説明

無線通信装置および無線通信方法

【課題】データ衝突を抑制しつつ、ネットワークのスループットの低下を抑制することを課題とする。
【解決手段】各ノードは、マルチホップ無線ネットワークを形成するノードであって、データの宛先である宛先ノードと自ノードとの位置関係を推定する。そして、各ノードは、自ノードが、宛先ノードが直接通信できる最大距離の範囲内にある第1エリアに位置すると推定された場合に、第1エリアに位置する他ノードのうち前ノードから最も離れたノードが検出できる最低電力以上の電力を送信電力と決定する。また、各ノードは、自ノードが、第1エリア以外のエリアに位置すると推定された場合に、宛先ノードが受信できる最低電力より小さい電力を送信電力と決定する。その後、各ノードは、決定された送信電力で、宛先ノードにデータを送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置および無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ノードが直接宛先ノードに接続するのではなく、複数の中継ノードを介して、宛先ノードに接続するマルチホップの無線通信システムが注目を集めている。マルチホップの無線通信システムでは、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)方式を用いて、各ノードが自律的に通信を実行する。
【0003】
CSMA/CAでは、各ノードが通信を実行する前にキャアリアセンスを実行して、受信電力強度(RSSI:Received Signal Strength Indication)を監視する。そして、各ノードは、一定値以下のRSSIを検出した場合には、他のノードが送信していない状況と判断して、データ送信を実行する。
【0004】
ところが、この手法では、宛先ノードの直接通信可能な範囲内にあり、かつ、送信ノードの送信をキャリアセンスで検出できないノードとの間でデータの衝突が発生する。つまり、送信ノードと、送信ノードからの受信電力が閾値以下になるノード(以降、隠れ端末と表記する)との間でデータの衝突が発生する。
【0005】
このような隠れ端末のデータ衝突を防止する技術として、送信対象の領域に対して信号を送信することで、自ノードがデータを送信する状態にあることを通知する技術が知られている。また、RTS(Request to Send)/CTS(Clear to Send)信号を用いて、送信ノードが宛先ノードに送信要求を送信し、宛先ノードが受信可能な状態であることを確認してから、データ送信を実行する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2009−533976号公報
【特許文献2】特開2010−161516号公報
【特許文献3】特開2011−055394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来技術では、データ送信までに実行する処理が増えることもあり、オーバヘッドが大きくなるので、ネットワークのスループットが低下するという問題がある。
【0008】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、データ衝突を抑制しつつ、ネットワークのスループットの低下を抑制することができる無線通信装置および無線通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願の開示する無線通信装置および無線通信方法は、一つの態様において、マルチホップ無線ネットワークを形成するノードであって、データの宛先である宛先ノードと自ノードとの位置関係を推定する推定部を有する。また、無線通信装置および無線通信方法は、前記推定部によって前記自ノードが、前記宛先ノードが直接通信できる最大距離の範囲内にある第1エリアに位置すると推定された場合に、前記第1エリアに位置する他ノードのうち前記自ノードから最も離れたノードが検出できる最低電力以上の電力を送信電力と決定する第1決定部を有する。また、無線通信装置および無線通信方法は、前記推定部によって前記自ノードが、前記第1エリア以外のエリアに位置すると推定された場合に、前記宛先ノードが受信できる最低電力より小さい電力を送信電力と決定する第2決定部を有する。また、無線通信装置および無線通信方法は、前記第1決定部または第2決定部によって決定された送信電力で、前記宛先ノードにデータを送信する送信部を有する。
【発明の効果】
【0010】
本願の開示する無線通信装置および無線通信方法の一つの態様によれば、データ衝突を抑制しつつ、ネットワークのスループットの低下を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、実施例1に係る無線通信システムの全体構成例を示す図である。
【図2】図2は、実施例1に係るノードのハードウェア構成例を示す図である。
【図3】図3は、実施例1に係るノードの機能ブロック図である。
【図4】図4は、エリア判定の具体例を説明する図である。
【図5】図5は、実施例1に係るノードが実行する処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】図6は、シミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本願の開示する無線通信装置および無線通信方法の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0013】
[全体構成]
図1は、実施例1に係る無線通信システムの全体構成例を示す図である。図1に示すように、この無線通信システムは、ノードAからノードIとGW(GateWay)装置とから形成される。なお、ここで示したノードは、無線通信装置の一例である。また、図1に示した数等はあくまで例示であり、これに限定されるものではない。
【0014】
図1に示した各ノードは、自動で経路情報を確定するアドホックネットワークを形成する。各ノードは、1ホップで接続されるノード、言い換えると、隣接するノードとの間で、HELLOメッセージなどの制御パケットを用いて自ノードが保持する経路情報を交換する。そして、各ノードは、交換した経路情報を用いてGW装置までの経路を確定する。
【0015】
また、各ノードは、電力メータやセンサなどに接続され、センシングされた値をGW装置に送信する。GW装置は、各ノードからセンサ値を収集する管理装置が接続される無線通信装置の一例である。なお、センサ値の例としては、電力、温度、湿度、加速度などがある。
