説明

無鉛無ホウ素瓦用銀色釉薬

【課題】鉛以外の成分を除いた銀色無鉛釉薬の提供。
【解決手段】RO(ROはLiO、NaOおよびKOの1種または2種以上を表す)を0.06モル≧RO;
CaOを0.05モル≦CaO≦0.34モル;
Alを0.02モル≦Al≦0.27モル;
MnOを0.65モル≦MnO≦0.95モル;および
TiOを0.11モル≦TiOの量で含み、ホウ素を含まない銀色無鉛釉薬。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無鉛無ホウ素瓦用銀色釉薬、すなわちホウ素を含まない無鉛銀色釉薬に関する。
【背景技術】
【0002】
銀色瓦は伝統的な瓦であり、その色はいぶし瓦に代表されるように古来から日本の風土に合った代表的な色として広く用いられ、その製造用の釉薬(銀色釉薬)として種々のものが開発されてきた(特許文献1〜3)。なお、特許文献4も銀色釉薬に言及しているが同文献に記載の釉薬は銀色発色のための主たる結晶成分であるMnOの含有量が低く(0.38モル〜0.59モル)、銀色の発色は不十分なものでしかない。
【0003】
特許文献1に記載の釉薬においては銀色発色のために不可欠な成分として鉛の酸化物が使用されている。一方、特許文献2には鉛を含まない銀色釉薬(銀色無鉛釉薬)が記載され、さらに特許文献3には公害、作業環境の改善を指向した無鉛化技術を利用し、安定的な銀色の発色を可能にする銀色瓦用無鉛釉薬(以下「銀色無鉛釉薬」と省略記載することがある)が記載されている。
【0004】
特許文献2についてさらに述べるに、同文献に記載の無鉛銀色釉薬においてはNaO、LiO、KOのようなアルカリ金属化合物のモル数が合計で0.025モル以下と低減され、貫入がより効果的に防止される。なお、同文献にはこれらのアルカリ金属化合物について一般に低温釉の成分として必要なものであり、強力な融剤となることも記載されている。
【0005】
また、特許文献3に記載の銀色瓦用無鉛釉薬は以下の組成を有するものである:
O合計量≦0.01モル(但しROはLiO、KO及び/又はNaO)
0.1モル≦RO合計量≦0.3モル(但しROはMgO、CaO、SrO及び/又はBaO)
0.7モル≦MnO≦0.9モル、
0.1モル≦ZrO、0.1モル≦TiOで、ZrO+TiO≦1.0、
0.05モル≦Al≦0.3モル、0.5モル≦SiO≦2.5モルで、4≦SiO/Al≦25
0.05モル≦B≦0.18モル
【0006】
これらの成分について特許文献3には以下のように記載されている:
・MnOは銀色発色を得るための結晶の主成分であり0.7モルより小では良好な銀色発色を呈さず黒くなる
・ZrO及びTiOは結晶生成を促進する必須成分でありZrO、TiOがMnOと同時に存在するときはじめて釉は銀色発色を呈する
・ZnOを含む釉薬が他の施釉瓦から影響を受けやすいことがわかったので、本発明はZnOを含ませないでしかも十分なる銀色釉薬瓦用無鉛釉薬を得ることとした
・SiOは0.5モル〜2.5モルが好ましく0.5モルより小さくても2.5モルより大きくても釉は発泡する
・Alは0.05〜0.3が好ましく0.05より小さいと釉は発泡する
・Bは釉の粘性を調節し結晶の生成を補助する有効な成分であるがモル数が大きくなると、釉の化学的耐久性が低下し、酸による変色が発生する(中略)好ましいのは0.05〜0.18モルである
・SiO/Alのモル比は釉の溶融状態及び酸による変色に関係し特にBが0.18モルより大、SiO/Alの比が4より小のとき変色が著しい
・ROを0.01モル以下とすることにより貫入に対してより安定化させることが出来る。
【0007】
SrO、BaO、ZnO、MgOおよびCaOについては、特許文献3においては0.15≦CaO≦0.25、RO≦0.1(RO:SrO、BaO、ZnO、MgO)と規定されているが、特許文献4においては0.1≦RO合計量≦0.3モル(但しRO:MgO、CaO、SrO及び/又はBaO)の要件が不可欠とされているに留まり各成分の具体的な量については記載されていない。
