8】本発明に係る実施の形態1の基地局の変形例の構成を示すブロック図である。
【図9】ビーム角度とビームゲインの関係を示す図である。
【図10】本発明に係る実施の形態1の基地局の変形例の動作を説明するフローチャートである。
【図11】本発明に係る実施の形態2の無線通信システムの構成を示すブロック図である。
【図12】本発明に係る実施の形態2の無線通信システムの動作を説明するフローチャートである。
【図13】本発明に係る実施の形態2の無線通信システムの変形例の構成を示すブロック図である。
【図14】本発明に係る実施の形態2の無線通信システムの変形例の動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<実施の形態1>
本発明に係る無線通信装置は、アダプティブアレイ通信やMIMO通信など複数のアンテナを用いた通信に適用可能であるが、以下においてはMIMO通信への適用例について説明する。
【0022】
MIMO通信は、独立した空間伝送路(以下「チャネル」と呼称)を複数用いることで、同時に同じ帯域で複数のデータストリームを伝送する技術である。なお、MIMOはIEEE802.11nやIEEE802.16eなどに規格として採用されている。また、LTE(Long Term Evolution)などの次世代の広帯域無線通信装置では2多重を超える多重度のMIMOも計画されている。
【0023】
MIMO通信では、送受信側の双方に複数のアンテナ素子を配置し、送受信側双方のアンテナ素子間隔を複数のチャネルが互いに独立であるとみなせる程度にまで広げている。これは、チャネルが互いに独立であることによって、各チャネルの最大伝送速度の総和までMIMO伝送の伝送速度を向上させるためである。
【0024】
チャネルが互いに独立かどうかを示す指標として空間相関があり、チャネルが互いに独立であればあるほど空間相関は小さい値になる。
【0025】
ここで、2多重で、送信側のアンテナ素子および受信側のアンテナ素子のそれぞれが2本で構成される(2×2システム)でのMIMO通信システムを図1に示す。
【0026】
図1においては、通信端末MSのアンテナAT1およびAT2と、基地局のアンテナAT11およびAT12との間で通信波の授受を行う。なお、本発明は上述した2×2システムへの適用に限定されるものではなく、2×4システムなど他のシステムであっても適用可能である。
【0027】
図1では、通信端末MSのアンテナAT1と基地局のアンテナAT11との間のチャネルCh11のチャネル応答をh11、通信端末MSのアンテナAT1と基地局のアンテナAT12との間のチャネルCh21のチャネル応答をh21、通信端末MSのアンテナAT2と基地局のアンテナAT11との間のチャネルCh12のチャネルを応答をh12、通信端末MSのアンテナAT2と基地局のアンテナAT12との間のチャネルCh22のチャネル応答をh22として表している。チャネル応答h11、h12、h21、h22のそれぞれは、振幅および位相を含んだ複素数である。
【0028】
ここで、チャネル応答ベクトルh1およびh2をそれぞれ下記の数式(1)および(2)で表すと、空間相関ρ12は、下記の数式(3)で表される。
【0029】
【数1】
【0030】
【数2】
【0031】
【数3】
【0032】
上記数式(1)〜(3)において、添え字Tは転置を示し、添え字Hは複素共役転置を示し、添え字*は複素共役を示す。
【0033】
また、MIMO通信において、Sergio Brabarossa著の“Multianrenna Wireliss Communication Systems.(Artech House)”によれば、送信アンテナがnT本、受信アンテナがnR本である場合のMIMOチャネル容量(MIMO伝送容量)CMIMOは、下記の数式(4)で表される。
【0034】
【数4】
【0035】
数式(4)において、InRはサイズがnRの単位行列であり、SNRは信号対雑音比であり、Hは下記の数式(5)で表されるチャネル行列である。
【0036】
【数5】
【0037】
数式(4)で示されるように、MIMOチャネル容量は、受信電力により定まるSNRと、Hで示されるチャネル間の相関係数により決まることが知られている。すなわち、受信電力が大きく相関係数が小さいことが特性向上につながる。
【0038】
また、アダプティブアレイ通信の場合は、相関係数により送信された信号のD/U比(希望波/非希望波)が大きく変わることが分かっている。図2は、送信された信号のD/U比が17dBを下回る直前の振幅誤差および位相誤差を示したグラフであり、横軸に位相(deg)、縦軸に振幅(dB)を示している。
【0039】
図2においては、相関係数が0.35、0.40および0.90のそれぞれの場合について位相と振幅の関係について示しており、例えば相関係数が0.4の場合は、位相が1degずれた場合、振幅は3.4dBまでずれていてもD/U比は17dBであることが判るが、相関係数が0.9の場合は、位相が1degずれた場合、振幅は1.6dBまでのずれしか許容されず、これを超えるとD/U比が17dBを下回ることとなる。
【0040】
以上のように、MIMO通信もアダプティブアレイ通信も、相関係数を小さくすることが通信品質の向上に繋がるが、相関係数は通信環境の影響を受けるので、これまでは、通信環境が改善されるのを待つか、特許文献1のように、通信装置の外部の伝送路中に移相器を配置して、特定の伝送路の位相を変えるなどの構成を採るしかなかった。
【0041】
しかし、本発明に係る無線通信装置では、相関係数が低くなるように位相および振幅を調整することで、通信品質の向上を図るものである。
【0042】
<装置構成>
図3は、図1に示したMIMO通信システムをさらに詳細に示したブロック図であり、アンテナAT1とAT2との間のチャネルCh11、Ch12、Ch21、Ch22に加えて、通信端末MSおよび基地局BS内での信号経路も示している。
【0043】
すなわち、通信端末MSにおいては、アンテナAT1およびAT2にそれぞれ接続されるRF(Radio Frequency)部1および2を備え、RF部1は送信部T1および受信部R1を有し、RF部2は送信部T2および受信部R2を有している。
【0044】
従って、アンテナAT1から送信される信号は、送信部T1から経路t1を介してアンテナAT1に与えられ、アンテナAT1で受信した信号は、経路r1を介して受信部R1に与えられる。
【0045】
同様に、アンテナAT2から送信される信号は、送信部T2から経路t2を介してアンテナAT2に与えられ、アンテナAT2で受信した信号は、経路r2を介して受信部R2に与えられる。
【0046】
また、基地局BSにおいては、アンテナAT11およびAT12にそれぞれ接続されるRF部11および12を備え、RF部11は送信部T11および受信部R11を有し、RF部12は送信部T12および受信部R12を有している。
【0047】
従って、アンテナAT11から送信される信号は、送信部T11を含む経路t11を介してアンテナAT11に与えられ、アンテナAT11で受信した信号は、受信部R11を含む経路r11を介してアレイ処理部10に与えられる。
【0048】
同様に、アンテナAT12から送信される信号は、送信部T12を含む経路t12を介してアンテナAT12に与えられ、アンテナAT12で受信した信号は、受信部R12を含む経路r12を介してアレイ処理部10に与えられる。
【0049】
従って、例えばアンテナAT1から送信される信号は、伝送経路によってチャネルCh11およびCh21に分かれ、チャネルCh11で送られた信号は経路r11を通り、チャネルCh21で送られた信号は経路r12を通ることとなる。
【0050】
このように、伝送経路が変わることで、同じ信号であっても位相および振幅が変わり、さらに、機器内部での信号経路によっても位相および振幅が変わることとなる。
【0051】
基地局BSのRF部11および12の受信部においては、受信した無線信号からベースバンド周波数への変換などを行う。そして、FFT(Fast Fourier Transform)処理などを行った後、アレイ処理部10内の受信アレイ処理部101に与えられ、ウェイト生成部103で生成されたウェイトを用いて重み付けを行うことによって受信信号の抽出を行う。その後、抽出された受信信号は、図示しない復調部に与えられて復調される。
【0052】
一方、アレイ処理部10内の送信アレイ処理部102では、図示されない変調部から与えられる送信信号に対してウェイト生成部103で生成されたウェイトを用いて重み付けを行った後、IFFT(Inverse FFT)処理を行う。その後、RF部11および12の送信部において、ベースバンド周波数から無線信号へ変換され、アンテナAT11およびAT12を介して送信される。
【0053】
上述した基地局BSに対して本発明に係る実施の形態1を適用した構成を図4に示す。図4に示す基地局BSにおいては、アンテナAT11およびAT12のそれぞれに移相器13および14が接続され、アンテナAT11およびAT12で受信した信号は、それぞれ移相器13および14を介してRF部11および12に接続される構成となっている。
【0054】
また、RF部11および12から移相器13および14に向けての信号経路には、それぞれ振幅調整器20および21(振幅調整手段)が介挿され、振幅調整器20および21の出力は、それぞれ移相器13および14からアンテナAT11およびAT12を介して送信される構成となっている。
【0055】
そして、RF部11および12の出力は、それぞれチャネル推定部15および16(チャネル推定手段)に入力される。チャネル推定部15および16の出力は、相関演算部17(相関係数算出手段)に与えられ、チャネル間の相関係数が算出される。
【0056】
得られたチャネル間の相関係数は制御部18(制御手段)に与えられ、当該相関係数が所定のしきい値を超えるか否かの判定がなされる。そして、所定のしきい値を超える場合には、予めシミュレーション等を用いて準備され、所定の記憶部19(記憶手段)に保存された、相関係数と移相器13および14での位相調整値、振幅調整器20および21での振幅調整値との対応を表すデータに基づいて移相器13および14を調整することで、相関係数を小さくする制御を行う。
