説明

無鉛セラミックカラー組成物

【課題】無鉛ガラス粉末を用いたセラミックカラー組成物において、低融点のガラス粉末を用いることなく、ガラス素材に対する焼き付け温度を低下させることのできる新規なセラミックカラー組成物を提供する。
【解決手段】(1)金属酸化物顔料100重量部、及び酸化バナジウム0.5〜10重量部を含む混合物を熱処理して得られる無機顔料、並びに
(2)無鉛ガラス粉末
を固形分粉末として含有する無鉛セラミックカラー組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無鉛ガラス粉末を含むセラミックカラー組成物、特に、低い熱処理温度によって緻密な膜形成が可能なセラミックカラー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミックカラー組成物とは、ガラス粉末、無機顔料、無機フィラーなどを固形分粉末として含み、これを有機ヴィヒクル中に分散させたペースト状の組成物であり、印刷法などによって各種のガラス素材に塗布した後、加熱してガラス素材に焼き付けることによって皮膜を形成してガラス素材に装飾性や各種の機能性を付与するものである。この様なセラミクカラー組成物を塗布するガラス素材としては、例えば、ガラスコップ、建材用ガラス、自動車用ガラス、電子部品用ガラス、表示用ガラス等が用いられている。
【0003】
近年、この様なセラミックカラー組成物において、人体、環境等に対する悪影響を考慮して、ガラス粉末としては、主として、鉛、カドミウム等を含まない鉛フリーガラス(Bi−SiO系ガラス、SiO−ZnO−B系ガラス等)が用いられている。
【0004】
しかしながら、ガラス粉末として、鉛フリーガラスを用いる場合には、一般的に融点が高くなるため、融点を低下させる目的で、アルカリ金属類、アルカリ土類金属等を添加したガラス粉末を用いることが多い。ところが、ガラス粉末にアルカリ金属類、アルカリ土類金属等を添加すると耐水性および耐酸性が低下する傾向があり、耐水性および耐酸性等が要求される用途に用いる場合には、アルカリ金属類、アルカリ土類金属等の添加量を制限する必要があり、このため、ガラス母材への焼き付け温度を高温にする必要が生じている(下記特許文献1、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平10−87340号公報
【特許文献2】特開2002−179435号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した従来技術の現状に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、無鉛ガラス粉末を用いたセラミックカラー組成物において、低融点のガラス粉末を用いることなく、ガラス素材に対する焼き付け温度を低下させることのできる新規なセラミックカラー組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記した目的を達成すべく鋭意研究を重ねてきた。その結果、金属酸化物顔料を酸化バナジウムと混合し熱処理して得られる改質した顔料を用いる場合には、ガラス粉末として無鉛ガラスを用いる場合であっても、ガラス素材に対する焼き付け温度を低下させることができ、比較的低い熱処理温度において、緻密なセラミックカラー膜を形成できることを見出し、ここに本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は、下記のセラミックカラー組成物を提供するものである。
1.(1)金属酸化物顔料100重量部、及び酸化バナジウム0.5〜10重量部を含む混合物を熱処理して得られる無機顔料、並びに
(2)無鉛ガラス粉末
を固形分粉末として含有する無鉛セラミックカラー組成物。
2. 金属酸化物顔料と酸化バナジウムを含む混合物の熱処理温度が700〜1100℃である上記項1に記載のセラミックカラー組成物。
3. 金属酸化物顔料が、構成する金属成分を酸化物成分として換算した場合に、遷移金属酸化物を35重量%以上含有するものである上記項1又は2に記載のセラミックカラー組成物。
4. 金属酸化物顔料及び酸化バナジウムを含む混合物を熱処理して得られる無機顔料の含有量が、無鉛ガラス粉末100重量部に対して5〜40重量部である上記項1〜3のいずれかに記載のセラミックカラー組成物。
【0008】
本発明のセラミックカラー組成物は、無機顔料及び無鉛ガラス粉末を必須成分として含み、更に、必要に応じて、無機フィラーを加えた固形分粉末を有機ヴィヒクル中に分散させたものである。以下、該セラミックカラー組成物について具体的に説明する。
【0009】
1)無機顔料
本発明のセラミックカラー組成物では、顔料成分として、金属酸化物顔料100重量部、及び酸化バナジウム0.5〜10重量部を含む混合物を熱処理して得られる無機顔料(以下、「改質無機顔料」ということがある)を用いることが必要である。
【0010】
この様な特定の改質無機顔料を用いることにより、ガラス粉末として無鉛ガラスを用いる場合に、アルカリ金属、アルカリ土類金属等の配合量の多い低融点組成のガラス粉末を用いなくとも、セラミックカラー組成物の焼き付け温度を低下させることができ、各種のガラス素材上に比較的低い熱処理温度で緻密なセラミックカラー皮膜を形成することが可能となる。
【0011】
酸化バナジウムと組み合わせて用いる金属酸化物顔料については、特に限定的ではなく、金属酸化物からなる各種の無機顔料を用いることができる。顔料の色調についても特に限定はなく、目的に応じた任意の色調の金属酸化物顔料を用いることができる。この様な顔料は、通常、各種の無機化合物を混合し焼成することによって複合酸化物化されたものが多い。本発明では、金属酸化物顔料として、構成する金属成分を酸化物成分として換算した場合に、Fe、TiO、CoO、Cr、NiO、CuO、MnO等の遷移金属酸化物を一種又は二種以上含み、これらの遷移金属酸化物の酸化物換算量の合計量が、好ましくは35重量%程度以上、より好ましくは70重量%程度以上である金属酸化物顔料を用いることができる。