特許文献3に記載の発明においてZnOが必要とされていないのは、ZnOを除くことにより他の色釉も同時混焼する現在の釉薬瓦の生産状況の下における他の色釉による発色阻害を防止し、安定発色を得ることを可能とするという間接的な理由が記載されている。
【0008】
以上のとおり、従来の銀色無鉛釉薬においてはMnO、ZrOおよびTiO、SiOおよびAl、B、RO(LiO、KOおよび/またはNaO))ならびにRO(SrO、BaO、MgOおよび/またはCaO)が必須の成分とされるとともに各成分についての必要な量も規定されている。ZnOは任意成分とされる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭58−79838号公報
【特許文献2】特開昭58−88141号公報
【特許文献3】特開平9−48682号公報
【特許文献4】特開平9−227153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
近年に至り労働衛生および環境安全の観点から、銀色無鉛釉薬においてさらに鉛(および亜鉛)以外の成分を追加して使用を回避する必要性が認識されつつある。
しかしながら、特許文献3に記載されている上記各成分およびその量は銀色の発色に不可欠なものとされ、鉛以外の成分を除いた銀色無鉛釉薬が希求されているにもかかわらず、鉛以外のとくに有害な成分を除いた銀色無鉛釉薬の開発・提供は未だ緒についてさえいないのが現状である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題に鑑み、本発明者らは鉛以外の成分をさらに除いた銀色無鉛釉薬について検討したところ、驚くべきことにある種の成分を用いなくても他の一部の成分の量を調整することにより上記課題が解決できる可能性があることを見出し、さらに鋭意研究を進めた結果本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、RO(ROはLiO、NaOおよびKOの1種または2種以上を表す)を0.06モル≧RO;
CaOを0.05モル≦CaO≦0.34モル;
Alを0.02モル≦Al≦0.27モル;
MnOを0.65モル≦MnO≦0.95モル;および
TiOを0.11モル≦TiOの量で含み、ホウ素を含まない銀色無鉛釉薬に関する。
【0013】
また本発明は、SiOを、0.45モル≦SiO≦2.1モルの量でさらに含む前記銀色無鉛釉薬に関する。
さらにまた本発明は、RO(ROはMgO、SrOおよびBaOの1種または2種以上を表す)を0.12モル≧ROの量でさらに含む前記銀色無鉛釉薬に関する。
またさらに本発明は、ROを含まない前記銀色無鉛釉薬に関する。
さらにまた本発明は、ZrOを0.54モル≧ZrO、0.74モル≧ZrO+TiOの量でさらに含む、前記いずれかの銀色無鉛釉薬に関する。
さらに本発明は、亜鉛を含まない前記いずれかの銀色無鉛釉薬に関する。
【0014】
また本発明は、以下の組成からなる、ホウ素を含まない銀色無鉛釉薬に関する:
0.06モル≧RO(ROはLiO、NaOおよびKOの1種または2種以上を表す);
0.05モル≦CaO≦0.34モル;
0.12モル≧RO(ROはMgO、SrOおよびBaOの1種または2種以上を表す)
0.45モル≦SiO≦2.1モル;
Alを0.02モル≦Al≦0.27モル;
MnOを0.65モル≦MnO≦0.95モル;および
0.54モル≧ZrO、0.11モル≦TiOで、0.74モル≧ZrO+TiO
【0015】
さらに本発明は、以下の組成からなる、前記銀色無鉛釉薬に関する:
0.06モル≧RO(ROはLiO、NaOおよびKOの1種または2種以上を表す);
0.05モル≦CaO≦0.34モル;
0.45モル≦SiO≦2.1モル;
Alを0.02モル≦Al≦0.27モル;
MnOを0.65モル≦MnO≦0.95モル;および