【0057】
すなわち、数式(4)に示したように、伝送容量はチャネル行列Hに依存するので、伝送容量が最大となるように移相器13および14、振幅調整器20および21を用いて各チャネルの位相および振幅を調整する。このとき、伝送容量を検出するのではなく、チャネル間の相関係数を算出し、相関係数ができるだけ小さくなるように各チャネルの位相および振幅を調整することで、結果的に伝送容量を最大にすることができる。
【0058】
ここで、図5を用いて振幅調整器20および21の構成の一例について説明する。図5に示すように、振幅調整器20および21は減衰器(アッテネータ)で構成され、抵抗R1と、抵抗R1の両端と接地電位との間に並列にそれぞれ接続された抵抗R2およびR3とで第1の減衰器が構成され、抵抗R11と、抵抗R11の両端と接地電位との間に並列にそれぞれ接続された抵抗R12およびR13とで第2の減衰器が構成され、抵抗R21と、抵抗R21の両端と接地電位との間に並列にそれぞれ接続された抵抗R22およびR23とで第3の減衰器が構成されている。そして、これらの減衰器の何れを使用するかは、スイッチSW1、SW2、SW3、SW4、SW5およびSW6の制御により決定される。
【0059】
すなわち、第1の減衰器を使用する場合は、スイッチSW1およびSW2を、それぞれ抵抗R1の両端のノードN2、N3側に切り替えるように制御し、抵抗R1による減衰で信号の振幅を下げる。第2の減衰器を使用する場合は、スイッチSW3およびSW4を、それぞれ抵抗R11の両端のノードN12、N13側に切り替えるように制御し、抵抗R11による減衰で信号の振幅を下げる。また、第3の減衰器を使用する場合は、スイッチSW5およびSW6を、それぞれ抵抗R21の両端のノードN22、N23側に切り替えるように制御することで、抵抗R21による減衰で信号の振幅を下げる。
【0060】
もちろん、何れかの2つの減衰器を組み合わせて使用しても良いし、全ての減衰器を使用しても良いことは言うまでもなく、逆に、第1〜第3の減衰器のそれぞれに並列する配線L1、L2、L3を通して信号を送ることで、信号を減衰させない使い方もある。
【0061】
その場合は、スイッチSW1およびSW2を、それぞれ配線L1の両端のノードN1、N4側に切り替えるように制御し、スイッチSW3およびSW4を、それぞれ配線L2の両端のノードN11、N14側に切り替えるように制御し、スイッチSW5およびSW6を、それぞれ配線L3の両端のノードN21、N24側に切り替えるように制御する。なお、スイッチSW1〜SW6の制御は、記憶部19に保存された、振幅調整器20および21での振幅調整値を実現するように制御部18が行う。
【0062】
なお、振幅調整器20および21は減衰器以外で構成しても良いが、減衰器を用いると、比較的簡単に構成することができる。
【0063】
次に、記憶部19に保存された、相関係数と移相器13および14での位相調整値、振幅調整器20および21での振幅調整値との対応を表すデータの一例を図6に示す。
【0064】
図6においては、複数の相関値(相関係数)のそれぞれについて、アンテナAT11およびAT12にそれぞれ繋がる、振幅調整器および移相器での調整値の組み合わせを示している。
【0065】
例えば、基準として設定されている相関値0.40から相関値を調整する場合、振幅調整器20での減衰を3.8dBとし、移相器13での位相は0degとし、振幅調整器21での減衰を0dBとし、移相器14での位相は0degとすることで相関値を0.33に調整できることを示している。
【0066】
なお、上記においては、記憶部19に保存された、相関係数と移相器13および14での位相調整値、振幅調整器20および21での振幅調整値との対応を表すデータを制御部18が用いる構成を示したが、これらのデータは、記憶部19が状況に応じて算出する構成としても良い。すなわち、制御部19は、CPU(Central Processing Unit)などで実現されるものであり、当該CPUにおいてシミュレーションを行うことで、上記データを算出することができる。
【0067】
次に、図7に示すフローチャートを用いて実施の形態1に係る基地局BSの動作について説明する。
【0068】
移相器13および14を介してそれぞれRF部11および12に入力された受信信号は、RF部11および12の受信部において、無線信号からベースバンド周波数へ変換され、FFT処理などを行った後、それぞれチャネル推定部15および16に入力される。そして、チャネル推定部15および16においてパイロット信号からチャネル応答h11、h12、h21、h22(図3)を推定(伝送路のチャネル特性を取得)する(ステップS1)。
【0069】
チャネル推定部15の出力は、相関演算部17に与えられ、チャネル間の相関係数が算出される(ステップS2)。
【0070】
得られたチャネル間の相関係数は制御部18に与えられ、制御部18において、所定のしきい値(例えば0.3)との比較を行い(ステップS3)、しきい値を超える場合は記憶部19に保存された、相関係数と振幅調整器および移相器での調整値の組み合わせとの対応を表すデータに基づいて制御部18が移相器13および14、振幅調整器20および21を制御する(ステップS4)。
【0071】
移相器13および14、振幅調整器20および21を制御した後は、次の信号の受信を待ってステップS1以下の動作を繰り返し、受信信号の相関係数が小さくなっているかを確認する。
【0072】
一方、しきい値以下の場合は位相および振幅の調整はせず、一旦処理を終了し、次の信号の受信を待つ。
【0073】
以上のように、受信信号におけるチャネル間の相関係数が大きい場合は、移相器13および14、振幅調整器20および21を制御することで送信信号の相関係数を小さくし、伝送容量を大きくすることで、通信品質の向上を図ることができる。
【0074】
なお、チャネル推定部15の出力は、アレイ処理部10にも与えられ、アレイ処理部10内のウェイト生成部103(図3)において、推定されたチャネル応答h11、h12、h21、h22を用いてウェイトが生成される。なお、ウェイトの生成には、例えば最大比合成(Maximum Ratio Combining:MRC)や最小二乗誤差(Minimum Mean Square Error:MMSE)が利用される。
【0075】
<変形例>
以上説明した実施の形態1に係る基地局BSにおいては、移相器13および14、振幅調整器20および21を制御することで、送信信号の位相および振幅の調整を行う構成について示したが、振幅調整器20および21の代わりに、アンテナからのビームの指向性を利用して、ビームの方向を変えることで、振幅を調整しても良い。
【0076】
図8には、ビームの方向を変えることで振幅を調整する基地局BS1の構成を示す。なお、図8において図4に示した基地局BSと同一の構成については同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0077】
図8に示す基地局BS1においては、RF部11および12から移相器13および14に向けての信号経路には振幅調整器を設けず(信号ラインは便宜的に送信、受信で共通化して示している)、制御部18は、移相器13および14による位相の調整を制御するとともに、アンテナAT11およびAT12におけるビーム制御を行う構成となっている。
【0078】
ここでアンテナAT11およびAT12は、例えば、マイクロストリップアンテナ(MSA)をアンテナ素子として用いる指向性可変アンテナを用いることが考えられる。このアンテナは、主給電MSA素子の周囲に2次元的に無給電MSA素子を配置してアダプティブアレイを構成している。無給電MSA素子には可変リアクタンス素子が接続され、そのリアクタンス成分を制御することで主給電MSA素子の指向性を制御できる構成となっている。可変リアクタンス素子に与える電圧を調整することで主給電MSA素子の指向性を制御してビーム制御を行うので、可変リアクタンス素子は指向性制御素子と言うことができるとともに、当該指向性制御素子は実質的に振幅調整手段と言うことができる。
【0079】
ビームの方向を変えることで、送信信号の振幅を変えることと等価となり、さらに移相器13および14により位相も変えることで、相関係数を変更することができる。図9には、ビーム角度(deg)とビームゲイン(dB)の関係を示す。
【0080】
図9においては、ビーム角度が0度の場合にビームゲインが最大となる場合を示しており、ビーム角度を正負どちらの方向に変えてもビームゲインが小さくなることを示している。ビームゲインが小さくなると、受信側での受信電力は小さくなるが、移相器13および14により位相も変えることで相関係数を小さくできれば、伝送容量が大きくなって、通信品質の向上を図ることができる。
【0081】
図8に示す基地局BS1においては、記憶部19には、相関係数と移相器13および14での位相調整値、および間接的振幅調整値との対応を表すデータが記憶されており、間接的振幅調整値に基づいて指向性可変アンテナの可変リアクタンス素子に与える電圧を調整する。
【0082】
ここで、間接的振幅調整値は、所望の相関係数ごとに、予め位相調整値と合わせてシミュレーションで求めておく。そして、図9に示したような、ビーム角度(deg)とビームゲイン(dB)の関係を予め測定するとともに、ビームゲインに対応する送信信号の振幅を算出し、所望の振幅を得るために必要な可変リアクタンス素子に与える電圧を求めて、間接的振幅調整値と関連付ける。なお、間接的振幅調整値としたのは、直接に送信信号の振幅を変える値ではないためである。
【0083】
次に、図10に示すフローチャートを用いて基地局BS1の動作について説明する。移相器13および14を介してそれぞれRF部11および12に入力された受信信号は、RF部11および12の受信部において、無線信号からベースバンド周波数へ変換され、FFT処理などを行った後、それぞれチャネル推定部15および16に入力される。そして、チャネル推定部15および16においてパイロット信号からチャネル応答h11、h12、h21、h22(図3)を推定(伝送路のチャネル特性を取得)する(ステップS1)。
