説明

焦燥およびその他の行動障害、特にアルツハイマー病に関連する行動障害の治療用1−アミノシクロヘキサン誘導体

本発明は、哺乳類における中枢神経系 (CNS) 障害, 特にアルツハイマー病 (AD), 脳血管障害 (VaD)又はダウン症に関連する行動障害の治療方法にあって, 1-アミノシクロヘキサン単独で又はアセチルコリンエステラーゼ阻害剤との組み合わせで上記哺乳類に投与することを含む、上記治療方法に関する。ある実施態様において, 1-アミノシクロヘキサンはメマンチンである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、哺乳類における中枢神経系 (CNS) 障害, 特にアルツハイマー病 (AD), 脳血管障害 (VaD)又はダウン症に関連する行動障害の治療方法にあって, 1-アミノシクロヘキサン単独で又はアセチルコリンエステラーゼ阻害剤との組み合わせで上記哺乳類に投与することを含む、上記治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
アルツハイマー病
痴呆は、65 才以上の人の10%ほど、そして85才以上の人の24%より多くに影響を及ぼす重大な障害である(非特許文献1)。 アルツハイマー病 (AD) は、年齢65才以上の人々の間の痴呆症例全体のうちの約50 % - 60 %を占める神経変性のますます広まる病態である。ADは、進行性記憶喪失, 認知, 論理的思考, 判断, 及び次第に深刻な精神機能低下及び最終的に死に至る情緒的安定性によって臨床的に特徴づけられる。ADは臨床症状の開始及び死の間の平均約8.5 年の持続期間を有する進行性疾患である。ADは第四の最も一般的な病的死因を代表すると考えられ、そして米国では、約4-5百万人に影響を及ぼしている。 AD有病率は、65才を超えると5年ごとに倍に成る(非特許文献2)。
【0003】
現在、ADは世界中で約15 百万人(全ての人種及び少数民族を含めて)に影響を及ぼし、そして人口の中で高齢者が相対的増加するために、その有病率は次の20又は30年にわたって増加する可能性がある。AD は現在治療することができない。効果的にADを予防するか又はその症状及び進行を無効にする治療は、現在全く知られていない。
【0004】
ADは、錐体神経の死及びより高度の精神機能に関連する脳領域中でニューロンシナップスの喪失に関与する (非特許文献3)。ADの患者の脳は、老人 (又は アミロイド) 斑, アミロイド血管症 (血管中のアミロイド沈着) 及び 神経原線維の変化という特徴的な病変を示す。 ADに対する承認された治療は、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤又はNMDA 受容体アンタゴニストを含む。
【0005】
アセチルコリンエステラーゼ阻害剤
ADはマイネルト(Meynert)基底核内でコリン作動性ニューロンの深刻な損失に関連する(非特許文献4)。これらのニューロンの情報伝達は、 細胞外に遊離される神経伝達物質アセチルコリン(ACh)によって媒介される。AD 並びに多くのその他の神経学的及び精神医学的疾患(パーキンソン病, 統合失調症, 癲癇, 鬱病, 強迫障害及び双極性障害を含む)に関連する認知障害でのACh 情報伝達系の機能障害の役割を認知したことが、コリン作動性作用をコリン作動性分解酵素アセチルコリンエステラーゼ (AChE) の阻害によって選択的に増加させる医薬を開発することを導いた。AChEはAchを、Achがシナップス間隙に分泌された後に分解する (非特許文献5)。
【0006】
現在, 最も広範に臨床上使用されるアセチルコリンエステラーゼ阻害薬(AChEI)はタクリン (THA; 1,2,3,4-テトラヒドロ-9-アミノアクリジン塩酸塩), DFP (ジイソプロピルフルオロホスフェート), フィソスチグミン, ドネペジル, ガランタミン及びリバスチグミンである。多くのAChEI は選択的にAchEを阻害するが, ブチリルコリンエステラーゼ (BuChE)を標的とする剤は、AD 進行及びACh 調節がますますBuChEに依存するので、更なる利点を提供することができる。二重阻害は、アミロイド生成性化合物 の形成を減速させるのを助けることもできる(非特許文献6)。
【0007】
ドネペジル ([(R,S)-1-ベンジル-4-[(5,6-ジメトキシ-1-インダノン)-2イル]-メチルピペリジン塩酸塩]; ARICEPT, 以前はE-2020) は可逆性, 非競合, ピペリジン-タイプAchEIであり、これはBuChEよりむしろAchEに対して選択的である (非特許文献7)。Dooley 等 (非特許文献8)は、ドネペジルを1日あたり薬用量 5 及び 10 mg投与する、軽度ないし中等度のADの患者161 〜 818 人の短期間試験(14〜30週間)で、偽薬に比べて認知及び全体臨床機能を有意に改善したことを実証した (非特許文献9も参照)。この調査で得られる長期の効果データは、認知 , 全体機能又は日常生活動作(ADL)の改善が約21〜81 週間保たれることを示唆させる。
【0008】
ガランタミン (REMINYL) は可逆性, 競合性, 第三級アルカロイド(tertiary alkaloid) AchEIであり、これはBuChEよりむしろAChE に対して選択的である。Scott 等によって実証されたように (非特許文献10),1日あたり薬用量 16mg 又は 24 mg投与する、軽度ないし中等度のADの患者285 〜978人の3 〜6 ヶ月間試験で、偽薬受容者に比べて認知及び全体症状の有意に改善を達成した。
【0009】
リバスチグミン (EXELON)は、AChE 及び BuChEの二重阻害薬であって、これはAD 重症度スペクトルにわたる利点を実証した (非特許文献11)。短期-作用の剤又は可逆性の剤として分類されるタクリン及びドネペジルと異なり, リバスチグミンは、10 時間までAchEを阻害する中間型(intermediate-1acting)又は擬似-不可逆性剤である。臨床前生化学調査はリバスチグミンが 末梢阻害にわたって中枢神経系 (CNS) 選択性を有することを示す。 リバスチグミンは、前脳損傷のラットの記憶障害を改善することを示している;そして1日あたり薬用量6-12 mg投与の2つの大きな多施設臨床試験 (全部で患者1324人)で、これは3つの認知及び機能スケールに関して偽薬より優れていた(非特許文献12)。
【0010】
NMDA受容体アンタゴニスト
グルタミン酸受容体 -------特にこれはN-メチル-D-アスパラギン酸 (NMDA)によって選択的に活性化される ------- の過剰の又は病理学的活性化は, AD 患者の脳中のコリン作動性細胞の変性を引き起こす過程にも関与した(非特許文献13〜16)。NMDA 受容体は、 いくつかの生理的 シナップス可塑性プロセス, たとえば記憶及び学習の要であると、高い評価が確立している (非特許文献17)。 NMDA 受容体の機能は、グルタマートに対するアゴニスト結合部位及びグリシン及び D-セリンによって活性化されるアロステリックコ-アゴニスト部位 の双方の活性化を必要とする(非特許文献18〜20)。NMDA レプター 上のD-セリン-感受性調節部位 (sensitive modulatory site) の活性化は、長期増強の誘発にとって必須条件(非特許文献21)、すなわち記憶及び学習のインビトロ相関関係 (in vitro correlate)であるとことが分かった。更に,精神医学的障害、たとえば統合失調症に関連する認識障害は、D-セリンを用いる経口治療によって緩和されることが分かった(非特許文献22)。
【0011】
たとえNMDA 受容体活性化が学習に重要であったとしても、非競合 NMDA 受容体ンタゴニストの中等度の親和性は、ヒトAD でも、アルツハイマー痴呆の動物モデルでも認知障害を治療/反転する(correct/reverse)ことが見出された。過剰のグルタミン酸作動性作用がADでコントリビュタ(contributor)であることに応じて、NMDA 受容体の有効な薬理学的拮抗作用は, 特にオープンチャネルブロッカーによってADの進行を減速させることができる (非特許文献23〜25)。
【0012】
NMDA受容体ンタゴニストは、潜在的に多種のCNS疾患、たとえば急性神経変性 (たとえば脳卒中及び外傷に関連する), 慢性神経変性 (たとえばパーキンソン病, AD,ハンティングトン病及び筋萎縮性側索硬化症[ALS]に関連する), 癲癇, 薬物依存, 鬱病, 不安及び慢性疼痛で広範な治療用途を有する (検討のために参照: 非特許文献26〜28 及び23)。NMDA 受容体の機能的阻害は、 NMDA 受容体複合体, たとえば: 第一伝達物質部位 (競合), カチオンチャネル内に局在するフェンシクリジン部位 (非競合), ポリアミン調節部位及び ストリキニーネ非感受性, コアゴニスト性(co-agonistic) グリシン部位(グリシンB) 内で異なる認知部位での作用によって達成することができる(上記非特許文献23)。
【0013】
NMDA 受容体阻害剤は正常のシナップス伝達を害する恐れがあり、それによって多くの作用を引き起こす。確かに, 現在までに同定された、多くのNMDA 受容体アンタゴニストは、その想定される治療範囲内での薬用量で非常に望ましくない副作用を生じる。これは臨床試験が、ジゾシルピン(Dizocilpine) ((+)MK-801; (+)-5-メチル-10,11-ジヒドロ-5H-ジベンゾシクロヘプテン-5,10-イミン マレアート), セレスタト(Cerestat) (CNS-1102), リコスチネル(Licostinel) (ACEA 1021), セルホテル(Selfotel) (CGS-19755), 及び D-CPP-eneのようなNMDA 受容体アンタゴニストに対する多数の副作用のために、良好な治療利用を支持しなかったことで裏付けられる (非特許文献29〜31)。 それ故に、 この分野での要求がNMDA 受容体の病理学的活性化を妨げるが、その生理学的活性を可能にするNMDA 受容体アンタゴニストを開発させた。
【0014】
メマンチン 及びネラメキサン (1-アミノ-3,5-ジメチルアダマンタン及びその薬学的に許容し得る塩) は、1-アミノ-シクロヘキサンの同族体である (たとえば特許文献1ないし3に開示されている)。ネラメキサン (1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン) も、1-アミノシクロヘキサンの誘導体である (たとえば特許文献4に記載されている)。メマンチン, ネラメキサン並びにいくつかのその他の1-アミノアルキル-シクロヘキサン類は、受容体に中等度の親和性を有する 、系統的に活性な非競合 NMDA 受容体アンタゴニストである。これらは強い電圧依存性特性及び速い遮断/非遮断動力学を示す(上記非特許文献23;非特許文献32〜36)。これらの化合物はNMDA 受容体チャネルから、高い親和性のNMDA 受容体アンタゴニスト、たとえば(+)MK-801 に比べてはるかに速く解離され、そして恐らく信号対雑音比 (signal-to-noise ratio)の増加に起因するNMDA 受容体の持続性過刺激(tonic overstimulation)によって生じるニューロン性可塑性の崩壊を弱める。受容体に対するその比較的低い親和性, 強い電圧依存性及び速い受容体非遮断動力学のゆえに, これらの化合物は治療範囲内の薬用量でその他のNMDA 受容体アンタゴニストの副作用を本質的にもっていない(非特許文献37)。確かに, メマンチンは 20 年以上にわたって臨床上投与され、700,000人を超える、多くの治療された患者に良好な忍容性(許容性)を示している。
【0015】
メマンチン, ネラメキサン及びその他の1-アミノアルキルシクロヘキサン類は、種々の進行性神経変性疾患、たとえばADによる痴呆, パーキンソン病及び痙縮の緩和に有用であると提案された(たとえば, 特許文献3、5及び4; 上記非特許文献23; 非特許文献38 〜42; 上記非特許文献32参照)。 これらの疾患は、グルタミン酸伝達障害, すなわちNMDA 受容体チャネルによるカルシウムの過剰流入の結果としてして生じ, これが特異脳領域で脳細胞の崩壊を導く(非特許文献43〜45)。成熟ラットのメマンチンでの長期治療は、海馬 長期増強の形成を増強させ、シナップス可塑性の永続性を増し、空間記憶能力を改善し, そして NMDA受容体アゴニストによって生じる記憶障害を反転させることが分かった(非特許文献46,47)。
【0016】
アミノシクロヘキサン誘導体及び特にメマンチンは、またAIDS 痴呆 (特許文献6), 神経障害性苦痛 (特許文献7), 脳虚血 (特許文献3), 癲癇, 緑内障, 肝性脳症, 多発性硬化症, 発作及び遅発性ジスキネジー (上記非特許文献23)の治療に有用であると提案された。更に, メマンチン及びネラメキサンの比較的高い薬用量は、慢性及び神経障害性苦痛のいくつかのモデルで運動反射神経への明確な効果なく選択的遮断温熱性痛覚過敏及び機械的異痛に見られる。1-アミノアシクロヘキサン誘導体は、免疫調節過活性, 抗マラリヤ活性, 抗-ボルナウイルス活性及び抗-肝炎C活性を有することも実証された (たとえば特許文献5及びそこに引用された参考文献参照)。
【0017】
アミノシクロヘキサン誘導体、たとえばメマンチン 及び ネラメキサン (特許文献8; 特許文献5参照) は、非-NMDA-介在経路を経て作用することも示唆させた。したがって, メマンチンは 、 5HT3-介在電流 (native N1E-115 及び異種 HEK-293 細胞中で) 及び NMDA 受容体 -介在電流 (ラット海馬スライス中で)をほぼ等しい親和性 で抑制することがわかった(上記非特許文献23; 非特許文献48)。 5HT3 受容体アンタゴニストは、動物の学習及び記憶を改善することがわかった。 (非特許文献49, 50)。
【0018】
上記のように、種々の局面の痴呆を引き起こす前脳基底部内のコリン作動性ニューロンの破壊は, ACh-介在情報伝達(signalling) 及び(又は)NMDA 受容体の過剰活性化での阻害(disruption)を結果として生じることができる。 実験結果の蓄積は、ACh- 及び NMDA 受容体 -介在情報伝達系が連動する、すなわちNMDA 受容体の遮断がAchの細胞外遊離を増加させることを示す。したがって, NMDA 受容体アンタゴニスト, (+)MK-801, の全身投与は、ラット頭頂 及び 前面大脳皮質においてAchの細胞外遊離の用量依存的な増加を生じることが実証された (非特許文献51、52)。同様に、別のNMDA 受容体アンタゴニスト, CPP, の脳室内の(i.c.v.) 投与によって、ラット頭頂大脳皮質及び海馬でACh 遊離を増加させることが分かった(非特許文献53、54)。グルタマートが、GABA作動性及びノルアドレナリン作動性ニューロンでのNMDA 受容体による作用によって, 大脳皮質に突き出る前脳基底部コリン作動性ニューロンを介して持続性抑制コントロールを保つことが提案された (非特許文献55)。この巡回(circuit)に基づき, NMDA 過活性化の可能な遮断に加えて, NMDA 受容体アンタゴニストの全身投与は大脳皮質中でAchの増加された遊離をもたらすACh ニューロンでGABAの抑制コントロールを減少させることを期待させる。
【0019】
焦燥(agitation)
焦燥は、攻撃性, 好戦, 過行動及び脱抑制を含む行動障害の範囲を意味することができる包括用語である。焦燥は、常に変動する過程を示す、多くの異なる臨床病態に見られる、比較的に関連のない行動の非特異的一群である。焦燥は多くの異なる病状及び薬物間相互作用によって又はヒトの思考能力を悪化させるあらゆる環境によって引き起こされる。
【0020】
多数の内在する病態異常は、ドーパミン作動性, セロトニン作動性, ノルアドレナリン作動性 及びGABA作動性系調節障害によって媒介される。焦燥は非生産的, 広範なかつ過剰の過活動-運動(静座不能)及び認知の双方によって特徴づけられ, そして内面的不愉快な緊張に不随して起こる。
【0021】
焦燥を治療するために使用される通常の薬物治療は、ベータ遮断剤、たとえばプロプラノロール及びピンドロール, 不安治療薬、たとえばブスピロン, 抗痙攣薬、たとえばバルプロエート(valproate)及びラモトリジン, 抗精神薬、たとえばハロペリドール及びその他の強力なドパミン遮断剤及び非定型 抗精神薬を含む。
【0022】
焦燥及び痴呆。痴呆, たとえばアルツハイマー病に関連する老人性痴呆 (SDAT) 及び 血管性痴呆の老人患者における焦燥は, 介護者にとって一層のストレスの一因となり、そしてしばしば薬物療法による一層の治療が必要である。焦燥の具体的なサブタイプは、せん妄, 精神疾患, 抑うつ (精神疾患あり又はない), 不安, 不眠症, 日没現象 (夕方に焦燥が増悪), 攻撃性 及び怒り, 及び痛み(たとえば変性性関節症)を伴う焦燥を含む。焦燥の上記サブタイプは、病態、たとえば尿路感染, 栄養不良, 気道感染, 最近起こった脳卒中(recent stroke), 潜在性頭部外傷, たとえば最近の転倒, 痛み, 便秘, うつ性心不全, 起立性低血圧症, 慢性閉塞性肺疾患, 甲状腺機能低下症, 糖尿病, アルコール又はその他の薬物乱用, 薬物乱用禁断症状, 長骨骨折, たとえば最近の転倒に起因する長骨骨折から引き起こされうる。焦燥は、薬物療法又は焦燥を伴う内因性症候群を治療するために使用されるその他の薬物によっても引き起こされる。
【0023】
エキスパートコンセンサスガイドライン委員会(a panel of expert consensus guidelines)は、上記サブタイプの焦燥(agitation)に対する一次治療として以下の薬物治療を提案する:
【0024】
せん妄-通常の強力な 抗精神薬 , たとえば, ハロペリドール。
【0025】
精神病-リスペリドン及び通常の強力な抗精神薬, オランザピン, ジバルプロエクス及びトラゾドン。
【0026】
抑うつ-抗うつ剤。
【0027】
不安-ブスピロン、トラゾドン及びSSRI。
【0028】
不眠症-トラゾドン及び急性治療のためにベンゾジアゼピン類。
【0029】
日没現象-トラゾドン, リスペリドン, オランザピン, 及び通常の強力な抗精神薬。
【0030】
攻撃性及び怒り-トラゾドン, ジバルプロエクス, SSRI及びブスピロン。
【0031】
痛み-三環状抗うつ剤, SSRI及びトラゾドン。
【0032】
(非特許文献56)
【0033】
焦燥及び抑うつ。 しばしば, 重度の抑うつ患者は、薬物治療、たとえばベンゾジアゼピン類によってコントロールされえない焦燥を悪化させる。Benazziは、またレーシングソーツ(racing thoughts)及び精神運動性焦燥を示すうつ病患者の亜母集団を明らかにした (非特許文献57)。
【0034】
SSRI禁断症状に関連する焦燥。SSRI 抗うつ剤が突然中止された場合、 禁断症状、たとえば不安, 焦燥, 睡眠障害, 運動障害, 情動不安及びせん妄がしばしば存在する (非特許文献58)。
【0035】
小児集団における焦燥。 痴呆に関連する焦燥に加えて, 焦燥は子供に影響を与える症候群、たとえばうつ病, 注意欠陥障害 (多動性あり及び多動性なし), 行為障害, 反抗的行為障害及び分離不安障害にも見られる。麻酔, 特にセボフルラン後、精神的安定を失うことも証明されている(非特許文献59)。
【0036】
気分障害に関連する焦燥。焦燥は気分障害、たとえば双極性障害及び統合失調症にしばしば関連する。双極性障害において, 焦燥は 急性躁状態の間にしばしば見られるが,混合抑うつ状態の間にも見ることができる。焦燥は統合失調症にも関連し、そして焦燥の急性型は 筋肉内ジプラシドン及び オランザピンで典型的に治療されるが,オランザピンを急速な最初の投薬量の段階的増大量で (1 及び 2日目40 mg, 3 及び4日目30 mg, その後5-20 mg ) 経口投与した場合、より良好な改善を示すことが最近分かった(非特許文献60)。
【0037】
術後焦燥。術後焦燥の平均発生率は約11-40%であり、そして大合併症(major complications)の発生の増加を引き起こし,リハビリテーションセンターに入院し, 入院期間が延長され, そして 死を予測する。心臓手術、たとえば冠動脈バイパスグラフト(CABG)手術後の焦燥は特に代表的である。術後焦燥は、ファクター、たとえば低酸素症, 低血圧, 代謝異常, 知覚脱失(anesthetics), 敗血症 又は脳卒中の残存作用によって引き起こされうる。
【0038】
ICU焦燥。焦燥はICUで通常直面する問題である。 焦燥した患者は、種々の生命維持モダリティとの接続を断つことによって、かれら自身看護を危うくする可能性がある。更に, これらの患者は、看護士及び医師のケアプロバイダーに危険をもたらし、そして限られたプロバイダーケアタイムを独占することでその他のICU 患者のケアを危うくする。 最近の研究で, 看護士及び医師は、総入院日数の58%の間で患者の71% が焦燥した行動を生じると述べた。その行動は総入院日数の 30%の間で患者の46%が重度又は危険であった (非特許文献60)。痛み及び不安は、ICU 焦燥の典型的な原因である。
【0039】
薬物乱用禁断症状に起因する焦燥。特に精神運動性焦燥として現れる焦燥は,アルコール及び薬物(麻薬も含む) 禁断症状の症状である。対照療法で対処できないアルコール禁断症状に関して, ベンゾジアゼピン, 特にジアゼパム及びクロルジアゼポキシドが第一に選ばれる医薬である。 バルビツール酸誘導体, ベータ-遮断剤及び抗精神薬は一般に一次治療として薦められない。カルバマゼピン及びクロニジンを含む、別のクラスのいくつかの医薬は, 2〜3の研究でベンゾジアゼピン とほぼ同程度に有効であることを示したが, その研究は小規模であり、患者は常に軽度禁断症状にあり、そして 禁断症状を判断するための有効な機器をしばしば使用しなかった。いくつかの剤, たとえばベータ-遮断剤は, ベンゾジアゼピン治療に代わるものでなく、この治療に不随するものとしての役割を果たすことができる。
【0040】
症状としての精神運動性焦燥は、コカイン, ニコチン, ナルトレキソン(naltrexone)関連デトックス (非特許文献61), オピオイド (非特許文献62), ベンゾジアゼピン, ガバペンチン (非特許文献63) 及びガンマ-ヒドロキシフチラート(非特許文献64)に起因する禁断症状にも伴う。
【0041】
外傷性脳損傷に起因する焦燥。外傷による脳損傷(TBI)患者は、リハビリテイションプログラムで治療される集団の大きい割合を占める。この集団で焦燥した患者の数及び鋭敏さ(acuity)が増加した(非特許文献65)。TBI の薬理学的処理は、ベータ-遮断剤、 抗痙攣薬, ドーパミン作動性薬及び抗精神薬を含む (非特許文献66)。
【0042】
末期患者の焦燥。コムニケーション能力欠陥及び焦燥したせん妄は末期癌患者にしばしば観察され、そしてオピオイドのより高い薬用量の要求及び黄疸の存在と著しく関連する (非特許文献67)。
【特許文献1】米国特許第 4,122,193号明細書。
【特許文献2】米国特許第4,273,774号明細書。
【特許文献3】米国特許第 5,061,703号明細書。
【特許文献4】米国特許第5,614,560号明細書。
【特許文献5】米国特許第 6,034,134号明細書。
【特許文献6】米国特許第 5,506,231号明細書 。
【特許文献7】米国特許第 5,334,618号明細書 。
【特許文献8】米国特許出願第09/597,102号明細書 及びその対応国際特許出願PCT EP 01/06964 号明細書( 2001年12月27日にWO 01/98253として公表)
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【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0043】
本発明者は 、1-アミノシクロヘキサン 誘導体、たとえばメマンチン又はネラメキサン単独又はAchEI、たとえばガランタミン, タクリン, ドネペジル又はリバスチグミンと組み合わせて臨床投与することが,中枢神経系 (CNS) 障害, 特にアルツハイマー病 (AD), 脳血管障害 (VaD), 又はダウン症に関連する行動障害の治療への予期されない価値ある薬物療学的手段であることを始めて思い付き、そして実証した。本発明は、 単独で又はAchEIと組み合わせでAD対象者(subjects)に投与した場合, 1-アミノシクロヘキサン 誘導体の効果は 関連する行動上現れる症状、たとえば 焦燥を予期せぬことに軽減することを証明する。行動上現れる症状へのこの好ましい影響は、鎮静薬、たとえば抗精神薬との併用治療がない場合に見られた。
【0044】
メマンチンは 、現在 欧州及び米国で中等度〜重度 ADの治療に許可されている。メマンチンが、中等度〜重度ADの治療に有用であると意外にも証明された (米国特許出願第11/030,584号明細書, 出願日2005年1月5日, その全部を本願に引用して援用する)。ADの患者においてメマンチンが焦燥を軽減させることを本発明によって実証されることは、予想されなかったことである。この知見は焦燥があるその他の行動障害に拡大される。
【課題を解決するための手段】
【0045】
発明の要旨
本発明は、哺乳類における行動障害, 特に基礎症状、たとえば中枢神経系 (CNS) 障害, 特にアルツハイマー病 (AD), 脳血管障害 (VaD)又はダウン症に、又は外傷性脳損傷に関連する行動障害の治療方法において、1-アミノシクロヘキサン単独で又はアセチルコリンエステラーゼ阻害剤との組み合わせで上記哺乳類に投与することを含む、上記治療方法に関する。
【0046】
ある実施態様において, 行動障害は, たとえば妄想, 幻覚, 焦燥/攻撃性 , 抑うつ/不快気分, 不安, 病的爽快/多幸, 無関心/冷淡, 脱抑制, 興奮性/不安定性, 異常運動活動, 夜間行動 及び食欲/摂食変化を包含する。
【0047】
更に詳しくは, 本発明にしたがって治療される行動障害は焦燥である。具体的な実施態様において、焦燥はうつ病に関連する。
【0048】
別の実施態様において、焦燥は選択的セロトニン再取り込み阻害剤の禁断症状に関連する。
【0049】
別の実施態様において, 焦燥は気分障害, たとえば統合失調症又は双極性障害に関連する。
【0050】
また別の実施態様において, 焦燥は薬物乱用禁断症状に関連する。
【0051】
別の実施態様において, 焦燥は外傷性脳損傷に関連する。
【0052】
別の実施態様において, 焦燥は末期疾患に関連する。
【0053】
本発明は、また小児障害に関連する焦燥の治療方法を提供する。
【0054】
ある実施態様において, 小児 障害はうつ病, 注意欠陥障害 (多動性あり及び多動性なし), 行為障害, 反抗的行為障害又は分離不安障害である。
【0055】
本発明は、また集中治療室にあるか, 又は術後に, たとえば麻酔によって生じる焦燥を治療する方法を提供する。
【0056】
本発明は、またCNS 障害又は外傷に関連する焦燥を治療する方法を提供する。
【0057】
本発明は、アルツハイマー病(中等度〜重度アルツハイマー病を含むがこれに限定されるものではない。)に関連する焦燥を治療する方法を提供する。
【0058】
ある実施態様において、焦燥が重度である。たとえば4より大きいか又はこれに等しいNPI 焦燥スコアを有する患者によって測定される(NPI スケールにしたがってトップ25%の最高スコリング集団にいると測定された患者に含まれるが制限するものではない。)ような重度である。
【0059】
本発明はまたメマンチン及びその他のアミノシクロヘキサン誘導体及びそれらの薬学的に許容し得る塩に加えて、抗精神薬を患者に投与することを含む、行動障害の治療方法を提供する。
【0060】
本発明の別の局面は、治療上有効な量の1-アミノシクロヘキサン単独又はアセチルコリンエステラーゼ阻害剤と組み合わせて及び場合により少なくとも1種の薬学的に許容し得るキャリヤー又は賦形剤を含む、医薬調合物を包含する。
【0061】
ある実施態様において、1-アミノシクロヘキサンを、一日あたり5-200 mg/kgの量で投与する。
【0062】
別の実施態様において、1-アミノシクロヘキサンを、一日あたり5-200mg/kg の量で、一日あたり5-200mg/kg の薬用量のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤と共に投与する。
【0063】
別の実施態様において, 本発明は、本発明の1-アミノシクロヘキサンの治療上有効な量及び場合によりアセチルコリンエステラーゼ阻害剤及び場合により薬学的に許容し得るキャリヤー 又は賦形剤を含む、中枢神経系 (CNS) 障害, 特にアルツハイマー病 (AD), 脳血管障害 (VaD)又はダウン症に関連する行動障害の治療用医薬投与形を提供する。
【0064】
本発明の具体的実施態様において、1-アミノシクロヘキサンは、メマンチン, ネラメキサン又はそれらの誘導体,(これらの有効物質の薬学的に許容し得る塩を含む)から選ばれる。
【0065】
また別の本発明の実施態様において, アセチルコリンエステラーゼ阻害剤を使用する場合, これはタクリン (THA; 1,2,3,4-テトラヒドロ-9-アミノアクリジン塩酸塩), DFP (ジイソプロピルフルオロホスフェート), フィゾスチグミン, ドネペジル, ガランタミン及びリバスチグミンから選ばれる。
【0066】
発明の詳細な説明
上記詳述したように, ある局面で、本発明は、哺乳類において 中枢神経系 (CNS) 障害, 特にアルツハイマー病 (AD), 脳血管障害 (VaD)又はダウン症に関連する行動障害を治療、予防、停止、進行の開始の遅延及び(又は)進行の恐れの軽減、又は改善する新規方法にあって、上記哺乳類に有効量の1-アミノシクロヘキサンを単独で又はアセチルコリンエステラーゼ阻害剤 (AChEI)と組み合わせて投与することを含む、上記方法を提供する。
【0067】
次の神経精神科スケールを、本発明の方法よる治療に関して、アルツハイマー病に関連する選択された行動障害を評価するために使用した。
【0068】
認知, 機能及び全般的尺度(global scales)
アルツハイマー病評価尺度-認知副尺度又はADAS-cogは、認知機能障害 (記憶, 言語, 見当識(orientation), 理解及び習慣)の選択領域の重症度を評価するために使用される11-項目尺度から成る。スコアは0 〜70に及び、より小さい重症度を示すより低いスコア及び最悪の認知機能障害を示すスコア70を含む。軽度〜中等度アルツハイマー病の患者を評価し、後の変化にこれを使用することは、広範囲で認められている。ADAS-cogを、ベースライン外来往診で開始する、それぞれのクリニック外来往診で実施する。
【0069】
全般臨床症状の評価尺度(the Clinician's Interview-Based Impression of Change including caregiver information)又はCIBIC-Plusは、全般的評価である。これは経験を積んだ査定者/臨床医による患者及び介護者との独立した, 包括的な面談によって引き出される。この査定者/臨床医は、プロトコルの一部として実施されるすべてのその他の心理試験スコア(ベースライン外来往診後に)を知らず、そしてその他の点で患者と親しくない(Reisberg et al., Alzheimer Dis. Assoc. Disord. 1997; 11(Suppl.3): 8-18)。スコア1-3 は改善を示し、スコア 4 は未変化を示し (ベースラインに比べて)、スコア 5-7は悪化を示す。CIBIC-査定者は、ベースラインで疾患の重症度を評価する。参考用ベースラインからの結果を用いて, 査定者はついで患者 及び 介護者を4, 8, 12, 18 及び 24週目の最後に(又は期限前終了時に)面談し,"変化の印象(Impression of 変化)"評価尺度を得る。この尺度用フォマットは アルツハイマー病共同調査 - 変化に対する医師の包括的印象(ADCS-CGIC)に由来する (Schneider, L. et al, 1997)。CIBIC-plus を、ベースライン外来往診で開始する、それぞれの臨床面談で実施する。
【0070】
アルツハイマー病共同調査 - 日常生活動作又はADCS-ADL, 検査は、痴呆患者の機能的能力を測定するために使用される23の質問から成る (Galasko et al., Neurobiol. Aging 2000; 21(Suppl.1): 168)。これらの質問は、本来のADL尺度中でより大きい一連の49の質問から選ばれる。より通常の選択は、同一の49 の質問グループからの19 の質問である(ADCL-ADL19)。それぞれADL項目は、それぞれADLの独立した行為の最高レベルから 完全喪失に及ぶ一連の階層的副質問(hierarchical sub-questions)を含む。ADSC-ADL検査総スコアは、0 (より低い機能状況) 〜78 (より高い機能状況)に及ぶ。より高いスコアは、より良い機能状況を示す。検査を患者と密接な関係にあり、そして先行する4週間患者の最の普通で変わらない行為を守る人物を面談することによって行う(Galasko et al., 1997)。ADCS-ADLを、ベースライン外来往診で開始する、それぞれの臨床面談で実施する。
【0071】
重度障害検査又はSIBは, 機能が悪化して、標準神経精神科テストを達成できない個体の認知機能を評価するために開発された。このSIBは重度痴呆に関連する特異的行動及び認知欠陥を考慮にいれる、広範な低レベルの課題に関する直接の行為に基づくデータを集める機会を提供することによって、その他の手段により残された空所に焦点をあてる。SIBは認知能力をその範囲のより低いエンドポイントで評価する。これは身振り合図と併せて提示される極めて簡単なワンステップ駆使能力から成り、そして言葉によらない及び一部正しい応答並びにより簡単な応答手段、たとえばマッチング(matching)を考慮に入れる。SIBは精神測定で信頼できるように作られており、そして繰り返えされる査定を可能にする。 それぞれの副尺度(subscale)は、軽度〜中等度痴呆を評価するために使用される手段の下方の延長であるスコアをもたらす。6つの主要な副尺度は注意、見当識、言語、記憶、視空間能力、解釈(construction)である。更に, 習慣, 社会的交流及び名前に対する見当識の簡単な評価もある。
【0072】
神経精神科検査又はNPIは痴呆の患者の行動障害を評価する有効な尺度である (Cummings et al., 1994)。これは、総スコア (12のドメインスコアの合計)も、 並びに多くの副尺度 (妄想又はパラノイア; 視覚による及び聴覚による幻覚; 焦燥又は攻撃性; 抑うつ気分又は不快気分; 不安; 病的爽快又は多幸; 無関心又は冷淡; 衝動的脱抑制; 興奮性又は不安定性 (低下した対処); 運動障害; 夜間行動; 食欲又は摂食 (たとえば 減量)に関するスコアも提供する。NPI総スコアは、0 (より高い機能状況) から144 (より低い機能状況)に及ぶ。それぞれの副尺度に関して,各行動の頻度及び重症度を測定する。重症度 (1-軽度 〜3-重度); 苦悩(distress) (0-苦悩なし〜5-極度に苦悩する)。NPIは介護者からの応答に基づく。NPIは、ベースラインで及び所定のタイムポイントで, たとえば12及び24週目の最後に (又は期限前に)行われる。
【0073】
定義
用語“治療する” は、本明細書で対象者の少なくとも1種の症状を軽減又は緩和するという意味で使用される。たとえば行動障害に関連して, 用語“治療する” は、妄想, 幻覚, 焦燥/攻撃性 , 抑うつ/不快気分, 不安, 病的爽快/多幸, 無関心/冷淡, 脱抑制, 興奮性/不安定性, 異常運動活動, 夜間行動 及び食欲/摂食変化を軽減又は緩和させることを意味する。本発明の意味する範囲内で, 用語“治療する” は疾患の進行又は悪化の開始 (すなわち疾患の臨床症状の前の期間)を阻止、遅延させるか及び(又は) 疾患の進行又は悪化の恐れを軽減させることも意味する。 用語 "保護する" は、本明細書で必要に応じて,対象者の疾患の進行又は持続又は 悪化の遅延又は治療、あるいはすべてを妨害するという意味で使用される。本発明の意味する範囲で, 行動障害は神経変性疾患、たとえばアルツハイマー病 (AD), ダウン症 及び脳血管性痴呆 (VaD)を含むがこれらに限定されないCNS障害に関連する。行動障害がアルツハイマー病 (AD)に関連するのが好ましい。
【0074】
たとえば, 本明細書に記載するように, 1-アミノシクロヘキサン誘導体の予防投与が、例1以下に記載されているように、アルツハイマー病に関連する行動障害の悪化の恐れのある服用対象者の行動障害の開始を妨げるか又は遅延する保ことができる。同様に, 本発明によれば, 1-アミノシクロヘキサン誘導体とAchEIの併用による、治療のための投与が、アルツハイマー病に関連する行動障害の臨床症状の進行の開始又は例2以下に記載されているような症状の退行さえも妨げるか又は遅延させることができる。
【0075】
本発明の意味する範囲で, 用語“NMDA アンタゴニスト薬” は、NMDA 受容体 -介在性ニューロン発火(firings)の正常な引き金を抑制することができる医薬という意味で使用される。本発明の好ましいNMDA アンタゴニスト薬は、1-アミノシクロヘキサン誘導体、たとえばメマンチン及びネラメキサンである。これらの化合物は5HT3 アンタゴニスト 活性及び(又は) ニューロン性ニコチン受容体アンタゴニスト活性も有する。
【0076】
用語“同族体” 又は “誘導体” は、本明細書で通常の薬学的意味で, 基本分子(たとえば1-アミノシクロヘキサン)が構造上似ている分子という意味で使用されるが、目標とされた、そして制御された方法で基本分子の特定の置換基1種以上を代わりの置換基で置換して変更し、それぞれ基本分子に構造上類似する分子をもたらす。同族体の分析及びスクリーニング(たとえば構造分析及び(又は) 生化学分析を用いて)は,ある公知化合物の僅かに変更された種々の形態------- これは改善された特性又は偏った特性 (たとえばより特異的標的受容体型でより高い有効性及び(又は) 選択性 , 哺乳類血液脳関門をより多く浸透する能力, より僅かな副作用等々) を有する----------を同定するのに薬化学でよく知られた医薬品設計方法である。
【0077】
用語"1-アミノシクロヘキサン誘導体"は、本明細書で、 1-アミノシクロヘキサン(又はその入手可能な誘導体, たとえばネラメキサン又はメマンチン) から、類似するが、ほんの僅か異なる医薬を製造するのに使用される方法で誘導される化合物を示す際に使用される。
【0078】
本発明の1-アミノシクロヘキサン 誘導体は、一般式(I):
【化1】

