説明

無線通信装置および無線通信方法

【課題】各アンテナで受信した信号をAGCアンプを用いて増幅した場合でも、アダプティブアレイ送信時、通信相手に対する適切な送信アンテナ・パターンを形成可能な無線通信装置および無線通信方法を提供する。
【解決手段】受信用アダプティブアレイ処理部14は、増幅された複数の受信信号をアダプティブアレイ受信処理する。AGC制御回路19は、出力レベルが基準値と等しくなるよう、AGCアンプ24a〜24dの利得を制御するためのAGC電圧を出力する。受信用アダプティブアレイ処理部14は、各アンテナに対応する受信ウェイト係数を算出する受信ウェイトベクトル計算機を含む。受信ウェイト補正部20は、算出された各受信ウェイト係数を、対応するAGCアンプへのAGC電圧に基づいて補正する。送信用アダプティブ処理部17は、補正後の各受信ウェイト係数を用いてアダプティブアレイ送信処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置および無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、たとえば特許文献1(特開2004−260588号公報)に記載されるようなアダプティブアレイ機能を有する無線通信装置が知られている。
【0003】
アダプティブアレイ受信では、空間的に離間させて配置された複数のアンテナで受信された各信号を適切に加算合成することにより、希望波の到来方向にビームを有し、かつ干渉波の到来方向にヌルを有する受信アンテナ・パターンを形成して、希望信号を選択的に受信する。一方、アダプティブアレイ送信では、上述の受信アンテナ・パターンを形成した際の受信ウェイトをキャリブレーション補正した後、送信ウェイトとして用いることで、アダプティブアレイ送信時の送信アンテナ・パターンを形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−260588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、アダプティブアレイ方式を採用した無線通信装置において、アンテナごとにAGCアンプを設ける場合がある。これによって、アンテナごとに受信信号のレベルにばらつきがあっても、一定のレベルの信号に増幅することができる。その結果アダプティブアレイ受信部へ入力される信号のレベルを一定のレベルに揃えることができる。
【0006】
受信信号の位相は、AGCアンプで処理されることによって変化する。この位相の変化は、AGC電圧によって相違する。したがって、複数のAGCアンプのAGC電圧にばらつきがある場合に、AGCアンプを経由することによる位相の変化量もばらつくことになる。その結果、位相の変化量が異なる信号がアダプティブアレイ処理されることになり、アダプティブアレイ送信時、通信相手に対する適切な送信アンテナ・パターンを形成できない。
【0007】
それゆえに、本発明の目的は、各アンテナで受信した信号をAGCアンプを用いて増幅した場合でも、アダプティブアレイ送信時、通信相手に対する適切な送信アンテナ・パターンを形成可能な無線通信装置および無線通信方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の無線通信装置は、複数のアンテナと、それぞれが、対応するアンテナからの受信信号を増幅し、AGC電圧に基づいて利得が変化する複数の可変利得増幅器と、増幅された複数の受信信号をアダプティブアレイ受信処理して、所望の信号を抽出するアダプティブアレイ受信処理部と、各可変利得増幅器の出力レベルを検出して、出力レベルが基準値と等しくなるよう各可変利得増幅器の利得を制御するためのAGC電圧を出力するAGC制御回路とを備える。アダプティブアレイ受信処理部は、増幅された複数の受信信号と参照信号とに基づいて、各アンテナに対応する受信ウェイト係数を算出する受信ウェイトベクトル計算機を含む。無線通信装置は、さらに受信ウェイトベクトル計算機で算出された各受信ウェイト係数を、対応する可変利得増幅器へのAGC電圧に基づいて補正する受信ウェイト補正部と、受信ウェイト補正部により補正された各受信ウェイト係数に基づいて、送信信号のアダプティブアレイ送信処理を行うアダプティブアレイ送信処理部とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、各アンテナで受信した信号をAGCアンプを用いて増幅した場合でも、アダプティブアレイ送信時、通信相手に対する適切な送信アンテナ・パターンを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施の形態の無線通信装置の構成を表わす図である。
