説明

無線通信装置及びプログラム、並びに、無線通信システム

【課題】 アクセスネットワークを構成する複数の無線基地局のいずれかに所属する無線通信装置で、ハンドオーバ制御に伴う通信品質の低下を抑制する。
【解決手段】 本発明は、アクセスネットワークを構成する複数の無線基地局のいずれかに所属し、その無線基地局を介して電話通信可能な無線通信装置に関する。そして、無線通信装置は、当該無線通信装置の周辺の無線基地局との通信品質に係る測定を行う手段と、現在当該無線通信装置が所属する無線基地局から、他の無線基地局へのハンドオーバに係る判定を、アクセスネットワーク側に行わせるための通知信号を送信する手段と、当該無線通信装置の電話通信での送信信号及び又は受信信号について有音状態又は無音状態を判定する手段と、通信品質の測定結果及び送受信信号の判定結果を利用して、通知信号を送信するタイミングを決定して制御する手段とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置及びプログラム、並びに、無線通信システムに関し、例えば、携帯電話網(移動体通信網)及び携帯電話端末を備えるシステムに適用することができる。
【背景技術】
【0002】
携帯電話網等の無線通信システムにおいて、端末(無線通信装置)で音声通話中である無線方式で通信中にその無線品質(通信品質)の低下により、通信を維持するため他の無線方式に切り替えることがある。このとき、端末において、切り替え前と切り替え後の無線方式によっては、現在の通信路を維持しながら、同時に切り替え予定の無線方式の通信路を確保し、その後通信内容を移行してから、以前の通信路を開放するということが無線の特性上難しい。そこで、従来の端末では、一度現在の無線通信路を切断して、新たな無線通信路を設定し、通信内容を切り替える場合がある。これを音声通信に適用した方式として、SRVCC(Single Radio Voice Call Continuity、非特許文献1参照)と呼ばれる方式がある。
【0003】
SRVCCでの無線通信路の切り替えは、端末が、現在通信中の無線基地局との無線状態(通信品質に係る情報)を、アクセスネットワーク側(携帯電話網側)に通知し、アクセスネットワーク側で端末から通知される無線状態に基づいて、無線基地局の切替え(ハンドオーバ)の要否の判断を行う。
【0004】
このとき、ユーザが当該端末を用いて通話中にもかかわらず無線通信路の切り替えが行われると、音声の途切れが発生することが懸念される。このような問題に関連する従来技術として、特許文献1の記載技術がある。特許文献1では、一般的なハンドオーバ時の解決方法として、音声通信の無音状態の時にハンドオーバを発生させやすくすることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−36936号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】3GPP(3rd Generation Partnership Project)編、3GPP TS 23.216“Single Radio Voice Call Continuity(SRVCC)”、[Online]、INTERNET、[2011年1月9日検索],<URL: http://www.3gpp.org/ftp/Specs/html-info/23216.htm>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1では、無音状態のときにハンドオーバさせやすくする構成となっているが、無音時にハンドオーバをさせやすくするために、ハンドオーバ移行パラメータ(無線エラー閾値やハンドオーバ起動電界強度)を操作する方式を取っている。このため、特許文献1の記載技術では、無音状態でハンドオーバを発生させやすくするという効果を十分にあげるためには、ハンドオーバ移行パラメータを大きく操作する必要がある。そのため、特許文献1の記載技術では、端末がハンドオーバ先の無線基地局に十分近づく前にハンドオーバが発生してしまったり、ハンドオーバをする前に現在所属している無線基地局と通信が途切れてしまうおそれがあった。すなわち、特許文献1の記載技術では、端末において、無音状態でハンドオーバを発生させやすくすることができる反面、ハンドオーバ制御に伴う通信品質の低下が大きくなるおそれがあった。
【0008】
また、特許文献1の記載技術では、一般的な表記となっているため、SRVCCを用いてハンドオーバする無線通信システムに適用する場合、無音状態の時にハンドオーバを発生しやすくさせる構成については実現できなかった。
【0009】
上述のような問題点に鑑み、アクセスネットワークを構成する複数の無線基地局のいずれかに所属する無線通信装置で、ハンドオーバ制御に伴う通信品質の低下を抑制することができる無線通信装置及びプログラム、並びに、無線通信システムが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の本発明は、アクセスネットワークを構成する複数の無線基地局のいずれかに所属し、所属する無線基地局を介して電話通信可能な無線通信装置において、(1)当該無線通信装置の周辺の無線基地局との通信品質に係る測定を行う通信品質測定手段と、(2)現在当該無線通信装置が所属する無線基地局から、他の無線基地局へのハンドオーバに係る判定を、上記アクセスネットワーク側に行わせるための通知信号を、上記アクセスネットワーク側へ送信する通知手段と、(3)当該無線通信装置の電話通信での送信信号及び又は受信信号について有音状態又は無音状態を判定する判定手段と、(4)上記通信品質測定手段の測定結果、及び、上記判定手段の判定結果を利用して、上記通知手段が通知信号を送信するタイミングを決定し、決定したタイミングに従って、上記通知手段を制御する制御手段とを有することを特徴とする。
【0011】