0.54モル≧ZrO、0.11モル≦TiOで、0.74モル≧ZrO+TiO
【0016】
そして本発明は、前記いずれかの銀色無鉛釉薬を用いて製造される銀色瓦に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、鉛以外の成分としてさらにホウ素を除いた銀色無鉛釉薬の提供が可能となり、もって銀色釉薬および銀色瓦を製造する際の労働衛生および環境安全の一層の向上が達成される。
本発明の銀色無鉛釉薬はホウ素を含まないにもかかわらず銀色を十分に発色せしめることができる。
【0018】
なお、本発明は銀色無鉛釉薬においてホウ素の使用を回避せしめることに成功したばかりでなく、RO、Al、MnOおよびTiOといった成分を特定の量で用い、衛生・環境安全の面において大きな問題がない成分であるCaOを従来より大きい量で用い得る点において従来技術とは顕著に異なるのである。CaOが上記のとおり衛生・環境安全の面において大きな問題がないことを併せ考えれば、このことは従来技術からは当業者といえども想到し得ない格別な効果である。
【0019】
理論に束縛されることを望むものではないが、Bを除いた銀色無鉛釉薬においてCaOは銀色の発色を補助する成分であると考えられる。
特許文献2および3のいずれにおいてもホウ素は銀色無鉛釉薬の成分として不可欠なものとされている。一方、CaOはBとともに釉薬(銀色無鉛釉薬)を滑らかに熔融させ、貫入に対して安全にする上で必要な成分とされているにすぎない(特許文献2)。発色安定性がよいとされる銀色無鉛釉薬について開示する特許文献3に至っては、CaOをMgO、SrOおよびBaOとともにRO成分の一要素として例示するにすぎず、その具体的な作用や具体的な量については一切記載するものではない。すなわち、Bを全く用いない銀色無鉛釉薬のみならず、かかる釉薬においてCaOが銀色の発色を補助しもって十分な発色をもたらすといったことは従来全く知られていなかったのである。
【0020】
また本発明の銀色無鉛釉薬のうちさらにSiOを0.45モル≦SiO≦2.1モルの量の量で含むもの、RO(ROはMgO、SrOおよびBaOの1種または2種以上を表す)を0.12モル≧ROの量で含むものまたはZrOを0.54モル≧ZrO、0.74モル≧ZrO+TiOの量で含むものにおいては、釉面における釉薬の発泡や不熔を防ぎ、釉面状態を良好に保つといった効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明をさらに詳細に説明する。なお、各成分の量は他の記載がない限りゼーゲル表示でのモル数を表わす。
本発明者らはまず従来の銀色無鉛釉薬の成分から除くことが望ましいものとしてホウ素を選択した。ホウ素は2001年の水質汚濁防止法の改正により、排水基準に「ホウ素及びその化合物」として追加された成分である。
一方、ホウ素は釉薬の熔融を促進し銀色の発色の素となる結晶の析出に補助的な役割を果たす成分である。したがって、例えば特許文献3に記載の発明は0.05〜0.18モルのBが不可欠であるとされている。また、特許文献2におけるBの量の範囲は0.1〜0.2モルとされている。すなわち、従来技術においてはホウ素(B)は少なくとも0.05モル用いることが必要とされている。
【0022】
ホウ素を用いないと釉薬の熔けが悪く耐火度が高くなり、銀色発色の素となる成分(主としてMn、他にZr、Ti等)の結晶が発生しにくくなり、結果として発色不良や発泡等の望ましくない現象が生じ得る。
これらの望ましくない現象、とくに発色不良を抑制するためにRO、Al、MnOおよびTiOといった成分を特定の量で用い、CaOの量を調整することが有効であることが本発明において初めて見出された。すなわち、RO、Al、MnOおよびTiOといった成分を特定の量で用い、従来技術において用いられる量より多くてもよい量でCaOを用いることによって、上記望ましくない現象は抑制される傾向があることが明らかになった。
