説明

無黄変ポリウレタンフォーム及びその製造方法並びにその成形品及びその製造方法

【課題】 耐ガス黄変性に優れ、拡散汚染の心配のない、かつ耐熱性,耐光性、耐水性、などの耐久性に優れた無黄変ポリウレタンフォーム及びその製造方法並びにその成形品及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 NOxガス黄変性が10以下であることを特徴とする無黄変ポリウレタンフォームであり、これにより、耐熱劣化性、耐光劣化性、耐水性、耐ガス変色性に優れたウレタンフォームを提供でき、従来では使用できなかった条件、用途で使用することが可能となった。また、長期に渡って安定した性能を維持することが可能となり、組み込まれた製品等の性能維持に著しい効果がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、無黄変ポリウレタンフォーム及びその製造方法並びにその成形品及びその製造方法に関するもので、特にカーボネート結合を有するポリウレタンフォーム及びその製造方法並びにその成形品及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、イソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させポリウレタン樹脂を生成し、発泡成形してウレタンフォームとすることが行なわれている。このウレタンフォームとしては、ポリオール化合物としてエーテル結合を持つポリエーテルポリオール化合物を使用した、エーテル系ウレタンフォームが知られており、衣料、洗い具、フィルター、塗布具、クッション、パッキン材、建材、自動車用部品など各種用途に使用されている。
【0003】
しかしながら、上記エーテル系ウレタンフォームは、耐熱性、耐光性が十分とはいえなく、紫外線、熱、水分などにより酸化劣化が促進され、強度の低下、軟化、硬化、変色などが生じ、用途が限定されている。これは、原料のイソシアネート化合物に芳香族系イソシアネート化合物を使用しているためで、生成するポリウレタン樹脂の分子構造中の芳香族構造が、紫外線、熱、水分などによってキノイド化することによるといわれている。
【0004】
これに対して、原料のイソシアネート化合物に脂肪族系イソシアネート化合物又は脂環式系イソシアネート化合物を使用して上記酸化劣化を改善することが行なわれている。また、酸化防止剤を添加し、酸化劣化を抑えることも行なわれている。
【0005】
このようなポリウレタンフォームは、特許文献1及び2に開示されている。
【0006】
【特許文献1】特許第3142230号公報
【特許文献2】特開2004―51795号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び2に記載されたような、これらの脂肪族系イソシアネート又は脂環式系イソシアネートを使用したエーテル系ポリウレタンフォームは、耐水性が悪い。これは衣料用に使用した場合、洗濯を繰り返すと、強度低下が生じ弾性がなくなる、変形してしまうこととなり、甚だしい場合は、ちぎれて崩壊することとなる。
【0008】
また、これに対して特殊なポリエーテルポリオール化合物と特殊な触媒と酸化防止剤を使用して製造し耐水性を改善することも提案されている。しかしながら、このウレタンフォームには、空気中に放置すると黄色、ないし茶色に変色するという問題がある。これは、空気中に微量に含まれるNOx化合物による変色であり、NOxガス黄変として知られている現象である。
【0009】
さらに、脂肪族系イソシアネート又は脂環式系イソシアネートを使用したエーテル系ポリウレタンフォームであっても、耐熱性,耐光性が十分でないため、酸化防止剤の添加が必要である。酸化防止剤の添加によりこれらの特性はある程度改善されるが、酸化防止剤が蒸発によりウレタンフォームの周囲に拡散し、NOxとの作用で黄変する拡散汚染が発生する。これは、ウレタンフォームと同時に使用した布帛や樹脂が汚染変色されたり、ウレタンフォームの周囲に置かれた物品が汚染変色されたりすることとなる。拡散汚染を生じ問題となる酸化防止剤の含有率としては、ポリウレタンフォーム中に500ppm以下とすれば問題が生じないと言われている。
【0010】
