説明

無電解メッキによるスズホイスカーの防止方法

【課題】 下地層の上にスズ皮膜を形成する2層メッキ方式において、上層のスズ皮膜でのピンホールやスズホイスカーの発生を防止する。
【解決手段】 被メッキ物に無電解スズ−銀合金メッキ皮膜よりなる下地皮膜を形成した後、当該下地皮膜の上に無電解スズメッキ皮膜(上層皮膜)を形成するスズホイスカーの防止方法であって、下地皮膜の膜厚が0.025〜0.5μmで、且つ、下地と上層皮膜の合計膜厚が0.1〜6μmであり、下地皮膜中の銀の組成比率が5〜90重量%であり、銅張り積層基板などを被メッキ物とする無電解メッキによるスズホイスカーの防止方法である。下地皮膜をごく薄く形成し、下地と上層の合計皮膜の膜厚、及び下地皮膜での銀の比率を特定化することで、上層のスズ皮膜のスズホイスカーとピンホールを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無電解メッキによるスズホイスカーの防止方法に関して、スズメッキ面にピンホールを発生させることなく、簡便にスズホイスカーを防止できる方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
スズメッキ皮膜はハンダ付け性向上やエッチングレジストなどの用途で、弱電工業並びに電子工業の部品などに汎用されているが、スズホイスカーが発生し易いことは周知である。スズホイスカーは短絡の原因となり、プリント基板やフィルムキャリアなどの各種電子部品の信頼性を低下させるため、最近の配線パターンの高密度化、微細化が進む現状では、特にこのホイスカーの防止が強く要請されている。
スズホイスカーの防止方法としては、メッキ後にアニール処理やリフロー処理を行う方法、スズ系層に鉛やビスマスなどの異種金属を少量含有させる方法、或は特定の異種金属の下地層を形成した上にスズ皮膜を被覆する方法などがある。
そこで、スズホイスカーの防止に関する従来技術を挙げると、次の通りである。
【0003】
本出願人は、先に、特許文献1で、簡便な操作でホイスカーを防止するために、銀、ビスマスなどから選ばれた単一金属の下地薄膜を浸漬処理で形成し、この下地薄膜の上にスズ又はスズ合金メッキ皮膜(上層)を形成してホイスカーを防止することを開示した(請求項1)。
また、同様に、特許文献2で、フィルムキャリアーなどの微細パターン上に銀、ビスマスなどから選ばれた単一金属の下地皮膜を置換メッキで形成し、下地皮膜を加熱した後に、スズ皮膜(上層)を置換メッキで形成して、ホイスカーを防止することを開示した(請求項1)。
【0004】
特許文献3には、ハンダ濡れ性を確保しながら、ホイスカーを防止する目的で(段落12、84)、基材の上に、金属Xと金属Yが混在したメッキA層(下地)/金属XのコーティングB層(上層)を形成した電子部品材料(金属Xは錫であり、金属Yは銀、ビスマス、銅等である)が開示されている(請求項1)。
上記コーティングB層(上層)の膜厚は0.05〜1.0μmであり(請求項4、段落38)、1.0μm以上ではホイスカー発生の恐れがあること(段落38)、また、上記メッキA層(下地)の厚みは1〜50μmが可能であることが記載されている(段落39)。この場合、メッキA層(下地)の厚みとコーティングB層(上層)の厚みとの関係では、メッキA層(下地)をコーティングB層(上層)よりかなり厚く形成することが説明されている(段落40)。
【0005】
特許文献4には、溶融処理などの煩雑な工程を経ることなく、ホイスカーを防止する目的で(段落1、6、8)、銀、ビスマスなどの金属5重量%以下でスズが95重量%以上のスズ合金の下地皮膜の上に、スズ又はスズ合金の上層皮膜を形成する方法が開示されている(請求項1)。
上記下地皮膜の膜厚は0.1〜20μm、上層皮膜の膜厚は0.025〜5μmであって(請求項2)、この2層構造のスズ系皮膜にあっては、上層は非常に薄くて良く(段落12)、上層厚みは下地の50%以下が好ましく、25%以下がより好ましい(段落20)ことが記載されている。
【0006】
特許文献5には、ハンダ付け性を向上する目的で(段落1、7、41)、銀又は銀合金(中間層)/スズ又はスズ合金(表面層)/ビスマス又はインジウムを含むスズ合金(最表層部)からなる金属被覆材が開示されている(請求項1)。
上記銀合金(中間層)はスズ−銀合金を含み(段落14)、中間層の厚みは0.05〜10μm、表層層の厚みはリフロー処理との関係で0.05〜20μmである(段落13、18)ことが記載されている。
【0007】
【特許文献1】特開2003−129278号公報
【特許文献2】特開2003−332391号公報
【特許文献3】特許第3350026号公報
【特許文献4】特開2006−9039号公報
【特許文献5】特開平11−229178号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1〜2は銀、ビスマスなどの単一金属の下地皮膜を形成し、この下地皮膜の上にスズ皮膜を形成するものであるが、例えば、銀の下地層の上に無電解メッキによりスズ皮膜を形成すると、この上層のスズ皮膜にピンホールが発生し、ハンダ濡れ性や接合強度が低下するなどの弊害がある。
また、特許文献4の実施例1〜2は、純スズ皮膜(3μm)の下地層の上にごく薄いスズ−コバルト合金皮膜(上層;1.25μm)を形成したものであり、この上層は純スズ皮膜ではないため、ホイスカー防止に有効である反面、ハンダ濡れ性などが純スズ層に劣る問題が残る。
さらに、特許文献3の実施例1〜2では、スズ−銅合金のメッキA層(3.21μm)を下地として、スズコーティングB層(上層;0.5μm)を形成したものであり(段落58)、基本的に下地層をより厚く、スズ皮膜(上層)をより薄く形成するため、無電解メッキにより下地と上層を形成する場合には、コストと時間を要する。
【0009】
本発明は、下地層の上にスズ皮膜を形成する2層メッキ方式において、当該スズ皮膜にピンホールを発生させることなく、簡便にスズホイスカーの発生を防止することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは下地層として、上記従来技術のような銀皮膜ではなく、スズ−銀合金皮膜を薄く形成し、そして、その上層に純粋なスズ皮膜を下地に比して厚く形成し、下地皮膜の銀の含有量を多めの適正範囲に特定化すると、ピンホールを上層のスズ皮膜に発生させることなくハンダ濡れ性や接合強度を良好に確保しながら、簡便にスズホイスカーの発生を防止でき、特に、下地皮膜は0.5μm以下にごく薄く形成しても、また、下地層での銀の比率はごく少なくても、充分にホイスカーを防止できるとの知見を得た。
そして、この知見に基づいて、下地皮膜の膜厚と、下地及び上層の合計皮膜の膜厚とを特定化し、且つ、下地のスズ−銀合金皮膜における銀の組成を特定化すると、上層のスズ皮膜のスズホイスカーとピンホールを有効に防止できること、また、下地及び上層の皮膜全体での銀の組成を適正化し、或は、下地/上層の膜厚比率を適正化すると、ホイスカー防止効果をより向上できることを見い出し、本発明を完成した。
【0011】
即ち、本発明1は、被メッキ物に無電解スズ−銀合金メッキ皮膜よりなる下地皮膜を形成した後、
当該下地皮膜の上に無電解スズメッキ皮膜(上層皮膜)を形成するスズホイスカーの防止方法であって、
下地皮膜の膜厚が0.025〜0.5μmであり、且つ、下地と上層皮膜の合計膜厚が0.1〜6μmであり、
下地の合金皮膜中の銀の組成比率が5〜90重量%であり、
上記被メッキ物が銅張り積層基板、チップ・オン・フィルム(COF)又はTABのフィルムキャリアであることを特徴とする無電解メッキによるスズホイスカーの防止方法である。
【0012】
本発明2は、被メッキ物に無電解スズ−ビスマス合金メッキ皮膜よりなる下地皮膜を形成した後、
当該下地皮膜の上に無電解スズメッキ皮膜(上層皮膜)を形成するスズホイスカーの防止方法であって、
下地皮膜の膜厚が0.025〜0.5μmであり、且つ、下地と上層皮膜の合計膜厚が0.1〜6μmであり、
下地の合金皮膜中のビスマスの組成比率が5〜90重量%であり、
上記被メッキ物が銅張り積層基板、COF又はTABのフィルムキャリアであることを特徴とする無電解メッキによるスズホイスカーの防止方法である。
【0013】
本発明3は、上記本発明1又は2において、下地と上層の皮膜全体での銀の重量比率が0.1〜50重量%であることを特徴とする無電解メッキによるスズホイスカーの防止方法である。
【0014】
本発明4は、上記本発明1〜3のいずれかにおいて、スズ−銀合金又はスズ−ビスマス合金よりなる下地皮膜の膜厚Aと、スズよりなる上層皮膜の膜厚Bにおいて、
下地皮膜と上層皮膜の膜厚比率が、B(上層)/A(下地)=1.2〜30であることを特徴とする無電解メッキによるスズホイスカーの防止方法である。
【0015】
本発明5は、上記本発明1〜4のいずれかにおいて、下地皮膜を形成する際の無電解メッキ浴の浴温が5〜60℃であることを特徴とする無電解メッキによるスズホイスカーの防止方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、下地皮膜の膜厚と下地及び上層の合計膜厚とを適正範囲に特定化し、且つ、下地での銀の組成を適正範囲に特定化するため、上層のスズ皮膜にピンホールを発生させることなくハンダ濡れ性、接合強度並びに皮膜外観を良好に確保しながら、従来のアニール法などのような煩雑な手法を用いることなく、簡便な方法でスズホイスカーを有効に防止できる。