第2の本発明の無線通信プログラムは、(1)アクセスネットワークを構成する複数の無線基地局のいずれかに所属し、所属する無線基地局を介して電話通信可能な無線通信装置に搭載されたコンピュータを、(2)当該無線通信装置の周辺の無線基地局との通信品質に係る測定を行う通信品質測定手段と、(3)現在当該無線通信装置が所属する無線基地局から、他の無線基地局へのハンドオーバに係る判定を、上記アクセスネットワーク側に行わせるための通知信号を、上記アクセスネットワーク側へ送信する通知手段と、(4)当該無線通信装置の電話通信での送信信号及び又は受信信号について有音状態又は無音状態を判定する判定手段と、(5)上記通信品質測定手段の測定結果、及び、上記判定手段の判定結果を利用して、上記通知手段が通知信号を送信するタイミングを決定し、決定したタイミングに従って、上記通知手段を制御する制御手段として機能させることを特徴とする。
【0012】
第3の本発明は、複数の無線基地局を備えるアクセスネットワークと、いずれかの無線基地局に所属して、所属する無線基地局を介して電話通信可能な無線通信装置とを備える無線通信システムにおいて、上記無線通信装置として、第1の本発明の無線通信装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、アクセスネットワークを構成する複数の無線基地局のいずれかに所属する無線通信装置で、ハンドオーバ制御に伴う通信品質の低下を抑制することができる
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1の実施形態に係る無線通信装置の機能的構成について示したブロック図である。
【図2】第1の実施形態に係る無線通信システムの全体構成について示したブロック図である。
【図3】第1の実施形態に係る無線通信装置において通信品質情報通知に係るイベントを開始するタイミング及び終了するタイミングについて示したタイミングチャート(1)である。
【図4】第1の実施形態に係る無線通信装置において通信品質情報通知に係るイベントを開始するタイミング及び終了するタイミングについて示したタイミングチャート(2)である。
【図5】第1の実施形態に係る無線通信装置において通信品質情報通知に係るイベントを開始するタイミング及び終了するタイミングについて示したタイミングチャート(3)である。
【図6】第2の実施形態に係る無線通信装置において、通信品質情報通知の通知間隔が調整される様子について示したタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(A)第1の実施形態
以下、本発明による無線通信装置及びプログラム、並びに、無線通信システムの第1の実施形態を、図面を参照しながら詳述する。
【0016】
(A−1)第1の実施形態の構成
図2は、第1の実施形態の無線通信装置10を備える無線通信システム1の全体構成を示すブロック図である。なお、図2において、括弧内の符号は、後述する第2の実施形態でのみ用いる符号である。
【0017】
図2において、無線通信システム1には、2つの無線基地局20−1、20−2が配置されている。そして、無線基地局20−1、20−2は、それぞれが対応する領域内の無線通信装置を収容する。図2においては、図示を省略しているが、無線基地局20−1、20−2は、無線通信装置10を収容して上位ネットワークへ接続させるためのアクセスネットワークのシステム(以下、「アクセスネットワーク」と呼ぶものとする)の一部を構成しているものとする。なお、無線通信装置10とアクセスネットワークとの関係は、例えば、携帯電話端末と、携帯電話網(移動体通信網)との関係に相当する。
【0018】
そして、無線基地局20−1、20−2のそれぞれが対応する領域は隣接しており、一部が重複しているものとする。そして、説明を簡易にするため、図2に示す無線通信装置10は、現在無線基地局20−1に収容されているものとして以下の説明を行うが、無線通信装置10が収容される無線基地局20は限定されないことは当然である。
【0019】
以下では、無線通信装置10が現在収容されている無線基地局20−1が対応する領域(セル)を、「セルS」と呼ぶものとする。セルSに隣接するセル(無線基地局20−2が対応するセル)を「セルN」と呼ぶものとする。例えば、セルSで無線基地局20−1に収容されていた無線通信装置10が、セルNの方向に移動した場合には、無線通信装置10は、無線基地局20−1から無線基地局20−2へ収容先を変更(ハンドオーバ)することになる。
【0020】
また、以下では、無線通信装置10が、いずれかの無線基地局20に収容されることを、当該無線基地局20に対応するセルに「属する」や、「入る」とも表現するものとする。また、以下では、無線通信装置10が、いずれかの無線基地局20に収容されており、当該無線基地局20の収容からはずれることを、当該無線基地局20に対応するセルから「出る」とも表現するものとする。
【0021】
さらに、図2では、無線通信システム1に2つの無線基地局20−1、20−2が配置されているが、配置される無線基地局20の数(配置されるセルの数)は限定されないものである。また、ここでは、説明を簡易にするために、無線通信システム1上に存在する無線通信装置10は1台であるものとして説明するが、配置される無線通信装置10の数が限定されないことは当然である。
【0022】
さらにまた、以下では、無線通信装置10は、符号化されたディジタル音声信号を送受信する電話装置(携帯電話端末)であるものとして説明する。
【0023】
