説明

無菌のトロンビンを含有している止血用の組成物

【課題】無菌のトロンビンを含有している止血用の組成物を提供する。
【解決手段】本発明は、止血において使用するために適しており、液体の相の中において実質的に不溶性である生体適合性のポリマーの粒子の固体の相、および無菌のトロンビン、を含有する連続的な生体適合性の液体の相を含み、これらの固体の相および無菌のトロンビンのそれぞれが、その連続的な液体の相全体に亘り実質的に均質に分散されている、滅菌されている止血用の組成物、およびそのような組成物を作成する方法、を含む。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔発明の分野〕
本発明は無菌のトロンビンを含有している止血用の組成物、およびこれらの止血用の組成物を作成する方法に関連している。
【0002】
〔発明の背景〕
固体のスポンジまたは粉末の両方の形態でのゼラチンを基材とする止血物質は、市場において入手可能であり、外科処置において用いられている。ゼラチンの粉末は、流体と混合されると、その意図されている最終用途および液体の粉末に対する比率に応じて、種々の形態で調製できる。例えば、比較的に高い濃度の流体が用いられる場合に、特に平らでない表面または到達することが困難である領域からの、びまん性出血に使用するための、流動性で、押し出し可能の、注入可能な止血物質、として有用であるペーストまたはスラリーを調製することができる。このような従来のスラリーは、組成物の均一性を与えるために粉末および液体の機械的な攪拌および混合により、使用の場所において調製される。その後、このペーストは、例えば、注射器等の、送達手段またはアプリケータの中に入れられて、傷に供給される。また、別の場合に、成型可能な組成物を、比較的に少量の流体と共に調製して、成型または包装することにより、外傷に使用するための包帯を形成することも可能である。ゼラチンの粉末は上記のような組成物を調製する前に滅菌されるが、これらの粉末および流体を混合することは、その使用の部位におけるこれらの材料の取り扱いによるか、あるいは、一般に、混合等の間の比較的に長期の期間にわたる環境に対する曝露により、その止血用の組成物の無菌状態を損なわせる可能性がある。
【0003】
最終的に滅菌されないトロンビンを、上記のような止血用の組成物との組み合わせにおいて使用することが知られている。すなわち、トロンビン等のような蛋白質は無菌状態で調製されており、したがって、トロンビン等のような滅菌されていない蛋白質が、止血用の組成物の中に用いられる場合に、滅菌されているゼラチンの粉末等のような、既に滅菌されている材料の無菌状態を損なう可能性があるという危険性がある。しかしながら、トロンビンは、上記の粉末を滅菌するために従来から用いられている電離線等のような滅菌条件に対する曝露により変性することが知られており、この変性はトロンビンの全ての酵素作用を破壊するので、止血用の組成物に組み込んだ後に、無菌の組成物を確保するために、使用の前に、最終的に滅菌することがこれまでに報告されていない。実際に、トロンビンを従来の止血用の組成物において用いる場合には、滅菌されていないトロンビンが止血用の組成物の滅菌の後に添加されている。
【0004】
そこで、調製の必要性を伴わずに、例えば、使用の前にトロンビンを添加する必要性を伴わずに、使用の場所において、活性な無菌のトロンビンを含有している無菌の止血用の組成物が外科医にとって利用可能になれば、望ましいであろう。本発明の組成物はこのような要求を満たしている。
【0005】
〔発明の概要〕
本発明は、連続的で生体適合性の液体の相と、止血物質において使用するために適していて、上記の液体の相の中において実質的に不溶性である、生体適合性のポリマーの多孔質または非多孔質の粒子を含んでいる固体の相と、無菌のトロンビンと、を含んでいる滅菌されている止血用の組成物に関連している。この連続的な液体の相は、その中の全体に亘り実質的に均質に分散されている固体の粒子の相と無菌のトロンビンとを含んでいる。上記の液体の相と、固体の粒子の相と、トロンビンと、の比率は、滅菌の前および後の両方において、止血特性を伴う組成物を形成するために有効である。本発明の無菌の組成物は、滅菌用の放射線の処理にかけられた後でも、トロンビンの酵素活性を維持しながら、使用時から十分に先立って、調製することが可能である。本発明はまた、上記の止血用の組成物を作成する方法も含んでいる。
