説明

無菌無酸素コアの採取加工方法及びそのシステム

【課題】従来技術では、塩素処理による殺菌により無菌とした無菌水を掘削水に使用するものが有ったが、必然的に掘削水に塩素を含むこととなり、採取されたコアサンプルが塩素により影響を受けるという問題があった。
【解決手段】本発明のコア採取加工システムは、原水を処理して無菌水を生成する無菌水生成部700と、無菌水生成部700で生成した無菌水から水中酸素濃度が無酸素状態の懸濁気泡水を生成する懸濁気泡水生成部100と、懸濁気泡水生成部100で生成した懸濁気泡水を用いてコアを掘削して採取するコア採取装置800と、コア採取装置で採取されたコアを加工するコア加工部900とを備える。さらに、無菌水生成部700は、原水をろ過して第2原水を生成する第1フィルタ701と、第1フィルタ701により生成された第2原水をろ過して無菌水を生成する、逆浸透膜製の第2フィルタ703と、第2フィルタ703を無菌水により洗浄する洗浄ライン710とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地質調査又は水分地質調査用の清水掘によるコアの採取や調査ボーリング掘削に用いるコア採取ボーリングシステム及びコア採取ボーリング方法に関するものである。特に、採取されるコア、調査対象地層、ボーリング孔が、掘削水中の溶存酸素や細菌ビールスにより汚染されることを防止することにより、無菌・無酸素環境中でのコア採取と取扱・加工・貯蔵・輸送・試験を可能にするとともに、掘削水中の溶存酸素や細菌により汚染されたことのない孔壁・間隙水を保持した良質ボーリング孔形成を可能とするものである。
【背景技術】
【0002】
原子力施設の立地・設計における環境安全事前評価用のコア及び地下水としては、酸素汚染のない試料を採取する必要がある。
また、一般環境調査や土木調査においても、地下水汚染の原因とされるクローム、砒素、マンガン等は、酸化によって化合物(イオン)の形が異なってしまうため、酸素存在下において採取されたコアサンプルでは、高精度な環境調査を行うことができない。
さらに、地下微生物学的調査のための試料採取においても、嫌気性菌や好気性菌に対して、空気中の酸素が飽和し、しかも雑菌が除去されていない表層水を掘削水として使用する場合には、水中溶存酸素は生存環境中の存在比・栄養物質の酸化影響をもたらし、酸素存在下において採取されたコアサンプルでは、高精度な環境調査あるいは微生物調査を行うことができない。
【0003】
ましてや現在まで世界的に行われてきたように、採取したコアサンプルを大気中で取扱い、その結果薬品等の添加や真空脱気により酸化的影響を除去・回復しようとする試みは、一旦コアサンプルに加えられた酸化的条件・経歴を無にできるものではなく、化学的汚染物質添加に相当し、生物学的には毒物を添加することに他ならない。
【0004】
従来、地下深部の地質試料を効率よく採取するための第1の技術として、ワイヤライン工法がある。この工法では、表層水または水道水を掘削水に使用しボーリング用アウターチューブ先端の錘冠を冷却するとともに掘削水の流速を利用して掘削岩屑(以下スライム)を地上まで吹上げるとともに、アウターチューブ内に設けられ、アウターチューブとは独立に地上に吊り上げ回収する機構を有するインナーチューブに、得られたコア試料を収納するとともに効率よく地上に回収する機構を活用している。このワイヤライン工法には、ボーリング中に、インナーチューブ頂部に地上と電気的に連結するロッドとこれにより周期的に変動させるスクレーパとを付属せしめることにより、アウターチューブ先端の錘冠の掘進方向を変化させ掘進方向に変化を与えることが可能なコントロールボーリング工法があり、その発展的な技術として、方位計、深度計を内装するものもある。
【0005】
第1の従来技術のワイヤライン工法では、掘削水として清水を使用すると、掘削に伴い発生するスライムを孔底から地表まで吹上げることにより除去する必要があるが、掘削水の送水圧と流量を大きくする必要があり、そのため孔壁損傷、孔底ボイリング、採取コア損傷を起しがちで高品質のコア採取やボーリング孔形成は困難であった。新第三系泥岩や破砕岩片を含む固結度の低い岩相では、ジャミングにより掘進が困難となる等の事故を起し、これらの事故を避けるために、泥水を使用せざるを得なかった。なお、ロータリーパーカッション工法や二重管工法でも、砂礫・破砕岩片・粘土を含む泥岩層等で清水掘りを試みることにより、ジャミング事故例が多数発生していた。
【0006】
さらに清水掘では、掘進操作中コアの振動によるコア品質劣化を防止するための内蔵ビニルスリーブは、掘進に伴うスライムの排除が不充分であったために、使用不可能であった。一般にこのワイヤライン工法では、掘削水が空気中酸素で飽和されていることと、無菌化処理されていないことから(無菌的な飲料水を得るための水道法では、塩素等の薬材処理により、1ml中大腸菌にあっては検出されず、その他の一般最近にあっては7株以下であることが要求され、無菌的であるが、無菌化されていない)、掘進中に掘削水によって地下環境が汚染され、また得られるコアについても雑菌を含み添加塩素や溶存酸素を含む等から、極限環境中の微生物試験・地球化学試験・研究に耐えるものではなかった。また、前記のようなコントロールボーリングのインナーチューブの頂部に装着した導電性のロッドまたはケーブルの装着は、地上から100mを超える深度では、孔底に対するインナーチューブ挿入の機動性を欠くとともに(実用上非常に高価であり、しかも泥水使用が必須)、ワイヤライン工法の欠点とされていた。
【0007】
コアサンプルを低酸素環境下においてボーリング工法により採取するために、第2の従来技術として昇温脱酸素システムが考えられてきた。このシステムは、水を加熱して密封チャンバ内に供給し、密封チャンバの上部に位置する気層から気体を強制脱気することにより、一定の温度で一定量の液体に溶解する気体の量はその気体の圧力(分圧)に比例するというヘンリーの原則を利用して、水に懸濁または溶存する酸素を気相に追い出して低酸素水を作成し、この低酸素水をビット付きのロッド内へ圧送してコアサンプル周辺を低酸素環境にするというものである。
【0008】
また、昇温脱気に伴い、瞬間減菌するという考え方も容易に考え付くことができた。第2の従来技術の昇温脱気による脱酸素システムでは、水温をある程度高めに上昇させないと、水中に溶存している酸素を十分に取り除くことができない。しかしこれを実現するためには、大量の水を、高めの水温になるように加熱するのに大量のエネルギーを必要とするため、コスト高になってしまう。また、昇温脱気に伴う瞬間減菌は、高温に保持する温度と時間が重要であるが、ボーリングのような連続的に大量の掘削水を必要とし、深度と岩相に応じて流量を変化・管理する工程では、掘削水の品質・工程管理は事実上(工学的・微生物学的に)現実的ではない。
【0009】
さらに、密封チャンバ内から温水を下流側に送水ポンプで送る際に、送水ポンプの上流側で気泡を生じがちであるため、キャビテーションの問題が生じる。従って、これを防止するために送水ポンプを密封チャンバに対して相対的に低い位置に設置しなければならず、そのための設備設置にも追加の費用と時間が掛かるという問題がある。
【0010】
また、第3の従来技術として、気液混合筒とサイクロン型気液分離器に清水と不活性ガスを潜らせた後、差圧弁によりガス放出する「気液混合筒・サイクロン気液分離器直結型」の無酸素水生成システム(以下サイクロン型無酸素水生成装置という)が提案されている。第3の従来技術のサイクロン型無酸素水生成工法では、掘削用水中酸素濃度の管理が優先するために、酸素除去用不活性ガス混合量が支配的要因となり、円滑な掘削に必要な懸濁気泡水中ガス量の調整が事実上困難である(二律背反)。
【0011】
例えば、地質条件の変化や超深部掘進コア採取あるいは大口径コア採取のような幅広い掘削条件では掘削水調製条件を同時に管理することが困難であった。また、単一のサイクロン型装置で、懸濁気泡水中の不活性ガス混合比を任意に切替えて、掘削を実施することは到底できなかったので、本願出願人により特許文献1(特開2004−332206号公報)として、上記サイクロン型装置を2組備えそれぞれのサイクロン型装置に不活性ガスを吹込み、第1の装置から第2の装置へ両者間の圧力差で懸濁気泡水を送水し、2段または、それ以上の装置を組合せることにより、水中酸素濃度を低下させた懸濁気泡水をボーリングマシンに送り、無酸素コア採取行うという方法が提案されている。
【0012】
しかし、この方法では、任意の不活性ガス混合比が得にくいばかりか、装置が複雑になるため、プロセス制御が困難である。現実的には、深地下コア採取や大口径コア採取には、両者間の送水量と不活性ガス混合比を常時最適化することが困難であり、掘進条件変化に即座に対応しがたいという問題点がある。
【0013】
微生物学的には、サイクロン型無酸素水生成工法は、酸素除去に有用であったとしても無菌水の連続生成には無力である。
第4の従来技術として、本出願人により出願された特許文献2(特開2002−295169号公報)には、脱気清水と窒素とを界面活性剤とともに混合して掘削を行うことにより、無酸素でコアを採取するものである。第4の従来技術では、界面活性剤の使用を前提としているため、コアが界面活性剤で汚染されて高精度な環境調査を行うことができない上に、任意の不活性ガス混合比を得ることもできなかった。微生物学的には、本工法では、仮に酸素除去に有用であったとしても無菌水の連続生成には無力である。
【0014】
第5の従来技術として、本出願人により出願された特許文献3(特開2006−70619号公報)には、不活性ガスを混入し瞬間混合を行うことにより連続的に無酸素懸濁気泡水を生成させ、引続き気液分離・脱気して無酸素清水を生成させ、再び掘削条件に適したガス/水比であってしかも無酸素の懸濁気泡水を生成させ、二重管型ボーリングマシンにより掘進を行い、無酸素雰囲気中で高品質コアを採取し、取扱・加工するものがある。第5の従来技術では、高品質の無酸素コアの収得とその無酸素雰囲気中における取扱と加工という点で優れてはいるが、ワイヤライン工法に比較して掘進速度が非常に小さく経費がかかり、地下150m以深のオールコア採取に対して、現実的ではなかった。しかも掘削水について、細菌の除去等は一切考慮されていなかった。
【0015】
第6の従来技術として、容器(バッチ式)に貯めた清水にアルゴン等の不活性ガスを吹込み、嫌気的清水として掘削用水として使用するものがある。第6の従来技術では、容器に貯めた清水に、不活性ガス気泡吹込みにより(空気中酸素の溶解に逆らって)溶存酸素を低減しようとする試みでしかなく、嫌気的清水(水中溶存酸素は最低でも1mg/l、即ち1ppm程度)という表現に留まっていて、無酸素水使用コア採取に適するような無酸素水(水中溶存酸素は0.1mg/l未満、即ち0.1〜0.005ppm)を連続的に使用した掘進は出来なかった。しかも、従来工法では、採取コアについては、空気中において空気と共に、速やかにプラスチック容器に収納し排気ポンプで酸素を除くに留まり、無菌無酸素水中でのコア取扱い・加工はされたことがなかった。