そして、無線通信システム1におけるアクセスネットワークとしては、例えば、既存の携帯電話網を適用することができるので、詳しい説明を省略する。具体的には、無線通信システム1におけるアクセスネットワークとしては、既存のLTE(Long Term Evolution)、E−UTRA/E−UTRAN(Evolved Universal Terrestrial Radio Access / Evolved Universal Terrestrial Radio Access Network)等に対応した携帯電話網等を適用することができる。なお、図2においては図示を省略しているが、無線通信システム1において、無線基地局20を含むアクセスネットワークには、無線通信装置10のハンドオーバに係る判断や制御を行う通信制御装置等、既存の携帯電話網と同様の構成要素も含まれているものとする。
【0024】
そして、無線通信システム1におけるアクセスネットワークでは、無線通信装置10のハンドオーバに係る制御を行う構成について、既存のSRVCC(非特許文献1参照)と同様の方式が採用されているものとして説明する。無線通信装置10側でのハンドオーバに係る制御を行う構成については後述する。
【0025】
次に、無線通信装置10の内部構成について説明する。
【0026】
図1は、無線通信装置10の機能的構成について示したブロック図である。なお、図1において、括弧内の符号は、後述する第2の実施形態でのみ用いる符号である。
【0027】
無線通信装置10は、無線品質測定部11、通知設定管理部12、コーデック処理部13、無音判定部14、パラメータ算出部15、無線品質通知部16、及び無線送受信部17を有している。
【0028】
無線通信装置10は、例えば、CPU、ROM、RAM、EEPROM、ハードディスクなどのプログラムの実行構成、及び、無線通信するためのインタフェースを有する情報処理装置(複数装置に分かれた構成であっても良い)に、実施形態の無線通信プログラム等をインストールすることにより構築しても良く、その場合でもその機能的構成は、図1のように示すことができる。
【0029】
なお、図1では、図示を省略しているが、無線通信装置10は、例えば、ユーザ(近端話者)に音声入力させるためのマイクや、ユーザ(近端話者)へ音声出力するためのスピーカ、ユーザからの操作を受け付けるための入力手段(例えば、プッシュボタン等)等、電話装置(携帯電話端末)としての機能に必要な他の構成も備えているものとする。
【0030】
無線送受信部17は、無線通信するためのインタフェースの機能を担っている。無線送受信部17は、無線基地局20から受信した符号化された音声データを受信すると、そのデータを、エンコード処理部131に与える。また、無線送受信部17は、エンコード処理部131で、符号化された音声データを無線基地局20に向けて送出する。なお、無線送受信部17としては、既存の携帯電話端末等と同様のものを適用することができる。
【0031】
コーデック処理部13は、当該無線通信装置10が、電話通信において送受信する音声信号の符号化処理(エンコード)及び復号処理(デコード)を行うものであり、エンコード処理部131及びデコード処理部132を有している。なお、コーデック処理部13については、例えば、既存の携帯電話端末等と同様のものを適用することができる。
【0032】
エンコード処理部131は、当該無線通信装置10が送信する送信信号(近端側から遠端側へ送信する音声信号)について、所定の符号化方式(コーデック)で符号化した音声データを得るものである。デコード処理部132は、所定の符号化方式で符号化された受信信号(遠端側から近端側へ送信された音声信号)の音声データを、復号するものである。
【0033】
無音判定部14は、電話通信の送信信号及び受信信号における無音状態を判定するものである。具体的には、無音判定部14は、送信信号及び受信信号の両方について無音の場合には、「無音状態」と判定するものとする。そして、無音判定部14は、無音状態でない場合(すなわち、送信信号又は受信信号の少なくとも一方が有音の場合)には、「有音状態」と判定するものとする(単に、無音状態でないと判定するようにしても良い)。なお、無音判定部14において、無音状態と判定する基準については、上述の例に限定されず、送信信号又は受信信号の一方が無音の場合に、無音状態と判定するようにしても良い。そして、無音判定部14は、無音状態と判定できる間、その旨を、パラメータ算出部15に通知する。
【0034】
無音判定部14が、送信信号及び受信信号について無音区間を判定する方式については限定されないものであり、既存の種々の方式を用いることができるが、ここでは、エンコード処理部131及びデコード処理部132で処理される内容に基づいて判定する方式が採用されるものとして説明する。
【0035】
無線通信装置10が送受信する音声信号のコーデック(符号化方式)については限定されないものであるが、ここでは、例として、AMR(Adaptive Multi−Rate)が採用されるものとする。そして、送信信号の有音区間と無音区間を検出するVAD(Voice Activity Detection)と呼ばれる機能をエンコード処理部131に対応させ、VADの機能により検出された情報(VADフラグ)に基づいて、無音区間の転送データレートの低減を図っているものとする。この場合、無音判定部14では、エンコード処理部131で得られるVADフラグにより、送信信号の無音区間を検出することができる。また、この場合、無音判定部14は、デコード処理部132側についても、受信信号として受信したフレーム(データ)が、通常の音声データが挿入されたフレームであるか、無音区間であることを示す無音フレーム(SIDフレーム:Silence Descripter フレーム)であるかを判定し、その判定結果に基づいて、受信信号の無音区間を検出することができる。
【0036】
無線品質測定部11は、無線送受信部17で通信可能な無線基地局20(当該無線通信装置10の周辺の無線基地局20)との間の通信品質(無線状態)に係る所定項目の測定を行うものである。例えば、無線品質測定部11は、無線送受信部17における無線信号の受信強度や、エラー検出率等を用いて、各無線基地局20との間の通信品質を測定するようにしても良い。なお、無線品質測定部11により測定方法や測定項目については限定されないものである。そして、無線品質測定部11は、測定結果を、パラメータ算出部15に与える。
