説明

無線選択呼出受信機

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、特定の人物を呼び出すときに用いられる無線呼出システムにおける受信機の固有の選択呼出番号を記憶するIDROMの書き込み構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、「ポケットベル」や「構内ページャー」などの名称で知られる無線呼出システムは、受信機に、ある固有の呼出番号をROM(Read only memory)やRAM(Random access memory)に記憶し、呼出ししたい番号を送信装置より入力することにより無線電波を介して複数の受信機の中から特定の受信機を呼び出すものである。
【0003】その中でも一般的に用いられている方法として同一システム内で利用される受信機は、送信装置より複数の受信機の中から特定の受信機を個別に呼び出すためそれぞれの受信機にある固有の呼出番号(以下IDコードという)をROMに書き込み使用している。受信機のもつIDコードは無線呼出システムを利用する側から合理的かつ容易に運用できるように個別の受信機それぞれにある決められたIDコード(例えば1番から連番、1000番から連番等)で運用する方法をとっている。こうしたことから受信機を製造する場合、もしくはすでに利用している受信機が故障した場合等、受信機のIDコードを容易に書き込みができたり変更できるような構成をしている。しかし、その変更は、受信機を携帯する人物が行うのではなく、無線呼出システムを製造または運用する側が行うので容易には分解できない構造になっている。
【0004】したっがって構造的には製造上、メンテナンス性から判断して受信機の回路構成を形成する上でのメインの回路(受信回路、CPU回路、電源回路、報知回路など)から独立させてIDコードのみ記憶する回路(以下IDROMという)を設けた構成にしている。なお、ここでいうIDROMで使用されるICはEEPROM(電気的消去可能なROM)が一般的に使用される。以下に、それらの構成を図に基づき説明する。
【0005】図6は、従来の受信機の機能ブロック図である。受信機101はアンテナ21と受信手段22と受信データ管理手段25と接続手段28と電源部23と電池24と報知手段26で構成されているメイン回路部201と、個別の受信機がもっている記憶手段32とメイン回路部201と接続するための接続手段311をもった記憶回路部301とで構成されている。受信機101は、送信装置より無線電波で放射されたIDコードの無線信号をアンテナ21で受け、受信手段22で無線信号をIDコードのデータに変換し受信データ管理手段25に送る。受信データ管理手段25は、受信手段22から入ってきたIDコードと、記憶回路部301内のIDコードを記憶している記憶手段32から接続手段311と接続手段208とを介して読み取ったIDコードとを比較し一致検出したら報知手段26で呼出報知する。なお入力手段27は、呼出の際のメッセージを確認するための入力(キースイッチなど)や、呼出報知の停止の入力を行う手段である。
【0006】図7は、図6で説明した機能ブロック図を受信機で示したものである。 受信機101は、(1)アンテナ21と報知に必要なランプ51、ブザー52、表示部53と、受信部や受信データを管理するためのIC54や、電源回路等を含む受動素子55等及び報知を停止するための入力手段でもあるスイッチ56と記憶回路部301と電気的に接続するためのコネクタ507などから構成されているメイン回路部201(2)IDROM60とメイン回路部201と電気的に接続するためのコネクタ601で構成されている記憶回路部301(3)記憶回路部301を保持するためのネジ62(4)電池24をホールドする保持部63(5)電池交換するための電池蓋64(6)全体を収納するための表ケース65、裏ケース66で構成された構造が一般的である。こういった構造では、受信機1のIDコードを書換える場合、電池蓋64を外して電池24を取りだし、裏ケース66を外してからネジ62を外し、ようやく記憶回路部3を取りはずすことができる。取りはずした記憶回路部301はIDROMライター等でIDコードの書換えを行い、取りはずした手順とは逆の手順で組み立てを行う。
【0007】以上のことからIDコードを変更する場合、IDROMを交換するだけでもかなりの工数がかかりコストアップになるという欠点を有していた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】以上のような構造では、受信機101のIDコードを書換える場合、電池蓋を外して電池を取りだし、裏ケースを外してからネジを外し、ようやく記憶回路部が取りはずすことができる。取りはずした記憶回路部はIDROMライター等でIDコードの書換えを行い、取りはずした手順とは逆の手順で組み立てを行う。