(I)
{式中、
R* は-(A)n-(CR1R2)m-NR3R4であり、
n+m = 0, 1又は2,
A は線状又は分枝状低級アルキル (C1-C6),線状又は分枝状低級アルケニル (C2-C6), 及び 線状又は分枝状低級 アルキニル (C2-C6)より成る群から選ばれ,
R1 及び R2 は独立して水素, 線状又は分枝状低級アルキル (C1-C6), 線状又は分枝状低級 アルケニル (C2-C6), 線状又は分枝状低級 アルキニル (C2-C6) アリール, 置換されたアリール 及び アリールアルキルより成る群から選ばれ,
R3 及び R4 は独立して 水素, 線状又は分枝状低級アルキル (C1-C6), 線状又は分枝状低級 アルケニル (C2-C6), 及び 線状又は分枝状低級アルキニル (C2-C6)より成る群から選ばれるか、又は一緒になってアルキレン (C2-C10) 又は アルケニレン (C2-C10)を形成するか又はNと一緒になって3-7-員のアザシクロアルカン 又は アザシクロアルケン[置換された(アルキル (C1-C6), アルケニル (C2-C6)) 3-7-員のアザシクロアルカン 又は アザシクロアルケンを含む]を形成するか、あるいは
独立して R3 又は R4 はRp, Rq, Rr, 又は Rs と一緒になって、アルキレン鎖 -CH(R6)-(CH2)t-(式中、t= 0 又は 1)を形成することができ、そして アルキレン鎖の左側はU 又は Yに結合し、そしてアルキレン鎖の右側は N に結合し、そしてR6 は水素, 線状又は分枝状低級アルキル (C1-C6), 線状又は分枝状低級 アルケニル (C2-C6), 線状又は分枝状低級 アルキニル (C2-C6), アリール, 置換されたアリール 及び アリールアルキルより成る群から選ばれるか、あるいは
独立してR3 又は R4 はR5 と一緒になって式 -CH2-CH2-CH2-(CH2)t- で表わされるアルキレン鎖又は式-CH=CH-CH2-(CH2)t-, -CH=C=CH-(CH2)t- 又は -CH2-CH=CH-(CH2)t-, (式中、 t= 0 又は 1)で表わされるアルケニレン鎖を形成することができ, そしてアルキレン鎖又はアルケニレン鎖の左側は Wに結合し、そして アルキレン環の側は Nに結合し、
R5 は独立して水素, 線状又は分枝状低級アルキル (C1-C6), 線状又は分枝状低級 アルケニル (C2-C6), 及び 線状又は分枝状低級 アルキニル (C2-C6)より成る群から選ばれるか、又はR5 はこれが結合する炭素及び隣の隣接する環炭素と一緒になって二重結合を形成し、
Rp, Rq, Rr 及びRs は独立して水素, 線状又は分枝状低級アルキル (C1-C6), 線状又は分枝状低級 アルケニル (C2-C6), 線状又は分枝状低級 アルキニル (C2-C6), シクロアルキル (C3-C6) 及び アリール, 置換されたアリール 及び アリールアルキルより成る群から選ばれか、 又は Rp, Rq, Rr及び Rs は独立してこれが結合するU 又はYと一緒になって二重結合を形成することができるか、又は Rp, Rq, Rr及びRs は一緒になって低級アルキレン -(CH2)x- 又は低級アルケニレン架橋 (式中、 x は2-5である。)を示すことができ、 このアルキレン架橋はついで R5 と一緒になって別の低級アルキレン -(CH2)y- 又は低級アルケニレン架橋(式中、y は1-3である。)を形成することができ、
符号 U, V, W, X, Y, Z は炭素原子を示す。}
で表わされ、そして式(I)で表わされる化合物の光学異性体, ジアステレオマー, 多形体, 対掌体, 水和物, 薬学的に許容し得る塩及びその混合物を含む。
【0079】
U-V-W-X-Y-Z によって定義された環は、シクロヘキサン, シクロヘキシ-2-エン, シクロヘキシ-3-エン, シクロヘキシ-1,4-ジエン, シクロヘキシ-1,5-ジエン, シクロヘキシ-2,4-ジエン, 及び シクロヘキシ-2,5-ジエンより成る群から選ばれるのが好ましい。
【0080】
ここに列挙される医薬の種々の塩及び異性体(立体異性体及び対掌体を含めて)を使用することができる。用語"塩" は遊離酸及び遊離塩基の付加塩を含むことができる。 薬学的に許容し得る酸付加塩を形成するために使用することができる酸の例は、無機酸、たとえば塩酸、硫酸又はリン酸、及び有機酸、たとえば酢酸、マレイン酸、コハク酸又はクエン酸等を含む。これらの塩(又はその他の類似の塩)すべては通常の手段で製造することができる。塩又は異性対掌体の性質は、これが非毒性であり、そして所望の薬理学的活性を実質上妨げないという条件で、厳密なものでない。本発明の方法に好ましい塩はメマンチン塩酸塩である。
【0081】
本発明にしたがって使用される1-アミノシクロヘキサン 誘導体の限定されない例は、
アミノ-1,3,5-トリメチルシクロヘキサン,
アミノ-1(トランス),3(トランス),5-トリメチルシクロヘキサン,
アミノ-1(シス),3(シス),5-トリメチルシクロヘキサン,
アミノ-1,3,3,5-テトラメチルシクロヘキサン,
アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン (ネラメキサン),
アミノ-1,3,5,5-テトラメチル-3-エチルシクロヘキサン,
アミノ-1,5,5-トリメチル-3,3-ジエチルシクロヘキサン,
アミノ-1,5,5-トリメチル-シス-3-エチルシクロヘキサン,
アミノ-(1S,5S)シス-3-エチル-1,5,5-トリメチルシクロヘキサン,
アミノ-1,5,5-トリメチル-トランス-3-エチルシクロヘキサン,
アミノ-(1R,5S)トランス-3-エチル-1,5,5-トリメチルシクロヘキサン,
アミノ-1-エチル-3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキサン,
アミノ-1-プロピル-3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキサン,
N-メチル-1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン,
N-エチル-1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチル-シクロヘキサン,
N-(1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキシル) ピロリジン,
3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキシルメチルアミン,
アミノ-1-プロピル-3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキサン,
アミノ-1,3,3,5(トランス)-テトラメチルシクロヘキサン (アキシャルアミノ基),
プロピル-1,3,5,5-テトラメチルシクロヘキシルアミン 半水和物,
アミノ-1,3,5,5-テトラメチル-3-エチルシクロヘキサン,
アミノ-1,3,5-トリメチルシクロヘキサン,
アミノ-1,3-ジメチル-3-プロピルシクロヘキサン,
アミノ-1,3(トランス),5(トランス)-トリメチル-3(シス)-プロピルシクロヘキサン,
アミノ-1,3-ジメチル-3-エチルシクロヘキサン,
アミノ-1,3,3-トリメチルシクロヘキサン,
シス-3-エチル-1(トランス)-3(トランス)-5-トリメチルシクロヘキサミン,
アミノ-1,3(トランス)-ジメチルシクロヘキサミン,
1,3,3-トリメチル-5,5-ジプロピルシクロヘキシルアミン,
アミノ-1-メチル-3(トランス)-プロピルシクロヘキサン,
メチル-3(シス)-プロピルシクロヘキシルアミン,
アミノ-1-メチル-3(トランス)-エチルシクロヘキサン,
アミノ-1,3,3-トリメチル-5(シス)-エチルシクロヘキサン,
アミノ-1,3,3-トリメチル-5(トランス)-エチルシクロヘキサン,
シス-3-プロピル-1,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン,
トランス-3-プロピル-1,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン,
N-エチル-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキシルアミン,
N-メチル-1-アミノ-1,3,3,5.5-ペンタメチルシクロヘキサン,
アミノ-1-メチルシクロヘキサン,
N,N-ジメチル-1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン,
2-(3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキシル)エチルアミン,
メチル-1-(3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキシル)プロピル-2-アミン,
2-(1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキシル-l)-エチルアミン 半水和物,
N-(1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキシル)-ピロリジン,
アミノ-1,3(トランス),5(トランス)-トリメチルシクロヘキサン,
アミノ-1,3(シス),5(シス)-トリメチルシクロヘキサン,
アミノ-(1R,SS)トランス-5-エチル-1,3,3-トリメチルシクロヘキサン,
アミノ-(1S,SS)シス-5-エチル-1,3,3-トリメチルシクロヘキサン,
アミノ-1,5, 5-トリメチル-3(シス)-イソプロピル-シクロヘキサン,
アミノ-1,5,5-トリメチル-3(トランス)-イソプロピル-シクロヘキサン,
アミノ-1-メチル-3(シス)-エチル-シクロヘキサン,
アミノ-1-メチル-3(シス)-メチル-シクロヘキサン,
アミノ-5,5-ジエチル-1,3,3-トリメチル-シクロヘキサン,
アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン,
アミノ-1,5,5-トリメチル-3,3-ジエチルシクロヘキサン,
アミノ-1-エチル-3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキサン,
N-エチル-1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン,
N-(1,3,5-トリメチルシクロヘキシル)ピロリジン又はピペリジン,
N-[1,3(トランス),5(トランス)-トリメチルシクロヘキシル]ピロリジン又はピペリジン,
N-[1,3(シス),5(シス)-トリメチルシクロヘキシル]ピロリジン又はピペリジン,
N-(1,3,3,5-テトラメチルシクロヘキシル)ピロリジン又はピペリジン,
N-(1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキシル)ピロリジン又はピペリジン,
N-(1,3,5,5-テトラメチル-3-エチルシクロヘキシル)ピロリジン又はピペリジン,
N-(1,5,5-トリメチル-3,3-ジエチルシクロヘキシル)ピロリジン又はピペリジン,
N-(1,3,3-トリメチル-シス-5-エチルシクロヘキシル)ピロリジン又はピペリジン,
N-[(1S,SS)シス-5-エチル-1,3,3-トリメチルシクロヘキシル]ピロリジン又はピペリジン,
N-(1,3,3-トリメチル-トランス-5-エチルシクロヘキシル)ピロリジン又はピペリジン,
N-[(1R,SS)トランス-5-エチル,3,3-トリメチルシクロヘキシル]ピロリジン又はピペリジン,
N-(1-エチル-3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキシル)ピロリジン又はピペリジン,
N-(1-プロピル-3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキシル)ピロリジン又はピペリジン,
N-(1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキシル)ピロリジン,
より成る群から選ばれた1-アミノシクロヘキサン誘導体、これらの光学異性体, ジアステレオマー, 対掌体, 水和物, その薬学的に許容し得る塩, 及びその混合物を含む。
【0082】
ネラメキン (1-アミノ-1,3,3,5,5-ペンタメチルシクロヘキサン)は、たとえば米国特許出願第 09/597,102号明細書 及び 米国特許第 6,034,134号明細書に記載されている。
【0083】
一般式(I)で表わされる特定の1-アミノシクロヘキサン 誘導体は、3つのアキシャルアルキル置換基, たとえば Rp, Rr 及び R5のすべてが一緒になって橋頭を形成し、下記式 IIb - IId で表わされる化合物 (いわゆる 1-アミノアダマンタン類) を生じる場合を含む:
【化2】

【0084】
式(I)で表わされる特定の1-アミノシクロヘキサン 誘導体(式中、n + m = 0, U, V, W, X, Y 及び Zはシクロヘキサン環を形成し、R3 及び R4 のうちの1又は2つは独立して、 Rp, Rq, Rr, Rs 又は R5 によって形成されるアルキレン架橋を介して上記シクロヘキサン環に結合する。)は上記式IIIa-IIIcによって表わされる:
【化3】


