説明

無線電話装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、無線電話装置に関し、詳細には、PHS電話システム等の時分割受信を行う受信機の中間周波数回路の構成に関するものである。
【0002】
【従来の技術】図3は、従来の時分割受信を行う受信機のブロック図を示す。この受信機は、受信ミキサー回路1と、中間周波数フィルタ2と、中間周波数増幅器6と、復調器9と、中間周波数増幅器6からの電界強度出力7を入力する制御部10とを有し、一つの中間周波数に対して、一回路分の中間周波数フィルタを持つ一般的な受信回路構成である。
【0003】この従来の受信機で、時分割受信を行う動作を、PHS電話システムの基地局用無線電話装置の場合を一例に想定して、図4を参照して説明する。
【0004】図4(A)は、時分割送受信を行う送受信スロットの構成を示す。一スロット長は、625μsecで、T1、T2、T3、T4と4つの送信スロット後、R1、R2、R3、R4と4つの受信スロットが続き、この4つの送信スロット、プラス、4つの受信スロットの5msecが一フレーム長となり、フレームが繰り返されて、時分割送受信が行われる。
【0005】ここで、受信スロットに着目すると、一般的に、一つのスロットを制御チャンネルに割り当て、残りの3スロットが通話チャンネルに割り当て可能なため、最大同時に、3回線の通話が可能となる。
【0006】又、受信スロットが空いており、通話チャンネルとして使用可能かどうかは、一般的に、中間周波数増幅器6より出力される電界強度出力7を、制御部10にて、予め設定した閾値と比較し、高い場合には電界有りで、該当の受信スロットは使用中、低い場合には電界無しで、該当受信スロットは空いており使用可能と判定する。このように、空きスロットには、通話チャンネルが次々と割り当てられ、最大3通話が可能となる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかし、図3に示す従来の回路構成では、本来、受信電界無しと判定されるべき受信スロットが、一つ前の受信スロットの受信電界強度出力7の立ち下がり時間の遅延により、電界有りと判定され、通話チャンネルとして使用不可能となり、最大3通話できず、接続率が悪化する問題があった。
【0008】その第一の要因は、受信中間周波数フィルタに一般的に使用されるSAWフィルタの性能に起因する場合が多いからである。例えば、受信第三スロットR3で、受信電界を受信しており、受信第四スロットR4で、受信電界がなくなっても(図4(B))、中間周波数フィルタ2の出力は、瞬時に零にはならず、その伝搬応答遅延により、出力の立ち下がり時間が、数十マイクロ秒に及ぶことがある(図4(C))。
【0009】従って、受信第四スロットR4においては、電界強度出力7が残存し、電界有りと判定されるレベル以上に残存している場合(図4(D))には、受信第四スロットR4が、使用できなくなる。
【0010】このように、使用不可となるスロットが発生し、通話チャンネルとして使用できず、接続率が悪化する問題となった。特に、受信入力電界が高い場合には、電界強度レベルが高い分だけ、次のスロットまで電界検出の遅延が顕著におよび、電界有りと誤判定されやすい。
【0011】本発明の目的は、上述の欠点を除去し、時分割受信を行う受信機の全ての受信スロットにて、良好に受信可能とする無線電話装置を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明は、時分割受信を行う無線電話装置において、同じ性能を有する2個の中間周波数フィルタ(図1の2と3)を並列に設け、制御部よりのスロット変化点信号(図1の8)により、受信スロットが変化するごとに、2個の中間周波数フィルタをフィルタ切替部(図1の4と5)にて交互に切り替え、そのフィルタ出力を中間周波数増幅器(図1の6)へ入力する。
【0013】この無線電話装置では、制御部10よりのスロット変化点信号8により、受信第一スロット、及び、受信第三スロット時には、フィルタ切替部4・5は、中間周波数フィルタ2側へ切り替わる。又、受信第二スロット、及び、受信第四スロット時には、フィルタ切替部4・5は、中間周波数フィルタ3側へ切り替わる。
【0014】このため、例えば、受信第三スロットで受信中に、中間周波数フィルタ2で、前述の伝搬応答遅延が発生しても、次の受信第四スロット時には、使用する中間周波数フィルタは、既に、中間周波数フィルタ3に切り替わっており、中間周波数フィルタ2で発生した伝搬応答遅延の影響を全く受けない。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、図面に基づいて本発明の実施例を説明する。
