焦電センサ
強誘電/焦電センサは、このセンサの強誘電シーン素子(134)の電荷出力を、同じ温度について特定の時間にわたってシーン素子(134)のヒステリシスループ出力を複数回測定することによって求める技術を利用する。強誘電シーン素子(134)に外部交流信号を印加して、素子(134)からのヒステリシスループ出力が分極を切替える。出力コンデンサと演算増幅器の組合せなどの電荷積分回路(138)を使用して、シーン素子(134)からの電荷を測定する。好ましくは、シーン素子(134)の強誘電体は、SBTまたはその誘導体でできており、これを上部電極と下部電極の間に直接配設する。このセンサの周波数は外部交流信号によって生成され、その周波数特性のために、従来方式のエアブリッジによって素子(134)をシリコン基板から熱分離する必要がないことがあり、その代わりに好ましくは、SOG(スピン・オン・ガラス)によって熱分離する。出力コンデンサ内で過剰な電荷が蓄積されることによってセンサの出力信号電圧が飽和しないように、このセンサは、シーン素子(134)に並列な基準素子(132)を有する。交流信号の電圧が負のとき、出力コンデンサは、基準素子(132)を通して電流を流すことによって放電し、それによって基準素子(132)の分極を問い合わせ、これを各サイクルにシーン素子(134)の分極と比較し、シーン素子(134)の分極から減算する。設定した時間にわたって各サイクルに測定した分極の差を積分増幅器によって加算して、信号出力が得られる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に焦電(ピロ電気またはパイロ電気)センサに関し、より詳細には、分極が温度に依存するセンサの容量性強誘電素子に関する。この分極は、この素子に外部交流信号を印加することによって強められ、このセンサの電荷積分システムによって測定される。
【背景技術】
【0002】
本特許出願は、2003年2月21日出願の米国仮特許出願第60/449505号の特典を主張する。
画素化された容量性素子のアレイの形に構成されたある種のクラスのセンサは、強誘電材料およびその焦電効果を利用して温度変化を検出する。このタイプのセンサは、例えば、悪天候条件、夜間視界など、可視性が低い条件での画像化などに広範に応用される。強誘電材料は、自発電気分極が温度に依存する誘電体材料である。各画素は、画像化されるシーンの一部に温度を感知する。この材料は、シーンからの赤外エネルギーが増減することによって強誘電材料の温度が、好ましくは室温である基準温度から上下するように、熱的にバイアスされ、チョッパによって基準が与えられる。こうすると、強誘電材料の分極が変化し、この変化は、画素の温度に応じて、瞬時電流の変化、あるいは基準コンデンサの変化の状態が充電または放電であるときには電圧の変化として感知される。シーンから個々の画素に付与される赤外放射のためにこれらの画素の局所的な分極状態が変化するので、赤外による画像化が可能である。次いで、チョッパが閉じて、画素がシーンから遮断されると、熱的な冷却または加熱によって温度が基準温度にリセットされる。
【0003】
一般に、変化する放射エネルギーをセンサシステムの固有環境ノイズよりも大きい使用可能な電気信号に変換する公知の強誘電/焦電センサは、「受動モード」で動作する。すなわち、焦電素子は、(図1に最もよく示されているように)作為的に電気分極を反転させることなく、温度変化の関数である所与の分極状態で動作する。より具体的には、受動的な焦電検出では、典型的には、分極したコンデンサ構造の両端の正味電圧ΔQ(ΔQ=ΔP*A、Aは素子の面積)を測定することによって、または、材料の(分極状態の関数である)誘電率を求める小信号交流励振によって、あるいは、これら2つの方法の何らかの組合せによって強誘電材料の分極状態を問い合わせるだけである。
【0004】
強誘電/焦電センサを比較するための当業界での実務慣行は、焦電係数pを測定することであった。焦電係数pは、所与のバイアス電界Ebにおいて、温度Tに対する電気変位Dの偏導関数p=(ΔD/ΔT)と定義される。ただし、D=εE+P、εは誘電率である。上記が意味するのは、センサ面積がAの物理的な幾何形状に対して、温度T当たりクーロン電荷量Qが生成され、焦電係数pは、p=(1/A)[ΔQ/ΔT]と表されることである。遺憾ながら、この技法が表すのは、図2のヒステリシスループの面積によって表される利用可能な信号エネルギーの小さな部分の周りの単一サイクルだけである。
【0005】
図3に、従来の受動電荷生成技術を利用してセンサ素子の出力を求める公知の焦電センサシステム10の概略ブロック図を示す。センサシステム10は、シーンから焦電素子16の一部である赤外吸収体14への放射を選択的にゲート制御するチョッパ12を含む。焦電素子16は、図2に示すように温度に応じて変化するヒステリシスループを示す強誘電材料でできている。当技術分野ではよく理解されるように、焦電素子16は、センサシステム10の単一の画素を表し、(図示しない)他の画素と組み合わされて画像を生成する。本明細書での検討は、赤外画像化システムを対象とするが、このタイプのセンサシステムは、ミリ波およびマイクロ波を含めて他の放射波長を検出するように適用可能であることが当業者には理解されよう。