【0009】以上のことからIDコードを変更する場合、IDROMを交換するだけでもかなりの工数がかかりコストアップになるという欠点を有し、また交換を行うところは必ずしも製造を行った工場ではなく、受信機の販売を行った販売店が容易にIDコードを変更もしくは交換できるような構造になっていなければならないという課題があった。
【0010】そこで、この発明の目的は、従来のこのような課題を解決するため、容易にIDコードの変更や交換を行えるような受信機の構造を提供するものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、この発明は、受信機のメイン回路部とIDROMとを同一基板上に構成し、受信機のIDコードを変更する際は受信機の電池蓋をはずし、メイン回路部を保護している基板をはずすことによってIDコードの書換え可能な外部接続コネクタが表れ、その外部接続コネクタとIDROMライターの接続コネクタとを接続することによって容易にIDコードを変更することができるようにした。
【0012】
【作用】上記のように構成された受信機は、IDコードを完成品に近い段階で書き込みや書換えが可能なことから、製造する段階でもIDコードの書き込み工程を最終工程に近いところで行うことができ、書込み前に良品と不良品の選別を行った後、良品のみIDコードの書込みを行えばよいので製造上の管理も容易にできる。
【0013】
【実施例】以下に、この発明の実施例を図に基づいて説明する。図1は、この発明の受信機の機能ブロック図である。受信機1はアンテナ21と受信手段22と受信データ管理手段25と接続手段28と記憶手段32と電源部23と電池24と報知手段26で構成されているメイン回路部2と、メイン回路部2の記憶手段32と受信データ管理手段25を電気的に接続するための接続手段31をもっている保護接続部3とで構成されている。受信機1は、送信装置より無線電波で放射されたIDコード信号をアンテナ21で受け、受信手段22で無線信号をIDコードのデータに変換し受信データ管理手段25に送る。受信データ管理手段25は、受信手段22から入力されるIDコードと、記憶手段32に記憶されているIDコードを接続手段28内の接続部bと保護接続部3内の接続手段31及びメイン回路部2の接続手段28内の接続部aを介して受信データ管理手段25に入力されるIDコードとを比較し一致検出したら報知手段26で呼出報知する。なお入力手段27は、呼出の際のメッセージを確認するための入力(キースイッチなど)や、呼出報知の停止の入力を行う手段である。
【0014】図2は、図1で説明した機能ブロック図を受信機の断面図で示している。受信機1は、(1)アンテナ21と報知に必要なランプ51、ブザー52、表示部53と、受信部や受信データを管理するためのIC54や、IDコードを記憶するためのIDROM60、電源回路等を含む受動素子55等及び報知を停止するための入力手段でもあるスイッチ56とIDROM60と受信データを管理するためのIC54とを電気的に接続するためのコネクタ57などから構成されているメイン回路部2(2)IDROM60と受信データを管理するためのIC54とを電気的に接続し且つメイン回路部2を外部からの静電気や衝撃、ほこり等から防ぐために設けられた保護基板67および保持兼電気的接続のためのコネクタ61とで構成されている保護接続部3(3)電池24を電池交換するために設けられた電池蓋64(4)全体を収納するための表ケース65、裏ケース66で構成されている。
【0015】図3は、図2の断面図で説明した受信機を分解して斜視図で示したものである。この図は特にIDコードの書込みや変更を行う際、どのような手順で作業を行うかを説明するために用いられるものである。
【0016】まず製造工程の段階では、IDROMライター81のフィクスチャー82を受信機1のコネクタ57に差込みIDコードを書込む。書込みが終了したらフィクスチャー82をはずし保護接続部3のコネクタ61を受信機1のコネクタ57に差し込む。次に電池24をセットし、電池蓋64を取り付け受信機1の組立工程が完了する。
【0017】すでに受信機1にIDコードが書込まれていてIDコードを変更する場合には、電池蓋64をはずし、電池24を取り出し保護接続部3を外す。そして、IDコードの変更は前述した製造工程同様の手順でIDコードの書換えを行い組み立てる。
【0018】図4は、受信機1の記憶手段32と受信データ管理手段25とがその電気的接続をどのように行っているかを示す回路図である。メイン回路部2の受信データ管理手段25として動作するIC54は記憶手段3のIDROM60とは1対1の信号線と電源線で接続される。したがって保護接続部3は1対1の電気信号で接続される回路構成になる。尚、外来ノイズや静電気からメイン回路を保護するためにシールド用のGND配線が施されている。