【図2】受信用アダプティブアレイ処理部の構成を示すブロック図である。
【図3】送信用アダプティブアレイ処理部の構成を示すブロック図である。
【図4】AGGアンプの特性を表わす図である。
【図5】受信信号の位相変化を説明するための図である。
【図6】補正テーブルの例を説明するための図である。
【図7】本実施の形態のAGCアンプの制御および受信ウェイトベクトルの計算の動作手順を表わすフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本実施の形態の無線通信装置の構成を表わす図である。
【0012】
図1を参照して、この無線通信装置1は、アンテナ2a〜2dと、RF回路11a〜11dと、スイッチ(SW)12a〜12dと、受信回路13と、受信用アダプティブアレイ処理部14と、復調部15と、変調部16と、送信用アダプティブアレイ処理部17と、送信回路18と、制御部22とを備える。
【0013】
受信回路13は、周波数変換部23a〜23dと、AGC(Automatic Gain Control)アンプ24a〜24dと、ADC(Analog to Digital Converter)25a〜25dとを含む。
【0014】
周波数変換部23a〜23dは、受信信号の周波数を無線周波数帯からベースバンド処理周波数帯へ変換する。
【0015】
AGCアンプ24aは、周波数変換部23aから出力される受信信号を可変の利得で増幅して出力する。AGCアンプ24aの利得は、AGC制御部19からのAGC電圧(AGa)に基づいて変化する。AGCアンプ24bは、周波数変換部23bから出力される受信信号を可変の利得で増幅して出力する。AGCアンプ24bの利得は、AGC制御部19からのAGC電圧(AGb)に基づいて変化する。AGCアンプ24cは、周波数変換部23cから出力される受信信号を可変の利得で増幅して出力する。AGCアンプ24cの利得は、AGC制御部19からのAGC電圧(AGc)に基づいて変化する。AGCアンプ24dは、周波数変換部23dから出力される受信信号を可変の利得で増幅して出力する。AGCアンプ24dの利得は、AGC制御部19からのAGC電圧(AGd)に基づいて変化する。
【0016】
ADC25a〜25dは、AGCアンプ24a〜24dから出力されるアナログの受信信号をデジタルの受信信号に変換して、受信用アダプティブアレイ処理部14へ出力する。
【0017】
送信回路18は、DAC(Digital to Analog Converter)26a〜26dと、アンプ27a〜27dと、周波数変換部28a〜28dとを含む。
【0018】
DAC26a〜26dは、送信用アダプティブアレイ処理部17から出力されたデジタルの送信信号をアナログの送信信号に変換する。
【0019】
アンプ27a〜27dは、DAC26a〜26dから出力される送信信号を一定の増幅率で増幅する。
【0020】
周波数変換部28a〜28dは、アンプ27a〜27dから出力される送信信号の周波数をベースバンド処理周波数帯から無線周波数帯へ変換する。
【0021】
RF回路11a〜11dは、受信時には、アンテナ2a〜2dから送られる受信信号のうち所望帯域の信号成分のみを通過させ、通過した信号を増幅して、スイッチ(SW)12a〜12dへ出力する。RF回路11a〜11dは、送信時には、スイッチ(SW)12a〜12dから出力される送信信号を増幅し、増幅された信号のうち所望帯域の信号成分のみを通過させて、アンテナ2a〜2dへ出力する。
【0022】
