説明

無線ICタグの製造方法

【課題】通信特性に優れたアンテナ回路を有する無線ICタグであって、コストの低い、薄型の無線ICタグの製造方法を提供する。
【解決手段】紙製の基材の表面に、銀コートニッケル粉末または銀コート銅粉末を含有すると共に溶融した半田に対して濡れ性を有する半田付け可能な樹脂を用いて、アンテナ回路と同一のパターンを形成した後、溶融した半田を用いて基材との密着性に優れた前記パターン上に前記アンテナ回路を形成することを特徴とする無線ICタグの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線ICタグの製造方法に関する。より詳しくは、通信特性に優れたアンテナ回路を有する無線ICタグであって、コストの低い、薄型の無線ICタグの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線ICタグ(無線ICカードを含む。以下、原則として「ICタグ」と記す。)は、一般的に、樹脂フイルム等の絶縁性基材の表面にアンテナ回路が形成されており、前記アンテナ回路が形成された基材上にICチップが搭載されて、前記ICチップとアンテナ回路とが接続された構造を有している。
【0003】
ICタグは、ICチップを備えているため、記録できる情報量が、バーコードや識別タグに比べて桁違いに多く、新たな情報が自由に書き込めるようにすることも可能である。特に、平面型のICタグは、持ち運びや、物品への取付けに便利であるため、広く用いられている。
【0004】
そして、ICタグの更なる利用を図るために、通信特性が優れると共に、より安価なICタグが強く求められている。
【0005】
これらに関して、例えば、特許文献1には、銅や銀等の金属や導電性ペーストからなる回路パターンを有するICタグが開示されている。
また、回路パターンの形成方法について、被覆導線をコイル状に巻く方法、基材にラミネートされた銅等の導電性金属をエッチングすることによりコイルパターンを形成する方法が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開2006−304184号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の記載においては、銅や銀等の金属は高価であり、材料費の低減を図り難い。一方、導電性ペーストからなる回路パターンは、蒸着やめっきにより形成された金属薄膜製のコイルパターンに比べて導電性が劣り、コイルパターンで消費する電力が増加し、通信距離が短い、即ち、通信特性が低下する。この欠点を解消するためにはコイルパターンの線幅を広げなければならないが、線幅拡張に伴う材料費のアップのみならず、新たに浮遊容量が発生するという問題が生じる。
【0008】
また、被覆導線をコイル状に巻く方法は作業が煩雑であり、製造コストの低減を図り難い。
そして、絶縁性を有する樹脂の表面に銅の薄膜を全面形成させ、さらにエッチングを施すことによりコイルパターンを形成する方法は、それらの作業のみならず、前処理や廃棄物の処理等の付随する作業も煩雑となり、また製造設備も複雑かつ大型となり、さらに使用できる基材も限定されるため、低コスト化を阻害する要因となる。
また、銅以外にアルミニウムや銀を使用する方法もあるが、銅を含めこれらの材料には、共通して融点が高く加工し難いという欠点がある。
その他、それぞれ、銅に関しては酸化を受け易いので加熱処理に適さないという欠点、アルミニウムに関しては導電性が低いという欠点、銀に関しては展延性に乏しく箔にするのが困難であるという欠点がある。
【0009】
本発明は、これらの問題に鑑み、通信特性が優れると共に、より安価なICタグの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以上の課題を解決することを目的としてなされたものである。以下に本発明に関連する第1〜第8の技術につき説明する。本発明は第6の技術と第7の技術を合わせた技術を請求するものである。
【0011】
本発明に関連する第1の技術は、
電気絶縁性の基材と、前記基材の表面に設けられたアンテナ回路と、前記アンテナ回路に接続されたICチップとを有する無線ICタグであって、前記アンテナ回路が半田により形成されており、かつ、前記ICチップが、前記アンテナ回路と半田および接着性熱硬化樹脂を含む半田ペーストを介して接続されていることを特徴とする無線ICタグである。
【0012】
第1の技術においては、ICタグのアンテナ回路が、アルミニウム、銅、銀に比べ安価な半田により形成されているため、安価なICタグを提供することができる。
