説明

焦点調節装置を備えたカメラ

【課題】。
【解決手段】近距離合焦端と遠距離合焦端の間において、焦点調節レンズ群を光軸に沿って移動しながら前記焦点調節レンズ群を含む撮像光学系により形成された被写体像を撮像手段により撮像し、複数位置において取得した画像信号に基づいて合焦位置を検出する合焦サーチを実行し、該合焦サーチにより検出した合焦位置に前記焦点調節レンズ群を移動する焦点調節手段と、前記撮像手段により撮像した画像信号に基づいて顔画像を検出する顔検出手段とを備え、前記焦点調節手段は、前記顔検出手段が顔画像を検出したときは、その顔画像の大きさが、所定しきい値未満のときは遠距離合焦端側から合焦サーチし、所定しきい値以上のときは近距離合焦端側から合焦サーチする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焦点調節装置、より詳細には画像コントラスト方式の焦点調節装置を備えたカメラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、いわゆる画像コントラスト方式の自動焦点調節装置を、焦点調節レンズ群を、近端(最短合焦位置)または無限遠端(無限遠合焦位置)の合焦サーチ開始端位置まで移動してから無限遠端または近端の合焦サーチ終了位置まで移動しながら撮像し、撮像した画像のコントラストに基づいて焦点状態(合焦位置)を検出する合焦サーチ動作をする焦点調節装置を備えたデジタルカメラにおいて、前記撮像した画像から人物の顔を検出し、その顔のコントラストを検出してその顔に合焦させるものが知られている(特許文献1)。従来のデジタルカメラは、レリーズボタンの半押しで前記合焦サーチを開始する。また、合焦サーチ処理開始時の焦点調節レンズ群の停止位置に応じて合焦サーチ開始位置を決定してその合焦サーチ開始位置まで焦点調節レンズ群を移動してから合焦サーチするカメラや、停止位置に無関係に固定の合焦サーチ開始位置からサーチを開始するカメラが知られている。
【特許文献1】特開2006-208443号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、遠距離の被写体を近端から合焦サーチしたり、逆に近距離の被写体を無限遠端から合焦サーチするのではサーチ時間が長くなり、合焦までに時間がかかってしまう問題があった。
【0004】
そこで本発明は、顔検出機能および画像コントラスト方式の焦点調節装置を備えたカメラにおいて、顔検出した場合のサーチ時間を短縮できる焦点調節装置を備えたカメラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる課題を解決する本発明は、近距離合焦端と遠距離合焦端の間において、焦点調節レンズ群を光軸に沿って移動しながら前記焦点調節レンズ群を含む撮像光学系により形成された被写体像を撮像手段により撮像し、複数位置において取得した画像信号に基づいて合焦位置を検出する合焦サーチを実行し、該合焦サーチにより検出した合焦位置に前記焦点調節レンズ群を移動する焦点調節手段と、前記撮像手段により撮像した画像信号に基づいて顔画像を検出する顔検出手段とを備え、前記焦点調節手段は、前記顔検出手段が顔画像を検出したときは、その顔画像の大きさが、所定しきい値未満のときは遠距離合焦端側から合焦サーチし、所定しきい値以上のときは近距離合焦端側から合焦サーチすることに特徴を有する。
【0006】
実際的には、前記焦点調節手段は、前記顔検出手段が顔画像を検出したときは、該顔画像が合焦状態となる合焦位置を検出する。
前記顔画像が含まれる画像領域を焦点検出エリアとして設定し、該焦点検出エリア内の画像信号に基づいて合焦位置を検出する。前記焦点検出エリアは、前記画像領域の大きさにかかわらず一定とすることが好ましい。
前記合焦サーチは、前記焦点検出エリア内の画像信号のコントラストのピークが得られるレンズ位置を合焦位置として検出する。
【0007】
好ましい実施形態では、前記合焦サーチの途中でコントラストのピークが得られたときは、合焦サーチを停止して前記ピークが得られた位置に焦点調節レンズ群を移動する。
前記撮像光学系がズームレンズの場合は、前記しきい値を、前記ズームレンズの現焦点距離に基づいて設定する。
【0008】
