説明

無非点収差イメージングのためのTOF質量分析計および関連する方法

本発明は、特定の質量対電荷比を有するイオンの焦点合わせを、その特定の質量対電荷比を有するイオンの焦点合わせのための電場を最適化することにより改善することに関する。具体的には、イオンの無非点収差焦点合わせが、異なる質量対電荷比のイオンに対してイオン光学レンズ(50)に印加される電圧を、それらのイオンがレンズを通過するときに調節することにより改善されることができる。一実施形態では、D/A変換器(32)および増幅器(34)が、高電圧コンデンサ(36)により高電圧直流電源装置(38)に交流結合される。D/A(変換器32)は低電圧波形を生成し、低電圧波形は増幅器(34)により増幅され、次に、高電圧電源(38)の出力に付加され、その結果、所望の電圧波形が生成され、イオンがレンズを通過するときにイオン光学レンズ(50)に印加される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はTOF(「time−of−flight(飛行時間計測式)」)質量分析計および関連する方法に関する。詳細には、本発明は試料のイメージングを行うためのTOF質量分析計および関連する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
TOF質量分析計は、イオンを加速し、検出器までのイオンの飛行時間を計測することによりイオンの質量対電荷比を計測するための分析手法である。
【0003】
TOF質量分析計の2つの知られている方法が、マトリクス支援レーザ脱離イオン化TOF質量分析計(「MALDI TOF」質量分析計)およびタンデムTOF質量分析計(「TOF−MS/MS」質量分析計)である。これらの方法は、たとえば生体系での巨大分子化合物を識別する方法として使用される。
【0004】
MALDI TOF質量分析計では、イオンパルスが試料から生成されるように、レーザパルスは試料(たとえば生体物質)および光吸収マトリクスの混合物上に小さな「レーザスポット」に焦点が合わせられる。イオンパルスは、パルス電場がイオン源内の試料に適用されるパルス抽出システムにより試料から離れて加速される。試料からのイオンの質量対電荷比が計測されることができるように、イオンパルスは飛行時間計測式質量分析計により検出され、分析される。レーザパルス抽出、ならびに試料および光吸収マトリクスの混合物は、MALDIイオン源と呼ばれることがある。
【0005】
TOF−MS/MS質量分析計では、イオンは、検出され、分析される前に断片化を起こす。イオンは、たとえば準安定崩壊により、または衝突誘発解離により断片化されることがある。TOF−MS/MSは前駆イオン(非断片化イオン)と生成イオン(断片化イオン)の両方の分析を可能にするので有用である。TOF−MS/MS質量分析計はMALDI TOF質量分析計と組み合わせて使用されることができる。換言すれば、MALDIイオン源が、イオンが検出される前に断片化を起こす質量分析計で使用されることができる。
【0006】
単一の検出器を有するMALDI TOF質量分析計を使用して、試料内部の異なる質量対電荷比を有する化合物の空間分布を示す画像を形成することが知られている。このことは、レーザスポットの下で試料を移動させることにより達成され、その結果、検出器は、多数のスペクトルを収集し、各スペクトルは試料上の異なる位置にあるレーザスポットを使って収集される。この方法では、画像の各画素が試料上の異なる位置に対応する試料の画像が形成される。
【0007】
本発明者は、試料を移動させることによりMALDI TOF質量分析計を使用して画像を形成することには2つの欠点があることに留意した。まず、MALDI TOF質量分析計の単一検出器がレーザスポット内部の化合物の空間分布に関する情報を検出することができないので、画像の空間分解能がレーザスポットのサイズにより制限される。次に、試料が画像化され得る速さが、検出器が各試料位置でスペクトルを収集するのにどれだけ時間がかかるか、または画像の画素当たりの時間により決定される。
【0008】
試料の画像を形成するために使用されることができる別の方法が、MALDI TOF質量分析計を使用して試料を無非点収差で画像化することである。この方法は、検出器に入射するイオンの位置が(レーザスポット内部の)試料上のイオンの位置に対応するように、パルスレーザを使用して、試料上のレーザスポットからイオンを抽出し、空間検出器上に無非点収差でイオンの焦点を合わせることを伴う。空間検出器(イメージング検出器としても知られる)は、試料上に入射するイオンの時間と位置の両方を計測することができ、その結果、無非点収差で焦点を合わせられたイオンから画像が形成されることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者により、TOF質量分析計におけるイオン光学機器が空間的にイオンパルス中のイオンのすべての焦点を合わせないので、鮮明な映像または正確な画像を得ることが困難である、または不可能でさえあることが確認された。具体的には、本発明者は、イオンパルス中の検出器上に入射するイオンの多くの位置が、イオンが生成された試料上の位置に対応しないことを確認した。換言すれば、本発明者は、無非点収差のイメージング系でのイオンの空間的焦点合わせが劣る可能性があり、その結果、たとえば、その結果できる画像が試料組成に関係する空間情報を正確に伝えないことに留意した。
【0010】
具体的には、本発明者は、イオンの時間的焦点合わせを提供することにより特定の質量(最適化された質量)に対する質量分解能を改善するためにイオン源内で使用されるパルス抽出が、最適化された質量以外の質量の画像の非点収差を引き起こすことに留意した。実際に本発明者は、質量が最適化された質量から離れるつれ、非点収差の程度が増すことを観測した。
【0011】
本発明は、上述の問題の一部またはすべてに対処する、および/または改良するTOF質量分析計および関連する方法を提供することを目的とする。詳細には、本発明は試料イメージングのためのTOF質量分析計でのイオンパルスの空間的焦点合わせを改善することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
これに関して、ピーク幅および質量分解能に影響を及ぼし、かつイオン源内でのパルス抽出の目的である時間でのイオンの焦点合わせと、画像の鮮明度に影響を及ぼし、かつ本発明の対象である空間でのイオンの焦点合わせ(空間的焦点合わせ)とを識別することが重要である。本明細書で「焦点を合わせる」または「焦点合わせ」という言及は、特に明言されない限り空間的焦点合わせへの言及である。
【0013】
最も一般的には、本発明は、イオンパルスが、電場を使ったパルス抽出イオン源の後、焦点を合わせられることができることを提案し、この場合、電場は、イオンパルスが電場を通過するときに調節される(すなわち、変更される)。本発明は、イオンパルスが電場を通り抜ける間の電場の調節が、異なる質量(厳格には、異なる質量対電荷比)のイオンの焦点を合わせ、それにより非点収差を低減することができることを提案する。
【0014】
「イオンパルス」という用語は、当業者にはよく知られているが、完全さのために、イオンパルスは特定の期間をかけて試料から生成される(抽出される)イオンの集団を意味することが言及される。一般に、この期間は試料からのイオンのパルス抽出における単一パルスの継続期間に対応する。たとえば、イオンは1μsの期間内に試料から生成されることがある。試料からイオンパルスを生成する特に好ましい方法が、パルスレーザ脱離(たとえばMALDI)である。
【0015】
本発明の第1の態様によれば、請求項1に記載のTOF質量分析計が提供される。
【0016】