【0006】
チョッパ12は、焦電素子16に向かう放射を、所定の周波数で選択的に遮断し、また通過させ、それによって焦電素子16は、チョッパ12が閉じているときには基準温度を感知し、チョッパ12が開いているときにはシーンの温度を感知する。図2に示すように、基準温度とシーンの温度の差により、ヒステリシスループの形状が変化する。これら2つのループについて電荷Q(t)18の変化を別々に、当技術分野でよく知られているやり方で、サンプリングまたは出力用のコンデンサ20と増幅器22の両端の電圧として測定する。焦電素子16にはいかなる外部電界も印加しないので、これら2つのループについてコンデンサ20を充電する焦電素子16の電荷測定値は、温度T1についてヒステリシスループが正の縦軸と交差する電荷Q1であり、温度T2についてヒステリシスループが正の縦軸と交差する電荷Q2である。サンプリングコンデンサ20は、チョッパ12によってウィンドウが開くときのみ焦電素子16からの電荷を蓄積する。この設計での実効焦電係数pは、
p=(1/A)[Q1−Q2]/[T1−T2]
で与えられる。
【0007】
公知の代替設計では、温度T1およびT2について、焦電素子16によって蓄積された電荷間の小信号レベルの容量(すなわち、分極した、または分極していない強誘電材料のQ−V曲線の局所的な傾きの変化)を測定し、次いでそれらを比較する。図4に、チョッパ12、赤外吸収体14、焦電素子16、および増幅器22を含むセンサシステム26の概略ブロック図を示す。(図示しない)バイアス源から焦電素子16に小さなバイアス電圧を印加することがあり、容量メータ28を使用して、温度T1およびT2についてのヒステリシスループ上の位置間で、このバイアス電圧に対する相対的な容量の変化を測定する。この設計で、焦電素子16に小さなバイアス電圧を印加しても、動作モードは依然として受動的である。というのは、この小さなバイアス電圧は、強誘電材料の分極状態をまったく変化させず、単に容量の変化によって測定される局所的な誘電率の変化が測定されるからである。実効焦電係数pは、
p=[(Vmns/A)](ΔC/ΔT)
で与えられる。
【0008】
この検出方式では明らかに、ヒステリシスループの小さな部分しか使用しておらず、したがって、これらのセンサの、信号とノイズを区別する能力は制限される。上記で論じた技術のいずれも、強誘電材料が、その2つの自発的な分極状態Ps(+または−)の1つのままであるか、あるいは、それらの何らかの中間状態にあるかの状態に依存する。温度変化間で焦電素子16からの電力を測定する能力により、このシステムの感度が得られる。先行技術のセンサでは、信号対ノイズ比が比較的小さいので、この信号対ノイズ比がシステム全体の感度を確定する。チョッパ12および増幅器22などのシステムコンポーネントを堅固で比較的高価なものにしても、ノイズに対して信号を大きくすることはできず、単に、信号がさらに劣化するのを防ぐだけである。
【0009】
図2に示すように、強誘電材料中の分極の大きさおよび方向は、ヒステリシスループによって識別可能である。材料の分極の向きは、この材料に逆の外部電界を印加することによって変化させることができる。材料中の電気双極子により分極の向きが識別されるが、電気双極子は、外部電界が印加されると変化し、適切な回路配置ではヒステリシスループが生成される。自発分極は概ね温度に依存するので、強誘電材料は、温度を検出するのに焦電効果を利用することができる。
【0010】
ヒステリシスループの任意のエリアは、それが飽和したヒステリシスエリア全体であるか、単に全ループ中のどこかの動作領域であるかにかかわらず、特定の励起状態についての所与の温度における材料の原子格子構造を構成する双極子の一部または全部の分極状態を変化させるのに必要とされるスイッチングエネルギーを表す。強誘電材料に入射する放射が吸収される場合、この放射が変化すると温度が変化し、そのため、関連するループの面積が変化する。図2に、特定の焦電材料について、第1の温度T1および第2の温度T2における2つの電荷−電圧ヒステリシスループを示す。物理的な寸法に無関係にグラフにすると、水平軸は、外部的に印加される交流電界の大きさを示し、垂直軸は、電荷密度の形で分極を示す。強誘電材料の電荷−電圧ヒステリシスループの面積は、エネルギーの次元を有し、そのループ面積は、強誘電材料の温度の1次関数である。分極の大きさは、所与の電界について、焦電材料の温度の変化に応じて変化する。図2の2つのヒステリシスループを注意深く検討すると、異なる2つの温度T1およびT2(T1<T2)について、ループ内の面積が異なることが示されよう。その結果、主要ループ内のどこかの面積の変化の電気測定値は、材料の温度、したがって入射する赤外放射の変化に対応する電気信号になる。この効果は、焦電材料の分極状態が切り替わるために動的な性質のものであり、したがって、入射する放射を測定するときには、シーンに対して各ウィンドウを開く前に、放射を遮断して強誘電自発分極を基準とすることが必要とされる。
