説明

焦点調整装置およびレーザ加工装置

【課題】ワークの加工面の反射の状態に関わらず、変位センサの測定方式を切り換えたり、変位センサを交換したりせずにオートフォーカスを行えるようにする。
【解決手段】エラーアンプ213、モータドライバ214により構成される焦点調整部は、ワーク102の加工面でプローブ光が正反射された場合、正反射されたプローブ光が拡散反射板212により拡散反射された後、加工面で反射された反射光を用いて変位センサ211により測定された測定結果に基づいて、対物レンズ217の焦点の位置を調整する。また、焦点調整部は、加工面でプローブ光が正反射された場合、その拡散反射された反射光を用いて変位センサ211により測定された測定結果に基づいて、対物レンズ217の焦点の位置を調整する。本発明は、例えば、レーザ加工装置に適用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焦点調整装置およびレーザ加工装置に関し、特に、オートフォーカス機能を搭載した焦点調整装置およびレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜太陽電池パネルのレーザ加工を行う場合、薄膜が蒸着されるガラス基板の撓みなどにより、加工用のレーザ光を出射する対物レンズと加工面との間の距離が変動するため、レーザ光の焦点位置を加工面に追従させる必要がある。そのため、レーザ加工装置には、加工面の上下方向の変動に合わせて対物レンズの焦点位置を自動調整するオートフォーカス機能が通常搭載されている。
【0003】
また、そのようなオートフォーカス機能の制御用に、薄膜太陽電池パネル等のワークに測定用のレーザ光であるプローブ光を照射し、ワークからの反射光によりワークの変位またはワークまでの距離を測定する変位センサがよく用いられる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−111534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、変位センサの測定方式は、被測定物からの正反射光を用いる正反射方式と、被測定物からの拡散反射光を用いる拡散反射方式と2種類に分かれている。そのため、ワークの加工面が正反射面の場合と拡散反射面の場合とで、変位センサの測定方式を切り換えたり、変位センサを交換したりする必要がある。
【0006】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、ワークの加工面の反射の状態に関わらず、変位センサの測定方式を切り換えたり、変位センサを交換したりせずにオートフォーカスを行えるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の側面のレーザ加工装置は、レーザ加工装置の焦点調整装置であって、加工用のレーザ光を出射する対物レンズと、測定光を出射し、その反射光により物体の変位または物体までの距離を測定する変位センサと、ワークの表面で正反射された測定光が入射する位置に配置されている拡散反射体と、変位センサの測定結果に基づいて、対物レンズの焦点の位置を調整する焦点調整部とを備え、焦点調整部は、ワークの表面で測定光が正反射された場合、ワークの表面で正反射された測定光が拡散反射体により拡散反射された後、ワークの表面で反射された第1の反射光を用いて変位センサにより測定された第1の測定結果に基づいて、対物レンズの焦点の位置を調整する。
【0008】
本発明の第1の側面のレーザ加工装置においては、ワークの表面で測定光が正反射された場合、ワークの表面で正反射された測定光が拡散反射体により拡散反射された後、ワークの表面で反射された第1の反射光を用いて変位センサにより測定された第1の測定結果に基づいて、対物レンズの焦点の位置が調整される。
【0009】
従って、ワークの表面(加工面)が正反射面の場合でも、拡散反射光を用いて変位センサにより測定された測定結果に基づいて、対物レンズの焦点の位置を調整することができる。その結果、ワークの表面(加工面)の反射の状態に関わらず、変位センサの測定方式を切り換えたり、変位センサを交換したりせずにオートフォーカスを行うことができる。
【0010】
この拡散反射体は、例えば、金属ブロックの表面に梨地メッキやサンドブラストを施したもの、あるいは、セラミックス系のブロックにより構成される。また、拡散反射体の形状は、板状、球状など任意である。この焦点調整部は、例えば、エラーアンプ、モータドライバ等により構成される。
【0011】
この焦点調整部には、ワークの表面で測定光が拡散反射された場合、ワークの表面で拡散反射された第2の反射光を用いて変位センサにより測定された第2の測定結果に基づいて、対物レンズの焦点の位置を調整させることができる。
【0012】
これにより、ワークの表面(加工面)の反射の状態に関わらず、変位センサの測定方式を切り換えたり、変位センサを交換したりせずにオートフォーカスを行うことができる。
【0013】
この焦点調整部には、ワークの表面の反射の状態に基づいて、正反射面または拡散反射面のいずれに対して対物レンズの焦点の位置を調整するかを選択させることができる。
【0014】
これにより、ワークの表面(加工面)の反射の状態に基づいて、適切にオートフォーカスを行うことができる。
【0015】
この焦点調整部には、変位センサの測定結果が所定の範囲から外れた場合、正反射面または拡散反射面のいずれに対して対物レンズの焦点の位置を調整するかを切り換えることができる。
【0016】
これにより、ワークの表面(加工面)の反射の状態に応じて、自動的に焦点位置の調整方法を切り換えることができる。
【0017】
この焦点調整装置には、変位センサと拡散反射体の組を2つ以上設け、拡散反射体を、同じ組の変位センサと対物レンズとの間であって、対物レンズの近傍に設けることができる。
【0018】
これにより、変位センサと拡散反射体との間の距離を短くすることができる。
【0019】
この焦点調整装置においては、第1の変位センサと第2の変位センサとの間に対物レンズを配置し、第1の変位センサと第2の変位センサとの間の相対方向を、互いに直交する第1の加工方向および第2の加工方向に対して斜めに設定することができる。
【0020】
これにより、2組の変位センサと拡散反射体を用いて、例えば、X+方向、X−方向、Y+方向、Y−方向の4方向の加工方向について、ワークの表面(加工面)の変位の先読みを行うことができる。
【0021】
この焦点調整装置においては、第1の変位センサの対物レンズに対する第1の相対方向を、所定の第1の加工方向に設定し、第2の変位センサの対物レンズに対する第2の相対方向を、第1の加工方向に直交する第2の加工方向に設定することができる。
【0022】
これにより、2組の変位センサと拡散反射体を用いて、例えば、X+方向、X−方向、Y+方向、Y−方向のワークの4方向の加工方向について、ワークの表面(加工面)の変位を測定することができる。
【0023】
この焦点調整装置においては、変位センサと拡散反射体の組を少なくとも4つ設け、第1の変位センサと第2の変位センサとの間および第3の変位センサと第4の変位センサとの間に対物レンズを配置し、第1の変位センサと第2の変位センサとの間の相対方向と第3の変位センサと第4の変位センサとの間の相対方向を互いに直交させることができる。
【0024】
これにより、例えば、X+方向、X−方向、Y+方向、Y−方向の4方向の加工方向について、より正確にワークの表面(加工面)の変位の先読みを行うことができる。
【0025】
各拡散反射体を、対物レンズの周囲に装着される部材に設けることができる。
【0026】
これにより、焦点調整装置をシンプルかつ小型化することができる。
【0027】
この変位センサの測定点を、ワークの加工方向において対物レンズの焦点の位置より前方に設定することができる。
【0028】
これにより、ワークの表面(加工面)の変位の先読みを行うことができる。
【0029】
この焦点調整装置においては、変位センサ、拡散反射体、および、対物レンズを接続し、変位センサ、拡散反射体、および、対物レンズを一体としてワークに対して垂直な方向に移動させる移動機構をさらに設けることができる。
【0030】
これにより、対物レンズの焦点の位置の誤差を小さくするとともに、焦点の調整方法をシンプルにすることができる。
【0031】
この移動機構は、例えば、モータ、ガルバノメータ、ネジ等により構成される。
【0032】
この焦点調整装置には、対物レンズのワークに対して垂直な方向の移動量を検出する移動量検出部をさらに設け、この焦点調整部には、移動量検出部の検出結果に基づいて、対物レンズの焦点の位置を調整させることができる。
【0033】
これにより、対物レンズの焦点の位置の誤差を小さくすることができる。
【0034】
この移動量検出部は、例えば、ロータリエンコーダ、リニアエンコーダ、静電キャパシタ型のセンサ等により構成される。
【0035】
この焦点調整装置においては、前記対物レンズを、複数のレンズにより構成し、この焦点調整部には、前記対物レンズのレンズ間の間隔を調整することにより、前記対物レンズの焦点の位置を調整させるようにすることができる。なお、対物レンズは固定焦点であって、別の焦点を調整するレンズを組み合わせることで実現されてもよい。
【0036】
これにより、対物レンズを移動させずに、焦点の位置を調整することができる。
【0037】
この焦点調整装置においては、変位センサと拡散反射体を接続し、変位センサと拡散反射体を一体としてワークに対して平行移動させる移動機構をさらに設けることができる。
【0038】
これにより、ワークの変位の測定点とレーザ加工点との間の距離を調整することができる。
【0039】
この移動機構は、例えば、各種のアクチュエータにより構成される。
【0040】
この焦点調整装置においては、変位センサと拡散反射体との間の相対方向を、互いに直交する第1の加工方向および第2の加工方向に対して斜めに設定することができる。
【0041】
これにより、1組の変位センサと拡散反射体を用いて、例えば、X+方向、X−方向、Y+方向、Y−方向の4方向の加工方向について、ワークの表面(加工面)の変位の先読みを行うことができる。
【0042】
この焦点調整装置においては、変位センサと拡散反射体が接続された組を少なくとも2つ設け、第1の組の変位センサと拡散反射体との間の相対方向を、所定の第1の加工方向に設定し、第2の組の変位センサと拡散反射体との間の相対方向を、第1の加工方向に直交する第2の加工方向に設定することができる。
【0043】
これにより、例えば、X+方向、X−方向、Y+方向、Y−方向の4方向の加工方向について、より正確にワークの表面(加工面)の変位の先読みをより正確に行うことができる。
【0044】
この焦点調整装置においては、変位センサと拡散反射体を接続し、変位センサと拡散反射体を一体として対物レンズを中心にワークに対して平行に回転させる回転機構をさらに設けることができる。