したがって、適宜に、イオンパルスが電場中に存在する、または電場を通過する間に、イオンパルスの焦点を合わせるために使用される電場が調節される。
【0017】
本発明者は、電場によるイオンパルス中の任意の所与のイオンの焦点合わせが、その特定のイオンのために電場を最適化することにより改善されることができることを確認した。具体的には、本発明者は、イオンパルス中で特定の質量対電荷比を有するイオンの焦点合わせを、その特定の質量対電荷比のために電場を最適化することにより改善することが可能であることを確認した。TOF質量分析計では、イオンパルス中のイオンの飛行時間はそのイオンの質量対電荷比に依存する。具体的には、TOF質量分析計でのイオン光学レンズまでの(したがって、イオン光学レンズにより提供される電場までの)イオンの飛行時間は、質量対電荷比に依存する。本発明者は、イオンパルスが電場を通過するときに電場を(動的に)調節することにより、異なるイオンが異なる時間に電場を通過するとき、イオンパルス中の異なるイオン(質量対電荷比)の焦点合わせのために電場を最適化することができることを確認した。イオンのこの動的焦点合わせは、イオン軌跡シミュレーションから、非点収差を低減し、画像の鮮明さを改善することが確認された。
【0018】
したがって、イオンパルスが電場を通過している間に、電場調節手段がイオン光学レンズにより提供される電場を調節することができる。
【0019】
適宜にイオンパルスはイオン光学レンズを通過するので、イオンパルスがイオン光学レンズを通過するとき、適宜に電場調節手段は電場を調節する。
【0020】
イオン光学レンズは、イオン源と空間検出器の間に配置される。適宜に、イオン光学レンズは、イオン源と空間検出器の間のイオン経路(イオン光軸)上に配置される。実施形態では、イオン光学レンズは、ある質量の焦点合わせが異なる質量の焦点合わせを妨げないように、異なる質量のイオンが十分分離することができるほどイオン源から十分離れて配置される。別の考慮すべき事柄が、電場の変化が実際的な時間スケールで行われるべきである(換言すれば、適切な電子機器により生成されることができる)ということである。適宜に、イオン光学レンズは空間検出器よりもイオン源の近くに配置される。
【0021】
分光計がTOF−MS/MSである場合、イオン光学レンズは、断片が発生する点(たとえば、準安定崩壊のための飛行管、またはCIDのための衝突ガスセル)の前に適宜配置される。このことは、無非点収差画像を維持するためには、断片イオンの軌跡が前駆イオンと本質的に同じでなければならいためである。断片イオンのエネルギが断片質量に依存し(断片イオンのエネルギは、母体をなすエネルギに、母体をなす質量に対する断片質量の比を乗じたものである)、したがって、断片イオンおよび前駆イオンが一緒にイオン光学レンズを通過しても、イオン光学レンズの影響は断片質量に依存する。
【0022】
したがって、分光計がTOF−MS/MSである場合、イオン光学レンズは断片化領域の前に配置されることが好ましい。適宜に、断片化領域は飛行管または衝突セルである。
【0023】
イオン光学レンズは、一般にイオン源から(適宜に試料から)少なくとも50mmの所に、好ましくは少なくとも100mmの所に、より好ましくは少なくとも150mmの所に配置される。試料により近いことは、イオン光学レンズ場の調節速度がより速いこと、およびレンズの実効長がより短いことを必要とする。イオン光学レンズはイオン源から(適宜に試料から)400mm以下の所に、好ましくは300mm以下の所に、および最も好ましくは210mm以下に適切に配置される。試料からさらに遠ざけることによりイオン光学レンズ場のより緩やかな変化、およびより大きなレンズを可能にするが、特にMS/MSについては、イオン光学機器の効率を低下させる可能性がある(たとえば、感度に影響を及ぼす)。好ましくは、イオン光学レンズは、イオン源から(適宜に試料から)好ましくは50mmから400mmまでの範囲内に、より好ましくは100mmから300mmまでの範囲内に、および最も好ましくは150mmから210mmまでの範囲内に配置される。特に好ましい位置はイオン源から(適宜に試料から)約180mmである。
【0024】
空間検出器は(たとえば、線形TOF−MSイメージング用)線形空間検出器でもよい。線形検出器は、質量分析計のイオン光軸に平行に配置される検出器である。一般に線形検出器はイオン光軸上に配置されるが、線形検出器はイオン光軸から外されて置かれることができる。
【0025】
空間検出器は(たとえば、リフレクトロン(reflectron)TOF−MSイメージング用)リフレクトロン空間検出器でもよい。リフレクトロン検出器は、(たとえば、イオン鏡またはリフレクトロンにより)反射されたイオンパルス中のイオンを検出するように配置される。
【0026】
空間検出器は、検出器に入射するイオンの位置を計測する手段を適宜に含む。検出されたイオンの位置は試料の画像を形成するために使用されることがある。したがって、空間検出器はイメージング検出器とも呼ばれることがある。
【0027】
適宜に、空間検出器はx方向およびy方向でイオンの位置を計測する。適宜に、そのような計測から形成される画像は2D画像である。
【0028】
適宜に、分光計は検出されたイオンの時間および位置に基づきTOFおよび空間分布を決定するための処理手段を含む。適宜に、処理手段は測定された値に基づき画像を生成することができる。一般にTOFおよび空間分布は、検出器の出力(複数可)に取り付けられた電子機器を使って決定される。
【0029】
したがって、第1の態様のTOF質量分析計は、空間検出器による検出のためにイオンパルスの焦点合わせを最適化するように適合される。具体的には、実施形態は空間検出器により形成される画像の鮮明さを改善する。本発明の実施形態により達成される改善された焦点合わせ(低い非点収差)は、試料の正確なイメージングが必要とされる場合、大いに有益である。
【0030】
空間検出器により形成される画像の鮮明さは、検出器の空間分解能に依存することがある。具体的には、空間検出器が有する「画素」の数、および/または「画素密度」(単位面積当たりの画素の数)が、検出器の空間分解能に影響を及ぼすことがある。この文脈では、「画素」が、イオンが検出されることができる、検出器上の別個の位置であり、検出器上の他の別個の位置で検出されるイオンと識別されるイオンの位置である。
【0031】
空間検出器は遅延線検出器でもよい。遅延線検出器は2つ以上の電線を含むことがある。適宜に、各電線はx方向またはy方向での検出を提供するように構成される。たとえば、遅延線検出器が2組の電線を有する場合、2つの電線の4つの末端でスペクトルが得られることができる。遅延線検出器の空間分解能は、各軸に沿う遅延線電線の巻数により決定される。一般に、遅延線検出器は、2つの軸で、(適宜に、4つの過渡現象記録装置だけを使用して)数100画素が同時に得られるように、数10巻きを有する。
【0032】
空間検出器は多数の陽極を有することがある。このことは、たとえばセグメントに分かれた陽極で達成されることができる。各陽極からスペクトルを同時に得る必要があるために、多数の陽極検出器が遅延線検出器と比較して少ない数の画素しか有しないことがある。
【0033】
好ましくは、横方向の空間分布が電場調節手段の動作により焦点を合わせられ、その結果、適宜に、改善された横方向の空間分布が検出器で達成される。すなわち、イオンパルス移動の方向に垂直な、すなわち軸方向に垂直な平面内の空間分布、および試料表面の平面内の空間分布が焦点を合わせられる。したがって、実施形態では、空間検出器により計測されるx方向およびy方向でのイオンの位置は、より鮮明な画像をもたらす。
【0034】
イオン光学レンズの性能は、使用される空間検出器に適合するべきであり、逆も同じである。たとえば、多数の画素を有する空間検出器が使用される場合(たとえば、遅延線検出器)、イオン光学レンズはそれに従って、よい鮮明な画像が得られることができるように、低レベルの非点収差を提供しなければならない。