また、半田は、従来の導電性ペーストに比べ導電性に優れているため、アンテナ回路の線幅を極端に広げることなく、通信特性に優れたICタグを提供することができる。
さらに、半田は、融点が低く加工性に優れているため、製造工程における自由度が高く、複雑な製造設備や大型の製造設備を用いる必要がなく、基材の選択自由度も大きく、製造コストの上昇を招くことなく、容易に、ICタグを提供することができる。
【0013】
アンテナ回路の形成に用いる半田は、特に限定されるものではなく、例えば通常の鉛と錫合金の半田(融点は、約183℃)の他に、Sn−Ag−Cu系等の鉛フリー半田、銀半田等他の半田を適用することができる。
【0014】
また、第1の技術においては、ICチップとアンテナ回路とが、半田および接着性熱硬化樹脂を含む半田ペーストを介して接続されているため、従来のように、極めて高価な異方導電性ペースト(ACP)を用いる方法(特開2006−304184号公報)や、超音波溶融による方法によりICチップとアンテナ回路とを接続する必要がない。そのため、より安価なICタグを提供することができる。
【0015】
前記アンテナ回路とICチップ(の電極)との接続は、半田および接着性熱硬化樹脂を含む半田ペーストを介して行われる。半田ペーストの半田成分の半田は、特に限定されないが、アンテナ回路に損傷を生じさせないためには、各種半田の内でも特に融点の低いBi−Sn系半田等、アンテナ回路形成に用いた半田の融点を超えない融点を有する半田を用いることが好ましい。
【0016】
第1の技術においては、アンテナ回路の形成、アンテナ回路の電気的接続のための処置が可能な限り基材の材質を問わない。アンテナ回路を融点の低い半田で形成するので、耐熱性が十分とはいえない紙製、合成樹脂製、ガラス製等の基材を用いることができる。この内、前記基材にガラスを用いる場合は、特殊フラックスや超音波半田付け法等の方法により基材表面に直接アンテナ回路を形成することができる。
【0017】
また、第1の技術においては、基材上に直接アンテナ回路を形成するのではなく、別の下地上に形成させたアンテナ回路を基材上に移設してもよい。
【0018】
本発明に関連する第2の技術は、前記の無線ICタグであって、
前記基材が紙製であることを特徴とする無線ICタグである。
【0019】
第2の技術においては、基材として安価な紙を使用しているので、材料コストをより低減させることができる。
また、紙は薄い材料を入手することが容易なため、容易により薄いICタグとすることができる。
【0020】
また、紙製の基材は、合成樹脂製の基材と異なり、回路パターン形成において、ペースト状のパターン材料を印刷する際に、特に表面の粗面化処理を施していなくても、パターン材料が周囲へ流れ出たりしないため、正確なパターンの形成が容易であり加工性に優れる。また、塗布されたペースト状のパターン材料は、紙の内部に染込むため、接着性も良好となる。
さらに、樹脂に比較して紙は一般的に耐熱性が優れている。このため、基材が紙製であれば、溶融半田を用いてアンテナ回路を形成する際の作業がより容易となる。
【0021】
なお、ここでいう「紙製」とは、特に限定されず、純粋な紙(セルロース、樹脂パルプ)のみならず、樹脂を含浸していたり、表面に何らかの加工等が施されていたりしていてもよい。
また、紙製の基材の中でも、グラシン紙(パラフィン紙)を使用すると、半田製のアンテナ回路を正確にかつ容易に形成することができるので好ましい。
なお、ここでいうグラシン紙にはグラシン紙の表面にシリコン加工を施した平滑耐熱紙も含まれる。
【0022】
本発明に関連する第3の技術は、前記の無線ICタグであって、
前記ICチップが、前記基材のアンテナ回路面側に設けられていることを特徴とする無線ICタグである。
【0023】
第3の技術においては、ICチップが基材のアンテナ回路面側に設けられているので、より厚さの薄いICタグとすることができる。
【0024】
本発明に関連する第4の技術は、前記の無線ICタグであって、
前記基材に、高誘電率材料からなるシートを貼付したことを特徴とする無線ICタグである。
【0025】
第4の技術においては、高誘電率材料からなるシートを貼付するという簡単な構造でICタグの薄さを確保しながら、金属体に装着した場合にも通信特性に優れたICタグとすることができる。
【0026】
本発明に関連する第5の技術は、前記の無線ICタグであって、
前記基材が、高誘電率材料からなる基材であることを特徴とする無線ICタグである。