【0016】
第7の従来技術として、防災用飲料水生成装置(通常塩素ガス吹込みを前提としていた)を使用して無菌的な清水としてボーリング用原水として利用し、これに、前記第3の従来技術の容器中貯留清水にアルゴン等の不活性ガスを吹込み、無菌的・嫌気的清水として掘削用水として使用する方法が報告されている。第7の従来技術では、飲料用水の基準から、大腸菌の検出は0としつつも、一般細菌については、培養後、1ml中、7株以下としていて、無菌的ではあるが、厳格な意味では無菌・無ビールスとはいえず、塩素の吹込みの有無によらず極限状態の微生物学的研究や地化学的研究試験に適した無菌無酸素コア採取や地下水採取、ボーリング孔調製には適切な工法とはいえない。例えば、原子力分野の核種拡散試験におけるような、常温における短期的あるいは長期的な試験では、(掘削水中に混在する可能性がある腐敗菌等の増殖を考慮すると)適切な試料とはいい難かった。また、このような無菌的・嫌気的な掘削水を掘削水として使用したボーリングコアを酸素との接触に留意する事無く地上に持上げ、切断・粉砕等の作業の下に、薬剤処理した後に得られる試験研究データは、もはや空気に接触させなかった無菌無酸素試料を使用した試験結果と比較することが出来なかった。
【0017】
第8の従来技術として、本願発明者の開発した技術に、医療用無菌水生成装置がある。この装置は活性炭と約5μmの多孔フィルムを前置フィルタとして使用し第1原水中の汚濁をろ過するとともに塩素ガス吹込み第2原水を生成せしめ(通常の飲用水と同等の無菌的な清水となる)、さらにこの第2原水を順次複数の約0.01μmの多孔フィルム筒と接触・ろ過せしめることにより、細菌・ビールス・コロイドをろ過することにより、無菌水を連続的に生成する装置がある。第8の従来技術では、活性炭の使用による第1原水中の無機イオン除去が行われ、地化学的特性が変化するとともに、塩素吹込みにより殺菌能力のある清水が第2原水として供給されるという問題点があった。さらにこの装置では、第2原水側にろ過残の細菌・ビィールスの滞留が時間とともに増加、(多孔フィルム筒の)目詰まりによる短寿命化を避けるために、各多孔フィルム筒では接触水の一部を順次ろ過するに留め、ろ過残の清水は防災用飲料水として利用されるものであった。その結果、約2割強(約22%)が無菌水として利用されるに留まるので、山岳・丘陵地のような第1原水が得がたいような地域や対応地層地下水利用のための新規井戸利用条件では、このような従来装置を使用し、無菌無酸素水による掘進と試料採取することは実質上不適切であった。
【0018】
第9の従来技術として、固結度の低い砂質泥岩や風化粘土を含有する岩帯から得られる供試体では、円筒状〜円盤状供試体の体積を拘束し含水率を一定に保つためには、含有粘土鉱物に由来する膨潤圧を制圧する必要があり、世界的に供試体をステンレスブロック中にボルトナットで閉込めた状態で、開口率の小さいスリットを経由して拡散・透過・収着試験を実施するという精度の悪い試験が実施されていた。
【0019】
第10の従来技術として、本願発明者らの発明に係る密閉型地下水採取装置(特願2005−000749号)として、遠隔操作により容器のバルブを開閉し、孔内原位置(深度)において、水頭圧で被圧溶存ガスとともに地下水を密閉採取するという技術があるが、供試体に対し原位置で採取した地下水のセル内への注入に当たっては、これまでは常圧で操作を実施せざるを得ず、このため溶存ガス含有する原位置採取地下水と組成が異なる試験水を使用した拡散・透過・収着試験を実施していた。
【特許文献1】特開2004−332206号公報
【特許文献2】特開2002−295169号公報
【特許文献3】特開2006−070619号公報
【特許文献4】特願2005−000749号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
従来技術では、塩素処理による殺菌により無菌的とした無菌的清水を掘削水に使用するものが有ったが、必然的に掘削水に塩素を含むこととなり、採取されたコアサンプルが塩素により影響を受けるという問題があった。また、従来技術では、防災時の飲料水として5μm程度の多孔質膜又は管を使用した無菌的な清水を生成するシステムがあったが、それすらも無菌的にするためには塩素の吹込を必須としていた。
【0021】
従って、本発明は、掘削水を化学的に殺菌することなく、無菌水を生成してこれを掘削水として用いることができるコア採取加工・試験方法及びそのシステムの提供を目的とする。
【0022】
また、本発明は、無菌無酸素の懸濁気泡水を掘削水として用いて、ワイヤライン工法により、高品質コアの採取を可能とすることも目的とする。さらに、本発明は、このような掘削水を用いつつ、ワイヤライン工法において、ビニルスリーブを装着内蔵するコア採取加工方法又はそのシステムにおいて、固結度の低い泥岩・破砕帯でジャミングを避けつつ、しかも高品質コアの採取・無酸素環境中取扱・加工・試験を可能とすることも目的とする。
【0023】
一方、従来技術では、コントロールボーリング工法の発展的な技術において、磁石等の方位計等を備えて、コアサンプルの採取位置における方位等を測定するものが有ったが、鉄分を含む地層中では正確な方位を測定できず、また、採取したコアサンプルを孔底から地上に引き上げる際に、コアサンプルを収容するインナーチューブが回転するため、孔底で採取された状態におけるコアサンプルの方位情報を正確に得ることはできなかった。
【0024】
そこで、本発明は、孔底で採取された状態で、コアサンプルの情報状態を記録することができ、さらに、採取されたコアサンプルの方位情報を得ることができるコア採取加工方法及びそのシステムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明のコアの採取加工方法及びそのシステムは上記課題を解決するものであって、請求項1に係る発明は、原水を処理して無菌水を生成する無菌水生成工程と、前記無菌水生成工程で生成した前記無菌水から水中酸素濃度が無酸素状態の懸濁気泡水を生成する懸濁気泡水生成工程と、前記懸濁気泡水生成工程で生成した前記懸濁気泡水を用いてコアを掘削して採取するコア採取工程と、前記コア採取工程で採取された前記コアを加工するコア加工工程とを備えるコア採取加工方法において、前記無菌水生成工程は、第1フィルタにより原水をろ過して第2原水を生成する第2原水生成工程と、前記第2原水生成工程で生成された前記第2原水を、逆浸透膜製の第2フィルタによりろ過して前記無菌水を生成する無菌水生成工程と、前記無菌水生成工程で生成した前記無菌水により、前記第2フィルタを洗浄する洗浄工程とを備えることを特徴とするコア採取加工方法である。
【0026】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のコア採取加工方法において、前記洗浄工程は、所定タイミングで前記第2フィルタを前記無菌水により洗浄することを特徴とするコア採取加工方法である。
【0027】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載のコア採取加工方法において、前記洗浄工程は、前記第2フィルタの上流側を前記無菌水により洗浄することを特徴とするコア採取加工方法である。
【0028】
請求項4に係る発明は、請求項1乃至3の何れか一項に記載のコア採取加工方法において、前記無菌水生成工程で生成した前記無菌水を、前記懸濁気泡水生成工程を経由することなく、前記コア採取工程又は前記コア加工工程に供給することを特徴とするコア採取加工方法である。
【0029】
請求項5に係る発明は、請求項1乃至3の何れか一項に記載のコア採取加工方法において、前記懸濁気泡水生成工程は、前記無菌水に不活性ガスを混合して懸濁気泡水を生成する第1気液混合工程と、前記第1気液混合工程で生成した前記懸濁気泡水から気体を分離して無酸素水を生成する気液分離工程と、前記気液分離工程に残留する酸素を含むガスを脱気により排除する脱気工程と、前記気液分離工程で生成した前記無酸素水に不活性ガスを混合して懸濁気泡水を生成する第2気液混合工程とを備えることを特徴とするコア採取加工方法である。
【0030】
請求項6に係る発明は、請求項5に記載のコア採取加工方法において、前記無菌水生成工程で生成した前記無菌水を、前記懸濁気泡水生成工程の前記第1気液混合工程を経由することなく、前記懸濁気泡水生成工程の前記第2気液混合工程に供給することを特徴とするコア採取加工方法である。
【0031】
請求項7に係る発明は、請求項1乃至6の何れか一項に記載のコア採取加工方法において、前記コア採取工程は、コア採取地層における採取された前記コアの状態に関する情報を、コア情報測定記憶手段により測定し記憶するコア情報測定記憶工程を備えることを特徴とするコア採取加工方法である。
【0032】
請求項8に係る発明は、請求項7記載のコア採取加工方法において、前記コア情報測定記憶工程は、前記コアの深度、方位、傾斜、pHの何れか一つ又はこれらの組合せを測定し記憶することを特徴とするコア採取加工方法である。
【0033】
請求項9に係る発明は、原水を処理して無菌水を生成する無菌水生成部と、前記無菌水生成部で生成した前記無菌水から水中酸素濃度が無酸素状態の懸濁気泡水を生成する懸濁気泡水生成部と、前記懸濁気泡水生成部で生成した前記懸濁気泡水を用いてコアを掘削して採取するコア採取装置と、前記コア採取装置で採取された前記コアを加工するコア加工部とを備えるコア採取加工システムにおいて、前記無菌水生成部は、原水をろ過して第2原水を生成する第1フィルタと、前記第1フィルタにより生成された前記第2原水をろ過して前記無菌水を生成する、逆浸透膜製の第2フィルタと、前記第2フィルタを前記無菌水により洗浄する洗浄手段とを備えることを特徴とするコア採取加工システムである。
【0034】
請求項10に係る発明は、請求項9に記載のコア採取加工システムにおいて、前記洗浄手段は、所定タイミングで前記第2フィルタを前記無菌水により洗浄することを特徴とするコア採取加工システムである。
【0035】
請求項11に係る発明は、請求項9又は10に記載のコア採取加工システムにおいて、前記洗浄手段は、前記第2フィルタの上流側を前記無菌水により洗浄することを特徴とするコア採取加工システムである。
【0036】
請求項12に係る発明は、請求項9乃至11の何れか一項に記載のコア採取加工システムにおいて、前記無菌水生成部で生成した前記無菌水を、前記懸濁気泡水生成部を経由することなく、前記コア採取装置又は前記コア加工部に供給することを特徴とするコア採取加工システムである。