【0016】
図1に示した無線通信システムでは、ノードAとノードEとノードFとノードGの各々は、GW装置が直接通信可能なエリアに存在し、1ホップでGW装置に直接データを送信できるノードである。ノードBとノードDは、ノードAを介してGW装置にデータを送信するマルチホップノードである。また、ノードCは、ノードBとノードAの両方を介してGW装置にデータを送信するマルチホップノードである。また、ノードHは、ノードGを介してGW装置にデータを送信するマルチホップノードである。同様に、ノードIとノードJの各々は、ノードFを介してGW装置にデータを送信するマルチホップノードである。
【0017】
また、各ノードは、CSMA/CA方式を用いて、各ノードが自律的に通信を実行する。具体的には、各ノードは、データ送信に先立ってキャリアセンスを実行し、搬送波周波数の受信電力レベルを測定する。そして、各ノードは、測定した受信電力レベルが閾値以下であれば、チャネルがアイドリング状態であると判定して、データ送信を実行する。一方、各ノードは、測定した受信電力レベルが閾値より大きければ、チャネルがビジー状態であると判定して、データ送信を抑止し、所定時間経過後に再度キャリアセンスを実行する。
【0018】
このような無線通信システムにおいて、各ノードは、マルチホップ無線ネットワークを形成するノードであって、データの宛先である宛先ノードと自ノードとの位置関係を推定する。続いて、各ノードは、自ノードが、宛先ノードが直接通信できる最大距離の範囲内にある第1エリアに位置すると推定された場合に、第1エリアに位置する他ノードが検出できる最低電力以上の電力を送信電力と決定する。また、各ノードは、自ノードが、第1エリア以外のエリアに位置すると推定された場合に、宛先ノードが受信できる最低電力より小さい電力を送信電力と決定する。そして、各ノードは、決定された送信電力で、宛先ノードにデータを送信する。
【0019】
したがって、無線通信システムを形成する各ノードは、宛先のGW装置と直接通信するかマルチホップで通信するかを決定する。そして、GW装置と直接通信するノードは、他ノードがキャリアセンス可能なように送信電力を制御する。マルチホップで通信するノードは、GW装置と直接通信するノードの通信を妨害しないように送信電力を制御する。この結果、データ衝突を抑制しつつ、ネットワークのスループットの低下を抑制することができる。
【0020】
[ハードウェア構成]
次に、図1に示したノードのハードウェア構成例を説明する。図2は、実施例1に係るノードのハードウェア構成例を示す図である。なお、図1に示した各ノードは、同様の構成を有するので、ここでは、ノード10として説明する。また、ここで説明するハードウェア構成は、あくまで例示であり、図示したものに限定されない。
【0021】
図2に示すように、ノード10は、送受信アンテナ10a、アンプ10b、発振器10c、アナログデジタル変換器10d、メモリ10e、プロセッサ10f、デジタルアナログ変換器10g、アンプ10hを有する。
【0022】
送受信アンテナ10aは、データである信号を電波として宛先に向けて送信し、データである信号を電波として受信するハードウェアである。アンプ10bは、送受信アンテナ10aによって受信された信号を増幅させる増幅器である。発振器10cは、連続波の交流信号を発信させる。この発振器10cからの出力を用いて、受信された信号がベースバンド信号に変換される。
【0023】
アナログデジタル変換器10dは、アンプ10bによって増幅されたアナログ信号をデジタル信号に変換する変換器である。メモリ10eは、予め定められた閾値等を記憶する記憶装置である。プロセッサ10fは、ノード10の全体的な処理を司る処理部であり、アナログデジタル変換器10dから出力された信号を用いて、送信電力の計算を実行する。
【0024】
デジタルアナログ変換器10gは、プロセッサ10fから出力された信号をアナログ信号に変換する変換器である。アンプ10hは、デジタルアナログ変換器10gによって変換されたアナログ信号を、プロセッサ10fから通知された送信電力値になるように増幅させる増幅器である。その後、アンテナ10aは、アンプ10hによって増幅された信号を宛先に向けて送信される。
【0025】
[機能ブロック図]
続いて、図1に示したノードの機能ブロック図を説明する。なお、図1に示した各ノードは、同様の構成を有するので、ここでは、ノード10として説明する。また、ここで説明する機能構成は、あくまで例示であり、図示したものに限定されない。
【0026】
図3は、実施例1に係るノードの機能ブロック図である。図3に示すように、ノード10は、受信部11、送信部12、信号復調部13、位置推定部14、自ノードエリア判定部15、第1電力制御部16、第2電力制御部17、第3電力制御部18、送信データ生成部19を有する。
【0027】
なお、受信部11と送信部12は、図2に示したアンテナ10a、送受信アンテナ10a、アンプ10b、発振器10c、アナログデジタル変換器10d、デジタルアナログ変換器10g、アンプ10hに対応する。また、信号復調部13、位置推定部14、自ノードエリア判定部15、第1電力制御部16、第2電力制御部17、第3電力制御部18、送信データ生成部19は、プロセッサ10fが実行する処理部である。
【0028】
受信部11は、データを受信して増幅してデジタル信号に変換するとともに、連続波の交流信号を発振させてベースバンド信号へと変換する処理部である。送信部12は、各電力制御部から通知された信号をアナログ信号に変換し、いずれかの電力制御部から通知された送信電力まで増幅させて宛先に送信する処理部である。信号復調部13は、受信部11から出力されたデジタル信号を復調して、受信したデータを抽出する処理部である。
【0029】
位置推定部14は、マルチホップ無線ネットワークを形成するノードであって、データの宛先である宛先ノードと自ノードとの位置関係を推定する処理部である。例えば、位置推定部14は、宛先ノードであるGW装置から受信した既知信号を受信した際の受信電力からGW装置と自ノードとの位置関係を推定する。なお、既知信号としては、HELLOメッセージなどの制御信号を用いることができる。
【0030】
一例を挙げると、GW装置が送信電力P(dB)で既知信号を送信した場合、GW装置からの距離がr(m)の端末が当該既知信号を受信したときの信号電力Pは、式1に示した式で表すことができる。
【0031】
【数1】