【0027】
第5の技術においては、前記の基材に高誘電率材料からなるシートを貼付する代わりに、基材自体を、高誘電率材料からなる基材とするため、通信特性に優れたより薄いICタグとすることができる。
【0028】
本発明に関連する第6の技術は、
電気絶縁性の基材の表面に、溶融した半田に対して濡れ性を有する半田付け可能な樹脂を用いて、アンテナ回路と同一のパターンを形成した後、溶融した半田を用いて基材との密着性に優れた前記パターン上に前記アンテナ回路を形成することを特徴とする無線ICタグの製造方法である。
【0029】
第6の技術においては、予め基材の表面に、溶融した半田に対して濡れ性を有する材料を用いてアンテナ回路と同一のパターンを形成しているため、基材表面にパターン通りに半田を付着させることができ、容易にアンテナ回路を形成することができる。
【0030】
前記溶融した半田との濡れ性を有する材料は、特に限定されないが、例えば種々の金属粒子を用いることができる。その内でも、表面を銀でコートしたニッケル粒子または銅粒子が溶融半田の濡れ性が良く好ましい。
【0031】
このような金属粒子を用いる場合、金属粒子でアンテナ回路と同一のパターンを形成する方法は特に限定されない。例えば、蒸着等の方法が適用できるが、好ましくはスクリーン印刷により接着樹脂製の塗膜を形成した後、前記金属粒子をまぶし付け、接着樹脂に付着していない金属粒子を払い落とすことにより余分の金属粒子を除去する方法が適用できる。この方法によれば金属粒子の使用量を極力少なくすることができ、かつ容易に薄いパターンを形成することができる。
【0032】
前記金属粒子からなるパターンの上に半田製のアンテナ回路を形成する方法は、例えば、耐水性のない通常の紙製の基材を用いる場合には、クリーム状態の半田を印刷で基材全面に塗布し、その後加熱溶融させて導電性下地の表面に濡れ広がらせ、他の箇所のボール状となっている溶融した半田を窒素で吹飛ばすクリーム半田リフロー法が好ましい。なお、耐水性がある紙であれば、溶融半田槽に浸漬するフローディップを採用することも可能である。
【0033】
さらに、半田付け可能な樹脂は、基材上にスクリーン印刷等の印刷によって容易にパターンを形成することができる。このため、第6の技術においては、容易に所定のパターンを有する半田製のアンテナ回路を形成することができる。
また、半田付け可能な樹脂は、基材との密着性に優れているので、アンテナ回路をより強固に基材に固定することができる。
【0034】
第6の技術に適用する半田付け可能な樹脂は、特に限定されるものではないが、金属粉末、樹脂バインダー及び不飽和脂肪酸を有機溶媒中に含有したもの等を挙げることができる。金属粉末としては、銀粉末、銅粉末、ニッケル粉末、アルミ粉末、銀コート銅粉末、銀コートニッケル粉末、銀銅合金粉末などが挙げられるが、半田付け性からは、銀コートニッケル粉末、銀コート銅粉末もしくはこれらの粉末と銀粉末との混合粉末が好ましい。
【0035】
また、前記樹脂バインダーには、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂などの熱硬化性樹脂が適用できるが、塗膜特性からはエポキシ樹脂、フェノール樹脂が好ましい。このうち熱硬化性樹脂については、基材への加熱の影響をできるだけ抑制できるところから低温(200℃以下)硬化型の樹脂が好ましい。
さらに、前記半田付け可能な樹脂には、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の不飽和脂肪酸を溶解させてもよい。これらのうち、金属粉末表面の酸化防止及び出来た酸化皮膜破壊を助長する点からは、オレイン酸が好ましい。
【0036】
半田付け可能な樹脂を印刷に適したペースト状にするために用いる有機溶媒としては、熱硬化性樹脂を該ペースト中に均一に分散させるものであれば特に限定されないが、例えば、ブチルカルビトール、メチルカルビトール、ソルベッソ150等の有機溶媒が挙げられる。
【0037】
なお、半田付け可能な樹脂の前記金属粉末と樹脂の混合比は、半田との接合が可能なように適宜決定されればよく、特に限定されない。なお、前記金属粉末を含み半田付け可能な導電性樹脂としては、市販品を使用してもよい。
【0038】
本発明に関連する第7の技術は、前記の無線ICタグの製造方法であって、
前記基材が、紙製であることを特徴とする無線ICタグの製造方法である。
【0039】
第7の技術においては、基材として安価な紙を使用しているので、材料コストをより低減させることができる。