【0037】
請求項13に係る発明は、請求項9乃至11の何れか一項に記載のコア採取加工システムにおいて、前記懸濁気泡水生成部は、前記無菌水に不活性ガスを混合して懸濁気泡水を生成する第1気液混合槽と、前記第1気液混合槽で生成した前記懸濁気泡水から気体を分離して無酸素水を生成する気液分離槽と、前記気液分離槽に残留する酸素を含むガスを脱気により排除する脱気手段と、前記気液分離槽で生成した前記無酸素水に不活性ガスを混合して懸濁気泡水を生成する第2気液混合槽とを備えることを特徴とするコア採取加工システムである。
【0038】
請求項14に係る発明は、請求項13に記載のコア採取加工システムにおいて、前記無菌水生成部で生成した前記無菌水を、前記懸濁気泡水生成部の前記第1気液混合槽を経由することなく、前記懸濁気泡水生成部の前記第2気液混合槽に供給することを特徴とするコア採取加工システムである。
【0039】
請求項15に係る発明は、請求項9乃至14の何れか一項に記載のコア採取加工システムにおいて、前記コア採取装置は、コア採取地層における採取された前記コアの状態に関する情報を、測定し記憶するコア情報測定記憶手段を備えることを特徴とするコア採取加工システムである。
【0040】
請求項16に係る発明は、請求項15記載のコア採取加工システムにおいて、
前記コア情報測定記憶手段は、前記コアの深度、方位、傾斜、pHの何れか一つ又はこれらの組合せを測定し記憶することを特徴とするコア採取加工システムである。
【0041】
請求項17に係る発明は、請求項1乃至16の何れか一項に記載のコア採取加工システムにおいて、前記無菌無酸素水を掘削水に使用して採取した無菌無酸素コアを無酸素状態を保持しつつ円盤状に加工して供試体を調整し、前記供試体を耐圧型・片手組立方式の体積拘束セル内の空間を二分するように、前記体積拘束セルに組込み、前記体積拘束セル内の一方の空間にはトレーサーを添加した後、バルブ付Y字型の分岐管を経由して、密閉型採水装置で採取され溶存ガスが共存した状態の原位置地下水を、前記体積拘束セル内の二分された前記空間のそれぞれを介して、前記供試体に対して同時に注入して、前記トレーサーの移動を検出することにより、前記供試体に対する前記原位置地下水の拡散・透過・収着試験の実施を可能にすることを特徴とする試験方法である。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、掘削水を化学的に殺菌することなく、無菌水を生成してこれを掘削水として用いることができる。また、このような無菌無酸素の懸濁気泡水を掘削水として用いれば、ワイヤライン工法により、高品質コアの採取が可能となる。さらに、本発明は、このような掘削水を用いつつ、ワイヤライン工法において、ビニルスリーブを装着内蔵するコア採取加工方法又はそのシステムにおいて、固結度の低い泥岩・破砕帯でジャミングを避けつつ、しかも高品質コアの採取と無菌無酸素雰囲気中のコア取扱・加工・試験が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
本発明のコア採取加工方法及びそのシステムに係る実施の形態について、図面を参照して説明する。本発明のコア採取加工方法及びそのシステムは、より詳細には、定方位型無菌・無酸素雰囲気中無菌無酸素コア採取、加工取扱システム(WL−ALCS:Wire Line Airless Core Sampling and Treatment System in Germ free and Oxygen Free Condition)に関するものである。
【0044】
〔全体システム〕
図1に本発明のコア採取加工システムの全体構成を示している。このコア採取加工システムは、(1)無菌無酸素懸濁気泡水生成システム2000と、(2)コア採取システム800と、(3)無菌無酸素コア採取バレル着脱・仮包装部900と、(4)無菌無酸素コア加工・試験システム3000と、(5)被圧溶存ガス含有間隙水の密閉型採水システム1000と、(6)無菌無酸素コアを被圧溶存ガス含有間隙水とともに密閉する体積拘束耐圧型試験セル1100とを含むことができる。
【0045】
〔無菌無酸素懸濁気泡水生成システム〕
図2は本発明に係る無菌無酸素の懸濁気泡水生成システム2000の全体構成を示す概略図である。無菌無酸素懸の濁気泡水生成システム2000は、原水供給部101と、無菌水生成部700と、懸濁気泡水生成部100とから構成されている。
【0046】
原水供給部101は、原水タンク102及び送水ポンプ104を備えている。原水タンク102中には、原水として地下水又は表層水、やむを得ない場合には水道水が貯留されており、原水タンク102は地下水の沈砂池としても使用される。原水タンク102に貯留された第1原水は、送水ポンプ104により給水管を介して、第1原水として無菌水生成部700に供給される。
【0047】
無菌水生成部700には、第1原水中の汚濁や浮遊物を除去するために第1フィルタ701が設けられており、第1フィルタ701は、孔径5μm程度の多孔フィルタを内蔵して第1原水をろ過して、第2原水を生成する。
【0048】
次いで、前記第2原水中に含有されている可能性のある微生物をろ過するために第2フィルタ703が設けられている。第2フィルタ703は、孔径が約0.01μm相当の逆浸透膜を備えており、逆浸透膜の上流側で第2原水を浸透圧以上に加圧することによって、逆浸透膜により第2原水中に含まれるイオンや細菌、ビールス等が取り除かれることにより、逆浸透膜の下流側から無菌水が得られる。このようにして、逆浸透膜によって1ml当たりの検出大腸菌ゼロ及びその他の菌数ゼロであるような無菌水が連続的に生成され、この無菌水が第3原水として、無菌無酸素コア採取用原水に使用される。なお、このような無菌水の生成方法は、無菌化する以外には化学的変質を与えない点で、従来の生成方法とは大きく相違する。
【0049】
次いで、無菌水生成部700は、前記第3原水を一時的に貯留する無菌水バランス槽704と、無菌水バランス槽704中の無菌水を懸濁気泡水生成システム100に圧送する送水ポンプ705とを備える。無菌水バランス槽704には、紫外線照射手段を設けることもできる。これにより、給水管の接続部等から無菌水バランス槽704内に誤混入した細菌の増殖を防止することもできる。
【0050】
さらに、無菌水生成部700は、第1フィルタ701を洗浄する半循環システム(自己洗浄システム)を備えている。半循環システムは、無菌水バランス槽704の無菌水を送水ポンプ705を介して第1フィルタ703の上流側に導く半循環ライン(自己洗浄ライン)710を備えている。半循環ライン710には、電磁弁712と、送水ポンプ705の下流側から第1フィルタ703の上流側に向かう無菌水の流れのみを可能とする逆止弁710が設けられている。なお、無菌液を第1フィルタ701の下流側から上流側に流す逆洗も可能であり、これによって、第1フィルタ701の上流側の膜表面上に形成された堆積物をはがし、膜性能を回復させることもできる。また、半循環システムは、所定時間毎に、例えば1時間毎に動作することができる。さらに、無菌水の供給を中断しても良い場合、例えば、掘削コア採取システム800においてコアを採取したインナーチューブを孔底から地上まで吊り上げる際に、半循環システムを作動させることもできる。
【0051】
次に、本発明の半循環システム付無菌水生成部700の通常モード、半循環モードの動作を順に説明する。通常モードでは、原水タンク102から供給された地下水、又は、表層水やむを得ない場合の水道水は、第1フィルタ701内で、孔径5μ程度の多孔フィルタにより第1原水中の汚濁や浮遊物が除去され、第2フィルタ703内の約0.01μm相当の逆浸透膜によりろ過され、1ml当たりの検出大腸菌ゼロ及びその他の菌数・バクテリア数がゼロであるような無菌水が第3原水(無菌無酸素コア採取用原水)として連続的に生成される。この無菌水は無菌水バランス槽704に貯留されて、適宜、懸濁不活性気泡水発生部100(第1泡分散要素144付の第1気液混合槽108)に送られる。
【0052】
次に、半循環モードでは、無菌水バランス槽704内に貯留された無菌水の一部は、図示しない制御部よって定間隔時間ごとに管理された電磁的な切換信号により、電磁弁106、電磁弁702を閉鎖する一方、電磁弁712、電磁弁714を開放した状態で、送水ポンプ705によって無菌水が送水される。この状態で、無菌水バランス槽704内の無菌水は、送水ポンプ705、逆止弁717を通って半循環ライン710を流れて、第2フィルタ703の上流側に導かれ、第2フィルタ703内の逆浸透膜を洗浄する。逆浸透膜を洗浄した水は、逆止弁713、電磁弁714が設けられた排水管から排水される。このようにして、前記第2フィルタ703に内蔵される逆浸透膜を定期的に第3原水である無菌水により洗浄される。これによって、第2フィルタ703内の逆浸透膜の交換期間の長期化が図れる。
【0053】
半循環モードが完了すると、無菌水生成部700は通常モードに復帰する。通常モードでは、電磁弁712、電磁弁714が閉鎖され、電磁弁106、電磁弁702が開放され、前記送水ポンプ705が、第3原水(無菌水)を貯留した無菌水バランス槽704から懸濁不活性気泡水発生部100に第3原水を圧送する。
【0054】
次に図2を参照して、懸濁気泡水生成部100を具体的に説明する。懸濁気泡水生成部100には、半循環システム付の無菌水生成部700から、電磁弁106を通じて無菌水が第3原水として供給される。懸濁気泡水生成部100内に供給された第3原水は、第1気液混合槽108に導かれる。
【0055】
また、窒素やアルゴン等の不活性ガスが充填された不活性ガスボンベ110が、第1気液混合槽108の外部に配置されており、不活性ガスボンベ110は第1気液混合槽108にガス供給管で接続されている。第1気液混合槽108には、第3原水の供給と同時に不活性ガスボンベ110からガス供給管を介して、不活性ガスが連続的に一定混合比率で供給される。従って、第1気液混合槽108中では、以下に述べるように原水と不活性ガスとが高速混合・分散することにより、不活性ガスで懸濁した気泡水が生成する。
【0056】
第1気液混合槽108の構造は、上下方向に延びる筒体内に泡分散要素144を配置したものであり、泡分散要素としては、ワイヤブラシやたわし等をブラシ状に配置するか、または金属たわしのような細長い金属片、任意の繊維片等を塊状にしたものを用いることができる。そして、第1気液混合槽108の下方から不活性ガスと原水とを混合した状態で供給すると、不活性ガスの大きな泡が泡分散要素144間を通過するときに、小さな泡に分裂する過程で生じる渦流等の撹拌効果により気体と水とが急速に混合して筒体上部から懸濁気泡水が得られる。
【0057】
