説明

無電解めっき方法

【課題】絶縁体又は半導体の表面に、超臨界流体又は亜臨界流体を使用するとともに誘導共析現象を利用して短時間で厚いめっき層を無電解めっきで得られるようにした無電解めっき方法を提供すること。
【解決手段】絶縁体としてのガラス基板試料22の表面に無電解めっきする際に、無電解めっき液19中に金属粉末を分散させた状態で超臨界流体ないしは亜臨界流体を使用して無電解めっきを行う。そうすると、誘導共析現象を利用して短時間で均質な厚いめっき層が得られる。本発明の無電解めっき方法では、金属粉末として平均粒径は1nm以上100μm以下のものを使用でき、半導体素子内の微細金属配線形成方法であるダマシン法ないしデュアルダマシン法にも適用可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁体又は半導体の表面に無電解めっきを行う無電解めっき方法に関し、特に超臨界状態又は亜臨界状態で誘導共析現象を利用して絶縁体又は半導体の表面に短時間で厚いめっき層が得られるようにした無電解めっき方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子内の微細金属配線形成方法としては、スパッタリング法により基板上に例えばアルミニウム薄膜を形成した後、フォトレジストを塗布し、露光・現像処理によりパターニングを行い、エッチングにより所定の配線を形成することが行われていた。しかしながら、半導体回路素子の高度集積化、微細化に伴い、このような配線形成方法では適用が困難となってきたため、予め配線用の溝や孔を形成し、化学気相成長法CVD、スパッタリング、めっき法等によりアルミニウムや銅を溝や孔の中に埋込み、その後に、化学的機械研磨CMP(Chemical Mechanical Polishing)法により表面を研磨することにより配線を形成する方法、いわゆるダマシン法が行われるようになってきた。このダマシン法において、下層の配線への接続孔も溝形成時に孔あけし、この接続孔と溝とに同時にアルミニウムや銅を充填し、配線を形成する方法はデュアルダマシン法と呼ばれている。
【0003】
近年、半導体装置の配線形成工程としては、電気めっき法を適用したダマシン法が主流となっている(下記特許文献1、2参照)。ここで下記特許文献1に従来例として開示されているダマシン法を適用した3次元実装用半導体装置の配線の形成方法について図3及び図4を用いて説明する。この配線の形成方法は、図3Aに示すように、例えばシリコン基板等の基板70の表面にリソグラフィ及びエッチング技術により孔72を形成し、次いで、図3Bに示すように、この基板70の表面に例えばCVDによりSiOからなる絶縁膜74を形成して孔72の表面を絶縁膜74で覆い、これによって、電気が漏れないようにし、更に、図3Cに示すように、絶縁膜74の上に電気めっきの給電層としてのシード層76を例えばCVDやスパッタリングで形成する。
【0004】
そして、図3Dに示すように、基板70の表面に電気めっきによる銅めっきを施すことで、基板70の孔72の内部に銅を充填させるとともに、絶縁膜74の上に銅めっき膜78を堆積させ、その後、図3Eに示すように、CMPにより、基板70上の銅めっき膜78及び絶縁膜74を除去し、孔72内に充填させた銅めっき膜78の表面を基板70の表面と略同一平面となるようにして埋込み配線している。
【0005】
この下記特許文献1に開示されている埋込み配線は、孔72の径Wが5〜20μm程度であり、深さDが50〜70μm程度のものに適用し得るとされている。そして、下記特許文献1に開示された発明では、図3Dに示した電気めっきによる銅めっき工程においては、図4Aに示すように孔72の入口近傍で銅がオーバーハングして銅配線の内部にボイド(巣)が生じるのを防止するため、図4Bに示すように電気めっき工程の途中でめっき膜の一部をエッチングする工程を追加し、更に図4C及び図4Dに示すように所望の回数電気めっき工程及びめっき膜のエッチング工程を繰り返すことにより、図4Eに示すように孔72内を銅めっき膜78で埋めるようにしている。
【0006】
なお、上述のような特許文献1に開示された発明を適用しても、0.20μm程度ないしはそれ以下というような狭い溝ないし孔内に銅をボイドなく埋め込むことは困難であるため、下記特許文献2に開示された発明では、めっき液の組成を調整して溝ないし孔の底部側と入口側の金属析出速度を調整することで対処するようにしている。
【特許文献1】特開2003− 96596号公報(特許請求の範囲、段落[0003]〜[0010]、[0011]、図4、図6、図8)
