説明

無臭化大豆の製造方法

【課題】 普通大豆から短時間かつ簡単な手段により無臭化大豆を製造する。
【解決手段】
皮付き又は脱皮された普通大豆を、温度250℃〜620℃の水蒸気プラズマに20秒〜0.5秒間接触させることによって、無臭化大豆を製造する。
あるは、皮付き又は脱皮の普通大豆の破砕物あるいは粉末を、温度180℃〜500℃の水蒸気プラズマに20秒〜0.5秒間接触させる。
水蒸気プラズマは、電磁誘導加熱によって発熱した金属体を熱源とする電磁誘導加熱方式で製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は大豆臭のない大豆の製造方法に関し、特に普通大豆から大豆臭のない無臭化大豆の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大豆は植物性の蛋白質を豊富に含むことから、高級蛋白質食材として用いられている。
しかし、普通大豆は、通常、不快臭、不快味といわれる大豆特有の風味があり、美味しい食品を製造する上で大きな障害になっている。
そこで、大豆臭を除去する処理技術が各種提案されており、例えば加熱処理する方法があり、加熱媒体として高温空気又は高温水蒸気が用いられる。
特に水蒸気は熱伝達効率が高いので、加熱用熱媒体として優れている。
この加圧条件下の処理では、原料への水蒸気の浸透が避けられず、別段の乾燥工程を経ることが不可欠となり、製品価格高騰の原因になる。
一方、比較的良風味の大豆として知られているリポキシゲナーゼ完全欠失種大豆(以下「リポ欠大豆」という)は、大豆特有の青臭みの発生が少ないが、価格が高く、リポ欠大豆といえども不快な臭い、不快な味の原因成分を若干有してい
る。
なお、本発明でいう普通大豆とは、従来から広く食用とされてきた大豆で、青臭みの原因物質生成のもとになっているリポキシゲナーゼL1、L2、L3の総てもしくは少なくともそれらの1つを含有する大豆をいう。
そこで、普通大豆を過熱水蒸気に接触させて無臭化(リポキシナーゼの失活)する方法が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許公開2005−318808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載発明では、普通大豆を脱脂粉末にし、それを温度130℃〜250℃の水蒸気に、時間30秒〜300秒間、大気圧下に曝すことが必要であるため、脱脂工程、粉砕工程、そして比較的長時間の水蒸気接触処理を要し、複雑な工程と、処理中に蛋白質が変性してしまう問題があり、よって同処理で得られた大豆粉末を用いて豆腐を製造しようとして、にがりを添加しても、凝固せず豆腐にならないものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、大豆臭のない無臭化大豆を製造する方法を提供することを目的とし、下記構成の無臭化大豆の製造方法である。
(1)皮付き普通大豆を、温度250℃〜620℃の水蒸気プラズマに20秒〜0.5秒間(好ましくは5〜15秒間)接触させることを特徴とする無臭化大豆の製造方法。
(2)脱皮普通大豆を、温度250℃〜620℃の水蒸気プラズマに20秒〜0.5秒間(好ましくは5〜15秒間)接触させることを特徴とする無臭化大豆の製造方法。
(3)皮付き又は脱皮の普通大豆の破砕物あるいは粉末を、温度180℃〜500℃の水蒸気プラズマに20秒〜0.5秒間(好ましくは2〜20秒間)接触させることを特徴とする無臭化大豆の製造方法。
(4)水蒸気プラズマが、電磁誘導加熱によって発熱した金属体を熱源とする電磁誘導加熱方式の過熱水蒸気発生装置により製造されたものであることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の無臭化大豆の製造方法。
本願発明でいう「水蒸気プラズマ」とは、電磁誘導加熱によって発熱した金属体を熱源とする電磁誘導加熱方式の発生装置から発生して間もないもの発生期の電磁誘導加熱生成過熱水蒸気を云い、正と負にイオン化した荷電粒子が高速で飛び回っており、かつ荷電粒子の間に大きなクーロン力が働いているプラズマが、過熱水蒸気の中に存在していて、この高エネルギーの粒子によって結合を切られて生じた水蒸気中の水素原子(H+)や酸素原子(O2-)やOHラジカルか(OH-)などの活性の高い原子や分子がプラズマ中に存在しているものである。