【0037】
なお、ここでは、無線品質測定部11の測定結果として得られた測定値が、大きいほど、通信品質の良好度合が良好である(高い)ことを示すものとして説明する。また、ここでは、無線品質測定部11では、セルSに存在する間、無線基地局20−1及び無線基地局20−2に関する通信品質の測定が可能であるものとして説明する。さらに、無線品質測定部11が測定する内容としては、例えば、既存のSRVCCに対応した携帯電話端末と同様の内容を適用することができる。
【0038】
無線品質通知部16は、後述するパラメータ算出部15の制御に応じたタイミングで、最新の無線品質測定部11による測定結果に係る情報(以下、「通信品質情報」という)を、無線送受信部17を介して、アクセスネットワーク側(現在当該無線通信装置10が収容されている無線基地局20)に通知する。なお、無線品質通知部16が通知する通信品質情報の内容は、例えば、既存のSRVCCに対応した携帯電話端末が、携帯電話網側に対して、ハンドオーバの判断を求める際に送信する情報(例えば、無線測定報告等)と同様の形式を適用することができる。
【0039】
そして、通信品質情報を受信した無線基地局20は、上述の無線通信装置10のハンドオーバに係る判断や制御を行う通信制御装置(図示せず)に、受信した通信品質情報を引き渡すものとする。そして、アクセスネットワークでは、上述の図示しない通信制御装置の決定により、当該無線通信装置10を他の無線基地局20へハンドオーバさせると決定された場合には、当該無線通信装置10をハンドオーバ先の無線基地局20へ収容させる制御が行われる。なお、通信システム1において、無線通信装置10が送信した通信品質情報を保持して、当該無線通信装置10の収容先を決定する構成については限定されず、例えば、既存の携帯電話網と同様の構成(例えば、SRVCCを採用した携帯電話網における構成)と同様のものを用いるようにしても良い。
【0040】
パラメー夕算出部15は、無線品質測定部11による測定結果、通知設定管理部12に格納された定義内容(後述する)、及び無音判定部14の判定結果を利用して、無線品質通知部16により通信品質情報通知を行うタイミングに係る決定を行うものである。具体的には、パラメータ算出部15は、無線品質通知部16に対して、通信品質情報通知の開始/終了のタイミング、及び通信品質情報通知を行う間隔を決定するものとする。そして、無線品質通知部16は、パラメータ算出部15の制御に応じて、通信品質情報通知を行う。パラメータ算出部15による処理については、後述する動作説明で詳述する。
【0041】
通知設定管理部12は、パラメータ算出部15による処理に必要な定義内容等を記憶する機能を担っている。具体的には、通知設定管理部12では、パラメータ算出部15で、通信品質情報通知の開始及び終了を行う契機となるイベント(以下、「通知イベントE」という)に関する定義情報が1又は複数格納されている。通知イベントEとしては、例えば、セルNに係る通信品質がセルSに係る通信品質より一定以上上回った場合や、セルSに係る通信品質がある閾値T以下になった場合等の内容を定義することができる。そして、通知設定管理部12では、通知イベントEごとに、例えば、通信品質情報通知を行う間隔や回数等についても定義した情報も格納しているものとする。ここでは、通知設定管理部12には、通知イベントEごとに、通信品質情報通知を行う間隔を示すパラメータ(以下、「通知間隔d0」という)の情報も格納されているものとする。
【0042】
通知イベントEとしては、例えば、1又は複数の条件式を用意し、パラメータ算出部15が、それらの条件式の計算結果(パラメータの算出結果)に応じて、当該通知イベントEの開始又は終了の判定を行うように定義されているものとする。そして、パラメータ算出部15は、当該通知イベントEが開始して、アクティブ状態となった場合には、無線品質通知部16に、その旨及び通知間隔d0を通知して、通信品質情報通知の開始をさせる制御を行う。そして、当該通知イベントEが開始した旨及び通知間隔d0が通知されると、無線品質通知部16は、通知間隔d0ごとに通信品質情報通知を繰り返す動作を開始する。一方、当該通知イベントEが終了した場合には、パラメータ算出部15は、無線品質通知部16にその旨を通知して、通信品質情報通知の終了をさせる制御を行う。通知設定管理部12に格納されている通知イベントEの定義内容の詳細については後述する動作説明において詳述する。
【0043】
(A−2)第1の実施形態の動作
次に、以上のような構成を有する第1の実施形態の通信システム1における無線通信装置10の動作を説明する。
【0044】
まず、無線通信装置10は、無線品質測定部11により、自装置が属しているセルSおよび周辺のセルNに係る通信品質を適宜測定しているものとする。
【0045】
そして、ここでは、通知設定管理部12には、SRVCCでのハンドオーバ契機となるイベントに準じた内容のイベント(以下、「通知イベントEs」という)が定義された情報が格納されているものとする。なお、SRVCCでのハンドオーバ契機となるイベントとは、参考文献1(3GPP編、3GPP TS 36.331“Evolved Universal Terrestrial Radio Access (E-UTRA);Radio Resource Control (RRC); Protocol specification”、[Online]、INTERNET、[2011年2月9日検索],<URL: http://www.3gpp.org/ftp/Specs/html-info/36331.htm>)で定義されているものである。
【0046】
そして、パラメータ算出部15は、通知設定管理部12から通知イベントEsに関して定義された情報(条件式)を読み込む。