【0006】
〔発明の詳細な説明〕
本発明の滅菌されている組成物は、その3種類の主要な成分として、止血において使用するために適している生体適合性のポリマーの、固体の、多孔質または非多孔質の粒子と、生体適合性の液体と、無菌のトロンビンと、を含んでいる。これらの粒子、液体およびトロンビンは、そのトロンビンを含んでいる連続的な液体の相を含んでいて、その連続的な液体の相の全体に亘り均質に分散されている固体のポリマー粒子を有する実質的に均質な止血用の組成物を形成するために有効な条件下において、組み合わされて混合されている。この組成物の中に含まれている粒子の量および平均の直径、および上記の固体、液体およびトロンビンの相対的な量は、以下において本明細書に説明されているように、止血のおよび物理的な特性を伴う組成物を形成するために有効である。
【0007】
本発明の組成物は、それぞれの意図されている使用の時間から十分に先立って、電離線の照射により調製および滅菌することが可能であると共に、トロンビンを全く含有していない類似の組成物に、あるいは、トロンビンの活性が止血を助長しなくなるほどに実質的に減らされている場合に、比べた場合に、その組成物の止血を改善するために有効なトロンビンの酵素活性を維持する。このことは、例えば、ゼラチンの粉末、を含有している従来の止血用の組成物が、滅菌するために用いられる種類の照射に対して曝露される時に、トロンビンが変性するということが当業界において知られていることを考えれば、大いに予想外である。すなわち、このような変性はトロンビンからその酵素活性を失わせる。これらの組成物は、その組成物の調製を容易にして、物理的および機械的な特性を高めて、その組成物の止血特性を高めるか、抗菌性を与えるために、添加物をさらに含んでいてもよい。
【0008】
本明細書においては、「連続的な」および「不連続な」は分散を定義し、および説明するために用いられている標準的な用語体系の状況におけるこれらの用語の通常の意味で用いられている。
【0009】
本明細書においては、「実質的に均質な」とは、組成物またはペーストの物理的な状態を示しており、この場合に、固体の粒子は、その固体:液体の比率およびその組成物またはペーストの、いかなる断面または部分の密度も実質的に同一になるように、連続的な液体の相全体に亘り、均一に分散されている。
【0010】
本明細書においては、「無菌の」とは、生きている細菌および/または微生物が実質的にないこと、さらに、本明細書において記載されていて特許請求されている組成物および医療装置に関連している政府の基準により認められていて記載されているような状態を意味している。
【0011】
また、本明細書においては、「止血(用)の」または「止血特性」は、止血の技術における当業者がこれらの用語が意味することを理解するように、さらに、本明細書の実施例において例示されているように、出血を止めるか最小限にする能力を意味する。
【0012】
本発明の組成物において用いられている上記の固体の粒子を調製するために、多様な生体適合性で、天然の、半合成の、あるいは合成の、ポリマーを用いることができる。この場合に、選択されるポリマーは、特定の組成物のために選択された液体の中において実質的に不溶性である必要がある。好ましくは、機械的、化学的および/または生物学的な止血活性を示す、水に不溶性で生体分解性のポリマーが用いられる。使用可能であるポリマーは、限定を伴わずに、蛋白質および多糖類を含む。さらに、使用可能である多糖類は、酸化セルロース、キトサン、キチン、アルギネート、酸化アルギネート、および酸化デンプンを含む。また、上記の粒子を調製するために用いられる生体適合性のポリマーは、好ましくは、ゼラチン、コラーゲン、フィブリノゲンまたはフィブロネクチン等のような、架橋または変性されている蛋白質である。好ましいゼラチンの粉末は、ゼラチンのスポンジを、レーザー回折により決定される場合に、約40ミクロン〜約1,200ミクロン、さらに好ましくは、約100ミクロン〜約1,000ミクロンの平均の直径を有する粒子に、微粉砕することにより調製される、部分的に架橋されているゼラチンの粉末である。