【0023】
本発明の釉薬においてはRO(ROはLiO、NaOおよびKOの1種または2種以上を表す)を0.06モル≧ROの量で含む。該ROを前記の量で用いることによって銀色の発色が達成されるばかりでなく、釉薬の融点が低くなり貫入も防止される。
Oの量として0.06モル≧RO≧0.01モルは好ましく、0.05モル≧RO≧0.01モルはより好ましく、0.01モルより大きく0.05モル以下の量はより一層好ましい。
【0024】
本発明の釉薬はCaOを0.05モル≦CaO≦0.34モル(0.05モル以上0.34モル以下。以下本明細書において「〜」を用いた表記は同様の意味を有する。)の量で含む。CaOを用いる量を0.05モル以上とすることによって銀色発色の素となる結晶剤であるMnO等の成分の結晶が発生しやすくなり、0.34モル以下とすることによってMnOの相対的な比率を適切に保ち、もって該釉薬を用いた瓦の黒色化を防ぐことができる。
CaOの量として0.1モル〜0.3モルは好ましく、0.15モル〜0.3モルはより好ましく、0.15モルより大きく0.3モル以下の量はより一層好ましい。
【0025】
また本発明の釉薬においてはAlが0.02モル≦Al≦0.27モルの量で含まれる。該Alを前記の量で用いることによって銀色の発色が達成されるばかりでなく、釉面の状態を良好にすることができる。
Alの量として0.025モル〜0.25モルは好ましく、0.03モル〜0.25モルはより好ましく、0.03モルより大きく0.25モル以下の量はより一層好ましい。
【0026】
本発明の釉薬においてはMnOが0.65モル≦MnO≦0.95モルの量で含まれる。MnOの量として0.7モル〜0.9モルは好ましく、0.75モル〜0.9モルはより好ましく、0.75モルより大きく0.9モル以下の量はより一層好ましい。
【0027】
本発明の釉薬はTiOを0.11モル≦TiOの量で含む。TiOはZrOと同様に銀色成分の結晶の析出を促進する成分である。
本発明の釉薬のうちTiOを0.11モル≦TiO≦0.5モルの量で含むものは好ましく、0.15モル≦ZrO≦0.5モルの量で含むものはより好ましく、0.15モルより大きく0.5モル以下の量はより一層好ましい。
TiOの量は従来技術における量より比較的大きい量であるところ、かかる量によりホウ素の結晶析出を補助する作用を補填することができることができる。
【0028】
また、本発明の釉薬はSiOを含むものであるところ、その量は限定されないがSiOを0.45モル≦SiO≦2.1モルの量で含むものはより好ましい。これらの量は従来技術における量より比較的少量であるところ、本発明の無ホウ素銀色無鉛釉薬においてはより安定した発色および発泡の防止に資するものである。
本発明の釉薬のうちSiOを0.5モル≦SiO≦2.1モルの量で含むものは好ましく、0.5モル≦SiO≦2.0モルの量で含むものはより好ましく、0.5モルより大きく2.0モル以下の量はより一層好ましい。
【0029】
以下に本発明の銀色無鉛釉薬に含まれる他の成分について説明する。
本発明の釉薬はRO(ROはMgO、SrOおよびBaOの1種または2種以上を表す。以下同じ。)を含んでよくROを0.12モル≧ROの量で含むものは好ましい。ROの量を0.12モル以下にすることにより、釉薬の熔けおよび発色をより安定させることができる。
本発明の釉薬のうちROを0.1モル≧ROモルの量で含むものはより好ましく、0.075モル≧Rの量で含むものは一層より好ましく、0.075モル未満の量はさらに一層より好ましい。ROを含まない本発明の釉薬も好ましい。
【0030】
本発明の釉薬のうちさらにZrOを含むものは好ましく、ZrOを0.54モル≧ZrO、0.74モル≧ZrO+TiOの量で含むものはより好ましい。ZrOはTiOと同様に銀色成分の結晶の析出を促進する成分である。本発明の釉薬のうちZrOを0.1モル≦ZrO≦0.54モルの量で含むものはより好ましく、0.1モル≦ZrO≦0.5モルの量で含むものは一層より好ましく、0.1モルより大きく0.5モル以下の量はさらに一層より好ましい。
