説明

無菌の二室式レトルトパウチ及びその殺菌方法

【課題】 水分を含む内容物を収容する主室と、該主室と液密に遮断された副室を備えた
二室式パウチのいずれの室も充分な殺菌状態とし、衛生的に安心で、食品に対する品質保
持を高めたパウチを提供するもので、とくに、ジッパー付きレトルトパウチにおける殺菌
方法として優れている。
【解決手段】 水分を含む内容物を収容する主室と、該主室を液密に遮断された副室を備
えた二室式レトルトパウチであって、該主室がレトルト殺菌され、該副室が主室とは別個
に無菌化されてなるレトルトパウチ。その一例として、プラスチックフィルムからなる胴
材の周縁部をシールして成り、水分を含む内容物を収納するための主室と、開封予定部を
有する副室とをプラスチック製のジッパーを設けることにより液密に遮断して形成したレ
トルトパウチにおいて、少なくとも該副室を放射線照射することにより殺菌されたジッパ
ー付きレトルトパウチが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば経腸栄養剤や流動食等の投与容器、いわゆる流動食用パウチなどの
内容物注出口付きパウチにおいて、液状内容物を収容する主室と、該主室と液密に遮断さ
れた副室が共に完全に殺菌されたレトルトパウチ、ならびに、とくにその好適な一例とし
て開封部にプラスチック製のジッパーを付設したジッパー付きレトルトパウチの殺菌方法
に関するものであって、より詳しくは、レトルト殺菌だけでは完全な殺菌がなされていな
い可能性のある、水分が存在しない副室をも含めてパウチ全体を完全に殺菌出来るレトル
トパウチの殺菌方法に関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開2001−299875号公報
【特許文献2】特願2004−12159号
【特許文献3】特開2002−136571号公報
【特許文献4】特開2003−237742号公報
【0003】
特許文献1は、図5に示したように、上部が開閉自在な閉鎖手段aで閉鎖されるととも
に下部に液体出口cが設けられてなる袋体の内部空間が、前記閉鎖手段aに近接して設け
られた容易に剥離可能な隔壁bにより上下に流体密に区画され、該区画された下部の空間
dに液体が収容されてなるバッグであって、前記隔壁bは中央部が山形b1に形成される
とともに、両端部が拡幅b2されてなる液体収容バッグが記載されている。
この液体収容バッグは、閉鎖手段aとしてチャックシール(ジッパー)を用い、隔壁b
は液体を収容する空間dとチャックシール部の空間eを隔離するものであるが、この隔壁
の幅を大きくすると隔壁が剥離しなくなり、また隔壁の幅を小さくすると落下事故などに
より隔壁bが破損する虞があるため、隔壁の形状を上記のように工夫したものである。
【0004】
特許文献2は、本出願人が出願した注出口付きパウチに関するものであって、特許文献
1におけるパウチと同様に注出口の離間した部分にプラスチック製の線状ファスナーを設
けたものであるが、内容物が収容される空間と線状ファスナーの間は、線状ファスナーの
フィルム状基材を延出させその先端部を弱化部に形成し、液密に遮断しているものであり
、これによって、特許文献1のように、幅の大きさを考慮した隔壁を設けることなく、内
容物収容空間と線状ファスナー部分の空間を液密に遮断している。
【0005】
上記特許文献3、4は、パウチ内を殺菌する技術が開示されている先行技術を示すもの
である。
特許文献3には、例えば、投与直前にはじめて相互に混合して用いる輸液治療用あるい
は非経口栄養用の貯蔵に用いられる2種類の異なる成分をそれぞれ充填した第1室と第2
室からなる包装体に関する技術が記載されており、第2室を放射線殺菌することが記載さ
れている。
【0006】
また、特許文献4には、密封した状態で、予めパウチ容器を放射線滅菌処理したスパウ
ト付きパウチを充填機内で外面殺菌処理を施し、密封を解除して内容物を充填した後、別
工程で殺菌処理を施したキャップを用いて、前記パウチ容器を密封する、スパウト付きパ
ウチの無菌充填方法が記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、特許文献1、2のように、内容物収容空間と閉鎖手段によって形成される空
間を液密に遮断しているために、内容物収容後にレトルト殺菌に付した場合に、水分が存
在する内容物収容空間は充分な殺菌は出来るが、水分が存在しない閉鎖手段によって形成
される空間は、必ずしも、充分な殺菌が行われずに、例えば、B.pumilusやB.