【0047】
具体的には、通知イベントEsには、以下の(1)式〜(4)式に示される条件式が含まれているものとする。また、通知イベントEsでは、当該無線通信装置10とセルSとの所定の条件の関係が成立した状態(以下、「状態CS」という)及び、当該無線通信装置10とセルNと所定の条件の関係が成立した状態(以下、「状態CN」という)が定義されているものとする。例えば、パラメータ算出部15では、状態CS及び状態CNのそれぞれに対応するフラグ(変数)を定義しておき、それらのフラグを用いて、当該無線通信装置10の各状態(状態CS、状態CN)が成立するか否かを管理するようにしても良い。
【0048】
また、以下では、当該無線通信装置10が、状態CS(又は状態CN)に該当しない状態から該当する状態になることを状態CS(又は状態CN)に「入る」(Entering)というものとする。また、同様に、当該無線通信装置10が、状態CS(又は状態CN)に該当する状態から該当しない状態になることを状態CS(又は状態CN)から「出る」(Leaving)というものとする。
【0049】
そして、通知イベントEsでは、当該無線通信装置10が、状態CSに入る条件(以下、「条件CS1」という)は、以下の(1)式により定義されているものとする。また、当該無線通信装置10が、状態CSにから出る条件(以下、「条件CS2」という)は、以下の(3)式により定義されているものとする。さらに、当該無線通信装置10が、状態CNに入る条件(以下、「条件CN1」という)は、以下の(2)式により定義されているものとする。さらにまた、当該無線通信装置10が、状態CNにから出る条件(以下、「条件CN2」という)は、以下の(4)式により定義されているものとする。
【0050】
条件CS1:Ms+Hys<Thresh_S …(1)
条件CN1:Mn+Ofn−Hys>Thresh_N …(2)
条件CS2:Ms−Hys>Thresh_S …(3)
条件CN2:Mn+Ofn+Hys<Thresh_N …(4)
上記の(1)式〜(4)式において「Ms」は、無線品質測定部11で測定されたセルSに係る通信品質の測定値である。また、「Mn」は無線品質測定部11で測定されたセルNに係る通信品質の測定値である。さらに、「Hys」は閾値付近で状態がばたつくのを防ぐヒステリシスパラメータである。さらにまた、「Thresh_S」は通知イベントEsにおけるセルSに係る通信品質に対する閥値である。また、「Thresh_N」は、通知イベントEsにおけるセルNに係る通信品質に対する閾値である。
【0051】
さらに、「Ofn」はオフセット値であり、Ofnの初期値としては、予め所定の値がイベントEsの定義情報内で定められているものとする。そして、Ofnは、無音判定部14の判定結果に応じて調整されるパラメータであるものとする(参考文献1ではこのOfnに対してこのような調整は行われていない)。具体的には、通知イベントEsにおいて、Ofnは、以下の(5)式により定義されるものであるものとする。以下の(5)式において、Osは、無音判定部14の判定結果に応じて変動するパラメータであり、判定結果が無音状態の場合Os≧0となり、判定結果が有音状態の場合Os<0となるものとする。また、以下の(5)式において、Ofnは初期値であり、Ofn’は、Osにより調整された後の値であることを示している。
【0052】
Ofn’=Ofn+Os …(5)
そして、通知イベントEsでは、条件CS1と条件CN1が同時に成立する場合には開始しアクティブ状態となるものとする。さらに、通知イベントEsでは、アクティブ状態となった後、条件CS2または条件CN2のいずれかが成立した場合には、終了(アクティブ状態が解除)するように定義されているものとする。
【0053】
上述の通り、Ofnは無音判定部14の判定結果に応じて変動するパラメータであるため、条件CS1及び条件CN2の成立には、無音判定部14の判定結果が影響することになる。
【0054】
無音判定部14の判定結果が無音状態の場合には、Ofnの値がより大きい値に調整されるため、条件CN1が成立するために必要なMnの値はより小さい値で良く、成立しやすくなる。すなわち、無音判定部14の判定結果が無音状態の場合には、通知イベントEsが開始するための条件CN1は緩くなる。
【0055】
このように、無音判定部14の判定結果が無音状態の場合には、Ofnの値を調整した結果、通知イベントEsが開始するタイミングがより早くなる傾向となる。言い換えると、無音判定部14の判定結果が無音状態の場合には、Ofnの値を調整した結果、通知イベントEsが開始してから終了するまでの期間はより長くなることになる。
【0056】
これに対して、有音判定部14の判定結果が有音状態の場合には、Ofnの値がより小さい値に調整されるため、条件CN1が成立するために必要なMnの値はより大きい値となる必要があり、成立しにくくなる。すなわち、有音判定部14の判定結果が有音状態の場合には、通知イベントEsが開始するための条件CN1は厳しくなる。
【0057】
すなわち、無音判定部14の判定結果が有音状態の場合には、Ofnの値を調整した結果、通知イベントEsが開始するタイミングがより遅くなる傾向となる。言い換えると、無音判定部14の判定結果が無音状態の場合には、Ofnの値を調整した結果、通知イベントEsが開始してから終了するまでの時間はより短くなることになる。
【0058】
図3〜図5は、パラメータ算出部15において、通知イベントEsが、開始するタイミング及び終了するタイミングについて示したグラフである。
【0059】
また、図3〜図5では、横軸が時刻を表わしており、縦軸がMs、Mnの値を表わしている。
【0060】
図3は、パラメータ算出部15において、Ofnが調整されないと仮定した場合(すなわち、Osが加算されない場合)の通知イベントEsが開始するタイミング及び終了するタイミングについて示したグラフである。