【0019】図5は、IDコードをIDROMライターで書込みや書換えを行う場合の配線図である。受信機1から保護接続部3が取り除かれると、メイン回路部2のIC54とIDROM60は電気的にオープンの状態になる。次に、IDROM60にIDコードを書込むが、その際、IDROMライター81はフィクスチャー82と接続部28とを介してIDROM60に接続されるが、IC54とは電気的にオープンとなっている。したがってIDROM60にのみIDコードの書込み、書換えが可能になる。IC54がなぜ電気的にオープンでなくてはならないかというとIC54の電源電圧がIDROMの書込み時の電源電圧と異なる場合があるのでIC54を電気的にオープンすることは非常に有効な手段でもある。もしこれを電気的に回路構成で処理しようとすると回路素子が増えコストアップにもつながってしまう。
【0020】
【発明の効果】この発明は、以上説明したように、この発明の構造は、受信機のメイン回路部とIDROMとを同一基板上に構成し、受信機のIDコードを変更する際は受信機の電池蓋をはずし、メイン回路部を保護している基板をはずすことによってIDコードの書換え可能な外部接続コネクタが表れる構造であって、その外部接続コネクタとIDROMライターの接続コネクタとを接続することによって容易にIDコードを変更することができる。また、IDコードを完成品に近い段階で書き込みや書換えが可能なことから、製造する段階でもIDコードの書き込み工程を最終工程に近いところで行ことができ、書込み前に良品と不良品の選別を行った後、良品のみIDコードの書込みを行えばよいので製造上の管理も容易にできる。さらには保護接続部が外部の衝撃や、静電気、ほこり等から保護することができ製造工程でのコストダウンおよび製品のメンテナンスの容易さ、信頼性の向上などの効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の受信機の機能ブロック図である。
【図2】本発明の受信機の断面図である。
【図3】本発明の受信機の分解斜視図である。
【図4】本発明の受信機メイン回路部の一部と保護接続部を示した回路図である。
【図5】本発明の受信機とIDROMライターを接続した配線図である。
【図6】従来の受信機の機能ブロック図である。
【図7】従来の受信機の断面図である。
【符号の説明】
1 受信機
2 メイン回路部
3 保護接続部
21 アンテナ
22 受信手段
23 電源部
24 電池
25 受信データ管理手段
26 報知手段
27 入力手段
28、31 接続手段
32 記憶手段
61 コネクタ
60 IDROM
65 表ケース
66 裏ケース
67 保護基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】 電波を介して送信装置から送信される第1の選択呼出番号を受信する受信手段と、書換え可能で固有の第2の選択呼出番号を記憶する記憶手段と、受信した前記第1の選択呼出番号と記憶した前記第2の選択呼出番号とを比較し一致または不一致を検出する受信データ管理手段と、着脱可能で取り外すことにより前記受信データ管理手段と接続される第1の接続コネクタ端子と前記記憶手段と接続される第2の接続コネクタ端子とが電気的に切断された状態で露呈し、且つ前記コネクタ端子を保護する端子保護カバーを兼ねる保護接続部とを具備し、前記保護接続部は、装着することにより第1の接続コネクタ端子と前記第2の接続コネクタ端子とを電気的に接続するとともに、外来ノイズ及び静電気対策のためのシールド用接地配線が施されていることを特徴とする無線選択呼出受信機。

【図2】
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【図3】
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【図7】
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【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【特許番号】特許第3195457号(P3195457)
【登録日】平成13年6月1日(2001.6.1)
【発行日】平成13年8月6日(2001.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−47018
【出願日】平成5年3月8日(1993.3.8)
【公開番号】特開平6−260987
【公開日】平成6年9月16日(1994.9.16)
【審査請求日】平成11年8月10日(1999.8.10)
【出願人】(000002325)セイコーインスツルメンツ株式会社 (3,629)
【参考文献】
【文献】特開 平4−127498(JP,A)
【文献】特開 昭64−12474(JP,A)