【0032】
ここで、G(dB)は、受信端末の受信アンテナ利得を示し、G(dB)は、送信端末の送信アンテナ利得を示し、h(m)は、送信端末のアンテナ高を示し、h(m)は、受信端末のアンテナ高を示し、f(Hz)は、搬送波周波数を示す。path_loss(x、h、h、f)は、送受信間距離x(m)、送信アンテナ高h、受信アンテナ高h、搬送波周波数fにおける伝送路(dB)を表している。すなわち、path_loss(x、h、h、f)は、減衰量を表す。従って、位置推定部14は、宛先ノードから送信された既知信号の受信電力値から、宛先ノードと自ノードとの距離r(m)を式2に示した式で推定することができる。
【0033】
【数2】

【0034】
図3に戻り、自ノードエリア判定部15は、位置推定部14によって推定された距離に基づいて、自ノードが位置するエリアを判定する処理部である。具体的な例を挙げると、自ノードエリア判定部15は、自ノードが1ホップエリア、強制マルチホップエリア、マルチホップエリアのうち、どのエリアに該当するかを判定する。なお、1ホップエリアとは、GW装置まで1ホップでデータを送信するエリアを示す。強制マルチホップエリアとは、GW装置まで1ホップで送信できるが強制的にマルチホップで送信するエリアを示す。マルチホップエリアとは、GW装置までマルチホップでデータを送信するエリアを示す。
【0035】
図4を用いて具体的に説明する。図4は、エリア判定の具体例を説明する図である。図4に示すように、1ホップエリアとは、宛先ノードであるGW装置1が直接通信することができる最大の距離R(m)の半分(R/2)の範囲内であるエリア2を示す。また、強制マルチホップエリアとは、距離R(m)の範囲内のうちエリア2を除くエリア3を示す。また、マルチホップエリアとは、距離R(m)より離れたエリア4を示す。なお、各エリアの境界は、どちらからに属するように任意に設定できる。
【0036】
ここで、最大距離Rは、送信端末の最大送信電力をPmax(dB)、送信端末のアンテナ高をhAN(m)、受信端末が信号を検出できる最低電力値をPcs(dB)とした場合に、式3の式で表すことができる。
【0037】
【数3】