好ましい実施形態では、前記撮像手段が撮像した画像を表示する表示手段を備え、前記焦点調節手段が合焦サーチするときは、合焦サーチする間は撮像した画像信号の中から顔画像が含まれる画像領域の画像信号を抽出して前記表示手段に拡大表示する。前記合焦サーチ処理が終了し、合焦位置に焦点調節レンズ群を移動した後は、前記撮像した画像信号を前記表示手段により表示する。さらに、前記顔画像が含まれる画像領域に対して合焦させたときは、前記表示手段にはその画像領域を視認できる識別表示をすることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
以上の通り本発明によれば、撮像した画像の中に顔画像が存在することを検出したときは、その顔画像が所定のしきい値よりも大きいとき、つまりその顔が所定距離よりも近距離に位置するときは近距離合焦端側から合焦サーチし、顔画像が所定のしきい値未満のとき、つまりその被写体が遠距離に位置するときは遠距離合焦端側から合焦サーチするので、被写体が顔である場合はより短時間で合焦させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明について、添付図面に示した実施形態を参照して詳述する。図1は、本発明を適用した、コントラストAF方式の焦点調節装置を備えた、いわゆるコンパクトタイプのデジタルカメラの要部構成をブロックで示す図である。
【0011】
このデジタルカメラは、焦点調節レンズ群L1を含む撮像光学系としてのズームレンズレンズLにより被写体像を、撮像手段としての撮像素子(CCDイメージセンサ)11の受光面に形成する。撮像素子11は、所定間隔で縦横に配置された多数の画素(光電変換素子)を有し、受光した被写体像を各画素が電荷に変換し、蓄積(積分)する。露光が終了すると、蓄積した電荷を画素単位で画像信号として画像信号処理回路13に出力する。画像信号処理回路13は、入力した画像信号についてホワイトバランス調整等所定の調整処理、A/D変換処理を施してデジタル画像データをCPU15に出力する。つまり、画像信号処理回路13において所定の処理が施され、画素単位でデジタル変換された画像データが、CPU15に出力される。CPU15は、スルーモード(モニタモード)のときは入力した画像データをLCD(モニタ)17で表示可能な画像信号に変換してLCD17により画像を表示し、記録モードのときは、設定された所定フォーマットの画像データに変換して画像メモリ制御回路19を介して画像メモリ21に書き込む。さらにCPU15には、可変データなどが書き込まれた不揮発性メモリとしてEEPROM29が接続されている。
【0012】
通常のコントラストAF処理では、測光スイッチSWSがオンされるとCPU15は、モータドライバ27、AFモータ25およびレンズ駆動機構23を介して焦点調節レンズ群L1を、一方の移動限界位置となる近位置(至近合焦位置)または遠位置(無限遠合焦位置)から他方の移動限界位置となる遠位置または近位置方向にステップ駆動しながら撮像素子11により撮像し、撮像した画像信号を取り込んで内部RAM15aにメモリし、コントラスト検出処理を実行する。そうしてコントラスト値のピークを検出し、そのピークが得られるレンズ位置に焦点調節レンズ群L1を移動させる。撮像した画像信号は、スルーモードによりLCD17で表示される。
【0013】
なお、このデジタルカメラは、ズームレンズLをレンズ駆動機構23介してパワーズームするズームモータ28を備え、ズームレンズLの焦点距離は、レンズ駆動機構23に内蔵されたエンコーダによって検出される。
【0014】
撮像素子11の受光面12には、詳細は図示しないが、各画素(光電変換素子)より被写体側に、原色フィルタとしての赤(R)フィルタ、緑(G)フィルタおよび青(B)フィルタが配置されていて、各画素は、被写体光束中、各原色フィルタR、G、Bを透過した赤、緑および青成分を受光して光電変換し、電荷として蓄積(積分)する。所定時間蓄積した電荷は、画素単位で読み出され、画像信号として出力される。
【0015】