このような高速混合・分散によって、無菌水である第3原水中の酸素は不活性ガス気泡中に移動し(原理的には洗浄・抽出である)、第1気液混合槽108は無菌無酸素の懸濁気泡水を連続的に生成するとともに、この無菌無酸素懸濁気泡水は気液分離器112に給水管を介して送り込まれる。
【0058】
気液分離器112内には、第1気液混合槽108から給水管を介して供給された懸濁気泡水が衝突して分散するように、その流路に対向するように衝突板114が配置されている。また、衝突板114は気液分離器112内の水面113より高い位置に配置されている。
【0059】
さらに、気液分離器112内または後述のサイクロン式気液分離装置150内に貯留された懸濁気泡水から分離したガスを脱気するために、排気管を介して脱気ポンプ116が接続されている。脱気ポンプ116と気液分離器112との間の排気管には、電磁弁118が配置されており、気液分離器112内の圧力が制御可能である。なお、脱気ポンプ116に接続される排気管の吸気口は、水面より上方に配置されている。さらに、気液分離器112内には、その内部で生成された無酸素水を外部に供給するために、水面より下方に無酸素水供給口120が設けられている。
【0060】
なお、この気液分離器112中の衝突板114に替えて、気液を分離するサイクロン式気液分離装置150を設けても良い。図3に示すように、サイクロン式気液分離装置150)は、第1気液混合槽108から給水管を介して懸濁気泡水が給水される円筒部151と、この円筒部151の下部と滑らかに接続される円錐部152と、円錐部152の下端に接続される管状部153から構成される。なお、サイクロン式気液分離装置150は脱気ポンプ(116)で脱気された気液混合器112中に配置されているため、サイクロン式気液分離装置150内の内部も脱気されている。
【0061】
気泡水が給水管から円筒部151内面に供給されると、円筒部151内は給水管の断面積より十分に大きいため、気泡水は円筒部151内面に沿って一気に薄流層となり、懸濁気泡水中に含まれる気体は円筒部151内に放出され、気体を放出した無酸素水は円筒部151内面及び円錐部152内面をサイクロン状(螺旋状)に流れて管状部152に貯留され、管状部152の下端を介して気液分離器112内に貯留される。
【0062】
従って、第1気液混合槽108から気液分離器112に送り込まれた懸濁気泡水は、気液分離器112内の衝突板114に衝突することにより、密閉空間内で微粒状に飛散し、不純物である酸素を含んだ不活性ガス気泡が懸濁気泡水から瞬時に分離される。又は、第1気液混合槽108内でサイクロン式気液分離装置150に送り込まれた懸濁気泡水は、瞬時に気液が分離される。次いで、分離したガスは脱気ポンプ116により気液分離器112の外に排気され、残った無酸素水が気液分離器112内に貯留される。さらに、この無酸素水は無酸素水供給口120を通じて、連続的に外部に供給される。
【0063】
無酸素水供給口120は給水管を介して送水ポンプ122に接続されており、送水ポンプ122が無酸素水供給口120から無酸素水を吸引することにより、無酸素水が連続的に気液分離器112の外部に供給される。
【0064】
気液分離器112で生成された無酸素水は、送水ポンプ122により給水管を介して、第2気液混合槽126に送り込まれる。なお、第2気液混合槽126の構造は前記第1気液混合槽108と同様のものである。
【0065】
また、不活性ガスボンベ128が第2気液混合槽126の外部に配置されており、不活性ガスボンベ128は第2気液混合槽126にガス供給管で接続されている。第2気液混合槽126には、無酸素水の供給と同時に、不活性ガスボンベ128からガス供給管を介して、不活性ガスが連続的に一定混合比率となるように供給される。従って、第2気液混合槽126中は、無酸素水と不活性ガスとを高速混合・分散することにより、所定濃度の不活性ガスを含む懸濁気泡水を生成する。この懸濁気泡水は給水管を介して接続部Aに送り込まれる。
【0066】
また、第2気液混合槽126と接続部Aとの間を接続する給水管には、無菌無酸素懸濁気泡水の水中酸素濃度(溶存酸素濃度)を測定するために、水中酸素濃度計124が接続されている。また、水中酸素濃度計124には電磁弁が接続されている。水中酸素濃度の測定は、無酸素水の品質管理上必要であり、従って以下の操作・効果を妨げないばかりか工程管理上も望ましい。なお、気液分離器112で生成される無酸素水は、溶存酸素濃度が完全に零である必要はなく、コアへの影響が無視できる程度に溶存酸素濃度が低下していれば良い。
【0067】
なお、ボーリングを行う地層・深度・錐冠口径に応じて、円滑な掘進と高品質コア採取を可能にするために、無酸素水生成条件とは独立して任意の気液混合比率で(ボーリング機長の管理のもとで)、第2気液混合槽126の外部に備えた不活性ガスボンベ128から、不活性ガスを連続的に一定混合比率で送り、第2気液混合槽126中で高速混合・分散し、不活性ガスを懸濁した懸濁気泡水を生成して、接続部Aを介して掘削コア採取システム800、無菌無酸素水中コアバレル密封仮包装部900、無菌無酸素雰囲気中コア取扱装置200に送水することができる。
【0068】
さらに、必要に応じて、気液分離器112で生成した無酸素水を、第2気液混合槽126を経由することなく給水管130を介して接続部Aに導くことにより、掘削コア採取装置300、密封仮包装部600、コア取扱装置200に送水することもできる。この場合には、図2において、送水ポンプ122から第2気液混合槽126に無酸素水を供給する給水管の電磁弁127が閉鎖され、第2気液混合槽126の下流側で給水管に設けられた電磁弁142も閉鎖される。
【0069】
この状態で、給水管130に設けられた電磁弁132が開放され、気液分離器112から接続部Aに送水ポンプ122を介して、直接無酸素水が供給される。この無酸素水は接続部Aを介して掘削コア採取装置300、密封仮包装部600、コア取扱装置200等に給水される。なお、ビニルスリーブ付ワイヤライン工法には懸濁気泡水が必須であるが、本発明の懸濁不活性気泡水発生部100をダブルチューブ工法に用いる場合には、気泡のない無酸素水や無菌水の供給が有効となる。
【0070】
また、必要に応じて、無菌水生成部700で生成した無菌水を、第1気液混合槽108を経由することなく、給水管720、730を介して、第2気液混合槽126に送水することもできる。この場合には、図2において、送水ポンプ705から第1気液混合槽108に無菌水を供給する給水管の電磁弁106を閉鎖し、給水管720に設けられた電磁弁715と、給水管730に設けられた電磁弁151とが開放され、給水管740に設けられた電磁弁152が閉鎖されることにより、第2気液混合槽126に無菌水が供給される。
【0071】
さらに、必要に応じて、無菌水生成部700で生成した無菌水を、無菌水生成部100を経由することなく、接続部Aに導くことにより、掘削コア採取システム800、密封仮包装部900、コア取扱装置200に送水することもできる。この場合には、図2において、送水ポンプ705から第1気液混合槽108に無菌水を供給する給水管の電磁弁106が閉鎖され、給水管720に設けられた電磁弁715が開放され、給水管730に設けられた電磁弁151が閉鎖され、第2気液混合槽126の下流側の電磁弁142も閉鎖され、給水管740に設けられた電磁弁152が開放されて、接続部Aに無菌水が供給される。この無菌水は接続部Aを介して掘削コア採取システム800、密封仮包装部900、コア取扱装置200等に給水される。
【0072】
次に、本発明の懸濁気泡水生成装置100の動作を説明する。原水タンク102から供給された地下水、又は、表層水やむを得ない場合の水道水は、第1気液混合槽108内で、不活性ガスと混合することで、水中に泡として存在または溶存している酸素が押し出される(物理的には酸素が不活性ガスによって抽出される)ことによって、共に泡の状態の懸濁気泡水となる。この懸濁気泡水は衝突板114付きの気液分離器112に送られる。
【0073】
第1気液混合槽108から気液分離器112内に供給された懸濁気泡水は気液分離器112内で衝突板114にあたり微粒として粉砕され、さらに急激に体積が膨張するので、混合水に懸濁または溶存している酸素等の気体が懸濁気泡水から分離され、自然にしかも高速で水中酸素濃度が無酸素状態の無酸素水となる。同時にこの気液分離器112は送・受水量の調節を行う緩衝作用をもたらす密閉空間の機能も有する。
【0074】
その後、分離した気体は脱気ポンプ116によって気液分離器112の外部へ速やかに脱気される。また気体が分離した水は無酸素水となって、送水ポンプ122により第2気液混合槽126に供給され、任意量の不活性ガス気泡を混合することにより不活性ガスを懸濁した懸濁気泡水となって、掘削コア採取装置300等に供給され、脱酸素環境下でコアをサンプリングするためのボーリングが可能となる。
【0075】
上述のように、第1気液混合槽108と気液分離器112と第2気液混合槽126との組合せの下では、気液分離器112により無酸素水中の溶存酸素量を任意の濃度(事実上の無酸素状態)まで高速かつ効率良く低下できるために、掘進条件とは独立して、不活性ガス混合量を選定・管理することができ、さらに、第2気液混合槽126においてこの無酸素水を加工して、任意の不活性ガス混合比を有する清水乃至懸濁気泡水を生成することも可能となる。
【0076】
なお、本発明の半循環式定時洗浄システム付の無菌水生成部700において、第1原水中に溶存する(溶存酸素以外の)化学的成分の変動を避ける必要があれば、前置フィルタサブシステム(第1フィルタ701)の一部である活性炭フィルタの使用を省略し、ビールス除去効率はやや低下するが、第2フィルタ703として、上述の孔径0.01μmの多孔質相当の逆浸透膜を使用する代わりに、孔径0.01μmの多孔質膜または多孔質管を使用することもできる。
【0077】
〔コア採取システム〕
図1に示した掘削コア採取システム800は、図4(a)二重管式コア採取装置300、図4(b)三重管式コア採取装置361、または図5のビニルスリーブ付ワイヤライン式定方位コア採取装置820の何れかを備えている。なお、図1に示した掘削コア採取システム800’は、掘削孔が鉛直方向でなく、傾斜方向に形成された場合を示すものであり、掘削孔が傾斜方向の場合にも本発明は適用可能である。
【0078】
図4(a)に示す二重管式コア採取装置382では、アウターチューブ340と、アウターチューブ340の内側下端に設けられたインナーチューブ(二重管式)386と、インナーチューブ386の内側下端に設けられ、その内側にコアを収納することができる内蔵包装部361とを備えている。二重管式コア採取装置382の場合にはアウターチューブ340が回転部345に接続されており、該回転部345によりアウターチューブ340は回転駆動することができる。なお、内蔵包装部361は、採取されたコアを包装保護することができるものであり、内蔵包装部361としては、例えば、ビニルスリーブやアクリル管などを用いることができる。