【0013】
本発明の無菌の組成物は、上記の無菌のトロンビンおよび固体の粒子が分散されている連続的な液体の相、を含んでいる。特定の医療装置およびその用途に応じて、上記の液体は水性であっても非水性であってもよい。しかしながら、好ましくは、上記の液体の相は水性である。このような水性の液体は、限定を伴わずに、塩化カルシウムおよび塩水等のような、生体適合性の水性の溶液を含むことができる。さらに具体的に言えば、上記の液体の相は生理食塩水を含む。この液体の相および固体の粒子の相は、例えば、止血を行なうことにおいて使用するために適したペーストまたはスラリー等の組成物を形成するために有効な、相対的な量で存在している。例えば、特定の実施形態において、液体に対する固体の粒子の重量比率は、一般に、約1:1〜約1:12、または約1:3〜1:8、さらに約1:5である。
【0014】
本発明の組成物は、例えば、所与の量の電離線の照射により照射されているということにおいて、無菌である、本明細書において記載されている組成物、を含む。このような照射は、e−ビームまたはガンマ線の照射を含むことができる。この組成物が照射される時間を含む、照射の量および滅菌の条件は、本明細書において定められているように、無菌の組成物を形成する条件である。なお、この開示の恩恵を受ければ、当業者は無菌の組成物を提供するために必要な照射の量を容易に決定できるようになるであろう。
【0015】
本明細書において記載されているように、水性の溶液中の、トロンビンは、滅菌用の照射に曝されると、全ての凝血促進活性を失うことが知られている。これに対して、本発明の組成物において含まれている無菌のトロンビンは、本明細書において開示されている滅菌された組成物を形成するために十分な照射を受けた後でも、本発明の組成物に止血特性を与えるために十分な酵素活性を維持する。本発明の組成物における無菌のトロンビンは、滅菌処理前の、元の酵素活性の約20%しか失わないことが可能である。本発明の特定の実施形態において、上記の無菌のトロンビンは、滅菌処理前の元の酵素活性の約40%を超える酵素活性の損失を示さないと共に、本発明に従って組成物中に配合される場合に、滅菌処理後においてその止血活性の全てを維持する。なお、本明細書において、ウシのトロンビンが例示されているが、米国特許第5,143,838号において記載されているようなヒト由来トロンビンも、本発明の組成物において使用可能である。トロンビンが上述のような滅菌用の放射線に曝された後に活性を維持することの発見は、トロンビンが止血用の組成物に用いられる場合には、そのトロンビンは滅菌処理の前ではなく、組成物の滅菌処理後に添加される必要があることを強く勧めるであろう当該技術分野の以前の教示を考えれば、大いに予想外である。
【0016】
上記の止血用の組成物は、さらに、抗菌剤、界面活性剤、酸化防止剤、保湿剤、湿潤剤、潤滑剤、増粘剤、希釈剤、例えば、ラジカル・スカベンジャー等の照射安定化剤、可塑剤、および安定化剤を含むが、これらに限定されない、有効な量の1種類以上の添加物または化合物を含有していてもよい。例えば、グリセロール(glycerol)を、上記の組成物の押し出し可能性または注入可能性を高めるために添加できる。さらに、使用される場合に、グリセロール(glycerol)は、上記の液体の相の重量に基づいて、約0〜約20重量%において、上記の組成物中に存在できる。好ましくは、上記の組成物は上記の液体の相の重量に基づいて、約1〜約10重量%のグリセロール(glycerol)を含有できる。さらに、好ましくは、上記の組成物は上記の液体の相の重量に基づいて、約1〜約5重量%のグリセロール(glycerol)を含有できる。
【0017】
加えて、上記の組成物に高められた特性を与えるために、第四級アミンを使用してもよい。例えば、塩化ベンズアルコニウム(benzalkonium chloride)、ポリブレン(Polybrene)またはオナマー・エム(Onamer M)は、上記の液体の相の重量に基づいて、約1重量%までの量で使用できる。好ましくは、塩化ベンズアルコニウム(benzalkonium chloride)は、上記の液体の相の重量に基づいて、約0.001〜約0.01重量%の量で用いられる。さらに好ましくは、上記の組成物は、上記の液体の相の重量に基づいて、約0.002〜約0.006重量%の塩化ベンズアルコニウム(benzalkonium chloride)を含有できる。また、上記の第四級アミンは多数の機能を与えることができ、抗菌剤、発泡剤、ラジカル・スカベンジャーとして、さらに、ヘパリン中和剤として作用する可能性がある。