(式中、Rq, Rr, Rs, Rr 及び R5 は式(I)に対して定義された通りであり, R6 は水素, 線状又は分枝状低級アルキル (C1-C6), 線状又は分枝状低級 アルケニル (C2-C6), 線状又は分枝状低級 アルキニル (C2-C6), アリール, 置換されたアリール又はアリールアルキルであり、 Y は飽和されているか、 又はR6と一緒になって、これが結合する環炭素と共に炭素-水素結合を形成してよく, l= 0 又は 1 及び k= 0, 1 又は 2 及び ------ は単結合又は二重結合を示す。)
【0085】
本発明にしたがって使用される1-アミノシクロヘキサン 誘導体の限定されない例は:
アミノ-3-フェニル アダマンタン,
アミノ-メチル アダマンタン,
アミノ-3,5-ジメチル アダマンタン (メマンチン),
アミノ-3-エチル アダマンタン,
アミノ-3-イソプロピル アダマンタン,
アミノ-3-n-ブチル アダマンタン,
アミノ-3,5-ジエチル アダマンタン,
アミノ-3,5-ジイソプロピル アダマンタン,
アミノ-3,5-ジ-n-ブチル アダマンタン,
アミノ-3-メチル-5-エチル アダマンタン,
1-N-メチルアミノ-3,5-ジメチル アダマンタン,
1-N-エチルアミノ-3,5-ジメチル アダマンタン,
1-N-イソプロピル-アミノ-3,5-ジメチル アダマンタン,
N,N-ジメチル-アミノ-3,5-ジメチル アダマンタン,
1-N-メチル-N-イソプロピル-アミノ-3-メチル-5-エチル アダマンタン,
アミノ-3-ブチル-5-フェニル アダマンタン,
アミノ-3-ペンチル アダマンタン,
アミノ-3,5-ジペンチル アダマンタン,
アミノ-3-ペンチル-5-ヘキシルアダマンタン,
アミノ-3-ペンチル-5-シクロヘキシルアダマンタン,
アミノ-3-ペンチル-5-フェニル アダマンタン,
アミノ-3-ヘキシルアダマンタン,
アミノ-3,5-ジヘキシルアダマンタン,
アミノ-3-ヘキシル-5-シクロヘキシルアダマンタン,
アミノ-3-ヘキシル-5-フェニル アダマンタン,
アミノ-3-シクロヘキシルアダマンタン,
アミノ-3,5-ジシクロヘキシルアダマンタン,
アミノ-3-シクロヘキシル-5-フェニル アダマンタン,
アミノ-3,5-ジフェニルアダマンタン,
アミノ-3,5,7-トリメチル アダマンタン,
アミノ-3,5-ジメチル-7-エチル アダマンタン,
アミノ-3,5-ジエチル-7-メチル アダマンタン,
1-N-ピロリジノ 及び1-N-ピペリジン 誘導体,
アミノ-3-メチル-5-プロピル アダマンタン,
アミノ-3-メチル-5-ブチル アダマンタン,
アミノ-3-メチル-5-ペンチル アダマンタン,
アミノ-3-メチル-5-ヘキシルアダマンタン,
アミノ-3-メチル-5-シクロヘキシルアダマンタン,
アミノ-3-メチル-5-フェニル アダマンタン,
アミノ-3-エチル-5-プロピル アダマンタン,
アミノ-3-エチル-5-ブチル アダマンタン,
アミノ-3-エチル-5-ペンチル アダマンタン,
アミノ-3-エチル-5-ヘキシルアダマンタン,
アミノ-3-エチル-5-シクロヘキシルアダマンタン,
アミノ-3-エチル-5-フェニル アダマンタン,
アミノ-3-プロピル-5-ブチル アダマンタン,
アミノ-3-プロピル-5-ペンチル アダマンタン,
アミノ-3-プロピル-5-ヘキシルアダマンタン,
アミノ-3-プロピル-5-シクロヘキシルアダマンタン,
アミノ-3-プロピル-5-フェニル アダマンタン,
アミノ-3-ブチル-5-ペンチル アダマンタン,
アミノ-3-ブチル-5-ヘキシルアダマンタン,
アミノ-3-ブチル-5-シクロヘキシルアダマンタン,
より成る群から選ばれた1-アミノ アダマンタン及び その 誘導体、これらの光学異性体, ジアステレオマー, 対掌体, 水和物, N-メチル誘導体, N,N-ジメチル誘導体, N-エチル誘導体, N-プロピル誘導体, その 薬学的に許容し得る塩, 及びこれらの混合物を含む。
【0086】
たとえばメマンチン (1-アミノ-3,5-ジメチル アダマンタン) 及びその薬学的に許容し得る塩は、米国特許第 4,122,193号 及び第 4,273,774号明細書の対象である。
【0087】
式IIb 及び IId で表わされる1-アミノ アダマンタン 誘導体(メマンチンを含む)は一般にハロゲン化アダマンタンのアルキル化, 好ましくはブロモ- 又はクロロアダマンタン類のアルキル化によって製造される。ジ- 又はトリ-置換されたアダマンタン類は 付加的なハロゲン化及び アルキル化操作によって得られる。アミノ基は、三酸化クロムによる酸化 及び HBrによる臭素化又は臭素による臭素化及び ホルムアミドと反応させて、ついで加水分解して導入される。 アミノ官能基を一般に認められている方法にしたがってアルキル化することができる。たとえば、メチル化はギ酸クロロメチルと反応させ、ついで還元させることによって達成することができる。エチル基を、それぞれのアセトアミドの還元によって導入することができる。 合成に関して更に詳細はたとえば米国特許第5,061,703号 及び第6,034,134号明細書を参照。前記化合物に対する別の合成法を、仮出願番号第60/350,974号明細書 (出願日:2001年11月7日), 仮出願番号第60/337,858 号明細書(出願日:2001年11月8日)及び仮出願番号第60/366,386号明細書 (出願日:2002年3月21日)[ すべて参考のために示す。] 並びに 下記の合成例に見出すことができる。
【0088】
本発明によれば, 式(I) で表わされる1-アミノシクロヘキサン誘導体は、そのまま投与することができるか又はその薬学的に許容し得る塩(たとえば酸付加塩、たとえば塩酸塩, 臭化水素酸塩, 硫酸塩, 酢酸塩, コハク酸塩又は酒石酸塩, 又はこれをフマル酸, マレイン酸, クエン酸 又はリン酸との酸付加塩 を含めて)の形で使用することができる。
【0089】
更に, 当業者に周知の方法を用いて, 本発明の化合物の同族体及び誘導体を製造することができる。これらは、痴呆のコントロールでの改善された治療効果, すなわち特異的標的受容体タイプでのより高い有効性及び(又は) 選択性、哺乳類の血液脳関門を貫通するより大きい又はより低い能力 (たとえばより高い又はより低い血液脳関門 貫通率), より少ない副作用等を有する。
【0090】
ここに列挙される医薬の種々の塩及び異性体(立体異性体及び対掌体を含めて)を使用することができる。用語"塩" は遊離酸及び遊離塩基の付加塩を含むことができる。 薬学的に許容し得る酸付加塩を形成するために使用することができる酸の例は、無機酸、たとえば塩酸、硫酸又はリン酸、及び有機酸、たとえば酢酸、マレイン酸、コハク酸又はクエン酸等を含む。これらの塩(又はその他の類似の塩)すべては通常の手段で製造することができる。塩又は異性体の性質は、これが非毒性であり、そして所望の薬理学的活性を実質上妨げないという条件で、厳密なものでない。
【0091】
用語“アセチルコリンエステラーゼ阻害薬” 又は “AChEI” は、本明細書では、分解酵素 アセチルコリンエステラーゼ (AChE)を阻害することによってコリン作動性ニューロンの機能を増加させる医薬という意味で使用される。この用語は、可逆性, 擬似-可逆性 及び 不可逆性AchEI類 並びにAchE を阻害するAchEI類及びあまり選択的でないAchEI類 (たとえばまた標的ブチリルコリンエステラーゼ, BuChE)を含む。本発明の方法及び調合物で有用であるAchEI類は、可逆性又は擬似-可逆性であるのが好ましい。本発明の方法及び調合物で有用であるAchEIs類の具体的例は、これらに限定されないが, タクリン (THA; 1,2,3,4-テトラヒドロ-9-アミノアクリジン 塩酸塩), ドネペジル, ガランタミン, リバスチグミン, ヒューペルジン A, ザナペジル, ガンスチグミン, フェンセリン, フェネチルノルシムセリン (PENC), シムセリン, チアシムセリン, SPH 1371 (ガランタミン プラス), ER 127528, RS 1259, 又は F3796である。
【0092】
有効成分に適用される用語“組み合わせ(combination)” は、本明細書では、本発明の2つの医薬(すなわち1-アミノシクロヘキサン誘導体及びAChEI)を含む単一医薬調合物(製剤) 又は2つの別々の医薬調合物 (製剤) --------- それぞれは本発明の単一医薬(すなわち1-アミノシクロヘキサン 誘導体又はAChEI)を含む ---------を併用投与することと定義される。
【0093】
本発明の意味では, 用語“併用投与” とは、1-アミノシクロヘキサン 誘導体及びAchEIを1つの調合物中で同時に, 又は 異なる調合物中で同時に, 又は連続的投与することを意味する。しかし “併用”とみなされる連続投与とは, 1-アミノシクロヘキサン 誘導体及びAchEIを、哺乳類において中枢神経系 (CNS) 疾患に関連する痴呆の治療、予防、停止、進行の開始の遅延及び(又は)恐れの軽減に対して結果として得られる有益な効果が依然として容認される時間間隔で別々に投与しなければならない。たとえば1-アミノシクロヘキサン誘導体及びAchEIを同一日に (たとえばそれぞれ - 一日1回又は2回), 好ましくは相互に1時間以内に及び最も好ましくは同時に投与しなければならない。
【0094】
薬用量又は量に適用される用語 “治療上有効な” は、これを必要とする哺乳類に投与した際に所望の活性を生じるのに十分である化合物又は医薬調合物のその量を意味する。本明細書では、 1-アミノシクロヘキサン 誘導体 及び(又は) AchEIを含む医薬調合物に関して, 用語“治療上有効な量/薬用量” を用語 “神経学的に有効な量/薬用量” と交換して使用でき、そして哺乳類に投与した際に有効な神経学的応答、すなわちCNS 障害に関連する行動障害の改善を生じるのに十分である化合物 又は医薬調合物の量/薬用量を意味する。
【0095】
有効成分の量を示す用語 “閾値以下” は、応答を生じるのに不十分な量、すなわち最小の有効量に満たない量を意味する。有効成分の量を示す用語 “最適値より少ない(suboptimal)” は、より高い量で達成されるであろう応答を、完全な程度でないが生じる有効成分の量を意味する。
【0096】
本発明の調合物に関連して使用される、語句"薬学的に許容し得る" は、生理学的に耐性であり、そして哺乳類 (たとえばヒト)に投与した場合、典型的に不利な反応を生じないこのような調合物の医療用物質(molecular entities) 及び他の成分を意味する。好ましくは, 本明細書では, 用語"薬学的に許容し得る" は米国連邦政府又は州政府の管理機関によって承認されているか、又は米国薬局方又は哺乳類に使用される, 及び 更に具体的にはヒトに使用される、その他の一般に容認された薬物類中に列挙されていることを意味する。
【0097】
本発明の医薬調合物に適用される用語 "キャリヤー" は、希釈剤, 賦形剤又は媒体(vehicle)を意味し、これと共に有効化合物 (たとえば1-アミノシクロヘキサン誘導体及び(又は)AChEI) を投与する。このような医薬用キャリヤーは滅菌液体, たとえば水, 食塩水, デキストロース水溶液, グルセロール水溶液及び油状物(石油-, 動物-, 植物-又は合成-由来のもの, たとえばピーナッツ油, 大豆油, 鉱油, ごま油等々を含む。)であることができる。適する医薬用キャリヤーは、"Remington's 医薬品ciences" by E.W. Martin, 18th Edition中に記載されている。
【0098】
本明細書では、用語 "対象者(subject)" は哺乳類 (たとえば げっし類、たとえばマウス又はラット)を意味する。特に, この用語はCNS 障害又は脳損傷, あるいは前記技術背景の項で焦燥に結び付けて議論した前記基礎症状のうちの1つに関連する行動障害を示すヒトを意味する。
【0099】
“レスポンダー(responder)” を、臨床副尺度, たとえばNPI尺度でベースライン(未治療)からの変化を改善する患者として定義する。たとえば, 4より大きいベースラインのNPI(これはメマンチンを投与するにつれ 著しく低い数に又は4以下に減少する。)を有する患者は,レスポンダーである。SIB尺度からみてレスポンダーとは、メマンチンが投与されていない患者に比べてメマンチンによってスコアが上昇した対象者(subject)を意味する。 ADCS-ADL 尺度からみてレスポンダーとは、 メマンチンが投与されていない患者に比べてメマンチンによってスコアが上昇した患者、又はあらゆる症状又は行動の改善を明示する患者を意味する。改変ADCS-ADL19 尺度は, 0 〜54のスコアリング範囲を有し, より低いスコアはより大きい機能障害を示す。CIBIC-plus 尺度からみてレスポンダーとは、CIBIC-plusがメマンチン投与後“際立って改善された” 又は“中等度に改善された” 又は“ごく僅かに改善された”, 又は“変化なし” に等しい患者として定義される。スコア 1-3 は改善を示し、スコア 4 は変化がない, そしてスコア 5-7 は機能障害の悪化を示す。
【0100】
好ましい実施態様において, 本発明によるレスポンダーは、未処置のコントロール集団に比べて1-アミノシクロヘキサンの治療で行動症状が改善する患者である。たとえばレスポンダーは、多くの出来事の減少、重症度, 又は非存在(absence)の減少, 妄想, 幻覚, 焦燥/攻撃性 , 抑うつ/不快気分, 不安, 病的爽快/多幸, 無関心/冷淡, 脱抑制, 興奮性/不安定性, 異常運動活動, 夜間行動,及び食欲/摂食変化の減少を示す患者である。
【0101】
用語 "約" 又は "およそ"は、常に所定の値又は範囲の20%以内, より好ましくは10%以内, 及び最も好ましくはまた5%以内を意味する。あるいは, 特に生体系で, 用語 "約" はほぼ1 ログ(a log)(すなわち 一桁)以内、好ましくは2つの所定の値のファクター内であることを意味する。
【0102】
医薬調合物及び投与
本発明の方法と同時に, 治療上有効な量の1-アミノシクロヘキサン 誘導体 (たとえばメマンチン 又は ネラメキサン)を単独で、又は治療上有効な量のアセチルコリンエステラーゼ阻害薬 (AChEI) (たとえばガランタミン, タクリン, ドネペジル又はリバスチグミン) と組み合わせて及び(又は)更に、別の有効成分、たとえば行動障害が焦燥である場合抗精神薬と組み合わせて含む医薬調合物も提供する。本発明の調合物は更にキャリヤー又は賦形剤 (すべて薬学的に許容し得る)を含む医薬調合物も提供する。1-アミノシクロヘキサン誘導体及びAChEI 又は抗精神薬の上記組み合わせを、単一調合物として又は併用投与することができる2つの別個の調合物として調製することができる。好ましくは, これらを同時に投与する。この調合物を、1日1回投与又は1日2回投与に調製することができる。したがってアミノシクロヘキサン誘導体を1日2回及びAChEIを1日2回、それぞれの投与に対して1個の調合物として又は2個の別々の調合物として投与することができる。別の実施態様において、アミノシクロヘキサン誘導体を1日2回、ついでAchEIを1日1回投与することができる(又はその逆もある)。また別の実施態様において、これらをそれぞれ1個の調合物として又は2個の別々の調合物として1日1回投与することができる。
【0103】
抗精神薬がアミノシクロヘキサン誘導体と, 又はアミノシクロヘキサン誘導体及びAchEIと組み合わせである場合、同様な投薬計画を使用することができる。 抗精神薬は概して医薬にしたがって種々の投薬量で投与される。次に非定型抗精神薬の典型的投薬量を示す: 一日あたりクロザピン-300-600 mg; 一日あたり オランザピン-15-20 mg; 一日あたりクエチアピン-400-600 mg; 一日あたりリスペリドン4-8 mg; 一日あたりジプラシドン-80-160 mg。
【0104】
記載の調合物中に、好ましくは1-アミノシクロヘキサン誘導体又は1-アミノシクロヘキサン誘導体/AChEI は治療上有効な量で存在する。投与の厳密なモード、医薬が投与される形態、投与の対象となる症状、関係する対象者(subject involved)(たとえば体重、体の状態、年齢、性別等々)及び更に担当する医者又は獣医の好み又は経験を考慮にいれて、治療上有効な最適量は実験で決定されねばならない。本明細書では、 ヒトに投与する場合, 1-アミノシクロヘキサン 誘導体も、AchEIも、好ましい形で、それぞれの医薬に対して1日あたり約1〜 200 mgの投薬量で投与する。更に詳しくは, 1-アミノシクロヘキサン誘導体を1日あたり投薬量5-60 mg, 及び特に10-40 mgで投与するのが好ましい。AChEIs を1日あたり投薬量1-40 mg, 及び特に5-24 mgで投与するのが好ましい。ある場合において最適値より少ないか又は閾値以下の量で有効成分の一方又は他方を投与することも望ましく、そしてこのような投与も本発明の範囲内である。
【0105】
本発明はまた治療上有効な量で、1-アミノシクロヘキサン誘導体単独又は AchEIと組み合わせて、及び場合により1種以上の生理学的に許容し得るキャリヤー 及び(又は) 賦形剤 及び(又は) 助剤物質を混合することからなる、医薬調合物を製造する方法を提供する。
【0106】
投与
本発明の有効な剤を、経口で, 局所に, 腸管外に又は粘膜に(たとえば口腔に, 吸入によって, 又は直腸に)通常の非毒性薬学的に許容し得るキャリヤーを含む単位投薬剤形で投与することができる。通常、経口経路を使用するのが望まれる。有効な剤を、カプセル, 錠剤等々の形で経口で投与することができる (Remington's Sciences, Mack 5 Publishing Co., Easton, PA参照)。経口投与された医薬は、拡散律速系, 浸透装置, 溶解調節されたマトリックス 及び侵食性/分解性 マトリックスを含む、時間調節された遊離媒体の形で投与することができる。通常1-アミノシクロヘキサン誘導体, すなわちメマンチンは,調合物(formulation)の0.1〜99重量%, 更に詳しくは注射用調合物(formulation)の 0.5〜20重量%、そして経口投与に適する調合物の0.2〜50重量%に相当する。
【0107】
錠剤又はカプセルの形の経口投与に関して, 有効医薬成分を非毒性薬学的に許容し得る賦形剤、たとえば結合剤 (たとえば前糊化されたトウモロコシデンプン, ポリビニルピロリドン又はヒドロキシプロピルメチルセルロース); 増量剤 (たとえば乳糖, ショ糖, グルコース, マンニトール, ソルビトール及び その他の還元糖 及び非還元糖, 微結晶セルロース, 硫酸カルシウム又はリン酸水素カルシウム); 滑沢剤 (たとえばステアリン酸マグネシウム, タルク又はシリカ, ステアリン酸, ステアリルフマル酸ナトリウム, ベヘン酸グリセリル, ステアリン酸カルシウム等); 砕解剤 (たとえばジャガイモデンプン又はグリコールデンプンナトリウム); 又は湿潤剤 (たとえば ラウリル硫酸ナトリウム), 着色剤及び矯味矯臭薬, ゼラチン, 甘味料, 天然及び合成ゴム (たとえばアカシア, トラガント又はアルギナート類), 緩衝塩, カルボキシメチルセルロース, ポリエチレングリコール, ロウ等々と共に配合することができる。液体形での経口投与に関して、医薬成分を非毒性薬学的に許容し得る不活性キャリヤー (たとえばエタノール, グリセロール, 水), 懸濁化剤 (たとえばソルビトールシロップ, セルロース誘導体 又は 水素添加された食用油), 乳化剤 (たとえばレシチン又はアカシア), 非水性賦形剤(たとえばアーモンド油, 油状エステル類, エチルアルコール 又は 分留植物油), 保存剤(たとえばメチル 又は プロピル-p-ヒドロキシベンゾエート又はソルビン酸)等々と一緒に配合することができる。 安定化剤、たとえば酸化防止剤 (BHA, BHT, 没食子酸プロピル, アスコルビン酸ナトリウム, クエン酸)を投薬形態を安定化するために添加することができる。
【0108】
錠剤を従来公知の方法によってコーティングすることができる。上述のように製造されたコアを、たとえばアラビアゴム, ゼラチン, タルク、二酸化チタン等々を含有することができる濃縮された砂糖溶液でコーティングしてもよい。 あるいは, 錠剤を当業者に周知のポリマーでコーティングすることができる。この際このポリマーを、容易に揮発する有機溶剤又は有機溶剤の混合物中に溶解させる。染料を異なる有効物質を含有する錠剤又は異なる量の有効化合物を含有する錠剤を容易に区別するためにこれらのコーティングに添加することもできる。
【0109】
軟ゼラチンカプセルの調合物に関して, 有効物質を、たとえば 植物油又は ポリエチレングリコールと混合することができる。硬ゼラチンカプセルは、錠剤用の上記賦形剤、たとえばラクトース, ショ糖, マンニトール, デンプン (たとえばじゃガイモデンプン, コーンスターチ又はアミロペクチン), セルロース誘導体又はゼラチンいずれかを用いて顆粒の有効物質を含有することができる。また薬物の液体又は半固体を硬ゼラチンカプセルに充填することができる。
【0110】
本発明の調合物は、微小カプセル(microspheres) 又は マイクロカプセル(たとえばポリグリコール酸/乳酸 (PGLA)から製造される)に加えることもできる (たとえば米国特許第 5,814,344号; 第5,100,669号 及び第 4,849,222号明細書; PCT 公表第 WO95/11010号 及び 第WO93/07861号明細書参照)。経口投与用液体調合物は、たとえば溶液、シロップ、エマルション又は懸濁液の形をとることができるか又はこれらは使用前に水 又は その他の適当な媒体を用いて再構成させるために乾燥製品として存在させることができる。 経口投与用調製物を、調節された又は延期された有効物質の遊離を生じるように適当に製剤化することができる。経口の時間調節された遊離医薬製剤の具体例は、米国特許第 5,366,738号明細書に記載されている。
【0111】
経口投与用液体調合物は、シロップ又は懸濁液の形で、たとえば本明細書に記載した有効物質約 0.2重量%〜約20重量%を含有する溶液の形であってよく、その平衡(balance)は砂糖、及びエタノール、水、グリセロール及びポリエチレングリコールである。場合によりこのような液体調合物は着色剤, 風味剤, サッカリン及び増粘剤としてカルボキシメチル-セルロース又は当業者に周知のその他の賦形剤を含有することができる。
【0112】
有効物質を、リポソーム供給システム, たとえば 単層小胞, 大単層小胞及び 多層小胞の形で投与することもできる。リポソームを種々のホスホリピド, たとえば周知のコレステロール, ステアリルアミン又は ホスフファチジルコリンから形成することができる。
【0113】