ZrOはその添加量を0.54モル以下とすることによってそれ自体の著しく高い耐火度の影響を適切に抑制することができる。さらに0.74モル≧ZrO+TiOとすることによって、釉薬の熔融状態をより良好に保つことができる。本発明の釉薬のうち0.74モル≧ZrO+TiO≧0.1モルであるものはより好ましく、0.7モル≧ZrO+TiO≧0.1モルであるものは一層より好ましく、ZrO+TiOが0.1モルより大きく0.7モル以下であるものはさらに一層より好ましい。
【0031】
本発明の釉薬のうち亜鉛(ZnO)を含まないものも好ましい。ZnOの使用を回避することによって銀色釉だけでなく他の色釉も同時混焼する現在の釉薬瓦の生産状況の下において、他の色釉による発色阻害を防止しより安定した発色を達成することができる。
本発明の釉薬のうち亜鉛を含まないものにおいても、上記各成分の好ましい添加および/または量が適用される。ただし、本発明の釉薬はRO(ROはLiO、NaOおよびKOの1種または2種以上を表す)を0.06モル≧RO;CaOを0.05モル≦CaO≦0.34モル;Alを0.02モル≦Al≦0.27モル;MnOを0.65モル≦MnO≦0.95モル;およびTiOを0.11モル≦TiOの量で含み、ホウ素を含まない銀色無鉛釉薬であれば他の成分の種類・量はとくに限定されない。したがって、本発明の銀色無鉛釉薬は、適宜亜鉛を含んでもよい。
【0032】
本発明の銀色無鉛釉薬のうち以下の組成からなるホウ素を含まないものはとくに好ましい:
0.06モル≧RO(ROはLiO、NaOおよびKOの1種または2種以上を表す);
0.05モル≦CaO≦0.34モル;
0.12モル≧RO(ROはMgO、SrOおよびBaOの1種または2種以上を表す)
0.45モル≦SiO≦2.1モル;
Alを0.02モル≦Al≦0.27モル;
MnOを0.65モル≦MnO≦0.95モル;および
0.54モル≧ZrO、0.11モル≦TiOで、0.74モル≧ZrO+TiO
【0033】
本発明の上記銀色無鉛釉薬のうち以下の組成からなるものは、ROを含まないため一層とくに好ましい:
0.06モル≧RO(ROはLiO、NaOおよびKOの1種または2種以上を表す);
0.05モル≦CaO≦0.34モル;
0.45モル≦SiO≦2.1モル;
Alを0.02モル≦Al≦0.27モル;
MnOを0.65モル≦MnO≦0.95モル;および
0.54モル≧ZrO、0.11モル≦TiOで、0.74モル≧ZrO+TiO
【0034】
本発明の銀色無鉛釉薬は従来の方法により製造することができる。例えば珪石、カオリン、蛙目粘土、酸化マンガン、ルチル、酸化鉄等の原料を用いて所望の組成の調合物を調製すればよい。また、これにCMC、ベントナイトといった添加物を適量加え、ポットミル等にて湿式粉砕して最終的な調製物としてよい。
【0035】
本発明は上記いずれかの銀色無鉛釉薬を用いて製造される銀色瓦にも関するところ、該瓦の製造は本技術分野における通常の方法により行うことができる。すなわち、瓦の焼成温度は約1100℃〜約1160℃とすることができ、施釉付着量は50g〜90g/和形桟瓦とすることができる。
また、本発明の銀色無鉛釉薬には、本発明の目的を阻害しない範囲で、当該銀色無鉛釉薬の作用を成分や製造過程において不回避的に混入する成分として、上記以外の成分を含んでよい。
【実施例】
【0036】
以下に具体的な例により本発明をより詳細に説明するが、これは如何なる意味においても本発明を限定するものではない。
【0037】
(実施例1)
[試験方法]
珪石、カオリン、蛙目粘土、酸化マンガン、ルチル、酸化鉄等の原料を用いて表1の各例に示す組成の調合物を調製し、これにCMC、ベントナイト各0.5部を加え、ポットミルにて湿式粉砕したものを和型桟瓦1枚当り80〜90gの付着量になるように施釉し、表1に示す温度でそれぞれ焼成して瓦を得た。なお、前記温度は各釉薬の組成を考慮し、銀色となるべき発色および釉面状態を極力適切なものとするものをそれぞれ設定した。