よって、還元性が強力であって、強力な殺菌力も有している。
【発明の効果】
【0006】
本願発明によれば、普通大豆を短時間でかつ簡単な手段により、無臭化することができ、無臭化大豆を製造を提供することができる。
しかも、大豆の蛋白は変性されないので、無臭化された大豆を使用して豆腐その他の食品を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本願発明の実施形態を実施例にしたがって説明する。
【実施例】
【0008】
実施例1:
皮付きの普通大豆を580℃〜620℃の水蒸気プラズマに4〜8秒間接触せしめる。
普通大豆に水蒸気プラズマを接触させるには、例えば、直径15cm、高さ2mの円筒体を傾斜させて立設し、その上方開口部から大豆をゆっくり投下する。
上記円筒体にはその上部途中(円筒体長の2/3位置)の円筒壁を貫通して水蒸気プラズマ噴射ノズルが円筒体内側に斜め下向きに配設されていて、同円筒体中に投下された大豆に前記水蒸気プラズマが噴射接触される。
水蒸気プラズマを発生させる発生装置としては、水蒸気を電磁誘導加熱により高温に過熱する方式のものが使用されるが、同電磁誘導加熱方式の水蒸気プラズマ発生装置により発生した、例えば580℃〜620℃水蒸気プラズマを前記円筒体中で4〜8秒間接触させる。
上記接触処理によって、普通大豆に含まれるリポキシゲナーゼ酵素が失活し、大豆臭のない無臭化大豆となるのである。
【0009】
実施例2:
普通大豆を横設され回転するドラム型の容器に投入して水蒸気プラズマに接触させる。
その容器の中央部には管壁に多数の過熱水蒸気噴出用の細孔を穿設した長軸管体を内設して、同ドラム型の容器を回転させつつ、前記長軸管体の細孔から前記水蒸気プラズマを噴射して、回転混合されている普通大豆に当てる。
なお、ドラム型の容器は角型筒体、例えば断面形状が正四角形や正六角形の角型筒体を採用することが好ましく、ドラム型の容器を回転させると、中の普通大豆は角部に当たって良好に攪拌される。また、前記水蒸気プラズマは高温であって、かなりの圧力で噴射されるため、普通大豆に強く接触して、攪拌する作用も生じる。
水蒸気プラズマの温度は380〜420℃、接触時間は8〜15秒間であった。
上記処理によって、無臭化大豆が得られた。
【0010】
実施例1及び実施例2で得られた各無臭化大豆を用いて豆腐を製造した。
すなわち、常法により前記無臭化大豆を水に一晩浸漬し、磨砕し、蒸煮した後、おからと豆乳に濾別し、得られた豆乳にニガリを加えて、凝固させて豆腐を製造した。得られた豆腐は全く大豆臭が無く美味しいものであった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮付き普通大豆を、温度250℃〜620℃の水蒸気プラズマに20秒〜0.5秒間接触させることを特徴とする無臭化大豆の製造方法。
【請求項2】
脱皮普通大豆を、温度250℃〜620℃の水蒸気プラズマに20秒〜0.5秒間接触させることを特徴とする無臭化大豆の製造方法。
【請求項3】
皮付き又は脱皮の普通大豆の破砕物あるいは粉末を、温度180℃〜500℃の水蒸気プラズマに20秒〜0.5秒間接触させることを特徴とする無臭化大豆の製造方法。
【請求項4】
水蒸気プラズマが、電磁誘導加熱によって発熱した金属体を熱源とする電磁誘導加熱方式の過熱水蒸気発生装置により製造されたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の無臭化大豆の製造方法。


【公開番号】特開2011−217710(P2011−217710A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−93531(P2010−93531)
【出願日】平成22年4月14日(2010.4.14)
【出願人】(505197300)
【出願人】(502286432)
【出願人】(303055383)
【Fターム(参考)】