【0084】
チャネル推定部15の出力は、相関演算部17に与えられ、チャネル間の相関係数が算出される(ステップS12)。
【0085】
得られたチャネル間の相関係数は制御部18に与えられ、制御部18において、所定のしきい値(例えば0.3)との比較を行い(ステップS13)、しきい値を超える場合は記憶部19に保存された、相関係数と移相器での調整値および間接的振幅調整値の組み合わせとの対応を表すデータに基づいて制御部18が移相器13および14を制御し(ステップS14)、また、アンテナAT11およびAT12のビーム角度を変更する(ステップS15)。
【0086】
移相器13および14、アンテナAT11およびAT12を制御した後は、次の信号の受信を待ってステップS11以下の動作を繰り返し、受信信号の相関係数が小さくなっているかを確認する。
【0087】
一方、しきい値以下の場合は位相および振幅の調整はせず、一旦処理を終了し、次の信号の受信を待つ。
【0088】
以上のように、受信信号におけるチャネル間の相関係数が大きい場合は、移相器13および14、アンテナAT11およびAT12のビーム制御を行うことで送信信号の相関係数を小さくし、伝送容量を大きくすることで、通信品質の向上を図ることができる。
【0089】
なお、アンテナAT11およびAT12のビーム角度の変更は、間接的振幅調整値と関連付けた可変リアクタンス素子に与える電圧により行うものとして説明したが、間接的振幅調整値と可変リアクタンス素子に与える電圧との関連付けが難しい場合は、移相器13および14での位相調整値は何れかに固定し、可変リアクタンス素子に与える電圧を所定値に変更するものとする。そして、次の信号の受信を待ってステップS11以下の動作を繰り返し、受信信号の相関係数が小さくなっていない場合は、再び電圧を所定値分だけ変更することで、試行錯誤的に送信信号の相関係数を小さくする作業を行うようにしても良い。
【0090】
<実施の形態2>
以上説明した実施の形態1およびその変形例においては、通信端末MSから受信した信号を受け、内部のチャネル推定部15および16で推定した伝送路のチャネル特性に基づいてチャネル間の相関係数を算出し、チャネル間の相関係数ができるだけ小さくなるように移相器13および14による位相調整および、振幅調整器20および21による振幅調整またはアンテナAT11およびAT12による振幅調整を行う構成を採っていた。しかし、通信端末MSからの送信信号について相関係数を求めても、当該相関係数は、受信信号に対する相関係数であり、基地局BSの受信部R11や受信部R12(図3)を介して得られた相関係数である。
【0091】
すなわち、図3に示すように、アンテナAT11では、受信時にはチャネルCh11、Ch12で送られて来た信号は経路r11を通り、アンテナAT12では、受信時にはチャネルCh21、Ch22で送られて来た信号は経路r12を通るので、受信回路により振幅や位相変化量が異なる。
【0092】
従って、伝送路のチャネル特性に基づいた相関係数では、信号経路による影響は反映されておらず、また、送信時には、アンテナAT11には経路t11を通った信号が与えられ、アンテナAT12には経路t12を通った信号が与えられるので、アンテナAT11およびAT12から送信される信号の相関係数が、記憶部19に記憶されたデータの相関係数と同じになっているかは保証の限りではない。
【0093】
そこで、本発明に係る実施の形態2においては、通信端末側で受信信号に基づいてチャネル間の相関係数を算出し、得られた相関係数の情報を基地局に与え、基地局内の移相器および振幅調整器を制御して相関係数を小さくする構成について説明する。
【0094】
図11には、本発明に係る無線通信システム100として、基地局BS10および通信端末MS10の構成を示す。
【0095】
図11に示す通信端末MS10は、アンテナAT1およびAT2のそれぞれにRF部1および2が接続され、RF部1および2の出力は、それぞれチャネル推定部5および6に入力される構成となっている。そして、チャネル推定部5および6の出力は相関演算部7に与えられ、チャネル間の相関係数が算出され、その結果はRF部1および2に与えられて、アンテナAT1およびAT2を介して相関係数情報として送信される構成となっている。なお、図11に示す通信端末MS10では、発明と関係のある構成のみを示し、他の構成については省略している。
【0096】
また、図11に示す基地局BS10では、RF部11および12の出力はアレイ処理部10に直接与えられ、チャネル推定部は有さない構成となっている。そして、アンテナAT11およびAT12を介して通信端末MS10から受信した受信信号は、アレイ処理部10で処理され、その中に含まれる相関係数情報が相関係数抽出部17Aによって抽出される構成となっている。なお、その他、図4に示した基地局BSと同一の構成については同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0097】
相関係数抽出部17Aで抽出された相関係数は制御部18に与えられ、当該相関係数が所定のしきい値を超えるか否かの判定がなされる。そして、所定のしきい値を超える場合には、予めシミュレーション等を用いて準備され、所定の記憶部19に保存された、相関係数と移相器13および14での位相調整値、振幅調整器20および21での振幅調整値との対応を表すデータに基づいて移相器13および14を調整することで、相関係数を小さくする制御を行う。この動作は、図4に示した基地局BSと同一である。
【0098】
ここで、基地局BS10では、通信端末MS10での受信信号に基づいて通信端末MS10で算出した相関係数を用いてしきい値との比較を行う。すなわち、基地局BS10から送信された信号の相関係数を用いてしきい値との比較を行うので、実際に基地局BS10のアンテナAT11およびAT12から送信された信号の相関係数の大小を判断することとなり、送信系統と受信系統の違いに起因する影響を排除した相関係数に基づいて、新たな相関係数の制御を行うことが可能となる。
【0099】
次に、図12に示すフローチャートを用いて実施の形態2に係る基地局BS10の動作について説明する。
【0100】
基地局BS10では、アンテナAT11およびAT12を介して通信端末MS10からの信号を受信することで、そこに含まれる相関係数情報を取得する(ステップS21)。
【0101】
移相器13および14を介してそれぞれRF部11および12に入力された受信信号は、RF部11および12の受信部において、無線信号からベースバンド周波数へ変換され、FFT処理などを行った後アレイ処理部10に与えられ、受信信号の抽出が行われる。抽出された受信信号は、図示しない復調部に与えられるとともに、相関係数抽出部17Aにも与えられて相関係数が抽出される(ステップS22)。
【0102】
通信端末MS10で算出した相関係数は制御部18に与えられ、制御部18において、所定のしきい値(例えば0.3)との比較を行い(ステップS23)、しきい値を超える場合は記憶部19に保存された、相関係数と振幅調整器および移相器での調整値の組み合わせとの対応を表すデータに基づいて制御部18が移相器13および14、振幅調整器20および21を制御する(ステップS24)。
【0103】
移相器13および14、振幅調整器20および21を制御した後は、次の信号の受信を待ってステップS21以下の動作を繰り返し、受信信号の相関係数が小さくなっているかを確認する。
【0104】
一方、しきい値以下の場合は位相および振幅の調整はせず、一旦処理を終了し、次の信号の受信を待つ。
【0105】
以上のように、受信信号におけるチャネル間の相関係数が大きい場合は、移相器13および14、振幅調整器20および21を制御することで送信信号の相関係数を小さくし、伝送容量を大きくすることで、通信品質の向上を図ることができる。
【0106】
<変形例>
以上説明した実施の形態2に係る無線通信システム100の基地局BS10においては、移相器13および14、振幅調整器20および21を制御することで、送信信号の位相および振幅の調整を行う構成について示したが、振幅調整器20および21による振幅調整の代わりに、アンテナからのビームの指向性を利用して、ビームの方向を変えることで、振幅を調整しても良い。
【0107】
図13には、ビームの方向を変えることで振幅を調整する基地局BS20を有した無線通信システム100Aの構成を示す。なお、図13に示す基地局BS20において、図11に示した基地局BS10と同一の構成については同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0108】
図13に示す基地局BS20においては、RF部11および12から移相器13および14に向けての信号経路には振幅調整器を設けず(信号ラインは便宜的に送信、受信で共通化して示している)、制御部18は、移相器13および14による位相の調整を制御するとともに、アンテナAT11およびAT12におけるビーム制御を行う構成となっている。
【0109】
なお、アンテナAT11およびAT12におけるビーム制御は、図8を用いて説明した基地局BS1と同様に、例えば、マイクロストリップアンテナ(MSA)をアンテナ素子として用いる指向性可変アンテナを用いることが考えられる。ビームの方向を変えることで、送信信号の振幅を変えることと等価となり、さらに移相器13および14により位相も変えることで、相関係数を変更することができる。
【0110】
図13に示す基地局BS20においては、記憶部19には、相関係数と移相器13および14での位相調整値、および間接的振幅調整値との対応を表すデータが記憶されており、間接的振幅調整値に基づいて指向性可変アンテナの可変リアクタンス素子に与える電圧を調整する。
【0111】
次に、図14に示すフローチャートを用いて基地局BS20の動作について説明する。基地局BS20では、アンテナAT11およびAT12を介して通信端末MS10からの信号を受信することで、そこに含まれる相関係数情報を取得する(ステップS31)。
【0112】