また、下地及び上層の皮膜全体での銀の組成、或は、下地/上層の膜厚比率を適正範囲に特定化すると、ホイスカーの発生をより良く防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、第一に、被メッキ物に無電解スズ−銀合金メッキによる下地皮膜を形成し、当該下地皮膜に無電解スズメッキによる上層皮膜を形成するスズホイスカーの防止方法であって、下地皮膜の膜厚、下地及び上層の合計膜厚、下地の合金皮膜中の銀の組成比率を夫々特定化した所定の電子部品を被メッキ物とする無電解メッキによるスズホイスカーの防止方法であり(本発明1)、第二に、同様の条件で、無電解スズ−銀合金メッキに替えて、無電解スズ−ビスマス合金メッキにより下地皮膜を形成することで、スズホイスカーを防止する方法である(本発明2)。
【0018】
本発明1の下地皮膜は無電解メッキによって形成されたスズ−銀合金メッキ皮膜であり、上層皮膜は無電解メッキにより形成されたスズ皮膜である。
無電解メッキにより下地と上層の皮膜を形成する本発明1の第一の特徴は、下地と上層の膜厚を適正範囲に特定化したことにある。
即ち、下地皮膜の膜厚は0.025〜0.5μmであり、好ましくは0.03〜0.4μmである。下地皮膜の膜厚は0.5μm以下の薄い膜厚でも充分にホイスカーを防止できる反面、0.025μmより薄いとホイスカー防止効果が低下してしまう。
また、下地と上層の合計膜厚は0.1〜6μmであり、好ましくは0.15〜4μmであり、より好ましくは0.2〜3μmである。0.1μmより薄いとホイスカー防止効果が低下し、6μmより厚くしても、無電解メッキでホイスカー防止効果やハンダ濡れ性はあまり変わらないうえ、厚付けは無電解メッキに適さない側面がある。
さらに、本発明4に示すように、下地皮膜の膜厚Aと上層皮膜の膜厚Bとの比率は、B(上層)/A(下地)=1.2〜30が好ましく、2〜20がより好ましい。即ち、本発明では、下地皮膜(スズ−銀合金皮膜)はごく薄く、上層皮膜(スズ皮膜)は下地に対して厚く形成することが基本原理であり、この点で、下地(めっきA層)の厚みを上層(コーティング層B)よりかなり厚く形成する冒述の特許文献3(B/A=0.001〜1)とは、膜厚比率の設計思想が逆である。
【0019】
上記本発明1の第二の特徴は、スズ−銀合金からなる下地皮膜の銀の組成を適正範囲に特定化したことにある。
下地皮膜の銀比率は5〜90重量%であり、好ましくは7〜70重量%、より好ましくは10〜60重量%である。
上述のように、下地皮膜は薄いので、銀比率を増してホイスカー防止効果を担保する必要があり、銀比率が5重量%以下ではホイスカー防止効果が低下する。さらに、5重量%以下の比率では、無電解メッキに際して、メッキ浴の銀濃度が低過ぎて、メッキ液の補給を頻繁にする必要があり、浴管理が煩雑になる弊害も考えれる。一方、銀比率が90重量%を越えると、冒述の通り、銀皮膜と同様に上層のスズ皮膜にピンホールが発生する恐れが増す。
ちなみに、冒述の特許文献4では、下地皮膜の銀、ビスマスなどの金属組成は5重量%以下に設定されている。
他方、本発明3に示すように、下地と上層の皮膜全体での銀の重量比率は0.1〜50重量%が好ましく、より好ましくは0.5〜30重量%である。50重量%を越えると、ハンダ濡れ性が低下し、接合不良を起こす恐れがある。
【0020】
本発明1の下地皮膜の形成に用いる無電解スズ−銀合金メッキ浴は、可溶性第一スズ塩と、可溶性銀塩と、酸又はその塩と、錯化剤とを基本組成とする。
上記可溶性第一スズ塩及び銀塩は夫々難溶性塩を排除するものではなく、任意の塩類を使用できる。
上記可溶性第一スズ塩としては、後述する有機スルホン酸の第一スズ塩を初め、ホウフッ化第一スズ、スルホコハク酸第一スズ、塩化第一スズ、硫酸第一スズ、酸化第一スズなどが挙げられ、メタンスルホン酸第一スズ、エタンスルホン酸第一スズ、2−ヒドロキシエタン−1−スルホン酸第一スズ、2−ヒドロキシプロパン−1−スルホン酸第一スズ、p−フェノールスルホン酸第一スズなどの有機スルホン酸の塩類が好ましい。
また、上記可溶性銀塩としては、硫酸銀、亜硫酸銀、炭酸銀、スルホコハク酸銀、硝酸銀、有機スルホン酸銀、ホウフッ化銀、クエン酸銀、酒石酸銀、グルコン酸銀、シュウ酸銀、酸化銀などが挙げられ、本来は難溶性の塩化銀なども使用できる。好ましい銀塩としては、メタンスルホン酸銀、エタンスルホン酸銀、2−プロパノールスルホン酸銀、フェノールスルホン酸銀、ホウフッ化銀などが挙げられる。
当該可溶性第一スズ塩或は可溶性銀塩の金属塩としての換算添加量は、夫々0.0001〜200g/Lであり、好ましくは0.1〜80g/Lである。
【0021】
本発明の無電解スズ−銀合金メッキ浴のベースを構成する酸としては、排水処理が比較的容易なアルカンスルホン酸、アルカノールスルホン酸、芳香族スルホン酸等の有機スルホン酸、或は、脂肪族カルボン酸などの有機酸が好ましいが、ホウフッ化水素酸、ケイフッ化水素酸、スルファミン酸、塩酸、硫酸、過塩素酸などの無機酸でも差し支えない。
上記の酸は単用又は併用でき、酸の添加量は0.1〜300g/Lであり、好ましくは20〜120g/Lである。
【0022】
上記アルカンスルホン酸としては、化学式Cn2n+1SO3H(例えば、n=1〜5、好ましくは1〜3)で示されるものが使用でき、具体的には、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1―プロパンスルホン酸、2―プロパンスルホン酸、1―ブタンスルホン酸、2―ブタンスルホン酸、ペンタンスルホン酸などの外、ヘキサンスルホン酸、デカンスルホン酸、ドデカンスルホン酸などが挙げられる。
【0023】
上記アルカノールスルホン酸としては、化学式
m2m+1-CH(OH)-Cp2p-SO3H(例えば、m=0〜6、p=1〜5)
で示されるものが使用でき、具体的には、2―ヒドロキシエタン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシプロパン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシブタン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシペンタン―1―スルホン酸などの外、1―ヒドロキシプロパン―2―スルホン酸、3―ヒドロキシプロパン―1―スルホン酸、4―ヒドロキシブタン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシヘキサン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシデカン―1―スルホン酸、2―ヒドロキシドデカン―1―スルホン酸などが挙げられる。
【0024】
上記芳香族スルホン酸は、基本的にはベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、フェノールスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸などであって、具体的には、1−ナフタレンスルホン酸、2―ナフタレンスルホン酸、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、p―フェノールスルホン酸、クレゾールスルホン酸、スルホサリチル酸、ニトロベンゼンスルホン酸、スルホ安息香酸、ジフェニルアミン―4―スルホン酸などが挙げられる。
【0025】
上記脂肪族カルボン酸としては、一般に、炭素数1〜6のカルボン酸が使用できる。具体的には、酢酸、プロピオン酸、酪酸、クエン酸、酒石酸、グルコン酸、スルホコハク酸、トリフルオロ酢酸などが挙げられる。
【0026】
本発明1の無電解スズ−銀合金浴に含有させる錯化剤はメッキ浴を安定化し、スズと銀を共析化する機能を果すものであり、チオ尿素類、アミン類、スルフィド類、メルカプト類などが挙げられる。
上記チオ尿素類はチオ尿素とチオ尿素誘導体である。
当該チオ尿素誘導体としては、1,3―ジメチルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、ジエチルチオ尿素(例えば、1,3―ジエチル―2―チオ尿素)、N,N′―ジイソプロピルチオ尿素、アリルチオ尿素、アセチルチオ尿素、エチレンチオ尿素、1,3―ジフェニルチオ尿素、二酸化チオ尿素、チオセミカルバジドなどが挙げられる。
上記アミン類は、アミノ酢酸、アミノプロピオン酸、アミノ吉草酸、アミノ酸などのアミノカルボン酸系化合物、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミンなどのポリアミン系化合物、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなどのアミノアルコール系化合物などである。
上記アミン類のうちのアミノカルボン酸系化合物としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩(EDTA・2Na)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)、エチレンジアミンテトラプロピオン酸、ニトリロ三酢酸(NTA)、イミノジ酢酸(IDA)、イミノジプロピオン酸(IDP)、メタフェニレンジアミン四酢酸、1,2−ジアミノシクロヘキサン−N,N,N′,N′−四酢酸、ジアミノプロピオン酸、グルタミン酸、オルニチン、システイン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシンなどが挙げられる。
