説明

無電解パラジウム−銀合金めっき液

【課題】優れた性能を有するパラジウム−銀合金皮膜を形成できる、無電解パラジウム−銀合金めっき液を提供する。
【解決手段】
(i)水溶性パラジウム化合物、
(ii)水溶性銀化合物、
(iii)アンモニア、モノメチルアミン、モノエチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン及びモノエタノールアミンからなる群から選ばれた少なくとも一種の成分、
(iv)一般式:
【化1】


(式中:nは1〜5の整数であり、Rは水素原子又は−CH2−CH2−NH2である)で表されるエチレンジアミン類、
(v)水溶性アルデヒド化合物、並びに
(vi)周期律表第四周期の遷移元素を含む水溶性化合物、
を含有する水溶液からなる無電解パラジウム−銀合金めっき液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無電解パラジウム−銀合金めっき液に関する。
【背景技術】
【0002】
貴金属は、優れた耐食性、高硬度等を有する導電性材料であり、その特性を利用して電子機器の接点材料等として用いられている。特に、銀は比較的安価で良好な電気導電性を有するため、接点材料として幅広く採用されている。しかしながら、銀の持つ最大の欠点は他の貴金属と比較して耐食性が悪く、柔らかい点であり、精密部品の接点材料とする場合には、一般的には銀合金として用いることが多い。例えば、銀−パラジウム合金は、全率固溶体を形成する安定な合金であり、パラジウムと銀を合金化することにより、銀の耐食性、硬度などが改善されて、優れた接点材料となることが知られている。
【0003】
一方、パラジウムはその高い水素透過性能が着目され、水素分離膜としての新たな用途が展開されつつある。近年、パラジウム自体の持つ水素透過性能をさらに向上させることを目的としてパラジウム合金の研究が盛んになっており、その中の一つにパラジウム−銀合金がある。
【0004】
このように、パラジウム−銀合金は接点材料のみならずその用途は今後益々拡大していく傾向にある。
【0005】
下記特許文献1〜4には、パラジウム−銀合金形成用の電気めっき液が報告されている。しかしながら、これらのめっき液は、いずれも電気めっき液であり、被めっき物は、その表面が導電性でなければならない。例えば、セラミック等の非導電体にめっきを施す場合は、あらかじめその表面に導電性皮膜を形成する必要がある。更に、電気めっき法では、均一な膜厚のめっき皮膜を形成することが困難であり、被めっき物間において膜厚の相違が生じ易く、同一の被めっき物内でも電流密度の相違によって膜厚差が発生するために、接点部品や水素分離膜としての性能に大きな悪影響を与えることになる。
【特許文献1】特許2797951号
【特許文献2】特開平8−193290号公報
【特許文献3】特表2003−530486号公報
【特許文献4】特開平10−18077号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記した従来技術の現状に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、上記した欠点のないパラジウム−銀合金皮膜を形成することが可能な、無電解パラジウム−銀合金めっき液を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記した目的を達成すべく研究を重ねた結果、特定の錯化剤、還元剤、安定剤等を配合した無電解パラジウム−銀合金めっき液は、安定性が良好であり、形成されるパラジウム−銀皮膜は、合金組成、膜厚などが均一で、良好な外観を有するものとなることを見出し、ここに本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、下記の無電解パラジウム−銀合金めっき液を提供するものである。
1.(i)水溶性パラジウム化合物、
(ii)水溶性銀化合物、
(iii)アンモニア、モノメチルアミン、モノエチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン及びモノエタノールアミンからなる群から選ばれた少なくとも一種の成分、
(iv)一般式:
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、nは1〜5の整数であり、Rは水素原子又は−CH2−CH2−NH2である)で表されるエチレンジアミン類、
(v)水溶性アルデヒド化合物、並びに
(vi)周期律表第四周期の遷移元素を含む水溶性化合物、
を含有する水溶液からなる無電解パラジウム−銀合金めっき液。