subtilisなどの菌種が存在している可能性を否定出来ない。
【0008】
かかる従来技術の現状に鑑みて、本発明者らは、水分を含む内容物を収容する主室と該
主室と液密に遮断された副室を備えたレトルトパウチにおける水分の存在しない副室を含
む空間をも有効に殺菌する方法を模索した。
上記特許文献3、4にも示すように、ジッパーによる閉鎖手段を持たないパウチ自体を
放射線照射によって殺菌する方法は知られているが、これらの方法は、単に、通常のパウ
チの殺菌を放射線によってのみ行おうとするものである。
【0009】
そこで、本発明の目的は、異物や雑菌の侵入を極力防止して清潔な状態で、飲料水等の
補給ならびに再封が簡単に行なえるレトルトパウチ全体を充分に殺菌した状態で提供出来
るようにしたレトルトパウチ及びジッパー付きレトルトパウチの殺菌方法を提供すること
にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、下記の要件からなることを
特徴とする。
すなわち、本発明によれば、
プラスチックフィルムからなる胴材の周縁部をシールして形成した水分を含む内容物を
収容する主室と、該主室と液密に遮断された副室を備えた二室式レトルトパウチであって
、該主室がレトルト殺菌され、該副室が主室とは別個に無菌化されてなることを特徴とす
るレトルトパウチが提供される。
【0011】
また、本発明によれば、プラスチックフィルムからなる胴材の周縁部をシールして成り
、水分を含む内容物を収納するための主室と、開封予定部を有する副室とをプラスチック
製のジッパーを設けることにより液密に遮断して形成したレトルトパウチにおいて、少な
くとも該副室を放射線照射により殺菌することを含むジッパー付きレトルトパウチの殺菌
方法が提供される。
【0012】
また、本発明によれば、前記放射線照射が、主室への内容物充填前に行われる上記ジッ
パー付きレトルトパウチの殺菌方法が提供される。
【0013】
また、本発明によれば、プラスチックフィルムからなる胴材の周縁部をシールして成り
、水分を含む内容物を収納するための主室と、開封予定部を有する副室とをプラスチック
製のジッパーを設けることにより形成したレトルトパウチにおいて、少なくとも該副室を
構成するフィルム基材を紫外線、放射線または薬剤による殺菌処理に付した後に製袋し、
主室に内容物を充填することを含むジッパー付きレトルトパウチの殺菌方法が提供される

【0014】
また、本発明によれば、前記製袋が無菌環境下で行われる上記ジッパー付きレトルトパ
ウチの殺菌方法が提供される。
【0015】
また、本発明によれば、前記製袋後に、さらに少なくとも副室を放射線により殺菌する
上記ジッパー付きレトルトパウチの殺菌方法が提供される。
【0016】
また、本発明によれば、前記放射線がγ線である上記ジッパー付きレトルトパウチの殺
菌方法。
【0017】
また、本発明によれば、前記副室を構成するフィルム基材がポリプロピレンであって、
γ線の照射量が1ないし15kGyである上記ジッパー付きレトルトパウチの殺菌方法が
提供される。
【0018】
また、本発明によれば、前記プラスチック製のジッパーが、フィルム状基材の一方の面
に直線状の凸部が形成され、それと対向する面に上記凸部と係合する凹部が形成され、外
面からの押圧により係合自在とされている上記ジッパー付きレトルトパウチの殺菌方法が
提供される。
【0019】
また、本発明によれば、前記主室と副室の遮断状態が、プラスチック製ジッパーの係合
解除後に破断可能にされている上記ジッパー付きレトルトパウチの殺菌方法が提供される

【0020】
また、本発明によれば、前記破断が、ジッパーの凹凸両面から延出されたフィルム状基
材の弱化部の破断によって行われる上記ジッパー付きレトルトパウチの殺菌方法が提供さ
れる。
【発明の効果】
【0021】
本請求項1記載の発明によれば、液状内容物を収容する主室と、該主室を液密に遮断さ
れた副室を備えた二室式レトルトパウチにおいて、水分が存在する主室はレトルト殺菌さ
れ、該主室と遮断された水分が存在しない副室は、主室とは別個に殺菌することにより、
パウチ全体が完全に殺菌されたレトルトパウチを提供することができる。
また、請求項2以降の発明によれば、ジッパー付きレトルトパウチにおいて、内容物を