図2には、撮像素子11の受光面12における焦点検出エリアの一例として、5個の焦点検出エリア12A、12B、12C、12D、12Eを示してある。図3は、中央の第1焦点検出エリア12Aを拡大して示した図である。第1焦点検出エリア12Aは受光面12のほぼ中央に位置し、第2、第3焦点検出エリア12B、12Cは、第1焦点検出エリア12Aを挟んで左右に位置し、第4、第5焦点検出エリア12D、12Eは第1焦点検出エリア12Aを挟んで上下に位置している。受光面12には、各画素(光電変換素子)より被写体側に、原色フィルタとしての赤(R)フィルタ、緑(G)フィルタおよび青(B)フィルタが配置されていて、各画素は、被写体光束中、各原色フィルタR、G、Bを透過した赤、緑および青成分を受光して光電変換し、電荷として蓄積(積分)する。所定時間蓄積した電荷は、画素単位で読み出され、画像信号として出力される。
【0016】
図3には、一般的な原色フィルタの配置パターン(ベイヤ配列)を示してある。この実施形態におけるコントラストAF処理では、水平方向2個分、垂直方向2個分(2×2)の正方形内の4画素、つまり2個のフィルタGと各1個のフィルタR、Bを含む計4画素の組み合わせを1ブロックとして、各ブロック内の画素が蓄積した画像信号の大きさの和を輝度anとする。
n=G+R+B+G
【0017】
そうして、1ブロックの輝度anと、水平方向に1ブロック飛ばした1ブロックの輝度an+2との差(an+2-an)を求める処理を、焦点検出エリア内において水平右方向に繰り返し、求めた輝度差(an+2-an)を加算する。この輝度差(an+2-an)を求める処理が水平方向右端のブロックに到達すると、垂直方向下方に1ブロックずらしてから輝度差を求める処理および加算処理を水平右方向に右端のブロックに達するまで繰り返す。以上の差の加算処理を、焦点検出エリア12A乃至12E内の全ブロックについて繰り返し実行する。この処理を、5個の焦点検出エリア12A乃至12Eそれぞれについて実行する。
【0018】
以上の処理によって各焦点検出エリア12A乃至12Eについて求めた輝度差(an+2-an)の和が、そのレンズ位置における各焦点検出エリア12A乃至12Eのコントラスト値になる。
【0019】
このデジタルカメラは、撮像素子11により撮像し、RAM15aに書き込んだ画像信号(画像データ)に基づいて、画像信号の中に顔画像に関する画像信号が含まれているか否か検出する顔画像認識機能をCPU15が備えている。顔画像の認識、検出は、取り込んだ画像信号全体の中において肌色の検出、人の顔における目、鼻、または口などの特徴点の検出、あるいは顔の輪郭の抽出等の従来公知の顔画像の認識方法により行われる。顔画像を検出したときは、その顔画像を含む領域の位置を求めてその領域の中心を中心とする焦点検出エリア12Fを設定し、その焦点検出エリア12F内の画像信号によって合焦位置を求める。なお、この実施形態では焦点検出エリア12Fのサイズは固定であって、位置は検出した顔画像の中央となるように設定される。
【0020】
さらにこのデジタルカメラは、AFモードとして、顔検出処理を含む自動モードおよび顔検出モード、ならびに顔検出処理を含まないマルチモードおよび中央の焦点検出エリア12Aのみを使用するスポットモードがある。自動モードまたは顔検出モードでは、顔画像を検出し、検出した顔画像を含む焦点検出エリア内の顔画像(被写体像)に対して合焦処理を行う。顔画像が検出できなかった場合、またはマルチあるいはスポットモードの場合は、予め設定された焦点検出エリア12A乃至12E内のいずれかの被写体像について合焦処理を行う。
【0021】
ここでこの実施形態では、前記合焦サーチ処理を実行する前に、顔検出処理を実行して、撮像した画像信号の中に顔画像に相当する顔画像信号が存在するか否か検出する。顔画像信号を検出したときは、前記顔画像の領域の大きさが、焦点距離に応じて予め設定されたしきい値よりも大きいか否かを判別し、大きい場合は被写体が近距離に位置するので近位置を合焦サーチ開始位置として合焦サーチ処理を実行し、小さい場合は被写体が遠距離に位置するので遠位置を合焦サーチ開始位置として合焦サーチ処理を実行する。なお、同一距離に顔画像を構成する被写体が位置していても、顔画像は焦点距離が長いほど大きくなるので、ズームレンズの現焦点距離に応じたしきい値を設定する。なお、しきい値は異なる焦点距離ごとに複数個をEEPROM29に記憶させてあるが、記憶させるしきい値は1個とし、焦点距離に応じた計数によって補正する構成でもよく、顔画像の大きさを係数によって補正してもよい。
【0022】
なお、顔画像を検出できなかった場合は、焦点検出エリア12A乃至12E内の全てまたは設定された一つの画像信号を使用して合焦位置を検出する。
【0023】