本発明の医薬を、化合物分子が結合する単一キャリヤーとしてモノクロナール抗体を使用することによって供給してもよい。 薬物を標的医薬キャリヤーとしての可溶性ポリマーと結合させてもよい。このようなポリマーは、ポリビニル-ピロリドン, ピランコポリマー, ポリヒドロキシ-プロピル メタアクリルアミド-フェノール, ポリヒドロキシ-エチル-アスパルタートアミド-フェノール, 又は パルミトイル残基によって置換されたポリエチレンオキシド-ポリシランを含むことができる。更に, 有効物質は、医薬の調節された遊離を達成させるのに有用な、生体分解性ポリマー類、たとえばポリ乳酸, ポリグリコール酸, ポリ乳酸とポリグリコール酸のコポリマー, ポリイプシロンカプロラクタム, ポリヒドロキシ酪酸, ポリオルトエステル類, ポリアセタール類, ポリヒドロピラン類, ポリシアノアクリレート類, 及びヒドロゲル類の架橋された又は両親媒性ブロックコポリマーに結合していてよい。
【0114】
吸入投与のために、本発明の治療薬を、適する噴射剤, たとえばジクロロフルオロメタン, トリクロロフルオロメタン, ジクロロテトラフルオロエタン, 二酸化炭素, 又はその他の適当なガスの使用と共に、加圧パック又は噴霧器からのエアゾルスプレープレゼンテーションの形で通常供給することができる。 加圧エアゾルの場合、単位投薬量は計量された量を供給するためにバルブを備えることによって決定することができる。たとえば吸入器又は通気器(insufflator)中に使用するためのゼラチンのカプセル及びカートリッジを調製することができ、これは化合物と適する粉末ベース、たとえばラクトース又はデンプンの粉末混合物を含有する。
【0115】
本発明の製剤を、腸管外に、すなわち静脈内 (i.v.), 脳室内 (i.c.v.), 皮下(s.c.), 腹腔内 (i.p.), 筋肉内 (i.m.), 皮下 (s.d.), 又は 皮内 (i.d.) 投与によって, 直接注射、 たとえばボラス注射又は連続吸入によって供給することができる。 注射用製剤は、添加された保存剤と共に単位投薬形、たとえばアンプル又は多薬用量容器 (multi-dose containers)中にあることができる。調合物は賦形剤, 懸濁液, 溶液又は油状媒体又は水性媒体中でエマルションのような形態をとることができ、そしてこの調合物は製剤化剤(formulatory agents)、たとえば沈殿防止剤, 安定化剤及び(又は)分散剤を含むことができる。あるいは, 有効成分は、使用前に適当な媒体, たとえば 滅菌発熱物質不含水を用いて再構成される粉末形にあることができる。
【0116】
腸管外投与用注射溶液を、好ましくは約0.5重量%〜約10重量%の濃度で有効物質の水溶性薬学的に許容し得る塩を有する水溶液として調製することができる。これらの溶液は、安定剤及び(又は)緩衝剤を含有することもでき、そして種々の投薬単位アンプルに充填されるのも好都合である。
【0117】
直腸投与用投薬量単位は溶液又は懸濁液であることができか又は有効物質を中性脂肪ベースとの混合物として含む座薬又は停留浣腸(retention enemas)の形で、又は有効物質を植物油又はパラフィン油と混合して含むゼラチン直腸カプセルの形で調製することができる。
【0118】
本明細書では, 1-アミノシクロヘキサン 誘導体 及び AchEIを、薬学的に許容することができ、そして有効成分と適合すことができる賦形剤と混合することができる。更に、所望ならば, 調製物は少量の助剤物質、たとえば湿潤剤又は乳化剤, pH緩衝剤, 及び(又は) 医薬調合物の効果を増大させる剤を含んでいてもよい。これらの助剤分子を蛋白質として全身に又は局所に、あるいは分子の発現をコードするベクターの発現によって供給することができる。1-アミノシクロヘキサン誘導体及びAChEI の供給のための上記方法は助剤分子の供給に使用することもできる。
【0119】
本発明の有効物質(active agents)は分割投薬量で, たとえば1日2又は3回投与されてもよいが, 1-アミノシクロヘキサン 誘導体 及び AChEI のそれぞれの単一1日薬用量が好ましく、2つの有効物質の単一1日薬用量の場合、1つの調合物で又は2つの別個の調合物で同時に投与するのが最も好ましい。
【0120】
本発明はまた1-アミノシクロヘキサン 誘導体 及び(又は) AChEI を薬学的に許容し得るキャリヤー 及び(又は) 賦形剤と共に含む医薬調合物を製造する方法を包含する。
【0121】
ヒトの治療処置に適するメマンチンの一日投薬量は、経口投与で体重1kgあたり約0.01-10 mg、そして非経口投与で体重1kgあたり0.001-10 mgである。
【0122】
本発明の単位投薬量中に使用することができる1-アミノシクロヘキサン誘導体の好ましい具体的な量は、たとえば メマンチンに対して5mg, 10 mg, 15 mg 及び 20 mg 、そしてネラメキサンに対して5 mg, 10 mg, 20 mg, 30 mg, 及び 40 mgを含む。本発明の単位投薬量中に使用することができるAChEI の好ましい具体的な量は、たとえばリバスチグミンに対して1.5 mg, 3 mg, 4.5 mg, 及び6 mg、ガランタミンに対して, 4 mg, 8 mg 及び 12 mg , そしてドネペジルに対して5 mg 及び 10 mg を含む。
【0123】
ある実施態様において, 5 又は10 mgのフィルムコーティングされたメマンチン錠剤を、一日2回 一日あたり10-40 mgの投薬範囲で投与することができる。しかし, より低い及びより高い投薬量も可能であり、一日あたり5-100 mgの範囲内で、そして一日あたり5-200 mgのより広い範囲内で投与される。
【0124】
本発明は、本発明の製剤の成分1種以上を含む容器1個以上からなる医薬パック又はキットも提供する。関連する実施態様において、本発明は本発明の 医薬調合物の製造用キットを提供する。このキットは第一の容器に1-アミノシクロヘキサン 誘導体を、そして第二の容器にAChEI を、そして場合により2つの医薬の混合に関する及び(又は)調合物の投与に関する指示書を含む。キットのそれぞれの容器は、場合により1種以上の生理学的に許容し得るキャリヤー 及び(又は) 賦形剤 及び(又は) 助剤物質を含むこともできる。このような容器類に関連して、医薬品 又は生物学的製品の製造、使用又は販売を規制する政府機関によって定められた形態での注意があり、その注意はヒトへの投与に関して、製造、使用又は販売の機関による承認に反映される。
【0125】
調合物を、望むならば、有効成分を含む単位投薬形1種以上を含有するパック容器又はディスペンサ容器中に存在させることができる。このパックはたとえば金属又はプラスチックホイル、たとえばブリスター包装を含むことができる。。パック容器又はディスペンサ容器は投与の指示書を添付していてよい。適合する薬学的キャリヤー中で製剤化される調合物は、製造され、適当な容器に入れられ、そして表示された病態の治療用であるとラベル表示されてよい。
【0126】
有効薬用量及び安全性評価
本発明の方法にしたがって、本明細書に記載した医薬調合物を患者に治療上有効な薬用量で、好ましくは最小の毒性でもって投与する。“定義”の項目では、用語 “神経学的に有効な薬用量” 及び “治療上有効な薬用量”の定義を示した。好ましくは 1-アミノシクロヘキサン 誘導体 及び AchEIを、組み合わされた場合、増大した効果、最も好ましくはそれぞれの剤単独の投与で観察されない効果を提供する薬用量でそれぞれを適用する。
【0127】
本発明の1-アミノシクロヘキサン誘導体の有効性は、ラット又はヒト脳組織中に結合する [3H]MK-801 の転移(displacement), 培養されたニューロン及び異種発現系中でのNMDA 受容体チャネルの遮断, インビボでの抗痙攣効果, チャネル-遮断及び 抗痙攣作用の間の相関関係, 脳虚血に対する保護、 NMDA-誘発された大量死に対する保護等々 の測定法のようなインビトロ薬理学的試験を用いて測定することができる(たとえば 米国特許第 5,061,703号明細書参照)。
【0128】
本発明の AchEIの有効性は、Ellman 等によって記載されたAchE活性のスペクトロホトメトリックアッセイのような十分知られた方法を用いてインビトロで測定することができる (Biochem. Pharmacol., 7: 86-95, 1961; see also Wenk et al., Life Sci., 2000, 66:1079-1083)。
【0129】
ついで、技術的に十分に確立されている次の方法、本発明の化合物及び組み合わせの有効な薬用量及び毒性(これらはインビトロ試験で十分に実施された)を、小動物モデル (たとえばマウス又は ラット) を用いる臨床前実験で決定する。この実験で、2つの 1-アミノシクロヘキサン誘導体及びAchEIが治療上有効であることが見出され、そしてこの実験でこれらの医薬をヒト臨床試験に対して提案された同一の経路によって投与することができる。
【0130】
本発明の方法で使用されるすべての医薬調合物に関して、治療上有効な薬用量を、予め動物モデルから見積もって、IC50 を含む血中血漿濃度範囲を達成することができる(すなわち、脳の関連領域でNMDA 受容体活性 及び(又は) AChE 酵素活性の半-最大阻害を達成する供試化合物の濃度)。ついで動物系に由来する薬用量-応答曲線を使用して、ヒトでの最初の臨床試験のための供試薬用量を決定する。それぞれの組み合せに対する安全性の決定で, 投薬量及び投与の傾向が臨床試験での使用に予想されるそれらを満たすか又は超えねば成らない。
【0131】
本明細書では, 本発明の調合物中の成分の投薬量は、連続的に又は間欠的に投与される薬用量が実験動物及び患者の個々の病態に生じる結果を考慮した後に決定された量を必ず超えないことを定める。 具体的な薬用量は、当然のことながら投薬処理、患者又は対象となる動物の状態、たとえば年齢体重、性別、感受性、食餌、投薬期間、組み合わせで使用される医薬、疾患の過酷さにしたがって変化する。一定の条件下での適当な薬用量及び投薬回数を、上記の指示に基づく試験によって決定することができるが、 精緻化し、そして最後に医師の判断にしたがって及び標準臨床法によるそれぞれの患者の環境 (年齢, 全身状態, 症状の重症度, 性別等々) にしたがって決めることができる。本明細書では、1-アミノシクロヘキサン 誘導体の適当な薬用量は一般に体重1kgあたり 0.05-1.00 mg の範囲で, そしてAChEI の適当な薬用量は一般に体重1kgあたり0.015-0.57 mg の範囲にある。
【0132】
本発明の調合物の毒性及び治療有効性は、動物実験で標準医薬操作によって、たとえばLD50 (人口の50%が死に至る量) 及びED50 (人口の50% に治療上有効な薬用量)を測定することによって決定することができる。治療効果と毒性効果の間の薬用量割合は治療指標であり、そしてこれを比率 ED50/LD50.として表わすことができる。大きな治療指標を示す調合物が好ましい。
【0133】
動物実験から得られたデータを、ヒトに使用する薬用量の範囲を策定するのに使用することができる。ヒトにおける 1-アミノシクロヘキサン 誘導体 及び AChEI の治療上有効な薬用量は、ほとんど又は全く毒性のなくED50 を含む血中濃度の範囲内にあるのが好ましい。たとえば,メマンチンに対するこのような治療上有効な血中濃度は1 μM であり、そして タクリン (AChEI)に対しては8-30 nM である(Roberts 等., Eur. J. Clin. Pharmacol., 1998, 54: 721-724)。投薬量は、使用される投薬形態及び適用される投与の経路にしたがってこの範囲内を変化することができる。理想的には, それぞれの医薬の1回分薬用量(a single dose)は、1日あたりで使用されねばならない。
【0134】
本発明の複合薬(drug combinations)は比較的に低い薬用量で高度に有効であるばかりか、低い毒性を有しそしてほとんど副作用を生じない。確かに, 本発明のAchEIに対する唯一普通の副作用はたいしたことない胃の不快感であり(たとえば吐き気, 下痢又は嘔吐をもたらす), 一方、本発明の 1-アミノシクロヘキサン 誘導体の使用で生じる最も普通の副作用は、マイナー運動障害及び認知障害 (たとえば吐き気, 嘔吐, めまい, 又は意識混濁)を生じさせる。
【0135】
治療例
次の治療例は本発明を説明するものであって、本発明の範囲はこれによって限定されない。
【0136】
治療例 1: 中等度〜重度 アルツハイマー病を患う患者の行動転帰(bahavioral outcomes)にマンチンの影響
中等度〜重度 ADの患者を、任意に選び、 28 週間偽薬 又は 一日あたり20 mgのメマンチンを投与する。第一有効性変数を、臨床医の面談に基づく変化の印象+ 介護者の考え(CIBIC-Plus) 及び重度痴呆用に改変されたアルツハイマー病共同調査 - 日常生活動作 (ADCS-ADL)である。第二の有効性変数は、重度障害検査 (SIB)及び神経精神科検査 (NPI)を含む。ベースラインとエンドポイントの治療の相違を判断する。不完全な測定を、つい最近の前の測定 (欠測補完:last observation carried forward - LOCF) を用いて補完(代入)する。結果をまた観察値だけを用いて分析する。そこで欠損値は置き換えられない(観察事例分析:Observed Cases (OC) analysis)。32ヶ所の米国のセンターからAD 患者 (N=252) (67 %女性, 平均年齢= 76才)を任意に選ぶ。これらのうち、 181人が検査を完了し (72 %) 、ついで28週目で評価される。71人の 患者 は早期に治療を中止する(42人が 偽薬, 29人がメマンチン)。CIBIC-Plusの変化はメマンチンを偽薬よりも支持する (P=0.06LOCF, P=0.03 OC)。メマンチンで治療された患者は、ADCS-ADL (P=0.02 LOCF, P=0.003 OC) 及びSBI (P=<0.001 LOCF, P=0.002 OC)において偽薬で治療された患者よりも悪化が少ない。28週目でNPI 変化スコアは、統計学的に有意である。分析の種類にしたがって, この利点を2つのドメイン中に見出した: 焦燥 (p = 0.008 LOCF) 及び 妄想 (p = 0.04 LOCF) 又は焦燥に関して, (p = 0.023 OC)だけ。焦燥に関する知見は、ベースラインで行動症状があるか、又はその症状がない、メマンチンで治療された患者に対して二つに分けられた分析にもみられる。メマンチンは、顕著な有害事象を伴わない。この調査は、中等度〜重度 ADでの抗グルタミン酸作動性治療法(antiglutamatergic 治療 法)-------患者の苦悩及び介護者負担を伴う、その他の治療が通用しない病期, そしてこれに関連する行動障害の治療--------を裏付ける。
【0137】
方法
患者
精神疾患の診断及び統計マニュアル(DSM-IV) (American Psychiatric Association. Diagnostic and Statistical manual of mental disorders. 4th ed. Washington: American Psychiatric Association; 1994.) 及びNational Institute of Neurologic and Communicative Disorders and Stroke and AD and Related Disorders Association (NINCDS-ADRDA) 基準 (McKhann G, Drachman D, Folstein M, Katzman R, Price D, Stadlan EM, Clinical diagnosis of Alzhiemer ‘s disease: report of the NINCDS-ADRDA Work Group under the auspices of Department of Health and Human Services Task Force on Alzhiemer ‘s disease Neurology 1984;34:939-44) に従ってprobable ADの、地域社会に住む患者(少なくとも50才)を採用する。適正基準(eligibility criteria)は次の項目を含む: スコア 3-14のベースライン簡易知能評価スコア(ミニメンタルステート検査 (MMSE)) (Folstein MF, Folstein, SE, McHugh, PR, Mini-mental state. A practical method for grading the cognitive state of patients for the clinician. J Psychiat Res 1975;12:189-98.), 病期5 又は 6のGlobal Deterioration Scale (GDS)(Reisberg B, Ferris SH, de Leon MJ, Crook T, The Global Deterioration Scale for assessment of primary degenerative dementia. Am J Psychiatry 1982;139:1136-9.), 及び病期6a以上のFunctional assessment Staging (FAST)(Sclan SG, Reisberg B, Functional Assessment staging (FAST) in Alzheimaer’s disease: reliability, validity, and ordinality. Int Psychogeriatr 1992;4 Suppl 1:55-69.)機器 ,これらは1種以上の基本的な日常生活動作を行う能力に痴呆関連欠陥の存在を示す。患者は、信頼できる介護者及び新しい (12ヶ月以内) コンピュータ断層撮影(CT)又は 磁気共鳴画像 (MRI)を有する。
【0138】
血管性痴呆, 痴呆又はAD以外の病態に続発する顕著な神経科疾患, 大うつ病性障害の患者, 又は4より小さいスコアの改変ハチンスキ虚血評価尺度(the modified Hachinski Ischemic Rating Scale (HIS)) (Rosen WG, Terry RD, Fuld PA, Katzman R, Peck A. Pathological verification of ischemic score in differentiation of dementias. Ann Neurol 1980;7:486-8.)を有する患者は除く。特定の併用薬 (抗痙攣剤, 抗パーキンソン病剤, 催眠薬, 抗不安薬, 神経安定薬, コリン様作動薬, 又はその他の 治療 化合物)を与えられる患者のような、臨床的に有意な、同時に起こる医療併存疾患又は検査所見の異常を有する患者は除く。少なくとも2ヶ月間抗うつ剤で安定である患者が適格者であり, そして抱水クロラールを鎮静/催眠薬として使用Fすることができるが、評価の24時間以内は使用することができない。
【0139】
調査計画
この28週間の 二重盲検, パラレルグループ調査で, 患者を任意に選び、メマンチン (20 mg/日) か、同一の偽薬のどちらかを与える。任意選択を、RANCODE バージョン3.1を用いる及びブロック 4にあるサイト(site)によって,任意選択法に気づかないサイトと共に分ける。継続が調査医師の意見で医学的危険性を示す場合, 又は患者が継続参加を断る場合、患者はその無作為治療からはずされる。早期の脱退は、期限前終了時でエンドポイント測定を終えるようにもとめ、そしてすべてのエンドポイント評価を含む28週で"復帰した脱退者外来往診(retrieved dropout visit)"に戻るようにたのむ。
【0140】
有効性変数
予め特定化された有効性変数は: (1) Clinician’s Interview-Based Impression of 変化-Plus caregiver input (CIBIC-Plus)全般スコア, (2) アルツハイマー病共同調査日常生活動作 検査 (ADCS-ADL)をより重度のために改変した検査 (ADCS-ADLsev), (3) SIB (重度障害検査) 及び(4) 神経精神科検査 (NPI) におけるベースラインからの変化である。これらの臨床評価尺度の詳細は上記参照。 評価は、ベースライン, 中間調査 (12週目), 及び可能ならば、28-週で復帰した脱退者外来往診(a 28 week retrieved drop-out visit)と共に治療の最後(28週目)で又は期限前終了時で行う。
【0141】
分析に対する統計学的処置及び集団
所定の有効性分析は、少なくとも1つのポスト-ベースライン評価で受けた患者を任意に選んだ分析に基づく。この分析は、調査終了者も、その任意に選ばれる治療を早期に中止した終了者も含む。後者に関して、28週目の有効性測定を欠測補完(last available observation (LOCF))によって推定する (Gillings D, Koch G. The application of the principle of intent-to-treat to the analysis of clinical trials. Drug Inf J 1991;25:411-424.)。また付加的な分析を行い、欠損値を調整する。観察事例分析(an observed-cases (OC) analysis)は、 また28週目の評価に応じる、すべての任意に選ばれた患者に基づいて始められる。有効性成果は、ベースラインからの変化を用いて個々のサンプルに対するWilcoxon-Mann-Whitney テストによって分析する。中間分析はない。予め特定化されたレスポンダーグループを、改善されたか又はCIBIC-Plusで悪化を示さない患者及び改善されたか又はADCS-ADLsev 又はSIBのどちらかで悪化しない患者として定義する。すべての患者は安全性分析に含まれる。すべての報告されたp-値は、両側検定(two-sided)である。
【0142】
結果
調査集団
345人の患者のうち, 252人を任意に選んだ。71人の患者 (42人 偽薬, 29人メマンチン)は、28週目前にその無作為の治療を中止し、そして残りの181人は調査の盲検部分を終了した。5人の対象者を、ポストベースライン 評価がないために、ADCS-ADL (CIBIC-plus) 分析から除いた。71人の中止した対象者うちの5人だけが、28-週で復帰した脱退者外来往診に戻った。早期の中断は、偽薬-治療された患者の17%及びメマンチンで治療された患者の10%で有害事象による。
【0143】
この調査集団に対する平均 ベースラインMMSEスコアは、7.9である。
《例1》