【0079】
掘削時には、懸濁気泡水を供給ポンプにより圧力をかけた状態で、掘削水供給ノズル355からロッド388内に供給する。図4(a)中、矢印で示すように、懸濁気泡水はロッド388の上端に接続された掘削水供給ノズル355を内蔵する回転部345からロッド388内に供給され、インナーチューブ386とアウターチューブ340の内壁との間を通った後、錐冠337を介してアウターチューブ340の外側へ回り込み、アウターチューブ340の外面に沿って上昇し、最終的にスライムとともに地上へ排出される。なお、掘削水供給ノズル355の給水管は、図2の接続部Aと接続され、第2気液混合槽126で生成した懸濁気泡水、または、必要に応じ給水管130を介して気液分離器112で生成した無酸素水が供給される。
【0080】
このため懸濁気泡水の自動スライム排除機能により円滑な掘進が可能となるとともに、図6に示すように錐冠337の先端部において適度の気泡が発生して、錐冠337を冷却する。また掘削とともに発生するスライムを気泡に付着させて排出することも可能となる。図6の拡大図に示すように、アウターチューブ340は、その先端部に(ボーリング孔底面に接するように)錐冠337を有しており、図6は懸濁気泡水を供給しているときの様子を示している。コアケースチューブ343内に設けられた内蔵包装部361は、採取されたコアを包装保存することができるものであり、内蔵包装部361としては、例えば、ビニルスリーブを用いることができる。さらに図2に示した第2気液混合槽126により、懸濁気泡水に含まれる不活性ガスの混合比を制御することが可能であるため、掘削深度に応じて適切な混合比で不活性ガスが混合された懸濁気泡水を錐冠先端に供給することが可能となる。不活性ガスの混合比を変更する理由は、掘削深度に応じて図4(a)に示す錐冠337先端部の雰囲気圧が異なるため、錐冠337先端部における適切な懸濁気泡発生条件とするためである。
【0081】
なお、図4(a)に示すように、掘進に伴う表層水の孔内浸入による汚染や、軟岩の孔壁保護のために、必要に応じてケーシング365を地表から挿入する。
一方、図4(b)に示す三重管式を適用した掘削コア採取装置342は、先端に錐冠337を有し回転可能なインナーチューブ(三重管式)339と、該インナーチューブ(三重管式)339の外側に位置し先端にアウターチューブ錐冠338を備えるアウターチューブ341と、インナーチューブ(三重管式)339の内側下端に設けられたコアケースチューブ343と、コアケースチューブ343の内側下端に設けられ、その内側にコアを収納することができる内蔵包装部361(図6参照)とを備えている。
【0082】
さらに図4(b)において、インナーチューブ(三重管式)339及びアウターチューブ341には回転部345が接続されており、該回転部345はインナーチューブ(三重管式)339及びアウターチューブ341を回転駆動する作用とともに、必要に応じて錐冠337、アウターチューブ付錐冠338に振動を付与する作用を併せ持つ。このような構造により錐冠337に振動を加えながらインナーチューブ(三重管式)339及びアウターチューブ341を回転駆動することができる。この場合、錐冠の回転数を変更する工程を備えるようにしてもよい。
【0083】
従来、図4(b)の方法でコアサンプリングしようとすると、振動によりコアの緩みや締固めが生じ、コア鑑定や物性試験のための良好なコアサンプルを入手することが困難であったが、本発明では上述したような懸濁気泡水をインナーチューブ(三重管式)339とアウターチューブ343との間から錐冠337に導入するため、懸濁気泡水の自動スライム排除機能によりコアの緩みや締固めが生じず、その結果、微粒分の流失や地質構造を反映した良好なコアサンプルを採取することが可能となる。
【0084】
さらに図5にワイヤライン型コア採取方式を改良適用するビニルスリーブ付ワイヤライン型定方位コア採取装置820を示す。このコア採取装置820は、回転可能なアウターチューブ802の下方先端に錘冠 (ケーシング掘進方式)812を備え、アウターチューブ802内部下端に挿入設置されるインナーチューブ803を備える。インナーチューブ803は、ワイヤライン801によりインナーチューブ803の頂部に付属するキャップ806を通じて昇降可能であり、当該アウターチューブ802下端に設置される。インナーチューブ803内には、コアケースチューブ804と、深度定時測定記録部807と、方位傾斜定時測定記録部808と、多段に畳み込まれたビニルスリーブを収容するビニルスリーブ収納部809と、コア捻れチェツク用のビニルスリーブケース810と、方位固定型マーキングコアリフタ811とを備えている。なお、深度定時測定記録部807は、圧力検知手段を備えており、コアの掘削部では、掘削水(無菌無酸素懸濁気泡水)により水頭圧がかかっているため、この水頭圧を測定することにより、コアの採取深度が算出される。
【0085】
さらに、前記方位固定型マーキングコアリフター811は、工業用ダイヤモンドマーカーを備えており、このマーカーでコアを引っ掻きつつ、コアを軸線方向に移動させることによりコアの長手方向(縦方向)に平行にマーキングを形成する。方位傾斜定時測定記録部808は、ジャイロコンパスによる定時測定記録機構及び定時撮影記録機構を備えている。方位傾斜定時測定記録部808は、ジャイロコンパスを用いることにより、掘削する地層が鉄を含んでいる場合であっても、地層の状況によらずに、正確な方位及び掘削孔(即ちインナーチューブ)の傾斜を測定することができる。
【0086】
また、図5は無菌無酸素の懸濁気泡水を供給しているときの様子を示している。コアケース804内に設けられた内蔵包装部809は、前記方位固定型マーキングコアリフタ811により、インナーチューブ内の方向を示すマークが付与されたコアを前記コア捻れチェツク用ビニルスリーブ中に包装保存することができるものであり、内蔵包装部809としては、例えば方向指示ラインを付与したビニルスリーブを用いることができる。前記方向指示ラインを付与したビニルスリーブ(内蔵包装部809)に収納されたコアは、掘進終了時に方位傾斜定時測定記録部808に内蔵されたビニルスリーブの捻れを検出するための内蔵のCCDカメラ等による記録撮影による確認が行われる。
【0087】
なお、インナーチューブ803には、水頭圧計(深度計)、水質計、水温計、pHメータからなる計測機器を備える。そして、これらの計測機器の計測データを予めインナーチューブ803投入前に設定された時刻に記録するために、インナーチューブ803にタイマーを内蔵させることもでき、このタイマーの信号に基き、所定時刻において各計測データを記録する電子回路も内蔵することができる。これによって、地上からの電気的指示等の交信不要となり、簡便かつ高能率な定方位ボーリング情報を取得することが可能となる。
【0088】
また、インナーチューブ(ワイヤライン式)803及びアウターチューブ802には回転機構が接続されており、この回転機構はスイベルヘッド側に設けられている。回転機構はアウターチューブ802を回転駆動する作用とともに、必要に応じてアウターチューブ付錐冠812に振動を付与する作用を併せ持つ。このような構造により錐冠812に振動を加えながらアウターチューブ802を回転駆動することができる。この場合、錐冠812の回転数を変更する工程を備えるようにしてもよい。
【0089】
従来、前記従来型三重管方式や従来型ワイヤライン方式の工法でコアサンプリングしようとすると、振動によりコアの緩みや締固めが生じ、コア鑑定や物性試験のための良好なコアサンプルを入手することが困難であり、特に硬岩に挟まれた微粒物質地層や破砕岩片を混在する地層ではその構造・岩相の鑑定が困難であったが、本発明では上述したような懸濁気泡水をインナーチューブ803とアウターチューブ802との間から錐冠812に導入するため、懸濁気泡水の自動スライム排除機能によりコアの緩みや締固めが生じず、その結果、微粒分の流失や地質構造を反映した良好なコアサンプルを採取することが可能となる。
【0090】
図7(a)〜(d)に、本発明のコア採取システム800による定方位コア採取の操作手順を示す。図7(a)に示すように、インナーチューブ803の上端にはキャップが形成されており、キャップには把持部806が形成されている。また、インナーチューブ内部下端には、方位固定型マーキングリフタ811等の計測機器がビニルスリーブケース810とともにインナーチューブ803との相対的な位置を固定した方位で取付けられる。
【0091】
無菌無酸素の懸濁気泡水生成装置100で連続的に生成された無菌無酸素の懸濁気泡水は掘削水(掘削揚水)として接続部Aを通じて、スイベルヘッド側から供給され、アウターチューブ802とインナーチューブ803の間を通り、アウターチューブ下端に接続された錘冠812の冷却を行なった後、発生するスライムを懸濁気泡が吸着する等の作用により浮力と緩やかな上昇流をもたらす等の作用による自動スライム排除機能により、アウターチューブと孔壁間を洗浄しつつケーシング365を通じて、スライムを緩やかに地表に排除する。
【0092】
ワイヤライン工法に対して、初めて懸濁気泡(無菌無酸素)水による自動スライム排除機能を適用した結果、以下の理由により、コア中微粒物質流失防止とビニルスリーブによる振動防御による高品質コアの採取を実現した。
【0093】
即ち、既存のワイヤライン工法による清水掘コア採取法では、スライムの真比重が清水よりも約2倍と大きいために清水によるスライム排除が不十分であり、大送水量・圧を適用せざるを得ず(仮に比重調整のために泥水を使用しても)、インナーチューブ中のコアに送水圧をかけざるを得ず、その結果微粒物質の流失・コア中含水比増加の連鎖をもたらし、高品質のコアを得ることが困難であった。また、コア保護のためのビニルスリーブ使用が不可能とされてきたが、本願発明者等は、種々検討を重ねた結果、懸濁気泡(無菌無酸素)水により、自動スライム排除機能により(インナーチューブ内ビニルスリーブ付近における混濁・滞留スライムの排除・清浄化により)、掘進に伴いインナーチューブ内に取込まれるコア上部が抵抗なくビニルスリーブに取込まれ、アウターチューブの回転とは独立して(インナーチューブの自由回転機能による)円滑化な送出しと捻れを生ずることなく、高品質コアをビニルスリーブ内に円滑に包装することに成功した。
【0094】