移相器13および14を介してそれぞれRF部11および12に入力された受信信号は、RF部11および12の受信部において、無線信号からベースバンド周波数へ変換され、FFT処理などを行った後アレイ処理部10に与えられ、受信信号の抽出が行われる。抽出された受信信号は、図示しない復調部に与えられるとともに、相関係数抽出部17Aにも与えられて相関係数が抽出される(ステップS32)。
【0113】
通信端末MS10で算出した相関係数は制御部18に与えられ、制御部18において、所定のしきい値(例えば0.3)との比較を行い(ステップS33)、しきい値を超える場合は記憶部19に保存された、相関係数と移相器での調整値および間接的振幅調整値の組み合わせとの対応を表すデータに基づいて制御部18が移相器13および14を制御し(ステップS34)、また、アンテナAT11およびAT12のビーム角度を変更する(ステップS35)。
【0114】
移相器13および14、アンテナAT11およびAT12を制御した後は、次の信号の受信を待ってステップS31以下の動作を繰り返し、受信信号の相関係数が小さくなっているかを確認する。
【0115】
一方、しきい値以下の場合は位相および振幅の調整はせず、一旦処理を終了し、次の信号の受信を待つ。
【0116】
以上のように、受信信号におけるチャネル間の相関係数が大きい場合は、移相器13および14、アンテナAT11およびAT12のビーム制御を行うことで送信信号の相関係数を小さくし、伝送容量を大きくすることで、通信品質の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0117】
AT1,AT2 アンテナ
13,14 移相器
15,16 チャネル推定部
17 相関演算部
18 制御部
20,21 振幅調整器
MS,MS10 通信端末
BS,BS1,BS10 基地局
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置および無線通信システムに関し、特に、アダプティブアレイ通信またはMIMO(Multiple Input Multiple Output)通信などのマルチアンテナ技術が用いられる無線通信装置および無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線通信システムでは、有限な周波数帯域を効率的に利用するために、無線信号の送信側または受信側の少なくとも一方が複数のアンテナを用いるマルチアンテナ技術が利用されている。マルチアンテナ技術としては、アダプティブアレイ通信やMIMO通信が知られている。
【0003】
アダプティブアレイ通信では、アレイアンテナの指向性制御として、例えば、最小平均二乗誤差(MMSE;Minimum Mean-Squared Error)に基づいた適応アルゴリズム(RLSアルゴリズム、SMIアルゴリズム、LMSアルゴリズム等)を用い、移動局は、基地局から受信した受信信号について参照信号との二乗誤差を最小化するように、アレイアンテナの指向性パターンを形成するための各アンテナ素子の重み係数を適応アルゴリズムにより計算して求める。これにより、干渉波の到来方向にヌル点を向かせ、さらに所望波の到来方向にメインビームを向かせるようにアレイアンテナの指向性を制御している。
【0004】
MIMO通信も複数のアンテナを用いた無線通信技術であり、移動局と基地局の双方が複数のアンテナ素子からなるアレイアンテナを備え、移動局と基地局の間で、複数のパスを介して空間多重接続を行う。これにより、通信速度を上げることができる。例えば、4つのアンテナ素子からなるアンテナを移動局と基地局の双方が備えている場合、移動局と基地局の間で4つのパスを介して空間多重接続を行うことにより、1つのパスのみで接続するよりも4倍の通信速度を得ることが可能となる。
【0005】
アダプティブアレイ通信では、希望波と非希望波との相関係数が小さい方が通信品質が良好となり、MIMO通信では伝送路間の相関係数が小さい方が通信品質が良好となることが知られているが、相関係数は通信環境の影響を受け、相関係数が小さい場合もあれば、大きい場合もある。
【0006】
相関係数を小さくするには、例えば2つの伝送路があった場合、一方の伝送路の位相のみを変えることができれば、伝送路間の相関係数を小さくして伝送容量を大きくできる。このような方法については、例えば特許文献1に開示がある。
【0007】
特許文献1では、一方の伝送路中に空気と異なる比誘電率の誘電体板を配置して移相器とし、移相器を通過する電波の位相を変える構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−41083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した特許文献1の構成では、所定の伝送路の位相を変更するために、通信装置の外部に移相器を配置する必要があり、装置構成が大型化するとともに、伝送路が増えた場合には対応が難しいという問題があった。
【0010】
本発明は上記のような問題点を解消するためになされたもので、装置構成を大型化することなく、通信品質を良好に保つ無線通信装置および無線通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明に係る無線通信装置は、複数のアンテナと、前記複数のアンテナにそれぞれ対応して設けられ、信号の振幅を調整する振幅調整手段と、前記複数のアンテナにそれぞれ接続され、信号の位相を調整する移相調整手段と、前記振幅調整手段および前記移相調整手段を制御し、前記複数のアンテナから送信される送信信号の振幅および位相を調整して、前記送信信号の相関係数を制御する制御手段と、を備えている。
【0012】
本発明に係る無線通信装置の一態様は、前記複数のアンテナにそれぞれ対応して設けられ、前記複数のアンテナで受信される受信信号に基づいて各アンテナにおけるチャネル推定を行うチャネル推定手段と、前記チャネル推定手段でのチャネル推定結果に基づいて、前記複数のアンテナでそれぞれ受信される受信信号の相関係数を算出する相関係数算出手段と、を備え、前記制御手段は、前記相関係数算出手段で算出された前記相関係数が所定値を超える場合に、前記振幅調整手段および前記移相調整手段を制御する。
【0013】
本発明に係る無線通信装置の一態様は、前記移相調整手段での位相調整値および前記振幅調整手段での振幅調整値と、前記送信信号の相関係数との対応を表すデータを記憶する記憶手段をさらに備え、前記制御手段は、前記記憶手段から読み出した前記データに基づいて、前記振幅調整手段および前記移相調整手段を制御する。
【0014】
本発明に係る無線通信装置の一態様は、前記振幅調整手段が、前記移相調整手段に入力される前の前記送信信号を減衰させるアッテネータである。
【0015】
本発明に係る無線通信装置の一態様は、前記複数のアンテナが、指向性可変アンテナであって、前記振幅調整手段は、前記指向性可変アンテナの指向性を制御する指向性制御素子であって、前記指向性可変アンテナから送信される前記送信信号の指向性を変えることで、前記送信信号の振幅を調整する。
【0016】
本発明に係る無線通信装置の一態様は、前記複数のアンテナが、前記送信信号を受信信号として受けた他の無線通信装置で算出された、前記受信信号の相関係数の情報を含む信号を受け、前記制御手段は、前記受信信号の相関係数が所定値を超える場合に、前記振幅調整手段および前記移相調整手段を制御する。
【0017】
本発明に係る無線通信システムは、複数の第1のアンテナと、前記複数の第1のアンテナにそれぞれ対応して設けられ、信号の振幅を調整する振幅調整手段と、前記複数のアンテナにそれぞれ接続され、信号の位相を調整する移相調整手段と、前記振幅調整手段および前記移相調整手段を制御し、前記複数の第1のアンテナから送信される送信信号の振幅および位相を調整して、前記送信信号の相関係数を制御する制御手段とを備えた第1の無線通信装置と、複数の第2のアンテナと、前記複数の第2のアンテナにそれぞれ対応して設けられ、前記複数の第2のアンテナで受信される受信信号に基づいて各アンテナにおけるチャネル推定を行うチャネル推定手段と、前記チャネル推定手段でのチャネル推定結果に基づいて、前記複数の第2アンテナでそれぞれ受信される受信信号の相関係数を算出する相関係数算出手段とを備えた第2の無線通信装置と、を有した無線通信システムであって、前記第2の無線通信装置は、算出した前記受信信号の相関係数の情報を前記第1の無線通信装置に送信し、前記第1の無線通信装置の前記制御手段は、前記受信信号の相関係数が所定値を超える場合に、前記振幅調整手段および前記移相調整手段を制御する。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る無線通信装置によれば、送信信号の振幅および位相を調整して、送信信号の相関係数を制御することで通信品質を良好に保つことができる。また、移相調整手段および振幅調整手段を内部に備えることで、装置構成が大型化することを防止できるとともに、伝送路が増えた場合にも対応できる。
【0019】
本発明に係る無線通信システムによれば、第2の無線通信装置が算出した受信信号の相関係数の情報を第1の無線通信装置に送信し、第1の無線通信装置の制御手段では、受信信号の相関係数が所定値を超える場合に、振幅調整手段および移相調整手段を制御するので、第1の無線通信装置の複数の第1のアンテナから送信された信号の相関係数の大小を判断することとなり、送信系統と受信系統の違いに起因する影響を排除した相関係数に基づいて、新たな相関係数の制御を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】MIMO通信システムの概念を説明する図である。
【図2】送信された信号のD/U比と振幅誤差および位相誤差との関係を示す図である。
【図3】MIMO通信システムをさらに詳細に示したブロック図である。
【図4】本発明に係る実施の形態1の基地局の構成を示すブロック図である。
【図5】振幅調整器の構成例を示す図である。
【図6】相関係数と位相調整値、振幅調整値との対応を表す図である。
【図7】本発明に係る実施の形態1の基地局の動作を説明するフローチャートである。