【0038】
したがって、自ノードエリア判定部15は、式2で算出した距離rが式3で算出したRの半分(R/2)以下である場合に、自ノードの位置を1ホップエリアと判定し、第1電力制御部16に送信指示を出力する。また、自ノードエリア判定部15は、式2で算出した距離rが式3で算出したR以下かつRの半分(R/2)より大きい場合に、自ノードの位置を強制ホップエリアと判定し、第2電力制御部17に送信指示を出力する。また、自ノードエリア判定部15は、式2で算出した距離rが式3で算出したRより大きい場合に、自ノードの位置をホップエリアと判定し、第3電力制御部18に送信指示を出力する。
【0039】
図3に戻り、第1電力制御部16は、自ノードが、宛先ノードが直接通信できる最大距離の範囲内にある1ホップエリアに位置すると推定された場合に、1ホップエリアに位置する他ノードが検出できる最低電力以上の電力で送信電力を制御する処理部である。例えば、図4に示すように、第1電力制御部16は、自ノードがGW装置1から距離d(m)の1ホップエリアに位置する場合、GW装置1からR/2(m)離れた位置のノードに届くように、送信電力を制御する。したがって、第1電力制御部16は、自ノードからd+R/2(m)離れた距離に位置するノードの受信電力が検出可能な最低電力Pcsとなるように、送信電力P(dB)を制御する。上述した条件を満たす送信電力P(dB)は、式4で表すことができる。
【0040】
【数4】

【0041】
このようにすることで、GW装置1からR/2(m)離れた位置に位置するノードと、GW装置1から距離d(m)の位置に位置する自ノードとが、互いにキャリアセンスで検出することができる。
【0042】
第2電力制御部17は、自ノードが強制マルチホップエリアに位置する場合に、1ホップエリアに位置するノードを経由して宛先ノードにデータが届くように、送信電力を制御する処理部である。例えば、第2電力制御部17は、自ノードが図4に示すエリア3の強制マルチホップエリアに位置する場合に、自ノードが送信した信号がGW装置1にPrx−Pの送信電力で届くように、送信電力を制御する。ここで、Prxは、GW装置1が受信できる最低受信電力を示し、Pは、予め定められた0より大きい定数を示す。なお、最低受信電力とは、ノードが受信モード移行する際の閾値となる電力を示す。また、自ノードとGW装置1との距離をd(m)、GW装置1のアンテナ高をhGW(m)とすると、第2電力制御部17が決定する送信電力P(dB)は、式5で表すことができる。
【0043】
【数5】

【0044】
ところが、強制マルチホップエリアであるエリア3に位置する自ノードは、GW装置1に直接データを届けることができなくても、1ホップエリアであるエリア1に位置するノードにはデータを届けなれば、GW装置1にデータを届けることができない。ここで、自ノードとGW装置1との距離をd(m)とすると、自ノードと1ホップエリアとの距離はd−R/2(m)となる。したがって、第2電力制御部17は、強制マルチホップエリアであるエリア3に位置する自ノードが、宛先のGW装置1には届かず、かつ、1ホップエリアのノードには届くようにするために、式6を満たすように、送信電力P(dB)を制御する。
【0045】
【数6】

【0046】
第3電力制御部18は、自ノードがマルチホップエリアに位置する場合に、1ホップエリアや強制マルチホップエリアに位置するノードを複数経由して宛先ノードにデータが届くように、送信電力を制御する処理部である。例えば、第3電力制御部18は、自ノードが図4に示すエリア4のマルチホップエリアに位置する場合に、宛先のGW装置1の最低受信電力Prx(dB)より小さい電力となるように、送信電力を制御する。ここで、エリア4に位置するノードの最大送信電力をPmax(dB)とした場合、第3電力制御部18は、式7を満たすように、送信電力P(dB)を制御する。なお、Pは、予め定められた0より大きい定数を示す。
【0047】
【数7】