【0038】
得られた瓦についての発色を目視観察により判断した。
また、釉薬の熔解の程度および発泡の発生の有無から釉面状態を目視により観察した。
【0039】
[結果]
結果を表1に示す。
【表1】

【0040】
本願発明の釉薬(実施例1〜22)はいずれも銀色に発色した。
これに対し、比較例1〜4はそれぞれRO(比較例1)、CaOおよびMnO(比較例2)、Al(比較例3)ならびにTiO(比較例4)の量が本願発明の釉薬に必要な範囲のものでない例であるところ、これらにおいてはいずれも瓦の色は黒くなり銀色発色は達成されなかった。
なお実施例1〜22のうち実施例1〜16においては、釉面状態がとくに良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の方法によれば、鉛以外の成分を除いた銀色無鉛釉薬の提供が可能となる。したがって、本発明は釉薬製造業・銀色瓦製造業および関連産業の発展に寄与するところ大である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
O(ROはLiO、NaOおよびKOの1種または2種以上を表す)を0.06モル≧RO;
CaOを0.05モル≦CaO≦0.34モル;
Alを0.02モル≦Al≦0.27モル;
MnOを0.65モル≦MnO≦0.95モル;および
TiOを0.11モル≦TiOの量で含み、ホウ素を含まない銀色無鉛釉薬。
【請求項2】
SiOを0.45モル≦SiO≦2.1モルの量でさらに含む、請求項1に記載の銀色無鉛釉薬。
【請求項3】
O(ROはMgO、SrOおよびBaOの1種または2種以上を表す)を0.12モル≧ROの量でさらに含む、請求項1または2に記載の銀色無鉛釉薬。
【請求項4】
Oを含まない、請求項3に記載の銀色無鉛釉薬。
【請求項5】
ZrOを0.54モル≧ZrO、0.74モル≧ZrO+TiOの量でさらに含む、請求項1〜4のいずれかに記載の銀色無鉛釉薬。
【請求項6】
亜鉛を含まない請求項1〜5のいずれかに記載の銀色無鉛釉薬。
【請求項7】
以下の組成からなる、ホウ素を含まない銀色無鉛釉薬:
0.06モル≧RO(ROはLiO、NaOおよびKOの1種または2種以上を表す);
0.05モル≦CaO≦0.34モル;
0.12モル≧RO(ROはMgO、SrOおよびBaOの1種または2種以上を表す)
0.45モル≦SiO≦2.1モル;
Alを0.02モル≦Al≦0.27モル;
MnOを0.65モル≦MnO≦0.95モル;および
0.54モル≧ZrO、0.11モル≦TiOで、0.74モル≧ZrO+TiO
【請求項8】
以下の組成からなる、請求項7に記載の銀色無鉛釉薬:
0.06モル≧RO(ROはLiO、NaOおよびKOの1種または2種以上を表す);
0.05モル≦CaO≦0.34モル;
0.45モル≦SiO≦2.1モル;
Alを0.02モル≦Al≦0.27モル;
MnOを0.65モル≦MnO≦0.95モル;および
0.54モル≧ZrO、0.11モル≦TiOで、0.74モル≧ZrO+TiO
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の銀色無鉛釉薬を用いて製造される銀色瓦。

【公開番号】特開2012−254908(P2012−254908A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129959(P2011−129959)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【特許番号】特許第4902896号(P4902896)
【特許公報発行日】平成24年3月21日(2012.3.21)
【出願人】(000161633)宮脇グレイズ工業株式会社 (7)
【Fターム(参考)】