充填する主室における内容物の希釈や、内容物投与後の水分補給、さらには、パウチの使
用後の留置ラインの洗浄を行なうための水の注入口として、内容物注出口と離間した箇所
に、副室として、プラスチック製ジッパーを付設した副室を、前記主室と遮断状態で設け
ることにより、わざわざ、パウチに硬質の別部材の充填具を装着することなく、簡単な構
成で十分に目的を達成し得るジッパー付きレトルトパウチが提供され、しかも、このジッ
パー付きレトルトパウチは、少なくとも該副室を放射線、好ましくはγ線照射し、その後
に主室に内容物を充填した後でパウチ全体をレトルト殺菌することにより、レトルト殺菌
しただけでは、殺菌出来ない可能性がある、副室部分をも充分な殺菌状態とすることがで
き、使用者に衛生的で安全なジッパー付きレトルトパウチを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、図面を参照して本発明の最良の実施の形態を説明する。
本発明の基本構成は、図1に示したように、水分を含む内容物を収容する主室Aと、該
主室を液密に遮断された副室Bを備えた二室式レトルトパウチのいずれの室も完全に殺菌
された状態で消費者に提供出来るようにした点にあり、その特徴は、液状内容物が収容さ
れる主室Aは水分が存在するためにレトルト殺菌だけで完全に殺菌され、該主室と遮断さ
れた水分が存在しない副室Bを、副室に適合した条件で主室とは別個に殺菌することによ
り、パウチ全体が完全に殺菌されたレトルトパウチを得ることができる。図1のB1は遮
断部を示している。
【0023】
また、請求項2以降の本発明は、請求項1に規定した発明の好ましい態様を規定するも
のであり、その特徴は、注出口が付設され、内容物を充填するための空間を有する主室と
、該主室と遮断状態で隣接するジッパー部を含む副室が備わったジッパー付きレトルトパ
ウチの殺菌を、予め少なくとも副室をγ線照射などの放射線照射や紫外線あるいは薬剤に
よる殺菌を行った後で、主室に内容物を充填してから、パウチ全体をレトルト殺菌するこ
とにあるが、殺菌方法について説明する前に、上記殺菌方法が適用される容器の構成に付
いて説明する。
【0024】
図2は本発明の殺菌方法が適用される、主室Aと副室Bを備えたジッパー付きレトルト
パウチ1の一実施態様を示す説明図であり、本発明のジッパー付きレトルトパウチは図2
に示した主室Aと副室Bを備えた基本的構成を有する限り、その形状は限定されるもので
はない。図3は本発明のジッパー付きレトルトパウチにおける副室Bを構成するプラスチ
ック製のジッパーの一実施態様の断面構造の拡大図であり、ジッパー自体のフィルム状基
材が延出してその先端を弱化部23とした状態で主室Aと遮断状態にされている。図4は
その平面図である。
【0025】
本発明の殺菌方法が適用されるジッパー付きレトルトパウチ1は、大まかにいって、通
常、複数の多角形状のプラスチックフィルムからなる胴材の周縁部13をシールし、該周
縁部の一部に注出口10を備えた内容物注出具11が装着されている主室Aと、該内容物
注出具11と離間したパウチ周縁部の近傍内側に、プラスチック製のジッパー2が融着さ
れ、このジッパー2とシール部13との間に開封予定部15が設けられている副室Bから
なるものである。周縁部13上方には、通常パウチを吊り下げるための手段14が形成さ
れており、開封予定部15は、ジッパー2を利用する段階になってからハサミやナイフな
どの切断具を用いて開封される部分であり、切断具を用いなくても手指で開封出来るよう
に当該部分を例えばスコアなどを設けた弱化部として形成したり、開封開始部にノッチな
どの切込みを入れておいてもよい。なお、パウチ周縁部のシールは、ヒートシールが好ま
しいが、超音波シールで行なっても構わない。
【0026】
ジッパー付きレトルトパウチの形状は、特に限定されるものではないが、通常、四角形
を基本とした変則的な多角形状に形成されることが多い。なお、多角形状の角部は厳密に
角部を有している必要はなく、直線と直線を曲線で結んだ形状であってもよい。全体的に
見て大略多角形状であればよい。ジッパー付きレトルトパウチ1の胴体を構成するプラス
チックフィルムは、内容物の投与状況を外から確認することができるようにするために透
明であることが好ましく、フィルム単体でもよいが、通常、2層以上の複合フィルムが用
いられる。