また、上記アミン類のうちのポリアミン系化合物、アミノアルコール系化合物としては、エチレンジアミンテトラメチレンリン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンリン酸、アミノトリメチレンリン酸、アミノトリメチレンリン酸五ナトリウム塩、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、メチレンジアミン、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサエチレンヘプタミン、シンナミルアミン、p―メトキシシンナミルアミンなどが挙げられる。
上記スルフィド類、メルカプト類としては、2,2′−ジチオジアニリン、ジピリジルジスルフィド、チオジグリコール酸、β−チオジグリコール、ビス(ドデカエチレングリコール)チオエーテル、1,2−ビス(2−ヒドロキシエチルチオ)エタン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエチルチオ)ブタン、チオグリコール、チオグリコール酸、メルカプトコハク酸などが挙げられる。
【0027】
本発明1の無電解スズ−銀合金メッキ浴には上述の成分以外に、目的に応じて界面活性剤、還元剤、隠蔽錯化剤、pH調整剤、緩衝剤、平滑剤、応力緩和剤、光沢剤、半光沢剤、酸化防止剤などのメッキ浴に通常使用される添加剤を混合できることは勿論である。
【0028】
上記還元剤は、前記金属塩の還元用、及びその析出速度や析出合金比率の調整用などに添加され、リン酸系化合物、アミンボラン類、水素化ホウ素化合物、ヒドラジン誘導体などを単用又は併用できる。
上記リン酸系化合物としては、次亜リン酸、亜リン酸、ピロリン酸、ポリリン酸、或はこれらのアンモニウム、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム等の塩が挙げられる。
上記アミンボラン類としては、ジメチルアミンボラン、トリメチルアミンボラン、イソプロピルアミンボラン、モルホリンボランなどが挙げられる。
上記水素化ホウ素化合物としては水素化ホウ素ナトリウムなどが挙げられる。 上記ヒドラジン誘導体としては、ヒドラジン水和物、メチルヒドラジン、フェニルヒドラジンなどが挙げられる。
上記還元剤の添加量は0.1〜200g/Lであり、好ましくは10〜150g/Lである。
【0029】
上記界面活性剤は、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン系界面活性剤、或はアニオン系界面活性剤が挙げられ、これら各種の活性剤を単用又は併用できる。
その添加量は0.01〜100g/L、好ましくは0.1〜50g/Lである。
【0030】
上記ノニオン系界面活性剤は、C1〜C20アルカノール、フェノール、ナフトール、ビスフェノール類、C1〜C25アルキルフェノール、アリールアルキルフェノール、C1〜C25アルキルナフトール、C1〜C25アルコキシル化リン酸(塩)、ソルビタンエステル、スチレン化フェノール、ポリアルキレングリコール、C1〜C22脂肪族アミン、C1〜C22脂肪族アミドなどにエチレンオキシド(EO)及び/又はプロピレンオキシド(PO)を2〜300モル付加縮合したものである。 従って、所定のアルカノール、フェノール、ナフトールなどのEO単独の付加物、PO単独の付加物、或は、EOとPOが共存した付加物のいずれでも良く、具体的には、α−ナフトール又はβ−ナフトールのエチレンオキシド付加物(即ち、α−ナフトールポリエトキシレートなど)が好ましい。
【0031】
エチレンオキシド(EO)及び/又はプロピレンオキシド(PO)を付加縮合させるC1〜C20アルカノールとしては、オクタノール、デカノール、ラウリルアルコール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、ステアリルアルコール、エイコサノール、セチルアルコール、オレイルアルコール、ドコサノールなどが挙げられる。
同じくビスフェノール類としては、ビスフェノールA、ビスフェノールB、ビスフェノールF、ビスフェノールSなどが挙げられる。
1〜C25アルキルフェノールとしては、モノ、ジ、若しくはトリアルキル置換フェノール、例えば、p−ブチルフェノール、p−イソオクチルフェノール、p−ノニルフェノール、p−ヘキシルフェノール、2,4−ジブチルフェノール、2,4,6−トリブチルフェノール、p−ドデシルフェノール、p−ラウリルフェノール、p−ステアリルフェノールなどが挙げられる。
アリールアルキルフェノールとしては、2−フェニルイソプロピルフェニルなどが挙げられる。
【0032】
1〜C25アルキルナフトールのアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチルヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、オクタデシルなどが挙げられ、ナフタレン核の任意の位置にあって良い。
1〜C25アルコキシル化リン酸(塩)は、下記の一般式(a)で表されるものである。
Ra・Rb・(MO)P=O …(a)
(式(a)中、Ra及びRbは同一又は異なるC1〜C25アルキル、但し、一方がHであっても良い。MはH又はアルカリ金属を示す。)
【0033】
ソルビタンエステルとしては、モノ、ジ又はトリエステル化した1,4−、1,5−又は3,6−ソルビタン、例えばソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンジステアレート、ソルビタンジオレエート、ソルビタン混合脂肪酸エステルなどが挙げられる。
1〜C22脂肪族アミンとしては、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミンなどの飽和及び不飽和脂肪酸アミンなどが挙げられる。
1〜C22脂肪族アミドとしては、プロピオン酸、酪酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸などのアミドが挙げられる。
【0034】
上記カチオン系界面活性剤としては、下記の一般式(b)で表される第4級アンモニウム塩
(R1・R2・R3・R4N)+・X- …(b)
(式(b)中、Xはハロゲン、ヒドロキシ、C1〜C5アルカンスルホン酸又は硫酸、R1、R2及びR3は同一又は異なるC1〜C20アルキル、R4はC1〜C10アルキル又はベンジルを示す。)
或は、下記の一般式(c)で表されるピリジニウム塩などが挙げられる。
6−(C55N−R5)+・X- …(c)
(式(c)中、C55Nはピリジン環、Xはハロゲン、ヒドロキシ、C1〜C5アルカンスルホン酸又は硫酸、R5はC1〜C20アルキル、R6はH又はC1〜C10アルキルを示す。)
【0035】
塩の形態のカチオン系界面活性剤の例としては、ラウリルトリメチルアンモニウム塩、ステアリルトリメチルアンモニウム塩、ラウリルジメチルエチルアンモニウム塩、オクタデシルジメチルエチルアンモニウム塩、ジメチルベンジルラウリルアンモニウム塩、セチルジメチルベンジルアンモニウム塩、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム塩、トリメチルベンジルアンモニウム塩、トリエチルベンジルアンモニウム塩、ヘキサデシルピリジニウム塩、ラウリルピリジニウム塩、ドデシルピリジニウム塩、ステアリルアミンアセテート、ラウリルアミンアセテート、オクタデシルアミンアセテートなどが挙げられる。
【0036】
上記アニオン系界面活性剤としては、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、(モノ、ジ、トリ)アルキルナフタレンスルホン酸塩などが挙げられる。アルキル硫酸塩としては、ラウリル硫酸ナトリウム、オレイル硫酸ナトリウムなどが挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩としては、ポリオキシエチレン(EO12)ノニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(EO15)ドデシルエーテル硫酸ナトリウムなどが挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩としては、ポリオキシエチレン(EO15)ノニルフェニルエーテル硫酸塩などが挙げられる。アルキルベンゼンスルホン酸塩としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。また、(モノ、ジ、トリ)アルキルナフタレンスルホン酸塩としては、ジブチルナフタレンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0037】
上記両性界面活性剤としては、カルボキシベタイン、イミダゾリンベタイン、スルホベタイン、アミノカルボン酸などが挙げられる。また、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドとアルキルアミン又はジアミンとの縮合生成物の硫酸化、或はスルホン酸化付加物も使用できる。
【0038】
代表的なカルボキシベタイン、或はイミダゾリンベタインとしては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ミリスチルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−ウンデシル−1−カルボキシメチル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、2−オクチル−1−カルボキシメチル−1−カルボキシエチルイミダゾリニウムベタインなどが挙げられ、硫酸化及びスルホン酸化付加物としてはエトキシル化アルキルアミンの硫酸付加物、スルホン酸化ラウリル酸誘導体ナトリウム塩などが挙げられる。