【図8】本発明に係る実施の形態1の基地局の変形例の構成を示すブロック図である。
【図9】ビーム角度とビームゲインの関係を示す図である。
【図10】本発明に係る実施の形態1の基地局の変形例の動作を説明するフローチャートである。
【図11】本発明に係る実施の形態2の無線通信システムの構成を示すブロック図である。
【図12】本発明に係る実施の形態2の無線通信システムの動作を説明するフローチャートである。
【図13】本発明に係る実施の形態2の無線通信システムの変形例の構成を示すブロック図である。
【図14】本発明に係る実施の形態2の無線通信システムの変形例の動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<実施の形態1>
本発明に係る無線通信装置は、アダプティブアレイ通信やMIMO通信など複数のアンテナを用いた通信に適用可能であるが、以下においてはMIMO通信への適用例について説明する。
【0022】
MIMO通信は、独立した空間伝送路(以下「チャネル」と呼称)を複数用いることで、同時に同じ帯域で複数のデータストリームを伝送する技術である。なお、MIMOはIEEE802.11nやIEEE802.16eなどに規格として採用されている。また、LTE(Long Term Evolution)などの次世代の広帯域無線通信装置では2多重を超える多重度のMIMOも計画されている。
【0023】
MIMO通信では、送受信側の双方に複数のアンテナ素子を配置し、送受信側双方のアンテナ素子間隔を複数のチャネルが互いに独立であるとみなせる程度にまで広げている。これは、チャネルが互いに独立であることによって、各チャネルの最大伝送速度の総和までMIMO伝送の伝送速度を向上させるためである。
【0024】
チャネルが互いに独立かどうかを示す指標として空間相関があり、チャネルが互いに独立であればあるほど空間相関は小さい値になる。
【0025】
ここで、2多重で、送信側のアンテナ素子および受信側のアンテナ素子のそれぞれが2本で構成される(2×2システム)でのMIMO通信システムを図1に示す。
【0026】
図1においては、通信端末MSのアンテナAT1およびAT2と、基地局のアンテナAT11およびAT12との間で通信波の授受を行う。なお、本発明は上述した2×2システムへの適用に限定されるものではなく、2×4システムなど他のシステムであっても適用可能である。
【0027】
図1では、通信端末MSのアンテナAT1と基地局のアンテナAT11との間のチャネルCh11のチャネル応答をh11、通信端末MSのアンテナAT1と基地局のアンテナAT12との間のチャネルCh21のチャネル応答をh21、通信端末MSのアンテナAT2と基地局のアンテナAT11との間のチャネルCh12のチャネルを応答をh12、通信端末MSのアンテナAT2と基地局のアンテナAT12との間のチャネルCh22のチャネル応答をh22として表している。チャネル応答h11、h12、h21、h22のそれぞれは、振幅および位相を含んだ複素数である。
【0028】
ここで、チャネル応答ベクトルh1およびh2をそれぞれ下記の数式(1)および(2)で表すと、空間相関ρ12は、下記の数式(3)で表される。
【0029】
【数1】
【0030】
【数2】
【0031】
【数3】
【0032】
上記数式(1)〜(3)において、添え字Tは転置を示し、添え字Hは複素共役転置を示し、添え字*は複素共役を示す。
【0033】
また、MIMO通信において、Sergio Brabarossa著の“Multianrenna Wireliss Communication Systems.(Artech House)”によれば、送信アンテナがnT本、受信アンテナがnR本である場合のMIMOチャネル容量(MIMO伝送容量)CMIMOは、下記の数式(4)で表される。
【0034】
【数4】
【0035】
数式(4)において、InRはサイズがnRの単位行列であり、SNRは信号対雑音比であり、Hは下記の数式(5)で表されるチャネル行列である。
【0036】
【数5】
【0037】
数式(4)で示されるように、MIMOチャネル容量は、受信電力により定まるSNRと、Hで示されるチャネル間の相関係数により決まることが知られている。すなわち、受信電力が大きく相関係数が小さいことが特性向上につながる。
【0038】
また、アダプティブアレイ通信の場合は、相関係数により送信された信号のD/U比(希望波/非希望波)が大きく変わることが分かっている。図2は、送信された信号のD/U比が17dBを下回る直前の振幅誤差および位相誤差を示したグラフであり、横軸に位相(deg)、縦軸に振幅(dB)を示している。
【0039】
図2においては、相関係数が0.35、0.40および0.90のそれぞれの場合について位相と振幅の関係について示しており、例えば相関係数が0.4の場合は、位相が1degずれた場合、振幅は3.4dBまでずれていてもD/U比は17dBであることが判るが、相関係数が0.9の場合は、位相が1degずれた場合、振幅は1.6dBまでのずれしか許容されず、これを超えるとD/U比が17dBを下回ることとなる。
【0040】
以上のように、MIMO通信もアダプティブアレイ通信も、相関係数を小さくすることが通信品質の向上に繋がるが、相関係数は通信環境の影響を受けるので、これまでは、通信環境が改善されるのを待つか、特許文献1のように、通信装置の外部の伝送路中に移相器を配置して、特定の伝送路の位相を変えるなどの構成を採るしかなかった。
【0041】
しかし、本発明に係る無線通信装置では、相関係数が低くなるように位相および振幅を調整することで、通信品質の向上を図るものである。
【0042】
<装置構成>
図3は、図1に示したMIMO通信システムをさらに詳細に示したブロック図であり、アンテナAT1とAT2との間のチャネルCh11、Ch12、Ch21、Ch22に加えて、通信端末MSおよび基地局BS内での信号経路も示している。
【0043】
すなわち、通信端末MSにおいては、アンテナAT1およびAT2にそれぞれ接続されるRF(Radio Frequency)部1および2を備え、RF部1は送信部T1および受信部R1を有し、RF部2は送信部T2および受信部R2を有している。
【0044】
従って、アンテナAT1から送信される信号は、送信部T1から経路t1を介してアンテナAT1に与えられ、アンテナAT1で受信した信号は、経路r1を介して受信部R1に与えられる。
【0045】
同様に、アンテナAT2から送信される信号は、送信部T2から経路t2を介してアンテナAT2に与えられ、アンテナAT2で受信した信号は、経路r2を介して受信部R2に与えられる。
【0046】
また、基地局BSにおいては、アンテナAT11およびAT12にそれぞれ接続されるRF部11および12を備え、RF部11は送信部T11および受信部R11を有し、RF部12は送信部T12および受信部R12を有している。
【0047】
従って、アンテナAT11から送信される信号は、送信部T11を含む経路t11を介してアンテナAT11に与えられ、アンテナAT11で受信した信号は、受信部R11を含む経路r11を介してアレイ処理部10に与えられる。
【0048】
同様に、アンテナAT12から送信される信号は、送信部T12を含む経路t12を介してアンテナAT12に与えられ、アンテナAT12で受信した信号は、受信部R12を含む経路r12を介してアレイ処理部10に与えられる。
【0049】
従って、例えばアンテナAT1から送信される信号は、伝送経路によってチャネルCh11およびCh21に分かれ、チャネルCh11で送られた信号は経路r11を通り、チャネルCh21で送られた信号は経路r12を通ることとなる。
【0050】
このように、伝送経路が変わることで、同じ信号であっても位相および振幅が変わり、さらに、機器内部での信号経路によっても位相および振幅が変わることとなる。
【0051】
基地局BSのRF部11および12の受信部においては、受信した無線信号からベースバンド周波数への変換などを行う。そして、FFT(Fast Fourier Transform)処理などを行った後、アレイ処理部10内の受信アレイ処理部101に与えられ、ウェイト生成部103で生成されたウェイトを用いて重み付けを行うことによって受信信号の抽出を行う。その後、抽出された受信信号は、図示しない復調部に与えられて復調される。
【0052】
一方、アレイ処理部10内の送信アレイ処理部102では、図示されない変調部から与えられる送信信号に対してウェイト生成部103で生成されたウェイトを用いて重み付けを行った後、IFFT(Inverse FFT)処理を行う。その後、RF部11および12の送信部において、ベースバンド周波数から無線信号へ変換され、アンテナAT11およびAT12を介して送信される。
【0053】
上述した基地局BSに対して本発明に係る実施の形態1を適用した構成を図4に示す。図4に示す基地局BSにおいては、アンテナAT11およびAT12のそれぞれに移相器13および14が接続され、アンテナAT11およびAT12で受信した信号は、それぞれ移相器13および14を介してRF部11および12に接続される構成となっている。
【0054】
また、RF部11および12から移相器13および14に向けての信号経路には、それぞれ振幅調整器20および21(振幅調整手段)が介挿され、振幅調整器20および21の出力は、それぞれ移相器13および14からアンテナAT11およびAT12を介して送信される構成となっている。
【0055】
そして、RF部11および12の出力は、それぞれチャネル推定部15および16(チャネル推定手段)に入力される。チャネル推定部15および16の出力は、相関演算部17(相関係数算出手段)に与えられ、チャネル間の相関係数が算出される。
【0056】
得られたチャネル間の相関係数は制御部18(制御手段)に与えられ、当該相関係数が所定のしきい値を超えるか否かの判定がなされる。そして、所定のしきい値を超える場合には、予めシミュレーション等を用いて準備され、所定の記憶部19(記憶手段)に保存された、相関係数と移相器13および14での位相調整値、振幅調整器20および21での振幅調整値との対応を表すデータに基づいて移相器13および14を調整することで、相関係数を小さくする制御を行う。