スイッチ(SW)12a〜12dは、送信時には、送信回路18から出力される送信信号をRF回路11a〜11dへ出力する。スイッチ(SW)12a〜12dは、受信時には、RF回路11a〜11dから出力される受信信号を受信回路13へ出力する。
【0023】
受信用アダプティブアレイ処理部14は、受信回路13から出力される増幅された複数の受信信号に対し、アダプティブアレイ受信処理を行なう。アダプティブアレイ受信処理とは、複数の受信信号に基づいて、アンテナ2a〜2dごとの受信係数(ウェイト)からなるウェイトベクトルを計算して適応制御することによって、所望波または干渉波を正確に抽出する処理である。
【0024】
図2は、受信用アダプティブアレイ処理部の構成を示すブロック図である。
同図を参照して、受信信号ベクトルXr(t)(=xr1(t)、xr2(t)、xr3(t)、xr4(t))は、乗算器31,32,33,34のそれぞれの一方入力に与えられるとともに、受信ウェイトベクトル計算機35に与えられる。
【0025】
受信ウェイトベクトル計算機35は、後述するアルゴリズムによりアンテナごとのウェイトからなるウェイトベクトルW(t)(=w1(t)、w2(t)、w3(t)、w4(t))を算出し、乗算器31,32,33,34のそれぞれの他方入力に与える。乗算器31,32,33,34は、ウェイトベクトルW(t)と、対応するアンテナからの受信信号ベクトルX(t)とを複素乗算する。ここで、w1(t)、w2(t)、w3(t)、w4(t)は、受信ウェイト係数である。
【0026】
加算器37によりその乗算結果の総和Yr(t)が得られ、このYr(t)は以下のように複素乗算和として表わされる:
Yr(t)=W(t)HX(t)
ここで、W(t)HはウェイトベクトルW(t)の複素共役の転置を表わしている。
【0027】
上述のような複素乗算和の結果Yr(t)は、受信ウェイトベクトル計算機35に与えられる。
【0028】
受信ウェイトベクトル計算機35は、参照信号が既知の区間では、Yr(t)と、参照信号メモリ36に予め記憶されている既知の参照信号d(t)との誤差e(t)を求める。この参照信号d(t)は、プリアンブル(PR)およびユニークワード(UW)であり、既知の信号である。
【0029】
受信ウェイトベクトル計算機35は、参照信号が既知でない区間では、1シンボル前のウェイトベクトルW(t−1)と受信信号X(t)との複素乗算和から参照信号d(t)を逆算する。つまり、受信ウェイトベクトル計算機35は、d′(t)=Det[W(t−1)HX(t)]とおき、その信号点のI,Q信号からユークリッド距離が最短の信号基準点を選出し、その信号基準点を参照信号d(t)とする。そして、受信ウェイトベクトル計算機35は、このようにして逆算されたd(t)とYr(t)の誤差e(t)を求める。
【0030】
受信ウェイトベクトル計算機35は、算出された誤差e(t)(=Yr(t)−d(t))の2乗を減少させるようウェイト係数を更新させる処理を実行する。アダプティブアレイ受信処理では、このようなウェイトベクトルの更新(ウェイト学習)を、時間や信号電波の伝搬路特性の変動に応じて適応的に行ない、受信信号X(t)中から所望波または干渉波の信号Yr(t)を抽出している。
【0031】
送信用アダプティブアレイ処理部17は、変調部16から出力される送信信号に対して、アダプティブアレイ送信処理を行なう。アダプティブアレイ送信処理とは、アダブティブアレイ受信処理により算出したアンテナ2a〜2dごとの受信係数(ウェイト)からなるウェイトベクトルを用いて、所望の無線端末装置にのみ送信信号が届くように、すなわち送信指向性を形成してアンテナ2a〜2dに与える信号を生成する処理である。
【0032】
図3は、送信用アダプティブアレイ処理部の構成を示すブロック図である。同図を参照して、送信信号Ys(t)は、乗算器41,42,43,44のそれぞれの一方の入力に与えられる。送信ウェイトベクトル設定機45は、受信ウェイト補正部20から、後述する補正後のウェイトベクトルW´(t)(=w1(t)´、w2(t)´、w3(t)´、w4(t)´)を取得し、キャリブレーション補正を行った後、乗算器41,42,43,44のそれぞれの他方の入力に与える。乗算器41,42,43,44は、ウェイトベクトルW´(t)と、送信信号Ys(t)とを複素乗算して、乗算結果である送信信号ベクトルXs(t)(=xs1(t)、xs2(t)、xs3(t)、xs4(t))の要素は、DAC26a〜26dに送られる。