【0018】
上記の止血用の組成物は、さらに、フィブリノゲン、フィブリン、第Xa因子または第VIIa因子等のような、ヘパリン中和剤、追加の凝血促進剤または止血剤を含有していてもよい。この「有効な量」とは、上記の添加物がそのために添加される上記の特性を、上記の組成物に与えるために必要な量を意味している。また、この有効な量はまた、有害な生物学的な作用を生じることなく添加できる最大の量により制限されている。
【0019】
本発明の止血用の組成物が利用可能である医療装置は、止血を必要としている部位または傷に、流動性のまたは注入可能な止血用のペーストまたはスラリーを供給するために現在において用いられている任意の装置を含む。このような止血を必要としている部位は、傷害または外科処置の結果と考えることができる。また、上記の装置またはアプリケータの例は、ベクトン・ディッキンソン(Becton Dickinson)またはモノジェクト・ルア・シリンジ(Monoject luer syringes)等のような、注射器を含む。さらに、別の装置が、内容が、その全体において、参照により本明細書に組み入れられている、米国特許第6,045,570号において詳細に開示されている。
【0020】
本発明の組成物を作成するための一例の実施形態において、均一なペーストを形成するために、上記の液体と上記の粒子を混合することにより、実質的に均質なペーストが調製されている。この液体はトロンビンを含んでおり、上述のように、その中に溶解されている有効な量の別の添加物を含んでいてもよい。また、上記の混合は、上記の液体の相の中において上記の固体の粒子の均一な分散を与えるために有効な条件下において、所与の制限された空間の中において、押し出すか混合することにより、達成できる。
【0021】
あるいは、例えば、二重遊星形ミキサー等の、ミキサーを、本発明の組成物の作成において利用してもよい。この場合に、上記のトロンビンを含んでいる液体が、このミキサーに加えられる。この液体は、その溶液に対する粒子の添加の前に、その中に溶解されている有効な量の添加物を含有していてもよい。例えば、トロンビン、グリセロール(glycerol)、および塩化ベンズアルコニウム(benzalkonium chloride)を含んでいる塩水の溶液を調製してから、上記のミキサーに加えてもよい。その後、固体の粒子が、全ての成分が添加されるまで、継続的な混合を伴ってゆっくりと時間をかけて、そのミキサーに加えられる。この混合は、上記の連続的な液体の相全体に亘り均一に分散されている固体の粒子を含む、実質的に均質な組成物が形成される時間まで、続けられる。
【0022】
上述のように調製された止血用の組成物は、無菌のトロンビンを含む無菌の組成物を提供するために滅菌される。一部の実施形態において、この組成物は上述のような医療装置の中に移されて、その止血用の組成物を収容している装置が、好ましくは、電離線により、滅菌される。さらに好ましくは、この滅菌は、本明細書において例示されているように、ガンマ線の照射により行なわれる。
【0023】
以下の実施例は本発明の特定の実施形態を説明しているが、これらは本発明の範囲を限定しているものとして解釈されるべきではなく、むしろ、本発明の完全な説明に寄与しているものとして解釈されるべきである。
【0024】
実施例1
凍結乾燥したウシのトロンビン(20,000単位のトロンボゲンJJMI)の2個のビンを20mlの塩水の中に再形成して、1000単位/mlの希釈標準液を形成した。次に、実施例2において記載されているように、体外試験において、凝固活性を測定した。上記の材料の1個のビンを4〜8℃で貯蔵し、1日目、8日目、および30日目において、それぞれ、凝固活性を測定した。第2のビンはガンマ線の照射(25kGy)により滅菌して、その凝固活性を上述のように測定した。これらの、滅菌されていない、および滅菌されている、サンプルは、サンプル1aおよび1bとして、それぞれ示されている。これらの、滅菌されていない、および滅菌されている、両方のサンプルを、それぞれの測定の間に4〜8℃で貯蔵した。