この発明はこのような従来の欠点を解消するもので、耐ガス黄変性に優れ、拡散汚染の心配のない、かつ耐熱性,耐光性、耐水性、などの耐久性に優れた無黄変ポリウレタンフォーム及びその製造方法並びにその成形品及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するため、この発明では、NOxガス黄変性が10以下であることを特徴とする、無黄変ポリウレタンフォームを提供する。
【0012】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、光促進劣化試験による強度保持率が80%以上であることを特徴としている。
【0013】
請求項3の発明では、請求項1又は2に記載の発明において、拡散汚染性酸化防止剤の含有率が500ppm以下であることを特徴としている。
【0014】
請求項4の発明では、請求項1から3のいずれかに記載の発明において、脂肪族系イソシアネート化合物及び/又は脂環式系イソシアネート化合物と、ポリカーボネートポリオール化合物から生成することを特徴としている。
【0015】
また、請求項5の発明では、請求項1から4のいずれかに記載の無黄変ポリウレタンフォームの製造方法であって、脂肪族系イソシアネート化合物及び/又は脂環式系イソシアネート化合物とポリカーボネートポリオール化合物を混合することを特徴とする、無黄変ポリウレタンフォームの製造方法を提供する。
【0016】
また、請求項6の発明では、熱圧縮成形にて形を成形したことを特徴とする、請求項1から4に記載の無黄変ポリウレタンフォームの成形品を提供する。
【0017】
請求項7の発明では、170℃以上で熱圧縮成形にて賦形することを特徴とする、請求項6に記載の無黄変ポリウレタンフォームの成形品の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0018】
上記請求項1〜5の発明によれば、耐熱劣化性、耐光劣化性、耐水性、耐ガス変色性に優れたウレタンフォームを提供でき、従来では使用できなかった条件、用途で使用することが可能となった。また、長期に渡って安定した性能を維持することが可能となり、組み込まれた製品等の性能維持に著しい効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
この発明は、脂肪族系イソシアネート化合物又は脂環式系イソシアネート化合物と組み合わせる各種ポリオール化合物を検討した結果、カーボネート結合を分子中に持つポリオール化合物に優れた耐酸化劣化性、耐水性、耐ガス黄変性が優れていることを見出し、さらに鋭意研究の結果、ウレタンフォームとして優れたこの発明を完成するに至ったものである。
【0020】
この発明において、ポリウレタンフォームとは、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物の反応物のフォームであり、分子中にウレタン結合を持つウレタン樹脂のフォームである。
【0021】
この発明の無黄変ポリウレタンフォームとは、熱、光、NOxガスなどにより変色しにくいポリウレタンフォームである。
【0022】
この発明のポリカーボネートポリウレタンフォームとは、カーボネート結合を有するポリウレタン樹脂からなるポリウレタンフォームである。カーボネート結合を有するポリウレタン樹脂とは、樹脂の分子中にウレタン結合に加えてカーボネート結合(-O-CO-O-) を持つ樹脂である。
【0023】
カーボネート結合を有するポリウレタン樹脂の分子中のカーボネート結合は、この樹脂の原料となるポリオール化合物の分子中にカーボネート結合を有する化合物を反応させることにより製造することができる。
【0024】
ポリオール化合物とは、分子中に水酸基を2個持つポリマージオール化合物、水酸基を3個持つポリマートリオール化合物、などの1分子に少なくとも2個の水酸基を平均して有する化合物である。この発明においてポリオール化合物としては、ポリカーボネートポリオール化合物を使用する。また、ポリマーポリオール化合物としては、ポリカーボネートポリオール化合物に加えて、ポリエーテルポリオール化合物、及び/又は、ポリエステルポリオール化合物を併用して使用することができる。さらに、後述する各種の添加剤を加え、ポリオール組成物として使用する。
【0025】