【特許文献2】特開2005−259959号公報(特許請求の範囲、段落[0011]、[0013]、[0029]、図1、図2)
【特許文献3】特開平10−245683号公報(特許請求の範囲、段落[0011]〜[0015])
【特許文献4】特開2006− 37188号公報(請求項7〜12、段落[0008]〜[0012]、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のような電気めっき法による微細金属配線形成方法は、給電層としてのシード層76を大きく形成できる場合には給電用端子の形成が容易であるために有効な方法であるが、めっき部分のサイズが小さい場合や開口部の大きさに比べて深さが深い溝ないし孔内等をめっきする必要がある場合には、給電用端子の形成が困難であるため、無電解めっき法が採用される。
【0008】
無電解めっき法は、得られるめっき層が緻密で、微細な部分にもめっきでき、しかも絶縁物の表面にもめっきできるため、幅広い分野で採用されているが、めっき層の析出速度が遅いため、厚い金属層の形成が要求される上述のようなダマシン法ないしデュアルダマシン法に対しては直ちには適用困難である。加えて、従来の無電解めっき方法では、無電解めっき中にめっき層の析出速度とめっき層の溶解速度とが平衡状態になるため、厚い無電解めっき層を得ることが困難であった。
【0009】
一方、上記特許文献3には、錫と合金を形成しはんだ膜として機能する粉末を含めた錫または錫合金めっき浴を用い、無電解めっき法によって厚い錫合金膜を形成する方法が開示されている。しかしながら、このような無電解めっき法ではめっき膜自体の特性が良好でなく、しかも下地との密着性が良好でないため、上記特許文献3に開示されている方法のようにはんだ膜として加熱処理するような用途の場合には有効であるとしても、汎用的には採用し難い。
【0010】
また、上記特許文献4には、めっき金属と同一の金属を含む金属錯体を溶かした超臨界流体又は亜臨界流体を基材に接触させることにより、前記基材表面を脱脂しかつエッチングするとともに、前記基材表面に前記金属錯体を担持させ、前記基材表面に担持した金属錯体を還元することにより前記金属錯体中の金属を前記基材の表面に析出させて金属核を形成し、表面に金属核の形成された基材を前記めっき金属を含むめっき液に浸漬することにより、前記金属核をそのまま自己触媒として利用して連続的に析出反応を進行させてめっき層を形成する工程とを含む無電解めっき法が開示されている。
【0011】
しかしながら、上記特許文献4に開示されている無電解めっき法も、従来の無電解めっき法の場合と同様に、めっき層の析出速度が遅く、しかも、無電解めっき中にめっき層の析出速度とめっき層の溶解速度とが平衡状態になるため、厚いめっき層を得ることが困難であるので、厚い金属層の形成が要求される上述のようなダマシン法ないしデュアルダマシン法に対しては直ちには適用困難であった。
【0012】
発明者等は、めっき層の析出速度が速く、かつ、絶縁体又は半導体の表面への密着性が良好な無電解めっき法を得るべく種々実験を重ねた結果、二酸化炭素及び不活性ガスの少なくとも一方、金属粉末を分散させた無電解めっき液及び界面活性剤を含み、前記二酸化炭素及び不活性ガスの少なくとも一方が超臨界状態又は亜臨界状態となるようにして誘導共析現象を利用して無電解めっきを行うと、金属粉末がめっき層に取り込まれると共に、無電解めっき液中に金属粉末が存在しているので、無電解めっき中のめっき層の溶解速度がめっき層の析出速度よりも大幅に小さくなるため、従来例に比すると短時間でより厚いめっき層が得られることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0013】
すなわち、本発明は、超臨界状態又は亜臨界状態で誘導共析現象を利用して絶縁体又は半導体の表面に短時間で厚いめっき層を得られるようにした無電解めっき方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明の無電解めっき方法は、絶縁体又は半導体の表面に無電解めっきする無電解めっき方法において、二酸化炭素及び不活性ガスの少なくとも一方、金属粉末を分散させた無電解めっき液及び界面活性剤を含み、前記二酸化炭素及び不活性ガスの少なくとも一方が超臨界状態又は亜臨界状態となるようにして誘導共析現象を利用して無電解めっきを行うことを特徴とする。なお、本明細書における誘導共析現象とは、無電解めっき時に金属粉末の一部も同時にめっき層中に取り込まれる現象を意味する。
【0015】