【0045】
これにより、ワークの表面(加工面)の変位の先読みを行う方向を任意に設定することができる。
【0046】
この回転機構は、例えば、モータ、回転ギア等により構成される。
【0047】
この焦点調整装置においては、変位センサと拡散反射体を一体としてワークに対して平行移動させる移動機構をさらに設けることができる。
【0048】
これにより、ワークの表面(加工面)の変位の先読みを行う方向を任意に設定することができるとともに、ワークの変位の測定点とレーザ加工点との間の距離を調整することができる。
【0049】
この移動機構は、例えば、各種のアクチュエータにより構成される。
【0050】
本発明の第2の側面のレーザ加工装置においては、上記の焦点調整装置を設けることができる。
【0051】
従って、ワークの表面(加工面)の反射の状態に関わらず、変位センサの測定方式を切り換えたり、変位センサを交換したりせずにオートフォーカスを行うことができる。
【発明の効果】
【0052】
本発明の第1の側面または第2の側面によれば、ワークの加工面の反射の状態に関わらず、変位センサの測定方式を切り換えたり、変位センサを交換したりせずにオートフォーカスを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明を適用したレーザ加工装置の一実施の形態を示すブロック図である。
【図2】ワークの一例である薄膜太陽電池パネルの構成例を模式的に示した図である。
【図3】レーザ加工装置に搭載される焦点調整装置の構成例を示すブロック図である。
【図4】ワークの加工面が拡散反射面である場合の焦点調整方法について説明するための図である。
【図5】ワークの加工面が拡散反射面である場合の焦点調整方法について説明するための図である。
【図6】ワークの加工面が正反射面である場合の焦点調整方法について説明するための図である。
【図7】ワークの加工面が正反射面である場合の焦点調整方法について説明するための図である。
【図8】レーザ加工装置に搭載される焦点調整装置の第1の変形例を示すブロック図である。
【図9】レーザ加工装置に搭載される焦点調整装置の第2の変形例を示すブロック図である。
【図10】拡散反射面と正反射面が混在する場合の一例を示す図である。
【図11】ワークの加工面の反射の状態を検出する方法を説明するための図である。
【図12】ワークの加工面の反射の状態を検出する方法を説明するための図である。
【図13】変位センサと拡散反射板の設置方法の第1の実施の形態を示す図である。
【図14】変位センサと拡散反射板の設置方法の第1の実施の形態を示す図である。
【図15】変位センサと拡散反射板の設置方法の第1の実施の形態の変形例を示す図である。
【図16】加工ユニットの構成例を示すブロック図である。
【図17】変位センサと拡散反射板の設置方法の第2の実施の形態を示す図である。
【図18】変位センサと拡散反射板の設置方法の第2の実施の形態の第1の変形例を示す図である。
【図19】変位センサと拡散反射板の設置方法の第2の実施の形態の第2の変形例を示す図である。
【図20】変位センサと拡散反射板の設置方法の第2の実施の形態の第3の変形例を示す図である。
【図21】変位センサと拡散反射板の設置方法の第2の実施の形態の第4の変形例を示す図である。
【図22】焦点位置の調整方法の変形例を説明するための図である。
【図23】焦点位置の調整方法の変形例を説明するための図である。
【図24】焦点位置の調整方法の変形例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施の形態という)について説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.レーザ加工装置の実施の形態
2.変位センサと拡散反射板の設置方法の例
3.変形例
【0055】
<1.レーザ加工装置の実施の形態>
[レーザ加工装置101の構成例]
図1は、本発明を適用したレーザ加工装置101の一実施の形態を模式的に示す外観図である。
【0056】
なお、以下、レーザ加工装置101の長手方向において図1の左側に見えている側を前側とし、その逆側を後ろ側とする。また、以下、レーザ加工装置101の短手方向において、図1で手前に見えている側を右側とし、その逆側を左側とする。
【0057】
さらに、以下、レーザ加工装置101の横方向(左右方向)をX方向と称し、左から右に向かう方向を正の方向とする。また、以下、X方向の正の方向をX+方向と称し、負の方向をX−方向と称する。さらに、以下、レーザ加工装置101の奥行き方向をY方向と称し、前から後ろに向かう方向を正の方向とする。また、以下、Y方向の正の方向をY+方向と称し、負の方向をY−方向と称する。さらに、以下、レーザ加工装置101の上下方向をZ方向と称し、下から上に向かう方向を正の方向とする。また、以下、Z方向の正の方向をZ+方向と称し、負の方向をZ−方向と称する。X方向、Y方向、および、Z方向は、互いに直交する。
【0058】
レーザ加工装置101は、レーザ光を用いてワーク102に対して各種の加工を行う装置である。レーザ加工装置101は、架台111、Y軸駆動部112、載物台113、ガントリ114、および、加工ヘッド115a乃至115fを含むように構成される。
【0059】
Y軸駆動部112は、架台111の上にY方向に延びるように設けられており、ワーク102が載置されている載物台113をY方向に移動させる。そして、載物台113がY方向に移動することにより、レーザ光によるワーク102の加工位置がY方向に進行する。換言すれば、ワーク102の加工方向がY方向となる。
【0060】
架台111のY方向の中央やや後ろ寄りには、門型のガントリ114が、架台111の上をX方向に横断するように設けられている。また、ガントリ114の梁の前面には、加工ヘッド115a乃至115fが設けられている。
【0061】
加工ヘッド115a乃至115fは、それぞれレーザ光をワーク102に照射することにより、ワーク102の加工を行う。加工ヘッド115a乃至115fは、図示せぬ駆動系により、ガントリ114の梁に沿ってそれぞれX方向に移動させることが可能である。そして、加工ヘッド115a乃至115fがX方向に移動することにより、レーザ光によるワーク102の加工位置がX方向に進行する。換言すれば、ワーク102の加工方向がX方向となる。
【0062】
また、加工ヘッド115a乃至115fは、図示せぬ駆動系により、それぞれZ方向に移動させることが可能である。
【0063】
なお、以下、加工ヘッド115a乃至115fを個々に区別する必要がない場合、単に、加工ヘッド115と称する。また、図1に示される加工ヘッドの数は、その一例であり、任意の数に設定することができる。
【0064】
[ワーク102の構成例]
ワーク102の種類は特に限定されるものではないが、図2にその一例を示す。具体的には、図2は、CIGS(Copper Indium Gallium DiSelenide)を用いた薄膜太陽電池パネル151の構成例を模式的に示している。
【0065】
薄膜太陽電池パネル151は、ガラス基板151A、裏面電極層151B、発電層151C、および、透明電極層151Dの4層構造からなり、例えば、透明電極層151D側からレーザ光を照射して加工する。そして、裏面電極層151Bは、例えば、Mo等からなる金属層であり、レーザ光を正反射する。発電層151Cは、例えば、CIGS等からなる光吸収層、および、ZnS、InS等からなるバッファ層により構成され、レーザ光を拡散反射する。透明電極層151Dは、例えば、ZnO等からなり、レーザ光を拡散反射する。
【0066】
従って、従来の変位センサでは、ガラス基板151A、発電層151C、および、透明電極層151Dに対する変位または距離を、拡散反射方式を用いて測定し、裏面電極層151Bに対する変位または距離を、正反射方式を用いて測定する必要がある。
【0067】
なお、レーザ加工装置101の加工対称となる薄膜太陽電池パネルの構成は、この例に限定されるものではない。例えば、他にも、裏面電極層151Bと透明電極層151Dが逆に配置され、ガラス基板151A側からレーザ光を照射して加工されるような薄膜太陽電池パネル等が想定される。
【0068】
[焦点調整装置201の構成例]
図3は、レーザ加工装置101の各加工ヘッド115に搭載される焦点調整装置201の構成例を示すブロック図である。
【0069】
焦点調整装置201は、変位センサ211、拡散反射板212、エラーアンプ(EA)213、モータドライバ214、Z軸駆動用モータ215、Z軸駆動用ネジ216、および、対物レンズ217を含むように構成される。
【0070】
変位センサ211は、所定の波長(例えば、650nm)の測定用のレーザ光であるプローブ光(測定光)を用いて、被測定物の変位または被測定物までの距離を測定する変位センサである。変位センサ211は、レーザ光源231、受光レンズ232、リニアセンサ233、および、信号処理部234を内蔵している。
【0071】
レーザ光源231は、所定の波長(例えば、650nm)の測定用のレーザ光であるプローブ光(測定光)を出射する。レーザ光源231から出射されたプローブ光は、レーザ光源231とともに投光部を構成するレンズ等(不図示)を介して、ワーク102の表面である加工面に対して斜め方向に照射される。
【0072】
なお、レーザ光源231から出射したプローブ光のワーク102の加工面への入射角θは、0度<θ<90度の範囲内に設定される。
【0073】
受光レンズ232は、レーザ光源231から出射されたプローブ光の反射光を受光し、受光した反射光をリニアセンサ233上に結像させる。
【0074】
リニアセンサ233は、例えば、受光素子が1次元に配列されたCCDイメージセンサまたはCMOSイメージセンサにより構成される。リニアセンサ233の各受光素子は、受光レンズ232を介して入射したプローブ光の反射光の光量を検出する。そして、リニアセンサ233は、各受光素子の受光量を示す検出信号を信号処理部234に供給する。
【0075】
信号処理部234は、リニアセンサ233におけるプローブ光の反射光の結像位置(受光量がピークとなる位置)または受光量の分布に基づいて、被測定物の変位または被測定物までの距離を検出する。そして、信号処理部234は、検出結果を示す測定信号をエラーアンプ213に供給する。なお、以下、信号処理部234が、被測定物までの距離を示す測定信号を出力する場合について説明する。
【0076】
拡散反射板212は、レーザ光源231から出射されたプローブ光がワーク102の加工面で正反射された場合に、正反射したプローブ光が入射する位置に設置される。そして、拡散反射板212は、ワーク102の加工面を介して入射したプローブ光を拡散反射する。
【0077】