【0012】
この様な金属酸化物顔料について、その代表例を酸化物組成に換算して記載すると下記の通りである。
遷移金属酸化物成分を1種類含む顔料:
茶色顔料:Fe(100重量%)
青色顔料:CoO(37重量%)−Al(63重量%)
茶色顔料:Fe(60重量%)−ZnO(40重量%)
遷移金属の酸化物を2種類含む顔料:
茶色顔料:Fe(70重量%)−Cr(15重量%)−ZnO(15重量%)
黄色顔料:TiO(83重量%)−Sb(13重量%)−NiO(4重量%)
黄色顔料:TiO(82重量%)−Sb(13重量%)−Cr(5重量%)
緑色顔料:CoO(18重量%)−ZnO(15重量%)―Cr(64重量%)−Al(3重量%)
青色顔料:CoO(32重量%)−Al(30重量%)−Cr(38重量%)
遷移金属の酸化物を3種類含む顔料:
緑色顔料:CoO(17重量%)−NiO(34重量%)−ZnO(17重量%)―TiO(32重量%)
黒色顔料:CoO(34重量%)−Fe(37重量%)−Cr(29重量%)
黒色顔料:CuO(32重量%)−Cr(62重量%)−MnO(6重量%)
遷移金属酸化物を4種類含む顔料:
黒色顔料:Fe(70重量%)−MnO(19重量%)−CoO(6重量%)−NiO(5重量%)
また、本発明では、無機化合物を混合、焼成して予め顔料化したものだけでなく、この金属酸化物顔料と同様の酸化物組成となるように各金属酸化物を混合したものを金属酸化物顔料として用いてもよい。例えば、改質された黒色顔料を作製するには、Fe70重量%、MnO 19重量%、CoO 6重量%及びNiO 5重量%からなる金属酸化物の混合物を用いても良い。この様な金属酸化物顔料を構成する金属酸化物を用いる場合にも、酸化バナジウムと混合して焼成する際に、各金属酸化物が焼結して、顔料化される。
【0013】
本発明で用いる改質無機顔料は、上記した金属酸化物顔料100重量部に対して、酸化バナジウムを0.5〜10重量部程度、好ましくは0.5〜5重量部程度混合して熱処理することによって得られるものである。
【0014】
熱処理温度は、700 〜1100℃程度とすることが好ましく、800〜1000℃程度とすることがより好ましい。熱処理時間は、0.5〜12時間程度とすることが好ましく、4〜8時間程度とすることがより好ましい。熱処理は、通常、空気中等の酸素含有雰囲気中で行えばよい。
【0015】
上記した方法で熱処理を行うことによって、金属酸化物顔料と酸化バナジウムとの反応が生じ、これによって、顔料成分とガラス粉末の溶融物との濡れ性が向上するものと考えられる。その結果、セラミックカラー組成物を塗布し熱処理する際に、ガラス粉末の溶融温度が高いためにガラス粉末の溶融物の粘性が十分に低下していない状態であっても、ガラス粉末の溶融物により顔料成分を十分に被覆することが可能となり、緻密なセラミックカラー膜が形成されるものと思われる。
【0016】
上記した改質無機顔料の配合量は、後述するガラス粉末100重量部に対して、5〜40重量部程度とすることが好ましく、10〜37重量部程度とすることがより好ましい。
【0017】
改質無機顔料の含有量が少なすぎる場合には、隠蔽力が低下し、透明となり、一方、含有量が多すぎるとセラミックカラーの融着温度が上昇しすぎて融着不良となるので好ましくない。
【0018】
(2)ガラス粉末
ガラス粉末としては、鉛を含まない無鉛ガラスであって、セラミックカラー組成物の通常の作業温度域である500〜700℃程度で融着する低融点ガラス粉末を用いることが好ましい。この様な低融点ガラス粉末としては、例えば、Bi−SiO系ガラス、SiO―ZnO―B系ガラス、リン酸塩系ガラス等を挙げることができる。これらの内で、耐薬品性などを考慮すると、Bi−SiO系ガラス、SiO―ZnO―B系ガラス等が好ましい。該ガラス粉末は、結晶化ガラス及び非結晶ガラスの何れであっても良い。
【0019】
これらのガラス組成の具体例を挙げると次の通りである。
・Bi−SiO系ガラス:
Bi 10〜55重量%
SiO 30〜50重量%
ZnO 0〜20重量%
0〜10重量%
NaO 0〜5重量%
LiO 0〜5重量%
O 0〜5重量%
TiO 0〜6重量%
ZrO 0〜5重量%
0〜5重量%
F 0〜5重量%
・SiO―ZnO―B系ガラス:
SiO 40〜60重量%
ZnO 15〜35重量%
5〜15重量%
NaO 0〜5重量%
LiO 0〜5重量%
CaO 0〜5重量%
TiO 0〜6重量%
ZrO 0〜6重量%
0〜5重量%
F 0〜5重量%
上記した無鉛ガラス粉末は、常法に従って製造することができる。例えば、溶融時に目的の組成となる量の原料を混合して原料組成物を得、これを約1000℃以上、通常1100〜1300℃程度で溶融し、溶融物を水中にて急冷してポップコーン状ガラスとするか或いは水冷ロールに挟んでフレーク状ガラスとする。次いで、得られるガラスを、例えばボールミル中でアルミナボール等を使用して湿式粉砕する。かくして得られるスラリーを乾燥機で乾燥してケーキ状とし、その後、篩又は粉砕機等を用いて解砕して粉末状とする。また上記スラリーをスプレイドライヤー等を用いて直接粉末化してもよい。かくして得られるガラス粉末の粒径は、通常0.1〜20μm程度の範囲にあるのが最適である。従って、粒径が20μmを越える粗大粒子が生成している場合は、例えば気流式分級装置や篩等を用いて除いておくのが好ましい。
【0020】
(3)無機フィラー
無機フィラーは、それ自体着色していない金属酸化物等の粉末であり、前記ガラス粉末と混合焼成することによって、焼成皮膜の物性等を調整するために用いられる。本発明では、無機フィラーは、必要に応じて使用することができ、通常、この種セラミックカラー組成物に利用されることの知られている各種のもの、特に高温時メルトしないものを用いることが好ましい。その例としては、アルミナ、シリカ、ジルコン、珪酸ジルコン、亜鉛華、β―ユークリプタイト、β―スポジューメン、コージェライト等を挙げることができる。