【0027】
このプラスチックフィルムは、周縁部をシールするものであるため、これをヒートシー
ルで行なう場合には、複合フィルムの場合であっても、内層はヒートシール可能なプラス
チックから構成されていることが必要であり、通常、ヒートシール層(内層)/バリヤ層
(中間層)/表面層(外層)や、ヒートシール層(内層)/基材層(中間層)/バリヤ層
(中間層)/表面層(外層)からなる積層フィルムを用いることが好ましく、中でも、内
層がポリプロピレン、中間層がナイロン、外層が内層側にバリア層としての酸化アルミニ
ウムや無機ケイ素などの薄膜を蒸着したポリエチレンテレフタレートからなる積層フィル
ムを用いることがガスバリア性、突刺し耐性ならびに透明性に優れていて好ましい。また
、ガスバリア性を重視する場合には、アルミニウム箔を用いた積層フィルムを使用するこ
ともできる。
【0028】
この場合、中間層は、内容物の変質や腐敗等を防止するためのバリア層としての機能を
有するものであり、ナイロンや蒸着層以外にも、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂
フィルム(EVOH)等が用いられる。内層としては、ポリプロピレン以外にもポリエチ
レンなどが用いられ、外層としては、ポリエチレンテレフタレート以外にもナイロン等が
用いられる。
【0029】
ジッパー付きレトルトパウチ1の主室Aに付設される内容物注出具11は、ポリプロピ
レン樹脂など耐レトルト適性を有する一般にプラスチックから成形されたスパウトと呼ば
れるものや、前述した各特許文献にも記載されている自体公知の注出具がいずれも使用で
きる。この注出具11は、ジッパー付きレトルトパウチの胴体を構成するプラスチックフ
ィルムの周縁部13において、プラスチックフィルムの内層間に融着された状態で装着さ
れるものであるから、注出具の素材はパウチを構成するフィルム内層と融着可能なもので
なければならないが、その先端部の形状はパイプへの挿入が容易なようにテーパー状にし
てもよいし、パイプが抜けにくくするために、先端部外周に凹凸形状を形成するなどの適
宜任意に工夫がなれていてもよい。
【0030】
プラスチック製のジッパー2は、主室Aと副室が液密に遮断されている限りどのような
形状のものでも使用出来るが、図3、4に示したように、対向する2枚のフィルム状基材
22,22に付設され、一方の面に長手方向に直線状の凸部21bが形成され、それと対
向する面に上記凸部と係合21する凹部21aが形成された構成からなり、凸部21bお
よび凹部21aが、弱化部23を有するフィルムによって、内容物注出口10のあるパウ
チ内部空間24と液密に遮断されているものが特に好ましい。
主室Aと副室Bとの遮断は、上記ジッパーによるものばかりでなく、例えば、特許文献
1に示されたような剥離可能な隔壁(弱シール)によっても可能であり、本発明の殺菌方
法は、いずれの構成にも適用出来る。
【0031】
但し、ジッパー付きレトルトパウチの構造上の観点から言えば、図3、4に示したジッ
パー自体に弱化部を形成して主室Aと副室Bを遮断するようにしたパウチは、従来技術と
して特許文献1および図5に示されたような、わざわざ特定形状の隔壁(弱シール)を設
けるものに比べて構造的に安定している点で好ましい。なお、主室Aと副室Bとの遮断部
は、パウチ内に内容物が入っている時は破断することなく、ジッパーの開封後に引き続い
て破断されるようになっている。
【0032】
次に、上記レトルトパウチの殺菌方法に付いて説明する。
請求項1に規定した発明は、液状内容物を収容する主室と、該主室を液密に遮断された
副室を備えた二室式レトルトパウチにおいて、該主室がレトルト殺菌され、該副室が主室
とは別個に無菌化されてなるレトルトパウチであり、この副室の殺菌方法として好ましい
方法が、放射線による殺菌である。
以下、パウチの好ましい態様であるジッパー付きレトルトパウチに付いてその殺菌方法
を説明する。
【0033】
本発明の殺菌方法の特徴は、上記ジッパー付きレトルトパウチの構成において、予め、
少なくとも副室Bをγ線照射などの放射線や紫外線あるいは薬剤により殺菌することであ
り、次いで、主室Aに内容物を充填してからジッパー付きレトルトパウチ全体をレトルト
殺菌に付することにある。
従来からジッパー付きレトルトパウチの殺菌は、単一の殺菌方法が適用されていたもの