【0025】
20,000単位の凍結乾燥したウシのトロンビンの別の2個のビンを、0.005重量%の塩化ベンズアルコニウム(benzalkonium chloride)および5重量%のグリセロール(glycerol)を含有している塩水の中において再形成した。1個のビンを4〜8℃で貯蔵し、0日目、1日目、8日目、および30日目において、凝固活性を測定した。第2のビンはガンマ線の照射(25kGy)により滅菌して、その凝固活性を上述のように測定した。測定の間に、両方の、滅菌されていない、および滅菌されている、サンプルを、4〜8℃で貯蔵した。これらの、滅菌されていない、および滅菌されている、サンプルは、サンプル1cおよび1dとして、それぞれ示されている。
【0026】
上述のトロンビンを含有しているゼラチン・ペーストの幾つかのサンプルを、1グラムのサージフォーム(Surgifoam)ゼラチン粉末と5mlのトロンビン溶液とを混合することにより、調製した。この結果として得られたペーストを、10ccの注射器の中に詰め込んだ。その後、これらのサンプルを25kGyにおいて滅菌してから4〜8℃において貯蔵するか、4〜8℃において、滅菌せずに、貯蔵するだけのいずれかにした。このようにして調製したサンプルは以下において示されて識別されている。
【0027】
サンプル1e=1gのサージフォーム(Surgifoam)(登録商標)の粉末および5mlのサンプル1a、滅菌されている
サンプル1f=1gのサージフォーム(Surgifoam)(登録商標)の粉末および5mlのサンプル1c、滅菌されていない
サンプル1g=1gのサージフォーム(Surgifoam)(登録商標)の粉末および5mlのサンプル1c、滅菌されている
【0028】
実施例2:フィブロメーター器具(BBL)内における体外凝固試験によるトロンビン活性の測定
方法:トロンビンを含有している試験サンプルの一連の希釈液をベロナル(Veronal)緩衝液(pH7.2)の中において調製した。0.2mlの蓄えられた正常な血漿(シトロール・レベル(Citrol Level):1、対照血漿、デイド・ダイアグノスティクス(Dade Diagnostics))をフィブロメーターのインキュベータ・ブロックの中において37℃に加温した。次に、0.1mlの予備加温したサンプルの希釈液を上記の血漿に加えて、同時にタイマーを始動させた。凝固の形成の時間を記録した。全てのサンプルを2回試験して、平均の凝固時間を計算した。これらのデータを、log10(希釈率)対log10(凝固時間)としてグラフにし、回帰分析を行なった。この場合に、新しく調製したトロンビンは100%の活性を有していると考え、全ての他のサンプルは、新しく調製したトロンビンに対する活性の比率として計算されている。これらの結果が表1および表2において示されている。
【表1】

【表2】

【表3】

【0029】
実施例3:ゼラチン・ペーストによる凍結したトロンビンの滅菌
20,000単位の凍結乾燥したウシのトロンビン(トロンボゲンJJMI)の1個のビンを、0.005重量%のBAKおよび5重量%のグリセロール(glycerol)を含有している塩水の中において再形成した。次に、1グラムのサージフォーム(Surgifoam)(登録商標)の粉末を、5mlのトロンビン含有の塩水の溶液と混合した。この結果として得られたペーストを、10mlの注射器の中に詰め込んだ。その後、このサンプルを−20℃で凍結させて、25kGの線量でガンマ線の照射により滅菌した。次に、実施例2において記載されているように、トロンビンの凝固活性を測定した。この結果、トロンビンの活性の42%しか、滅菌により失われていないことが分かった。
【0030】
〔実施の態様〕
(1)無菌の止血用の組成物において、
無菌のトロンビンを含有している連続的な生体適合性の液体の相と、
止血において使用するために適していて、前記液体の相の中に実質的に不溶性である生体適合性のポリマーの粒子、を含む固体の相と、を含み、