ポリカーボネートポリオール化合物としては、たとえば、水酸基を1分子中に2個有しているポリカーボネートジオール化合物、水酸基を1分子中に3個以上有しているポリカーボネートトリオール化合物、ポリカーボネートテトラオール化合物などが挙げられる。ポリカーボネートポリオール化合物は、モノマーからカーボネート結合にてポリマー化し生成する。モノマーとしては、ジオール化合物が使用できる。ジオール化合物を使用しカーボネート結合を生成する方法としては、たとえば、ジオール化合物と炭酸エステル化合物をエステル交換反応させることによって合成することができる。
【0026】
ポリカーボネートポリオール化合物を生成するモノマーとしては、各種ジオールが使用でき、脂肪族炭化水素を骨格にした脂肪族ジオールが使用でき、枝分かれした炭化水素を骨格とした脂肪族ジオールが好ましく使用できる。枝分かれした炭化水素を骨格とした脂肪族ジオールは、生成するポリカーボネートポリオール化合物の粘度を低くすることができ、後述する発泡成形で安定して生産することができる。
【0027】
ポリカーボネートポリオール化合物の平均分子量は500から5000が好ましく、これらの範囲のポリカーボネートポリオール化合物であれば、制振性の優れたなウレタン樹脂を得ることができ、かつ液状のポリオール化合物を得られる。ポリカーボネートポリオール化合物中の水酸基は、平均で1分子中2個以上であり、2個以上4個以下が好ましい。特に好ましくは、2個以上3個以下である。これらは単独で、または数種を組み合わせて使用することができる。
【0028】
水酸基の個数の異なるポリカーボネートポリオール化合物を組み合わせて使用する場合の好ましい組み合わせは、水酸基が2個のジオール化合物と水酸基が3個のトリオール化合物の組み合わせである。この組み合わせは、ジオール化合物:トリオール化合物の重量比が、10:90から50:50であり、より好ましくは15:85から40:60である。この範囲で組み合わせることにより、柔軟性が良好となる。トリオール化合物が90を超えると、得られる樹脂は柔軟性がなくなる。また、トリオール化合物が50より少なくなると、強度が低下する。これにより上記範囲を外れると、各々製品の使用用途が限られる。
【0029】
この発明において、ポリマーポリオール化合物はポリカーボネートポリオール化合物に加えて、ポリエーテルポリオール化合物を使用することができる。
ポリエーテルポリオール化合物は、耐熱劣化性、耐光劣化性、耐水性、耐ガス変色性を損なわない範囲で使用することができ、ポリマーポリオール化合物100重量部のうち、90重量部以内であり、より好ましくは80重量部以内、さらに好ましくは60重量部以内である。ポリエーテルポリオール化合物の使用の下限は特にはない。
【0030】
この発明のポリウレタン樹脂から成るウレタンフォームは、ポリイソシアネート化合物とポリマーポリオール化合物に加えて、発泡剤、触媒、整泡剤を使用して製造することができる
【0031】
発泡剤は、フォームの空孔となる気体を発生するものである。発泡剤としては、水、蟻酸、二酸化炭素、炭化水素化合物、ハロゲン化アルカン化合物又はその混合物が好ましい。水は、ポリオール化合物100重量部に対し0.5〜10、好ましくは1〜5部で使用されるのが有利である。炭化水素化合物、ハロゲン化アルカン化合物はポリオール化合物100重量部に対し5〜75部の量で使用されるのが有利である。特に水、二酸化炭素、シクロペンタンは地球環境に対する負荷が低く好ましい。
【0032】
触媒は、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物の反応を促進するものである。触媒としては、ポリウレタンフォーム製造に使用される公知の金属触媒、アミン系触媒を使用することができる。金属触媒としては、錫、亜鉛、アルミニウム、チタン、コバルト、ニッケル、セシウムなどの有機化合物や同金属の石ケンが好ましい。また、アミン系触媒も使用することができるが、多量に使用するとガス黄変性が悪化するため、金属触媒を使用することが好ましい。アミン系触媒としては、三級アミン、ジアザビシクロアルケン類やその塩類などが使用できる。これらはいずれも混合して用いることも可能である。触媒の具体例としては、ジブチルスズラウレート、ジフェニルスズラウレート、トリエチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジアザビシクロウンデカンなどが挙げられる。触媒は、ポリオール化合物100重量部に対し触媒0.01〜3重量部範囲で用いるのが好ましい。