【0035】
適宜に、空間検出器は、検出器上に入射するイオンの飛行時間を計測することができるTOF検出器である。
【0036】
適宜に、電場調節手段は、イオンパルスが電場を通過するときに、電場の強さを調節する(すなわち、電場の強さを変える)。適宜に、電場の強さを調節することは、電場の強さを増すことを含む。さらに、または代わりに、電場の形状および/またはサイズが変更される。
【0037】
好ましくは、電場は、イオン光学レンズに電圧を印加することにより、イオン光学レンズにより供給される。適宜に、電場調節手段はそのような電圧を供給する。好ましくは、電場調節手段はイオン光学レンズに可変電圧を供給する(それにより、イオン光学レンズにより供給される電場の変動を引き起こす)。
【0038】
電場調節手段は、イオンパルスがイオン光学レンズにより供給される電場を通過するときに、イオン光学レンズに電圧波形を印加するための電圧波形発生器を含むことが好ましい。この方法では、イオン光学レンズにより供給される電場は印加される電圧波形により制御されることができる。したがって、適宜に、電場調節手段は、電場を調節するためにイオン光学レンズに電圧波形を印加するように適合される。「電圧波形」により、時間と共に変化する(しかしながら、連続的に変化する必要はない)電圧を意味する。
【0039】
適宜に、電圧波形発生器は任意のタイプの電圧波形を生成することができる。たとえば、電圧波形は線形波形、指数関数的波形、ステップ状(すなわち、ステップ状に増加および/または減少する)波形、または振動波形でもよい。線形波形、および具体的には増加する線形波形(「ランプ(ramp)」)は、非点収差が低減される改善された焦点合わせを達成するのに特に効果的であることが確認された。
【0040】
TOF質量分析計、および好ましくは電場調節手段は、電圧波形発生器を制御するための制御手段を含むことがある。制御手段はたとえば処理装置でもよい。制御手段はコンピュータでもよい。制御手段はイオン光学レンズによりイオンの焦点合わせを改善するように電圧波形発生器を制御することが好ましく、それにより適宜に非点収差を低減する。
【0041】
本発明者は、イオン光学レンズによるイオンパルス中のイオンのよりよい焦点合わせが、より小さな質量対電荷比のイオンに対してよりもより大きな質量対電荷比に対してイオン光学レンズにより大きな電圧を印加することにより達成されることができることを確認した。したがって、イオンパルスが電場を通過するときに、電圧波形発生器によりイオン光学レンズに印加される電圧を増大させることにより、イオン光学レンズによるイオンの改善された焦点合わせが達成されることができる。適宜に、電場調節手段は、イオンパルスが電場を通過するときに、電圧波形発生器によりイオン光学レンズに印加される電圧の大きさを制御するように適合される。適宜に、電場調節手段は、イオンパルスが電場を通過するときに、電圧(すなわち、電圧の大きさ)を増大させるように適合される。このことは、イオン光学レンズへのイオンの飛行時間がイオンの質量対電荷比と共に増加するので、特に効果的である。したがって、イオンパルスが電場を通過するときにイオン光学レンズに印加される電圧を増大させることには、より大きな質量対電荷比を有するイオンにより大きな電圧を(さらに、より小さな質量対電荷比を有するイオンにより小さな電圧を)印加するという効果がある。電圧の大きさを制御する機能、および具体的には電圧を増大させる機能は、制御手段により提供されることがある。
【0042】
適宜に、電圧の大きさは1から50%、好ましくは1から20%、およびより好ましくは1から10%の増大を提供するために制御される。当然、大きさの変化の量は検出されるべき質量対電荷比の範囲に依存する。たとえば、質量対電荷比1,050Daを有するイオンの空間分布の焦点を合わせるためには、電圧5,200Vがイオン光学レンズに印加されることがあり、一方では質量対電荷比2,450Daを有するイオンの空間分布の焦点を合わせるためには、電圧5,540Vがイオン光学レンズに印加されることがある。適宜に、イオン光学レンズに印加される電圧は範囲4,500から6,000Vで、好ましくは範囲4,750から5,750Vで、および最も好ましくは5,000から5,600Vで変化する(好ましくは増加する)。
【0043】
適宜に、電圧波形発生器は、少なくとも1,000ボルト、より好ましくは少なくとも3,000ボルト、より好ましくは少なくとも5,000ボルトの電圧を生成することができる。
【0044】
制御手段は、電圧波形発生器によりレンズに印加される1つまたは複数の電圧波形を記憶するためのメモリを含むことがある。電圧波形発生器は、(たとえば、制御手段が、取り出された電圧波形をレンズに印加することができるように)メモリから電圧波形を取り出す(または取り出すように構成される)ための手段を有することがある。記憶された電圧波形(複数可)は、たとえば質量分析計のための較正方法により到達されることができた。そのような較正方法は以下により詳細に説明される。
【0045】
制御手段は、電圧波形発生器によりレンズに印加される電圧波形を計算するための計算手段を含むことがある。
【0046】
電圧波形は、たとえば計算されたイオン光学レンズまでのイオンの飛行時間に基づき計算手段により計算されることがある。たとえば、質量対電荷比m/zのイオンに対する(フィールドフリー領域での)飛行時間Ttofが次式により与えられることができる。
tof=L(m/2zeV)1/2
上式でLはイオン源からの距離であり、Vはイオン源内のイオンにより得られる公称エネルギである。この方程式は電圧波形を計算するために使用されることができる。上記の方程式から理解されることができるように、イオン光学レンズまでのイオンの飛行時間は、より大きな質量対電荷比を有するイオンに対してより長い。
【0047】
さらに、または代わりに、電圧波形は、イオン軌跡シミュレーションに基づき、たとえばSIMION(TM)8イオン軌跡モデリングソフトウェアを使用して計算されることがある。
【0048】
制御手段がイオン源に結合されることがある。適宜に、電圧波形の制御が少なくとも部分的にイオン源の1つまたは複数の特性に依存するように、制御手段がイオン源に結合される。たとえば、イオンパルスの生成後、電圧波形が所定の時間(たとえばパルス抽出の時間)イオン光学レンズに印加されるように、制御手段がイオン源に結合されことがある。
【0049】
イオン光学レンズまでのイオンの飛行時間はイオン源の特性または較正に対して変化することがあるので、イオン源に制御手段を結合することは利点がある。したがって、電圧波形の制御が少なくとも部分的にイオン源の1つまたは複数の特性に依存するようにイオン光学レンズに印加される電圧波形を調節することにより、適宜に、それらの特性に従って(非点収差が低減された)最適な焦点合わせを達成することができる。
【0050】
電場調節手段は短い時間スケールにわたり、たとえば10μs未満、好ましくは5μs未満、およびより好ましくは1μs未満、イオン光学レンズにより供給される電場を調節するように構成されることがある。このことは、イオンパルスが一般に非常に急速に、たとえば数μsの過程にわたりレンズを通過するためである。したがって、適宜に、上記で説明される電圧波形発生器は対応する継続期間(たとえば100μs未満、好ましくは10μs未満)の電圧波形を生成するように構成される。
【0051】
電場調節手段(適宜に、電圧波形発生器)は高電圧スイッチを含むことがある。高電圧スイッチは、電圧波形を生成するように構成されることがある。高電圧スイッチにより生成される電圧波形はイオン光学レンズに印加されることができ、たとえば、レンズに直接、または受動素子を介して印加されることができる。適宜に、高電圧スイッチは50μs未満の間、好ましくは10μs未満の間、および最も好ましくは5μs未満の間、高電圧(適宜に電圧波形を含む)をイオン光学レンズに印加するように適合される。