また、紙は薄い材料を入手することが容易なため、容易により薄いICタグとすることができる。
【0040】
また、紙製の基材は、合成樹脂製の基材と異なり、回路パターン形成において、ペースト状のパターン材料を印刷する際に、特に表面の粗面化処理を施していなくても、パターン材料が周囲へ流れ出たりしないため、正確なパターンの形成が容易であり加工性に優れる。また、塗布されたペースト状のパターン材料は、紙の内部に染込むため、接着性も良好となる。
さらに、樹脂に比較して紙は一般的に耐熱性が優れている。このため、基材が紙製であれば、溶融半田を用いてアンテナ回路を形成する際の作業がより容易となる。
【0041】
本発明は、上記の第6の技術と第7の技術を合わせた技術を請求するものである。即ち、本発明は、
紙製の基材の表面に、銀コートニッケル粉末または銀コート銅粉末を含有すると共に溶融した半田に対して濡れ性を有する半田付け可能な樹脂を用いて、アンテナ回路と同一のパターンを形成した後、溶融した半田を用いて基材との密着性に優れた前記パターン上に前記アンテナ回路を形成することを特徴とする無線ICタグの製造方法である。
【0042】
本発明は、上記の第6の技術と第7の技術に記載された各効果を有する。特に、銀コートニッケル粉末や銀コート銅粉末は、前記したように半田付け性に優れる。
【0043】
本発明に関連する第8の技術は、
電気絶縁性の基材上に、溶融した半田に対して濡れ性を有する材料で形成されたアンテナ回路を設ける工程、
前記アンテナ回路上に、半田および接着性熱硬化樹脂を含む半田ペーストを介してICチップを設ける工程、
前記半田ペーストを半田成分の融点以上の温度で加熱溶融させる工程、
前記半田成分の融点以下の温度で、前記半田ペーストの接着性熱硬化樹脂を熱硬化させることにより、前記アンテナ回路に前記ICチップを接続する工程
を有することを特徴とする無線ICタグの製造方法である。
【0044】
第8の技術においては、溶融した半田に対して濡れ性を有する材料で形成されたアンテナ回路上にICチップを設けるに際し、半田および接着性熱硬化樹脂を含む半田ペーストを塗布した後、半田ペーストを半田成分の融点以上の温度で加熱溶融させた後に、半田成分の融点以下の温度で、半田ペーストの接着性熱硬化樹脂を熱硬化させるという極めて簡便な手段で、ICチップを、アンテナ回路および基板に強固に接着することができる。
【0045】
本発明者は、半田成分の融点以上の温度で加熱溶融させた半田ペーストにおいて、半田ペーストに含まれる接着性熱硬化性樹脂成分が未硬化の間に、溶融した半田成分がICチップの電極部分に集まり、半田成分がリッチな部分と接着性熱硬化性樹脂がリッチな部分を生じ、その際、ICチップがアンテナ回路の接合部の位置に対して精度良く装着されていなくても、この現象によって適切な位置へ自己移動することを見いだして、第8の技術に至った。即ち、半田成分がリッチな部分は、ICチップをアンテナ回路に接合させ、接着性熱硬化性樹脂がリッチな部分は、ICチップを基材に強固に固定させ、その際ICチップを適切な位置へ自己移動させる役割を果たす。
【0046】
なお、第8の技術において、接着性熱硬化樹脂は特に限定されず、例えば前記エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂などの熱硬化樹脂が適用できる。なお、低温硬化型の樹脂を用いるとアンテナ回路や基材に損傷を与えることなく容易に硬化させることができるので好ましい。
【0047】
また、前記半田成分の半田も特に限定されるものではないが、アンテナ回路に損傷を生じさせないためには、例えばIn−Sn系半田(融点118℃)やBi−Sn系半田(融点132℃)等の低融点の半田が好ましく、そのうちBi−Sn系半田が安価であり特に好ましい。
【0048】
前述したように、ICチップをアンテナ回路に固定する手段として、従来は、極めて高価な異方導電性ペースト(ACP)を用いる方法や、超音波溶融による方法が用いられ、又、ICチップの電極及び電極間隔は非常に微細な為、ICチップを装着する際には非常に高精度な位置決めを必要としていた。これに対して、第8の技術においては、安価な材料と手段を用いてICチップを固定することができるため、より安価にICタグを提供することができる。
【発明の効果】
【0049】
本発明によれば、通信特性が優れると共に、より安価なICタグの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