なお、拡散反射板212の向きは、ワーク102の加工面で正反射されたプローブ光が確実に入射する向きであれば良く、例えば、ワーク102の加工面で正反射されたプローブ光が垂直に入射する向きに設定される。
【0078】
また、拡散反射板212は、鏡面反射するもの以外であれば特に限定されるものではなく、例えば、金属ブロックの表面に梨地メッキやサンドブラストを施したもの、あるいは、セラミックス系のブロックにより構成される。ただし、拡散反射板212により拡散反射されたプローブ光がより多く変位センサ211の受光レンズ232に入射し、変位センサ211の受光感度が上がるように、プローブ光の波長に対して反射率が高い素材またはコーティングを拡散反射板212に用いるのが望ましい。
【0079】
エラーアンプ213には、変位センサ211から出力される測定信号の目標値を示すフォーカス設定値が入力される。フォーカス設定値は、例えば、対物レンズ217の焦点の位置がワーク102の加工面に合っているときに変位センサ211から出力される測定信号の値に設定される。そして、エラーアンプ213には、変位センサ211から供給される測定信号の値とフォーカス設定値との差を増幅したエラー信号をモータドライバ214に供給する。従って、エラー信号は、対物レンズ217の焦点の位置とワーク102の加工面との間のズレ(誤差)を反映した値となる。
【0080】
モータドライバ214は、エラー信号に示される誤差を解消し、対物レンズ217の焦点がワーク102の加工面に合うように、Z軸駆動用モータ215を駆動して、対物レンズ217をZ方向に移動させることにより、対物レンズ217の焦点の位置を調整する。
【0081】
Z軸駆動用モータ215は、Z軸駆動用ネジ216を介して対物レンズ217に接続されている。そして、Z軸駆動用モータ215の回転方向の運動が、Z軸駆動用ネジ216を介して対物レンズ217に伝達されることにより、矢印Aで示されるワーク102の加工面に対して垂直な方向(Z方向)に対物レンズ217が移動する。これにより、対物レンズ217の焦点位置がZ方向に移動する。
【0082】
対物レンズ217は、加工用のレーザ光LBが入射し、ワーク102の加工面において結像させる。
【0083】
[焦点調整装置201の焦点調整方法]
次に、図4乃至図7を参照して、焦点調整装置201の焦点調整方法について説明する。
【0084】
(拡散反射面に対する焦点調整方法)
まず、図4および図5を参照して、ワーク102の加工面が拡散反射面である場合の焦点調整方法について説明する。
【0085】
ワーク102の加工面が拡散反射面である場合、レーザ光源231から出射されたプローブ光は、矢印Aの方向に進み、ワーク102の加工面で拡散反射される。拡散反射されたプローブ光の一部は、矢印B1乃至B4で示されるように、変位センサ211の方向に反射される。そのうち、矢印B2および矢印B3で示されるように、受光レンズ232に入射した反射光が、リニアセンサ233上に結像する。
【0086】
一方、ワーク102の加工面で拡散反射されたプローブ光の一部は、矢印B5乃至B7に示されるように、拡散反射板212の方向に反射され、さらに拡散反射板212により拡散反射される。拡散反射板212で拡散反射された反射光は、2度拡散反射されることにより非常に弱くなっているため、再度ワーク102の加工面で拡散反射され、変位センサ211の受光レンズ232に入射することはほとんどない。
【0087】
従って、変位センサ211は、通常の拡散反射方式の場合と同様に、ワーク102の加工面で1度目に拡散反射された反射光により測定を行う。
【0088】
図5は、変位センサ211、拡散反射板212、および、対物レンズ217の位置関係を模式的に示している。
【0089】
ここで、対物レンズ217の焦点がワーク102の加工面に合っている状態(以下、合焦状態と称する)において、ワーク102の加工面から変位センサ211(のプローブ光の出射口)までの高さをh1、対物レンズ217とワーク102の加工面との間の距離(ワークディスタンス)をWD、変位センサ211から出射されたプローブ光がワーク102の加工面に入射するまでの距離をd1とする。また、変位センサ211から出射されたプローブ光のワーク102の加工面への入射角をθとする。このとき、次式(1)が成り立つ。
【0090】
h1=d1×cosθ ・・・(1)
【0091】
距離d1は、式(1)より次式(2)により表される。
【0092】
d1=h1/cosθ ・・・(2)
【0093】
このとき、変位センサ211は、ワーク102の加工面により拡散反射された反射光により測定を行うため、変位センサ211の測長距離は距離d1となる。従って、変位センサ211は、測定結果として距離d1を示す測定信号をエラーアンプ213に供給する。
【0094】
一方、エラーアンプ213には、フォーカス設定値として、このときの合焦状態における距離d1を示す測定信号の値が入力される。より簡単に言えば、フォーカス設定値が距離d1に設定される。従って、エラーアンプ213から出力されるエラー信号の値は0になる。
【0095】
また、合焦状態からワーク102がZ−方向(下方向)に距離δだけ動いた場合に、プローブ光がワーク102の加工面に入射するまでの距離d1’は、次式(3)により表される。
【0096】
d1'=(h1+δ)/cosθ ・・・(3)
【0097】
従って、ワーク102が移動する前の距離d1と移動した後の距離d1’との差は、次式(4)により表される。
【0098】
d1'−d1=δ/cosθ ・・・(4)
【0099】
このとき、変位センサ211は、測定結果として距離d1’を示す測定信号をエラーアンプ213に供給する。従って、エラーアンプ213から出力されるエラー信号の値は、式(4)の右辺のδ/cosθを示す値となる。
【0100】
ここで、入射角θは設計値であり既知なので、モータドライバ214は、エラー信号の値に基づいて、ワーク102の加工面のZ方向の変位δを求めることができる。そして、モータドライバ214は、Z軸駆動用モータ215を駆動して、対物レンズ217を下方向に距離δだけ移動させることにより、対物レンズ217の焦点をワーク102の加工面に合わせることができる。
【0101】
(正反射面に対する焦点調整方法)
次に、図6および図7を参照して、ワーク102の加工面が正反射面である場合の焦点調整方法について説明する。
【0102】
ワーク102の加工面が正反射面である場合、レーザ光源231から出射されたプローブ光は、矢印Aの方向に進み、ワーク102の加工面で正反射され、矢印Bの方向に進む。そして、矢印Bの方向に進んだプローブ光は拡散反射板212に入射し、拡散反射板212により拡散反射される。
【0103】
拡散反射板212により拡散反射されたプローブ光のうち矢印C1,C2の方向に進んだプローブ光は、ワーク102の加工面で再び正反射され、矢印D1,D2の方向に進み、受光レンズ232に入射する。このように、拡散反射板212により拡散反射されたプローブ光の一部が、受光レンズ232に入射し、リニアセンサ233上に結像する。そして、変位センサ211は、拡散反射板212により拡散反射された後、ワーク102の加工面で正反射された反射光の一部により測定を行う。
【0104】
図7は、図5と同様に、変位センサ211、拡散反射板212、および、対物レンズ217の位置関係を模式的に示している。
【0105】
ここで、合焦状態において、ワーク102の加工面で正反射されたプローブ光が、拡散反射板212に入射するまでの距離をd2とする。また、ワーク102の加工面からプローブ光の拡散反射板212への入射位置までの高さをh2とする。
【0106】
ここで、ワーク102の加工面で正反射されたプローブ光の反射角は、入射角θと等しくなるため、次式(5)が成り立つ。
【0107】
h2=d2×cosθ ・・・(5)
【0108】
従って、変位センサ211から出射されたプローブ光がワーク102の加工面を介して拡散反射板212に入射するまでの距離は、次式(6)により表される。
【0109】
d1+d2=(h1+h2)/cosθ ・・・(6)
【0110】
このとき、変位センサ211は、拡散反射板212により拡散反射された後、ワーク102の加工面で正反射された反射光により測定を行うため、変位センサ211の測長距離は距離d1+d2となる。従って、変位センサ211は、測定結果として距離d1+d2を示す測定信号をエラーアンプ213に供給する。
【0111】
一方、エラーアンプ213には、フォーカス設定値として、このときの合焦状態における距離d1+d2を示す測定信号の値が入力される。より簡単に言えば、フォーカス設定値が距離d1+d2に設定される。従って、エラーアンプ213から出力されるエラー信号の値は0になる。
【0112】
また、上述した図5の例と同様に、合焦状態からワーク102がZ−方向(下方向)に距離δだけ動いた場合に、プローブ光がワーク102の加工面を介して拡散反射板212に入射するまでの距離d1’+d2’は、次式(7)により表される。
【0113】
d1'+d2'=(h1+h2+2δ)/cosθ ・・・(7)
【0114】
従って、ワーク102が移動する前の距離d1+d2と移動した後の距離d1’+d2’との差は、次式(8)により表される。
【0115】
d1'+d2'−(d1+d2)=2δ/cosθ ・・・(8)
【0116】
このとき、変位センサ211は、測定結果として距離d1’+d2’を示す測定信号をエラーアンプ213に供給する。従って、エラーアンプ213から出力されるエラー信号の値は、式(8)の右辺の2δ/cosθを示す値となる。
【0117】
ここで、入射角θは設計値であり既知なので、モータドライバ214は、エラー信号の値に基づいて、ワーク102の加工面のZ方向の変位δを求めることができる。そして、モータドライバ214は、Z軸駆動用モータ215を駆動して、対物レンズ217を下方向に距離δだけ移動させることにより、対物レンズ217の焦点をワーク102の加工面に合わせることができる。
【0118】
そして、焦点調整装置201は、ワーク102の加工面の反射の状態に基づいて、外部からの指令や設定により、あるいは、後述するように自動的に、正反射面または拡散反射面のいずれに対して対物レンズ217の焦点を調整するかを選択する。すなわち、焦点調整装置201は、ワーク102の加工面の反射の状態に基づいて、正反射面に対する焦点調整方法または拡散反射面に対する焦点調整方法のいずれか一方を選択して、対物レンズ217の焦点の位置を調整する。
【0119】
このように、ワーク102の加工面が正反射面か拡散反射面かに関わらず、変位センサ211の測定方式を切り換えたり、変位センサ211を交換したりせずに、オートフォーカスを行うことができる。また、変位センサ211の測定方式の切り換え時や、変位センサ211を交換時に必要な各種の調整や設定等の作業が不要になる。
【0120】