この実施形態では、焦点調節レンズ群L1の位置を、近位置(近距離合焦位置)および遠位置(遠距離合焦位置)を原点センサ23a、23bで検知し、各位置からの駆動パルス数としてカウントする。駆動パルスは、例えばAFモータ25の出力軸に装着されたフォトインタラプタ等のエンコーダ26が出力するパルスとして定義する。なお、通常は、焦点調節レンズ群L1を近位置から遠位置まで駆動するのに数百パルスあるいはそれ以上要するが、説明を簡単にするために本実施形態におけるコントラストAF処理では、数パルスまたは数十パルス単位でステップ駆動(撮像)して近位置から無限位置まで十数パルスで駆動できるものとし、1ステップが1個の駆動パルスおよび位置パルスに対応するものとする。
【0024】
また、この実施形態では、駆動および位置パルスをPN、開始位置、この実施形態では近位置を0とし、遠位置方向に1ずつ増加するものとする。近位置から遠位置方向にサーチする場合も、遠位置から近位置方向にサーチする場合も、近位置における位置パルスを0、近位置から遠位置方向にステップ駆動するときは位置パルスを加算し、近位置方向にステップ駆動するときは位置パルスを減算するものとする。
【0025】
図4には、人物が近距離に位置している場合と遠距離に位置している場合におけるその人物像、つまり顔画像101、103と焦点検出エリア(焦点検出領域)12Fおよび顔検出領域12Gとの関係を示した。この図からも明らかなように、同一の人物であれば、近距離に位置するときの顔画像101の方が、遠距離に位置するときの顔画像103よりも大きいことが分かる。
【0026】
顔画像(顔検出領域12G)の大きさに応じて、合焦サーチ開始位置を異ならせた様子を、図5(A)、(B)に示した。図5(A)には、人物が近距離に位置している場合の焦点調節レンズ群L1の位置とコントラスト値の関係および焦点調節レンズ群L1の再合焦サーチ処理における移動軌跡をグラフで示した。図5(B)には、人物が遠距離に位置している場合の焦点調節レンズ群L1の位置とコントラスト値の関係および焦点調節レンズ群L1の再合焦サーチ処理における移動軌跡をグラフで示した。同図において、符号xで示した位置は、AF処理を開始するときに焦点調節レンズ群L1が停止していた位置である。
【0027】
顔検出処理により所定のしきい値よりも大きい顔画像101(顔画像検出領域12G)を検出した場合は、焦点検出エリア12Fを顔画像101のほぼ中央位置に設定し、焦点調節レンズ群L1を近位置に移動して、近位置を合焦サーチ開始位置、遠位置を合焦サーチ終了位置として遠位置方向に合焦サーチ処理を実行する(図5(A))。そうして、焦点検出エリア12F内の画像信号のピークを検出したときは、合焦サーチを停止して、そのピークが得られたレンズ位置に焦点調節レンズ群L1を移動させてAF処理を終了する。
【0028】
顔検出処理により、所定のしきい値より小さい顔画像103(顔画像検出領域12G)を検出した場合は、焦点検出エリア12Fを顔画像103のほぼ中央位置に設定し、焦点調節レンズ群L1を遠位置に移動して、遠位置を合焦サーチ開始位置、近位置を合焦サーチ終了位置として近位置方向に合焦サーチ処理を実行する(図5(B))。そうして、焦点検出エリア12F内の画像信号のピークを検出したときは、合焦サーチを停止して、そのピークが得られたレンズ位置に焦点調節レンズ群L1を移動させてAF処理を終了する。
【0029】
本実施形態のAF処理によれば、図5(A)、(B)からも明らかなように、顔画像の大きさによりその被写体の距離を検出し、顔画像が所定のしきい値以上のときは近距離に位置するので近位置から合焦サーチ処理を開始し、顔画像が所定のしきい値未満のときは遠距離に位置するので遠位置から合焦サーチ処理を開始するので、ピークを検出するまでに要する時間が短縮され、合焦させるまでに要するトータル時間を短縮することができる。
【0030】
図示実施形態では、顔画像101が所定のしきい値よりも大きい場合、例えば撮像画面12に対する面積比で1/2以上の場合は、被写体が近距離に位置するものとしてある。焦点距離が図示実施形態の場合よりも、長い場合は焦点距離に応じて2/3、3/4等とし、短い場合は焦点距離に応じて1/3、1/4等とする。
【0031】