2.エチレンジアミン類が、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、トリス(2−アミノエチル)アミン及びN,N,N’,N’−テトラキス(2−アミノエチル)エチレンジアミンからなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物である上記項1に記載の無電解パラジム−銀合金めっき液。
3.水溶性アルデヒド化合物が、アルデヒド基を有する炭素数1〜4の化合物である上記項1又は2に記載の無電解パラジウム−銀合金めっき液。
4.水溶性アルデヒド化合物が、ホルマリン、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、グリオキサザール、グリオキシル酸及びギ酸からなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物である上記項1〜3のいずれかに記載の無電解パラジウム−銀合金めっき液。
【0011】
以下、本発明の無電解パラジウム−銀合金めっき液について、具体的に説明する。
無電解パラジウム−銀合金めっき液:
本発明の無電解パラジウム−銀合金めっき液は、下記(i)〜(vi)の成分を含有する水溶液である。
(i)水溶性パラジウム化合物、
(ii)水溶性銀化合物、
(iii)アンモニア、モノメチルアミン、モノエチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン及びモノエタノールアミンからなる群から選ばれた少なくとも一種の成分、
(iv)エチレンジアミン類、
(v)水溶性アルデヒド化合物、並びに
(vi)周期律表第四周期の遷移元素を含む水溶性化合物。
【0012】
以下、上記各成分について具体的に説明する。
(i)水溶性パラジウム化合物:
パラジウム化合物としては、水溶性のパラジウム化合物であれば特に限定なく使用できる。具体例としては、フッ化パラジウム、塩化パラジウム(II)、臭化パラジウム(II)、ヨウ化パラジウム(II)、硫酸パラジウム(II)、硝酸パラジウム(II)、ハロゲン化パラジウム錯体の塩(テトラクロロパラジウム酸ナトリウム、テトラブロモパラジウム酸カリウム等)等を挙げることができる。
【0013】
水溶性パラジウム化合物の添加量は特に限定的ではないが、濃度が低すぎると無電解パラジウム−銀合金めっき液の析出速度が遅くなって、所定のめっき皮膜を形成するために長時間を要することになる。一方、水溶性パラジウム化合物の濃度が高すぎると、めっき液からのパラジウム化合物の持ち出し量が多くなってコスト高となるので好ましくない。この様な点から、通常、無電解パラジウム−銀合金めっき液中の水溶性パラジウム化合物の濃度は、0.001〜0.5mol/l程度とすることが好ましく、0.002〜0.1mol/l程度とすることがより好ましい。
【0014】
(ii)水溶性銀化合物:
銀化合物としては、水溶性の銀化合物であれば特に限定無く使用できる。具体例としては、フッ化銀、硝酸銀、硫酸銀、ハロゲン化銀錯体の塩(ジヨード銀カリウム等)等を挙げることができる。
【0015】
水溶性銀化合物の添加量については特に限定的ではないが、濃度が低すぎると、無電解パラジウム−銀合金めっき液の析出速度が遅くなって、所定のめっき皮膜を形成するために長時間を要する。一方、水溶性銀化合物の濃度が高すぎると、めっき液からの銀化合物の持ち出し量が多くなってコスト高となる。この様な点から、通常、無電解パラジウム−銀合金めっき液中の水溶性銀化合物の濃度は、0.001〜0.5mol/l程度とすることが好ましく、0.002〜0.1mol/l程度とすることがより好ましい。
【0016】
(iii)アンモニア、モノメチルアミン、モノエチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン及びモノエタノールアミンからなる群から選ばれた少なくとも一種の成分:
これらの成分は、めっき液中で銀を錯化して安定に存在させる働きをするものと考えられる。本発明の無電解パラジウム−銀合金めっき液では、アンモニア、モノメチルアミン、モノエチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン及びモノエタノールアミンからなる成分については、いずれか一種のみを用いてもよく、或いは二種以上混合して用いても良い。
【0017】
アンモニア、モノメチルアミン、モノエチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン及びモノエタノールアミンからなる群から選ばれる少なくとも一種の成分の濃度については特に限定的はないが、この濃度が低すぎると、銀を十分に安定化することができず、沈殿の発生やめっき液の分解等が生じ易くなる。このため、これらの成分の濃度は、水溶性銀化合物の濃度に対して2倍モル以上とすることが好ましい。また、これらの成分の濃度が高すぎると、めっき皮膜の析出速度が低下する傾向となる。これらの点から、アンモニア、モノメチルアミン、モノエチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン及びモノエタノールアミンからなる群から選ばれる少なくとも一種の成分の濃度は、0.002〜1mol/l程度とすることが好ましく、0.004〜0.2mol/l程度とすることがより好ましい。