【0057】
すなわち、数式(4)に示したように、伝送容量はチャネル行列Hに依存するので、伝送容量が最大となるように移相器13および14、振幅調整器20および21を用いて各チャネルの位相および振幅を調整する。このとき、伝送容量を検出するのではなく、チャネル間の相関係数を算出し、相関係数ができるだけ小さくなるように各チャネルの位相および振幅を調整することで、結果的に伝送容量を最大にすることができる。
【0058】
ここで、図5を用いて振幅調整器20および21の構成の一例について説明する。図5に示すように、振幅調整器20および21は減衰器(アッテネータ)で構成され、抵抗R1と、抵抗R1の両端と接地電位との間に並列にそれぞれ接続された抵抗R2およびR3とで第1の減衰器が構成され、抵抗R11と、抵抗R11の両端と接地電位との間に並列にそれぞれ接続された抵抗R12およびR13とで第2の減衰器が構成され、抵抗R21と、抵抗R21の両端と接地電位との間に並列にそれぞれ接続された抵抗R22およびR23とで第3の減衰器が構成されている。そして、これらの減衰器の何れを使用するかは、スイッチSW1、SW2、SW3、SW4、SW5およびSW6の制御により決定される。
【0059】
すなわち、第1の減衰器を使用する場合は、スイッチSW1およびSW2を、それぞれ抵抗R1の両端のノードN2、N3側に切り替えるように制御し、抵抗R1による減衰で信号の振幅を下げる。第2の減衰器を使用する場合は、スイッチSW3およびSW4を、それぞれ抵抗R11の両端のノードN12、N13側に切り替えるように制御し、抵抗R11による減衰で信号の振幅を下げる。また、第3の減衰器を使用する場合は、スイッチSW5およびSW6を、それぞれ抵抗R21の両端のノードN22、N23側に切り替えるように制御することで、抵抗R21による減衰で信号の振幅を下げる。
【0060】
もちろん、何れかの2つの減衰器を組み合わせて使用しても良いし、全ての減衰器を使用しても良いことは言うまでもなく、逆に、第1〜第3の減衰器のそれぞれに並列する配線L1、L2、L3を通して信号を送ることで、信号を減衰させない使い方もある。
【0061】
その場合は、スイッチSW1およびSW2を、それぞれ配線L1の両端のノードN1、N4側に切り替えるように制御し、スイッチSW3およびSW4を、それぞれ配線L2の両端のノードN11、N14側に切り替えるように制御し、スイッチSW5およびSW6を、それぞれ配線L3の両端のノードN21、N24側に切り替えるように制御する。なお、スイッチSW1〜SW6の制御は、記憶部19に保存された、振幅調整器20および21での振幅調整値を実現するように制御部18が行う。
【0062】
なお、振幅調整器20および21は減衰器以外で構成しても良いが、減衰器を用いると、比較的簡単に構成することができる。
【0063】
次に、記憶部19に保存された、相関係数と移相器13および14での位相調整値、振幅調整器20および21での振幅調整値との対応を表すデータの一例を図6に示す。
【0064】
図6においては、複数の相関値(相関係数)のそれぞれについて、アンテナAT11およびAT12にそれぞれ繋がる、振幅調整器および移相器での調整値の組み合わせを示している。
【0065】
例えば、基準として設定されている相関値0.40から相関値を調整する場合、振幅調整器20での減衰を3.8dBとし、移相器13での位相は0degとし、振幅調整器21での減衰を0dBとし、移相器14での位相は0degとすることで相関値を0.33に調整できることを示している。
【0066】
なお、上記においては、記憶部19に保存された、相関係数と移相器13および14での位相調整値、振幅調整器20および21での振幅調整値との対応を表すデータを制御部18が用いる構成を示したが、これらのデータは、記憶部19が状況に応じて算出する構成としても良い。すなわち、制御部19は、CPU(Central Processing Unit)などで実現されるものであり、当該CPUにおいてシミュレーションを行うことで、上記データを算出することができる。
【0067】
次に、図7に示すフローチャートを用いて実施の形態1に係る基地局BSの動作について説明する。
【0068】
移相器13および14を介してそれぞれRF部11および12に入力された受信信号は、RF部11および12の受信部において、無線信号からベースバンド周波数へ変換され、FFT処理などを行った後、それぞれチャネル推定部15および16に入力される。そして、チャネル推定部15および16においてパイロット信号からチャネル応答h11、h12、h21、h22(図3)を推定(伝送路のチャネル特性を取得)する(ステップS1)。
【0069】
チャネル推定部15の出力は、相関演算部17に与えられ、チャネル間の相関係数が算出される(ステップS2)。
【0070】
得られたチャネル間の相関係数は制御部18に与えられ、制御部18において、所定のしきい値(例えば0.3)との比較を行い(ステップS3)、しきい値を超える場合は記憶部19に保存された、相関係数と振幅調整器および移相器での調整値の組み合わせとの対応を表すデータに基づいて制御部18が移相器13および14、振幅調整器20および21を制御する(ステップS4)。
【0071】
移相器13および14、振幅調整器20および21を制御した後は、次の信号の受信を待ってステップS1以下の動作を繰り返し、受信信号の相関係数が小さくなっているかを確認する。
【0072】
一方、しきい値以下の場合は位相および振幅の調整はせず、一旦処理を終了し、次の信号の受信を待つ。
【0073】
以上のように、受信信号におけるチャネル間の相関係数が大きい場合は、移相器13および14、振幅調整器20および21を制御することで送信信号の相関係数を小さくし、伝送容量を大きくすることで、通信品質の向上を図ることができる。
【0074】
なお、チャネル推定部15の出力は、アレイ処理部10にも与えられ、アレイ処理部10内のウェイト生成部103(図3)において、推定されたチャネル応答h11、h12、h21、h22を用いてウェイトが生成される。なお、ウェイトの生成には、例えば最大比合成(Maximum Ratio Combining:MRC)や最小二乗誤差(Minimum Mean Square Error:MMSE)が利用される。
【0075】
<変形例>
以上説明した実施の形態1に係る基地局BSにおいては、移相器13および14、振幅調整器20および21を制御することで、送信信号の位相および振幅の調整を行う構成について示したが、振幅調整器20および21の代わりに、アンテナからのビームの指向性を利用して、ビームの方向を変えることで、振幅を調整しても良い。
【0076】
図8には、ビームの方向を変えることで振幅を調整する基地局BS1の構成を示す。なお、図8において図4に示した基地局BSと同一の構成については同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0077】
図8に示す基地局BS1においては、RF部11および12から移相器13および14に向けての信号経路には振幅調整器を設けず(信号ラインは便宜的に送信、受信で共通化して示している)、制御部18は、移相器13および14による位相の調整を制御するとともに、アンテナAT11およびAT12におけるビーム制御を行う構成となっている。
【0078】
ここでアンテナAT11およびAT12は、例えば、マイクロストリップアンテナ(MSA)をアンテナ素子として用いる指向性可変アンテナを用いることが考えられる。このアンテナは、主給電MSA素子の周囲に2次元的に無給電MSA素子を配置してアダプティブアレイを構成している。無給電MSA素子には可変リアクタンス素子が接続され、そのリアクタンス成分を制御することで主給電MSA素子の指向性を制御できる構成となっている。可変リアクタンス素子に与える電圧を調整することで主給電MSA素子の指向性を制御してビーム制御を行うので、可変リアクタンス素子は指向性制御素子と言うことができるとともに、当該指向性制御素子は実質的に振幅調整手段と言うことができる。
【0079】
ビームの方向を変えることで、送信信号の振幅を変えることと等価となり、さらに移相器13および14により位相も変えることで、相関係数を変更することができる。図9には、ビーム角度(deg)とビームゲイン(dB)の関係を示す。
【0080】
図9においては、ビーム角度が0度の場合にビームゲインが最大となる場合を示しており、ビーム角度を正負どちらの方向に変えてもビームゲインが小さくなることを示している。ビームゲインが小さくなると、受信側での受信電力は小さくなるが、移相器13および14により位相も変えることで相関係数を小さくできれば、伝送容量が大きくなって、通信品質の向上を図ることができる。
【0081】
図8に示す基地局BS1においては、記憶部19には、相関係数と移相器13および14での位相調整値、および間接的振幅調整値との対応を表すデータが記憶されており、間接的振幅調整値に基づいて指向性可変アンテナの可変リアクタンス素子に与える電圧を調整する。
【0082】
ここで、間接的振幅調整値は、所望の相関係数ごとに、予め位相調整値と合わせてシミュレーションで求めておく。そして、図9に示したような、ビーム角度(deg)とビームゲイン(dB)の関係を予め測定するとともに、ビームゲインに対応する送信信号の振幅を算出し、所望の振幅を得るために必要な可変リアクタンス素子に与える電圧を求めて、間接的振幅調整値と関連付ける。なお、間接的振幅調整値としたのは、直接に送信信号の振幅を変える値ではないためである。
【0083】
次に、図10に示すフローチャートを用いて基地局BS1の動作について説明する。移相器13および14を介してそれぞれRF部11および12に入力された受信信号は、RF部11および12の受信部において、無線信号からベースバンド周波数へ変換され、FFT処理などを行った後、それぞれチャネル推定部15および16に入力される。そして、チャネル推定部15および16においてパイロット信号からチャネル応答h11、h12、h21、h22(図3)を推定(伝送路のチャネル特性を取得)する(ステップS1)。