【0048】
送信データ生成部19は、送信データを生成する処理部である。例えば、送信データ生成部19は、ノード10の内部または外部に接続されるセンサによって取得されたセンサ値を含んだパケット生成する。また、送信データ生成部19は、ノード10に接続される電力メータ等によって取得された値を含んだパケット生成する。
【0049】
送信部12は、送信データ生成部19によって生成されたデータを、第1電力制御部16または第2電力制御部17または第3電力制御部18のいずれかから入力された送信電力で宛先に送信する制御部である。
【0050】
[処理の流れ]
図5は、実施例1に係るノードが実行する処理の流れを示すフローチャートである。図5に示すように、ノード10の位置推定部14は、受信部11が宛先ノードから受信した既知信号の受信電力に基づいて、ノード10と宛先ノードとの距離dを推定する(S101)。
【0051】
続いて、自ノードエリア判定部15は、S101で推定された距離dと、宛先ノードが直接通信することができる最大距離Rとを用いて、ノード10が存在するエリアを判定する(S102)。
【0052】
そして、自ノードエリア判定部15によってノード10の存在エリアが1ホップエリアであると判定された場合(S103肯定)、第1電力制御部16は、式4に示された式を用いて送信電力Pを決定する(S104)。
【0053】
一方、自ノードエリア判定部15は、ノード10の存在エリアが1ホップエリアではないと判定された場合(S103否定)、ノード10の存在エリアが強制マルチホップエリアか否かを判定する(S105)。
【0054】
そして、自ノードエリア判定部15によってノード10の存在エリアが強制マルチホップエリアであると判定された場合(S105肯定)、第2電力制御部17は、式5に示された式を用いて送信電力Pを決定する(S106)。このとき、第2電力制御部17は、式6に示した式を満たすように、送信電力Pを決定する。
【0055】
一方、自ノードエリア判定部15によってノード10の存在エリアが強制マルチホップエリアではないと判定された場合(S105否定)、第3電力制御部18は、式7に示された式を用いて送信電力Pを決定する(S107)。
【0056】
その後、送信部12は、キャリアセンスを実行し、チャネルがアドリング状態であることを確認した後、S104、S106、S107のいずれかで決定された送信電力で、送信データ生成部19によって生成されたデータを宛先に送信する。
【0057】
[シミュレーション結果]
次に、シミュレーション結果を説明する。図6は、シミュレーション結果を示す図である。図6は、図4に示したノード1(GW装置)当たりの接続ノード数対データ収集成功率特性を示す。
【0058】
ここでは、一例として、各ノードのアンテナ高(h)は2m、GW装置のアンテナ高(h)は2m、各ノードは4000m×4000mの正方形内にランダムに配置し、GW装置は該当領域内の中心に配置した。なお、P=5、P=0とした。各ノードの送信パケットサイズは1566byteであり、PHY(physical layer)、MAC(メディアアクセス制御)の仕様はIEEE802.11bに準拠しており、データレートは1Mbpsである。
【0059】
また、LOS(Line of Sight)環境を想定しており、伝搬特性は式8から式10のような式を仮定した。ここで、d(m)は送受信間の距離、c(m/s)は光速を表している。
【0060】
【数8】