【0018】
(iv)エチレンジアミン類:
エチレンジアミン類としては、下記一般式:
【0019】
【化2】

【0020】
(式中、nは1〜5の整数であり、Rは水素原子又は−CH2−CH2−NH2である)で表される化合物を用いることができる。上記一般式において、nが2以上の場合には、Rは同一であってもよく、異なっていても良い。上記一般式で表される化合物は、めっき液中に水溶性パラジウム化合物を安定に存在させる働きをするものと思われる。
【0021】
上記一般式で表されるエチレンジアミン類としては、炭素数2〜10程度の化合物を用いることが好ましく、その具体例としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン等の直鎖状のエチレンジアミン類;トリス(2−アミノエチル)アミン、N,N,N’,N’−テトラキス(2−アミノエチル)エチレンジアミン等の側鎖を有するエチレンジアミン類等を挙げることができる。エチレンジアミン類は、一種単独又は二種以上混合して用いることができる。
【0022】
エチレンジアミン類の添加量については特に限定的はないが、この濃度が低すぎると、パラジウムを十分に安定化することができず、沈殿の発生やめっき液の分解等が生じ易くなる。このため、エチレンジアミン類の濃度は、水溶性パラジウム化合物の濃度に対して2倍モル程度以上とすることが好ましい。また、エチレンジアミン類の濃度が高すぎると、めっき皮膜の析出速度が低下する傾向となる。これらの点から、エチレンジアミン類の濃度は、0.002〜1mol/l程度とすることが好ましく、0.004〜0.2mol/l程度とすることがより好ましい。
【0023】
(v)水溶性アルデヒド化合物:
水溶性アルデヒド化合物は、めっき液中の金属成分の還元剤として作用するものである。
【0024】
水溶性アルデヒド化合物としては、アルデヒド基を有する炭素数1〜4の化合物を用いることが好ましく、その具体例として、ホルマリン、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、グリオキサザール、グリオキシル酸、ギ酸等を挙げることができる。
【0025】
水溶性アルデヒド化合物の添加量は特に限定的ではないが、濃度が低すぎると金属の析出反応が緩慢となり、所定のめっき皮膜を得るために長時間を要する。一方、水溶性アルデヒド化合物の濃度が高すぎると、めっき液中での反応が極端に早くなりめっき液の分解や、粒状析出、合金組成の不均一等の異常析出が生じ易くなる。これらの点から、水溶性アルデヒド化合物の濃度は、0.005〜5mol/l程度とすることが好ましく、0.01〜2mol/l程度とすることがより好ましい。
【0026】
(vi)周期律表第四周期の遷移元素を含む水溶性化合物:
めっき液中に周期律表第四周期の遷移元素を含む水溶性化合物を添加することにより、めっき液の安定性が大きく向上し、更に、均一な合金組成の皮膜が形成され易くなる。
【0027】
周期律表第4周期の遷移元素としては、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、ニッケル、コバルト、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム等を挙げることができる。該遷移元素を含む化合物としては、水溶性の化合物であればよく、例えば、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、ハロゲン化物、酸素酸塩等を例示できる。これらの内で、硫酸塩の具体例としては、硫酸マンガン(II)、硫酸鉄(III)、硫酸コバルト(II)、硫酸ニッケル、硫酸銅(II)、硫酸亜鉛(II)等を挙げることができ、硝酸塩の具体例としては、硝酸スカンジウム(III)、硝酸ガリウム(III)、硝酸クロム(III)、硝酸鉄(III)等を挙げることができ、リン酸塩の具体例としては、リン酸ニッケル(II)、リン酸コバルト(II)等を挙げることができ、ハロゲン化物の具体例としては、塩化スカンジウム(III)、フッ化チタン(IV)、臭化バナジウム(III)、塩化クロム(III)、フッ化ガリウム(III)、フッ化ゲルマニウム(IV)等を挙げることができ、酸化物の具体例としては、メタバナジン酸アンモニウム、ガリウム酸カリウム、ゲルマニウム酸ナトリウム等を挙げることができる。
【0028】