【0052】
電場調節手段(適宜に、電圧波形発生器)は、D/A変換器を含むことがある。D/A変換器は電圧波形を生成するように構成されることがある。D/A変換器により生成される電圧波形は、イオン光学レンズに印加される前に増幅される中間の電圧波形でもよい。D/A変換器はデジタル信号を使用して、(アナログ素子だけでは達成することが困難なことがある)任意の所望の形状の電圧波形を生成することができるので、D/A変換器を使用して電圧波形を生成することは有利である。
【0053】
代わりに、またはさらに、電場調節手段(適宜に、電圧波形発生器)は、時間に依存して振幅が上昇または下降する電圧(または電流)を生成する回路を含むことがある。好ましい回路がRC回路(抵抗器および/またはコンデンサを含む回路)である。RC回路は受動的でもよい。RC回路は電圧波形を生成するように構成されることがある。RC回路により生成される電圧波形は、電圧波形発生器によりレンズに印加される前に増幅される中間の電圧波形でもよい。
【0054】
電場調節手段(適宜に、電圧波形発生器)は増幅器を含むことがある。増幅器は、たとえば上記に説明されるD/A変換器またはRC回路を含むことがある中間電圧波形発生器からの中間電圧波形を増幅する(または増幅するように構成される)ためのものでもよい。この構成は、所望の形状の電圧波形を高電圧で生成するのではなく、所望の形状の中間波形を(低電圧で)生成し、次に中間波形を高電圧まで増幅することがより容易である可能性があるので都合がよい。たとえば、イオンビームの焦点を合わせるために5,000Vを超える電圧が必要とされることがあるが、それよりもはるかに低い電圧で電圧波形を供給することがより容易である。
【0055】
増幅器はコンデンサおよび直流電源を含むことがある。コンデンサは中間電圧波形発生器を直流電源に交流結合させるためのものでよい。交流結合は以前に質量分析計で別の役割で使用されたことがあり(たとえば、抽出パルスを生成するため)、信頼できる方法であることが証明された。
【0056】
TOF質量分析計は、任意の適切なイオン光学構成要素を含むことがあり、イオン光学構成要素は、イオンパルスと相互作用するための構成要素である。イオン光学構成要素の一例がデフレクタ(deflector)である。イオン光学構成要素の1つまたは複数が、イオンパルスが通過するための開口を含むことがある。イオン光学構成要素の開口は、質量分析計が使用中のときに開口を通過するイオンパルスのサイズよりも大きいことがある。質量分析計が使用中のときの、イオンパルスの幅(すなわちイオンパルスの動きに垂直な方向のイオンパルスのサイズ)に対する開口の幅の比は、少なくとも5:1、より好ましくは少なくとも7:1、より好ましくは少なくとも10:1でもよい。これらのような大きな比は、質量分析計によるイオンパルスの焦点合わせで非点収差の低減につながることが確認された。
【0057】
イオン光学レンズはアインツェルレンズでもよい。アインツェルレンズはイオンパルスの焦点を合わせるために特に適したレンズである。
【0058】
イオン源は、任意の適切な機構により、たとえば放出される、脱離される、および/またはイオン化されることにより、試料からイオンパルスを生成するように構成されることがある。適宜に、イオン源はパルスレーザを含む。イオン源はMALDI(マトリクス支援レーザ脱離イオン化)イオン源であることが好ましい。イオン源はレーザ脱離イオン源(すなわち、マトリクスのない)でもよい。イオン源はまた、SIMS(二次イオン質量分析計)イオン源でもよい。しかしながら、イオンがどのように生成されるかにかかわらず、イオン源はパルス抽出イオン源である、すなわち、パルス抽出レンズを含む。
【0059】
TOF質量分析計はリフレクトロンを含むことがある。リフレクトロンがイオンパルスの運動エネルギ分布を訂正するためのものでも、ならびに/またはレンズおよび/もしくは検出器までのイオンの飛行時間を拡大するためのものでもよい。リフレクトロンを使用する1つの有利な点が、リフレクトロンが、より低い最大質量範囲にもかかわらず、線形TOF質量分析計よりも高い質量分解能を(したがって、よりよい質量精度を)生み出すことである。リフレクトロンを使用する別の有利な点は、リフレクトロンがTOF MS/MS質量分析計用に使用されることができることである(TOF MS/SM質量分析計では、イオンが断片化される、以下参照)。
【0060】
TOF質量分析計はTOF MS/MS質量分析計(タンデム質量分析計としても知られる)でもよい。適宜に、TOF MS/MS質量分析計はイオンパルス中のイオンを断片化させるための断片化領域を含む。断片化領域はたとえば準安定崩壊により、または衝突誘発解離によりイオンを断片化させるためのものでもよい。断片化領域は、イオンの衝突誘発断片化のための衝突セルを含むことがある。代わりに、またはさらに、断片化領域は飛行管を含むことがある。TOF MS/MSは生成イオン(断片化したイオン)および/または前駆イオン(断片化していないイオン)の分析を可能にする。
【0061】
しかしながら、TOF質量分析計は一部の実施形態ではMS/MS質量分析計ではない。
【0062】
イオンパルスが電場を通過するときの電場の調節は、イオンパルス中の第1のイオンのために第1の電場がレンズにより供給され、次に、イオンパルス中の第2のイオンのために第2の電場がレンズにより供給されるようなものでもよい。電場の調節はさらに、イオンパルス中の第3のイオンのために第3の電場がレンズにより供給されるようなものでもよい。実施形態では、次に第4のイオンのために第4の電場が供給される。可能性として、イオンパルス中の任意の数のイオンに対して異なる電場が供給されることがある。
【0063】
イオンパルス中のイオンは一般に異なる質量対電荷比を有する。具体的には、第2のイオンは第1のイオンよりも大きな質量対電荷比を有することがあり、第3のイオンは第2のイオンよりも大きな質量対電荷比を有することがあり、以下同様である。その結果、第2のイオンは、第1のイオンの後にイオン光学レンズに到着する。第3のイオンは第2のイオンの後に到着し、以下同様である。一般に、それぞれの質量対電荷比に対して複数のイオンがある。イオンの「動的」焦点合わせを最適化するために、適宜に、第2の電場は第1の電場とは異なる強さおよび/または形状を有する。供給される電場の強さは、イオンが電場を通過するときに大きくされ、たとえば、その結果、第2の電場は第1の電場よりも高い強さを有し、以下同様である。この方法では、より高い質量対電荷比のイオンに対してより強い電場が供給されることができる。上記で説明されたように、本発明者は、このことがイオンの無非点収差イメージングを改善することを確認した。
【0064】
本発明の第2の態様によれば、TOF質量分析計で空間的にイオンパルスの焦点を合わせる方法が提供され、方法は、試料からイオンパルスを生成するステップ、空間的にイオンパルスの焦点を合わせるために電場を供給するステップ、および電場により焦点を合わせられたイオンパルスを検出するステップを含み、電場は、イオンパルスが電場を通過するときに調節される。
【0065】
第2の態様の方法は、第1の態様のTOF質量分析計に実装されることがある。方法は、第1の態様のTOF質量分析計に関連する方法ステップの任意の1つまたは複数を含むことがある。これらの方法の有利な点は、第1の態様のTOF質量分析計の有利な点に対応する。
【0066】
適宜に、方法は試料の画像を形成するステップを含む。
【0067】