【数9】

【数10】

【0061】
図6に示すように、データ収集成功率95%で比較すると、送信電力制御を行わない場合は通信ノード数が約380台となる。一方、上述した送信電力制御を実施した場合は通信ノード数が約880台となる。つまり、上述した送信電力制御を使用することでGW装置1台当たりの収容台数を約2.3倍にすることが出来ることが分かる。
【0062】
[効果]
このように、各ノードは、宛先ノードからの距離に応じて送信電力を制御することができる。例えば、1ホップエリアに位置するノードは、同じ1ホップエリアに位置するノード各々が電力を検出できる最低限の送信電力で送信するので、キャリアセンスすることもできる。また、強制マルチホップエリアに位置するノードは、1ホップエリアに位置するノードのデータ送信と衝突しない範囲の電力量でデータを送信することができる。また、マルチホップエリアに位置するノードは、マルチホップして宛先ノードにデータが届く範囲内の電力でデータ送信を実行する。この結果、各ノードが最大電力量でデータ送信をする場合に比べて、各ノードが位置に応じた電力量でデータを送信するので、データ衝突を抑制することができる。また、各ノードは、電力メータ等に固定された時点でGW装置などとの距離を測定すればよく、その後、任意の間隔で実行すればよいので、データ送信に先立って実行する前処理の数も減らすことができる。このため、ネットワークのスループットの低下を抑制することができる。
【実施例2】
【0063】
さて、これまで本発明の実施例について説明したが、本発明は上述した実施例以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。そこで、以下に異なる実施例を説明する。
【0064】
(宛先ノード)
上記実施例では、宛先ノードがGW装置である例を説明したが、これに限定されるものではなく、任意のノードを宛先とすることができる。
【0065】
(送信電力)
上記実施例で説明した送信電力の算出式は、あくまで例示であり、これに限定されるものではない。例えば、各ノードの最低受信電力等が予めわかっている固定値等である場合には、1ホップエリアのノードの送信電力等について固定値を用いることもできる。また、第1エリアの範囲もGW装置1から距離dの範囲内である例で説明したが、これも例示であり、GW装置1の最大通信距離より小さい距離であれば、任意に設定することができる。
【0066】
(位置推定手法)
上記実施例では、宛先ノードから信号を受信した時の電力強度を用いて、自ノードと宛先ノードとの距離を推定する例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、各ノードは、宛先ノードの位置情報から自ノードと宛先ノードとの距離を推定することもできる。例えば、各ノードは、宛先ノードに対して、HELLOメッセージなどの既知信号を用いて、位置情報を要求する。そして、宛先ノードは、GPS(Global Positioning System)を用いて座標等を取得し、HELLOメッセージなどの既知信号に自身の位置を示す座標等を含めて、要求元のノードに送信する。その後、各ノードは、取得した位置情報と自身の位置情報とを用いて、自ノードと宛先ノードとの距離を推定することもできる。
【0067】
(1ホップエリア)
上記実施例では、宛先ノードが直接通信することができる最大通信距離の半分のエリアを1ホップエリアとする例を説明したが、これに限定されるものではなく、例えば最大通信距離の3分の1など最大通信距離より短い距離の範囲内であれば、任意に設定することができる。この場合、宛先ノードから最大通信距離(R)の3分の1(R/3)までが1ホップエリア、最大通信距離(R)の3分の1(R/3)からRまでが強制マルチホップエリア、最大通信距離(R)以上がマルチホップエリアとなる。
【0068】
(システム)
また、本実施例において説明した各処理のうち、自動的におこなわれるものとして説明した処理の全部または一部を手動的におこなうこともできる。あるいは、手動的におこなわれるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的におこなうこともできる。この他、上記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0069】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られない。つまり、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。例えば、各電力制御部を1つの電量制御部に統合することができる。さらに、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPUおよび当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【符号の説明】
【0070】
10 ノード
11 受信部
12 送信部
13 信号復調部
14 位置推定部
15 自ノードエリア判定部
16 第1電力制御部
17 第2電力制御部
18 第3電力制御部
19 送信データ生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチホップ無線ネットワークを形成するノードであって、データの宛先である宛先ノードと自ノードとの位置関係を推定する推定部と、
前記推定部によって前記自ノードが、前記宛先ノードが直接通信できる最大距離の範囲内にある第1エリアに位置すると推定された場合に、前記第1エリアに位置する他ノードのうち前記自ノードから最も離れたノードが検出できる最低電力以上の電力を送信電力と決定する第1決定部と、
前記推定部によって前記自ノードが、前記第1エリア以外のエリアに位置すると推定された場合に、前記宛先ノードが受信できる最低電力より小さい電力を送信電力と決定する第2決定部と、
前記第1決定部または第2決定部によって決定された送信電力で、前記宛先ノードにデータを送信する送信部と
を有することを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
前記推定部は、前記宛先ノードからデータを受信した際の電力強度または前記宛先ノードから取得した位置情報に基づいて、前記宛先ノードと自ノードとの位置関係を推定することを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記第2決定部は、前記自ノードが前記最大距離から前記第1エリアまでの範囲に位置すると判定された場合には、前記第1エリアに位置するノードが受信できる最低電力以上の電力を送信電力と決定することを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記第2決定部は、前記自ノードが前記最大距離より離れたエリアに位置すると判定された場合には、前記自ノードがデータを送信する際に使用できる最大の送信電力以下の電力を送信電力と決定することを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項5】
コンピュータが、
マルチホップ無線ネットワークを形成するノードであって、データの宛先である宛先ノードと自コンピュータとの位置関係を推定し、
前記宛先ノードが直接通信できる最大距離の範囲内にある第1エリアに前記自コンピュータが位置すると推定した場合に、前記第1エリアに位置する他ノードのうち前記自コンピュータから最も離れたノードが検出できる最低電力以上の電力を送信電力と決定し、
前記第1エリア以外のエリアに前記自コンピュータが位置すると推定した場合に、前記宛先ノードが受信できる最低電力より小さい電力を送信電力と決定し、
前記決定した送信電力で、前記宛先ノードにデータを送信する
処理を実行することを特徴とする無線通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−115785(P2013−115785A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−263064(P2011−263064)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】