さらにこのデジタルカメラでは、AF処理において顔画像を検出したときは、その顔画像をLCD17に拡大表示する。図6にその様子を示した。図6(A)は、AF処理開始前のLCD17に表示されたスルー画像である。この実施形態では顔画像101が表示されていて、AF処理を開始すると、顔画像検出処理によりこの顔画像101が検出されたものとする。CPU15は、この顔画像101をトリミングしてLCD17に拡大表示する(図6(B))。この実施形態では、顔画像101中の顔面部分を1対1のアスペクト比で切り出して上下が一杯になるように拡大表示してある。この拡大表示を、合焦サーチ処理の間継続する。この拡大表示により、使用者はどの被写体に対して合焦させようとしているのかを視認できる。
【0032】
そうしてAF処理が完了すると、LCD17の表示を通常表示(撮像した全画像信号による表示)に戻すとともに、合焦している部分を表示する合焦表示として、顔画像を囲む強調フレーム12iを表示する(図6(C))。この強調フレーム12iの表示により、画像のどの部分に合焦したのかを使用者が視認することができる。この強調フレーム12iは、合焦している部分を使用者が視認できればよいので、焦点検出フレーム12Fを表示してもよい。
【0033】
次に、このデジタルカメラにおけるコントラストAF処理について、図7乃至図10に示したフローチャートを参照してより詳細に説明する。図7は、このデジタルカメラのメインシーケンスをフローチャートで示す図である。このメインシーケンスには、バッテリ(図示せず)が装填されたときに入る。
【0034】
メイン処理に入ると、CPU15は、まず初期化処理を実行する(S101)。次に、メインスイッチSWMがオンしているかどうかをチェックし(S103)、オンしていなければ電源をOFFしてこの処理を終了する(S103;NO、S105、END)。その後、CPU15は定期的に起動してメインスイッチSWMのチェック(S103)を繰り返す。
【0035】
メインスイッチSWMがオンしているとき(S103;YES)は、測光スイッチSWSがONしているかどうかをチェックする(S107)。ONしているとき(S107;YES)は、コントラストAF処理を実行し(S109)、AF処理後、再度測光スイッチSWSがオンしているかどうかチェックし(S111)、測光スイッチSWSがオンしているとき(S111:YES)は、レリーズスイッチSWRがONしているかどうかチェックし(S113)、ONしていれば撮像処理を実行してS103に戻る(S113;YES、S115、S103)。レリーズスイッチSWRがONしていなければそのままS103に戻る(S113;NO、S103)。
【0036】
また、S107またはS111において測光スイッチSWSがONしていなかった場合(S107:NO、またはS111:NO)は、S103に戻る。
【0037】
次に、S113で実行されるコントラストAF処理の詳細について、さらに図8に示したフローチャートを参照して説明する。
【0038】
コントラストAF処理に入ると、まず各変数等の初期化を実行する(S201)。例えばこの実施形態では、各ステータスのクリア、コントラスト値のクリア、レンズ位置パルス数Nの初期化(N=0)、コントラストの最大値、最小値のセット(最大値=0、最小値=FFFFFFFF)、途中停止OKフラグ、顔検出フラグのクリア等を実行する。
【0039】
ここで、変数等は次の通り定義される。
コントラスト値は、各焦点検出エリア内の画素から得られた実際に得られたコントラスト値である。
コントラストの最大値、最小値は、実際に得られたコントラスト値の最大値、最小値である。
レンズ位置パルス数Nは、焦点調節レンズ群L1が開始位置である近位置、遠位置にあるときを0として、AFモータ25を駆動したときにエンコーダ26から駆動パルスが1個出力される毎に1カウントアップされる変数である。CPU15は、これをレンズ位置パルスNとしてカウントして焦点調節レンズ群L1の位置を把握する。
途中停止OKフラグ(StopOKフラグ)は、AFサーチ処理の途中で停止を許可するフラグであって、デフォルト、不可は"0"は、許可は"1"である。
顔検出フラグは、顔画像を検出したことを識別するフラグであって、デフォルトおよび検出していないときは"0"、検出したときは"1"である。
【0040】
次に、読み込んだ画像信号を使って顔画像を検出する顔検出処理を実行する(S203)。顔検出処理は、公知の顔認識画像処理が使用される。この顔検出処理により顔画像を検出したときは顔検出フラグに"1"がセットされる。