【0033】
整泡剤は、生成するフォームの気泡の大きさ、連続性、独立性を調整するものである。整泡剤としては、ポリウレタンフォーム製造に使用される公知のものを使用することができる。例えば、ポリジメチルシロキサン−ポリアルキレンオキシドブロックポリマー、ビニルシラン−ポリアルキレンポリオール重合体が挙げられる。
【0034】
ポリカーボネートポリオール化合物を含むポリオール組成物は、液状であることが好ましく、後述の各種助剤を混合したポリマーポリオール組成物は、発泡成形温度である20℃から60℃で液状であり、より好ましくは25℃から50℃にて、さらに好ましくは30℃から45℃にてそれぞれ液状である。これにより、後述する発泡方法に適する。
【0035】
この発明のポリウレタンフォームには、各種の添加剤を加えて製造することができる。添加剤としては、可塑剤、着色剤、顔料、充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、などを使用することができる。これらは、それぞれポリイソシアネート化合物やポリオール組成物に添加、混合して製造することができる。
【0036】
これら添加剤のうち、酸化防止剤は拡散汚染を引き起こすものがあり、これを防止するためフォームへの含有量は、500ppm以下となるように使用することが好ましく、より好ましくは50ppm以下とする。また、特に酸化防止剤であるBHT=ジブチルヒドロキシトルエンは、含有率を500ppm以下となるように使用することがより好ましく、さらに好ましくは50ppm以下とする。拡散汚染性の酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤などがある。特にBHTは拡散汚染性が強い。本発明のウレタンフォームは拡散汚染が防止でき、かつ耐熱性、耐光性の酸化劣化に優れる。
【0037】
この発明におけるポリイソシアネート化合物は、脂肪族系イソシアネート化合物及び/又は脂環式系イソシアネート化合物が使用できる。脂肪族系イソシアネート化合物とは、イソシアネート基が脂肪族炭化水素の炭素に結合している構造の化合物であり、脂肪族炭化水素構造がありその炭素にイソシアネート基が結合している化合物、及び芳香族炭化水素構造があり脂肪族炭化水素構造を介してイソシアネート基が結合している化合物である。
【0038】
脂環式系イソシアネート化合物とは、環状脂肪族炭化水素構造及びイソシアネート基がある化合物である。
【0039】
これらの脂肪族系及び/又は脂環式系のポリイソシアネート化合物は、1分子に2個のイソシアネート基を有するジイソシアネート化合物、3個のイソシアネート基を有するトリイソシアネート化合物などの、1分子に少なくとも2個のイソシアネート基を平均して有するイソシアネート化合物である。脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、ヘキサンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、リジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどが使用できる。
【0040】
また、脂環式系イソシアネート化合物としては、芳香族イソシアネート化合物の水素化誘導体、イソホロンジイソシアネート、1、3-ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、シクロヘキサンジイソシアネート、シクロヘキサンジメチレンジイソシアネート、メチレンビスシクロヘキサンジイソシアネート、水素添化された芳香族イソシアネート化合物、H12MDI(水添ジフェニルメタンジイソシアネート)、p-フェニレンジイソシアネートなどが使用できる。
【0041】
また、上記脂肪族系及び/又は脂環式系のポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させ、1分子当たりイソシアネート基が2個以上となるように高分子化したポリマーポリイソシアネート化合物も脂肪族系及び/又は脂環式系のポリイソシアネート化合物であり、これも使用できる。