【0021】
無機フィラーは、その粒度に特に限定はない。それらの本来の効果が粒子表面積に依存することが多いことを考慮すれば細かいほど有利であるが、細かすぎるとセラミックカラーの融着温度を上昇させる不利があるため、一般には0.05〜30μm程度、好ましくは0.1〜20μm程度の範囲から選択されるのがよい。
【0022】
無機フィラーの配合量は、ガラス粉末100重量部に対して、10重量部程度以下とすることが好ましく、7重量部程度以下とすることがより好ましい。無機フィラーの配合量が多すぎると、セラミックカラーの融着温度が上昇しすぎて、素地ガラスとの密着不良および接着工程を必要とする場合のプライマーの染み込み等の不具合を生じ易くなるので好ましくない。
【0023】
セラミックカラー組成物
本発明セラミックカラー組成物は、通常、上記したガラス粉末、無機顔料、及び、必要に応じて、無機フィラーの所定量を配合した混合物を固形分として、これを、ガラス素材上への塗布や印刷等に適した形態、例えば、樹脂の溶剤溶液(有機ヴィヒクル)中に分散させたペースト状形態や塗料形態に調製される。
【0024】
ここで用いられる樹脂の溶剤溶液(有機ヴィヒクル)としては、通常のこの種セラミックカラー組成物と特に異なるものではなく、易燃焼性の樹脂を溶剤に溶解したものを使用できる。ここで、易燃焼性の樹脂としては、例えばセルロース樹脂、アクリル樹脂、メタアクリル樹脂、ブチラール樹脂、ビニールピロリドン樹脂等の熱分解性のよい樹脂が好ましく使用できる。また、溶剤としては、例えばパインオイル、α−ターピネオール、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングライコール等の比較的高沸点の溶剤が使用できる。
【0025】
上記ペーストは、常法に従い、成形工程で焼成、焼き付けする前に加熱によって予備乾燥されるのが普通であるが、上記有機ヴィヒクルの代わりに、例えば光重合開始剤を含む紫外線硬化型のアクリレート、メタアクリレート等のオリゴマーをヴィヒクル成分として使用すれば、紫外線硬化型のペーストを調製でき、これは上記予備乾燥の代わりに紫外線照射によって所望の皮膜を形成できる。いずれもペーストの場合も、スクリーン印刷に適したペースト粘度、通常約5〜30Pa・sの範囲に、その粘度を調整されるのが好ましい。
【0026】
本発明のセラミックカラー組成物において、固形分に対する有機ヴィヒクルの配合割合及びヴィヒクル中の樹脂と溶剤との使用比率は、得られる組成物の形態、特に、ガラス素材上への施工方法に応じて適宜決定され、特に限定されるものではない。例えばスクリーン印刷等に適したペースト状形態に調製する場合、一般には、固形分100重量部に対して有機ヴィヒクル10〜50重量部の範囲の使用が適当である。塗料形態に調整される場合は、固形分100重量部に対して有機ヴィヒクル30〜100重量部の範囲の使用が好ましい。之等各種形態への調整は、常法に従って、例えば固形分をロールミル、サンドミル、ボールミル等を用いて有機ヴィヒクル中に分散させることにより実施できる。
【0027】
また、有機ヴィヒクル中の樹脂と溶剤との使用量比率は、任意に決定でき特に限定されるものではないが、通常溶剤100重量部に対して樹脂約5〜50重量部程度の範囲から選択されるのが適当である。
【0028】
かくして得られるペースト状、塗料状等の各種形態の本発明セラミックカラー組成物は、各種のガラス素材上に、常法に従って施工することができる。塗布方法については、通常慣用される方法と異なるものではなく、例えばスクリーン印刷法、スプレー塗装法、ロールコーター法等に従うことができる。上記スクリーン印刷法は最も簡便であり、部分塗布に適している。
【0029】
塗布量については、特に限定的ではなく、目的に応じて適宜決めればよく、通常使用されているセラミックカラー組成物の塗布量と同様とすればよい。
【0030】
塗布後の加熱温度については、使用するガラス粉末の種類に応じて、ガラス粉末が溶融して無機顔料を十分に被覆し、ガラス素材に対して緻密なセラミックカラー膜を形成できる条件とすればよい。本発明では、特に、上記した特定の改質顔料を用いることによって、アルカリ金属類、アルカリ土類金属類等の含有量の少ないガラス粉末を用いる場合であっても、高い加熱温度を要することなく、緻密なセラミックカラー膜を形成できる。具体的な加熱温度は、使用するガラス粉末の種類に応じて決めればよいが、通常、500〜750℃程度の範囲とすることができる。
【0031】
本発明のセラミックカラー組成物は、通常のセラミックカラー組成物が用いられている各種の用途に用いることができる。例えば、ガラスコップ、建材用ガラス、自動車用ガラス、電子部品用ガラス、表示用ガラス等の各種用途のガラス材料に対して装飾性や各種の機能性を付与するために有効に利用できる。
【発明の効果】
【0032】
本発明のセラミックカラー組成物は、金属酸化物顔料と酸化バナジウムの混合物を焼成してなる改質無機顔料を顔料成分として用いるものであり、アルカリ金属類、アルカリ土類金属類などの含有量の少ない無鉛ガラス粉末を用いた場合であっても、従来の同様のガラス粉末を用いたセラミックカラー組成物と比較すると、比較的低い焼き付け温度において、緻密で良好なセラミックカラー膜を形成することができる。
【0033】
よって、本発明によれば、無鉛ガラスを用いた安全性の高いセラミックカラー組成物を用いて、低い焼き付け温度で、耐酸性等に優れた良好なセラミックカラー膜を形成することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
【0035】
実施例1
以下の実施例及び比較例では、下記表1に記載した組成を有するガラス粉末A〜Dのいずれかを使用した。
【0036】
【表1】