【0084】
チャネル推定部15の出力は、相関演算部17に与えられ、チャネル間の相関係数が算出される(ステップS12)。
【0085】
得られたチャネル間の相関係数は制御部18に与えられ、制御部18において、所定のしきい値(例えば0.3)との比較を行い(ステップS13)、しきい値を超える場合は記憶部19に保存された、相関係数と移相器での調整値および間接的振幅調整値の組み合わせとの対応を表すデータに基づいて制御部18が移相器13および14を制御し(ステップS14)、また、アンテナAT11およびAT12のビーム角度を変更する(ステップS15)。
【0086】
移相器13および14、アンテナAT11およびAT12を制御した後は、次の信号の受信を待ってステップS11以下の動作を繰り返し、受信信号の相関係数が小さくなっているかを確認する。
【0087】
一方、しきい値以下の場合は位相および振幅の調整はせず、一旦処理を終了し、次の信号の受信を待つ。
【0088】
以上のように、受信信号におけるチャネル間の相関係数が大きい場合は、移相器13および14、アンテナAT11およびAT12のビーム制御を行うことで送信信号の相関係数を小さくし、伝送容量を大きくすることで、通信品質の向上を図ることができる。
【0089】
なお、アンテナAT11およびAT12のビーム角度の変更は、間接的振幅調整値と関連付けた可変リアクタンス素子に与える電圧により行うものとして説明したが、間接的振幅調整値と可変リアクタンス素子に与える電圧との関連付けが難しい場合は、移相器13および14での位相調整値は何れかに固定し、可変リアクタンス素子に与える電圧を所定値に変更するものとする。そして、次の信号の受信を待ってステップS11以下の動作を繰り返し、受信信号の相関係数が小さくなっていない場合は、再び電圧を所定値分だけ変更することで、試行錯誤的に送信信号の相関係数を小さくする作業を行うようにしても良い。
【0090】
<実施の形態2>
以上説明した実施の形態1およびその変形例においては、通信端末MSから受信した信号を受け、内部のチャネル推定部15および16で推定した伝送路のチャネル特性に基づいてチャネル間の相関係数を算出し、チャネル間の相関係数ができるだけ小さくなるように移相器13および14による位相調整および、振幅調整器20および21による振幅調整またはアンテナAT11およびAT12による振幅調整を行う構成を採っていた。しかし、通信端末MSからの送信信号について相関係数を求めても、当該相関係数は、受信信号に対する相関係数であり、基地局BSの受信部R11や受信部R12(図3)を介して得られた相関係数である。
【0091】
すなわち、図3に示すように、アンテナAT11では、受信時にはチャネルCh11、Ch12で送られて来た信号は経路r11を通り、アンテナAT12では、受信時にはチャネルCh21、Ch22で送られて来た信号は経路r12を通るので、受信回路により振幅や位相変化量が異なる。
【0092】
従って、伝送路のチャネル特性に基づいた相関係数では、信号経路による影響は反映されておらず、また、送信時には、アンテナAT11には経路t11を通った信号が与えられ、アンテナAT12には経路t12を通った信号が与えられるので、アンテナAT11およびAT12から送信される信号の相関係数が、記憶部19に記憶されたデータの相関係数と同じになっているかは保証の限りではない。
【0093】
そこで、本発明に係る実施の形態2においては、通信端末側で受信信号に基づいてチャネル間の相関係数を算出し、得られた相関係数の情報を基地局に与え、基地局内の移相器および振幅調整器を制御して相関係数を小さくする構成について説明する。
【0094】
図11には、本発明に係る無線通信システム100として、基地局BS10および通信端末MS10の構成を示す。
【0095】
図11に示す通信端末MS10は、アンテナAT1およびAT2のそれぞれにRF部1および2が接続され、RF部1および2の出力は、それぞれチャネル推定部5および6に入力される構成となっている。そして、チャネル推定部5および6の出力は相関演算部7に与えられ、チャネル間の相関係数が算出され、その結果はRF部1および2に与えられて、アンテナAT1およびAT2を介して相関係数情報として送信される構成となっている。なお、図11に示す通信端末MS10では、発明と関係のある構成のみを示し、他の構成については省略している。
【0096】
また、図11に示す基地局BS10では、RF部11および12の出力はアレイ処理部10に直接与えられ、チャネル推定部は有さない構成となっている。そして、アンテナAT11およびAT12を介して通信端末MS10から受信した受信信号は、アレイ処理部10で処理され、その中に含まれる相関係数情報が相関係数抽出部17Aによって抽出される構成となっている。なお、その他、図4に示した基地局BSと同一の構成については同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0097】
相関係数抽出部17Aで抽出された相関係数は制御部18に与えられ、当該相関係数が所定のしきい値を超えるか否かの判定がなされる。そして、所定のしきい値を超える場合には、予めシミュレーション等を用いて準備され、所定の記憶部19に保存された、相関係数と移相器13および14での位相調整値、振幅調整器20および21での振幅調整値との対応を表すデータに基づいて移相器13および14を調整することで、相関係数を小さくする制御を行う。この動作は、図4に示した基地局BSと同一である。
【0098】
ここで、基地局BS10では、通信端末MS10での受信信号に基づいて通信端末MS10で算出した相関係数を用いてしきい値との比較を行う。すなわち、基地局BS10から送信された信号の相関係数を用いてしきい値との比較を行うので、実際に基地局BS10のアンテナAT11およびAT12から送信された信号の相関係数の大小を判断することとなり、送信系統と受信系統の違いに起因する影響を排除した相関係数に基づいて、新たな相関係数の制御を行うことが可能となる。
【0099】
次に、図12に示すフローチャートを用いて実施の形態2に係る基地局BS10の動作について説明する。
【0100】
基地局BS10では、アンテナAT11およびAT12を介して通信端末MS10からの信号を受信することで、そこに含まれる相関係数情報を取得する(ステップS21)。
【0101】
移相器13および14を介してそれぞれRF部11および12に入力された受信信号は、RF部11および12の受信部において、無線信号からベースバンド周波数へ変換され、FFT処理などを行った後アレイ処理部10に与えられ、受信信号の抽出が行われる。抽出された受信信号は、図示しない復調部に与えられるとともに、相関係数抽出部17Aにも与えられて相関係数が抽出される(ステップS22)。
【0102】
通信端末MS10で算出した相関係数は制御部18に与えられ、制御部18において、所定のしきい値(例えば0.3)との比較を行い(ステップS23)、しきい値を超える場合は記憶部19に保存された、相関係数と振幅調整器および移相器での調整値の組み合わせとの対応を表すデータに基づいて制御部18が移相器13および14、振幅調整器20および21を制御する(ステップS24)。
【0103】
移相器13および14、振幅調整器20および21を制御した後は、次の信号の受信を待ってステップS21以下の動作を繰り返し、受信信号の相関係数が小さくなっているかを確認する。
【0104】
一方、しきい値以下の場合は位相および振幅の調整はせず、一旦処理を終了し、次の信号の受信を待つ。
【0105】
以上のように、受信信号におけるチャネル間の相関係数が大きい場合は、移相器13および14、振幅調整器20および21を制御することで送信信号の相関係数を小さくし、伝送容量を大きくすることで、通信品質の向上を図ることができる。
【0106】
<変形例>
以上説明した実施の形態2に係る無線通信システム100の基地局BS10においては、移相器13および14、振幅調整器20および21を制御することで、送信信号の位相および振幅の調整を行う構成について示したが、振幅調整器20および21による振幅調整の代わりに、アンテナからのビームの指向性を利用して、ビームの方向を変えることで、振幅を調整しても良い。
【0107】
図13には、ビームの方向を変えることで振幅を調整する基地局BS20を有した無線通信システム100Aの構成を示す。なお、図13に示す基地局BS20において、図11に示した基地局BS10と同一の構成については同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0108】
図13に示す基地局BS20においては、RF部11および12から移相器13および14に向けての信号経路には振幅調整器を設けず(信号ラインは便宜的に送信、受信で共通化して示している)、制御部18は、移相器13および14による位相の調整を制御するとともに、アンテナAT11およびAT12におけるビーム制御を行う構成となっている。
【0109】
なお、アンテナAT11およびAT12におけるビーム制御は、図8を用いて説明した基地局BS1と同様に、例えば、マイクロストリップアンテナ(MSA)をアンテナ素子として用いる指向性可変アンテナを用いることが考えられる。ビームの方向を変えることで、送信信号の振幅を変えることと等価となり、さらに移相器13および14により位相も変えることで、相関係数を変更することができる。
【0110】
図13に示す基地局BS20においては、記憶部19には、相関係数と移相器13および14での位相調整値、および間接的振幅調整値との対応を表すデータが記憶されており、間接的振幅調整値に基づいて指向性可変アンテナの可変リアクタンス素子に与える電圧を調整する。
【0111】
次に、図14に示すフローチャートを用いて基地局BS20の動作について説明する。基地局BS20では、アンテナAT11およびAT12を介して通信端末MS10からの信号を受信することで、そこに含まれる相関係数情報を取得する(ステップS31)。
【0112】