一方、従来技術である二重管によるコア採取であっても、採取するコアの掘進中ビニルスリーブ包装に当たっては、アウターチューブに対してスリーブケースがインナーチューブとともにアウターチューブに対して相対的に自由回転するのでは、採取されるコア中に検出されるひび割れ、滑り面、残留地磁気等に関する方位・傾斜・深度(コントロールボーリングでは重要)の絶対的な(原位置地層中)方位傾斜深度の評価に関しては不向きであった。特に、在来型ワイヤライン式コア採取工法(泥水掘、アクリルケース使用)では、掘進中も電気信号送信用ケーブルを接続し続ける等、ワイヤライン工法におけるインナーチューブの高速交換の機能を損なうばかりか、スライムの排除のために泥水を使用せざるを得なかったばかりか、密着性の高いビニルスリーブの使用が不可能であった。なお、アクリルケースを使用する三重管方式では、破砕岩片・礫・微粒成分混在地層から採取されるコアは、コア自体にクリアランスがあるために、コア内の岩相構造が保持・復元不能であった。
【0095】
このため、本発明では、図5に示す深度定時測定記録部807と方位傾斜定時測定記録部808と、捻れチェック用のビニルスリーブケース810と、ビニルスリーブ809、方位固定型マーキングコアリフタ811とを使用し、採取された高品位コアについて信頼性の高い定方位・傾斜・深度の測定を可能にするに至った。
【0096】
図7(a)に示す掘削コア採取システム800に設けられた吊上機構852から延びるワイヤ853の先端に接続されたオーバーショット813で把持部806を把持することで、インナーチューブ803を吊り下げる。このインナーチューブ803は、方位傾斜深度を記録するための深度提示測定記録部807と、方位傾斜定時測定記録部808と、包装部とを内蔵している。
【0097】
吊り下げられたインナーチューブ803は、図7(b)に示すようにアウターチューブ802内の孔底まで移動して、インナーチューブ803を孔底に設置することができる。図7(b)内のアウターチューブ802内の孔底に設置されたインナーチューブ803の頂部にある把持部806からオーバーショット813の接続を切離して、ワイヤ853を吊上機構852により巻き上げて地表に一時的に回収する。
【0098】
図7(c)に示すようにアウターチューブ802による所定長掘進が終了した時点で、コアの入った包装部を備えたインナーチューブ803に対し、吊上機構852により、ワイヤ853(ワイヤライン801)の下端に取り付けられたオーバーショット813を吊り下げる。吊り下げられたオーバーショット813は、インナーチューブ803の頂部にある把持部806に衝突して、把持部806と接続される。そして、吊上機構852によりワイヤ853を巻き上げると、オーバーショット813は、インナーチューブ803内で包装収納されたコアとともに図7(c)に示すように回収することができる。
【0099】
方位・傾斜・深度を記録する第一の方法としては、図7(b)に示すようにインナーチューブ803がアウターチューブ802内の孔底に設置された時点で、掘進に先立ち深度定時測定記録部807と方位傾斜定時測定記録部808とにより、インナーチューブ803の深度・方位傾斜を記録することが可能である。図7(d)に示すようにインナーチューブ803を回収した時点で、深度定時測定記録部807と方位傾斜定時測定記録部808とから記録を読取り別途記録する。この時、深度定時測定記録部807又は方位傾斜定時測定記録部808の中に設けられたCCD等の撮影機により撮影された包装部809内部で観察されるスリーブ上部の方位確認情報を回収する。この操作は、インナーチューブ803の走向傾斜記録データとコアのインナーチューブとの相対位置に関する情報(実際にビニルスリーブに収納されるコアの方位固定型マーキングリフタ811)に関する確認を行い、その信頼性向上を図るものである。
【0100】
方位・傾斜・深度を記録する第二の方法としては、図7(c)に示すように掘進終了時、スイッチ付オーバーヘッド813’をインナーチューブ803の頂部で把持部806に接続した時点で、オーバーヘッド813’からインナーチューブ803に加えられる衝撃を検知し内蔵スイッチを作動させる。この内蔵スイッチの作動により、深度定時測定記録部807と方位傾斜定時測定記録部808が作動して、インナーチューブ803の深度・方位傾斜を記録することも可能である。
【0101】
この場合には、図7(d)に示すようにインナーチューブ803を回収した時点で、深度定時測定記録部807と方位傾斜定時測定記録部808とから記録を読取り別途記録するとともに、深度定時測定記録部807と方位傾斜定時測定記録部808との中に設けられた撮影機により撮影された包装部809内部で観察されるスリーブ上部の方位確認情報を回収する。この操作は、インナーチューブ803の走向傾斜記録データとコアのインナーチューブとの相対位置に関する情報の確認を行い、その信頼性向上を図るものである。
【0102】
なお、第一の方位・傾斜・深度を記録する方法と、第二の方位・傾斜・深度を記録する方法とを組合わせることは、なんら差支えないばかりか、採取コアの掘進開始時と終了時のコア自体の走向傾斜深度の両者を記録するものとして、ボーリング孔の穴曲がり解析・地層構造解析にも役立つ情報を与える。
【0103】
また、図4(a)に示す二重管式を適用してコアサンプルを採取することもできる。まず従来の方法によりアウターチューブ340を回転させることにより錘冠337の掘削作用により所定深さの孔を掘削する。サンプリングする深さまで掘削したら、包装部361と、図4(a)には図示していないが、方位固定型マーキングコアリフタ811と、各種計測器等(深度定時測定記録部807、方位傾斜定時測定記録部808、捻れチェック用スリーブケース810)を備えたインナーチューブ386をアウターチューブ340内に入れ込み、ロッドを継ぎ足して、その上端に回転部345を接続する。
【0104】
この状態でインナーチューブ386を再び回転駆動させて更に深く掘削する。このとき懸濁気泡水に圧力を掛けた状態で泡水供給ノズル355からロッド340内に供給する。図4(a)中、矢印で示すように、懸濁気泡水はロッド340の上端に接続された泡水供給ノズル355からロッド340内に供給され、インナーチューブ386とロッド340の内壁との間を通った後、ビット337を介してロッド340の外側へ回り込み、ロッド340の外面に沿って上昇し、最終的に地上へ排出される。
【0105】
このため懸濁気泡水の潤滑性により円滑な掘進が可能となるとともに、図6に示すようにビット先端部において適度の気泡を発生して、ビットを冷却する。また掘削とともに発生するスライムを気泡に付着させて排出することも可能となる。なお、以上の掘削時には、作業性を向上させるためビット337に振動を付与するようにしてもよい。
【0106】
この掘削中に、インナーチューブ343内に備えられた包装部361内にはコアが入り込む。コアは、包装部361内に大気から隔離された状態で包装されて採取されるため、酸素に触れることはない。また懸濁気泡水は、コアに対して窒素等の不活性ガスにより泡が形成されているので、懸濁気泡水の存在によりコアが酸素汚染されることもない。
【0107】
次に図7(c)に示すように、インナーチューブ803(図4(a)のインナーチューブ386に対応)の把持部806をワイヤ853の先端に設けられたオーバーショットのラッチで把持し、インナーチューブ803を吊り上げて包装部361内に採取されたコアを回収する。
【0108】
以上は二重管式に適用した場合の説明であるが、三重管式に適用した場合には、図4(b)に示すように、懸濁気泡水はインナーロッド339の上端に接続された泡水供給ノズル355からインナーロッド339内へ圧入され、インナーチューブ343とインナーロッド339の内壁との間を通った後、錐冠337を介してインナーロッド339の外面とケーシング341の外面との間を通って上昇し、最終的に地上へ排出される。
【0109】
また、方位・傾斜・深度を記録する第一の方法は、図4(a)に示すビニルスリーブ付の二重管コア採取工法のみならず、通常はアクリルケースのみを使用していた三重管式のコア採取工法のインナーチューブにも組込み、懸濁気泡(無菌無酸素)水と併用することにより適用可能である。
【0110】
また、本願発明に係る定方位無菌無酸素水コア採取システム及びその方法は、図1に示すように、懸濁気泡水を掘削水とするビニルスリーブ付ワイヤライン型高品質無菌無酸素コア採取工法・ダブルコアチューブ型高品質無菌無酸素コア採取工法・ビニルスリーブ付ワイヤライン型無酸素コア採取工法、懸濁気泡水を掘削水とするビニルスリーブ付ワイヤライン型高品質コア採取工法のいずれにおいても鉛直掘進のみならず、傾斜掘進(コントロールボーリングにおいてすら)、水平掘進等の如何なる方向についても、本願発明に係るインナーチューブの取替えにより実施可能である。
【0111】
〔インナーチューブ取扱システム〕
図8に示すインナーチューブ取扱システム900は、無菌無酸素水中でインナーチューブ(コアバレル)を仮密封してその後の取り扱いを可能とするものである。
【0112】
インナーチューブ取扱システム900は、図1に示した掘削コア採取システム800の一部であり、図7(d)に示したコア採取工法の最終段階の地表付近で行われる操作である。
【0113】
インナーチューブ取扱システム900は、インナーチューブ803を地表のデッキ909上に吊り上げ、接続部Aから供給される無菌無酸素水中でビニルスリーブ912により仮密封するものである。その後、仮密封されたインナーチューブ803は、図1の無菌無酸素コア仮密封搬送工程920により搬送され、図1の無酸素コア加工・試験システム200あるいは耐圧型体積拘束試験セル1100における試験に供される。
【0114】
インナーチューブ取扱システム900は、ワイヤライン工法に特有なシステムあって、アウターチューブ802上部にインナーチューブ取扱装置910を接合する。インナーチューブ取扱装置910に、接続部Aから供給された無菌無酸素水を満たす。無菌無酸素水が満たされたインナーチューブ取扱装置910内で、一旦インナーチューブ803の上端に設けられたインナーチューブ支持棒911によりインナーチューブ803を無菌無酸素水面下に保持する。その後、無菌無酸素水の水面下で、インナーチューブ803の仮包装作業を進める。
【0115】
次に、採取されたコアを含むインナーチューブ803を孔底から吊り上げて、このインナーチューブ103を仮包装するまでを説明する。掘進操作終了時に、孔底側で、図8(a)に示すアウターチューブ802の上部に無菌無酸素水中インナーチューブ取扱装置910を装着する。
【0116】
地上側では、無菌無酸素水中でインナーチューブ取扱装置910内を潜らせる形で、図7で説明したように、オーバーショット813を地上側から孔底側に向かって降下させる。降下したオーバーショット813が、孔底側でインナーチューブ803の把持部814に接続すると、その衝撃が(2度目の)測定信号として働き、相対方位固定型の深度定時測定記録部807と相対方位固定型の方位傾斜測定記録部808とによる深度方位傾斜の測定が実施される。