【0061】
図3では、無線通信装置10が、状態CS及び状態CNのいずれにも該当しない状態から、タイミングts0より前の時点で条件CS1が成立して状態CSに入り、さらにタイミングts0の時点でMnの上昇に伴って条件CN1が成立して状態CNに入った様子について示している。すなわち、図3では、ts0の時点で、CS1及びCN1が成立しており、無線通信装置10は状態CS及び状態CNの両方に入り、通知イベントEsが開始している。そして、図3では、その後、Msの値が上昇して、タイミングte0の時点で、条件CS2が成立し、通知イベントEsが終了している。
【0062】
図4は、無音判定部14の判定結果が有音状態だった場合の通知イベントEsが開始するタイミング及び終了するタイミングについて示したグラフである。なお、図4において、Ms及びMnの遷移状況は同じであるものとする。そして、図4に示すタイミングts0、タイミングte0は上述の図3におけるタイミングと同じであるものとする。
【0063】
図4では、無線通信装置10が、状態CS及び状態CNのいずれにも該当しない状態から、タイミングts0より前の時点で条件CS1が成立して状態CSに入っているものとする。
【0064】
そして、その後、タイミングts0の時点でMnが上述の図3と同じ値となるが、ここでは、Ofnは、上記の(5)式により調整されたOfn’(すなわち、Os分減算された値)に置き換えられるため、条件CN1を成立させるには、Mnの値が足りないことになる。
【0065】
そして、図4では、タイミングts0の後、Mnの値はさらに上昇し、タイミングts1の時点で条件CN1が成立して状態CNに入った様子について示している。すなわち、図4では、タイミングts0よりも遅いタイミングts1で、CS1及びCN1が成立し、通知イベントEsが開始している。そして、図4では、その後、Msの値が上昇して、タイミングte0の時点で、条件CS2が成立し、通知イベントEsが終了している。
【0066】
すなわち、図4に示すように、無音判定部14の判定結果が有音状態だった場合には、CN1が成立するタイミングがより遅くなるように、Ofnが調整されている。そして、図4では、それに伴って、通知イベントEsが開始するタイミングも遅くなっており、図3の場合と比べて、通知イベントEsが開始してから終了するまでの期間が短くなっている。
【0067】
図5は、無音判定部14の判定結果が無音状態だった場合の通知イベントEsが開始するタイミング及び終了するタイミングについて示したグラフである。なお、図5において、Ms及びMnの遷移状況は同じであるものとする。そして、図5に示すタイミングts0、タイミングte0は上述の図3におけるタイミングと同じであるものとする。また、図5において、タイミングts2は、タイミングts0よりも前のタイミング(すなわち、ts2<ts0)を示している。
【0068】
図5では、無線通信装置10が状態CS及び状態CNのいずれにも該当しない状態から、タイミングts0及びタイミングts2より前の時点で条件CS1が成立して状態CSに入っている。そして、その後、タイミングts0より前のタイミングts2の時点で、条件CN1が成立して状態CNに入った様子について示している。上述の通り、ここでは、Ofnは、上記の(5)式により調整されたOfn’(すなわち、Os分加算された値(ただしOs≠0))に置き換えられるため、条件CN1の成立に必要なMnの値は、Ofnが調整されない場合(上述の図3の場合)よりも小さい値で良い。すなわち、図5では、タイミングts0よりも早いタイミングts2で、CS1及びCN1が成立しており、無線通信装置10は状態CS及び状態CNの両方に入り、通知イベントEsが開始している。そして、図5では、その後、Msの値が上昇して、タイミングte0の時点で、条件CS2が成立し、通知イベントEsが終了している。
【0069】
以上のように、無音判定部14の判定結果が無音状態だった場合には、CN1が成立するタイミングがより早くなるように、Ofnが調整されている。そして、図5では、それに伴って、通知イベントEsが開始するタイミングも早くなっており、図3の場合と比べて、通知イベントEsが開始してから終了するまでの期間が長くなっている。
【0070】
なお、図3〜図5では、通知イベントEsが終了する契機として、条件CS2の成立した場合を例としているが、条件CN2が成立した場合を契機する場合も当然有り得る。
【0071】
(A−3)第1の実施形態の効果
第1の実施形態によれば、以下のような効果を奏することができる。
【0072】
無線通信装置10では、現在属するセルSに隣接するセルNに係る通信品質の測定値(Mn)を調整するオフセット値(Ofn)を、無音判定部14の判定結果に応じて調整している。言い換えると、無線通信装置10では、間接的に、セルNに係る通信品質の測定値Mnを、無音判定部14の判定結果に応じて調整している。これにより、無線通信装置10では、無音判定部14の判定結果が無音状態の場合に、通知イベントEsが開始するタイミングをより早くしている。したがって、無線通信装置10では、無音判定部14の判定結果が無音状態の場合に、有音状態の場合よりも、通信品質情報通知の回数(頻度)がより多くなり、結果、ハンドオーバ契機をコントロールする(有音状態よりも無音状態によりハンドオーバさせやすくすること等)を行い、ハンドオーバ制御に伴う通信品質の低下を抑制することができる
また、無線通信装置10では、通知イベントEsの判定に用いる条件式に用いるパラメータを調整しているだけで、通信品質情報通知に含めるパラメータ(無線品質測定部11の測定結果等)自体については調整していない。これにより、本来無線通信装置10では、特許文献1の記載技術のように、無音状態でハンドオーバを発生させやすくすることに伴う通信品質の低下を抑制することができる。
【0073】
(B)第2の実施形態