したがって、本発明は無非点収差イメージングの改善された方法を提供し、「動的」空間焦点合わせが非点収差を低減する、または最低にするために使用される。
【0068】
第3の態様によれば、試料からイオンパルスを生成するためのパルス抽出イオン源、イオンパルスがイオン光学レンズを通過するときにイオンパルスの焦点を合わせるためのイオン光学レンズ、イオン光学レンズにより焦点を合わせられたイオンパルスを検出するための空間検出器、およびイオンパルスがイオン光学レンズを通過するときにイオン光学レンズに電圧波形を印加するための電圧波形発生器を有するTOF質量分析計が提供される。
【0069】
第3の態様のTOF質量分析計は、第1の態様のTOF質量分析計に関連する特徴の任意の1つまたは複数を有することがある。具体的には、電圧波形発生器は、第1の態様に関連して説明される電圧波形発生器に関連する特徴の任意の1つまたは複数の特徴を有することがある。
【0070】
第2の態様の方法は、第3の態様のTOF質量分析計上で実行されることがある。
【0071】
本発明の第4の態様によれば、イオンパルスがイオン光学レンズを通過するときにイオン光学レンズにより供給される電場を調節するために、TOF質量分析計でイオン光学レンズを使用するための電場調節手段が提供される。電場調節手段は、第1の態様および第3の態様の電場調節手段の特徴の任意の1つまたは複数を有することがある。
【0072】
本発明の第5の態様によれば、第1の態様(または第3の態様)に従うTOF質量分析計となるようにTOF質量分析計をリトロフィットする、および/または修正する方法が提供される。適宜に、方法は第4の態様による電場調節手段を実装することを含む。
【0073】
本発明の第6の態様によれば、空間的にイオンパルス中のイオンの焦点を合わせるために、イオンパルスがイオン光学レンズを通過するときにTOF質量分析計のイオン光学レンズに印加される電圧波形を識別するステップを含むTOF質量分析計を較正する方法が提供される。方法は第1の態様(または第3の態様)によるTOF質量分析計上で使用されることがある。
【0074】
方法は電圧波形をメモリ(たとえば上記で説明された制御手段のメモリ)内に記憶するステップを含むことがある。
【0075】
電圧波形を識別するステップは、イオン光学レンズに印加されたときに、特定の質量対電荷を有するイオンの満足できる焦点合わせを達成する電圧を識別するステップを含むことがある。複数のそのような電圧が、異なる質量対電荷比のイオンに対して識別されることがある。識別される電圧波形は複数の電圧に基づくことがある。複数の電圧のそれぞれが、空間検出器により形成される特定の質量対電荷比のイオンにより形成される画像の鮮明さを監視している間に、(たとえば、上記で適用される制御手段を介して)イオン光学レンズに印加される電圧を調節することにより識別されることができる。
【0076】
本発明の第7の態様によれば、TOF質量分析計で空間的にイオンパルス中のイオンの焦点を合わせるために可変電場の使用が提供される。
【0077】
本発明の任意の一態様の任意選択の特徴および/または好ましい特徴のすべてがその他の態様の任意の1つに適用されることがある。本発明の任意の一態様がその他の態様の任意の1つまたは複数と結合されることがある。
【0078】
本提案に関連する実施形態および実験が添付の図面を参照して以下に議論される。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】TOF質量分析計の一部の概略図である。
【図2a】TOF質量分析計内のイオンのシミュレートされた軌跡を示す。
【図2b】TOF質量分析計内のイオンのシミュレートされた軌跡を示す。
【図2c】TOF質量分析計内のイオンのシミュレートされた軌跡を示す。
【図3】TOF質量分析計で線形検出器上に入射する質量対電荷比1,800Daのイオンのシミュレートされた軌跡を示す。
【図4】TOF質量分析計で線形検出器上に入射する質量対電荷比1,050Daのイオンのシミュレートされた軌跡を示す。
【図5a】最適な焦点合わせ電圧(V)をイオンの質量対電荷比と比較する図である。
【図5b】最適な焦点合わせ電圧(V)をイオンのレンズまでの飛行時間(ns)と比較する図である。
【図6】焦点合わせレンズに印加するための電圧波形を示す。
【図7】TOF質量分析計で線形検出器上に入射する質量対電荷比1,050Daのイオンのシミュレートされた軌跡を示す。
【図8】焦点合わせレンズに電圧波形を印加するための電圧波形発生器を示す。
【図9】焦点合わせレンズに電圧波形を印加するための別の電圧波形発生器を示す。
【図10】TOF質量分析計でリフレクトロン検出器上に入射する質量対電荷比1,800Daのイオンのシミュレートされた軌跡を示す。
【図11】TOF質量分析計でリフレクトロン検出器上に入射する質量対電荷比1,050Daのイオンのシミュレートされた軌跡を示す。
【図12】TOF質量分析計でリフレクトロン検出器上に入射する質量対電荷比1,050Daのイオンのシミュレートされた軌跡を示す。
【図13】TOF質量分析計でリフレクトロン検出器上に入射する質量対電荷比525Daの断片化したイオンのシミュレートされた軌跡を示す。
【図14a】本発明の実施形態である、いくつかのイメージングTOF質量分析計を概略的に示す。
【図14b】本発明の実施形態である、いくつかのイメージングTOF質量分析計を概略的に示す。
【図14c】本発明の実施形態である、いくつかのイメージングTOF質量分析計を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0080】
本明細書で引用されるすべての質量対電荷比は、個々に帯電したイオンに対してダルトン単位で提供される。
【0081】
図1は試料10、抽出レンズ20、出口開口30、プリズム組立体40、イオン光学(空間的焦点合わせ)レンズ50、およびデフレクタ60を有するTOF質量分析計1(の一部)を示す。質量分析計1はイオン光軸2を有し、イオン光軸2は図1では、イオン光学構成要素10、20、30、40、50、および60の中心を通る黒い線により図示される。質量分析計はまた、イオン光軸に沿ってデフレクタ60の後に配置される空間検出器(図示せず)を含む。
【0082】
使用に際しては、プリズム組立体40によりレーザパルスが試料10に向けられる。試料から生成されるイオンパルスが、抽出レンズ20および出口開口30を通るパルス電場による適切な遅延(一般には100nsよりも大きく1ms未満)の後に抽出される。イオン光学レンズ50により空間的に焦点を合わせられた後、任意の小さい軌跡修正がデフレクタ60を使って行われ、イオンパルスがTOF質量分析計の中に続く。
【0083】
イオン光学構成要素10、20、30、40、50、60は、質量分析計1が使用中のときに開口を通過するイオンパルスの直径よりもはるかに大きな開口を有する。そのような大きな開口は、イオンの無非点収差イメージングに特に適していることが確認された。
【0084】
図2aから図2cは、質量分析計1でのイオンのシミュレートされた軌跡を示す。本明細書で説明されるすべてのシミュレートされたデータはSIMION(TM)8イオン軌跡モデリングソフトウェアを使用して生成された。
【0085】
図2aは試料10の表面で生成されたイオンパルス中のイオンのシミュレートされた軌跡を示す。イオンパルスは、試料10上の300μmの直径のレーザスポット上に焦点が合わせられる、継続期間約5nsのレーザパルスにより生成された。レーザスポットは質量分析計1の光軸2の中心に合わせられている。
【0086】
図2aのシミュレーションでは、初期エネルギ0.5eVを有するイオンが試料10から放出される。イオンは試料10から3方向に放出され、1つは質量分析計の光軸に並行で、それぞれ光軸に対して+/−30°で放出された。各方向に放出されたイオンは、350m/sおよび650m/sの、試料を離れるときの初期速度(「ジェット」速度としても知られる)を有する。