前記連続的な液体の相がその中の全体に亘り実質的に均質に分散されている前記固体の相および前記無菌のトロンビンを含んでおり、前記液体の相および前記固体の相の比率が止血特性を伴う前記組成物を形成するために有効であり、前記無菌のトロンビンが酵素活性を有している、組成物。
(2)実施態様1に記載の無菌の止血用の組成物において、
前記液体の相が塩水を含む、組成物。
(3)実施態様2に記載の無菌の止血用の組成物において、
前記生体適合性のポリマーが蛋白質および多糖類から成る群から選択される、組成物。
(4)実施態様3に記載の無菌の止血用の組成物において、
前記蛋白質がゼラチン、コラーゲン、フィブリノゲン、およびフィブロネクチンから成る群から選択される、組成物。
(5)実施態様4に記載の無菌の止血用の組成物において、
前記蛋白質がゼラチンを含む、組成物。
【0031】
(6)実施態様1に記載の無菌の止血用の組成物において、
前記無菌のトロンビンが、そのトロンビンが滅菌の前に有していた酵素活性の20%未満の酵素活性しか失っていない、組成物。
(7)実施態様1に記載の無菌の止血用の組成物において、
前記無菌のトロンビンが、そのトロンビンが滅菌の前に有していた酵素活性の40%未満の酵素活性しか失っていない、組成物。
(8)無菌の止血用の組成物を作成するための方法において、
トロンビンが内部において溶解している生体適合性の液体を供給する処理と、
前記トロンビンを含有している液体を、止血において使用するために適していて、前記液体の中において実質的に不溶性である生体適合性のポリマーの粒子と共に、組み合わせる処理と、
前記トロンビンを含有している液体および前記粒子を、連続的な液体の相であって、その連続的な液体の相の全体に亘って実質的に均質に分散されている前記トロンビンおよび前記粒子を含有している連続的な液体の相、を形成するために有効な条件下において混合することにより、実質的に均質な止血用の組成物を形成する処理と、
前記実質的に均質な止血用の組成物を、所与の量の電離線により、無菌の、実質的に均質な止血用の組成物を形成するために有効な時間にわたり、照射する処理と、を含み、
前記連続的な液体の相および前記粒子の比率が、止血特性を伴う前記組成物を形成するために有効であり、前記トロンビンがその酵素活性の少なくとも一部分を維持する、方法。
(9)実施態様8に記載の方法において、
前記液体の相が塩水を含む、方法。
(10)実施態様9に記載の方法において、
前記生体適合性のポリマーが蛋白質および多糖類から成る群から選択される、方法。
【0032】
(11)実施態様9に記載の方法において、
前記蛋白質が、ゼラチン、コラーゲン、フィブリノゲン、およびフィブロネクチンから成る群から選択される、方法。
(12)実施態様11に記載の方法において、
前記蛋白質がゼラチンを含む、方法。
(13)実施態様8に記載の方法において、
前記無菌のトロンビンが、そのトロンビンが滅菌の前に有していた酵素活性の20%未満の酵素活性しか失っていない、方法。
(14)実施態様8に記載の方法において、
前記無菌のトロンビンが、そのトロンビンが滅菌の前に有していた酵素活性の40%未満の酵素活性しか失っていない、方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無菌の止血用の組成物において、
無菌のトロンビンを含有している連続的な生体適合性の液体の相と、
止血において使用するために適していて、前記液体の相の中に実質的に不溶性である生体適合性のポリマーの粒子、を含む固体の相と、
を含み、
前記連続的な液体の相がその中の全体に亘り実質的に均質に分散されている前記固体の相および前記無菌のトロンビンを含んでおり、
前記液体の相および前記固体の相の比率が止血特性を伴う前記組成物を形成するために有効であり、
前記無菌のトロンビンが酵素活性を有している、組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の無菌の止血用の組成物において、
前記液体の相が塩水を含む、組成物。
【請求項3】
請求項2に記載の無菌の止血用の組成物において、
前記生体適合性のポリマーが蛋白質および多糖類から成る群から選択される、組成物。
【請求項4】
請求項3に記載の無菌の止血用の組成物において、