【0117】
その後、図7で説明したように、インナーチューブ803は、把持部814とオーバーショット813を介して、ワイヤ853により孔底から引き上げられて、図8(a)のインナーチューブ取扱装置910の無菌無酸素水面下に移動して停止する。そして、無菌無酸素水面下で、把持部814にインナーチューブ支持棒911を貫通させることにより、インナーチューブ803をインナーチューブ支持棒911により無菌無酸素水中でインナーチューブ取扱装置910内に安定させる。この安定した状態で、オーバーショット813(およびワイヤ853)を把持部814から取り外し、無菌無酸素水面下で、把持部814に折畳んだ状態のビニルスリーブ912を上から被せ、把持部814に、ワイヤ853下端に装着した密封型ホイスティングスイベルを接続する。
【0118】
さらに無菌無酸素水面下で、折畳んだ状態のビニルスリーブ912の上部を当該密閉型ホイスティングスイベルに防水テープで密着固定した後、インナーチューブ支持棒911を把持部814から引抜く。次いで、図8(b)に示すようにインナーチューブ803を無菌無酸素水面から徐々に引上げる。この時、水面下でインナーチューブ外面に沿ってビニルスリーブ912を気泡が入らないように注意しながら、ビニルスリーブ912を引下げてインナーチューブ803を覆い、無菌無酸素水中でビルスリーブ912の下端を結ぶことにより、無菌無酸素コアを包装部内に内蔵するインナーチューブ803を気密・水密保持状態を保った状態の仮包装作業を完了させる。この状態で、インナーチューブ803は、無菌無酸素コア仮密封搬送される。
【0119】
このようにインナーチューブ取扱システム900によれば、従来行われていたようなデッキ下の大型の無酸素コア取扱システムにおけるような空中浮遊雑菌による汚染の危険性の高くしかも殺菌処理が困難な大型水槽を使用したりせず、あるいはデッキの下にまで設けられているケーシング上部にワイヤ強化チューブを接続しデッキ面まで無酸素水面を上昇させアーマーレンチと補助ワイヤでインナーチューブを無酸素水中で保持しつつ仮包装作業をするという大掛りで困難な作業を避けることができる。
【0120】
〔無菌無酸素コア加工システム〕
図1に示すように、無菌無酸素コア加工・試験システム3000には、無菌無酸素環境中でコアを取扱い加工する手袋付無菌無酸素コア取扱いチューブ200と、加工されたコアを被圧状態復元して保存する三次元加圧保存用セル400と、手袋付無菌無酸素コア加工ボックス500とが含まれる。これらに関しては、特許文献3(特開2006−70618号公報)に開示されたものを用いる。
【0121】
〔体積拘束試験システム〕
図1に示した体積拘束試験セル1100について、図9乃至図11を用いて説明する。この体積拘束試験セル1100の側断面図を図9に示す。体積拘束試験セル1100は、略円筒形状ステンレス製の第1容器1101a及び第2容器1101bと、第1容器1101a及び第2容器1101bの間に挟まれるステンレス製試料ホルダ1105とから構成される。(後述する第2の使用方法では、全体が耐圧であることが必要であるため、ステンレス製とした。)
第1容器1101aは、その内部に地下水等の試験用水の出し入れを行う第1開口1120aと、第1開口1120aを覆う第1キャップ1102aと、第1キャップ1102aと第1開口1120aとの間を密閉する第1パッキン1103aとを含む。
【0122】
また、第2容器1101bには、その内部に試験用水の出し入れを行う第2開口1120bと、第2開口1120bを覆う第2キャップ1102bと、第2キャップ1102bと第2開口1120bとの間を密閉する第2パッキン1103bとを含む。
【0123】
ステンレス製試料ホルダ1105は、円盤形状に加工されたコアサンプル1113をステンレス製焼結金属多孔質フィルター1106を両面で保持するために、一対のステンレス製フィルタ押え部材1104を備える。さらに、これらのステンレス製フィルタ押え部材1104の縁部は、第1容器1101a及び第2容器1101bにより両側面から押さえられている。ステンレス製フィルタ押え部材1104は円盤状であり、その両側面の縁部にOリング1107を備えている。Oリング1107は、試料ホルダ1105や第1容器1101a又は第2容器1101bの側面の縁部に当接してこれらの間を密閉する。
【0124】
図10に示すように、ステンレス製フィルタ押え部材1104は、焼結フィルタ押え板1104aを備えている。図11に示すように、焼結フィルタ押え板1104aはステンレス製フィルタ押え部材1104と一体化した平面視Y字形状であり、この形状は、ステンレス製焼結フィルタ1106を確実に押さえつつ、ステンレス製焼結フィルタ1106の開口面積を大きく保持するものである。本実施形態におけるステンレス製焼結フィルタ1106の開口面積は、ステンレス製焼結フィルタ押え板1104aを用いることにより、94.5%という高い値を確保することができた。
【0125】
また、第1容器1101a又は第2容器1101bのステンレス製試料ホルダ1105側に対向する側面には開口部が形成されており、第1容器1101a又は第2容器1101bからステンレス製試料ホルダ1105に向かって、液体が流通(拡散)可能となっている。本体固定ボルト1109は、第1容器1101aや第2容器1101bを、試料ホルダ1105に固定するものである。焼結フィルタ押え付けボルト1110は、焼結フィルタ1106を試料1113に密着させる。補強板1111は第2容器1101b側に一体化して設けられ、組立用補助ボルト1112によって第2容器1101bに仮固定された後、最終的に組立用ボルト1109を使用し組立てる。(組立用補助ボルト1112の上記説明、図10中のボルト1112、符号説明中の組立用補助ボルト1112を省略しても良い)
このような、体積拘束試験セル1100を用いた第1の試験方法を説明する。始めに、図1に示した手袋付無菌無酸素コア加工ボックス500内で、円盤状に加工したコアサンプル13(無菌無酸素供試体)を、耐圧型・片手組立方式の体積拘束耐圧複合セル1100(2セル方式)中に、各パーツに備えられた組立案内嵌合凹凸を手掛に片手で組込む。次いで、原位置で密閉型地下水採取装置により原位置孔内水頭圧加圧状態で溶存ガスとともに採取した地下水を2分して、一方の地下水を第1容器1101aに満たす。他方の地下水は、無菌無酸素雰囲気中で放射性トレーサーを溶解せしめて試験水として調整し、第2容器1101bに満たす。そして、放射性トレーサーの第2容器1101bから第1容器1101aへの拡散・透過・収着試験を実施することができる。なお、原位置で採取した地下水は、主として礫層・断層破砕帯等を経由した原位置の孔内湧水である。(この場合には常圧操作であるので、試験セル1110a及び1110b部分のみは、透明なアクリル製であっても良い。)
上記第1の試験方法を発展せしめた第2の試験方法を説明する。上記円盤状供試体を上記耐圧型・片手組立方式の体積拘束セル1100内に組込んだ後、バルブ付Y字型の分岐管を経由して、密閉型採水装置で採取して溶存ガスが共存した状態で、前記試験用セルに封入した供試体セットについて、前記と同様に拡散・透過・収着試験を実施する。(この場合には被加圧水を使用するので、試験セル1110a及び1110b部分もまた、ステンレス製とする。)
さらに、第3の試験方法としては、同様操作により無菌無酸素雰囲気中で円盤状に加工した供試体をさらに粉砕調製した粉末供試体についても、無菌無酸素環境中で、焼結金属フィルターを隔離材としたバッチ式の収着・脱着・イオン交換容量試験、微生物試験に供することもできる。(この場合は常圧・加圧操作に応じて試験セル1110a及び1110b部分は、ステンレス製と透明なアクリル製を選択する。)
第4の試験方法として、前記第3の試験方法において、体積拘束型耐圧セル1100の変形として(1セル方式の体積拘束型耐圧セル)を使用し、同様に溶存ガス共存状態における拡散・透過・収着試験を実施することもできる。
【0126】
第5の試験方法として、さらにこれらを発展せしめ、前記いずれかの試験において、無菌無酸素粉末供試体をイオン交換水と混合・震盪・ろ過水(メンブランフィルタを用いたろ過又は遠心分離による上澄水)を半人造の地層水として使用することもできる。
【0127】
〔まとめ〕
本発明によれば、従来技術で困難であった掘削水中の微生物と溶存酸素濃度を実用上無菌無酸素にした掘削用水を懸濁気泡水として連続的に生成せしめ、地上から100m以深では効率的なコア採取が可能とされるワイヤラインオールコア採取工法において、これまでスライム排除が低劣であり、かつ操作中の機械的振動からコアを保護するための従来組込禁忌とされてきたビニルスリーブ組込を懸濁気泡水とワイヤライン工法の組合せにより可能とするという画期的な効果を収めた。さらにインナーチューブ中コアバレル頂部にタイマー作動の方位・深度計測・記録のためのシステムを組込むことにより、高速、定位置、高品質、無菌無酸素で、コア採取を可能ならしめた。
【0128】
本発明に係るコア採取システムの他の特徴は、同一掘進装置の使用において、掘削水生成システム中の要素機器を岩質・深度・地質構造等の必要に応じて交換することにより(例えば錘冠、ワイヤラインと二重管、定方位要因計測システム、掘削水としての清水・懸濁気泡水・泥水・界面活性剤添加の有無・ビニルスリーブ組込有無等)、表層掘削や、超深度掘削あるいは不均質地層掘削に即座に対応可能であるという点で威力を発揮する。また、本システムの他の特徴は、ワイヤライン工法におけるアウターチューブの頂部に、無菌無酸素環境中コア・コアバレル取扱・加工システムを組込むことにより、無菌・無酸素環境を維持しつつ仮包装・搬送・加工・三次元加圧保存・輸送を可能にするという特徴を有する。
【0129】
さらに、本発明に係る無菌無酸素水を掘削水に使用した高品質コア採取工法では、掘進時に形成するボーリング孔が掘削水に基く孔内環境汚染を一切排除するとともに、孔壁における微粒物質流失や緩み、構造変化がない良質のボーリング孔を形成するので、従来期待できなかった精密計測・孔間試験を可能にするという特徴を有する。
【0130】
また、本発明に係る無菌無酸素水を掘削水に使用し採取した高品質無菌無酸素コアを無酸素状態を保持しつつ円盤状に加工した供試体を上記耐圧型・片手組立方式の体積拘束セル1100内に組込み、前記体積拘束型試験用セルの一方にはトレーサーを添加した後、バルブ付Y字型の分岐管を経由して、密閉型採水装置で採取して溶存ガスが共存した状態で採取した原位置地下水を前記試験用セルに封入した供試体セットに対して同時に注入し、拡散・透過・収着試験を実施することを可能にするという特徴を有する。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】本発明の懸濁気泡水コア採取ボーリングシステムの全体構成を示す概略構成図である。