【0087】
図2bは、抽出レンズ20内の開口を通る図2aのイオンのシミュレートされた軌跡を示す。抽出レンズの直径は4mmである。レーザスポットの直径(300μm)に対する抽出レンズの直径の比は、少なくとも12:1である。抽出レンズ20を通るイオンパルスのシミュレートされた直径に対する抽出レンズの直径の比は少なくとも7:1である。抽出レンズ開口とイオンパルスの直径のそのような大きな比は、非点収差が低減した画像を生成するのに特によい。
【0088】
図2cはイオン光学レンズ50を通過するイオンのシミュレートされた軌跡を示す。このシミュレーションでは、イオン光学レンズ50はアインツェルレンズである。イオン光学レンズ50は、イオンパルス中のイオンの焦点を合わせる電場を供給し、その結果、試料10上の各点からのイオンが、線形検出器上の対応する点に焦点を合わせられる(図3を参照して以下で議論される)。換言すれば、イオン光学レンズ50は、線形検出器上に無非点収差でイオンビームの焦点を合わせる。焦点合わせレンズ50内の開口の直径は10mmであり、この値は焦点合わせレンズ50を通るイオンパルスの直径に対して少なくとも7:1の比を提供する。この場合も、焦点合わせレンズの開口とイオンパルスの直径のそのような大きな比は、低い非点収差を有する画像を生成するのに特によいことが確認された。
【0089】
図3は、イオン光学レンズ50により焦点を合わせられた後に線形検出器70上に入射する、質量対電荷比1,800Daを有するイオンのシミュレートされた軌跡65を示す。「線形検出器」により、質量分析計1のイオン光軸2上に配置される検出器を意味する。
【0090】
線形検出器70は、線形検出器70がイオン光学レンズ50により無非点収差で焦点を合わせられたイオンから画像を形成することができるように、複数の「画素」(イオンが独立して検出されることができる線形検出器70上の位置)を有する空間検出器である。この場合、線形検出器70は遅延線検出器でも、多数の陽極検出器でもよい。
【0091】
図3に示されるシミュレーションでは、抽出レンズ20を使用する試料10からのイオン10のパルス抽出が、パルス抽出遅延と場の強さの適切な組合せにより質量対電荷1,800Daに対して最適化された。イオン光学レンズ50は、そこに5,420Vの一定の電圧を印加することにより質量対電荷比1,800Daの空間焦点合わせに対して最適化された。図3から理解されることができるように、試料1からのイオンのパルス抽出と焦点合わせレンズ30の両方が、質量対電荷比1,800Daに対して最適化されたので、質量対電荷比1,800Daを有するイオンが線形検出器70上に鮮明に焦点を合わせられた。
【0092】
図4は、イオン光学レンズ50により焦点を合わせられた後に線形検出器70上に入射する、質量対電荷比1,050Daを有するイオンのシミュレートされた軌跡74を示す。図3に示されるシミュレーションと同様に、試料10およびイオン光学レンズ50からのイオンのパルス抽出は、質量対電荷比1,800Daに対して最適化された。この場合も、イオン光学レンズ50は、そこに5,420Vの一定の電圧を印加することにより質量対電荷比1,800Daに対して最適化された。したがって、図4に示されるイオンは、試料10およびイオン光学レンズ50からのパルス抽出が最適化された質量対電荷比1,800Daと著しく異なる質量対電荷比を有する。
【0093】
図4のシミュレートされた軌跡により図示されたように、試料の各点からの質量対電荷比1,050Daを有するイオンは、イオンが試料10から脱離された(排出された)角度に依存する、線形検出器70上の空間分布を有する。換言すれば、質量分析計1のイオン光学構成要素が、質量対電荷比1,050Daを有するイオンに対して非点収差があり、したがって、これらのイオンに対して線形検出器70からできあがる画像がぼやける。質量分析計1のイオン光学構成要素はまた、1,800Daよりも著しく高い質量対電荷比を有するイオンに対しても非点収差がある。
【0094】
イオンパルスの焦点合わせで非点収差を低減するための以前の取り組みは、イオンのパルス抽出を調節することに基づいていた。しかしながら、図3および図4から理解されることができるように、1つの質量対電荷比を有するイオンに対してパルス抽出を最適化することは、著しく異なる質量対電荷比を有するイオンに対してよい無非点収差焦点合わせを達成しないことがある。
【0095】
本発明者は、特定の質量対電荷比を有するイオンの焦点合わせを、その特定の質量対電荷比を有するイオンの焦点合わせのために電場を最適化することにより改善することができることを確認した。具体的には、本発明者は、イオンの無非点収差焦点合わせが、異なる質量対電荷比のイオンに対してイオン光学レンズ50に印加される電圧を調節することにより改善されることができることを確認した。
【0096】
TOF質量分析計では、イオンパルス中のイオンの飛行時間はそのイオンの質量対電荷比に依存する。具体的には、TOF質量分析計でのイオン光学レンズまでの(すなわち、レンズにより供給される電場までの)イオンの飛行時間が質量対電荷比に依存する。
【0097】
表1はイオン光学レンズにまでの飛行時間、および異なる質量対電荷比を有するイオンに対する最適な焦点合わせ電圧を示すシミュレートされたデータを示す。シミュレートされたデータは、質量対電荷比1,800Daを有するイオンに対して最適化されたパルス抽出を有する質量分析計1に対して生成された。「最適な焦点合わせ電圧」は、イオン光学レンズ50に印加されたときに、所与の質量対電荷比を有するイオンに対して最適な焦点合わせを提供することが確認された電圧である。
【0098】
表1の飛行時間値および最適な焦点合わせ電圧はシミュレーションにより計算された。しかしながら、飛行時間値は他の方法により計算されることができる。たとえば、電圧は質量分析計1を較正することにより得られることができる(たとえば、特定の質量対電荷比のイオンに対して線形検出器70により形成される画像の適切な鮮明さを監視している間に、イオン光学レンズ50に印加される電圧を調節することによる)。
【表1】

【0099】
図5aは最適な焦点合わせ電圧(V)(「無非点収差レンズ電位」)をイオンの質量対電荷比と比較するグラフである。図5aに示されるグラフは表1に示されるデータを使用して生成された。質量対電荷比に対する最適な無非点収差焦点合わせ電圧の計算された依存性が実線で示されている。
【0100】
図5bは、最適な焦点合わせ電圧(V)(「無非点収差レンズ電位」)をイオンのレンズまでの飛行時間(「レンズまでのTOF」)と比較するグラフである。図5bに示されるグラフは表1に示されるデータを使用して生成された。レンズまでの飛行時間に対する最適な無非点収差焦点合わせ電圧の計算された依存性が実線で示されている。
【0101】
表1、ならびに図5aおよび図5bから理解されることができるように、イオンの飛行時間と最適な焦点合わせ電圧の両方が、イオンの質量対電荷比と共に増加する。したがって、後の時間にレンズを通過するイオンはより大きな質量対電荷比を有し、最適な焦点合わせ(すなわち、非点収差の低減)を達成するために、より大きな電圧がイオン光学レンズ50に印加される必要がある。
【0102】
図6は、イオンパルスがイオン光学レンズ50を通過するときにイオン光学レンズ50に印加するための電圧波形を示す。図6に示される電圧波形は、表1に与えられる値を使用して計算され、その結果、イオン光学レンズ50に印加される電圧は、異なる質量対電荷比を有するイオンが異なる時間にレンズを通過するときに、無非点収差で異なる質量対電荷比を有するイオンの焦点を合わせるように最適化される。
【0103】