これらの化合物は、一種単独又は二種以上混合して用いることができる。更に、上記遷移元素の二個以上を含む化合物を用いても良い。
【0029】
周期律表第四周期の遷移元素を含む水溶性化合物の濃度は特に限定的ではないが、この濃度が低すぎると、めっき液中で金属の還元析出が進行して、めっき液の分解を引き起こし易くなる。一方、これらの化合物の濃度が高すぎると、めっき液中での還元析出反応が極端に遅くなり、金属の析出自体が停止する場合もある。これらの点から、周期律表第四周期の遷移元素を含む水溶性化合物の濃度は、0.001〜0.1mol/l程度とすることが好ましく、0.005〜0.05mol/l程度とすることがより好ましい。
【0030】
無電解めっき方法:
本発明の無電解パラジウム−銀合金めっき液を用いてパラジウム−銀合金めっき皮膜を形成する方法は、通常の無電解めっきの処理方法と同様でよい。一般的には、該無電解パラジウム−銀合金めっき液中に被めっき物を浸漬し、めっき液の温度を所定の温度範囲とすることによって、被めっき物の表面に無電解パラジウム−銀合金めっき皮膜を形成することができる。この場合、必要に応じて、めっき液を攪拌してもよい。
【0031】
被めっき物の種類については特に限定はなく、金属材料の他、プラスチック材料、セラミック材料など各種の材質の材料を被めっき物とすることができる。この場合、被めっき物の種類に応じて、必要に応じて、公知の方法に従って、適宜、触媒付与などを行えばよい。例えば、感受性化−活性化法(センシタイジング−アクチベーティング法)、触媒化−促進化法(キャタライジング−アクセレーティング法)などの方法で無電解めっき用触媒を付与することができる。
【0032】
無電解パラジウム−銀合金めっき液の液温については、低すぎると析出反応が緩慢となって、めっき皮膜の未析出や外観不良等が発生し易くなるので、通常30℃程度以上とすることが好ましい。一方、液温が高すぎるとめっき液の分解が生じ易くなり、更に水の蒸発が激しすぎるために、めっき液中に含まれる成分の濃度維持が困難となる。このため、めっき液の液温は、40〜90℃程度とすることが好ましい。
【0033】
めっき液のpHについては、低すぎるとめっき液中の金属と錯化剤との錯体生成定数が大きく変化し、金属を安定にめっき液中に存在させることが困難となる。さらには還元剤の作用が変化し、めっき反応が停止したり、早くなりすぎてめっき液の分解が生ずることがある。これらの点から、めっき液のpHは5〜12程度とすることが好ましく、7〜11程度とすることがより好ましい。
【0034】
上記方法によって形成されるパラジウム−銀めっき皮膜の合金組成については特に限定はなく、めっき液中の金属成分比などを調整することによって広い範囲の合金組成とすることができる。例えば、Pd:Ag(重量比)=99:1〜1:99程度という幅広い合金比のめっき皮膜を得ることが可能である。
【発明の効果】
【0035】
本発明の無電解パラジウム−銀合金めっき液は、安定性が高いめっき浴であり、形成されるパラジウム−銀合金皮膜は、均一な合金組成を有し、膜厚の均一性にも優れた良好な外観のめっき皮膜となる。更に、本発明の無電解めっき液では、被めっき物の種類について限定されることながく、非導電体上にも直接成膜が可能であり、微細な接点部品などに対しても容易にめっき皮膜を形成できる。
【0036】
従って、本発明の無電解パラジウム−銀合金めっき液を用いることにより、従来の電気めっき法では困難であった均一で良好なパラジウム−銀合金めっき皮膜を各種の被めっき物上に形成することが可能となり、優れた性能を有する接続部品や水素分離膜を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
【0038】
実施例1〜7
外径2cm、肉厚1mmの多孔質の96%アルミナセラミック管を被めっき物として、下記の工程で前処理を行い、下記表1に示す無電解パラジウム−銀合金めっき液中に30分〜2時間浸漬して、厚さ1〜5μmの無電解パラジウム−銀合金めっき皮膜を形成した。
(前処理工程)
(i)表面調整(奥野製薬工業(株)製、商標:OPC-370コンテ゛ィクリーンM )60℃,3分
(ii)触媒付与(奥野製薬工業(株)製、商標:OPC-80キャタリスト)25℃、5分
(iii)活性化(奥野製薬工業(株)製、商標:OPC-アクセレータMX)35℃,3分
【0039】
【表1】

【0040】
比較例1
無電解パラジウム−銀合金めっき液に代えて、無電解パラジウムめっき液(奥野製薬工業(株)製、商標名:パラトップ)を用いて、60℃で1時間めっき処理をすること以外は、実施例1〜7と同様にして、無電解パラジウムめっき皮膜を形成した。
【0041】
比較例2
無電解パラジウム−銀合金めっき液に代えて、無電解銀めっき液(奥野製薬工業(株)製、商標名:ムデンシルバーNCN)を用いて、25℃で2時間めっき処理をすること以外は、実施例1〜7と同様にして、無電解銀めっき皮膜を形成した。