以下、本発明をその最良の実施の形態に基づいて説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、以下の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
【0051】
(第1の実施の形態)
(ICタグの構成)
以下図面に基づいて本実施の形態を説明する。図1は本実施の形態にかかるICタグの概念図である。
図1において、1はICタグであり、2は基材(リンテック社製グラシン紙)である。そして、アンテナ回路は、3〜6で構成されており、4および6はアンテナ回路の両末端部である。また、7はICチップ(PHILIPS社製 I−CODE SLI)であり、ICチップ7の2つの電極(図示せず)は、それぞれアンテナ回路3および5で接続されている。アンテナ回路の末端4および6は、ジャンパー線(直径0.05mmポリウレタン線、皮膜厚さ5μm以上、理研電線社製)8によって接続されている。
そして、最終的に、図1に示すICタグを、市販のラミネート装置(110℃設定)を用い、表面をPETフィルム(市販品:図示せず)でラミネートすることにより、製品としてのICタグが完成する。
以下に、図2〜3を用いて、より詳しく説明する。
【0052】
(アンテナ回路の形成)
図2は、図1に示したICタグにおけるアンテナ回路のパターンを示す図である。
アンテナ回路3および5は、Sn−Ag−Cu系半田(Sn−3.5Ag−0.5Cu)で形成されている。アンテナ回路3および5は、以下の手順で形成される。
静電気を利用してグラシン紙(グラシンF133kg)を固定し、基材とする。その上に、図2に示すパターンを、半田付け可能な樹脂(A−5050、日本ペイント社製)を用いて、スクリーン印刷(印刷条件:ST325mesh+乳剤厚み10μm)した後、160℃にて30分間加熱し樹脂を硬化させた。なお、パターンは、ライン幅が0.75mm、およびライン間隔が0.25mmとなるように調節した。
【0053】
得られたパターン上に、φ0.6mmのフラックス含有糸半田(Sn−Ag−Cu系)を、半田こてを使用してコートした(設定温度:325℃)。パターン以外の場所に載った半田を除去した後、ジャンパー線の両端をそれぞれアンテナ回路3および5の末端4および6に半田付けした。
その後、フラックス洗浄し、乾燥させて、アンテナ回路3および5を形成した。
【0054】
(ICチップの搭載)
次いで、ICチップ7を搭載した。図3は、ICチップ7を基材2の上に搭載する様子を概念的に示す図であり、順に(a)から(c)へと進む。図3(a)に示すように、アンテナ回路3および5の間に、デイスペンサーを用いて半田および接着性熱硬化性樹脂を含む半田ペースト(TYCAP−5401−11、タムラ化成社製、Sn−Bi系半田ペースト)11を所定量塗布する。その後、図3(b)に示すように、ICチップ7の2つの電極12、13がそれぞれアンテナ回路3および5に当接するよう基板の上に仮載せする。
【0055】
160℃で10秒間加熱して、半田ペーストに含まれる半田成分を溶融させる。その後、温度を130℃に下げ30分間保持して接着性熱硬化性樹脂を熱硬化させる。
【0056】
このとき、接着性熱硬化性樹脂成分が未硬化の間に、溶融した半田成分が、半田成分に対して濡れ性の良い電極12、13および半田層からなるアンテナ回路3、5の表面近傍に集まり、半田リッチな部分14が生成する。一方、電極12と電極13の中間には、接着性熱硬化性樹脂成分リッチな部分15が生成する。
【0057】
この時、ICチップの仮載せは手置きで行ったため、所定の位置に対して精度良い位置には装着されていない状態であったにも関わらず、半田リッチな部分14、および接着性熱硬化性樹脂成分リッチな部分15が生成する事によって発生する力のバランスが、ICチップを適切な位置へ自己移動することが確認された。
【0058】
この状態で半田ペースト11が固化して、電極12、13とアンテナ回路3、5は、半田リッチな部分14によって接合される。このとき、アンテナ回路3とアンテナ回路5は、短絡することがなく、また、ICチップ7の本体は、接着性熱硬化性樹脂成分リッチな部分15によって、基板2と強固に接着されていた。
【0059】
(ICタグの動作確認)
次いで、作製したICタグについて動作確認を行った。具体的には、インピーダンスの測定の他に、リーダーライター(ウェルキャット社製、EFG−310−01)を用いた通信距離の測定、Dipメータ(三田無線研究所社製、DMC−230S2)を用いた表面ラミネート前後の共振周波数の測定を行った。
【0060】
(動作確認結果)