なお、図7では、図を分かりやすくするために距離δを大きく示しており、ワーク102が移動する前と後で、拡散反射板212へのプローブ光の入射位置が大きくずれて示されている。しかし、実際には、変位δはごく小さい値であり、ワーク102が移動する前と後の拡散反射板212へのプローブ光の入射位置の変化は非常に小さい。
【0121】
また、ワーク102が傾くことにより入射角θおよび反射角θは変動し、拡散反射板212へのプローブ光の入射位置が変動する。しかし、ワーク102の傾きの変動はごく僅かであり、ワーク102が傾く前と後の拡散反射板212へのプローブ光の入射位置の変化は非常に小さい。
【0122】
さらに、変位センサ211では、拡散反射板212で四方八方に拡散反射された後、ワーク102の加工面で反射され変位センサ211に戻ってきた反射光の受光量の分布に基づいて測定が行われるため、拡散反射板212へのプローブ光の入射位置の変化が変位センサ211の測定結果に与える影響は非常に小さく、無視することができる。
【0123】
なお、入射角θは固定値なので、cosθは定数となる。従って、例えば、変位センサ211から測定結果に定数cosθを乗じた値を出力するようにしてもよい。これにより、ワーク102の加工面が拡散反射面である場合、高さh1または高さh1+δを示す測定信号が変位センサ211から出力され、変位δを示すエラー信号がエラーアンプ213から出力されるようになる。また、ワーク102の加工面が正反射面である場合、高さh1+h2または高さh1+h2+2δを示す測定信号が変位センサ211から出力され、変位δ×2を示すエラー信号がエラーアンプ213から出力されるようになる。
【0124】
また、例えば、エラーアンプ213からフォーカス設定値と測定信号の値との差分に定数cosθを乗じた値を出力するようによい。これにより、ワーク102の加工面が拡散反射面である場合、変位δを示すエラー信号がエラーアンプ213から出力されるようになる。また、ワーク102の加工面が正反射面である場合、変位δ×2を示すエラー信号がエラーアンプ213から出力されるようになる。
【0125】
なお、以下、ワーク102の加工面のZ方向の変位のことを、単にワーク102の変位とも称する。
【0126】
[焦点調整装置の第1の変形例]
例えば、オートフォーカスの応答速度を高速化するために、Z軸駆動用モータ215を高速動作させようとすると、動作開始時のZ軸駆動用モータ215の負荷が重くなるため、Z軸駆動用モータ215の脱調が発生する場合がある。例えば、Z軸駆動用モータ215がパルスモータにより構成され、オープンループ制御を行う場合、Z軸駆動用モータ215の脱調が生じると、モータドライバ214が認識している対物レンズ217のZ方向の位置と、実際の位置との間にズレが生じる。そして、オートフォーカスを行う度にこのズレが蓄積され、最終的に対物レンズ217の焦点がワーク102の加工面に合わなくなり、加工品質が低下する恐れがある。
【0127】
この現象を防止するために、例えば、定期的に累積誤差をリセットする初期化作業を行うことが考えられるが、このような初期化作業はユーザにとって面倒な作業である。また、レーザ加工装置101が連続稼動している場合には、初期化作業を行うことができない。
【0128】
図8の焦点調整装置301は、このような現象の発生を防止できるようにするものである。
【0129】
焦点調整装置301は、図3の焦点調整装置201と比較して、接続部材311が追加されている点が異なる。
【0130】
変位センサ211、拡散反射板212、および、対物レンズ217は、接続部材311を介して接続されている。また、接続部材311は、Z軸駆動用ネジ216を介してZ軸駆動用モータ215に接続されている。そして、Z軸駆動用モータ215の回転方向の運動が、Z軸駆動用ネジ216を介して接続部材311に伝達されることにより、矢印Aで示されるワーク102の加工面に対して垂直な方向(Z方向)に接続部材311が移動する。その結果、接続部材311に接続されている変位センサ211、拡散反射板212、および、対物レンズ217が一体としてZ方向に移動する。
【0131】
これにより、Z軸駆動用モータ215の脱調の発生の有無に関わらず、また、ワーク102の加工面が拡散反射面であるか正反射面であるかに関わらず、変位センサ211の測定信号の値がフォーカス設定値に等しくなり、エラーアンプ213から出力されるエラー信号の値が0になるように、接続部材311のZ方向の位置を調整するだけで、対物レンズ217の焦点をワーク102の加工面に合わせることができる。
【0132】
従って、Z軸駆動用モータ215の脱調が発生しても、対物レンズ217の焦点をワーク102の加工面に正確に合わせることができる。
【0133】
また、ワーク102の加工面の反射の状態により、モータドライバ214の制御方法を変更する必要がなくなる。すなわち、ワーク102の加工面が拡散反射面か正反射面かの違いにより、エラー信号の値が上述した式(4)のδ/cosθか式(8)の2δ/cosθかになるが、モータドライバ214は、その値の変動に関わらず、エラー信号の値が0になるように対物レンズ217のZ方向の位置を調整すればよい。
【0134】
[焦点調整装置の第2の変形例]
図9の焦点調整装置351は、図8の焦点調整装置301と同様に、Z軸駆動用モータ215の脱調に対する対策を施したものである。
【0135】
焦点調整装置351は、図8の焦点調整装置301と比較して、接続部材311の代わりに架台361が設けられ、モータドライバ214の代わりにモータドライバ362が設けられ、ロータリエンコーダ363が追加されている点が異なる。
【0136】
焦点調整装置351では、変位センサ211および拡散反射板212は架台361に固定されており、オートフォーカス時に対物レンズ217のみZ方向に移動する。
【0137】
モータドライバ362は、ロータリエンコーダ363によりカウントされるZ軸駆動用モータ215の回転数に基づいて、対物レンズ217のZ方向の移動量を検出して、対物レンズ217のZ方向の位置を検出する。従って、モータドライバ362は、Z軸駆動用モータ215の脱調が発生しても、実際のZ軸駆動用モータ215の回転数に基づいて、対物レンズ217のZ方向の位置を正確に検出することができる。
【0138】
これにより、Z軸駆動用モータ215の脱調が発生し、対物レンズ217を目標位置まで移動できなくても、その誤差を検出して、次回のオートフォーカス時に補正することができる。従って、対物レンズ217のZ方向の位置のズレが蓄積されることが防止される。
【0139】
なお、Z軸駆動用モータ215がリニアモータにより構成される場合、例えば、ロータリエンコーダ363の代わりにリニアエンコーダが設けられる。
【0140】
また、対物レンズ217を高速に駆動させるために、Z軸駆動用モータ215をボイスコイルモータ等により構成する場合、例えば、ロータリエンコーダ363の代わりにリニアエンコーダや静電キャパシタ型のセンサを用いて、対物レンズ217の位置検出が行われる。
【0141】
さらに、高速動作可能なガルバノメータを用いて対物レンズ217のZ方向の駆動を行う場合、例えば、ロータリエンコーダ363の代わりにエンコーダ付のデジタルガルバノメータを用いて、対物レンズ217の位置検出が行われる。
【0142】
なお、焦点調整装置351では、図8の焦点調整装置301と比較して、対物レンズ217だけをZ方向に移動させるため、オートフォーカス用のZ方向の駆動機構の負荷を軽くすることができる。従って、駆動機構の応答速度を高速化し、オートフォーカスの反応速度を高速化することができる。あるいは、駆動機構を小型化し、レーザ加工装置101の小型化および低コスト化を実現することができる。
【0143】
[拡散反射面と正反射面が混在する場合の焦点調整方法]
次に、図10乃至図12を参照して、拡散反射面と正反射面が混在する場合の焦点調整方法について説明する。
【0144】
図10は、拡散反射面と正反射面が混在する場合の一例として、ワーク102がCIGSを用いた薄膜太陽電池パネル401により構成され、その薄膜太陽電池パネル401を基板ホルダ402に載置して加工する場合を示している。なお、図10の上の図は、基板ホルダ402に載置された薄膜太陽電池パネル401を上から見た模式図であり、下の図は、基板ホルダ402に載置された薄膜太陽電池パネル401の断面を模式的に示す図である。
【0145】
この例において、薄膜太陽電池パネル401は、P1工程のレーザ加工を行う前の状態であり、ガラス基板401Aの上にMo等からなる金属層である裏面電極層401Bが積層されている。上述したように、この裏面電極層401Bは、レーザ光を正反射する。
【0146】
一方、基板ホルダ402は、黒アルマイト加工したアルミニウムからなり、レーザ光を拡散反射する。
【0147】
なお、以下、説明を分かりやすくするために、薄膜太陽電池パネル401の裏面電極層401Bの表面と基板ホルダ402の表面が同じ高さであるものとして説明する。
【0148】
例えば、加工ヘッド115を矢印Aの方向に動かしながら、薄膜太陽電池パネル401の裏面電極層401Bの加工を行う場合、加工ヘッド115が基板ホルダ402上に来たとき、基板ホルダ402の表面に対してオートフォーカスが行われる。その後、加工ヘッド115が薄膜太陽電池パネル401上に来たとき、薄膜太陽電池パネル401の裏面電極層401Bの表面に対してオートフォーカスが行われる。
【0149】
ここで、裏面電極層401Bの加工を行う場合、裏面電極層401Bは正反射面であるため、エラーアンプ213に入力されるフォーカス設定値は、図7を参照して上述したように、距離d1+d2に設定される。
【0150】
一方、基板ホルダ402の表面に対してオートフォーカスを行う場合、基板ホルダ402の表面は拡散反射面であるため、対物レンズ217の焦点が基板ホルダ402の表面に合っていたとしても、変位センサ211の測長距離は距離d1となり、フォーカス設定値より距離d2だけ短くなる。
【0151】
従って、図8の焦点調整装置301のように、変位センサ211、拡散反射板212、および、対物レンズ217を一体としてZ方向に移動させる場合、変位センサ211の測長距離がd1+d2になるように制御されるため、対物レンズ217が、Z+方向に距離d2×cosθだけ移動する。
【0152】
また、図9の焦点調整装置351のように、対物レンズ217のみをZ方向に移動させる場合、対物レンズ217が、Z+方向に距離d2×cosθ/2だけ移動する。
【0153】
ここで、一般的に、プローブ光がワーク102の加工面で正反射されてから拡散反射板212に入射するまでの距離d2は、ワーク102のZ方向の変位と比較して非常に大きい。従って、上記のいずれの場合にせよ、基板ホルダ402上での対物レンズ217の移動距離は、通常のオートフォーカス時より大きくなる。
【0154】
従って、その後、薄膜太陽電池パネル401の裏面電極層401Bの表面に対してオートフォーカスを行う場合、対物レンズ217の移動距離が長くなり、オートフォーカスの反応速度が遅くなる。