【0041】
続いて、フォーカスイニシャライズ処理を実行する(S205)。フォーカスイニシャライズ処理は、条件に応じて焦点調節レンズ群L1を近位置または遠位置に移動させる処理である。条件には、顔検出したか否か、マルチAFモードか否かがある。そうして、顔検出したときは顔検出領域のサイズが所定しきい値以上の場合は近位置、以上でない場合は遠位置とし、顔検出していない場合は、マルチAFモードの場合は近位置、マルチAFモードでない場合は現在の焦点調節レンズ群L1の位置が近位置に近い場合は近位置、そうでない場合は遠位置とする。
【0042】
次に、焦点調節エリアを選択する(S207)。顔検出の場合は、顔位置情報を取得し、焦点検出エリアを検出した顔位置の中央に位置するように選択する。顔検出でない場合は、固定位置の5個の焦点検出エリアを選択する。
【0043】
次に、撮像処理を実行して、合焦サーチ開始位置における、選択した焦点検出エリア内の画像信号を取り込み、コントラスト値算出処理を実行する(S209)。つまり、撮像素子11から入力した画像データに基づいて、開始位置におけるコントラスト値P[0]を算出し、コントラスト値の最大値、最小値を更新する。
【0044】
続いて、AFモータ25をサーチ終了端方向に1ステップ駆動し(S211)、駆動方向に応じて、レンズ位置パルスNを1インクリリメントする(S213)。そうして、撮像素子11から取り込んだ画像信号に基づいてコントラスト値P[N]を算出し、コントラスト値の最大値、最小値を更新するコントラスト値算出処理を実行する(S215)。次に、得られたコントラスト値P[N]が設定条件を満足するピーク値であるか否かをチェックするピークチェック処理を実行する(S217)。ピークチェック処理は公知のアルゴリズムを使用できるが、この実施形態では、選択した各焦点検出エリアにおいて、直近の連続した9個のレンズ位置のコントラスト値の中で中央位置のコントラスト値がピーク値であるか否かにより判断する。そうして、顔検出およびスポットAFにおいてピーク値が得られたときは、途中停止OKフラグ(StopOKフラグ)に"1"をセットする。
【0045】
次に、途中停止OKフラグが"1"であるか否かをチェックする(S219)。途中停止OKフラグが"1"でない場合(S219;NO)は、サーチ終了端であるか否かをチェックする(S221)。サーチ終了端でない場合(S2121;NO)はS211に戻ってS211乃至S219、S221の処理を繰り返す。
【0046】
途中停止OKフラグに"1"がセットされるか(S219;YES)、焦点調節レンズ群L1がサーチ終了端に達したとき(S219;YES)に、AFモータ25を停止させる(S221)。そうして、S211からS221のループ処理で得た、ピーク値が得られた9位置分のコントラストデータに基づいて、ピーク値を近似演算するピーク算出処理を実行する(S225)。つまり、ステップ位置毎に求めたコントラスト値のピーク値の前後に真のピーク値が存在する可能性があるので、近似演算によってより正確と推定されるピーク値およびそのレンズ位置を近似演算する。
【0047】
そうして、マルチ測距の場合は焦点検出エリア毎に得たレンズ位置に基づいて、最も近距離の値が得られた焦点検出エリアを合焦エリアとし、その焦点検出エリアおよびレンズ位置を選択するエリア選択処理を実行する(S227)。そうして、前記選択された合焦エリアにおいてピーク値が得られたレンズ位置に焦点調節レンズ群L1を移動させる合焦駆動処理を実行して(S229)、リターンする(RETURN)。
【0048】
また、以上のコントラストAF処理において、顔検出処理(S203)により顔検出したときは、顔検出領域の画像信号をLCD17に拡大表示する拡大表示処理に切り替え、合焦駆動処理(S229)が終了したら、撮像したが像信号を全てLCD17に表示する通常表示処理に戻す。
【0049】
『フォーカスイニシャライズ処理』
ステップS203で実行されるフォーカスイニシャライズ処理について、さらに図9に示したフローチャートを参照して説明する。
【0050】