【0144】
有効性
ベースライン スコア及び有効性変数に対するLOCF及びOC分析に基づく結果を評価した。エンドポイント (平均差異, 0.3, P = 0.06) 及び28週目 (平均差異, 0.4, P = 0.03) でのCIBIC-Plus 評価は、メマンチンの有効性を裏付けた。
【0145】
ベースラインでのADCS-ADL総スコアは、両方のグループで同じであった(偽薬に対して27.4及びメマンチンに対して26.8)。エンドポイント及び28週目で,偽薬に比べてメマンチングループ(LOCF, 平均差異 , -2.1, P=0.02, 及びOC, 平均差異, -3.4, P=0.003)において著しくより少ない悪化があった。
【0146】
ベースラインでのSIB 総スコアは、両方のグループで同じであった(偽薬に対して27.4及びメマンチンに対して26.8)。エンドポイント及び28週目で,偽薬に比べてメマンチングループ(LOCF, 平均差異 , -2.1, P=0.02, 及びOC, 平均差異, -3.4, P=0.003)において著しくより少ない悪化があった。
【0147】
NPI データを、すべての患者を用いて総スコア及びドメインによって分析し、ついでベースラインで行動症状がある及び行動症状がない患者に二分した。NPI 総スコア は、偽薬で治療された患者よりもメマンチンで治療された患者に対する利点を示した。分析の種類にしたがって, この利点は2つのドメイン中に見出される: 焦燥 (p = 0.008 LOCF)及び妄想 (p = 0.04 LOCF), 又は焦燥に対して, (p = 0.023 OC, 表 1参照)だけ。焦燥に関する知見は、ベースラインで行動症状がある、及びその症状がない、メマンチンで治療された患者に対して二つに分けられた分析にも現れた。ベースラインで行動症状がある偽薬で治療された患者よりもメマンチンで治療された患者が多いにもかかわらず、偽薬で治療された患者 (18% vs 32%, それぞれ; p=0.02)に比べて、焦燥の有害事象を著しくより少ないメマンチンで治療された患者が経験するとういう事例は、NPI の焦燥ドメインの結果と同じであった。
表 1: メマンチンで治療されたアルツハイマー患者のドメインによるNPIでの変化 (ベースライン 〜28週目)
【表1】