【0042】
また、上記脂肪族系及び/又は脂環式系のポリイソシアネート化合物を重合し、1分子当たりイソシアネート基が2個以上となるように高分子化したポリマーポリイソシアネート化合物も脂肪族系及び/又は脂環式系のポリイソシアネート化合物であり、これも使用できる。これらは、HDIプレポリマーとして知られている。
【0043】
また、本発明の耐熱性,耐光性、耐水性、耐ガス黄変性を損なわない範囲で、芳香族系ポリイソシアネート化合物を併用することができる。
【0044】
ポリイソシアネート化合物はポリマーポリオール化合物中の活性水素基1当量に対しイソシアネート基0.7〜5当量、好ましくは0.8〜1.5当量、さらに好ましくは0.95〜1.2当量の割合で反応させる。また、後述の発泡剤に水を使用する場合、水の活性水素基1当量に対し、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基0.7〜5当量、好ましくは0.8〜1.5当量の割合で増量して使用する。
【0045】
この発明のポリウレタンフォームに使用するポリウレタンフォームは、ポリマーポリオール化合物と発泡剤、触媒、整泡剤とを混合したポリオール組成物とし、このポリオール組成物とポリイソシアネート化合物とを混合し反応させ、同時に気体を発生させ発泡して製造する。混合は、ポリイソシアネート化合物とポリオール組成物は、20℃から60℃で、より好ましくは25℃から50℃にて、さらに好ましくは30℃から45℃にて混合することが好ましい。高温であると、反応が速すぎて安定した製造ができなく、低温であると、液の粘度が高く均一に混合することが難しく均一な気泡構造のフォームが製造できない。
【0046】
混合は均一に混合されることが好ましく、均一な気泡とすることができる。混合はできるだけ短時間で混合することが好ましく、2液が混合されてから注型に至るまで30秒以内であり、好ましくは10秒以内、より好ましくは5秒以内である。連続的にポリイソシアネート化合物とポリオール組成物の2液を混合室に供給し混合し排出する方法が好ましい。
【0047】
このような方法としては、攪拌混合方法があり、高速で回転する攪拌羽根を取付けた混合室を使用することができる。攪拌羽根は高速で回転させることが混合をすばやく均一に行うことから好ましく、2000rpm以上が好ましく、より好ましくは3000rpm以上、さらに好ましくは5000rpm以上である。
【0048】
また、より好ましい別の方法としては、高圧衝突混合である。高圧衝突混合は、高圧式混合機において、2液を高圧にて供給し混合室で高速で衝突させ混合する方法である。この方法によって混合することによって、高粘度の液を混合することができ、使用することのできる材料の選択が広がる。また、短時間で均一に混合することが出来、均一な気泡構造のフォームとすることができる。また、混合が均一であるため、2液の反応が速く進み使用する触媒を少なくすることができる。
【0049】
この発明のポリウレタンフォームは、ポリイソシアネート化合物とポリカーボネートポリオール化合物から製造されるため、耐熱性,耐光性、耐水性、耐ガス黄変性が良好となる。
【0050】
耐熱性、耐光性は、UV光促進劣化試験によって評価することができる。UV光促進劣化試験は、JISに規定されるキセノンランプ光線の照射により酸化劣化を促進させるもので、照射前後の強度の保持率で、80%以上とすることができる。
【0051】
耐水性は、アルカリ性洗剤の5%溶液に対する膨潤性にて、10%以下とすることができる。
【0052】
耐ガス黄変性は、NOxガスによる変色によりにて、JISに規定するNOxガスによる変色試験にて、試験前後の色差ΔE*abを10以下とすることができる。
【0053】
この発明のウレタンフォームは、熱成形をして使用することができる。熱成形は、ポリウレタンフォームを熱した金型内で圧縮し成形する成形方法であり、フォームを緻密にしたり、曲面を成形したり、立体を成形することができる。熱成形温度は可能であれば高温で成形することが好ましく、成形性が良く、短時間で成形できる。また、使用時に高温となることがあっても、変形することがなく好ましい。本発明のポリウレタンフォームウレタンフォームは、成形温度が、170℃以上であり、より好ましくは190℃以上である。上限は限定されないが、220℃以下である。