であり、ジッパーを含む副室Bを予めγ線の照射等で殺菌しておき、内容物充填後にレト
ルト殺菌に付するという技術思想は、本発明によってはじめて着想されたものである。γ
線による照射等による殺菌は、少なくとも予め副室Bに対してなされなければならず、そ
の際、主室Aにも照射等による殺菌がなされていても何ら構わないが、主室Aは、内容物
充填後のレトルト殺菌で充分に殺菌されるため、この部分にはγ線等による殺菌手段を用
いなくても殺菌の目的は充分に達成される。
【0034】
パウチの製袋工程を含む殺菌方法には、例えば、(1)パウチを構成するフィルム基材
を予め紫外線、放射線あるいは薬剤によって殺菌し、これを無菌環境下で製袋してから主
室に内容物を充填し、レトルト殺菌に付する方法、(2)フィルム基材を予め殺菌するこ
となく製袋し、少なくとも副室を紫外線、放射線あるいは薬剤により殺菌後に主室に内容
物を充填して、レトルト殺菌に付する方法、(3)フィルム基材を紫外線、放射線あるい
は薬剤によって殺菌後に製袋し、次いで少なくとも副室部分に放射線を照射して、主室に
内容物を充填し、レトルト殺菌に付する方法、(4)主室に内容物を充填した後で、少な
くとも副室部分に放射線を照射して、さらに、レトルト殺菌に付する方法、及び(5)副
室内部に水分を添加後、レトルト殺菌する方法、等が挙げられる。
【0035】
放射線としては、γ線、電子線、X線が挙げられるが、殺菌効果、パウチの劣化度合、
さらには、使用方法等を総合的に勘案するとγ線が好ましい。
以下、γ線を用いて殺菌する方法に付いて述べる。
γ線の照射は、ジッパー付きレトルトパウチの少なくとも副室Bの部分を正確に重ねて
その上から照射すれば良い。γ線の透過量は極めて大きいので、一度に多くのレトルトパ
ウチの殺菌処理を行うことができる。
γ線の照射量は、殺菌が充分に行われるだけの線量が必要なのは言うまでもないが、大
量に放射すると、ジッパー付きレトルトパウチを構成するプラスチックの素材が劣化する
という問題があり、パウチの素材との関連において、殺菌が充分に行われ、且つ、パウチ
を劣化させない量を採択しなければならない。
【0036】
本発明者らは、ジッパー付きレトルトパウチの素材として最適なポリプロピレンを用い
た場合について、γ線の照射条件をさまざまに変えて、γ線の照射量とフィルムの劣化の
関係ならびに各菌種のD値に対する照射量の影響を調べた。
【0037】
(1)シール強度
シール強度は、a)γ線照射サンプルのサイドシール部レトルト前、b)γ線照射サン
プルのサイドシール部レトルト後、c)未シール部をシールしてレトルト前、にそれぞれ
測定した。γ線は、5,10,15,20,25kGyの5水準で照射した。
結果を表1に示す。
【表1】

【0038】
(2)弱化部破断強度
シール強度の測定に用いたものと同じ試料を用いて、ジッパー付きレトルトパウチの弱
化部の破断強度を調べた。
結果を表2に示す。










【表2】

【0039】
(3)各菌種のD値に対する照射量の影響
放射線耐性が高い菌種であるB.pumilus ATCC2714とB.subti
lis ATCC6051に付いて放射線量と殺菌価の関係を調べた。なお、3D値およ
び6D値は、照射前細菌数をそれぞれ103 の1、106 の1にする放射線量をいう。
結果を表3に示す。
【表3】

【0040】
以上の評価結果から、下記の結論を得た。
表1の結果から分かるように、各条件ともに照射量を上げて行くとシール強度が若干低
下するが、25kGyでもシール強度に付いては問題がなかった。
しかし、表2の結果からは、レトルト後では15kGyを超えると、弱化部の破断強度
が低下することが分かる。
また、表3の結果から、より放射線耐性が高い菌種であるB.pumilus ATC
C2714に対しては、完全殺菌の目安となる6Dをγ線殺菌で達成するためには、11
.28kGy以上の照射量が必要であることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0041】
以上詳述したように、本発明は、ジッパー部を含む副室と内容物を収容する主室が液密
に遮断されているジッパー付きレトルトパウチにおいて、レトルト殺菌だけでは完全な殺
菌を行えない可能性のある、水分が全く存在しない副室までも充分な殺菌状態としたもの