【0037】
まず、下記表2〜表16において、金属酸化物顔料の項目に記載されている顔料100重量部に対して、酸化バナジウムの項目に記載されている量の酸化バナジウムを加え、この混合物を空気中で800℃で6時間加熱して、改質顔料を作製した。
【0038】
次いで、各表中のセラミックカラー組成物の項目に記載されているガラス粉末と顔料を各表に示す配合割合で混合した。この混合物の固形分100重量部に対して、易燃焼性のエチルセルロース樹脂(ダウケミカル社製、商品名:STD20)7重量%とα―ターピネオール93重量%からなる有機ヴィヒクル(粘度BL粘度計3号ロータ、12回転、25℃、10Pa・s)25重量部を加えて、3本ロールにて分散したセラミックカラー用ペーストを調整した。その際の粘度は10〜25Pa・sであった。
【0039】
(膜形成温度測定)
得られた各セラミックカラー用ペーストを25mm×150mm×3mmの板ガラス上に、焼成後のセラミックカラー層が15μm程度となるようスクリーン印刷し、150℃で10分程度乾燥して試料片とした。
【0040】
次いで、150℃の温度勾配をつけた温度勾配炉を用い、設定温度に達した炉内に試料片を入れて4分焼成後に取り出した。冷却後、焼き付いたセラミックカラー面に油性マジックにて直線を引き、セラミックカラー膜を形成した面の反対側のガラス面から油性マジックによる直線を観察した。緻密なセラミックカラー膜が形成された部分については、油性マジックがセラミックカラー膜を浸透しないために、反対側のガラス面から直線の存在が認められないが、セラミックカラー膜の焼き付きが不十分な部分については、油性マジックがセラミックカラー膜中に浸透して反対側のガラス面から直線が観察される。よって、セラミックカラー膜を形成した面の反対側のガラス面から観察した場合に、直線が見えなくなった部分は、セラミックカラー組成物が十分に焼き付いて緻密な膜が形成されているものと判断できる。
【0041】
使用した温度勾配炉は、1mmについて1℃の温度勾配を有することから、板ガラスの直線が見えなくなった部分の位置より、緻密なセラミックカラー膜が形成された部分の温度を求めた。この様にして求めた膜形成温度を下記各表に示す。
【0042】
また、各実施例について、酸化バナジウムを無添加であること以外は同一組成の比較例のセラミックカラー組成物の膜形成温度を基準とした場合の膜形成温度の低下温度も表中に記載する。
【0043】
【表2】