【0042】
比較例3
実施例1〜7と同様の方法で、96%アルミナセラミック管の前処理を行って触媒を付与した後、無電解パラジウムめっき液(奥野製薬工業(株)製、商標名:パラトップ)を用いて厚さ1μmのパラジウム皮膜を形成した。その後、下記組成のパラジウム−銀電気めっき液を用いて、電気めっき法により、パラジウム−銀合金めっき皮膜を形成した。
(パラジウム−銀電気めっき液組成)
塩化パラジウム 33.0g/l
硝酸銀 10.0g/l
臭化カリウム 590.0g/l
亜硝酸カリウム 15.0g/l
ホウ酸 50.0g/l
ナフタレンスルホン酸ナトリウム 1.0g/l
pH 9.0
温度 30℃
電流密度 20mA/cm2
上記した実施例1〜7及び比較例1〜3で形成された各めっき皮膜について、下記の方法で膜厚、外観、合金組成、浴安定性、電気抵抗値、及び水素透過係数を評価した。結果を下記表2に示す。
*膜厚:
蛍光X線膜厚測定装置を用いて膜厚を測定した。
*外観:
目視により均一性および未析出の有無を調べた。
*合金組成:
2×2cmの96%アルミナセラミック板に30分めっきを行い、その皮膜を剥離液(トップリップPN:奥野製薬工業製)で溶解させた後、ICP発光分析装置にてPdと銀の組成比率を求めた。
*浴安定性:
金属濃度及び各種成分の濃度を測定し、補給操作を行いながら、繰り返し無電解パラジウム−銀合金めっきを行い、1ターン分のパラジウムを使用後、めっき浴を90℃で24時間加熱して、めっき液の分解及び槽内でのめっき析出の有無を調べて、安定性を評価した。
*電気抵抗値:
2×2cmの96%アルミナセラミック板に30分めっきを行い、形成されためっき皮膜の比抵抗を四端子抵抗測定器で測定した。
*水素透過係数:
めっき皮膜を形成した多孔質セラミック管に水素を通し、その管を500℃に加熱したときの皮膜を透過する水素の量をガスクロマトグラフィーによって測定して、水素透過係数を算出した。
【0043】
【表2】

【0044】
以上の結果から明らかなように、本発明の無電解パラジウム−銀合金めっき液によれば、幅広い合金組成のパラジウム−銀合金めっき皮膜を形成することができ、得られるめっき皮膜はいずれも外観が良好である。また、本発明のめっき液から形成されるパラジウム−銀めっき皮膜は、パラジウム単独の皮膜(比較例1)と比較して低抵抗であり、接点材料などとして優れた特性を有し、更に、水素透過性についても、パラジウム単独の皮膜と比較して、同等又は優れた性能を有するものである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)水溶性パラジウム化合物、
(ii)水溶性銀化合物、
(iii)アンモニア、モノメチルアミン、モノエチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン及びモノエタノールアミンからなる群から選ばれた少なくとも一種の成分、
(iv)一般式:
【化1】

(式中:nは1〜5の整数であり、Rは水素原子又は−CH2−CH2−NH2である)で表されるエチレンジアミン類、
(v)水溶性アルデヒド化合物、並びに
(vi)周期律表第四周期の遷移元素を含む水溶性化合物、
を含有する水溶液からなる無電解パラジウム−銀合金めっき液。
【請求項2】
エチレンジアミン類が、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、トリス(2−アミノエチル)アミン及びN,N,N’,N’−テトラキス(2−アミノエチル)エチレンジアミンからなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物である請求項1に記載の無電解パラジム−銀合金めっき液。
【請求項3】
水溶性アルデヒド化合物が、アルデヒド基を有する炭素数1〜4の化合物である請求項1又は2に記載の無電解パラジウム−銀合金めっき液。
【請求項4】
水溶性アルデヒド化合物が、ホルマリン、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、グリオキサザール、グリオキシル酸及びギ酸からなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物である請求項1〜3のいずれかに記載の無電解パラジウム−銀合金めっき液。


【公開番号】特開2006−83446(P2006−83446A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−271047(P2004−271047)
【出願日】平成16年9月17日(2004.9.17)
【出願人】(591021028)奥野製薬工業株式会社 (132)
【Fターム(参考)】