【0054】
これにより、ポリウレタンフォームを立体的な成形をすることができ、必要とされるポリウレタンフォームの形状が自由にかつ効率良く成形でき、複雑な形状の要求にも対応することができる。
【0055】
この発明のポリウレタンフォームは、以上のように構成するため、優れた耐熱性,耐光性、耐水性、耐ガス黄変性を有するため、例えば、衣料用の型材に使用した場合、洗濯を繰り返しても優れた耐久性と耐変色性がある。また、高温のアイロンがけに対しても変形がない。さらに、酸化防止剤の使用を制限できるため、使用した衣料のフォームの近くを変色させる拡散汚染の心配もない。
【実施例】
【0056】
実施例1
実施例1は次の2液を用意した。
A液 (ポリイソシアネート化合物)
1、3-ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン 30重量部
B液 (ポリマーポリオール化合物)
ポリカーボネートジオール 70重量部
ポリカーボネートトリオール 30重量部
スズ触媒 0.25重量部
発泡剤(水) 1重量部
シリコン整泡剤 1重量部
ポリマーポリオールと発泡剤、整泡剤、触媒を混合しB液とした。
【0057】
A液とB液とをそれぞれ40℃とし、高圧衝突混合方式の連続式混合機にて、A液:B液の流量比が30:102となるように混合室へ導入し混合した。その後、混合後金型に注入し、発泡させ、ポリウレタンフォームとした。得られたポリウレタンフォームは、比重0.08で、軟質でゴム弾性があった。このフォームを、一定の温度の熱板にて厚み1/5に圧縮し成形したところ、熱板温度が190°C以上で成形できた。このとき熱成形温度は190℃とされた。
【0058】
実施例2
実施例2は次の2液を用意した。
A液 (ポリイソシアネート化合物)
1、3-ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン 30重量部
B液 (ポリマーポリオール化合物)
ポリカーボネートジオール 70重量部
ポリカーボネートトリオール 30重量部
スズ触媒 0.25重量部
アミン触媒 0.25重量部
発泡剤(水) 1重量部
酸化防止剤 1重量部
シリコン整泡剤 1重量部
その他は実施例1と同様に生成した。
【0059】
実施例3
実施例3は次の2液を用意した。
A液 (ポリイソシアネート化合物)
1、3-ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン 30重量部
B液 (ポリマーポリオール化合物)
ポリカーボネートジオール 50重量部
ポリカーボネートトリオール 50重量部
スズ触媒 0.25重量部
発泡剤(水) 1重量部
シリコン整泡剤 1重量部
その他は実施例1と同様に生成した。
【0060】
実施例4
実施例4は次の2液を用意した。
A液 (ポリイソシアネート化合物)
ヘキサメチレンジイソシアネートプレポリマー 100重量部
B液 (ポリマーポリオール化合物)
ポリカーボネートジオール 70重量部
ポリカーボネートトリオール 30重量部
スズ触媒 0.25重量部
発泡剤(水) 1重量部
シリコン整泡剤 1重量部
その他は実施例1と同様に生成した。
【0061】
比較例1
上記実施例1のポリカーボネートジオールとポリカーボネートトリオールをポリエーテルトリオールに置き換え、ポリエーテルポリオール100重量部とした。混合攪拌、注型、成形は上記実施例1と同様に行った。
【0062】
比較例1では、ガスは発生するものの、ウレタン樹脂化が進行せず、ウレタンフォームは得られなかった。
【0063】
比較例2
上記比較例1の触媒を、スズ触媒を1重量部、アミン触媒を1重量部とした。ウレタン樹脂化が促進され、ウレタンフォームが得られた。得られたポリウレタンフォームは、比重0.08、軟質でゴム弾性があった。
【0064】
比較例3
上記比較例2に、さらに酸化防止剤1重量部を加えて混合した。NOxガス変色試験による黄変性は比較例2に比べて上昇した。
【0065】
上記実施例1〜4、比較例1〜3のポリウレタンフォームの強度、耐久性(光促進劣化試験)、NOxガス黄変試験を行った。結果を表1に示す。
【0066】
【表1】

【0067】