フォーカスイニシャライズ処理に入ると、まず、顔検出したかどうかをチェックする(S301)。顔検出していない場合(S301:NO)は、マルチAF処理か否かチェックし(S303)、マルチAFの場合(S303:YES)は、焦点調節レンズ群L1を近位置に移動すべくAFモータ25を近位置駆動する(S307)。マルチAFでは、合焦サーチ開始端を近位置、合焦サーチ終了端を遠位置とするのである。マルチAFではない場合(S303;NO)は、現在の焦点調節レンズ群L1の位置が近位置に近いか否かチェックし(S305)、近位置に近い場合(S305:YES)は焦点調節レンズ群L1を近位置に移動すべくAFモータ25を近位置駆動し(S307)、近位置に近くない場合(S305:NO)は焦点調節レンズ群L1を遠位置に移動すべくAFモータ25を遠位置駆動する(S309)。そうして、焦点調節レンズ群L1が近位置または遠位置に達してAFモータ25が停止するのを待ち(S319:NO、S319)、AFモータ25が停止したら(S319:YES)、リターンする(RETURN)。
【0051】
一方、顔検出処理(S203)で顔検出していた場合(S301;YES)は、ズーム段に応じたしきい値をしきい値Aにセットし(S311)、顔検出領域サイズがしきい値A以上であるか否かチェックする(S313)。顔検出領域サイズがしきい値A以上であった場合(S313:YES)は、焦点調節レンズ群L1を近位置に移動すべくAFモータ25を近位置駆動し(S315)、顔検出領域サイズがしきい値A以上でなかった場合(しきい値A未満であった場合)(S313:NO)は、焦点調節レンズ群L1を遠位置に移動すべくAFモータ25を遠位置駆動する(S317)。そうして、焦点調節レンズ群L1が近位置または遠位置に達してAFモータ25が停止するのを待ち(S319:NO、S319)、AFモータ25が停止したら(S319:YES)、リターンする(RETURN)。
【0052】
なお、焦点調節レンズ群L1を近位置に移動したときは近位置がサーチ開始端、遠位置がサーチ終了端となり、逆に焦点調節レンズ群L1を遠位置に移動したときは遠位置がサーチ開始端、近位置がサーチ終了端となる。
【0053】
『エリア決定処理』
次に、S207で実行されるエリア位置決定処理について、図10に示したフローチャートを参照して説明する。まず、顔検出したかどうかチェックし(S401)、顔検出していない場合(S401:NO)は、焦点検出エリアとして、固定の5個の焦点検出エリア12A乃至12Eを選択し(S407)、リターンする。顔検出していいた場合(S401:YES)は、顔検出位置情報を取得し(S403)、顔検出位置の中央になるように焦点検出エリア12Fを選択し(S405)、リターンする。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の焦点検出方法を適用したデジタルカメラの実施形態の主要構成をブロックで示す図である。
【図2】同デジタルカメラにおける撮像素子の受光面と焦点検出エリアとの関係を示す図であって、(A)は焦点検出エリアが分布するフォーカス枠を示す図、(B)は焦点検出エリアとサポートエリアとの関係を模式的に示す図である。
【図3】同撮像素子のフィルタの配置パターンを説明する図である。
【図4】人物が近距離に位置している場合と遠距離に位置している場合におけるその人物の顔像と焦点検出エリア(焦点検出領域)との関係を示す図である。
【図5】本発明の実施形態において、顔画像の大きさに応じて、合焦サーチ開始位置を異ならせた様子を説明する図であって、(A)は人物が近距離に位置している場合の焦点調節レンズ群L1の位置とコントラスト値の関係および焦点調節レンズ群L1の再合焦サーチ処理における移動軌跡を示す図、(B)は、人物が遠距離に位置している場合の焦点調節レンズ群L1の位置とコントラスト値の関係および焦点調節レンズ群L1の再合焦サーチ処理における移動軌跡を示す図である。
【図6】本発明を適用したデジタルカメラのAF処理における表示手段の表示態様を示す図であって、(A)はAF処理開始時の表示、(B)は顔検出した場合のAF処理中の表示、(C)は顔検出して合焦処理した後の表示を示す図である。
【図7】本実施形態のデジタルカメラにおけるメイン処理をフローチャートで示す図である
【図8】同メイン処理中のコントラストAF処理の詳細をフローチャートで示す図である。
【図9】同メインシーケンス中で実行される、コントラストAF処理をフローチャートで示す図である。