本発明の無電解めっき方法は、二酸化炭素及び不活性ガスの少なくとも一方、無電解めっき液及び界面活性剤が共存した状態で、かつ、二酸化炭素及び不活性ガスの少なくとも一方が超臨界状態又は亜臨界状態となるようにして行われるので、無電解めっき液と絶縁体又は半導体の表面の接触はエマルジョン状態で行われる。そのため、本発明の無電解めっき方法によれば、無電解めっき液は微細な孔や溝内にも迅速に浸入するので、複雑な形状の絶縁体又は半導体の表面であっても、高度集積化、微細化された半導体回路素子の微細配線形成用であっても、有効に無電解めっきを行うことができる。
【0016】
また、本発明の無電解めっき方法によれば、金属粉末が誘導析出現象によって無電解めっき層に取り込まれるので短時間で厚いめっき層を得ることができ、しかも、無電解めっき液中に金属粉末が存在しているため、無電解めっき中のめっき層の溶解速度がめっき層の析出速度よりも大幅に小さくなるので、従来例に比すると短時間でより厚いめっき層が得られるようになる。そのため、発明の無電解めっき方法は、特にダマシン法ないしデュアルダマシン法等の高度集積化、微細化された半導体回路素子の微細配線形成用として有効に適用することができるようになる。
【0017】
また、本発明の無電解めっき方法においては、前記金属粉末は、無電解めっき処理にて得られる金属被膜と同種の金属であることが好ましい。
【0018】
金属粉末が無電解めっき処理にて得られる金属被膜と同種の金属であると、短時間で均質な厚いめっき層を得ることができるようになる。
【0019】
また、本発明の無電解めっき方法においては、前記金属粉末の平均粒径は1nm以上100μm以下であることが好ましい。
【0020】
本発明の無電解めっき方法によれば、金属粉末の平均粒径を1nm以上100μm以下の微細粉末としたので、金属粉末の無電解めっき液中への分散が容易となり、凝集し難くなるだけでなく、100μm未満の精度を持つ微細構造中にも容易に無電解めっきすることが可能となる。なお、用いる金属粉末の平均粒径は、微細構造の寸法よりも大きくても、二酸化炭素及び不活性ガスの少なくとも一方が超臨界状態又は亜臨界状態となるようにして行われるので、微細構造の入口が大粒径の金属粉末によって閉鎖されることなく、微細構造中も良好に無電解めっきされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、各種実験例及び図面を用いて詳細に説明するが、以下に述べる各種実験例は、本発明をここに記載したものに限定することを意図するものではなく、本発明は特許請求の範囲に示した技術思想を逸脱することなく種々の変更を行ったものにも均しく適用し得るものである。
【0022】
なお、図1は各実験例で使用した無電解めっき装置の概略図であり、図2は超臨界流体ないし亜臨界流体を用いて無電解めっきを行う際の耐圧無電解めっき槽11のタイミングフローチャートである。
【0023】
[無電解めっき液]
以下に述べる各種実験例では、無電解めっき液として市販のニッケル・リン系無電解めっき液(トップニコロンVS(商品名)、奥野製薬工業株式会社製)を使用した。このニッケル・リン系無電解めっき液のニッケル濃度は5.5g/Lであり、pHは5.4であった。また、触媒としては塩化パラジウム系・アクチベーター水溶液(ICPアクセラ(商品名)、奥野製薬工業株式会社製)を使用した。また、無電解めっき液中には非イオン界面活性剤を10mL/Lとなるように添加するとともに、ニッケル粉末を添加する場合には、粒径3〜7μmのニッケル粉末をめっき液500mLに対して0.3g/Lとなるように添加した。
【0024】
[無電解めっき装置]
無電解めっき装置10としては、図1に示したように、超臨界流体ないし亜臨界流体を用いて無電解めっきを行うことができるようにするため、耐圧無電解めっき槽11を用いた。この耐圧無電解めっき槽11には、必要に応じて二酸化炭素ボンベ12からの二酸化炭素を高圧ポンプユニット13及びバルブ14を経て上部の蓋15に設けられた入口16に供給することができ、また、この二酸化炭素を上部の蓋15に設けられた出口17から圧力調整ユニット18を経て周囲大気中に排出することができるようになっている。
【0025】
そして、耐圧無電解めっき槽11は蓋15を外すことによって所定量の無電解めっき液19を注入することができるとともに、耐圧無電解めっき槽11内には撹拌手段としてのスターラー20が挿入されており、さらに、この耐圧無電解めっき槽11はオーブン21内に載置されて内部に挿入された無電解めっき液19を所定の恒温に維持することができるようになっている。また、大気圧下で測定を行う場合には、二酸化炭素ボンベ12、高圧ポンプユニット13、バルブ14及び圧力調整ユニット18を操作することにより耐圧無電解めっき槽11内を大気圧下に開放できるようになっている。なお、耐圧無電解めっき槽11の上部から絶縁物試料としてのガラス基板試料22を保持するとともに必要に応じて外部から無電解めっき液19中に浸漬できるようにしてある。