【0039】
上記スルホベタインとしては、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアンモニウム−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、N−ココイルメチルタウリンナトリウム、N−パルミトイルメチルタウリンナトリウムなどが挙げられる。
アミノカルボン酸としては、ジオクチルアミノエチルグリシン、N−ラウリルアミノプロピオン酸、オクチルジ(アミノエチル)グリシンナトリウム塩などが挙げられる。
【0040】
上記隠蔽錯化剤は浴の安定性向上を目的として使用され、銅などの被メッキ物の素地金属から溶出した不純物金属イオンのメッキ浴への悪影響を防止するものであり、具体的には、EDTA、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸(HEDTA)、イミノジ酢酸(IDA)、イミノジプロピオン酸(IDP)、ニトリロトリ酢酸(NTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、クエン酸、酒石酸、コハク酸、マロン酸、グリコール酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グリシン、ピロリン酸、トリポリリン酸、1−ヒドロキシエタン−1,1−ビスホスホン酸などが挙げられる。
【0041】
一方、上記本発明1では、無電解スズ−銀合金メッキにより下地皮膜を形成するが、本発明2では、無電解スズ−ビスマス合金メッキにより下地皮膜を形成する。
本発明2の下地皮膜の形成に用いる無電解スズ−ビスマス合金メッキ浴は、可溶性第一スズ塩と、可溶性ビスマス塩と、酸又はその塩と、錯化剤とを基本組成とする。
上記可溶性ビスマス塩は有機スルホン酸、無機酸の塩類であり、具体的には、メタンスルホン酸ビスマス、エタンスルホン酸ビスマス、p−フェノールスルホン酸ビスマス、硝酸ビスマス、塩化ビスマスなどが挙げられる。
可溶性ビスマス塩の金属塩換算の含有量は0.1〜200g/L、好ましくは1〜80g/Lである。
上記可溶性第一スズ塩、酸又はその塩は、前記無電解スズ−銀合金メッキ浴で使用するものと同様である。また、無電解スズ−ビスマス合金メッキ浴で用いる錯化剤には、前記無電解スズ−銀合金メッキと同様の錯化剤を使用でき、特に、チオ尿素類やアミノカルボン酸類が好ましい。
また、本発明2の無電解スズ−ビスマス合金メッキ浴には上述の基本成分以外に、目的に応じて界面活性剤、還元剤、隠蔽錯化剤、pH調整剤、緩衝剤、平滑剤、応力緩和剤、光沢剤、半光沢剤、酸化防止剤などの各種添加剤を混合できることは、本発明1の無電解スズ−銀合金メッキ浴と同様である。
【0042】
この無電解スズ−ビスマス合金メッキにより下地皮膜を形成する本発明2において、下地皮膜の膜厚、及び下地と上層の皮膜全体の膜厚の要件は無電解スズ−銀合金メッキを用いる前記本発明1の第一の特徴に係わる要件を満たせば良く、下地皮膜での銀の比率の要件は同本発明1の第二の特徴に係わる要件を満たせば良い。
また、無電解スズ−ビスマス合金メッキにより下地皮膜を形成する場合、無電解スズ−銀合金メッキによる場合と同じく、上層のスズ皮膜のホイスカーとピンホールをより良く防止する見地から、下地皮膜の膜厚Aと上層皮膜の膜厚Bとの比率要件(本発明4)、或は、下地と上層の皮膜全体での銀の重量比率の要件(本発明3)を満たすことが好ましい。
【0043】
本発明1の無電解スズ−銀合金メッキ浴、又は本発明2の無電解スズ−ビスマス合金メッキ浴を用いる場合、浴温は通常より低めの5℃〜60℃が好ましい。
上述の通り、本発明では、無電解スズ−銀合金又は無電解スズ−ビスマス合金の下地皮膜をごく薄い0.025〜0.5μmの厚みで形成すれば足りるので、浴温を高くしてメッキを厚付けする必要はない。
また、本発明の無電解メッキを適用する被メッキ物としては、本発明5に示すように、銅張り積層基板、チップ・オン・フィルム(COF)又はTABのフィルムキャリアが好適である。上記銅張り積層基板は、リジッドのプリント基板(PCB)、フレキシブル・プリント基板(FPC)、ボール・グリッド・アレイ(BGA)、チップ・サイズ・パッケージ(CSP)などをいう。
【実施例】
【0044】
以下、本発明の無電解メッキにより被メッキ物上に下地及び上層皮膜の2層メッキを施す実施例、当該実施例の皮膜形成による上層スズ皮膜でのピンホール及びスズホイスカーの発生防止に関する評価試験例を順次説明する。
上記実施例、試験例の「部」、「%」は基本的に重量基準である。
尚、本発明は下記の実施例、試験例に拘束されることなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意の変形をなし得ることは勿論である。
【0045】
《無電解メッキによる2層皮膜形成の実施例》
下記の実施例1〜12のうち、実施例1〜9は下地皮膜がスズ−銀合金皮膜の例、実施例10〜12は下地皮膜がスズ−ビスマス合金皮膜の例である。実施例4、6及び11は下地皮膜の膜厚が本発明の適正範囲の下限(0.025μm)に近い例である。実施例7は下地と上層の皮膜全体の膜厚が本発明の適正範囲の下限(0.1μm)に近い例である。実施例8は下地皮膜での銀比率が本発明の適正範囲の下限(5%)に近い例である。実施例9は下地と上層の皮膜全体での銀比率が本発明3に示す好ましい範囲の上限(50%)より多い例、その他の実施例はすべて当該好ましい範囲内の例である。
一方、下記の比較例1〜4のうち、比較例1は下地皮膜が純粋の銀皮膜の例である。比較例2はスズ−銀合金からなる下地皮膜の銀の比率が本発明の適正範囲の上限(90%)を越える例である。比較例3は同下地皮膜の銀の比率が本発明の適正範囲の下限(5%)より少ない例である。比較例4は下地皮膜の膜厚が本発明の適正範囲の下限(0.025μm)より薄い例である。
【0046】
(1)実施例1
COF(Chip on Film;ESPANEX;新日鐵化学社製)を被メッキ物として、下記(イ)に示す通り、被メッキ物上に無電解スズ−銀合金メッキによりスズ−銀合金皮膜の下地層を形成したのち、下記(ロ)に示す通り、前記下地層の上に無電解スズメッキによりスズ皮膜(上層)を形成した。
(イ)無電解スズ−銀合金メッキによる下地層の形成
下記(a)の組成の無電解スズ−銀合金メッキ浴を建浴し、下記(b)の条件で被メッキ物上に下記(c)のスズ−銀合金メッキ皮膜(下地層)を形成した。
(a)無電解スズ−銀合金メッキ浴
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) :0.35モル/L
メタンスルホン酸銀(Ag+として) :0.005モル/L
メタンスルホン酸 :0.30モル/L
チオ尿素 :1.40モル/L
次亜リン酸 :0.75モル/L
ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(EO10モル) :15.0g/L
(b)浸漬条件
メッキ浴温:30℃
メッキ時間:45秒
(c)下地層
スズ−銀合金皮膜の膜厚:0.08μm
スズ−銀合金皮膜の銀比率:46.1%
(ロ)無電解スズメッキによる上層の形成
下記(d)の組成の無電解スズメッキ浴を建浴して、下記(e)の条件で下地層の上にスズメッキ皮膜(上層)を形成した。下記(f)には下地と上層の皮膜全体の膜厚及び銀の比率を示す。
(d)無電解スズメッキ浴による上層の形成
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) :0.30モル/L
メタンスルホン酸 :1.00モル/L
フェノールスルホン酸 :0.50モル/L
チオ尿素 :2.00モル/L
次亜リン酸 :0.50モル/L
ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル(EO8モル) :10.0g/L
(e)メッキ条件
メッキ浴温:65℃
メッキ時間:15分
(f)上層
下地層と上層の皮膜全体の膜厚:1.15μm
下地層と上層の皮膜全体での銀比率:2.3%
【0047】
(2)実施例2
COF(Chip on Film;ESPANEX;新日鐵化学社製)を被メッキ物として、下記(イ)に示す通り、被メッキ物上に無電解スズ−銀合金メッキによりスズ−銀合金皮膜の下地層を形成したのち、下記(ロ)に示す通り、前記下地層の上に無電解スズメッキによりスズ皮膜(上層)を形成した。
(イ)無電解スズ−銀合金メッキによる下地層の形成
下記(a)の組成の無電解スズ−銀合金メッキ浴を建浴し、下記(b)の条件で被メッキ物上に下記(c)のスズ−銀合金メッキ皮膜(下地層)を形成した。
(a)無電解スズ−銀合金メッキ浴
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) :0.35モル/L
メタンスルホン酸銀(Ag+として) :0.007モル/L
p−フェノールスルホン酸 :0.10モル/L
メタンスルホン酸 :0.20モル/L
チオ尿素 :1.40モル/L
次亜リン酸 :0.75モル/L
ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(EO10モル) :15.0g/L
(b)浸漬条件
メッキ浴温:30℃
メッキ時間:45秒
(c)下地層
スズ−銀合金皮膜の膜厚:0.11μm
スズ−銀合金皮膜の銀比率:49.8%
(ロ)無電解スズメッキによる上層の形成
下記(d)の組成の無電解スズメッキ浴を建浴して、下記(e)の条件で下地層の上にスズメッキ皮膜(上層)を形成した。下記(f)には下地と上層の皮膜全体の膜厚及び銀の比率を示す。