移相器13および14を介してそれぞれRF部11および12に入力された受信信号は、RF部11および12の受信部において、無線信号からベースバンド周波数へ変換され、FFT処理などを行った後アレイ処理部10に与えられ、受信信号の抽出が行われる。抽出された受信信号は、図示しない復調部に与えられるとともに、相関係数抽出部17Aにも与えられて相関係数が抽出される(ステップS32)。
【0113】
通信端末MS10で算出した相関係数は制御部18に与えられ、制御部18において、所定のしきい値(例えば0.3)との比較を行い(ステップS33)、しきい値を超える場合は記憶部19に保存された、相関係数と移相器での調整値および間接的振幅調整値の組み合わせとの対応を表すデータに基づいて制御部18が移相器13および14を制御し(ステップS34)、また、アンテナAT11およびAT12のビーム角度を変更する(ステップS35)。
【0114】
移相器13および14、アンテナAT11およびAT12を制御した後は、次の信号の受信を待ってステップS31以下の動作を繰り返し、受信信号の相関係数が小さくなっているかを確認する。
【0115】
一方、しきい値以下の場合は位相および振幅の調整はせず、一旦処理を終了し、次の信号の受信を待つ。
【0116】
以上のように、受信信号におけるチャネル間の相関係数が大きい場合は、移相器13および14、アンテナAT11およびAT12のビーム制御を行うことで送信信号の相関係数を小さくし、伝送容量を大きくすることで、通信品質の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0117】
AT1,AT2 アンテナ
13,14 移相器
15,16 チャネル推定部
17 相関演算部
18 制御部
20,21 振幅調整器
MS,MS10 通信端末
BS,BS1,BS10 基地局
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンテナと、
前記複数のアンテナにそれぞれ対応して設けられ、信号の振幅を調整する振幅調整手段と、
前記複数のアンテナにそれぞれ接続され、信号の位相を調整する移相調整手段と、
前記振幅調整手段および前記移相調整手段を制御し、前記複数のアンテナから送信される送信信号の振幅および位相を調整して、前記送信信号の相関係数を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする、無線通信装置。
【請求項2】
前記複数のアンテナにそれぞれ対応して設けられ、前記複数のアンテナで受信される受信信号に基づいて各アンテナにおけるチャネル推定を行うチャネル推定手段と、
前記チャネル推定手段でのチャネル推定結果に基づいて、前記複数のアンテナでそれぞれ受信される受信信号の相関係数を算出する相関係数算出手段と、を備え、
前記制御手段は、
前記相関係数算出手段で算出された前記相関係数が所定値を超える場合に、前記振幅調整手段および前記移相調整手段を制御する、請求項1記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記移相調整手段での位相調整値および前記振幅調整手段での振幅調整値と、前記送信信号の相関係数との対応を表すデータを記憶する記憶手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記記憶手段から読み出した前記データに基づいて、前記振幅調整手段および前記移相調整手段を制御する、請求項2記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記振幅調整手段は、
前記移相調整手段に入力される前の前記送信信号を減衰させるアッテネータである、請求項1記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記複数のアンテナは、指向性可変アンテナであって、
前記振幅調整手段は、
前記指向性可変アンテナの指向性を制御する指向性制御素子であって、前記指向性可変アンテナから送信される前記送信信号の指向性を変えることで、前記送信信号の振幅を調整する、請求項1記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記複数のアンテナは、
前記送信信号を受信信号として受けた他の無線通信装置で算出された、前記受信信号の相関係数の情報を含む信号を受け、
前記制御手段は、
前記受信信号の相関係数が所定値を超える場合に、前記振幅調整手段および前記移相調整手段を制御する、請求項1記載の無線通信装置。
【請求項7】
複数の第1のアンテナと、
前記複数の第1のアンテナにそれぞれ対応して設けられ、信号の振幅を調整する振幅調整手段と、
前記複数のアンテナにそれぞれ接続され、信号の位相を調整する移相調整手段と、
前記振幅調整手段および前記移相調整手段を制御し、前記複数の第1のアンテナから送信される送信信号の振幅および位相を調整して、前記送信信号の相関係数を制御する制御手段と、を備えた第1の無線通信装置と、
複数の第2のアンテナと、
前記複数の第2のアンテナにそれぞれ対応して設けられ、前記複数の第2のアンテナで受信される受信信号に基づいて各アンテナにおけるチャネル推定を行うチャネル推定手段と、
前記チャネル推定手段でのチャネル推定結果に基づいて、前記複数の第2アンテナでそれぞれ受信される受信信号の相関係数を算出する相関係数算出手段と、を備えた第2の無線通信装置と、を有した無線通信システムであって、
前記第2の無線通信装置は、
算出した前記受信信号の相関係数の情報を前記第1の無線通信装置に送信し、
前記第1の無線通信装置の前記制御手段は、
前記受信信号の相関係数が所定値を超える場合に、前記振幅調整手段および前記移相調整手段を制御することを特徴とする、無線通信システム。
【請求項1】
複数のアンテナと、
前記複数のアンテナにそれぞれ対応して設けられ、信号の振幅を調整する振幅調整手段と、
前記複数のアンテナにそれぞれ接続され、信号の位相を調整する移相調整手段と、
前記振幅調整手段および前記移相調整手段を制御し、前記複数のアンテナから送信される送信信号の振幅および位相を調整して、前記送信信号の相関係数を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする、無線通信装置。
【請求項2】
前記複数のアンテナにそれぞれ対応して設けられ、前記複数のアンテナで受信される受信信号に基づいて各アンテナにおけるチャネル推定を行うチャネル推定手段と、
前記チャネル推定手段でのチャネル推定結果に基づいて、前記複数のアンテナでそれぞれ受信される受信信号の相関係数を算出する相関係数算出手段と、を備え、
前記制御手段は、
前記相関係数算出手段で算出された前記相関係数が所定値を超える場合に、前記振幅調整手段および前記移相調整手段を制御する、請求項1記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記移相調整手段での位相調整値および前記振幅調整手段での振幅調整値と、前記送信信号の相関係数との対応を表すデータを記憶する記憶手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記記憶手段から読み出した前記データに基づいて、前記振幅調整手段および前記移相調整手段を制御する、請求項2記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記振幅調整手段は、
前記移相調整手段に入力される前の前記送信信号を減衰させるアッテネータである、請求項1記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記複数のアンテナは、指向性可変アンテナであって、
前記振幅調整手段は、
前記指向性可変アンテナの指向性を制御する指向性制御素子であって、前記指向性可変アンテナから送信される前記送信信号の指向性を変えることで、前記送信信号の振幅を調整する、請求項1記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記複数のアンテナは、
前記送信信号を受信信号として受けた他の無線通信装置で算出された、前記受信信号の相関係数の情報を含む信号を受け、
前記制御手段は、
前記受信信号の相関係数が所定値を超える場合に、前記振幅調整手段および前記移相調整手段を制御する、請求項1記載の無線通信装置。
【請求項7】
複数の第1のアンテナと、
前記複数の第1のアンテナにそれぞれ対応して設けられ、信号の振幅を調整する振幅調整手段と、
前記複数のアンテナにそれぞれ接続され、信号の位相を調整する移相調整手段と、
前記振幅調整手段および前記移相調整手段を制御し、前記複数の第1のアンテナから送信される送信信号の振幅および位相を調整して、前記送信信号の相関係数を制御する制御手段と、を備えた第1の無線通信装置と、
複数の第2のアンテナと、
前記複数の第2のアンテナにそれぞれ対応して設けられ、前記複数の第2のアンテナで受信される受信信号に基づいて各アンテナにおけるチャネル推定を行うチャネル推定手段と、
前記チャネル推定手段でのチャネル推定結果に基づいて、前記複数の第2アンテナでそれぞれ受信される受信信号の相関係数を算出する相関係数算出手段と、を備えた第2の無線通信装置と、を有した無線通信システムであって、
前記第2の無線通信装置は、
算出した前記受信信号の相関係数の情報を前記第1の無線通信装置に送信し、
前記第1の無線通信装置の前記制御手段は、
前記受信信号の相関係数が所定値を超える場合に、前記振幅調整手段および前記移相調整手段を制御することを特徴とする、無線通信システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−93658(P2013−93658A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232926(P2011−232926)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
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