ITT-治療を意図する調査集団。
OC - 観察事例
【0148】
議論
この調査は、グルタミン酸誘発興奮毒性を減少させるNMDA受容体モジュレーションが ADにおける行動症状を緩和する証拠を提供する。この新規神経化学的アプローチは、AD及びこれに関連する行動障害のための、すべての最近認可された治療のコリン様作動薬メカニズムとはっきり区別される。
【0149】
レスポンダー 分析 (個々のレスポンダーの尺度)は、結果の臨床妥当性を評価するためにしばしば行われる。現在の調査で,所定の マルチエンドポイント レスポンダー基準で著しい差異が観察された。認知及び機能の領域で見られる治療効果は、行動の(AEでより小さい焦燥が報告されている) 及び介護者 (介護時間がより少ない) 軽減に結果としてなると思われる。
【0150】
治療例2: 中等度〜重度アルツハイマー病患者における行動転帰に、ドネペジルと組み合わせて投与されたメマンチンの影響
24週目で, 盲検, 偽薬でコントロールされた臨床試験を、継続中のドネペジル治療で処置され、そしてメマンチン又は偽薬に無作為に割り当てられ中等度〜重度アルツハイマー患者 (N=404)で行う。行動症状をベースライン, 12週目及び最後の来院 (24週目)で投与されるNPIを用いて評価する。この臨床試験は、機能, 認知及び全般測定(global measure)でメマンチンの利点をすでに証明した。統計分析は、欠測補完(LOCF)及び観察事例 (OC) 法を用いてITT 集団に基づく。
【0151】
中等度〜重度 アルツハイマー病 (入力時で10の平均 MMSE)の患者で、メマンチンと通常使用されるAchEIの安定投薬量との組み合わせの治療利点を、行動 (NPI) 尺度で観察する。NPIによって測定された12の単一項目行動ドメインのうち, メマンチン治療が偽薬に比べて焦燥/攻撃性, 興奮性/不安定性及び食欲/摂食変化で著しい改善をもたらす。
【0152】
方法
参加者
この調査は、the National Institute of Neurological and Communicative Disorders and Stroke - Alzheimer’s Disease and Related Disorders Association (NINCDS-ADRDA) 基準(中等度〜重度病期)にしたがってprobable ADと診断された404人の患者を登録する。包括基準は次の通り: スクリーニングで及びベースラインで5-14のミニメンタルステート検査 (MMSE) スコア; 最小年齢50才; probable ADの診断と一致する最新のMRI 又はCTスキャン;ドネペジルであるプロトコルによって規定されたAChEI 治療で,この臨床試験に参入する前に6ヶ月より長い間 及び この臨床試験に参入する前に少なくとも3ヶ月間安定な投薬量 (5-10 mg/日)で; 調査来院まで患者に同行し、臨床試験の間治療剤の投与を監視する、理解力のある 及び信頼できる介護者; コミュニティに住む; 歩行能力又は歩行介助(すなわち歩行者又は杖) 能力; 及び安定な病状。
【0153】
患者は、臨床的に顕著な理由; B12 又は葉酸欠乏症; 活動性肺疾患, 胃腸, 直腸, 肝臓、内分泌腺, 又は心臓血管疾患; その他の精神障害又は中枢神経系障害; AD以外の臨床的に有意な中枢神経系障害のCT 又はMRI 徴候;その他の器質性疾患によって複雑になった痴呆; 又はスクリーニングで、4より大きい改変されたHachinski 虚血スコア30に関して除かれる。
【0154】
診療
これは予想される、無作為の, 偽薬コントロールされた, パラレル-アーム(parallel-arm)の, 固定された投薬量臨床試験である。 この場合 参加者は、任意の選択前に1-2週の単純盲検, 偽薬前段階と共に盲検処置 に24 週間 割り当てる。 メマンチンの最初の投薬量は、一日あたり5 mgであり、盲検処置の最初の3 週間にわたって一日あたり20 mgに増加させる。すべての患者は、調査の継続期間、エントリー投薬量でかれらのプロトコルで規定されたAchEI処置を維持すなければならない。盲検処置の3週目から8週目の最後に、メマンチン治療に対する一過性投薬量調整 は、投薬量を制限する有害事象を経験する患者に許可される。すべてのメマンチンで治療された患者は、8週目の最後までに一日あたり20 mg の目標投薬量を与えられる必要があり、そしてその時点で目標投薬量を許容しない患者は中止する。
【0155】
患者を、4つの置き換えられたブロックで治療のうちの1つに無作為に割り当てる。盲検薬物治療は、それぞれの来院でブリスター包装での投薬によってそれぞれの調査サイトに供給される。 非盲検はこの臨床試験の間存在しない。コンプライアンス監視を錠剤のカウントによって行い, そして双方の治療グループの 95% 以上は、75%より小さいコンプライアンスを有する(偽薬/AchEI治療グループに対して95%及びメマンチン/AChEI 治療グループに対して96.5%)。
【0156】
目的
第一目的は、安定な投薬量のAchEIを与えられるアルツハイマー型中等度〜重度 痴呆の患者においてメマンチンと偽薬の有効性を比較しなけれなないらい。第二の目的は、有効性のその他の尺度を調べ、そしてこれらの患者においてメマンチンの安全性及び許容性(tolerability)を評価しなければならない。
【0157】
転帰(outcomes)
認知, 機能, 全般性(global)及び行動転帰尺度をスクリーニング, ベースラインで及び4, 8, 12, 18及び 24週目の最後で得る。早期に中止した参加者を、最後の評価のために会う。有効性パラメータは、SIB, 改変されたADCS-ADL 検査 スコア (24週目)及び NPIでベースライン からの変化である。ベースライン の12-項目バージョンを、0-144に及ぶ総スコアでここに使用する。より高いスコアはより多く症候を示す。NPIをベースラインで, 12週目の最後に, 及び最後の来院で評価する。
サンプルサイズ
【0158】
35の効果サイズを評価した場合, それぞれの治療グループで少なくとも170人の 患者のサンプルサイズは、SIB 及びADCS-ADL検査スコアの両方でベースラインから24週目までの変化に対する2つのサンプルt-テストに基づき.05 (両方) アルファレベルで90% パワーを提供する。
【0159】
統計法
3つの集団を統計分析で考察する。任意に選ばれた集団は、無作為に調査 (n=404)に割り当てられたすべての参加者からなる。安全性集団は、盲検調査薬物療法 (n=403)のうちの少なくとも1つの投薬量を与えられる、すべて任意に選ばれた参加者から成る。治療意図(ITT)集団は、少なくとも1つのポスト-ベースラインSIB又はADCS-ADL 評価 (n=395)を終了した安全性集団の参加者から成る。すべての有効性分析はITT 集団に基づく。第一有効性分析 を、有効性分析 を、欠損値代入に対する欠測補完 (LOCF) 法を用いて行う。サポート分析(supportive analyses)を、観察事例 (OC)法を用いて行う。
【0160】
結果
参加者
調査に参加する 404人の 患者のうち、201人 を偽薬/AchEIに割り当て、そして203人をメマンチン/AchEIに割り当てる。偽薬/AChEI グループ (n=150; 74.6%; p=.011)における参加者よりも、多くの参加者(メマンチン/AChEI グループ (n=172; 85.1%) )が調査を終了する。ベースラインで2つのグループの人口統計学的及び臨床上の特徴を、表 2にまとめる。
【表2】