【0155】
ところで、市販の変位センサでは、測長範囲を設定し、測長範囲を超えた場合にエラー信号を出力する機能を有するものがある。従って、変位センサ211の測長範囲をフォーカス設定値±αに設定しておき、測長距離が測長範囲を超えたことを示すエラー信号が変位センサ211から出力された場合、オートフォーカスを停止し、対物レンズ217のZ方向の移動を停止したり、移動前の位置に戻したりするようにすることが考えられる。
【0156】
なお、αは、薄膜太陽電池パネル401のZ方向の変位の想定範囲より大きく、距離d2より小さい値に設定される。
【0157】
これにより、図10の例では、基板ホルダ402の表面に対するオートフォーカスが途中で中止され、薄膜太陽電池パネル401の裏面電極層401Bの表面に対してオートフォーカスを行う場合に、対物レンズ217の移動距離が短くなり、オートフォーカスの反応速度が速くなる。
【0158】
なお、ここでは、基板ホルダ402が加工対象でなく、加工対象の反射の状態が拡散反射面(薄膜太陽電池パネル401の裏面電極層401B)の1種類のみである場合について説明した。一方、加工の途中で加工面の反射の状態が拡散反射面から正反射面、あるいは、正反射面から拡散反射面に切り替わる場合も想定される。
【0159】
この場合、例えば、測長距離が測長範囲から外れたことを示すエラー信号が変位センサ211から出力された場合、加工面の反射の状態が変化したと判定することができる。そして、加工面の反射の状態が変化したと判定された場合、正反射面または拡散反射面のいずれに対して対物レンズ217の焦点を調整するかを切り換えることが可能である。すなわち、拡散反射面に対する焦点調整方法から正反射面に対する焦点調整方法に切り換えたり、正反射面に対する焦点調整方法から拡散反射面に対する焦点調整方法に切り換えたりすることが可能である。
【0160】
例えば、図8の焦点調整装置301のように、変位センサ211、拡散反射板212、および、対物レンズ217を一体としてZ方向に移動させる場合、加工面の反射の状態に応じて、エラーアンプ213に入力するフォーカス設定値を拡散反射面に対する値(距離d1)または正反射面に対する値(距離d1+d2)に切り換えるようにすればよい。
【0161】
また、図9の焦点調整装置351のように、対物レンズ217のみをZ方向に移動させる場合、例えば、加工面の反射の状態に応じて、フォーカス設定値を切り換えるのに加えて、モータドライバ214のワーク102の変位の求め方を切り換えるようにすればよい。すなわち、加工面が拡散反射面である場合、上述した式(4)の右辺に基づいて変位δを求め、加工面が正反射面である場合、上述した式(8)の右辺に基づいて変位δを求めるようにすればよい。
【0162】
なお、変位センサ211に上述した測長範囲の設定機能が搭載されていない場合、例えば、拡散反射板に入射するプローブ光の強度に基づいて、ワーク102の加工面の反射の状態を検出するようにしてもよい。
【0163】
図11および図12は、拡散反射板に入射するプローブ光の強度に基づいて、ワーク102の加工面の反射の状態を検出するようにした焦点調整装置451の構成例の一部を示している。なお、図11は、ワーク102の加工面が正反射面である場合を示し、図12は、ワーク102の加工面が拡散反射面である場合を示している。
【0164】
焦点調整装置451では、図3の焦点調整装置201と比較して、拡散反射板212の代わりに、拡散反射板461が設けられ、フォトセンサ462および増幅比較器463が設けられている点が異なる。
【0165】
拡散反射板461の中央にはピンホール461Aが設けられている。拡散反射板461は、変位センサ211のレーザ光源231から出射されたプローブ光がワーク102の加工面で正反射した場合、正反射したプローブ光の一部がピンホール461Aに入射するように配置される。
【0166】
そして、フォトセンサ462は、ピンホール461Aを通過するプローブ光の光量を検出し、検出値を示す検出信号を増幅比較器463に供給する。増幅比較器463は、フォトセンサ462からの検出信号を増幅した後、増幅後の検出信号の値を所定の閾値と比較することにより、ワーク102の加工面が正反射面または拡散反射面のいずれであるかを判定する。
【0167】
例えば、ワーク102の加工面が正反射面である場合、図11に示されるように、レーザ光源231から出射され矢印Aの方向に進んだプローブ光がワーク102の加工面で正反射され、そのほとんどが矢印Bの方向に進み、その一部が拡散反射板461のピンホール461Aに入射する。従って、フォトセンサ462により検出されるプローブ光の光量は大きくなる。
【0168】
一方、ワーク102の加工面が拡散反射面である場合、図12に示されるように、レーザ光源231から出射され矢印Aの方向に進んだプローブ光がワーク102の加工面で拡散反射され、その一部のみが矢印Bの方向に進み、さらにその一部が拡散反射板461のピンホール461Aに入射する。従って、フォトセンサ462により検出されるプローブ光の光量は小さくなる。
【0169】
従って、増幅比較器463は、増幅後の検出信号の値が所定の閾値以上である場合、ワーク102の加工面が正反射面であると判定し、所定の閾値未満である場合、ワーク102の加工面が拡散反射面であると判定する。そして、増幅比較器463は、判定結果を示す信号を変位センサ211やモータドライバ214等に供給する。
【0170】
これにより、ワーク102の加工面の反射の状態を自動検出し、その結果に基づいて、上述したように対物レンズ217の焦点の調整方法を自動で切り換えることができる。
【0171】
<2.変位センサと拡散反射板の設置方法の例>
次に、変位センサ211と拡散反射板212の設置方法の例について説明する。
【0172】
なお、以下、特に断りがない限り、レーザ加工装置101の加工方向は、X+、X−、Y+、Y−の4方向であるものとする。
【0173】
[変位センサ211と拡散反射板212の設置方法の第1の実施の形態]
まず、図13乃至図15を参照して、変位センサ211と拡散反射板212の設置方法の第1の実施の形態について説明する。
【0174】
変位センサ211の測定点、すなわち、レーザ光源231から出射されたプローブ光がワーク102の加工面に照射される位置は、レーザ加工点、すなわち、対物レンズ217から出射されたレーザ光がワーク102の加工面に照射される位置にできる限り近い方が望ましい。しかし、測定点をレーザ加工点に近づけすぎると、レーザ加工する際に発せられるレーザプラズマによる外乱をプローブ光が受け、測定精度が低下する恐れがある。従って、測定点は、レーザプラズマによる外乱を受けないように、レーザ加工点から所定の距離(例えば、5〜10mm)以上離すのが望ましい。
【0175】
このとき、測定点をレーザ加工点から加工方向の前方にオフセットした位置に設定することにより、これから加工するワーク102の変位を先読みし、先読みした結果に基づいてオートフォーカスを行うことが可能になる。これにより、変位センサ211や制御系の応答速度に限界があったり、加工速度が高速化したり、あるいは、ワーク102のZ軸方向の変位が大きなったりしても、対物レンズ217の焦点の位置をワーク102の変位に正確に追従させることができる。
【0176】
図13および図14は、測定点をレーザ加工点から加工方向にオフセットした位置に設定できるようにした変位センサ211と拡散反射板212の設置方法の例を示している。図13は、変位センサ211と拡散反射板212の位置関係を上から見た図であり、図14は、変位センサ211と拡散反射板212の位置関係を横から見た図である。なお、図13において、左から右方向をX+方向とし、下から上方向をY+方向とする。
【0177】
この例では、変位センサ211と拡散反射板212の組が4つ設けられている。なお、図14では、図を分かりやすくするために、変位センサ211cの図示を省略している。
【0178】
また、以下、変位センサ211a乃至211dを個々に区別する必要がない場合、単に変位センサ211と称し、拡散反射板212a乃至212dを個々に区別する必要がない場合、単に拡散反射板212と称する。さらに、以下、測定点MPa乃至MPdを個々に区別する必要がない場合、単に測定点MPと称する。これは、以下に述べる他の実施の形態についても同様である。
【0179】
変位センサ211aと変位センサ211bは、X方向おいて、対物レンズ217を中心に対称となる位置に設けられている。換言すれば、変位センサ211aと変位センサ211bの間に対物レンズ217が配置され、変位センサ211aと変位センサ211bとの間の相対方向がX方向に設定されている。また、変位センサ211aの対物レンズ217に対する相対方向がX−方向に設定され、変位センサ211bの対物レンズ217に対する相対方向がX+方向に設定されている。
【0180】
変位センサ211cと変位センサ211dは、Y方向おいて、対物レンズ217を中心に対称となる位置に設けられている。換言すれば、変位センサ211cと変位センサ211dの間に対物レンズ217が配置され、変位センサ211cと変位センサ211dとの間の相対方向がY方向に設定されている。また、変位センサ211cの対物レンズ217に対する相対方向がY−方向に設定され、変位センサ211dの対物レンズ217に対する相対方向がY+方向に設定されている。
【0181】
対物レンズ217の下部には、拡散反射ブロック501が装着されている。拡散反射ブロック501は、断面が八角形の板状の下部に、八角形の一辺を上端とし、斜め下方向を向く4つの矩形の面が90度間隔で設けられ、下面が正方形となる形状を有している。また、4つの矩形の面に、それぞれ拡散反射板212a乃至212dが設けられている。
【0182】
拡散反射板212aは、変位センサ211aと対物レンズ217との間に、X−方向に向かって斜め下方向に向くように設けられている。拡散反射板212bは、変位センサ211bと対物レンズ217との間に、X+方向に向かって斜め下方向に向くように設けられている。また、拡散反射板212aと拡散反射板212bは、X方向おいて、対物レンズ217を中心に対称となる位置に設けられている。
【0183】
拡散反射板212cは、変位センサ211cと対物レンズ217との間に、Y−方向に向かって斜め下方向に向くように設けられている。拡散反射板212dは、変位センサ211dと対物レンズ217との間に、Y+方向に向かって斜め下方向に向くように設けられている。また、拡散反射板212cと拡散反射板212dは、Y方向おいて、対物レンズ217を中心に対称となる位置に設けられている。
【0184】
なお、拡散反射板212a乃至212dは、例えば、プローブ光に対する反射率が高いセラミック板などを拡散反射ブロック501に貼り付けるようにしてもよいし、あるいは、アルミニウム材などで拡散反射ブロック501を製造し、サンドブラスト処理やアルマイト処理等により拡散反射ブロック501の表面に拡散反射板212a乃至212dを形成するようにしてもよい。