以下、本発明による無線通信装置及びプログラム、並びに、無線通信システムの第2の実施形態を、図面を参照しながら詳述する。
【0074】
(B−1)第2の実施形態の構成及び動作
第2の実施形態の無線通信システム1Aも図2を用いて示すことができる。なお、図2において、括弧内の符号は、第2の実施形態でのみ用いる符号である。
【0075】
第2の実施形態の無線通信システム1Aでは、無線通信装置10が無線通信装置10Aに置き換わっている点で、第1の実施形態と異なっている。
【0076】
そして、第2の実施形態の無線通信装置10Aも、図1を用いて示すことができる。なお、図1において、括弧内の符号は、第2の実施形態でのみ用いる符号である。
【0077】
第2の実施形態の無線通信装置10Aは、パラメータ算出部15が、パラメータ算出部15Aに置き換わっている点で、第1の実施形態と異なっている。
【0078】
パラメータ算出部15Aは、無音判定部14の判定結果に応じて、無線品質通知部16に通知するための通知間隔d0を調整し、調整後のパラメータ(以下、「通知間隔d0’」という)を無線品質通知部16に通知する点で、第1の実施形態と異なっている。
【0079】
なお、通知間隔d0’は、以下の(6)式に示すように調整される。(6)式において、dsは、無音判定部14の判定結果に応じて変動するパラメータであり、無音状態ではds≧0、有音状態ではds<0であるものとする。
【0080】
通知間隔d0’=d0+ds …(6)
すなわち、パラメータ算出部15Aでは、無音判定部14の判定結果が有音状態の場合には、通知間隔d0をより長い時間(長い間隔)に調整し、無音状態の場合には通知間隔d0をより短い時間(長い間隔)に調整するものとする。
【0081】
なお、パラメータ算出部15Aでは、無音判定部14の判定結果が無音状態の場合に、有音状態の場合よりも、無線品質通知部16に適用する通知間隔が短くなるように調整されれば、その通知間隔の調整方式は限定されないものである。例えば、有音状態の場合又は無音状態の場合のいずれか一方の場合のみ、無線品質通知部16に適用する通知間隔を調整するようにしても良い。
【0082】
図6は、パラメータ算出部15Aにより、通知間隔d0が調整される様子について示したタイミングチャートである。
【0083】
図6(a)は、調整が行われていない通知間隔d0を無線品質通知部16に適用したと仮定した場合の、通信品質情報通知のタイミングについて示したタイミングチャートである。
【0084】
図6(b)は、無音判定部14の判定結果が無音状態の場合に調整された通知間隔d0’(ただし、dsは≠0)を、無線品質通知部16に適用した場合の、通信品質情報通知のタイミングについて示したタイミングチャートである。図6(b)に示すように、この場合、無線通信装置10Aでは、通知間隔d0の調整が行われない場合(図6(a)の場合)よりも短い間隔で、通信品質情報通知が行われている。
【0085】
図6(c)は、無音判定部14の判定結果が有音状態の場合に調整された通知間隔d0’を、無線品質通知部16に適用した場合の、通信品質情報通知のタイミングについて示したタイミングチャートである。図6(c)に示すように、この場合、無線通信装置10Aでは、無音判定部14の判定結果が有音状態の場合(図6(b)の場合)よりも短い間隔で、通信品質情報通知が行われている。
【0086】
(B−2)第2の実施形態の効果
第2の実施形態によれば、第1の実施形態の効果に加えて、以下のような効果を奏することができる。
【0087】
無線通信装置10Aでは、無音判定部14の判定結果に応じて、通知間隔d0の値を調整することにより、無音状態の場合に、有音状態の場合よりも、通信品質情報通知を行う頻度を多くしている。これにより、無線通信装置10Aでは、無音判定部14の判定結果が無音状態の場合に、有音状態の場合よりも、通信品質情報通知の頻度がより多くなり、結果、第2の実施形態よりも無音状態でのハンドオーバをさせやすくしている。
【0088】
(C)他の実施形態
本発明は、上記の各実施形態に限定されるものではなく、以下に例示するような変形実施形態も挙げることができる。
【0089】
(C−1)上記の各実施形態では、説明を簡易にするために、無線通信装置10が現在属するセルSに隣接するセルはセルNだけであるものとして説明しているが、複数のセルが隣接する場合も当然ありえる。その場合には、例えば、無線通信装置において、全ての隣接するセルについて、上述の通知イベントEsに係る処理(上記の(1)式〜(4)式の条件式を用いた判定)を行い、いずれかの隣接セルについて通知イベントEsを開始する条件が成立した場合には、通信品質情報通知を開始するようにしても良い。また、例えば、無線通信装置において、いずれか1つの隣接セルを選択(例えば、無線品質測定部による測定結果が最も良好な隣接セルを選択)して、上述の通知イベントEsに係る処理を行うようにしても良い。
【0090】
(C−2)上記の各実施形態において、無線通信装置は、電話通信を行う端末であるものとして説明したが、その他のデータ通信(例えば、HTTPやFTPによる通信)を行う構成を備えるようにしても良い。そして、無音判定部において、データ通信のみ行っている場合(例えば、電話通信を行うアプリケーションが起動しておらず、それ以外のアプリケーションが起動している場合等)には、無音状態であるものとして判定を行うようにしても良い。
【0091】
(C−3)上記の各実施形態では、無線通信装置は、SRVCCに準じた処理を行うものとして説明しているため、上記の(1)式〜(4)式の条件式を用いて通知イベントEsを開始/終了のタイミングを決定する処理を行っている。しかし、無音判定部が無音状態と判定している間に、通知イベントEsがより早期に起動し、通信品質情報通知が行われる頻度が多くなる方式であれば、その具体的な条件式の内容は適宜変更するようにしても良い。例えば、上記の(1)式〜(4)式では、ヒステリシスパラメータ(Hys)を用いているが、これを省略するようにしても良い。また、上記の(1)式及び(4)式では、Mnを調整するオフセット値Ofnを用いているが、これを省略し、無音判定部の判定結果に応じて変動する上述のパラメータOsに置き換えたり、Mnを直接調整するようにしても良い。また、上記の各実施形態では、上記の(1)式及び(4)式では、両方にオフセット値Ofnについて、無音判定部の判定結果に応じた調整を行っているが、いずれか一方についての調整を省略するようにしても良い。
