説明

無縫製のスリッパ及びその製造方法

【課題】足に感触のよい無縫製の簡易スリッパの提供を目的とする。
【解決手段】羊毛綿からなる略十字状のラップ1aを広げ、その上に芯材2となるナイロン布を適当個数並べ、さらに次にラップ1aと同形状であり、異なる色であるラップ1bを重ねる。そして、足載せ部3を重ね合わせたものを縮充すると、全体が圧縮され一体となって、スリッパの底部と甲部が一体のものが得られる。さらに足載せ部3に別途製作した凹凸部を備えたインソールを貼り合わせ、甲部の両端に連結部を設ければ両面兼用のスリッパとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、履物、特にフェルトを組みあわせて構成され、片面あるいは両面使用の可能な無縫製のスリッパ及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スリッパは、病院や住宅内で簡易な履物として使用される。最近では、交通機関、特に航空機内やホテルでもよく使われている。航空機や、ホテルでのスリッパの使用は、繰返し同じスリッパを使用するよりも、使い捨てタイプのスリッパが多い。
一般的にスリッパは、つま先部と足載せ部から構成されており、その材料はプラスチック、布(不職布)、紙等から作られるが、特に使い捨てタイプのものは、布製や紙製のものが多い(特許文献1参照)。
【0003】
使い捨てタイプのスリッパは、一時的使用を目的とするところから、つま先部や、足載せ部が、長期使用を目的とするスリッパに比較して、その構造も単純であり、簡易に作製されている。しかし、そのために履き心地、使用時の満足度は高くない。
又、一般的にスリッパは縫製される工程が含まれており、そのためにコストの削減が困難であった。
一方、日常、用いられるスリッパの材料として、その人体への感触や、材料の持つ弾力性等に着目して、フェルトが従来からよく使用されており、例えばスリッパの底に用いるために、羊毛繊維を縮充することにより製造されたフェルトも使用されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2002−186501号公報
【特許文献2】特開平9―95845号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで従来の使い捨てタイプのスリッパは、紙あるいは布製であるため、使用時に薄っぺらな感じが強く、見た目や履き心地もよくない。
また、その特徴からフェルトを使用することが考えられるが、縫製工程が含まれることが一般的であり、コストや製造上の観点から、使い捨てタイプの簡易なスリッパへの適用はされていない。
【0005】
本発明は、上記従来の問題を解決した使い捨てタイプのスリッパを提供するものであり、特に、通常のスリッパに部分的に使われていたフェルトを、ほとんどの部品に使用したスリッパを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の無縫製のスリッパは、略十字状の互いに色彩の異なる繊維材料層の間に、芯材が挟み込まれたフェルト製の底部と一体に形成される甲部と、前記底部の一面あるいは両面に重なるフェルト製の足載せ部と、前記甲部の両端を連結する連結部材とを備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の無縫製のスリッパは、前記芯材がナイロン布であることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の無縫製のスリッパは、前記繊維材料層が、縮充性を有する羊毛であることを特徴とする。
さらに、本発明の無縫製のスリッパは、前記足載せ部の上に、更にインソールが接着されることを特徴とする。
【0009】