前記蛋白質がゼラチン、コラーゲン、フィブリノゲン、およびフィブロネクチンから成る群から選択される、組成物。
【請求項5】
請求項4に記載の無菌の止血用の組成物において、
前記蛋白質がゼラチンを含む、組成物。
【請求項6】
請求項1に記載の無菌の止血用の組成物において、
前記無菌のトロンビンが、そのトロンビンが滅菌の前に有していた酵素活性の20%未満の酵素活性しか失っていない、組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の無菌の止血用の組成物において、
前記無菌のトロンビンが、そのトロンビンが滅菌の前に有していた酵素活性の40%未満の酵素活性しか失っていない、組成物。
【請求項8】
無菌の止血用の組成物を作成するための方法において、
トロンビンが内部において溶解している生体適合性の液体を供給する処理と、
前記トロンビンを含有している液体を、止血において使用するために適していて、前記液体の中において実質的に不溶性である生体適合性のポリマーの粒子と共に、組み合わせる処理と、
前記トロンビンを含有している液体および前記粒子を、連続的な液体の相であって、その連続的な液体の相の全体に亘って実質的に均質に分散されている前記トロンビンおよび前記粒子を含有している連続的な液体の相、を形成するために有効な条件下において混合することにより、実質的に均質な止血用の組成物を形成する処理と、
前記実質的に均質な止血用の組成物を、所与の量の電離線により、無菌の、実質的に均質な止血用の組成物を形成するために有効な時間にわたり、照射する処理と、を含み、
前記連続的な液体の相および前記粒子の比率が、止血特性を伴う前記組成物を形成するために有効であり、前記トロンビンがその酵素活性の少なくとも一部分を維持する、方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法において、
前記液体の相が塩水を含む、方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、
前記生体適合性のポリマーが蛋白質および多糖類から成る群から選択される、方法。
【請求項11】
請求項9に記載の方法において、
前記蛋白質が、ゼラチン、コラーゲン、フィブリノゲン、およびフィブロネクチンから成る群から選択される、方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法において、
前記蛋白質がゼラチンを含む、方法。
【請求項13】
請求項8に記載の方法において、
前記無菌のトロンビンが、そのトロンビンが滅菌の前に有していた酵素活性の20%未満の酵素活性しか失っていない、方法。
【請求項14】
請求項8に記載の方法において、
前記無菌のトロンビンが、そのトロンビンが滅菌の前に有していた酵素活性の40%未満の酵素活性しか失っていない、方法。

【公表番号】特表2007−501784(P2007−501784A)
【公表日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522589(P2006−522589)
【出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【国際出願番号】PCT/US2004/023765
【国際公開番号】WO2005/016256
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(591286579)エシコン・インコーポレイテッド (170)
【氏名又は名称原語表記】ETHICON, INCORPORATED
【出願人】(306034387)
【氏名又は名称原語表記】PENDHARKAR, Sanyog, M.
【住所又は居所原語表記】5107 Hana Road, Edison, New Jersey 08817, United States Of America
【出願人】(306034376)
【氏名又は名称原語表記】GORMAN, Anne, J.
【住所又は居所原語表記】314 Stockton Street, Hightstown, New Jersey 08520, United States Of America
【Fターム(参考)】