【0033】
復調部15は、受信用アダプティブアレイ処理部14から出力される受信信号を復調する。
【0034】
変調部16は、送信信号を変調して、送信用アダプティブアレイ処理部17へ出力する。
【0035】
制御部22は、AGC制御部19と、受信ウェイト補正部20と、補正テーブル記憶部21とを含む。
【0036】
AGC制御部19は、AGCアンプ24aの出力レベルを検出して、その出力レベルが基準値と等しくなるようAGCアンプ24aの利得を制御するためのAGC電圧(AGa)をAGCアンプ24aへ出力する。AGC制御部19は、AGCアンプ24bの出力レベルを検出して、その出力レベルが基準値と等しくなるようAGCアンプ24bの利得を制御するためのAGC電圧(AGb)をAGC24bへ出力する。AGC制御部19は、AGCアンプ24cの出力レベルを検出して、その出力レベルが基準値と等しくなるようAGCアンプ24cの利得を制御するためのAGC電圧(AGc)をAGCアンプ24cへ出力する。AGC制御部19は、AGCアンプ24dの出力レベルを検出して、その出力レベルが基準値と等しくなるようAGCアンプ24dの利得を制御するためのAGC電圧(AGd)をAGC24dへ出力する。
【0037】
図4は、AGGアンプの特性を表わす図である。
図4では、AGC電圧(AG)に対応して、AGCアンプの出力の位相と入力の位相の差(位相変化)を表わしている。AGCアンプ24a〜24dは、それぞれ異なるAGC電圧を受ける。したがって、AGCアンプ24a〜24dの位相変化は、互いに相違する。その結果、AGCアンプ24a〜24dに入力される前の4つの受信信号の間の位相の相対的な関係が、AGCアンプ24a〜24dから出力されたときには、維持されず変化する。
【0038】
図5は、受信信号の位相変化を説明するための図である。
図5では、アンテナ2aからの受信信号の位相変化に対するアンテナ2b、2c、2dからの受信信号の相対的な位相変化が示されている。つまり、アンテナ2aからの受信信号の位相変化を0にして、アンテナ2b、2c、2dからの受信信号の位相変化から、アンテナ2aからの受信信号の位相変化を減算した値が示されている。
【0039】
相対的な位相変化がすべて0の場合には、アンテナ2a、2b、2c、2dからの受信信号の相対的な位相関係は維持されるが、図4に示すように、相対的な位相変化が0ではないので、AGCアンプ24a〜24dを経由することによってアンテナ2a、2b、2c、2dからの受信信号の相対的な位相関係が変化する。
【0040】
4つの受信信号の間の位相の相対的な関係をAGCアンプ24a〜24dに入力される前の状態に戻すために、補正テーブルおよび受信ウェイト補正部が設けられる。
【0041】
補正テーブル記憶部21は、補正テーブルを記憶する。
補正テーブルは、図6に示すように、AGC電圧(AG)と、AGC電圧で動作するときにAGCアンプによってもたらされる信号の位相変化と基準値R(図4に示す)との差である位相差θの対応を定める。
【0042】
本実施の形態では、AGCアンプ24a、24、24c、24dの特性はすべて同一であるとする。したがって、補正テーブルには、AGC電圧と位相差との対応関係が1つ定められ、この対応関係がすべての受信ウェイト係数w1(t)、w2(t)、w3(t)、w4(t)の補正に共通して用いられる。
【0043】
受信ウェイト補正部20は、受信ウェイトベクトル計算機35で算出された受信ウェイト係数w1(t)、w2(t)、w3(t)、w4(t)を、それぞれAGCアンプ24a、24、24c、24dへのAGC電圧AGa、AGb、AGc、AGdに基づいて補正する。
【0044】
受信ウェイト補正部20は、補正テーブルを参照して、受信ウェイト係数w1(t)、w2(t)、w3(t)、w4(t)に対応するAGCアンプ24a、24b、24c、24dへのAGC電圧AGa、AGb、AGc、AGdに対応する位相差を特定して、特定した位相差を受信ウェイト係数w1(t)、w2(t)、w3(t)、w4(t)の位相に加算する。そして、受信ウェイト補正部20は、補正後のウェイトベクトルW´(t)(=w1(t)´、w2(t)´、w3(t)´、w4(t)´)を、送信用アダプティブアレイ処理部17へ出力する。