さらに、本発明の無縫製スリッパの製造方法は、縮充性を有し、平面形状が略十字状である2層の繊維材料の間に、ナイロン布からなる芯材を挟み込んだものの両面に、フェルト製足載せ部を重ね合わせたものを、縮充することによって各部材間を固定化して、底部と両端部を有する甲部を一体に形成し、次に、上記フェルト製足載せ部に、足載せ部と同形状にカットされたフェルトとテープ状フェルトとを縮充することにより作製されたインソールを接着材により貼り付け、次に上記甲部の両端部に連結部を設けることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、簡易スリッパとして人体への感触が良好であり、見た目や使い勝手もよい。また、芯材としてナイロン布を用いているので、足載せ部分の強度が高くなり、スリッパとして耐久性が増し、一時的使用の時間が長くなる。更にインソールを足載せ部に貼りつけた場合には、インソールの部分が使用時に衝撃を吸収するとともに、凹凸部分が足裏に心地よい刺激を与える。
本発明の無縫製スリッパは、縫製工程なしで製造できるのでコスト削減に効果的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施の形態を図面にそって説明する。
図1乃至図3において、本発明のスリッパを構成する基本的部材を説明すれば、カーディング後、開毛した羊毛綿であるラップ1a、1bと、両ラップ間に芯材2として挿入されるナイロン布と、上記ラップ上に重ねられる足載せ部3とからなる。
【0012】
上記構成からなる無縫製スリッパの製法を、以下に説明する。
先ず、別途製造されたフェルト生地(プレスフェルト)から、足型を当てて打ち抜き、図1に示す足載せ部3を作る。
そして、図2に示すラップ1a、1bは、カーディングされた羊毛綿を、予め互いに色彩が異なるように染色しておき、所望の厚さ(例えば数cm、3cm〜5cm)にした後、型紙(略十字形状)を当てて切断したものである。
【0013】
次に、図3に示す芯材2となるナイロン布を用意する。芯材2及び足載せ部3の厚みは、それぞれ数mmであるが、所望により厚さは選択できる。
次に、上記各部材を、図4に示すように重ね合わせる。先ず、縮充機であるハーダーに羊毛綿からなるラップ1aを広げ、その上に芯材2となるナイロン布を適当個数並べ、次にラップ1aとは異なる色のラップ1bを、ラップ1aと同じ程度の厚さで、ラップ1aと同じ形状に重ねる。そして、重ね合わせたものをハーダーにより縮充すると、全体が圧縮され一体となった図5、図6に示すようなものが得られる。縮充の過程でラップ1a、1bは圧力が加えられた結果、それぞれフェルト部材11a、11bのように薄くなる(2〜3mm程度)とともに、芯材2を挟んで、ラップ1a、1bと足載せ部3とが互いに交絡して、スリッパの底部5と足載せ部3が一体になり、さらに底部5に対して甲部が連続した一体のものが得られる。
【0014】
なお、足載せ部3とフェルト部材11a、11bとの結合をより強化するために、足載せ部3の先端部と後端部とを、フェルト部材11a、11bに接着剤により接着してもよい。
また、底部5には足載せ部3に対してはみ出している部分があるが、はみ出し部分7をあえて切断する工程は設けない。厚さは足載せ部が5mm程度、その他の部分は2〜3mm程度になる(縮充前の、下部フェルト1a、上部フェルト1bの綿の厚さが3cm程度、芯材2及び足載せ部3の各厚みを3mm程度として)。
【0015】
次に、甲部4a、4bを連結するための連結部を作製する。連結部は、甲部4a、4b同士を面ファスナーで連結してもよいし、4a、4bに切り込みを入れ、ひもで結び合わせてもよい。また、一方の甲部に設けられた突起を、他の一方に設けられた切り込みに入れ込んで連結してもよい。これら連結手段はいずれも従来周知のものである。
【0016】
上記のように製作されたスリッパは、図7に示すようにいずれか一方の面を選び、足載せ部3に足を載せ、連結部4a、4bを連結すれば着用できる。また、他の面を選択すれば、両面兼用のスリッパとなる。この場合、フェルト部材11a、フェルト部材11bの各色が異なることから、どちらの面を利用するかによりスリッパ着用時の色彩が片面のみの場合と異なり、使用形態を楽しむことができる。
【0017】
次に別の実施形態を図8に基づき説明する。
工程(A)において、各種の色からなるフェルト21を複数枚、用意し、これらから波形の切片22をカットする(工程B)。次に、適当な色のラップと工程Bで得られた各種の色の波形の切片22を重ね、ハーダーにかけ縮充する。すると、フェルト23上に、各種の色の波形の切片22´、22´´、22´´´が1mm程度の凹凸となって表れたものができる(工程C)。これに足型をあて、打ち抜くと足型部分24に切片22等が凹凸となったもの(インソール)ができる(工程D)。