【0185】
変位センサ211aから出射されたプローブ光は、図14の矢印Aaで示されるように、X+方向かつ斜め下方向に進み、変位センサ211aと対物レンズ217の間の測定点MPaに照射される。ワーク102の加工面が正反射面である場合、測定点MPaにおいて反射されたプローブ光は、拡散反射板212aの反射点RPaに入射し、反射点RPaにおいて拡散反射される。従って、変位センサ211aと拡散反射板212aとの組み合わせにより、対物レンズ217の焦点であるレーザ加工点FPからX−方向にオフセットした測定点MPaにおけるワーク102の変位を測定することができる。そして、加工方向がX−方向である場合、変位センサ211bと拡散反射板212bとの組み合わせを用いることにより、ワーク102の変位を先読みすることができる。
【0186】
同様に、変位センサ211bと拡散反射板212bとの組み合わせにより、レーザ加工点FPからX+方向にオフセットした測定点MPbにおけるワーク102の変位を測定することができる。従って、加工方向がX+方向である場合、変位センサ211bと拡散反射板212bとの組み合わせを用いることにより、ワーク102の変位を先読みすることができる。
【0187】
また、変位センサ211cと拡散反射板212cとの組み合わせにより、レーザ加工点FPからY−方向にオフセットした測定点MPcにおけるワーク102の変位を測定することができる。従って、加工方向がY−方向である場合、変位センサ211cと拡散反射板212cとの組み合わせを用いることにより、ワーク102の変位を先読みすることができる。
【0188】
さらに、変位センサ211dと拡散反射板212dとの組み合わせにより、レーザ加工点FPからY+方向にオフセットした測定点MPdにおけるワーク102の変位を測定することができる。従って、加工方向がY+方向である場合、変位センサ211dと拡散反射板212dとの組み合わせを用いることにより、ワーク102の変位を先読みすることができる。
【0189】
このように、この実施の形態では、加工方向がX+、X−、Y+、Y−のいずれの方向であっても、ワーク102の変位を先読みすることができる。
【0190】
また、対物レンズ217に拡散反射ブロック501を装着することにより、図1の加工ヘッド115の構造をシンプルかつ小型化することができる。また、拡散反射ブロック501は加工が容易な形状であり、堅牢かつ安価に製作することができる。
【0191】
さらに、組となる変位センサ211と拡散反射板212との間の距離を短くし、各変位センサ211の測長距離を短くすることができるため、各変位センサ211が受光する拡散反射光の光量を大きくすることができる。その結果、各変位センサ211の測定精度が向上する。
【0192】
なお、ワーク102の変位を先読みする場合、ワーク102のエッジ付近において、測定点MPがワーク102の外にはみ出し、変位を測定できなくなる場合がある。これに対して、例えば、使用する変位センサ211を切り換えるようにしてもよい。
【0193】
例えば、加工方向がX+方向で、変位センサ211bを用いてワーク102の変位を測定している場合、ワーク102の右端(X+方向の端)のエッジ付近で、測定点MPbがワーク102の外にはみ出してしまう。この場合、測定点MPbがワーク102の外にはみ出す前に、使用する変位センサ211aに切り換えるようにすればよい。
【0194】
あるいは、使用する変位センサ211を切り換える代わりに、例えば、測定点MPがワーク102の外にはみ出る直前の測定値を記憶し、測定点MPがワーク102の外にはみ出ている間は、記憶した測定値を用いてオートフォーカスを行うようにしてもよい。
【0195】
なお、図1におけるY軸駆動部112と載物台113からなるY軸ステージの位置およびX軸ステージに搭載されている加工ヘッド115の位置は、リニアエンコーダ等によりリアルタイムに検出しているので、測定点MPがワーク102の外にはみ出る位置を正確に把握し、それに合わせて上述した制御を厳密に行うことが可能である。
【0196】
なお、特にワーク102の加工面の変位の先読みを行う必要がない場合、例えば、図13の変位センサ211a乃至211dのうち、対物レンズ217を基準にして互いに90度の方向に配置されている2つの変位センサ211と、各変位センサ211に対応する拡散反射板212のみを設けるようにしてもよい。すなわち、変位センサ211aと変位センサ211c、変位センサ211aと変位センサ211d、変位センサ211bと変位センサ211c、または、変位センサ211bと変位センサ211dのいずれかの組み合わせと、各変位センサ211に対応する拡散反射板212のみを設けるようにしてもよい。
【0197】
例えば、変位センサ211aと変位センサ211cのみを設けるようにした場合、加工方向がX+方向またはX−方向であるとき、変位センサ211aを用いてワーク102の変位が測定され、加工方向がY+方向またはY−方向であるとき、変位センサ211cを用いてワーク102の変位が測定される。
【0198】
このようにして、変位センサ211および拡散反射板212の組を削減することができ、加工ヘッド115を小型化することができる。
【0199】
なお、この実施の形態では、測定点MPをレーザ加工点FPに可能な限り近づけることができるため、ワーク102の変位を先読みできないことによる影響は小さい。
【0200】
また、図15に示されるように、変位センサ211と拡散反射板212を配置することにより、2組の変位センサ211と拡散反射板212を用いて、ワーク102の変位の先読みを実行することが可能になる。
【0201】
具体的には、図15の実施の形態では、図13の実施の形態から、変位センサ211cと変位センサ211d、および、拡散反射板212cと拡散反射板212dが削除されている。また、変位センサ211aと変位センサ211bとの間の相対方向が、X方向およびY方向に対して斜めに設定されている。その結果、測定点MPaは、対物レンズ217(レーザ加工点FP)に対してX−方向とY−方向の間の方向に設置され、測定点MPbは、対物レンズ217(レーザ加工点FP)に対してX+方向とY+方向の間の方向に設置されている。
【0202】
これにより、2つの変位センサ211を用いてX+方向、X−方向、Y+方向、および、Y−方向のいずれの加工方向についてもワーク102の変位の先読みを行うことが可能になる。具体的には、加工方向がX+方向またはY+方向である場合、変位センサ211bを用いて測定点MPbにおいてワーク102の変位が先読みされ、加工方向がX−方向またはY−方向である場合、変位センサ211aを用いて測定点MPaにおいてワーク102の変位が先読みされる。
【0203】
なお、測定点MPaおよび測定点MPbは、レーザ加工点FPを基準にしてX方向およびY方向に対して斜め方向に設定されているため、実際にレーザ加工が行われる位置からずれた位置の変位が測定される。ただし、この測定位置のズレは僅かであるため、ズレに伴う変位の測定値の誤差は無視することができる。
【0204】
また、この場合、ワーク102の端部に沿ってレーザ加工するときに先読みを行おうとすると、測定点MPがワーク102の外にはみ出てしまうことがある。例えば、ワーク102のX+方向の端部に沿ってY+方向にレーザ加工する場合、変位センサ211bの測定点MPbは、ワーク102の外にはみ出てしまう。
【0205】
このような場合には、先読みを行わずに、もう一方の変位センサ211を用いるようにすればよい。例えば、先の例では、変位センサ211bの代わりに変位センサ211aを用いて、測定点MPaにおけるワーク102の変位を測定するようにすればよい。
【0206】
なお、測定点MPaと測定点MPbと間の相対方向は、X方向およびY方向に対して斜め方向であれば任意である。ただし、X方向およびY方向に対して45度または45度に近い方向に設定するのが望ましい。
【0207】
また、必ずしも、測定点MPaと測定点MPbを、必ずしもレーザ加工点FPに対称な位置に配置する必要はない。例えば、測定点MPaとレーザ加工点FPとの間の距離と、測定点MPbとレーザ加工点FPとの間の距離が異なっていたり、レーザ加工点FPから測定点MPaへの相対方向とレーザ加工点FPから測定点MPbへの相対方向が正反対になっていなくてもよい。
【0208】
[変位センサ211と拡散反射板212の設置方法の第2の実施の形態]
次に、図16乃至図20を参照して、変位センサ211と拡散反射板212の設置方法の第2の実施の形態について説明する。
【0209】
図16は、レーザ加工点FPと測定点MPとの間の距離(以下、先読み距離と称する)を調整できるようにした測定ユニット601および移動機構駆動系602の構成例を示している。
【0210】
測定ユニット601は、変位センサ211、拡散反射板212、接続部材611、および、移動機構612を含むように構成される。変位センサ211と拡散反射板212は、接続部材611により所定の間隔を空けて接続されている。また、変位センサ211と拡散反射板212の間に、対物レンズ217が配置され、変位センサ211、対物レンズ217、拡散反射板212が、加工方向に並ぶように配置されている。
【0211】
移動機構612は、移動機構駆動系602により駆動されることにより、矢印Aの方向(すなわち、加工方向またはその逆方向)に、変位センサ211、拡散反射板212、および、接続部材611を一体として移動させる。そして、変位センサ211と拡散反射板212が間隔を保ったまま矢印Aの方向に移動することにより、矢印Aの方向に測定点MPが移動し、測定点MPとレーザ加工点FPとの間の先読み距離Lが調整される。
【0212】
移動機構駆動系602は、加工速度および変位センサ211の応答時間等の情報を取得し、取得した情報に基づいて、先読み距離Lの適正値を算出する。そして、移動機構駆動系602は、移動機構612を駆動して、測定ユニット601を矢印Aの方向に移動させ、先読み距離Lを適正な距離に調整する。
【0213】
例えば、加工速度をV(mm/s)とした場合、L/V(s)後に加工される位置のワーク102の変位が測定される。従って、例えば、変位センサ211内部処理に要する時間をT1(s)、変位センサ211の測定結果に基づいてオートフォーカスの制御を行うのに要する時間をT2(s)とした場合、移動機構駆動系602は、L/V≧T1+T2となるように先読み距離Lを設定する。
【0214】
これにより、加工速度や処理時間等に応じて、先読み距離Lを適切に設定することができ、より正確にオートフォーカスを行うことができる。その結果、ワーク102の加工品質が向上する。
【0215】
図17は、測定ユニット601の設置方法の例を示している。この例では、測定ユニット601a乃至601dの4つの測定ユニットが設けられている。
【0216】