【0045】
たとえば、AGC24aへのAGC電圧が2.0Vのときに、補正テーブルを参照することによって、図4に示すような位相変化と基準値Rとの差である位相差θ(2.0)が特定される。受信ウェイトベクトル計算機で算出された受信ウェイト係数w1(t)の位相にこの位相差θ(2.0)が加算される。AGC24bへのAGC電圧が2.2Vのときに、補正テーブルを参照することによって、図4に示すような位相変化と基準値Rとの差である位相差θ(2.2)が特定される。受信ウェイトベクトル計算機で算出された受信ウェイト係数w2(t)の位相にこの位相差θ(2.2)が加算される。
【0046】
AGC24cへのAGC電圧が1.8Vのときに、補正テーブルを参照することによって、図4に示すような位相変化と基準値Rとの差である位相差θ(1.8)が特定される。受信ウェイトベクトル計算機で算出された受信ウェイト係数w3(t)の位相にこの位相差θ(1.8)が加算される。AGC24dへのAGC電圧が2.5Vのときに、補正テーブルを参照することによって、図4に示すような位相変化と基準値Rとの差である位相差θ(2.5)が特定される。受信ウェイトベクトル計算機で算出された受信ウェイト係数w4(t)の位相にこの位相差θ(2.5)が加算される。
【0047】
図7は、本実施の形態のAGCアンプの制御および受信ウェイトベクトルの計算の動作手順を表わすフローチャートである。
【0048】
図7を参照して、AGC制御部19は、AGCアンプ24a、24b、24c、24dの出力レベルを検出して、出力レベルが基準値と等しくなるようAGCアンプ24a、24b、24c、24dの利得を制御するためのAGC電圧AGa、AGb、AGc、AGdを出力する(ステップS101)。
【0049】
AGCアンプ24a、24b、24c、24dの利得が収束した後に(ステップS102でYES)、受信ウェイトベクトル計算機35は、AGCアンプ24a、24b、24c、24dで増幅された複数の受信信号と参照信号とに基づいて、アンテナ2a、2b、2c、2dに対応する受信ウェイト係数w1(t)、w2(t)、w3(t)、w4(t)を算出する(ステップS103)。
【0050】
受信ウェイト補正部20は、ステップS103で算出された受信ウェイト係数w1(t)、w2(t)、w3(t)、w4(t)をそれぞれ、補正テーブルを参照することによって、AGC電圧AGa、AGb、AGc、AGdに基づいて補正する(ステップS104)。
【0051】
以上のように、本実施の形態によれば、AGCアンプで処理されることによって、複数の受信信号間の相対的な位相関係が変化した場合でも、AGC電圧に基づいて受信ウェイト係数を補正することによって、アダプティブアレイ送信時、通信相手に対する適切な送信アンテナ・パターンを形成することができる。
【0052】
なお、本実施の形態では、複数のAGCアンプ24a、24b、24c、24dの特性が同一の場合について説明した。この場合には、補正テーブルは、AGC電圧と位相差との対応関係を1つ定め、受信ウェイト補正部20は、この対応関係を複数の受信ウェイト係数w1(t)、w2(t)、w3(t)、w4(t)のすべての補正に共通して用いた。
【0053】
一方、複数のAGCアンプ24a、24b、24c、24dの特性がそれぞれ異なる場合には、補正テーブルは、AGC電圧と位相差との対応関係をAGCアンプごとに定めるものとし、受信ウェイト補正部20は、AGCアンプごとの対応関係を用いて、各受信ウェイト係数を補正することとすればよい。
【0054】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0055】