【0026】
[絶縁物試料]
各種実験例で使用する絶縁物試料としてはガラス基板を使用し、このガラス基板を酸洗前処理後に上記の触媒としての塩化パラジウム系・アクチベーター水溶液に25℃において3分間浸漬することにより表面が活性化されたガラス基板試料22を用いた。なお、この活性化工程をアクチベーター水溶液、二酸化炭素及び不活性ガスの少なくとも一方及び界面活性剤を含み、二酸化炭素及び不活性ガスの少なくとも一方が超臨界状態又は亜臨界状態となるようにして行ってもよい。
【0027】
[実験例1及び2]
実験例1及び2としては、超臨界状態ないしは亜臨界状態で、ニッケル粉末を添加した場合(実験例1)及びニッケル粉末を添加しない場合(実験例2)のそれぞれについて無電解めっきを行った。まず、耐圧無電解めっき槽11内に所定の無電解めっき液19を30mL注入し、ガラス基板試料22を上記耐圧無電解めっき槽11内の無電解めっき液19の上部に、この無電解めっき液19に触れないように配置した。この状態で、耐圧無電解めっき槽11内の無電解めっき液の温度を80℃に加熱し、スターラー20で無電解めっき液19の撹拌を開始(撹拌速度300rpm一定)するとともに、二酸化炭素ボンベ12、高圧ポンプユニット13、バルブ14及び圧力調整ユニット18を手動で操作することによって耐圧無電解めっき槽11内の圧力が10MPaとなるように加圧した。
【0028】
そうすると、二酸化炭素の臨界温度は31.1℃であり、臨界圧力は7.38MPaであるから、上記の温度及び圧力条件下では耐圧無電解めっき槽11内は実質的に超臨界状態ないし亜臨界状態となっている。しかも、無電解めっき液19中に含有されている界面活性剤のために無電解めっき液19は実質的にエマルジョン状態となり、このエマルジョン状態の無電解めっき液19は耐圧無電解めっき槽11内を充満してガラス基板試料22と十分に接触する状態となる。
【0029】
そして、耐圧無電解めっき槽11内の圧力が10MPaとなった時から30分後に耐圧無電解めっき槽11の圧力の減圧を開始し、耐圧無電解めっき槽11内の圧力が大気圧に戻ったときに無電解めっき液19の撹拌を停止し、蓋15を外してガラス基板試料22を取り出し、水洗及び乾燥後に目視によりガラス基板試料22の表面のめっき状態を観察した。この実験例1及び2の耐圧無電解めっき槽11のタイミングフローチャートを図2に示し、また、実験例1及び2で得られた測定結果を表1に示す。
【0030】
なお、測定結果は以下の4とおりに分けて判断した。
○:良好な厚いめっき層が得られた。
△:良好なめっき層が得られたが、厚さは薄かった。
▲:めっき層は得られたが、厚さは薄くかつ部分的にムラが認められた。
×:めっき層は薄く、全面にムラが認められた。
【0031】
[実験例3及び4]
実験例3及び4としては、大気圧下でニッケル粉末を添加した場合(実験例3)及びニッケル粉末を添加しない場合(実験例4)のそれぞれについて無電解めっきを行った。まず、大気開放状態の耐圧無電解めっき槽11内に所定の無電解めっき液19を40mL注入し、この状態で、耐圧無電解めっき槽11内の無電解めっき液19の温度を80℃に加熱した。次いで、スターラー20で無電解めっき液19の撹拌を開始(撹拌速度300rpm一定)するとともに、ガラス基板試料22を無電解めっき液19内に浸漬した。この状態を30分間維持した後、ガラス基板試料22を取り出し、水洗及び乾燥後に目視によりガラス基板試料22の表面のめっき状態を観察した。この実験例3及び4で得られた測定結果を実験例1及び2の測定結果とまとめて表1に示す。
【0032】
【表1】

【0033】
表1に示した結果から、以下のことが分かる。すなわち、大気圧下で無電解めっきを行った場合、無電解めっき液中にニッケル粉末を添加しない実験例4の場合では、めっき層は薄く、全面にムラが認められた。更に、無電解めっき液中にニッケル粉末を添加した実験例3の場合では、めっき層は得られたが、厚さは薄くかつ部分的にムラが認められた。実験例3及び4で使用した無電解めっき液は、従来から普通に使用されている無電解めっき液であって、析出速度が遅いために30分の無電解めっき時間ではめっき時間が足りず、ムラが見られたものと認められる。加えて、無電解めっき液中にニッケル粉末を添加した実験例3の方がニッケル粉末を添加しない実験例4の場合よりも良好な結果等得られていることから、大気圧下の無電解めっきでもニッケル粉末を添加することによるめっき層の析出速度の向上効果は一応認められる。