であり、消費者に衛生面での安心感と品質の安定性をアピールすることができる点で有用
なものである。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の請求項1に規定したレトルトパウチの正面図である。
【図2】本発明の殺菌方法が適用されるジッパー付きレトルトパウチの好ましい一例を示す正面図である。
【図3】本発明の殺菌方法が適用されるジッパー付きレトルトパウチの好ましいジッパーの構造を示す拡大断面図である。
【図4】図3のジッパーを開いた状態の平面図である。
【図5】特許文献1に示された従来の流動食用パウチの斜視図である。
【符号の説明】
【0043】
1 注出口付きパウチ
10 注出口
11 内容物注出具
13 パウチ周縁部(シール部)
14 吊下げ手段
15 開封予定部
2 ジッパー
21 ジッパーの係合部
21a ジッパーの凹部
21b ジッパーの凸部
22 ジッパーのフィルム状基材
23 弱化部
A 内容物が充填されるパウチ内部空間(主室)
B 副室
B1 主室と副室の遮断部
a 閉鎖手段(ジッパー)
b 隔壁(弱シール部)
c 液体出口
d 液体収容室
e ジッパー部空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックフィルムからなる胴材の周縁部をシールして形成した水分を含む内容物を
収容する主室と、該主室と液密に遮断された副室を備えた二室式レトルトパウチであって
、該主室がレトルト殺菌され、該副室が主室とは別個に無菌化されてなることを特徴とす
るレトルトパウチ。
【請求項2】
プラスチックフィルムからなる胴材の周縁部をシールして成り、水分を含む内容物を収
納するための主室と、開封予定部を有する副室とをプラスチック製のジッパーを設けるこ
とにより液密に遮断して形成したレトルトパウチにおいて、少なくとも該副室を放射線照
射により殺菌することを含むジッパー付きレトルトパウチの殺菌方法。
【請求項3】
前記放射線照射が、主室への内容物充填前に行われる請求項2記載のジッパー付きレト
ルトパウチの殺菌方法。
【請求項4】
プラスチックフィルムからなる胴材の周縁部をシールして成り、水分を含む内容物を収
納するための主室と、開封予定部を有する副室とをプラスチック製のジッパーを設けるこ
とにより形成したレトルトパウチにおいて、少なくとも該副室を構成するフィルム基材を
紫外線、放射線または薬剤による殺菌処理に付した後に製袋し、主室に内容物を充填する
ことを含むジッパー付きレトルトパウチの殺菌方法。
【請求項5】
前記製袋が無菌環境下で行われる請求項4記載のジッパー付きレトルトパウチの殺菌方
法。
【請求項6】
前記製袋後に、さらに少なくとも副室を放射線により殺菌する請求項4または5記載の
ジッパー付きレトルトパウチの殺菌方法。
【請求項7】
前記放射線がγ線である請求項2ないし6のいずれか1項記載のジッパー付きレトルト
パウチの殺菌方法。
【請求項8】
前記副室を構成するフィルム基材がポリプロピレンであって、γ線の照射量が1ないし
15kGyである請求項7記載のジッパー付きレトルトパウチの殺菌方法。
【請求項9】
前記プラスチック製のジッパーが、フィルム状基材の一方の面に直線状の凸部が形成さ
れ、それと対向する面に上記凸部と係合する凹部が形成され、外面からの押圧により係合
自在とされている請求項2ないし8のいずれか1項記載のジッパー付きレトルトパウチの
殺菌方法。
【請求項10】
前記主室と副室の遮断状態が、プラスチック製ジッパーの係合解除後に破断可能にされ
ている請求項2ないし9のいずれか1項記載のジッパー付きレトルトパウチの殺菌方法。
【請求項11】
前記破断が、ジッパーの凹凸両面から延出されたフィルム状基材の弱化部の破断によっ
て行われる請求項10記載のジッパー付きレトルトパウチの殺菌方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−182408(P2006−182408A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−378587(P2004−378587)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】