(d)無電解スズメッキ浴による上層の形成
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) :0.35モル/L
メタンスルホン酸 :0.50モル/L
2−ヒドロキシエタンスルホン酸 :1.00モル/L
チオ尿素 :2.30モル/L
次亜リン酸 :0.50モル/L
ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル(EO8モル) :15.0g/L
(e)メッキ条件
メッキ浴温:65℃
メッキ時間:15分
(f)上層
下地層と上層の皮膜全体の膜厚:1.30μm
下地層と上層の皮膜全体での銀比率:1.7%
【0048】
(3)実施例3
COF(Chip on Film;ESPANEX;新日鐵化学社製)を被メッキ物として、下記(イ)に示す通り、被メッキ物上に無電解スズ−銀合金メッキによりスズ−銀合金皮膜の下地層を形成したのち、下記(ロ)に示す通り、前記下地層の上に無電解スズメッキによりスズ皮膜(上層)を形成した。
(イ)無電解スズ−銀合金メッキによる下地層の形成
下記(a)の組成の無電解スズ−銀合金メッキ浴を建浴し、下記(b)の条件で被メッキ物上に下記(c)のスズ−銀合金メッキ皮膜(下地層)を形成した。
(a)無電解スズ−銀合金メッキ浴
2−ヒドロキシエタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) :0.25モル/L
メタンスルホン酸銀(Ag+として) :0.006モル/L
2−ヒドロキシエタンスルホン酸 :0.40モル/L
チオ尿素 :1.40モル/L
次亜リン酸 :0.75モル/L
ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(EO10モル) :15.0g/L
(b)浸漬条件
メッキ浴温:30℃
メッキ時間:45秒
(c)下地層
スズ−銀合金皮膜の膜厚:0.15μm
スズ−銀合金皮膜の銀比率:52.6%
(ロ)無電解スズメッキによる上層の形成
下記(d)の組成の無電解スズメッキ浴を建浴して、下記(e)の条件で下地層の上にスズメッキ皮膜(上層)を形成した。下記(f)には下地と上層の皮膜全体の膜厚及び銀の比率を示す。
(d)無電解スズメッキ浴による上層の形成
2−ヒドロキシエタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) :0.40モル/L
2−ヒドロキシエタンスルホン酸 :1.00モル/L
チオ尿素 :2.60モル/L
次亜リン酸 :0.50モル/L
ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(EO12モル) :12.0g/L
(e)メッキ条件
メッキ浴温:65℃
メッキ時間:15分
(f)上層
下地層と上層の皮膜全体の膜厚:1.50μm
下地層と上層の皮膜全体での銀比率:2.8%
【0049】
(4)実施例4
COF(Chip on Film;ESPANEX;新日鐵化学社製)を被メッキ物として、下記(イ)に示す通り、被メッキ物上に無電解スズ−銀合金メッキによりスズ−銀合金皮膜の下地層を形成したのち、下記(ロ)に示す通り、前記下地層の上に無電解スズメッキによりスズ皮膜(上層)を形成した。
(イ)無電解スズ−銀合金メッキによる下地層の形成
下記(a)の組成の無電解スズ−銀合金メッキ浴を建浴し、下記(b)の条件で被メッキ物上に下記(c)のスズ−銀合金メッキ皮膜(下地層)を形成した。
(a)無電解スズ−銀合金メッキ浴
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) :0.35モル/L
メタンスルホン酸銀(Ag+として) :0.004モル/L
メタンスルホン酸 :0.30モル/L
チオ尿素 :1.40モル/L
次亜リン酸 :0.75モル/L
ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(EO10モル) :15.0g/L
(b)浸漬条件
メッキ浴温:30℃
メッキ時間:45秒
(c)下地層
スズ−銀合金皮膜の膜厚:0.06μm
スズ−銀合金皮膜の銀比率:32.5%
(ロ)無電解スズメッキによる上層の形成
下記(d)の組成の無電解スズメッキ浴を建浴して、下記(e)の条件で下地層の上にスズメッキ皮膜(上層)を形成した。下記(f)には下地と上層の皮膜全体の膜厚及び銀の比率を示す。
(d)無電解スズメッキ浴による上層の形成
2−ヒドロキシエタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) :0.35モル/L
2−ヒドロキシエタンスルホン酸 :1.30モル/L
チオ尿素 :2.00モル/L
次亜リン酸 :0.50モル/L
ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(EO12モル) :12.0g/L
(e)メッキ条件
メッキ浴温:65℃
メッキ時間:15分
(f)上層
下地層と上層の皮膜全体の膜厚:1.25μm
下地層と上層の皮膜全体での銀比率:2.1%
【0050】
(5)実施例5
COF(Chip on Film;ESPANEX;新日鐵化学社製)を被メッキ物として、下記(イ)に示す通り、被メッキ物上に無電解スズ−銀合金メッキによりスズ−銀合金皮膜の下地層を形成したのち、下記(ロ)に示す通り、前記下地層の上に無電解スズメッキによりスズ皮膜(上層)を形成した。
(イ)無電解スズ−銀合金メッキによる下地層の形成
下記(a)の組成の無電解スズ−銀合金メッキ浴を建浴し、下記(b)の条件で被メッキ物上に下記(c)のスズ−銀合金メッキ皮膜(下地層)を形成した。
(a)無電解スズ−銀合金メッキ浴
2−ヒドロキシエタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) :0.35モル/L
メタンスルホン酸銀(Ag+として) :0.006モル/L
2−ヒドロキシエタンスルホン酸 :0.30モル/L
チオ尿素 :1.40モル/L
次亜リン酸 :0.75モル/L
ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(EO10モル) :15.0g/L
(b)浸漬条件
メッキ浴温:30℃
メッキ時間:45秒
(c)下地層
スズ−銀合金皮膜の膜厚:0.09μm
スズ−銀合金皮膜の銀比率:45.8%
(ロ)無電解スズメッキによる上層の形成
下記(d)の組成の無電解スズメッキ浴を建浴して、下記(e)の条件で下地層の上にスズメッキ皮膜(上層)を形成した。下記(f)には下地と上層の皮膜全体の膜厚及び銀の比率を示す。
(d)無電解スズメッキ浴による上層の形成
2−ヒドロキシエタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) :0.30モル/L
2−ヒドロキシエタンスルホン酸 :1.30モル/L
チオ尿素 :2.50モル/L
次亜リン酸 :0.70モル/L
ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(EO10モル) :15.0g/L
(e)メッキ条件
メッキ浴温:65℃
メッキ時間:15分
(f)上層
下地層と上層の皮膜全体の膜厚:1.56μm
下地層と上層の皮膜全体での銀比率:2.7%
【0051】
(6)実施例6
COF(Chip on Film;ESPANEX;新日鐵化学社製)を被メッキ物として、下記(イ)に示す通り、被メッキ物上に無電解スズ−銀合金メッキによりスズ−銀合金皮膜の下地層を形成したのち、下記(ロ)に示す通り、前記下地層の上に無電解スズメッキによりスズ皮膜(上層)を形成した。
(イ)無電解スズ−銀合金メッキによる下地層の形成
下記(a)の組成の無電解スズ−銀合金メッキ浴を建浴し、下記(b)の条件で被メッキ物上に下記(c)のスズ−銀合金メッキ皮膜(下地層)を形成した。
(a)無電解スズ−銀合金メッキ浴
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) :0.35モル/L
メタンスルホン酸銀(Ag+として) :0.004モル/L
メタンスルホン酸 :0.30モル/L
チオ尿素 :1.40モル/L
次亜リン酸 :0.75モル/L
ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(EO10モル) :15.0g/L
(b)浸漬条件
メッキ浴温:30℃
メッキ時間:20秒
(c)下地層
スズ−銀合金皮膜の膜厚:0.06μm
スズ−銀合金皮膜の銀比率:30.7%
(ロ)無電解スズメッキによる上層の形成
下記(d)の組成の無電解スズメッキ浴を建浴して、下記(e)の条件で下地層の上にスズメッキ皮膜(上層)を形成した。下記(f)には下地と上層の皮膜全体の膜厚及び銀の比率を示す。
(d)無電解スズメッキ浴による上層の形成
2−ヒドロキシエタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) :0.35モル/L
2−ヒドロキシエタンスルホン酸 :1.30モル/L
チオ尿素 :1.50モル/L
次亜リン酸 :0.50モル/L
ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(EO12モル) :12.0g/L
(e)メッキ条件
メッキ浴温:65℃
メッキ時間:3分
(f)上層
下地層と上層の皮膜全体の膜厚:0.35μm
下地層と上層の皮膜全体での銀比率:4.3%
【0052】
(7)実施例7