【0034】
更に、超臨界状態ないし亜臨界状態で無電解めっきを行った場合、無電解めっき液中にニッケル粉末を添加しない実験例2の場合では、良好なめっき層が得られたが、厚さは薄かった。これに対し、無電解めっき液中にニッケル粉末を添加した実験例1の場合では良好な厚いめっき層が得られた。この結果から、超臨界状態ないし亜臨界状態での無電解めっきでは、ニッケル粉末を添加しなくてもめっき層の析出速度の向上効果は一応認められるが、30分間という無電解めっき時間ではまだ短すぎるために部分的にムラが認められたものであることが分かる。これに対して、無電解めっき液中にニッケル粉末を添加した実験例1の場合では、めっき層の析出速度が速いために、30分間の無電解めっきでも十分な厚さのめっき層がむらなく形成されている。
【0035】
以上のことから、超臨界状態ないし亜臨界状態で無電解めっきを行う際に、予め無電解めっき液中にめっきされる金属粉末を添加しておくと、めっき層の析出速度が向上するために、厚く、良好なめっき層が得られ、ダマシン法ないしはデュアルダマシン法に対しても適用可能であることが明らかとなった。
【0036】
なお、上記実験例においては、ニッケル粉末として3μm〜7μmの粒度のものを用いたが、このニッケル粉末は誘導共析現象によって無電解めっき液からめっき層析出と同時にめっき層内に取り込まれ、無電解めっき時のめっき層の析出速度の向上に繋がるものであるから、狭い場所にも緻密で高速にめっきできるようにするためには、粒径は小さい方がよい。特に1μm以下の粒子を使用すると、電解液への分散状態が良好であり、しかも凝集し難いために好ましい。なお、現在のところ金属の平均粒径が1nm未満の微細な金属粉末を得ることは困難であるが、平均粒径1nm程度までは実現可能である。
【0037】
また、上記各実験例においては、絶縁体がガラス基板であり、無電解めっきする金属がニッケルの場合について説明した。しかしながら、本発明の無電解めっき方法は、絶縁体として無機絶縁体や有機絶縁体等、任意の絶縁体に対して適用可能であると共に、Si等の半導体に対しても等しく適用可能である。更に、無電解めっきする金属として、ニッケルのみでなく、真ちゅう、銅、亜鉛、鉄、コバルト等に対しても等しく適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】各実験例で使用した無電解めっき装置の概略図である。
【図2】超臨界流体ないし亜臨界流体を用いて無電解めっきを行う際の耐圧無電解めっき槽のタイミングフローチャートである。
【図3】図3A〜図3Eは従来例の3次元実装用半導体装置の配線の形成工程を順に説明する図である。
【図4】図3に示した従来で採用されているボイド抑制工程を説明する図である。
【符号の説明】
【0039】
10 無電解めっき装置
11 耐圧無電解めっき槽
12 二酸化炭素ボンベ
13 高圧ポンプユニット
14 バルブ
15 蓋
16 入口
17 出口
18 圧力調整ユニット
19 無電解めっき液
20 スターラー
21 オーブン
22 ガラス基板試料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁体又は半導体の表面に無電解めっきする無電解めっき方法において、
二酸化炭素及び不活性ガスの少なくとも一方、金属粉末を分散させた無電解めっき液及び界面活性剤を含み、前記二酸化炭素及び不活性ガスの少なくとも一方が超臨界状態又は亜臨界状態となるようにして誘導共析現象を利用して無電解めっきを行うことを特徴とする無電解めっき方法。
【請求項2】
前記金属粉末は、無電解めっき処理にて得られる金属被膜と同種の金属であることを特徴とする請求項1に記載の無電解めっき方法。
【請求項3】
前記金属粉末の平均粒径は1nm以上100μm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の無電解めっき方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−275253(P2009−275253A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−126517(P2008−126517)
【出願日】平成20年5月13日(2008.5.13)
【出願人】(391060395)エス・イー・エス株式会社 (46)
【出願人】(591004733)
【Fターム(参考)】