イオン光学レンズ50に印加するための計算された波形が図6に示される。計算された波形は単純なランプ、すなわち、線形に増大する電圧波形である。波形は時間3.5μs(すなわち、イオンパルスが試料で生成された後の3.5μs)に直流電圧5,200Vから始まる。次に、直流電圧が2μsの期間にわたり5,550Vまで(線形増加率175V/μsで)立ち上がる。
【0104】
図7は、イオン光学レンズ50により焦点を合わせられた後に検出器70上に入射する、質量対電荷比1,050Daを有するイオンのシミュレートされた軌跡76を示す。図4に示されるシミュレートされた軌跡と同様に、試料10からのイオンのパルス抽出は、質量対電荷比1,800Daに対して最適化された。しかしながら、この場合、図6に示される電圧波形がイオン光学レンズ50に印加された。図7から理解されることができるように、図6の電圧波形は、イオンパルスがイオン光学レンズ50を通過するときにイオンパルス中の各イオンの焦点を合わせるために適切な電圧となるように構成されるので、質量対電荷比1,050Daのイオンのよい焦点合わせが達成される(すなわち、非点収差が低減され、したがってぼやけが低減される)。これを質量対電荷比1,050のイオンに対してよい焦点合わせが達成されなかった(イオン光学レンズ50に印加される電圧は一定であり、したがって質量対電荷比1,800Daのイオンに対してだけ最適化されたため)、図4に示されるシミュレートされたデータと比較してみること。
【0105】
図6に示される電圧波形は単純なランプである。しかしながら、表1に示されるデータをより正確に反映するように電圧波形が計算されることができる(たとえば、電圧波形は非線形波形とすることができる)。このことが、その上さらにイオン光学レンズ50によるイオンの焦点合わせを改善することができる。
【0106】
図8は、電圧波形をイオン光学レンズ50に印加するための電圧波形発生器31aを示す。電圧波形発生器31aは、D/A変換器32、増幅器34、高電圧コンデンサ36、および高電圧直流電源装置38を含む。D/A変換器32および増幅器34は、高電圧コンデンサ36により高電圧直流電源装置38(5.2kV)に交流結合される。D/A変換器32は低い(中間の)電圧波形(2μsの間に0から3.5Vまで)を生成し、低い電圧波形は増幅器34により(100倍まで)増幅され、次に、高電圧電源38の出力に付加され、その結果、図6の電圧波形が生成される。
【0107】
図9は、電圧波形をイオン光学レンズ50に印加するための別の電圧波形発生器31bを示す。波形発生器31bでは、DAC32が低い(中間の)電圧波形(2μsの間に2.6Vから2.775Vまで)を生成するために使用され、次に、低い電圧波形は、図6の電圧波形を生成するために高電圧増幅器35により(2,000倍まで)増幅される。
【0108】
質量分析計はリフレクトロンを含むことがある。リフレクトロンが、イオンパルス中のイオンをリフレクトロン検出器(反射されたイオンを検出するために配置される検出器)までイオン源に向けて後方に反射させるイオン鏡である。リフレクトロンを使用する1つの有利な点が、より低い最大質量範囲にもかかわらず、線形検出器を使用するよりも高い質量分解能を(したがって、よりよい質量精度を)生み出すことである。
【0109】
リフレクトロンはTOF MS/MS質量分析計用にも使用されることができる。TOF MS/MS質量分析計はイオンパルス中のイオンを断片化させる(たとえば、イオンの準安定崩壊による、または衝突誘発断片化による)ための断片化領域を含む。
【0110】
図10、図11、図12、および図13は、質量分析計1がリフレクトロン60およびリフレクトロン検出器80を含む場合のイオンのシミュレートされた軌跡を示す。リフレクトロンはリフレクトロンデフレクタ65およびリフレクトロン前板90を含む。リフレクトロン検出器80は、リフレクトロンにより反射されたイオンを検出するように配置される。リフレクトロン検出器80は空間検出器である。イオン光学レンズ50はリフレクトロン60の前に配置される。
【0111】
図10は、リフレクトロンにより反射されリフレクトロン検出器80に到達する、質量対電荷比1,800Daのイオンのシミュレートされた軌跡78を示す。図3および図4のシミュレーションと同様に、試料10およびイオン光学レンズ50からのイオンのパルス抽出は、質量対電荷比1,800Daに対して最適化された。イオン光学レンズ50は、そこに5,750Vの一定の電圧を印加することにより質量対電荷比1,800Daに対して最適化された。図10から理解されることができるように、質量対電荷比1,800Daを有するイオンはリフレクトロン検出器80上に鮮明に焦点を合わせられる。
【0112】
図11は、リフレクトロンにより反射されリフレクトロン検出器80に到達する、質量対電荷比1,050Daのイオンのシミュレートされた軌跡81を示す。図10のシミュレーションと同様に、試料10およびイオン光学レンズ50からのイオンのパルス抽出は、質量対電荷比1,800Daに対して最適化された。イオン光学レンズ50は、そこに5,750Vの一定の電圧を印加することにより質量対電荷比1,800Daに対して最適化された。図11から理解されることができるように、質量対電荷比1,050Daを有するイオンは十分に焦点を合わせられない(イオン光学レンズ50は質量対電荷比1,050Daに対して最適化されていないため)。
【0113】
図12は、リフレクトロンにより反射されリフレクトロン検出器80に到達する、質量対電荷比1,050のイオンのシミュレートされた軌跡82を示す。図10および図11のシミュレーションと同様に、試料10からのイオンのパルス抽出は質量対電荷比1,800に対して最適化された。しかしながら、このシミュレーションでは、図6に示される電圧波形に類似する(しかし異なる電圧を有する)電圧波形がイオン光学レンズ50に印加された。
【0114】
図12のシミュレーションでは、イオンパルスがイオン光学レンズ50を通過するときに図6の電圧波形がイオンパルス中の各イオンの焦点合わせのために適した電圧となるように構成されるので、質量対電荷比1,050Daのイオンのよい焦点合わせが達成される(すなわち、非点収差が低減され、したがってぼやけが低減される)。図12のシミュレーションでのイオンのよい焦点合わせを、よい焦点合わせが質量対電荷比1,050Daのイオンに対して達成されなかった(イオン光学レンズに印加される電圧は一定であり、質量対電荷比1,800Daのイオンに対してだけ最適化されたため)、図11に示されるシミュレーションと比較してみること。
【0115】
図13は、TOF質量分析計で空間検出器80上に入射する質量対電荷比525Daの断片化したイオンのシミュレートされた軌跡84を示す。このシミュレーションでは、質量対電荷比525を有するイオンは、リフレクトロンの前に解離を起こす、(質量対電荷比1,050Daを有する)図12のシミュレーションのイオンにより生成される断片イオンである。したがって、図13はMS/MS実験を表わす。このシミュレーションでは、断片イオンのよい焦点合わせが達成されるように、電圧5,600Vがイオン光学レンズ50に印加された。
【0116】
図14a、図14b、および図14cは、本発明のいくつかの実施形態でのイオン源および検出器に関してイオン光学レンズの位置を概略的に示す。
【0117】
図14aは、パルスイオン源102および空間検出器104を含む線形TOF−MS分光計100を示す。イオン源102から分離されているのがイオン光学レンズ106(「無非点収差レンズ」)であり、イオン光学レンズ106は電場調節手段108に接続される。電場調節手段108は、イオンパルスがイオン光学レンズ106を通過するときにイオン光学レンズ106に電圧波形を印加するための電圧波形発生器を含む。
【0118】