COF(Chip on Film;ESPANEX;新日鐵化学社製)を被メッキ物として、下記(イ)に示す通り、被メッキ物上に無電解スズ−銀合金メッキによりスズ−銀合金皮膜の下地層を形成したのち、下記(ロ)に示す通り、前記下地層の上に無電解スズメッキによりスズ皮膜(上層)を形成した。
(イ)無電解スズ−銀合金メッキによる下地層の形成
下記(a)の組成の無電解スズ−銀合金メッキ浴を建浴し、下記(b)の条件で被メッキ物上に下記(c)のスズ−銀合金メッキ皮膜(下地層)を形成した。
(a)無電解スズ−銀合金メッキ浴
2−ヒドロキシエタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) :0.35モル/L
メタンスルホン酸銀(Ag+として) :0.005モル/L
2−ヒドロキシエタンスルホン酸 :0.30モル/L
チオ尿素 :1.40モル/L
次亜リン酸 :0.75モル/L
ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(EO10モル) :15.0g/L
(b)浸漬条件
メッキ浴温:30℃
メッキ時間:20秒
(c)下地層
スズ−銀合金皮膜の膜厚:0.07μm
スズ−銀合金皮膜の銀比率:28.2%
(ロ)無電解スズメッキによる上層の形成
下記(d)の組成の無電解スズメッキ浴を建浴して、下記(e)の条件で下地層の上にスズメッキ皮膜(上層)を形成した。下記(f)には下地と上層の皮膜全体の膜厚及び銀の比率を示す。
(d)無電解スズメッキ浴による上層の形成
2−ヒドロキシエタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) :0.35モル/L
2−ヒドロキシエタンスルホン酸 :1.30モル/L
チオ尿素 :1.50モル/L
次亜リン酸 :0.50モル/L
ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(EO12モル) :12.0g/L
(e)メッキ条件
メッキ浴温:65℃
メッキ時間:3分
(f)上層
下地層と上層の皮膜全体の膜厚:0.30μm
下地層と上層の皮膜全体での銀比率:3.7%
【0053】
(8)実施例8
COF(Chip on Film;ESPANEX;新日鐵化学社製)を被メッキ物として、下記(イ)に示す通り、被メッキ物上に無電解スズ−銀合金メッキによりスズ−銀合金皮膜の下地層を形成したのち、下記(ロ)に示す通り、前記下地層の上に無電解スズメッキによりスズ皮膜(上層)を形成した。
(イ)無電解スズ−銀合金メッキによる下地層の形成
下記(a)の組成の無電解スズ−銀合金メッキ浴を建浴し、下記(b)の条件で被メッキ物上に下記(c)のスズ−銀合金メッキ皮膜(下地層)を形成した。
(a)無電解スズ−銀合金メッキ浴
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) :0.35モル/L
メタンスルホン酸銀(Ag+として) :0.005モル/L
メタンスルホン酸 :0.30モル/L
チオ尿素 :1.40モル/L
次亜リン酸 :0.75モル/L
ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(EO10モル) :15.0g/L
(b)浸漬条件
メッキ浴温:30℃
メッキ時間:45秒
(c)下地層
スズ−銀合金皮膜の膜厚:0.08μm
スズ−銀合金皮膜の銀比率:10.1%
(ロ)無電解スズメッキによる上層の形成
下記(d)の組成の無電解スズメッキ浴を建浴して、下記(e)の条件で下地層の上にスズメッキ皮膜(上層)を形成した。下記(f)には下地と上層の皮膜全体の膜厚及び銀の比率を示す。
(d)無電解スズメッキ浴による上層の形成
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) :0.30モル/L
メタンスルホン酸 :1.00モル/L
フェノールスルホン酸 :0.50モル/L
チオ尿素 :2.00モル/L
次亜リン酸 :0.50モル/L
ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル(EO8モル) :10.0g/L
(e)メッキ条件
メッキ浴温:65℃
メッキ時間:5分
(f)上層
下地層と上層の皮膜全体の膜厚:0.85μm
下地層と上層の皮膜全体での銀比率:1.1%
【0054】
(9)実施例9
COF(Chip on Film;ESPANEX;新日鐵化学社製)を被メッキ物として、下記(イ)に示す通り、被メッキ物上に無電解スズ−銀合金メッキによりスズ−銀合金皮膜の下地層を形成したのち、下記(ロ)に示す通り、前記下地層の上に無電解スズメッキによりスズ皮膜(上層)を形成した。
(イ)無電解スズ−銀合金メッキによる下地層の形成
下記(a)の組成の無電解スズ−銀合金メッキ浴を建浴し、下記(b)の条件で被メッキ物上に下記(c)のスズ−銀合金メッキ皮膜(下地層)を形成した。
(a)無電解スズ−銀合金メッキ浴
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) :0.35モル/L
メタンスルホン酸銀(Ag+として) :0.015モル/L
メタンスルホン酸 :0.30モル/L
チオ尿素 :1.40モル/L
次亜リン酸 :0.75モル/L
ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(EO10モル) :15.0g/L
(b)浸漬条件
メッキ浴温:50℃
メッキ時間:120秒
(c)下地層
スズ−銀合金皮膜の膜厚:0.25μm
スズ−銀合金皮膜の銀比率:80.5%
(ロ)無電解スズメッキによる上層の形成
下記(d)の組成の無電解スズメッキ浴を建浴して、下記(e)の条件で下地層の上にスズメッキ皮膜(上層)を形成した。下記(f)には下地と上層の皮膜全体の膜厚及び銀の比率を示す。
(d)無電解スズメッキ浴による上層の形成
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) :0.30モル/L
メタンスルホン酸 :1.00モル/L
フェノールスルホン酸 :0.50モル/L
チオ尿素 :2.00モル/L
次亜リン酸 :0.50モル/L
ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル(EO8モル) :10.0g/L
(e)メッキ条件
メッキ浴温:65℃
メッキ時間:3分
(f)上層
下地層と上層の皮膜全体の膜厚:0.61μm
下地層と上層の皮膜全体での銀比率:55.3%
【0055】
(10)実施例10
COF(Chip on Film;ESPANEX;新日鐵化学社製)を被メッキ物として、下記(イ)に示す通り、被メッキ物上に無電解スズ−銀合金メッキによりスズ−銀合金皮膜の下地層を形成したのち、下記(ロ)に示す通り、前記下地層の上に無電解スズメッキによりスズ皮膜(上層)を形成した。
(イ)無電解スズ−ビスマス合金メッキによる下地層の形成
下記(a)の組成の無電解スズ−銀合金メッキ浴を建浴し、下記(b)の条件で被メッキ物上に下記(c)のスズ−銀合金メッキ皮膜(下地層)を形成した。
(a)無電解スズ−銀合金メッキ浴
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) :0.35モル/L
メタンスルホン酸ビスマス(Bi3+として) :0.015モル/L
メタンスルホン酸 :0.30モル/L
チオ尿素 :1.40モル/L
次亜リン酸 :0.75モル/L
ジエチレントリアミン五酢酸 :0.08モル/L
ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(EO10モル) :15.0g/L
(b)浸漬条件
メッキ浴温:30℃
メッキ時間:45秒
(c)下地層
スズ−ビスマス合金皮膜の膜厚:0.10μm
スズ−ビスマス合金皮膜のビスマス比率:34.5%
(ロ)無電解スズメッキによる上層の形成
下記(d)の組成の無電解スズメッキ浴を建浴して、下記(e)の条件で下地層の上にスズメッキ皮膜(上層)を形成した。下記(f)には下地と上層の皮膜全体の膜厚及び銀の比率を示す。
(d)無電解スズメッキ浴による上層の形成
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) :0.30モル/L
メタンスルホン酸 :1.00モル/L
フェノールスルホン酸 :0.50モル/L
チオ尿素 :2.00モル/L
次亜リン酸 :0.50モル/L
ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル(EO8モル) :10.0g/L
(e)メッキ条件
メッキ浴温:65℃
メッキ時間:15分
(f)上層
下地層と上層の皮膜全体の膜厚:1.08μm
下地層と上層の皮膜全体でのビスマス比率:1.3%
【0056】
(11)実施例11
COF(Chip on Film;ESPANEX;新日鐵化学社製)を被メッキ物として、下記(イ)に示す通り、被メッキ物上に無電解スズ−銀合金メッキによりスズ−銀合金皮膜の下地層を形成したのち、下記(ロ)に示す通り、前記下地層の上に無電解スズメッキによりスズ皮膜(上層)を形成した。
(イ)無電解スズ−ビスマス合金メッキによる下地層の形成
下記(a)の組成の無電解スズ−銀合金メッキ浴を建浴し、下記(b)の条件で被メッキ物上に下記(c)のスズ−銀合金メッキ皮膜(下地層)を形成した。
(a)無電解スズ−銀合金メッキ浴
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) :0.25モル/L