【0044】
【表3】

【0045】
【表4】

【0046】
【表5】

【0047】
【表6】

【0048】
【表7】

【0049】
【表8】

【0050】
【表9】

【0051】
【表10】

【0052】
【表11】

【0053】
【表12】

【0054】
【表13】

【0055】
【表14】

【0056】
【表15】

【0057】
【表16】

【0058】
以上の結果から明らかなように、各種の金属酸化物顔料に対して酸化バナジウムを添加し焼成して得られる改質顔料を用いる場合には、酸化バナジウム無添加の顔料を用いた同一組成のセラミックカラー組成物と比較すると、緻密なセラミックカラー膜を形成するための熱処理温度が低下することが明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)金属酸化物顔料100重量部、及び酸化バナジウム0.5〜10重量部を含む混合物を熱処理して得られる無機顔料、並びに
(2)無鉛ガラス粉末
を固形分粉末として含有する無鉛セラミックカラー組成物。
【請求項2】
金属酸化物顔料と酸化バナジウムを含む混合物の熱処理温度が700〜1100℃である請求項1に記載のセラミックカラー組成物。
【請求項3】
金属酸化物顔料が、構成する金属成分を酸化物成分として換算した場合に、遷移金属酸化物を35重量%以上含有するものである請求項1又は2に記載のセラミックカラー組成物。
【請求項4】
金属酸化物顔料及び酸化バナジウムを含む混合物を熱処理して得られる無機顔料の含有量が、無鉛ガラス粉末100重量部に対して5〜40重量部である請求項1〜3のいずれかに記載のセラミックカラー組成物。




【公開番号】特開2009−78955(P2009−78955A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−250712(P2007−250712)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(591021028)奥野製薬工業株式会社 (132)
【Fターム(参考)】