次に図5のA−A線断面図で示されるものにおいて、前記インソールを表裏の足載せ部3に、接着材により貼り合わせる。このスリッパは、第1の実施形態に比して、使用時に衝撃を和らげることができ、また、凹凸により足裏への刺激を与えることができる。
【0018】
上記のように製造したスリッパは、交通機関内でもホテルでも適宜使用できるが、
スリッパ全体がフェルトから作られているため、足に対する感触は非常によく、また使用後の廃棄の面でも手軽に使用出来る。
また、スリッパの構造上、芯材の形状や数、あるいはそれらの重ね併せによって、表面に浮き出る突起の程度を大きくすれば、足裏に対する指圧効果を与えることもできる。
【0019】
さらにスリッパの製造工程で、上下の綿を重ね合わせ、縮充を行った後の面は、足載せ部の大きさよりも大きければよく、足載せ部よりはみ出た部分は、特に切り取る工程を設けていない。全体の形状が不定形状になるが、そのことがスリッパの機能に何ら関係がなく、工程削減により製造コストも安くなる。
作業工程全体に縫製工程がないため、機械により一連の工程で製作可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明のスリッパに使用される足載せ部の例を示す図である。
【図2】本発明のスリッパに使用されるカーディング後の綿を、型に合わせて打ち抜いた例を示す図面である。
【図3】本発明のスリッパの、上部及び下部のラップの間に挿入されるナイロン片を示す図である。
【図4】本発明のスリッパの縮充前の、足載せ部、上部及び下部のラップ、及びナイロン片を重ね合わせたものを示す模式図である。
【図5】本発明のスリッパの、図4に示す各部材を重ね合わせ後、縮充した後の底部と甲部が一体となったものを示す平面図である。
【図6】図4に示す各部材を重ね合わせ後、縮充した後の底部と甲部が一体となったものを示す底面図である。
【図7】本発明のスリッパの使用状態を示す図である。
【図8】本発明の別の実施形態を示す図であり、図4あるいは図5で示すものにおいて、インソールの製作工程を示す図である。(A)〜(D)はインソールを作る工程を説明する図であり、(E)は図5のA―A線断面図のものにインソールを貼り合わせたものを示す図である。
【符号の説明】
【0021】
1a、1b カーディング後のラップ、2 ナイロン片、3足載せ部、4a、4b 甲部、5 はみだし部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
略十字状の互いに色彩の異なる繊維材料層の間に、芯材が挟み込まれたフェルト製の底部と一体に形成される甲部と、
前記底部の両面に重ねられるフェルト製の足載せ部と、
前記甲部の両端を連結する連結部材と
を備えることを特徴とする無縫製のスリッパ。
【請求項2】
前記芯材は、ナイロン布であることを特徴とする請求項1に記載の無縫製のスリッパ。
【請求項3】
前記繊維材料層は、縮充性を有する羊毛であることを特徴とする請求項1又は2に記載の無縫製のスリッパ。
【請求項4】
前記足載せ部の上に、更にインソールが接着されることを特徴とする請求項1に記載の無縫製のスリッパ。
【請求項5】
縮充性を有し、平面形状が略十字状である2層の繊維材料層の間に、ナイロン布からなる芯材を挟み込んだものの両面に、フェルト製足載せ部を重ね合わせたものを、縮充することによって各部材間を固定化して、底部と両端部を有する甲部を一体に形成し、
次に、上記フェルト製足載せ部に、足載せ部と同形状にカットされたフェルトとテープ状フェルトとを縮充することにより作製されたインソールを接着材により貼り付け、
さらに上記甲部の両端部に連結部を設けることを特徴とする無縫製スリッパの製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−68379(P2006−68379A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−257300(P2004−257300)
【出願日】平成16年9月3日(2004.9.3)
【出願人】(398011055)丸新フエルト紡織株式会社 (2)
【Fターム(参考)】