第1の実施の形態におけるICタグの動作確認結果は以下の通りであった。
(イ)インピーダンス:13〜15Ω
(ロ)共振周波数(ラミネート前):14.20〜14.30MHz
共振周波数(ラミネート後):13.90〜14.10MHz
(ハ)通信距離(ラミネート後、空中):60〜65mm
【0061】
(第2の実施の形態)
(ICタグの構成)
基材にグラシン紙(グラシンW87.5kg)を用い、アンテナ回路パターンとして、図4に示す2個取りパターンのうちの1個を用いた以外は、第1の実施の形態と同様にして、ICタグを作製し、動作確認を行った。
【0062】
(動作確認結果)
第2の実施の形態におけるICタグの動作確認結果は以下の通りであった。
(イ)インピーダンス:12〜17Ω
(ロ)共振周波数(ラミネート前):13.80〜13.90MHz
共振周波数(ラミネート後):13.40〜13.60MHz
(ハ)通信距離(ラミネート後、空中):40〜45mm
【0063】
(第3の実施の形態)
アンテナ回路パターンを図5に示すパターンとした以外は、第1の実施の形態と同様にして、ICタグを作製し、動作確認を行った。
【0064】
(動作確認結果)
第3の実施の形態におけるICタグの動作確認結果は以下の通りであった。
(イ)インピーダンス:14〜16Ω
(ロ)共振周波数(ラミネート前):14.50〜14.60MHz
共振周波数(ラミネート後):14.10〜14.30MHz
(ハ)通信距離(ラミネート後、空中):35〜40mm
【0065】
上記の動作確認結果より、第1の実施の形態〜第3の実施の形態にかかるICタグは、アンテナ回路の形成およびICチップとアンテナ回路との接続が良好であり、充分に小さいインピーダンスが達成され、通信距離において良好な特性が得られた。また、ICチップが基材に強固に固定されていることが確認できた。
【0066】
(高誘電率材料のシートを貼付したICタグの作製)
ただし、第1の実施の形態〜第3の実施の形態にかかるICタグを、金属体上に実装したところ通信が極めて困難であることが分かった。そこで、ICタグの裏面(アンテナ回路形成面と反対側の面)に高誘電率材料製のシート(厚さ150μm、初誘磁率30のフェライトシート)を貼付して、動作確認を行ったところ、金属体上に実装した場合にも動作可能なICタグとすることができた。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の第1の実施の形態にかかるICタグの概念図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態にかかるアンテナ回路のパターンを示す図である。
【図3】本発明におけるICチップの搭載の様子を概念的に示す図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態にかかるアンテナ回路のパターンを示す図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態にかかるアンテナ回路のパターンを示す図である。
【符号の説明】
【0068】
1 ICタグ
2 基材
3、5 アンテナ回路
4、6 アンテナ回路の末端
7 ICチップ
8 ジャンパー線
11 半田ペースト
12、13 電極
14 半田リッチな部分
15 接着性熱硬化樹脂成分リッチな部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙製の基材の表面に、銀コートニッケル粉末または銀コート銅粉末を含有すると共に溶融した半田に対して濡れ性を有する半田付け可能な樹脂を用いて、アンテナ回路と同一のパターンを形成した後、溶融した半田を用いて基材との密着性に優れた前記パターン上に前記アンテナ回路を形成することを特徴とする無線ICタグの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−9591(P2009−9591A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−204041(P2008−204041)
【出願日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【分割の表示】特願2007−127986(P2007−127986)の分割
【原出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【出願人】(591020445)立山科学工業株式会社 (71)
【Fターム(参考)】