【0016】図1は、本発明の一実施例のブロック図を示す。この無線電話装置は、図3の従来の構成に加え、受信ミキサー回路1と中間周波数増幅器6との間に挿入された2個の中間周波数フィルタ2・3と、これら2個の中間周波数フィルタ2・3を交互に切り替えるフィルタ切替スイッチ4・5とを有し、フィルタ切替スイッチ4・5は、制御部10よりのスロット変化点信号8で制御される。なお、図1において、図3の従来例と共通、又は対応する部分については同一の符号で表す。
【0017】次に、図1の構成の動作について図2を参照して説明する。制御部10よりのスロット変化点信号8がハイレベルで、受信第一スロット、及び、受信第三スロット時の場合には、切替スイッチ4・5は、中間周波数フィルタ2側へ切り替わる。
【0018】中間周波数フィルタ2の出力は、中間周波増幅器6に入力され、電界強度出力7として制御部10に加えられて、電界有無の判定に使用される。
【0019】一方、制御部よりのスロット変化点信号8がロウレベルで、受信第2スロット、及び、受信第4スロット時の場合には、フィルタ切替スイッチ4・5は、中間周波数フィルタ3側へ切り替わる。中間周波数フィルタ3の出力は、中間周波増幅器6に入力され、電界強度出力7として制御部10に加えられて、電界有無の判定に使用される。
【0020】今、受信第三スロットだけで受信中の場合(図2(C))を考えると、中間周波数フィルタ2で、前述の伝搬応答遅延が発生した場合(図2(D))、次の受信第四スロット時には、使用する中間周波数フィルタは、既に中間周波数フィルタ3に切り替わっており、中間周波数フィルタ3の出力(図2(E))が、電界強度出力7(図2(F))として制御部10に加えられ、電界有無の判定に使用されるため、中間周波数フィルタ2で発生した伝搬応答遅延の影響を全く受けない。
【0021】
【発明の効果】以上説明したように、本発明は、スロット変化点信号により、スロットが変わるごとに、2個の中間周波数フィルタを交互に切り替えて使用する構成とすることで、中間周波数フィルタの伝搬応答遅延に起因した電界検出遅延による受信スロットの使用・不使用の誤判定を防止でき、時分割受信を行う受信機の全受信スロットを有効に利用できる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示すブロック図である。
【図2】同上の動作説明図である。
【図3】従来例を示すブロック図である。
【図4】図3の従来例の動作説明図である。
【符号の説明】
1 受信ミキサー回路
2・3 中間周波数フィルタ
4・5 フィルタ切替スイッチ
6 中間周波数増幅器
7 電界強度出力
8 スロット変化点信号
9 復調器
10 制御部
T1 送信第一スロット
T2 送信第二スロット
T3 送信第三スロット
T4 送信第四スロット
R1 受信第一スロット
R2 受信第二スロット
R3 受信第三スロット
R4 受信第四スロット
X 電界有無の判定レベル

【特許請求の範囲】
【請求項1】中間周波数フィルタの出力を中間周波数増幅器で増幅し、その電界強度出力を制御部にて、予め設定した閾値と比較し、高い場合には当該受信スロットは使用中、低い場合には当該受信スロットは使用可能と判定する時分割受信方式の無線電話装置において、前記中間周波数フィルタとして同じ性能を有する2個の中間周波数フィルタを並列に設け、前記制御部よりスロット変化点信号を出力し、このスロット変化点信号に従い受信スロットが変化するごとに前記2個の中間周波数フィルタをフィルタ切替部にて交互に切り替えて、そのフィルタ出力を前記中間周波数増幅器へ入力することを特徴とする無線電話装置。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【図4】
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【特許番号】特許第3088338号(P3088338)
【登録日】平成12年7月14日(2000.7.14)
【発行日】平成12年9月18日(2000.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平9−153119
【出願日】平成9年5月28日(1997.5.28)
【公開番号】特開平10−336062
【公開日】平成10年12月18日(1998.12.18)
【審査請求日】平成9年5月28日(1997.5.28)
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)
【参考文献】
【文献】特開 平7−202827(JP,A)