実施例1〜4のウレタンフォームは、UV光促進劣化試験後の強度保持率で、80%以上を保持しており、耐熱性、耐光性に優れる。また、何れも強度維持率が高い。また、耐ガス黄変性が、10以下であり優れている。
【0068】
このうち、実施例2は、酸化防止剤の使用を制限し、耐熱性、耐光性に優れ、拡散汚染の心配が少ない。さらに、実施例3は、酸化防止剤を使用していないが、耐熱性、耐光性に優れ、拡散汚染の心配が全くない。
【0069】
実施例5
実施例1のポリウレタンフォームを厚み20mmに切出し、金型にて200℃にて熱成形し、衣料用のブラジャー用パットに成形した。成形品は変色も表面のベトツキも生じなかった。これを洗濯し天日乾燥後アイロンがけしたところ変色、変形ともになかった。
【0070】
比較例4
比較例2のポリウレタンフォームを実施例5と同様に熱成形した。200℃にて成形品はうっすら黄色く変色し、表面にベトツキがみられた。これを洗濯し天日乾燥したところ、黄色変色が進んだ。さらにアイロンがけしたところ変形してしまった。
【0071】
熱成形性
各フォームを10mm厚に切り出し、厚みが1/5(2mm)となるように一定の温度に熱した熱板にて60秒間圧縮し、熱成形可能な最低温度を求めた。結果を表1に示した。
【0072】
測定方法
この発明にて使用した測定方法は次のとおりである。
熱成形性:各フォームを10mm厚に切り出し、厚みが1/5となるように熱板にて60秒間圧縮し、熱成形可能な最低温度を求めた。
比重:直方体を切り出し、重量と各辺長から算出した見かけの比重。
引張り強さ、伸び:JIS K 6251 ダンベル状1号型による破断強度。
光促進劣化試験:JISK 7350−2 キセノンランプによる照射試験。ATLAS社 SUNTEST XLS+による1000時間照射。照射前後の引張り強さの保持率(%)を求めた。
洗剤液膨潤率:アルカリ性洗剤の5%水溶液に、25℃で24時間浸漬後、試験液を軽く押圧し拭った状態での、試験前後の試験片の長さの変化率を次式にて求めた。 膨潤率(%)=(試験前の長さ-試験後の長さ)÷(試験前の長さ)×100
NOxガス黄変試験:JIS L 0855 規定の方法によって1サイクル試験を行い、色差計にて試験前後の色差ΔE*abを求めた。
拡散汚染:ガスクロマトグラフ分析によりBHT含有量を求め、50ppm以下であれば、拡散汚染の心配なし、500ppm以上であれば可能性ありとした。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
NOxガス黄変性が10以下であることを特徴とする、無黄変ポリウレタンフォーム。
【請求項2】
光促進劣化試験による強度保持率が80%以上であることを特徴とする、請求項1に記載の無黄変ポリウレタンフォーム。
【請求項3】
拡散汚染性酸化防止剤の含有率が500ppm以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の無黄変ポリウレタンフォーム。
【請求項4】
脂肪族系イソシアネート化合物及び/又は脂環式系イソシアネート化合物と、ポリカーボネートポリオール化合物から生成することを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の無黄変ポリウレタンフォーム。
【請求項5】
脂肪族系イソシアネート化合物及び/又は脂環式系イソシアネート化合物とポリカーボネートポリオール化合物を混合することを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の無黄変ポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項6】
熱圧縮成形にて形を成形したことを特徴とする、請求項1から4に記載の無黄変ポリウレタンフォームの成形品。
【請求項7】
170℃以上で熱圧縮成形にて賦形することを特徴とする、請求項6に記載の無黄変ポリウレタンフォームの成形品の製造方法。

【公開番号】特開2008−88375(P2008−88375A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−273485(P2006−273485)
【出願日】平成18年10月4日(2006.10.4)
【出願人】(392003018)雪ヶ谷化学工業株式会社 (7)
【Fターム(参考)】