メタンスルホン酸ビスマス(Bi3+として) :0.015モル/L
メタンスルホン酸 :0.30モル/L
チオ尿素 :1.40モル/L
次亜リン酸 :0.75モル/L
ジエチレントリアミン五酢酸 :0.08モル/L
ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(EO10モル) :15.0g/L
(b)浸漬条件
メッキ浴温:30℃
メッキ時間:45秒
(c)下地層
スズ−ビスマス合金皮膜の膜厚:0.06μm
スズ−ビスマス合金皮膜のビスマス比率:45.8%
(ロ)無電解スズメッキによる上層の形成
下記(d)の組成の無電解スズメッキ浴を建浴して、下記(e)の条件で下地層の上にスズメッキ皮膜(上層)を形成した。下記(f)には下地と上層の皮膜全体の膜厚及び銀の比率を示す。
(d)無電解スズメッキ浴による上層の形成
2−ヒドロキシエタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) :0.30モル/L
2−ヒドロキシエタンスルホン酸 :1.30モル/L
チオ尿素 :2.50モル/L
次亜リン酸 :0.70モル/L
ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(EO12モル) :12.0g/L
(e)メッキ条件
メッキ浴温:65℃
メッキ時間:15分
(f)上層
下地層と上層の皮膜全体の膜厚:1.05μm
下地層と上層の皮膜全体でのビスマス比率:1.5%
【0057】
(12)実施例12
COF(Chip on Film;ESPANEX;新日鐵化学社製)を被メッキ物として、下記(イ)に示す通り、被メッキ物上に無電解スズ−銀合金メッキによりスズ−銀合金皮膜の下地層を形成したのち、下記(ロ)に示す通り、前記下地層の上に無電解スズメッキによりスズ皮膜(上層)を形成した。
(イ)無電解スズ−銀合金メッキによる下地層の形成
下記(a)の組成の無電解スズ−銀合金メッキ浴を建浴し、下記(b)の条件で被メッキ物上に下記(c)のスズ−銀合金メッキ皮膜(下地層)を形成した。
(a)無電解スズ−銀合金メッキ浴
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) :0.35モル/L
メタンスルホン酸ビスマス(Bi3+として) :0.015モル/L
メタンスルホン酸 :0.30モル/L
チオ尿素 :1.40モル/L
次亜リン酸 :0.75モル/L
ジエチレントリアミン五酢酸 :0.08モル/L
ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(EO10モル) :15.0g/L
(b)浸漬条件
メッキ浴温:30℃
メッキ時間:45秒
(c)下地層
スズ−銀合金皮膜の膜厚:0.08μm
スズ−銀合金皮膜のビスマス比率:38.2%
(ロ)無電解スズメッキによる上層の形成
下記(d)の組成の無電解スズメッキ浴を建浴して、下記(e)の条件で下地層の上にスズメッキ皮膜(上層)を形成した。下記(f)には下地と上層の皮膜全体の膜厚及び銀の比率を示す。
(d)無電解スズメッキ浴による上層の形成
2−ヒドロキシエタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) :0.30モル/L
2−ヒドロキシエタンスルホン酸 :1.30モル/L
チオ尿素 :2.50モル/L
次亜リン酸 :0.70モル/L
ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(EO12モル) :12.0g/L
(e)メッキ条件
メッキ浴温:65℃
メッキ時間:15分
(f)上層
下地層と上層の皮膜全体の膜厚:1.11μm
下地層と上層の皮膜全体でのビスマス比率:1.8%
【0058】
(13)比較例1
COF(Chip on Film;ESPANEX;新日鐵化学社製)を被メッキ物として、下記(イ)に示す通り、被メッキ物上に無電解銀メッキにより銀皮膜の下地層を形成したのち、下記(ロ)に示す通り、前記下地層の上に無電解スズメッキによりスズ皮膜(上層)を形成した。
(イ)無電解銀メッキによる下地層の形成
下記(a)の組成の無電解銀メッキ浴を建浴し、下記(b)の条件で被メッキ物上に下記(c)の銀メッキ皮膜(下地層)を形成した。
(a)無電解銀メッキ浴
メタンスルホン酸銀(Ag+として) :0.06モル/L
メタンスルホン酸 :1.00モル/L
チオ尿素 :0.30モル/L
ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(EO10モル) :5.0g/L
(b)浸漬条件
メッキ浴温:50℃
メッキ時間:60秒
(c)下地層
銀皮膜の膜厚:0.10μm
(ロ)無電解スズメッキによる上層の形成
下記(d)の組成の無電解スズメッキ浴を建浴して、下記(e)の条件で下地層の上にスズメッキ皮膜(上層)を形成した。下記(f)には下地と上層の皮膜全体の膜厚及び銀の比率を示す。
(d)無電解スズメッキ浴による上層の形成
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) :0.30モル/L
メタンスルホン酸 :1.00モル/L
フェノールスルホン酸 :0.50モル/L
チオ尿素 :2.00モル/L
次亜リン酸 :0.50モル/L
ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル(EO8モル) :10.0g/L
(e)メッキ条件
メッキ浴温:65℃
メッキ時間:15分
(f)上層
下地層と上層の皮膜全体の膜厚:1.23μm
下地層と上層の皮膜全体での銀比率:1.3%
【0059】
(14)比較例2
COF(Chip on Film;ESPANEX;新日鐵化学社製)を被メッキ物として、下記(イ)に示す通り、被メッキ物上に無電解スズ−銀合金メッキによりスズ−銀合金皮膜の下地層を形成したのち、下記(ロ)に示す通り、前記下地層の上に無電解スズメッキによりスズ皮膜(上層)を形成した。
(イ)無電解スズ−銀合金メッキによる下地層の形成
下記(a)の組成の無電解スズ−銀合金メッキ浴を建浴し、下記(b)の条件で被メッキ物上に下記(c)のスズ−銀合金メッキ皮膜(下地層)を形成した。
(a)無電解スズ−銀合金メッキ浴
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) :0.15モル/L
メタンスルホン酸銀(Ag+として) :0.05モル/L
メタンスルホン酸 :1.50モル/L
チオ尿素 :2.00モル/L
次亜リン酸 :0.75モル/L
ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(EO10モル) :15.0g/L
(b)浸漬条件
メッキ浴温:30℃
メッキ時間:45秒
(c)下地層
スズ−銀合金皮膜の膜厚:0.06μm
スズ−銀合金皮膜の銀比率:98.1%
(ロ)無電解スズメッキによる上層の形成
下記(d)の組成の無電解スズメッキ浴を建浴して、下記(e)の条件で下地層の上にスズメッキ皮膜(上層)を形成した。下記(f)には下地と上層の皮膜全体の膜厚及び銀の比率を示す。
(d)無電解スズメッキ浴による上層の形成
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) :0.30モル/L
メタンスルホン酸 :1.00モル/L
フェノールスルホン酸 :0.50モル/L
チオ尿素 :2.00モル/L
次亜リン酸 :0.50モル/L
ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル(EO8モル) :10.0g/L
(e)メッキ条件
メッキ浴温:65℃
メッキ時間:15分
(f)上層
下地層と上層の皮膜全体の膜厚:1.25μm
下地層と上層の皮膜全体での銀比率:1.8%
【0060】
(15)比較例3
COF(Chip on Film;ESPANEX;新日鐵化学社製)を被メッキ物として、下記(イ)に示す通り、被メッキ物上に無電解スズ−銀合金メッキによりスズ−銀合金皮膜の下地層を形成したのち、下記(ロ)に示す通り、前記下地層の上に無電解スズメッキによりスズ皮膜(上層)を形成した。
(イ)無電解スズ−銀合金メッキによる下地層の形成
下記(a)の組成の無電解スズ−銀合金メッキ浴を建浴し、下記(b)の条件で被メッキ物上に下記(c)のスズ−銀合金メッキ皮膜(下地層)を形成した。
(a)無電解スズ−銀合金メッキ浴
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) :0.35モル/L
メタンスルホン酸銀(Ag+として) :0.003モル/L
メタンスルホン酸 :1.50モル/L
チオ尿素 :2.00モル/L
次亜リン酸 :0.75モル/L
ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(EO10モル) :15.0g/L
(b)浸漬条件
メッキ浴温:30℃
メッキ時間:45秒
(c)下地層
スズ−銀合金皮膜の膜厚:0.11μm
スズ−銀合金皮膜の銀比率:2.8%
(ロ)無電解スズメッキによる上層の形成
下記(d)の組成の無電解スズメッキ浴を建浴して、下記(e)の条件で下地層の上にスズメッキ皮膜(上層)を形成した。下記(f)には下地と上層の皮膜全体の膜厚及び銀の比率を示す。
(d)無電解スズメッキ浴による上層の形成
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) :0.30モル/L
メタンスルホン酸 :1.00モル/L
フェノールスルホン酸 :0.50モル/L