【符号の説明】
【0092】
1…無線通信システム、10…無線通信装置、11…無線品質測定部、12…通知設定管理部、13…コーデック処理部、131…エンコード処理部、132…デコード処理部、14…無音判定部、15…パラメータ算出部、16…無線品質通知部、17…無線送受信部、20、20−1、20−2…無線基地局、S、N…セル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクセスネットワークを構成する複数の無線基地局のいずれかに所属し、所属する無線基地局を介して電話通信可能な無線通信装置において、
当該無線通信装置の周辺の無線基地局との通信品質に係る測定を行う通信品質測定手段と、
現在当該無線通信装置が所属する無線基地局から、他の無線基地局へのハンドオーバに係る判定を、上記アクセスネットワーク側に行わせるための通知信号を、上記アクセスネットワーク側へ送信する通知手段と、
当該無線通信装置の電話通信での送信信号及び又は受信信号について有音状態又は無音状態を判定する判定手段と、
上記通信品質測定手段の測定結果、及び、上記判定手段の判定結果を利用して、上記通知手段が通知信号を送信するタイミングを決定し、決定したタイミングに従って、上記通知手段を制御する制御手段と
を有することを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
上記制御手段は、
上記判定手段の判定結果に応じて、上記通信品質測定手段の測定結果を調整する調整部を備え、
上記制御手段は、調整後の測定結果を利用して、上記通知手段が通知信号を送信するタイミングを決定する
ことを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
上記判定手段は、送信信号及び受信信号がいずれも無音の場合に無音状態と判定し、少なくとも送信信号又は受信信号の一方が有音の場合に有音状態と判定し、
上記調整部は、上記判定手段が有音状態と判定している間、上記通信品質測定手段の測定結果のうち、現在当該無線通信装置が所属する無線基地局が対応する所属セルに隣接する隣接セルの無線基地局に関する測定結果について、通信品質がより良好であることを示すように調整する
ことを特徴とする請求項2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
上記制御手段は、上記隣接セルの無線基地局に係る調整後の測定結果が示す良好度合が第1の条件以上であり、かつ、上記所属セルの無線基地局に係る測定結果が示す良好度合が第2の条件以下である場合に、上記通知手段による通知信号の送信を開始させると決定することを特徴とする請求項3に記載の無線通信装置。
【請求項5】
上記制御手段は、上記通知手段による通知信号の送信を開始させると決定した場合に、上記通知手段に、所定の通知間隔で通知信号の送信を繰り返させる設定を行うことを特徴とする請求項4に記載の無線通信装置。
【請求項6】
上記制御手段は、上記通知手段による通知信号の送信を開始させた後、上記隣接セルの無線基地局に係る調整後の測定結果が示す良好度合が第3の条件以下となった場合、又は、上記所属セルの無線基地局に係る測定結果が示す良好度合が第4の条件以上となった場合に、上記通知手段による通知信号の送信を停止させると決定することを特徴とする請求項4又は5に記載の無線通信装置。
【請求項7】
上記制御手段は、上記判定手段が無音状態と判定している間、有音状態と判定している間よりも、上記通知手段に適用する上記所定の通知間隔を、より短い間隔に設定することを特徴とする請求項5又は6に記載の無線通信装置。
【請求項8】
アクセスネットワークを構成する複数の無線基地局のいずれかに所属し、所属する無線基地局を介して電話通信可能な無線通信装置に搭載されたコンピュータを、
当該無線通信装置の周辺の無線基地局との通信品質に係る測定を行う通信品質測定手段と、
現在当該無線通信装置が所属する無線基地局から、他の無線基地局へのハンドオーバに係る判定を、上記アクセスネットワーク側に行わせるための通知信号を、上記アクセスネットワーク側へ送信する通知手段と、
当該無線通信装置の電話通信での送信信号及び又は受信信号について有音状態又は無音状態を判定する判定手段と、
上記通信品質測定手段の測定結果、及び、上記判定手段の判定結果を利用して、上記通知手段が通知信号を送信するタイミングを決定し、決定したタイミングに従って、上記通知手段を制御する制御手段と
して機能させることを特徴とする無線通信プログラム。
【請求項9】
複数の無線基地局を備えるアクセスネットワークと、いずれかの無線基地局に所属して、所属する無線基地局を介して電話通信可能な無線通信装置とを備える無線通信システムにおいて、上記無線通信装置として、請求項1〜7のいずれかに記載の無線通信装置を備えることを特徴とする無線通信システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−195767(P2012−195767A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58206(P2011−58206)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(308033722)株式会社OKIネットワークス (165)
【Fターム(参考)】