1 無線通信装置、2a〜2d アンテナ、11a〜11d RF回路、12a〜12d スイッチ、13 受信回路、14 受信用アダプティブアレイ処理部、15 復調部、16 変調部、17 送信用アダプティブアレイ処理部、18 送信回路、19 AGC制御部、20 受信ウェイト補正部、21 補正テーブル記憶部、22 制御部、23a〜23d,28a〜28d 周波数変換部、24a〜24d AGCアンプ、25a〜25d ADC、26a〜26d DAC、27a〜27d アンプ、31〜34,41〜44 乗算器、35 受信ウェイトベクトル計算機、36 参照信号メモリ、37 加算器、45 送信ウェイトベクトル設定機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンテナと、
それぞれが、対応するアンテナからの受信信号を増幅し、AGC電圧に基づいて利得が変化する複数の可変利得増幅器と、
前記増幅された複数の受信信号をアダプティブアレイ受信処理して、所望の信号を抽出するアダプティブアレイ受信処理部と、
各可変利得増幅器の出力レベルを検出して、前記出力レベルが基準値と等しくなるよう前記各可変利得増幅器の利得を制御するためのAGC電圧を出力するAGC制御回路とを備え、
前記アダプティブアレイ受信処理部は、前記増幅された複数の受信信号と参照信号とに基づいて、各アンテナに対応する受信ウェイト係数を算出する受信ウェイトベクトル計算機を含み、
受信ウェイトベクトル計算機で算出された各受信ウェイト係数を、対応する可変利得増幅器へのAGC電圧に基づいて補正する受信ウェイト補正部と、
前記受信ウェイト補正部により補正された各受信ウェイト係数に基づいて、送信信号のアダプティブアレイ送信処理を行うアダプティブアレイ送信処理部とを備えた無線通信装置。
【請求項2】
前記無線通信装置は、
AGC電圧と、前記AGC電圧で動作するときに前記可変利得増幅器によってもたらされる信号の位相変化と基準値との差である位相差の対応を定めたテーブルを記憶する記憶部を備え、
前記受信ウェイト補正部は、前記テーブルを参照して、各受信ウェイト係数に対応する可変利得増幅器へのAGC電圧に対応する位相差を特定して、前記特定した位相差を前記各受信ウェイト係数の位相に加算する、請求項1記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記複数の可変利得増幅器の特性は、同一であり、
前記テーブルは、AGC電圧と位相差との対応関係を1つ定め、
前記受信ウェイト補正部は、前記対応関係を前記複数の受信ウェイト係数のすべての補正に共通して用いる、請求項2記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記複数の可変利得増幅器の特性は、それぞれ異なり、
前記テーブルは、AGC電圧と位相差との対応関係を可変利得増幅器ごとに定め、
前記受信ウェイト補正部は、前記可変利得増幅器ごとの対応関係を用いて、各受信ウェイト係数を補正する、請求項2記載の無線通信装置。
【請求項5】
複数のアンテナと、
それぞれが、対応するアンテナからの受信信号を増幅し、AGC電圧に基づいて利得が変化する複数の可変利得増幅器とを備えた無線通信装置におけるアダプティブアレイ受信方法であって、
各可変利得増幅器の出力レベルを検出して、前記出力レベルが基準値と等しくなるよう前記各可変利得増幅器の利得を制御するためのAGC電圧を出力するステップと、
前記複数の可変利得増幅器で増幅された複数の受信信号と参照信号とに基づいて、各アンテナに対応する受信ウェイト係数を算出する各アンテナに対応する受信ウェイト係数を算出するステップと、
前記増幅された複数の受信信号をアダプティブアレイ受信処理して、所望の信号を抽出するステップと、
前記算出された各受信ウェイト係数を、対応する可変利得増幅器へのAGC電圧に基づいて補正するステップと、
前記補正された各受信ウェイト係数に基づいて、送信信号のアダプティブアレイ送信処理を行うステップとを備えた、無線通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−115557(P2013−115557A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259014(P2011−259014)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】