チオ尿素 :2.00モル/L
次亜リン酸 :0.50モル/L
ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル(EO8モル) :10.0g/L
(e)メッキ条件
メッキ浴温:65℃
メッキ時間:15分
(f)上層
下地層と上層の皮膜全体の膜厚:1.30μm
下地層と上層の皮膜全体での銀比率:0.09%
【0061】
(16)比較例4
COF(Chip on Film;ESPANEX;新日鐵化学社製)を被メッキ物として、下記(イ)に示す通り、被メッキ物上に無電解スズ−銀合金メッキによりスズ−銀合金皮膜の下地層を形成したのち、下記(ロ)に示す通り、前記下地層の上に無電解スズメッキによりスズ皮膜(上層)を形成した。
(イ)無電解スズ−銀合金メッキによる下地層の形成
下記(a)の組成の無電解スズ−銀合金メッキ浴を建浴し、下記(b)の条件で被メッキ物上に下記(c)のスズ−銀合金メッキ皮膜(下地層)を形成した。
(a)無電解スズ−銀合金メッキ浴
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) :0.35モル/L
メタンスルホン酸銀(Ag+として) :0.005モル/L
メタンスルホン酸 :0.30モル/L
チオ尿素 :1.40モル/L
次亜リン酸 :0.75モル/L
ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(EO10モル) :15.0g/L
(b)浸漬条件
メッキ浴温:30℃
メッキ時間:3秒
(c)下地層
スズ−銀合金皮膜の膜厚:0.02μm
スズ−銀合金皮膜の銀比率:33.3%
(ロ)無電解スズメッキによる上層の形成
下記(d)の組成の無電解スズメッキ浴を建浴して、下記(e)の条件で下地層の上にスズメッキ皮膜(上層)を形成した。下記(f)には下地と上層の皮膜全体の膜厚及び銀の比率を示す。
(d)無電解スズメッキ浴による上層の形成
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) :0.30モル/L
メタンスルホン酸 :1.00モル/L
フェノールスルホン酸 :0.50モル/L
チオ尿素 :2.00モル/L
次亜リン酸 :0.50モル/L
ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル(EO8モル) :10.0g/L
(e)メッキ条件
メッキ浴温:65℃
メッキ時間:15分
(f)上層
下地層と上層の皮膜全体の膜厚:1.38μm
下地層と上層の皮膜全体での銀比率:1.1%
【0062】
《上層のスズ皮膜の評価試験例》
以上の通り、上記実施例1〜12及び比較例1〜4では、無電解メッキにより下地皮膜の上層に各スズ皮膜を形成したが、この上層のスズ皮膜について、ピンホールの発生防止性能、並びにスズホイスカーの発生防止性能を次の要領で評価した。
(1)ピンホール発生防止性能
走査型電子顕微鏡を用いて、形成直後の上層スズ皮膜表面を微視観察し、次の基準でピンホールの発生防止性能の優劣を評価した。
○:上層スズ皮膜にピンホールは発生しなかった。
×:上層スズ皮膜にピンホールが発生した。
【0063】
(2)スズホイスカーの発生防止性能
走査型電子顕微鏡を用いて、形成直後の上層皮膜表面にホイスカーの発生がない状態を確認したうえで、室温下で500時間放置した後、試料の同一視認部位を微視観察して、次の基準でホイスカーの発生防止性能の優劣を評価した。
○:同一視認部位でのホイスカーの発生本数はゼロであった。
×:同視認部位に長さ5μm以上のホイスカーが見い出された。
【0064】
下表はその試験結果である。
ピンホール防止性 ホイスカー防止性
実施例1 ○ ○
実施例2 ○ ○
実施例3 ○ ○
実施例4 ○ ○
実施例5 ○ ○
実施例6 ○ ○
実施例7 ○ ○
実施例8 ○ ○
実施例9 ○ ○
実施例10 ○ ○
実施例11 ○ ○
実施例12 ○ ○
比較例1 × ○
比較例2 × ○
比較例3 ○ ×
比較例4 ○ ×
【0065】
上表を見ると、下地皮膜が純粋の銀皮膜である比較例1では、上層のスズ皮膜にホイスカーの発生は認められなかったが、ピンホールが発生し、ハンダ付けに際してハンダ濡れ性や接合強度を損なう恐れがあることが明らかになった。
これに対して、下地層をスズ−銀合金皮膜にした実施例1〜12では、上層のスズ皮膜にホイスカー及びピンホールは発生しなかった。
これにより、上層のスズ皮膜にピンホールを発生させることなく、スズホイスカーを良好に防止するためには、下地層に銀皮膜ではなくスズ−銀合金皮膜を形成する必要性が確認できた。
【0066】
また、スズ−銀合金皮膜を下地層とした場合でも、下地皮膜の銀比率が本発明の適正範囲の上限(90%)を越える比較例2では、やはり上記比較例1と同様に、上層のスズ皮膜にピンホールが発生した。逆に、下地皮膜の銀比率が同適正範囲の下限(5%)より少ない比較例3では、上層のスズ皮膜にピンホールは認められなかったが、スズホイスカーが発生した。
従って、上層のスズ皮膜においてピンホール及びホイスカーの発生を防止するには、下地層をスズ−銀合金皮膜にするだけでは充分でなく、下地層の銀の比率を本発明の適正範囲内に特定化することの必要性が確認できた。
【0067】
一方、下地層のスズ−銀合金皮膜の銀比率が本発明の適正範囲内にあっても、下地層の膜厚が本発明の適正範囲の下限(0.025μm)より薄い比較例4では、やはり上記比較例3と同じく、上層のスズ皮膜にホイスカーが発生した。
従って、上層のスズ皮膜においてピンホール及びホイスカーの発生を防止するには、下地層(スズ−銀合金皮膜)の銀の比率を本発明の適正範囲に特定化することに加えて、下地層の膜厚を所定の膜厚以上に制御することの必要性が明らかになった。尚、下地層の膜厚は実施例1〜12に見るように、0.5μm以下のごく薄い場合でもホイスカー発生の防止を良好に担保できる。
【0068】
次いで、実施例1〜12を詳細に検討するに、下地層の種類がスズ−銀合金皮膜(実施例1〜9)、或はスズ−ビスマス合金皮膜(実施例10〜12)のいずれの場合でも、上層のスズ皮膜のホイスカーとピンホールの発生を防止することができる。この場合、下地層の膜厚、及び下地と上層の皮膜全体の膜厚が本発明の適正範囲内で変化しても、或は、下地層の銀の比率が本発明の適正範囲内で変化しても、ホイスカー防止性能とピンホール防止性能を良好に担保できることが分かる。
特に、実施例8に見るように、銀の比率が10%と少ないスズ−銀合金皮膜を下地層として形成し、或は、実施例4、6、11に見るように、下地のスズ−銀合金皮膜の膜厚をごく薄い0.06μmで形成した場合でも、上層のスズ皮膜のホイスカーとピンホールの防止性能の両方を担保できる点は注目すべきである。
尚、本試験例の対象はホイスカーとピンホールの発生防止評価であるが、これらに加えて、上層スズ皮膜のハンダ濡れ性を調べたところ、下地と上層の皮膜全体での銀の比率が50%以内の実施例(つまり本発明3の要件を満たす実施例)では、この要件から外れる実施例9に比べて、ハンダ濡れ性はより良い評価であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被メッキ物に無電解スズ−銀合金メッキ皮膜よりなる下地皮膜を形成した後、
当該下地皮膜の上に無電解スズメッキ皮膜(上層皮膜)を形成するスズホイスカーの防止方法であって、
下地皮膜の膜厚が0.025〜0.5μmであり、且つ、下地と上層皮膜の合計膜厚が0.1〜6μmであり、
下地の合金皮膜中の銀の組成比率が5〜90重量%であり、
上記被メッキ物が銅張り積層基板、チップ・オン・フィルム(COF)又はTABのフィルムキャリアであることを特徴とする無電解メッキによるスズホイスカーの防止方法。
【請求項2】
被メッキ物に無電解スズ−ビスマス合金メッキ皮膜よりなる下地皮膜を形成した後、
当該下地皮膜の上に無電解スズメッキ皮膜(上層皮膜)を形成するスズホイスカーの防止方法であって、
下地皮膜の膜厚が0.025〜0.5μmであり、且つ、下地と上層皮膜の合計膜厚が0.1〜6μmであり、
下地の合金皮膜中のビスマスの組成比率が5〜90重量%であり、
上記被メッキ物が銅張り積層基板、COF又はTABのフィルムキャリアであることを特徴とする無電解メッキによるスズホイスカーの防止方法。
【請求項3】
下地と上層の皮膜全体での銀又はビスマスの重量比率が0.1〜50重量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の無電解メッキによるスズホイスカーの防止方法。
【請求項4】
スズ−銀合金又はスズ−ビスマス合金よりなる下地皮膜の膜厚Aと、スズよりなる上層皮膜の膜厚Bにおいて、
下地皮膜と上層皮膜の膜厚比率が、B(上層)/A(下地)=1.2〜30であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の無電解メッキによるスズホイスカーの防止方法。
【請求項5】
下地皮膜を形成する際の無電解メッキ浴の浴温が5〜60℃であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の無電解メッキによるスズホイスカーの防止方法。

【公開番号】特開2009−155703(P2009−155703A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−336812(P2007−336812)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000197975)石原薬品株式会社 (83)
【Fターム(参考)】