【0161】
有効性
偽薬/AchEIを用いる治療よりもメマンチン/AchEIの組み合わせ治療の統計学的に有意な利点を以下に示すようにすべての転帰尺度(outcome measures)について観察した。表 3 に、24週目で及びエンドポイントでOC 法及びLOCF法の両方を用いてITT 集団に対する結果を示す、有効性結果をまとめる。
【表3】

【0162】
LOCF 法を用いる分析は、OC 法 (SIBに対してp<.001, ADCS-ADLに対してp=.020)を用いて分析を行ったように、SIB (p<.001) 及びADCS-ADL (p=.028)で偽薬/AchEIを用いる治療よりもメマンチン/AchEIの統計学的に有意な利点を示した。
【0163】
総NPI スコアは、偽薬/AChEI グループに比べてメマンチン/AChEI グループに対してかなり低い。 このスコアはメマンチン/AChEI グループにおける患者に対してより少ない行動障害及び精神科的症状を24週目で (OC 及び LOCF の両方を用いてp<.01)示す。総 NPI における平均変化は長い期間をかけて得点され、そしてこの2つのグループ間の差異が12週目 (OC を用いてp<.001)で及び 24週目 (OC を用いてp=.01)で、並びにエンドポイント (LOCFを用いてp=.002)で統計学的に有意であることを立証する。.
【0164】
行動症状を、ベースラインで、及び24週目で投与されるNPIを用いて評価する。統計学的に有意な治療差異を、メマンチンで治療された患者の行動障害及び精神科的症状の軽減として及び偽薬で治療された患者の悪化として観察した。 24週目で統計学的に有意な治療差異を立証するNPI ドメインは、焦燥/攻撃性 (p <0.001) 及び 興奮性/不安定性 (p=0.003)である。表 4参照。
表 4: メマンチン及びドネペジルを与えた患者において、ドメインによるNPIでの変化 (ベースライン〜 24週目)
【表4】