図14bは、図14aのTOF−MSと同じイオン源102、イオン光学レンズ106、空間検出器104、および電場調節手段108を含むリフレクトロンTOF−MS120を示す。さらに、リフレクトロン122がある。
【0119】
図14cはリフレクトロンTOF−MS/MS質量分析計140を示す。リフレクトロンTOF−MS/MS質量分析計140は、母体となるイオンが断片化されることができる断片化領域142がさらにあるということを除いて、図14bのリフレクトロンTOF−MSと同じ構成要素を含む。イオン光学レンズ106は、イオン源102と断片化領域142の間に配置される。
【0120】
前述の説明を読んだ後の当業者は、開示された広い概念を逸脱することなく均等物の様々な変更形態、改変形態、および差分形態に影響を及ぼすことができる。したがって、本明細書において付与される特許の範囲は、説明および図面を参照して解釈される添付の特許請求の範囲によってのみ限定され、本明細書に記載される実施形態の制約により限定されないものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料からイオンパルスを生成するためのパルス抽出イオン源と、
イオンパルス中のイオン、およびイオンが検出器に到達する位置を検出するための空間検出器と、
イオンが電場を通過するときにイオンパルス中のイオンの焦点を合わせるために電場を供給するための、イオン源と空間検出器の間に配置されるイオン光学レンズとを有し、
TOF質量分析計が、イオンパルスが電場を通過するときに電場を調節するための電場調節手段を含む、TOF質量分析計。
【請求項2】
空間検出器が遅延線検出器である、または多数の陽極を有する、請求項1に記載のTOF質量分析計。
【請求項3】
電場調節手段が、イオンパルスがイオン光学レンズにより供給される電場を通過するときにイオン光学レンズに電圧波形を印加するための電圧波形発生器を含む、請求項1または2に記載のTOF質量分析計。
【請求項4】
質量分析計が電圧波形発生器を制御するための制御手段を含み、制御手段が任意選択で、イオンパルスが電場を通過するときに電圧波形発生器によりイオン光学レンズに印加される電圧を増大させるための手段、および/または線形波形、指数関数的波形、ステップ状波形、もしくは振動波形の任意の1つもしくは複数をイオン光学レンズに印加するために電圧波形発生器を制御するための手段を有する、請求項3に記載のTOF質量分析計。
【請求項5】
制御手段が、電圧波形発生器によりイオン光学レンズに印加される電圧波形を記憶するためのメモリ、および/または電圧波形発生器によりイオン光学レンズに印加される電圧波形を計算するための計算手段を含む、請求項4に記載のTOF質量分析計。
【請求項6】
電圧波形の制御がイオン源の1つまたは複数の特徴に少なくとも部分的に依存するように、制御手段がイオン源に結合される、請求項4または5に記載のTOF質量分析計。
【請求項7】
分光計が、イオンパルスが通過する開口を有するイオン光学構成要素を含み、質量分析計が使用中のときのイオンパルスの幅に対する開口の幅の比が少なくとも5:1である、請求項1から6のいずれか一項に記載のTOF質量分析計。
【請求項8】
電場調節手段が、イオンパルスが電場を通過するときにイオン光学レンズにより供給される電場の強さおよび/または形状を調節するための手段を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載のTOF質量分析計。
【請求項9】
イオン光学レンズがアインツェルレンズであり、イオン源がレーザレーザ脱離(マトリクスでない)イオン源、MALDIイオン源、およびSIMS(二次イオン質量分析計)イオン源から選択され、質量分析計がリフレクトロンを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載のTOF質量分析計。
【請求項10】
TOF質量分析計がTOF MS/MS質量分析計である、請求項1から9のいずれか一項に記載のTOF質量分析計。
【請求項11】
電場調節手段が、1秒未満の期間中にイオン光学レンズにより供給される電場を調節するように構成される、請求項1から10のいずれか一項に記載のTOF質量分析計。
【請求項12】
TOF質量分析計で空間的にイオンパルスの焦点を合わせる方法であって、
試料からイオンパルスを生成するステップと、
空間的にイオンパルスの焦点を合わせるために電場を供給するステップと、
電場により焦点を合わせられたイオンパルスを検出するステップであって、イオンパルスが電場を通過するときに電場が調節されるステップと、を含む方法。
【請求項13】
試料の画像を生成するステップを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
電場がイオン光学レンズにより供給され、イオンパルスが電場を通過するときに、電場がイオン光学レンズに電圧波形を印加することにより調節され、その結果、イオンパルスが電場を通過するときにイオン光学レンズに印加される電圧が増大させられる、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
電場が1秒未満の期間中に調節される、請求項12から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
試料からイオンパルスを生成するためのパルス抽出イオン源と、
イオンパルスがイオン光学レンズを通過するときにイオンパルスの焦点を合わせるためのイオン光学レンズと、
イオン光学レンズにより焦点を合わせられたイオンを検出し、かつイオンが検出器に到達する位置を計測するための空間検出器と、
イオンパルスがイオン光学レンズを通過するときにイオン光学レンズに電圧波形を印加するための電圧波形発生器と、を有するTOF質量分析計。
【請求項17】
TOF質量分析計で空間的にイオンパルス中のイオンの焦点を合わせる可変電場の使用。
【請求項18】
イオンパルスがイオン光学レンズを通過するときにイオン光学レンズに供給される電場を調節するための、請求項1から11のいずれか一項に記載のTOF質量分析計でイオン光学レンズと共に使用するための電場調節手段。
【請求項19】
請求項1から11のいずれか一項に記載の質量分析計になるようにTOF質量分析計を修正する方法であって、請求項18の電場調節手段を実装するステップを含む方法。
【請求項20】
空間的にイオンパルス中のイオンの焦点を合わせるために、イオンパルスがイオン光学レンズを通過するときに質量分析計のイオン光学レンズに印加される電圧波形を識別するステップを含む、TOF質量分析計を較正する方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14a】
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【図14b】
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【図14c】
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【公表番号】特表2011−528166(P2011−528166A)
【公表日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517991(P2011−517991)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際出願番号】PCT/GB2009/001758
【国際公開番号】WO2010/007373
【国際公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(501350833)クラトス・アナリテイカル・リミテツド (4)
【Fターム(参考)】