測定ユニット601aは、変位センサ211aと拡散反射板212aの間に対物レンズ217が配置され、変位センサ211aから拡散反射板212aへの相対方向がX+方向になるように設置されている。そして、変位センサ211aの測定点MPaは、レーザ加工点FPからX+方向にオフセットされた位置に設定されている。
【0217】
測定ユニット601bは、変位センサ211bと拡散反射板212bの間に対物レンズ217が配置され、変位センサ211bから拡散反射板212bへの相対方向がX−方向になるように設置されている。そして、変位センサ211bの測定点MPbは、レーザ加工点FPからX−方向にオフセットされた位置に設定されている。
【0218】
測定ユニット601cは、変位センサ211cと拡散反射板212cの間に対物レンズ217が配置され、変位センサ211cから拡散反射板212cへの相対方向がY+方向になるように設置されている。そして、変位センサ211cの測定点MPcは、レーザ加工点FPからY+方向にオフセットされた位置に設定されている。
【0219】
測定ユニット601dは、変位センサ211dと拡散反射板212dの間に対物レンズ217が配置され、変位センサ211dから拡散反射板212dへの相対方向がY−方向になるように設置されている。そして、変位センサ211dの測定点MPdは、レーザ加工点FPからY−方向にオフセットされた位置に設定されている。
【0220】
なお、図を分かりやすくするために、測定点MPa乃至MPdが、レーザ加工点FPに対して斜め方向になるように図示しているが、実際には、測定点MPa、測定点MPb、および、レーザ加工点FPは、X方向にほぼ一直線に並び、測定点MPc、測定点MPd、および、レーザ加工点FPは、Y方向にほぼ一直線に並ぶように配置される。
【0221】
加工システム制御系651は、図1のレーザ加工装置101によるレーザ加工の全体の制御を行う。例えば、加工システム制御系651は、移動機構駆動系602に指令を与え、測定点MPa乃至MPdの位置を調整させる。また、例えば、加工システム制御系651は、XYステージ制御部652に指令を与え、加工方向や加工速度等を制御させる。さらに、例えば、加工システム制御系651は、AF方向制御部653に指令を与え、使用する変位センサ211を切り換える。
【0222】
XYステージ制御部652は、例えば、Y軸駆動部112および加工ヘッド115のX方向の駆動系を制御することにより、加工方向や加工速度等を制御する。
【0223】
AF方向制御部653は、例えば、図3の変位センサ211とエラーアンプ213の間に設けられる。そして、AF方向制御部653は、加工方向に応じて、スイッチ654の接点を切り換え、エラーアンプ213に測定信号を供給する変位センサ211を選択する。例えば、加工方向がX+方向の場合、変位センサ211aが選択され、加工方向がX−方向の場合、変位センサ211bが選択され、加工方向がY+方向の場合、変位センサ211cが選択され、加工方向がY−方向の場合、変位センサ211dが選択される。
【0224】
これにより、加工方向がX+方向、X−方向、Y+方向、または、Y−方向のいずれであっても、ワーク102の変位を先読みすることができ、かつ、先読みする位置を適切に設定することができる。
【0225】
なお、測定点MPの位置を調整できることを利用して、図18に示されるように、測定ユニット601の数を2つに削減することが可能である。
【0226】
図18の例では、図17の例から、測定ユニット601bおよび測定ユニット601dが削除され、測定ユニット601aおよび測定ユニット601cが残されている。
【0227】
例えば、加工方向がX+方向である場合、移動機構駆動系602は、移動機構612aを駆動して、測定点MPaがレーザ加工点FPからX+方向にオフセットするように(例えば、測定点MPa1)、測定ユニット601aを実線で示される位置に設定する。また、AF方向制御部653は、スイッチ654を介して、変位センサ211aを選択する。
【0228】
加工方向がX−方向である場合、移動機構駆動系602は、移動機構612aを駆動して、測定点MPaがレーザ加工点FPからX−方向にオフセットするように(例えば、測定点MPa2)、測定ユニット601aを点線で示される位置に設定する。また、AF方向制御部653は、スイッチ654を介して、変位センサ211aを選択する。
【0229】
加工方向がY+方向である場合、移動機構駆動系602は、移動機構612cを駆動して、測定点MPcがレーザ加工点FPからY+方向にオフセットするように、測定ユニット601cを実線で示される位置(測定点MPc1)に設定する。また、AF方向制御部653は、スイッチ654を介して、変位センサ211cを選択する。
【0230】
加工方向がY−方向である場合、移動機構駆動系602は、移動機構612cを駆動して、測定点MPcがレーザ加工点FPからY−方向にオフセットするように、測定ユニット601cを点線で示される位置(測定点MPc2)に設定する。また、AF方向制御部653は、スイッチ654を介して、変位センサ211cを選択する。
【0231】
このようにして、測定ユニット601の数を2つに削減しても、X+方向、X−方向、Y+方向、または、Y−方向のいずれの加工方向に対してもワーク102の変位の先読みを行うことが可能になる。
【0232】
なお、測定ユニット601aおよび測定ユニット601cを削除し、測定ユニット601bおよび測定ユニット601dを残すようにしてもよい。
【0233】
また、図15の実施の形態と同様に、測定点MPとレーザ加工点FPとの間の相対方向を、X方向およびY方向に対して斜めに設定することにより、図19に示されるように、測定ユニット601の数を1つに削減することができる。
【0234】
具体的には、測定ユニット601は、変位センサ211と拡散反射板212の間に対物レンズ217が配置され、変位センサ211から拡散反射板212への相対方向がX方向およびY方向に対して斜めになるように設置されている。また、変位センサ211は、対物レンズ217(レーザ加工点FP)に対してX+方向とY+方向の間の方向に配置され、拡散反射板212は、対物レンズ217(レーザ加工点FP)に対してX−方向とY−方向の間の方向に配置されている。
【0235】
例えば、加工方向がX+方向またはY+方向である場合、移動機構駆動系602は、移動機構612を駆動して、測定点MPがレーザ加工点FPからX+方向およびY+方向にオフセットするように(例えば、測定点MP1)、測定ユニット601を実線で示される位置に設定する。
【0236】
一方、加工方向がX−方向またはY−方向である場合、移動機構駆動系602は、移動機構612を駆動して、測定点MPがレーザ加工点FPからX−方向およびY−方向にオフセットするように(例えば、測定点MP2)、測定ユニット601を点線で示される位置に設定する。
【0237】
このようにして、測定ユニット601の数を1つに削減しても、X+方向、X−方向、Y+方向、または、Y−方向のいずれの加工方向に対してもワーク102の変位の先読みを行うことが可能になる。また、AF方向制御部653およびスイッチ654を削除することができる。
【0238】
なお、変位センサ211から拡散反射板212への相対方向は、X方向およびY方向に対して斜めであれば任意である。例えば、図20に示されるように、変位センサ211から拡散反射板212への相対方向を、図19の例から180度回転させた方向に設定するようにしてもよい。
【0239】
ただし、変位センサ211と拡散反射板212の間の相対方向を、X方向およびY方向に対して45度または45度に近い方向に設定するのが望ましい。
【0240】
また、測定点MPがワーク102の外にはみ出る場合には、図15の実施の形態と同様にワーク102の外にはみ出る直前の測定値を記憶して用いるようにしたり、測定点MPがはみ出ない位置に測定ユニット601を移動させるようにすればよい。
【0241】
さらに、図21に示されるように、レーザ加工点FPを中心にワーク102の加工面に対して平行に測定ユニット601を回転させる回転機構を設け、レーザ加工点FPを中心に測定点MPを回転させるようにしてもよい。
【0242】
この回転機構は、例えば、モータ701および回転ギア702により構成される。なお、回転ギア702の中央には、対物レンズ217に加工用のレーザ光を入射させるための開口702Aが設けられている。
【0243】
そして、モータ701を駆動し回転ギア702を回転させることにより、測定ユニット601が対物レンズ217の周りを矢印Aの方向に回転し、測定点MPがレーザ加工点FPを中心に回転する。
【0244】
これにより、X方向およびY方向以外の方向に加工方向が設定されても、加工方向に合わせてワーク102の変位を先読みする方向を設定することができる。
【0245】
なお、この例において、移動機構駆動系602および移動機構612を削除して、先読み距離Lの調整機能を削除するようにすることも可能である。
【0246】
また、測定ユニット601を回転させる機構は任意であり、例えば、中空モータ等を用いて回転させるようにしてもよい。
【0247】
<3.変形例>
以下、本発明の実施の形態の変形例について説明する。
【0248】
図1のレーザ加工装置101では、ガントリ114を固定する例を示したが、例えば、図1のY軸駆動部112をなくし、ガントリ114自体をY方向に駆動させる構成(移動ガントリ方式ステージ)としてもよい。
【0249】
また、以上の説明では、板状の拡散反射板212を用いる例を示したが、板状以外の形状(例えば、球状等)の拡散反射体を用いるようにしてもよい。
【0250】
さらに、例えば、エラーアンプ213の機能を変位センサ211に内蔵するようにしてもよい。
【0251】
また、例えば、変位センサ211の信号処理部234が、測定結果に基づいて、ワーク102の変位δを算出し、変位δを示す測定信号を出力するようにしてもよい。この場合、例えば、信号処理部234が、ワーク102の加工面の反射の状態の検出結果に基づいて、上述した式(4)に基づく拡散反射面に対する変位δの算出方法と、上述した式(8)に基づく正反射面に対する変位δの算出方法を自動で切り換えるようにしてもよい。
【0252】
さらに、例えば、変位センサ211の信号処理部234が、測長距離が測長範囲内であるか否かに基づいて、ワーク102の加工面の反射の状態を検出するようにしてもよい。例えば、正反射面に対する測長範囲を設定している場合に、測長距離が測長範囲から外れたとき、ワーク102の加工面が正反射面から拡散反射面に変わったことを検出し、拡散反射面に対する測長範囲を設定している場合に、測長距離が測長範囲から外れたとき、ワーク102の加工面が拡散反射面から正反射面に変わったことを検出することができる。
【0253】