ITT- 治療を意図する調査集団
OC - 観察事例
【0165】
議論
これは最初の 予想される, 盲検, 偽薬コントロールされた調査であって、AD 患者におけるプロトコルで規定された AchEIの安定な投薬量で、AD 患者におけるNMDA 受容体アンタゴニストの二重治療の利点を調べる。メマンチン/AChEI を用いる治療は、コミュニティに住む中等度〜重度 ADの患者で偽薬/AchEIを用いる治療よりも優れている。 認知機能, 日常生活動作, 行動, 及び臨床一般的状況の程度は、偽薬/AchEIに比べてメマンチンとAChEIの組み合わせによってすべて著しく改善される。メマンチン/AchEIを用いる治療は、ベースライン値に対して 改善された認知機能を生じ, 一方 偽薬/AchEIを用いる治療は、6ヶ月試験にわたって進行性認知低下を伴う。
【0166】
結論
この試験の結果から、中等度〜重度 ADの患者における行動障害の治療でメマンチンの安全性及び有効性が確認され、そしてメマンチンとAChEIの併用治療が,これらの患者でAchEI単独の治療に比べて優れていることを立証する。
【0167】
治療例3
この例は、5つの臨床試験からの結果を示す。これらのうちの2つは、例 1 (MZ-9065) 及び例 2 (MD-02)で上述した。更に、2つの付加的な試験, MD-01, MD-10 及びMD-12からの結果を示す。
【0168】
MD-01: MD-01は、24 週間継続する中等度〜重度ADの患者の治療に対する単剤治療としてメマンチンを評価する試験である。約 350人の患者 が登録される。有効性を重度障害検査 (SIB), 日常生活動作評価 (ADL) 及びCIBIC-plus Scalesを用いて評価する。
【0169】
MD-10: MD-10は、アルツハイマー型の軽度〜中等度痴呆患者におけるメマンチンの安全性及び有効性の、任意に選ばれた, 盲検, 偽薬コントロールされた評価である。MD-10に対する第一エンドポインは、ADAS-cog 及びCIBIC-plusである。MD-10に対するその他のエンドポイントはADCS-ADL, NPI及びRUD (Resource Utilization in Dementia)を含む。
【0170】
MD-12: MD-12は、コリンエステラーゼ阻害剤 (ドネペジル, リバスチグミン又はガランタミン)の安定な常習的な投薬を受ける、アルツハイマー型の軽度〜中等度痴呆患者において、メマンチンの安全性及び有効性の任意に選ばれた, 盲検, 偽薬コントロールされた評価である。MD-12に対する第一エンドポインは、ADAS-cog 及びCIBIC-plusである。MD-12に対するその他のエンドポイントはADCS-ADL23, NPI, MMSE及びRUD (Resource Utilization in Dementia)を含む。
【0171】
5つのメマンチン試験を、 NPI焦燥副尺度スコア:>4 (より小さく焦燥した)を有する集団に対する及びNPIスコア:<4 (より大きく焦燥した)を有する集団に対する患者の分析によって評価する。それぞれNPI集団に関して, SIB, ADAS-cog 及び(又は) ADLにおける変化を、メマンチン及び偽薬で治療された患者に対して最小二乗 (LS) 平均差異を用いて算出する。同様に, それぞれNPI集団に関して, メマンチンと偽薬の間の未修正(raw )平均差異を、CIBIC-plus 結果に関して算出する。
【0172】
第一有効性測定に関して、 メマンチンと偽薬の比較は、2つのファクターとして治療グループ及びセンター, 及び共変量としてベースライン スコアを用いる two-way analysis of covariance (ANCOVA)によって行われる。LOCF 代入法及びOC 法の両方を、試験の最後で行う。
【0173】
第二有効性測定に関して,メマンチンと偽薬の比較を、2つの主要効果として治療グループ及びセンター, 及び共変量としてベースライン スコアを用いる two-way analysis of covariance (ANCOVA)によって行われる。記述統計学を外来往診によって算出する。再度、 すべての分析をLOCF 代入法及びOC 法の両方を用いて行う。
【0174】
ANCOVAの結果を、対応する標準誤差 (SE)と共に それぞれの治療グループに対する最小二乗 (LS) 平均, 対応する95% 信頼区間と共に最小二乗平均における治療間(the between-治療) (2-24 週目)差異, 及びSAS Type III合計の二乗に対応する治療間p-値を用いて要約する。
【0175】
データ 表5 - 19で, 調査MD-01, MD-02, MD-10及びMD-12のすべてのメマンチン対偽薬の欄は、共変量としてベースライン 総スコアを用いるANCOVA モデル; SIB, ADL 又はADAS-cogに対するファクターとして治療及び調査センター; CIBIC-Plusに対する調査センターに関してコントロールするCMH テストを使用した。MZ-9605に関して, 結果は相加平均 及びthe Wilcoxon-Mann-Whitney テストに基づく。CIBIS-Plus以外の焦燥 スコア欄/ NPI / 抗精神薬欄は、サブグループ内で、共変量としてベースライン 総スコアを用いるANCOVA モデル, サブグループ (yes/no), 治療, 及びファクターとしてのサブグループ相互作用による治療からp-値及びLS 平均差異を算出する。 CIBIS-Plusに関して, サブグ内のp-値及び 未修正平均差異を、調査センターに関してコントロールするCMH テストを用いて算出する。
【0176】
結果
MD-02: MD-02に関して, 4以上の焦燥 スコア(より焦燥した) を有する患者の数は60人であった。 その内訳は30人に偽薬を与え、そして30人にメマンチンを与えた。4より少ない焦燥 スコアを有する患者の数は334人であった。その内訳は約半分がメマンチンを、そして半分に偽薬を与えた。
【0177】
SIB (MD-02)。 2つのNPI 集団の間で、メマンチンと偽薬の差異によって決定される治療効果を測定した。メマンチンで治療されたグループは、偽薬で治療されたグループよりも両方の NPI ≧ 4, 及び特に NPI<4, (それぞれLS 平均 3.8, p=0.0834; 及びLS 平均 3.6, p=0.0003)で改善を立証し, グループのLS 平均全体は3.6であった。一緒にされた集団は、偽薬よりもメマンチンで著しい改善を示した (p<0.001)。結果を表 5に示す。
【0178】
ADCS-ADL (MD-02) ADCS-ADLにおける変化は、メマンチンを与えた両方のNPI 集団の改善 (NPI≧4 - LS 平均 2.1, p=0.2065, NPI<4 - LS 平均 1.2, p=0.0790)を, より大きい差異を示す2つのグループの間の差異もって示した。すなわちNPI ≧4 サブグループにおいてメマンチンの投与でより一層改善された。グループのLS 平均全体は1.40である。一緒にされた集団においてメマンチンで治療されたグループと偽薬グループの間の応答の全体的差異は、有意である (p=0.028)。表 5参照。
【0179】
CIBIC-plus (MD-02) CIBIC-plusにおける変化は、NPI≧4 集団 (未修正平均差異 -0.1, p= 0.6875)における改善と同様に, メマンチン対偽薬によるNPI<4のサブグループに対する応答で著しい改善を示し (未修正平均 -0.3, p= 0.0311),この場合2つのNPI グループの全体的応答は、偽薬よりもメマンチンに有意であった (未修正平均差異 -0.27)。表 5参照。
【0180】
MD-01: MD-01に関して, 4以上の焦燥 スコア(より焦燥した) を有する患者の数は68人であった。 その内訳は34人に偽薬を与え、そして34人にメマンチンを与えた。4より少ないNPI スコアを有する患者の数は約267人であった。その内訳は約半分にメマンチンを、そして半分に偽薬を与えた。
【0181】
SIB (MD-01)。 MD-02と同様に, メマンチン と偽薬で治療された集団の間の差異は、より小さい障害のあるNPI<4 サブグループ (LS 平均 -0.15, p=.9017)におけるよりも、より焦燥したNPI≧4 サブグループにおいて著しく顕著であり(LS 平均 4.65, p=0.0602), そして一緒にされた副集団に対しても改善した(LS 平均 0.60, p=0.616)。結果を表 6に示す。
【0182】
ADCS-ADL (MD-01)。 NPI≧4のADL スコア サブグループにおける変化は、LS 平均 1.18 (p=0.4286)であって, この場合メマンチンで治療されたグループは より高いスコアを有した (すなわちより大きい改善, -3.2 対-2.2(偽薬))。しかしNPI≧4 グループ はより大きいLS 平均差異を有し, たとえばNPI<4のグループで行ったよりも偽薬に比べてメマンチンで改善を有した(LS 平均 0.36, p=0.6299)。 全体として, 一緒にされたグループは、LS 平均0.70 (p=0.282)を立証した。表 6参照。
【0183】
CIBIC-plus (MD-01) NPI≧4 集団でメマンチンと偽薬の間に未修正平均差異はなく(未修正平均 0, p=0.1764), そして 僅かな差異 (改善)がNPI<4 サブグループ で観察された(未修正平均差異 -0.2, p=0.3094)。一緒にされた集団は、有意への傾向をもって改善を示した(未修正平均差異 -0.30, p=0.182)。表6参照。
【0184】
MD-12: MD-12に関して, 4 より大きいNPI スコア(より焦燥した)を有する患者の数 は約45人であった。その内訳は半分に偽薬を与え、そして半分にメマンチンを与えた。4より少ないNPI スコアを有する患者の数は約380人であった。その内訳は約半分がメマンチンを、そして半分に偽薬を与えた。
【0185】
ADAS-cog (MD-12) この調査に関して、ADAS-cogは、SIBを認知エンドポイントとして置き換える。 スコアは0から70におよび、より低いスコアはより小さい重症度を示し、そしてスコア70は最悪の認知機能障害を示す。2つのサブグループにおけるLS 平均間の差異はNPI≧4 サブグループで-0.27 、そしてNPI<4 サブグループで-0.72である。全体で, その差異は -0.70である。表 7参照。
【0186】
ADCS-ADL(MD-12)。 NPI≧4 副集団 (3.54)におけるLS 平均は、NPI<4 副集団 (-0.56)に対するLS 平均よりも著しく高い。表 7参照。
【0187】
CIBIC-plus (MD-12)。 NPI≧4 グループにおいてメマンチンと 偽薬の間に差異はなく, そして NPI<4 サブグループにおいて極めて僅かな差異(LS 平均 -0.1)があった。表 7参照。
【0188】
MZ-9605: MZ-9605に関して, 4 より大きい焦燥スコア(より焦燥した)を有する患者の数 は約54人であった。その内訳は半分に偽薬を与え、そして半分にメマンチンを与えた。4より少ないNPI スコアを有する患者の数は約200人であった。その内訳は約半分がメマンチンを、そして半分に偽薬を与えた。
【0189】
SIB (MZ-9605)。この試験は、メマンチン と 偽薬で治療された患者の間のNPI≧4 サブグループ (LS 平均 14.05, p=0.0001)におけるSIBで著しい改善を立証した。同様に, 著しい改善 がNPI<4 サブグループ (LS 平均 3.75, p= 0.03250)で観察されたが, “より焦燥した” NPI≧4 サブグループにおいてそればどないが改善が観察された。この後者のグループは 、偽薬 による-14.4からメマンチンによる-0.5まで改善された。一方NPI<4 サブグループ は、偽薬 による-8.5からメマンチンによる-4.8まで改善された。全体で,メマンチンで治療された患者の間の改善は、非常に有意である(平均 5.91 (p=.0003))。表 8参照。
【0190】
ADCS-ADL (MZ-9605)。 SIBと同様に, より焦燥した集団LS 平均が有意であり,メマンチン (LS 平均 4.97, p=0.0050)の改善を立証した。NPI<4 サブグループ (LS 平均 1.18, p=0.1983)で改善が観察された。 NPI≧4 サブグループは、メマンチンを投与した場合、スコアが-3.5 ( -4.8から上)に改善した NPI サブグループに比べて全体としてより高いスコア (すなわち改善), -1.2 (-6.2から上)を有する。すべて一緒にされた改善は、-5.08から-3.02までの改善をもって有意である (LS 平均 2.06, p=0.0217)。表 8参照。
【0191】
CIBIC-plus (MZ-9605)。2つのNPI サブグループ間の未修正平均差異は、メマンチンによる改善を示した。NPI≧4 サブグループは、CIBIC-plus (未修正平均 -0.5, p=0.8330)で偽薬による4.9まら 4.4 (たとえば改善)までの減少したスコアを示し、そしてNPI<4 サブグループ は偽薬による4.7 からメマンチンによる4.5まで(未修正平均 -0.2, p= 0.3350)の減少を示した。一緒にされたグループは、メマンチンによって4.73から4.48まですべての減少を有意に近かづく傾向(p=0.0644)と共に示した(未修正平均差異 -0.25)。表 8参照。
【0192】
MD-10: MD-10に関して, 4より大きいNPI スコア(より焦燥した)を有する患者の数は約 44人である。その内訳は半分に偽薬を与え、そして半分にメマンチンを与えた。4より少ないNPI スコアを有する患者の数は349人であった。その内訳は約半分がメマンチンを、そして半分に偽薬を与えた。
【0193】
ADAS-cog (MD-10)。この調査に関して, ADAS-cogは、SIBを認知エンドポイントとして置き換える。2つのサブグループにおけるLS 平均間の差異はNPI≧4 サブグループで-1.39 、そしてNPI<4 サブグループで-1.87である。全体で, -1.90のLS 平均差異は有意である(p=0.003)。表 9参照。
【0194】
ADCS-ADL (MD-10。 ADAS-ADL は、2つのサブグループのLS間の差異をNPI≧4 副集団で-2.66及びNPI<4 副集団で0.65として示した。全体として, 差異は0.10であった。表 9参照。
【0195】
CIBIC-plus (MD-10)。NP I≧4 グループでメマンチンと偽薬の間に差異はないが, NPI<4 サブグループで差異があった(LS 平均 -0.36)。表 9参照。
【0196】
上記結果は、増加した平均差異, 又はより顕著な改善を、認知及び機能 エンドポイントでより高いNPI 焦燥 副尺度 スコア.を有する中等度〜重度 AD 患者においてを示す。機能 エンドポイントにおける増加した平均差異は、軽度〜中等度 AD (ADAS-ADL, MD-12)よりも少し悪化した患者(more impaired patient)にも観察された。とりまとめると, これらのデータは 、メマンチンがADの患者で焦燥の緩和に有効であることを立証する。
【0197】
治療例 4
上記の同一の5つの試験における患者を第二分析で2つのサブグループ:トップ四分位数(≧75%)にNPI 総スコアがあるグループ又はベースラインでよりひどく悪化したグループ, 及びNPI 総スコア <75%のグループ, 又はベースラインでそれほどひどくなく悪化したグループに分ける。例 1におけると同様に, 結果を、SIB (認知エンドポイント)での変化及びADCS-ADL (機能 エンドポイント)での変化を用いてLS 平均によって評価する。CIBIC-plus (全般的エンドポイント) の変化を未修正平均によって評価する。
【0198】
MD-02: MD-02に関して, 75%より大きいNPI スコア(より焦燥した)を有する患者の数は102人である。その内訳は52人に偽薬を与え、そして50人にメマンチンを与えた。<75% 四分位数のNPI スコアを有する患者の数は292人であった。その内訳は148人にメマンチンを、そして144人に偽薬を与えた。
【0199】
SIB (MD-02)。2つのNPI 集団の間で、メマンチンと偽薬の差異によって決定される治療効果を測定した。メマンチンで治療されたグループは、偽薬で治療されたグループよりも両方の NPI ≧75%, 及び特に NPI<75%, (それぞれLS 平均 6.1, p=0.0003; 及びLS 平均 2.5, p=0.0108)で改善を立証した。一緒にされた集団のLS 平均全体は、-3.40 (p<0.001)で有意であった)。結果を表 10に示す。
【0200】
ADCS-ADL (MD-02)。同時より大きい差異がより悪化したNPI≧75%集団にあるのと同時に、メマンチンを与えた両方のNPI 集団 (NPI≧75% - LS 平均 1.73, p=0.1642, NPI <75% - LS 平均 1.17, p=0.1089)も改善される。一緒にされた集団でメマンチンで治療されたグループと偽薬グループの間の応答のすべての差異は、有意である(p=0.028)(LS 平均 -1.40)表 10参照。
【0201】
CIBIC-plus (MD-02)。CIBIC-plusにおける変化は、 NPI<75% 集団 (未修正平均差異 -0.2, p= 0.0943)における改善と同様に, メマンチン対偽薬によるNPI≧75%のサブグループに対する応答で著しい改善を示し(未修正平均 -0.3, p= 0.4857),この場合2つのNPI グループの全体的応答は、偽薬よりもメマンチンに有意(p=0.027)であった (未修正平均差異-0.25)。表 10参照。
【0202】
MD-01: MD-01に関して, トップ四分位数にNPIスコア(≧75%-より悪化した)を有する患者の数は90人であった。 その内訳は35人に偽薬を与え、そして55人にメマンチンを与えた。<75% 四分位数中にあるNPI スコアを有する患者の数は約245人であった。その内訳は115 又は116人にメマンチンを、そして130人に偽薬を与えた。
【0203】
SIB (MD-01)。MD-02と同様に, メマンチンと偽薬で治療された集団の間の差異は、より小さく焦燥したNPI<75%サブグループ(LS 平均 0.3, p=0.7998)におけるよりも、より一層焦燥したNPI≧75%サブグループ (LS 平均 3.5, p=0.1073)において著しく顕著である。両方の副集団に対する一緒にしたLS 平均差異は0.60 (p=0.616)であった。結果を表 11に示す。
【0204】
ADCS-ADL (MD-01). NPI≧75% のADL スコア サブグループ における変化は、 LS 平均 -0.05 (p=0.9685)であった。NPI<75% 集団における変化は、LS 平均 0.87 (p= 0.2652)であった。 全体として, 一緒にしたグループは、LS 平均0.70 (p=0.282)を立証した。表 11参照。
【0205】
CIBIC-plus (MS-01)。メマンチンを支持するNPI>75% 集団(未修正平均 -0.2, p=0.3486)でメマンチンと偽薬の間に未修正平均差異があり, そして同様に改善がNPI<75% サブグループ (未修正平均差異 -0.2, p=0.2040)で観察された。一緒にされた集団は、有意に近づく差異(未修正平均 -0.30, p=0.182) を、メマンチンを支持して示した。表11参照。
【0206】
MZ-9605: MZ-9605に関して, 75% より大きい焦燥 スコア(より悪化した) を有する患者の数は66人であった。 その内訳は31人に偽薬を与え、そして35人にメマンチンを与えた。75% より小さい焦燥 スコアを有する患者の数は約186人であった。その内訳は91人にメマンチンを、そして95人に偽薬を与えた。
【0207】
SIB (MZ-9605)。この試験は、メマンチンと偽薬で治療された患者の間のNPI≧75%サブグループ(LS 平均 13.3, p=0.0001)におけるSIBで著しい改善を立証した。同様に, メマンチンによる改善 がNPI<75% サブグループ(LS 平均 3.36, p= 0.0630)で観察された。全体として,メマンチンで治療された患者の間の改善は、非常に有意である(平均 5.91 (p=.0003))。表 12参照。
【0208】
ADCS-ADL (MZ-9605)。SIBと同様に, より悪化したNPI≧75%集団のLS 平均は有意であり,メマンチ(LS 平均 -3.47, p=0.0305)の改善を立証した。SIBと同様に, NPI<75% サブグループで改善が観察された(より低いスコア, LS 平均 1.48, p=0.1200によって示されるように)。すべて一緒にした改善は、偽薬による-5.08からメマンチンによる-3.02までの改善によって有意であった(LS 平均 2.06, p=0.0217)。表 12参照。
【0209】
ADCS-ADLに関して, ベースラインからの正の変化は、メマンチンによって改善を示す。MD-02及びMZ-9605に対する結果は、特にMZ-9605で メマンチンによる改善と同一である。MD-01はまたメマンチンによる改善への傾向を示す。
【0210】
CIBIC-plus (MZ-9605)。 メマンチンを支持するNPI≧75% 集団 (未修正平均 -0.4, p=0.4720)でメマンチンと偽薬の間に未修正平均差異があり, そして同様に改善がNPI<75% サブグループ (未修正平均差異 -0.2, p=0.2510)で観察された。一緒にされた集団は、有意に近づく差異(未修正平均平均 -0.25, p=.0644) を、メマンチンを支持して示した。表 12参照。
【0211】
CIBIC-plusに関して, メマンチン と偽薬の間の差異(0より小さい、すなわち負の数は、メマンチンが偽薬よりも良好であることを示す。調査全体の一般的傾向は、メマンチンを支持する最も有意な結果を有するMD-9605, 次にMD-02, 次にMD-01を示す。変動はトップ 25% 四分位数 (NPI≧75%)でより一層顕著である。
【0212】
MD-12: MD-12に関して,トップ 25% 四分位数 (NPI≧75%)中の患者の数は、約半分にメマンチンを与え、そして半分に偽薬を与えた110人であった。NPI <75% グループ中の患者に関して, 約半分にメマンチンを与え、そして半分に偽薬を与えた約317人の患者がいた。
【0213】
ADAS-cog (MD-12)。 NPI<75% グループにおけるメマンチン対偽薬で、トップ 25% 四分位数 (NPI≧75%) でLS 平均-1.53対変化-0.39の改善があった。この変化は全体としての変化-0.70よりも大きい。表 13参照。
【0214】
ADCS-ADL (MD-12)。NPI≧75%グループ (ベースラインでより一層重度)で、LS 平均2.0の有意な改善があった。NPI<75% グループで、偽薬はメマンチンよりも良好であった(変化-0.76)。全体として,メマンチンで改善があった(正のLS 平均 -0.20)。表 13参照。
【0215】
CIBIC-plus (MD-12)。 偽薬 又はメマンチンのどちらかを与えた、NPI≧75%中の患者で、MD-12の点での差異はなかった (LS 平均 0.0)。NPI<75% 集団 (LS 平均 -0.041)でメマンチン によるほんの僅かな変化(改善)があった。 全体として,メマンチン-0.04を支持する変化であった。 表 13参照。
【0216】
MD-10: MD-10に関して,トップ 25% 四分位数 (NPI≧75%)中の患者の数は、約半分にメマンチンを与え、そして半分に偽薬を与えた98人であった。NPI <75% グループ中の患者に関して, 約半分にメマンチンを与え、そして半分に偽薬を与えた約295人の患者がいた。
【0217】
ADAS-cog (MD-10)。 トップ 25% 四分位数 (NPI≧75%) におけるメマンチン対偽薬で、NPI<75% グループでLS 平均-2.53対変化-1.59 の改善があった。全体としての変化は-1.90であった。表 14参照。
【0218】
ADCS-ADL (MD-10)。 NPI≧75%グループ (ベースラインでより一層重度)で、LS 平均差異0.70の改善があった。さらに、NPI<75% グループで、LS 平均差異 0.11の改善があった。全体として,メマンチンで改善があった(正のLS 平均0.10)。表 14参照。
【0219】
CIBIC-plus (MD-10)。NPI≧75% グループでLS 平均変化-0.3の改善があった。さらに、NPI<75% グループで、LS 平均差異-0.32の改善があった。全体として,メマンチンを支持する変化(-0.30)があった。表 14参照。
【0220】
治療例 5
5つの試験からの患者副集団, MD-01, MD-02, MD-10, MD-12及びMZ-9605, に同時に抗精神薬を与えた。結果の分析は表15-19に示す。結果は、MD-02でメマンチンが認知 (SIB), 機能 (ADCS-ADL)及びCIBIC-Plus エンドポイントを改善することを立証した。MZ-9605で,メマンチンは、認知 (SIB) でも、機能 (ADCS-ADL) エンドポイントでも改善を示した。最後に, MD-10で, メマンチンはADAS-cog 及びCIBIC-Plus エンドポイントの双方で改善を示した。.
【0221】
本発明はここに記載した具体的な実施態様によって範囲を限定するものではない。確かに, ここの記載した変更に加えて、本発明の種々の変更は、前述の記載から当業者に明かになる。このような変更は付加された請求項の範囲内にあることを意図している。
【0222】
すべての特許明細書, 出願明細書, 公表明細書, 試験法, 文献及びここに引用されたその他の記事を参考としてここに援用する。
【0223】
【表5】

【0224】
【表6】

【0225】
【表7】

【0226】
【表8】

【0227】
【表9】

【0228】
【表10】

【0229】
【表11】

【0230】
【表12】

【0231】
【表13】

【0232】
【表14】

【0233】
【表15】

【0234】
【表16】

【0235】
【表17】

【0236】
【表18】

【0237】
【表19】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬学的に許容し得るキャリヤー中の1-アミノシクロヘキサンの有効量を投与することを含む、これを必要とする対象者(a subject)の行動障害を治療する方法。
【請求項2】
1-アミノシクロヘキサンがメマンチン、ネラメキサン及びそれらの薬学的に許容し得る塩から選ばれる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
1-アミノシクロヘキサンがメマンチン塩酸塩である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
行動障害が、妄想, 幻覚, 焦燥(agitation)/攻撃性 , 抑うつ/不快気分, 不安, 病的爽快/多幸, 無関心/冷淡, 脱抑制, 興奮性(irritability)/不安定性, 異常運動活動, 夜間行動及び食欲/摂食変化より成る群から選ばれる、請求項1記載の方法。
【請求項5】
アセチルコリンエステラーゼ阻害剤又は抗精神薬を投与することを更に含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
アセチルコリンエステラーゼ阻害剤がドネペジルである、請求項5記載の方法。
【請求項7】
抗精神薬が非定型抗精神薬である、請求項5記載の方法。
【請求項8】
薬学的に許容し得るキャリヤー中の1-アミノシクロヘキサンの有効量を投与することを含む、これを必要とする対象者の 焦燥を治療する方法。
【請求項9】
1-アミノシクロヘキサンが メマンチン及びネラメキサンから選ばれる、請求項8記載の方法。
【請求項10】
1-アミノシクロヘキサンがメマンチン塩酸塩である、請求項8記載の方法。
【請求項11】
メマンチンが一日あたり約 5〜60 mgの投薬量で投与される、請求項10記載の方法。
【請求項12】
メマンチンの投薬量が一日あたり約10〜40 mgである、請求項11記載の方法。
【請求項13】
焦燥が抑うつ, 気分障害, 薬物乱用禁断症状, 選択的セロトニン再取り込み阻害剤禁断症状, 外傷性脳損傷, 集中治療室における末期疾患, 術後焦燥, 麻酔後焦燥及び小児障害より成る群から選ばれる障害に関連する、請求項8記載の方法。
【請求項14】
気分障害が統合失調症又は双極性障害である、請求項13記載の方法。
【請求項15】
小児障害がうつ病, 注意欠陥障害 (多動性あり及び多動性なし), 行為障害(conduct disoeder), 反抗的行為障害 及び分離不安障害である、請求項13記載の方法。
【請求項16】
焦燥がアルツハイマー病に関連する、請求項8記載の方法。
【請求項17】
対象者を、抗精神薬を用いて同時に治療する、請求項16記載の方法。
【請求項18】
対象者が神経精神科検査票臨床尺度(the Neuropsychiatric Inventory clinical scale)で4以上のスコアを有する、請求項16記載の方法。
【請求項19】
1-アミノシクロヘキサンが、一日あたり約 5〜60 mgの投薬量で投与される. メマンチンである、請求項16記載の方法。
【請求項20】
メマンチンの投薬量が 一日あたり約10〜40 mgである、請求項19記載の方法。

【公表番号】特表2007−526335(P2007−526335A)
【公表日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−502060(P2007−502060)
【出願日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【国際出願番号】PCT/US2005/007244
【国際公開番号】WO2005/084655
【国際公開日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(397045220)メルツ・ファルマ・ゲゼルシヤフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンデイトゲゼルシヤフト・アウフ・アクティーン (31)
【Fターム(参考)】