【図10】同コントラストAF処理中のエリア位置決定処理をフローチャートで示す図である。
【符号の説明】
【0055】
11 撮像素子(撮像手段)
12 受光面
12F 焦点検出エリア
12G 顔検出領域
13 画像信号処理回路
15 CPU(顔検出手段、焦点検出手段)
15a 内部RAM
17 LCD
19 メモリ制御回路
21 画像メモリ
23 モータドライバ
23a 近端原点センサ
23b 遠端原点センサ
25 AFモータ
26 エンコーダ
27 レンズ駆動機構
28 ズームモータ
29 EEPROM(不揮発性メモリ)
L ズームレンズ(撮像光学系)
L1 焦点調節レンズ群

【特許請求の範囲】
【請求項1】
近距離合焦端と遠距離合焦端の間において、焦点調節レンズ群を光軸に沿って移動しながら前記焦点調節レンズ群を含む撮像光学系により形成された被写体像を撮像手段により撮像し、複数位置において取得した画像信号に基づいて合焦位置を検出する合焦サーチを実行し、該合焦サーチにより検出した合焦位置に前記焦点調節レンズ群を移動する焦点調節手段と、
前記撮像手段により撮像した画像信号に基づいて顔画像を検出する顔検出手段とを備え、
前記焦点調節手段は、前記顔検出手段が顔画像を検出したときは、その顔画像の大きさが、所定しきい値未満のときは遠距離合焦端側から合焦サーチし、所定しきい値以上のときは近距離合焦端側から合焦サーチすること、を特徴とする焦点調節装置を備えたカメラ。
【請求項2】
請求項1記載の焦点調節装置を備えたカメラにおいて、前記焦点調節手段は、前記顔検出手段が顔画像を検出したときは、該顔画像が合焦状態となる合焦位置を検出する焦点調節装置を備えたカメラ。
【請求項3】
請求項1または2記載の焦点調節装置を備えたカメラにおいて、前記焦点調節手段は、前記顔検出手段が顔画像を検出したときは、前記顔画像が含まれる画像領域を焦点検出エリアとして設定し、該焦点検出エリア内の画像信号に基づいて合焦位置を検出する焦点調節装置を備えたカメラ。
【請求項4】
請求項3記載の焦点調節装置を備えたカメラにおいて、前記焦点検出エリアは、前記画像領域の大きさにかかわらず一定である焦点調節装置を備えたカメラ。
【請求項5】
請求項3または4記載の焦点調節装置を備えたカメラにおいて、前記合焦サーチは、前記焦点検出エリア内の画像信号のコントラストのピークが得られるレンズ位置を合焦位置として検出する焦点調節装置を備えたカメラ。
【請求項6】
請求項5記載の焦点調節装置を備えたカメラにおいて、前記合焦サーチの途中でコントラストのピークが得られたときは、合焦サーチを停止して前記ピークが得られた位置に焦点調節レンズ群を移動する焦点調節装置を備えたカメラ。
【請求項7】
請求項1乃至6記載の焦点調節装置を備えたカメラにおいて、前記撮像光学系はズームレンズであって、前記しきい値は、前記ズームレンズの現焦点距離に基づいて設定される焦点調節装置を備えたカメラ。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれか一項記載の焦点調節装置を備えたカメラは、前記撮像手段が撮像した画像を表示する表示手段を備え、前記焦点調節手段が合焦サーチするときに、前記顔検出手段が顔画像を検出したときは、合焦サーチする間は撮像した画像信号の中から顔画像が含まれる画像領域の画像信号を抽出して前記表示手段に拡大表示する焦点調節装置を備えたカメラ。
【請求項9】
請求項8記載の焦点調節装置を備えたカメラにおいて、前記合焦サーチ処理が終了し、合焦位置に焦点調節レンズ群を移動した後は、前記撮像した画像信号を前記表示手段により表示する焦点調節装置を備えたカメラ。
【請求項10】
請求項8または9記載の焦点調節装置を備えたカメラにおいて、前記顔画像が含まれる画像領域に対して合焦させたときは、前記表示手段にはその画像領域を視認できる識別表示がされる焦点調節装置を備えたカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−145782(P2008−145782A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−333721(P2006−333721)
【出願日】平成18年12月11日(2006.12.11)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】