また、以上の説明では、対物レンズ217のZ方向の位置により対物レンズ217の焦点の位置を調整する例を示したが、本発明は、例えば、対物レンズ217を複数のレンズにより構成し、レンズ間の間隔等により焦点の位置を調整する場合にも適用できる。
【0254】
さらに、リニアセンサ233の代わりに、2次元のイメージセンサ等を用いるようにしてもよい。
【0255】
また、以上の説明では、ワーク102の加工面で正反射または拡散反射されたプローブ光を用いて、加工面に対物レンズ217の焦点を合わせる例を示した。しかし、本発明は、加工面とは異なる面で正反射または拡散反射されたプローブ光を用いて、加工面に対物レンズ217の焦点を合わせるようにすることも可能である。
【0256】
例えば、図22の矢印A1に示されるように、ガラス基板801側から正反射膜802(例えば、Mo膜等)にレーザ光を照射して加工する場合について検討する。この場合、まず、上述したように、ガラス基板801の表面801aで拡散反射されたプローブ光を用いて、ガラス基板801の表面801aに焦点位置を合わせることが可能である。このとき、ガラス基板801の表面801aからガラス基板801の厚みだけ深い位置に焦点位置をオフセットするように設定することにより、ガラス基板801の表面801aで拡散反射されたプローブ光を用いて、実際の加工面である正反射膜802の表面802aに焦点位置を合わせることができる。
【0257】
これは、例えば、図23の矢印A2に示されるように、透明または半透明なフィルム基板811(例えば、PIシート、PETシート、COCシート等のフレキシブルシート等)側から正反射膜812にレーザ光を照射して加工する場合も同様である。すなわち、フィルム基板811の表面811aで拡散反射されたプローブ光を用いて、実際の加工面である正反射膜812の表面812aに焦点位置を合わせることができる。
【0258】
また、本発明は、図24に示されるように、ワーク102の表面だけでなく、ワーク102の表面より深い加工面で反射したプローブ光を用いて、当該加工面に焦点位置を合わせる場合にも適用できる。
【0259】
具体的には、例えば、プローブ光の波長をフィルム基板821に対して透過率の良い波長に設定するとともに、フィルム基板821の表面821aにプローブ光が拡散反射しにくくなるようなコーティングを施しておく。そうすると、矢印A3に示されるように、フィルム基板821側から入射したプローブ光は、フィルム基板821を透過し、正反射膜822の表面822aで正反射される。この正反射膜822の表面822aで正反射されたプローブ光を用いて、正反射膜822の表面822aに焦点位置を合わせることが可能である。
【0260】
また、例えば、図13および図14の実施の形態で、X方向およびY方向に対して斜めの方向にレーザ加工する場合、拡散反射ブロック501の拡散反射板212が設けられている面と面の間の逆三角形の面に拡散反射板を設けることも可能である。
【0261】
なお、本発明は、レーザ加工装置以外でオートフォーカスを行う装置にも適用することが可能である。
【0262】
また、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0263】
101 レーザ加工装置
102 ワーク
112 Y軸駆動部
113 載物台
114 ガントリ
115a乃至115f 加工ヘッド
201 焦点調整装置
211,211a乃至211d 変位センサ
212,212a乃至212d 拡散反射板
213 エラーアンプ
214 モータドライバ
215 Z軸駆動用モータ
216 Z軸駆動用ネジ
217 対物レンズ
231 レーザ光源
232 受光レンズ
233 リニアセンサ
234 信号処理部
301 焦点調整装置
311 接続部材
351 焦点調整装置
361 架台
362 モータドライバ
363 ロータリエンコーダ
451 焦点調整装置
461 拡散反射板
461A ピンホール
462 フォトセンサ
463 増幅比較器
501 拡散反射ブロック
601,601a乃至601d 測定ユニット
602 移動機構駆動系
611,611a乃至611d 接続部材
612,612a乃至612d 移動機構
651 加工システム制御系
652 XYステージ制御部
653 AF方向制御部
654 スイッチ
701 モータ
702 回転ギア
FP レーザ加工点
MP 測定点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ加工装置の焦点調整装置において、
加工用のレーザ光を出射する対物レンズと、
測定光を出射し、その反射光により物体の変位または物体までの距離を測定する変位センサと、
ワークの表面で正反射された前記測定光が入射する位置に配置されている拡散反射体と、
前記変位センサの測定結果に基づいて、前記対物レンズの焦点の位置を調整する焦点調整部と
を備え、
前記焦点調整部は、前記ワークの表面で前記測定光が正反射された場合、前記ワークの表面で正反射された前記測定光が前記拡散反射体により拡散反射された後、前記ワークの表面で反射された第1の反射光を用いて前記変位センサにより測定された第1の測定結果に基づいて、前記対物レンズの焦点の位置を調整する
ことを特徴とする焦点調整装置。
【請求項2】
前記焦点調整部は、前記ワークの表面で前記測定光が拡散反射された場合、前記ワークの表面で拡散反射された第2の反射光を用いて前記変位センサにより測定された第2の測定結果に基づいて、前記対物レンズの焦点の位置を調整する
ことを特徴とする請求項1に記載の焦点調整装置。
【請求項3】
前記焦点調整部は、前記ワークの表面の反射の状態に基づいて、正反射面または拡散反射面のいずれに対して前記対物レンズの焦点の位置を調整するかを選択する
ことを特徴とする請求項2に記載の焦点調整装置。
【請求項4】
前記焦点調整部は、前記変位センサの測定結果が所定の範囲から外れた場合、正反射面または拡散反射面のいずれに対して前記対物レンズの焦点の位置を調整するかを切り換える
ことを特徴とする請求項3に記載の焦点調整装置。
【請求項5】
前記変位センサと前記拡散反射体の組が2つ以上設けられ、
前記拡散反射体が、同じ組の前記変位センサと前記対物レンズとの間であって、前記対物レンズの近傍に設けられている
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の焦点調整装置。
【請求項6】
第1の変位センサと第2の変位センサとの間に前記対物レンズが配置され、前記第1の変位センサと前記第2の変位センサとの間の相対方向が、互いに直交する第1の加工方向および第2の加工方向に対して斜めに設定されている
ことを特徴とする請求項5に記載の焦点調整装置。
【請求項7】
第1の変位センサの前記対物レンズに対する第1の相対方向が、所定の第1の加工方向に設定され、
第2の変位センサの前記対物レンズに対する第2の相対方向が、前記第1の加工方向に直交する第2の加工方向に設定されている
ことを特徴とする請求項5に記載の焦点調整装置。
【請求項8】
前記変位センサと前記拡散反射体の組が少なくとも4つ設けられ、
第1の変位センサと第2の変位センサとの間および第3の変位センサと第4の変位センサとの間に前記対物レンズが配置され、前記第1の変位センサと前記第2の変位センサとの間の相対方向と前記第3の変位センサと前記第4の変位センサとの間の相対方向が互いに直交する
ことを特徴とする請求項5に記載の焦点調整装置。
【請求項9】
各前記拡散反射体が、前記対物レンズの周囲に装着される部材に設けられている
ことを特徴とする請求項5に記載の焦点調整装置。
【請求項10】
前記変位センサの測定点が、前記ワークの加工方向において前記対物レンズの焦点の位置より前方に設定されている
ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の焦点調整装置。
【請求項11】
前記変位センサ、前記拡散反射体、および、前記対物レンズが接続され、
前記変位センサ、前記拡散反射体、および、前記対物レンズを一体として前記ワークに対して垂直な方向に移動させる移動機構を
さらに備えることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の焦点調整装置。
【請求項12】
前記対物レンズの前記ワークに対して垂直な方向の移動量を検出する移動量検出部をさらに備え、
前記焦点調整部は、前記移動量検出部の検出結果に基づいて、前記対物レンズの焦点の位置を調整する
ことを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の焦点調整装置。
【請求項13】
前記対物レンズは、複数のレンズにより構成され、
前記焦点調整部は、前記対物レンズのレンズ間の間隔を調整することにより、前記対物レンズの焦点の位置を調整する
ことを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の焦点調整装置。
【請求項14】
前記変位センサと前記拡散反射体が接続され、
前記変位センサと前記拡散反射体を一体として前記ワークに対して平行移動させる移動機構を
さらに備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の焦点調整装置。
【請求項15】
前記変位センサと前記拡散反射体との間の相対方向が、互いに直交する第1の加工方向および第2の加工方向に対して斜めに設定されている
ことを特徴とする請求項14に記載の焦点調整装置。
【請求項16】
前記変位センサと前記拡散反射体が接続された組が少なくとも2つ設けられ、
第1の組の前記変位センサと前記拡散反射体との間の相対方向が、所定の第1の加工方向に設定され、
第2の組の前記変位センサと前記拡散反射体との間の相対方向が、前記第1の加工方向に直交する第2の加工方向に設定されている
ことを特徴とする請求項14に記載の焦点調整装置。
【請求項17】
前記変位センサと前記拡散反射体が接続され、
前記変位センサと前記拡散反射体を一体として前記対物レンズを中心に前記ワークに対して平行に回転させる回転機構を
さらに備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の焦点調整装置。
【請求項18】
前記変位センサと前記拡散反射体を一体として前記ワークに対して平行移動させる移動機構を
さらに備えることを特徴とする請求項17に記載の焦点調整装置。
【請求項19】
請求項1乃至18のいずれかに記載の焦点調整装置を
備えることを特徴とするレーザ加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2013−94816(P2013−94816A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240193(P2011−240193)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】