【図2】本発明の無菌無酸素懸濁気泡水生成システムを示す構成図である。
【図3】サイクロン式気液分離装置を示す構成図である。
【図4】本発明の掘削コア採取システムに適用される(a)二重管式コア採取装置を示す縦断面図、(b)三重管式コア採取装置を示す縦断面図である。
【図5】本発明のビニルスリーブ付ワイヤライン式定方位コア採取装置を示す縦断面図である。
【図6】本発明の掘削コア採取システムに用いる錐冠周辺の拡大図である。
【図7】本発明に用いるワイヤライン式コア採取工法を示す概念図であり、インナーチューブの(a)降下工程、(b)定着工程、(c)サンプリング工程(d)回収工程を示す。
【図8】本発明のインナーチューブ取扱装置を示す断面図であり、ビニルスリーブの(a)展開前の状態、(b)展開後の状態である。
【図9】本発明の体積拘束試験セルの側断面図である。
【図10】図9の体積拘束試験セルに用いる第1容器及びフィルタ押え部材の平面図である。
【図11】図9の体積拘束試験セルに用いるフィルタ押え部材の平面図である。
【符号の説明】
【0132】
A 接続部(掘削水供給部)
1000 密閉型採水システム
2000 無菌無酸素懸濁気泡水生成システム
3000 無菌無酸素コア加工・試験システム
100 無菌無酸素懸濁気泡水生成装置(懸濁気泡水生成部、懸濁気泡水生成工程)
200 無菌無酸素コア加工・取扱装置(コア加工部、コア加工工程)
400 三次元加圧保存用セル
500 手袋付無菌無酸素コア加工ボックス
700 無菌水生成部(無菌水生成工程)
800 コア採取システム(コア採取部、コア採取工程)
820 ビニルスリーブ付定方位型ワイヤライン式コア採取装置
900 無菌無酸素水中コアバレル仮包装部
1100 体積拘束試験セル
102 原水タンク
104 送水ポンプ
108 第1気液混合槽
110 不活性ガスボンベ
112 気液分離器
114 衝突材
116 脱気ポンプ
122 送水ポンプ
124 水中酸素濃度計
126 第2気液混合槽
128 不活性ガスボンベ
141 第1懸濁気泡水
142 第2懸濁気泡水
144 第1泡分散要素
145 第2泡分散要素
150 サイクロン式気液分離装置
337 錐冠
338 アウターチューブ
339 インナーチューブ(三重管式)
340 アウターチューブ(二重管式)
341 アウターチューブ(三重管式)
343 コアケースチューブ
345 回転部(スイベルヘッド)
355 掘削水供給ノズル
361 内蔵包装部(二重管式又は三重管式用ビニルスリーブ)
380 ケーシング
382 二重管式コア採取装置
386 インナーチューブ(二重管式又はワイヤライン式)
388 ロッド
801 ワイヤ
802 アウターチューブ
803 インナーチューブ
804 コアケースチューブ
805 孔壁
806 キャップ
807 深度定時測定記録部(コア情報測定記憶手段、コア情報測定記憶工程)
808 方位傾斜定時測定記録部(コア情報測定記憶手段、コア情報測定記憶工程)
809 包装部
810 捻れ検出用のビニルスリブケース
811 マーキングコアリフタ(コア情報測定記憶手段、コア情報測定記憶工程)
813 オーバーショット
814 把持部
1101a 第1容器
1101b 第2容器
1104 フィルタ押え部材
1104a フィルタ押え体
1105 試料ホルダ
1107 パッキン
1112 組立用補助ボルト
1113 コアサンプル
1120a 第1開口
1120b 第2開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水を処理して無菌水を生成する無菌水生成工程と、前記無菌水生成工程で生成した前記無菌水から水中酸素濃度が無酸素状態の懸濁気泡水を生成する懸濁気泡水生成工程と、前記懸濁気泡水生成工程で生成した前記懸濁気泡水を用いてコアを掘削して採取するコア採取工程と、前記コア採取工程で採取された前記コアを加工するコア加工工程とを備えるコア採取加工方法において、
前記無菌水生成工程は、
第1フィルタにより原水をろ過して第2原水を生成する第2原水生成工程と、
前記第2原水生成工程で生成された前記第2原水を、逆浸透膜製の第2フィルタによりろ過して前記無菌水を生成する無菌水生成工程と、
前記無菌水生成工程で生成した前記無菌水により、前記第2フィルタを洗浄する洗浄工程とを備えることを特徴とするコア採取加工方法。
【請求項2】
請求項1に記載のコア採取加工方法において、前記洗浄工程は、所定タイミングで前記第2フィルタを前記無菌水により洗浄することを特徴とするコア採取加工方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のコア採取加工方法において、前記洗浄工程は、前記第2フィルタの上流側を前記無菌水により洗浄することを特徴とするコア採取加工方法。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載のコア採取加工方法において、前記無菌水生成工程で生成した前記無菌水を、前記懸濁気泡水生成工程を経由することなく、前記コア採取工程又は前記コア加工工程に供給することを特徴とするコア採取加工方法。
【請求項5】
請求項1乃至3の何れか一項に記載のコア採取加工方法において、
前記懸濁気泡水生成工程は、
前記無菌水に不活性ガスを混合して懸濁気泡水を生成する第1気液混合工程と、
前記第1気液混合工程で生成した前記懸濁気泡水から気体を分離して無酸素水を生成する気液分離工程と、
前記気液分離工程に残留する酸素を含むガスを脱気により排除する脱気工程と、
前記気液分離工程で生成した前記無酸素水に不活性ガスを混合して懸濁気泡水を生成する第2気液混合工程とを備えることを特徴とするコア採取加工方法。
【請求項6】
請求項5に記載のコア採取加工方法において、前記無菌水生成工程で生成した前記無菌水を、前記懸濁気泡水生成工程の前記第1気液混合工程を経由することなく、前記懸濁気泡水生成工程の前記第2気液混合工程に供給することを特徴とするコア採取加工方法。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一項に記載のコア採取加工方法において、
前記コア採取工程は、コア採取地層における採取された前記コアの状態に関する情報を、コア情報測定記憶手段により測定し記憶するコア情報測定記憶工程を備えることを特徴とするコア採取加工方法。
【請求項8】
請求項7記載のコア採取加工方法において、
前記コア情報測定記憶工程は、前記コアの深度、方位、傾斜、pHの何れか一つ又はこれらの組合せを測定し記憶することを特徴とするコア採取加工方法。
【請求項9】
原水を処理して無菌水を生成する無菌水生成部と、前記無菌水生成部で生成した前記無菌水から水中酸素濃度が無酸素状態の懸濁気泡水を生成する懸濁気泡水生成部と、前記懸濁気泡水生成部で生成した前記懸濁気泡水を用いてコアを掘削して採取するコア採取装置と、前記コア採取装置で採取された前記コアを加工するコア加工部とを備えるコア採取加工システムにおいて、
前記無菌水生成部は、
原水をろ過して第2原水を生成する第1フィルタと、
前記第1フィルタにより生成された前記第2原水をろ過して前記無菌水を生成する、逆浸透膜製の第2フィルタと、
前記第2フィルタを前記無菌水により洗浄する洗浄手段とを備えることを特徴とするコア採取加工システム。
【請求項10】
請求項9に記載のコア採取加工システムにおいて、前記洗浄手段は、所定タイミングで前記第2フィルタを前記無菌水により洗浄することを特徴とするコア採取加工システム。
【請求項11】
請求項9又は10に記載のコア採取加工システムにおいて、前記洗浄手段は、前記第2フィルタの上流側を前記無菌水により洗浄することを特徴とするコア採取加工システム。
【請求項12】
請求項9乃至11の何れか一項に記載のコア採取加工システムにおいて、前記無菌水生成部で生成した前記無菌水を、前記懸濁気泡水生成部を経由することなく、前記コア採取装置又は前記コア加工部に供給することを特徴とするコア採取加工システム。
【請求項13】
請求項9乃至11の何れか一項に記載のコア採取加工システムにおいて、
前記懸濁気泡水生成部は、
前記無菌水に不活性ガスを混合して懸濁気泡水を生成する第1気液混合槽と、
前記第1気液混合槽で生成した前記懸濁気泡水から気体を分離して無酸素水を生成する気液分離槽と、
前記気液分離槽に残留する酸素を含むガスを脱気により排除する脱気手段と、
前記気液分離槽で生成した前記無酸素水に不活性ガスを混合して懸濁気泡水を生成する第2気液混合槽とを備えることを特徴とするコア採取加工システム。
【請求項14】
請求項13に記載のコア採取加工システムにおいて、前記無菌水生成部で生成した前記無菌水を、前記懸濁気泡水生成部の前記第1気液混合槽を経由することなく、前記懸濁気泡水生成部の前記第2気液混合槽に供給することを特徴とするコア採取加工システム。
【請求項15】
請求項9乃至14の何れか一項に記載のコア採取加工システムにおいて、前記コア採取装置は、コア採取地層における採取された前記コアの状態に関する情報を、測定し記憶するコア情報測定記憶手段を備えることを特徴とするコア採取加工システム。
【請求項16】
請求項15記載のコア採取加工システムにおいて、
前記コア情報測定記憶手段は、前記コアの深度、方位、傾斜、pHの何れか一つ又はこれらの組合せを測定し記憶することを特徴とするコア採取加工システム。
【請求項17】
請求項1乃至16の何れか一項に記載のコア採取加工システムにおいて、
前記無菌無酸素水を掘削水に使用して採取した無菌無酸素コアを無酸素状態を保持しつつ円盤状に加工して供試体を調整し、
前記供試体を耐圧型・片手組立方式の体積拘束セル内の空間を二分するように、前記体積拘束セルに組込み、前記体積拘束セル内の一方の空間にはトレーサーを添加した後、
バルブ付Y字型の分岐管を経由して、密閉型採水装置で採取され溶存ガスが共存した状態の原位置地下水を、前記体積拘束セル内の二分された前記空間のそれぞれを介して、前記供試体に対して同時に注入して、前記トレーサーの移動を検出することにより、
前記供試体に対する前記原位置地下水の拡散・透過・収着試験の実施を可能にすることを特徴とする試験方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−8066(P2008−8066A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−180797(P2006−180797)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【出願人】(000210908)中央開発株式会社 (25)
【Fターム(参考)】