【0011】
焦電技術におけるより最近の発展が、1999年2月1日出願の米国特許第6,294,784 B1号および1999年12月3日出願の米国特許第6,339,221 B1号に教示されている。これらの特許をともに参照により本明細書に組み込む。これらの特許は、先に述べた従来方式の「受動」モードではなく、「能動」動作モードを開示している。この能動モードでは、個々の素子は、その正分極状態と負分極状態を切替えるために、大きな電気変位切替え電流を得るのに十分な電圧レベルの外部電圧によって駆動される。
【0012】
能動モードでは、分極状態を切替えるたびに、
Qs=Pr*A
に等しい電荷Qsが、この外部電力源から供給されることになる。先に参照した特許で教示されているように、給電された電荷の量を、図6の電荷増幅器/積分器48によって測定し、整流し、積分し、増幅すると、あらかじめ設定された時間τについて蓄積される総電荷は(増幅率を除いて)、
Qtotal=(2*Qs)*f*τ
になる。外部電力源の周波数fと時間の積(f*τ)は、切替え数Nに等しい。分極状態は温度によって決まるので、Qtotalは、温度の1次関数である。各画素ごとの出力信号は、基準Qrefと、時間間隔τ後に取得されたQtotalとの差である。ただし、τはチョッパが開いている継続時間である。
【0013】
分極状態は複数回サンプリングされるので、焦電材料の実効感度はN倍に高められ、信号対雑音比により、ランダムノイズは、1/(f*τ)1/2のノイズ成分減少率で平均化される。遺憾ながら、信号出力電圧Voが飽和しないように、積分または出力用のコンデンサ52および58は、時間τ中に加算される総電荷を処理するのに十分な大きさにしなければならない。そのため、コンデンサ52の容量は、Nと、焦電素子34の固有容量との積よりも大きくしなければならない。十分な容量の出力コンデンサを使用すると、チップ上にこのコンデンサを配置しにくくなり、焦点アレイおよび支持回路が所望のものよりも大きくなる。
【0014】
材料の感度は、焦電係数pとして、
p=dPs/dT
で表されるので、感度を向上させるのに必要とされる基準温度は、図1に最もよく示されており、自発分極Psが急激に変化するところ、またはその付近に位置し、その温度範囲は狭い。このような温度は、材料に固有なものであり、キュリー温度Tcとも称する。キュリー温度は慣行的に、温度の関数としての逆誘電率のグラフから得られ、ゼロの逆誘電率に対する高温外挿点であり、これは、非強誘電性から強誘電性への材料中の相転移を表す。従来方式では、基準温度Trefは室温であり、したがってキュリー温度Tcが、室温からいくらか離れている場合、分極の変化を示す図1の線の傾きが小さくなり、そのため感度および焦電係数pが減少し、望ましくない。
【0015】
焦電体技術分野では、基準温度として用いられる場合に、様々な応用例の支持構造に適合し、焦電係数pによって所望の感度を満足し得るキュリー温度を有する様々な材料が知られている。ISAF“92:Proceedings of the Eighth IEEE International Symposium on applications of ferroelectrics(強誘電体の第8のIEEE国際シンポジュームの会報))」、1頁から公知の材料の表を参照して以下に示す。
【0016】
【表1】
【0017】
【表2】
遺憾ながら、キュリー温度が約22℃の室温に近い公知の材料はほとんどない。さらに、上記で列挙した材料は、高温処理を必要とし、コストのかかる製造工程を必要とする。BSTなど一部の材料は成長させるのが難しく、一部の材料は、環境に悪影響を及ぼす鉛を含み、さらに他の材料は、高価なスカンジウムを含む。
【0018】
図5を参照すると、赤外焦電法は、温度感受性の強誘電材料を必要とするので、画素の熱分離のレベルが高いことを表す熱時定数が望ましい。熱の移動、または画素間のクロストーク、あるいはシリコン基板への熱伝導または熱短絡は、熱時定数を下げるようにしか作用せず、したがって、感度および信号対雑音比が小さくなる。従来方式では、エアギャップまたはエアブリッジにより、素子と基板を連結する最低限の熱分離器またはSOG(スピン・オン・ガラス)だけで、シリコン基板と画素の間で必要な熱分離が得られる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
遺憾ながら、エアブリッジの考え方では、シリコン製造工程およびセラミック工程がともに必要とされる。さらに、この製造工程は、コストがかかり、良品アレイの歩留まりが低く、非効率な単一ユニットハンドリングを必要とし、ウエハレベルで製作することができない。さらに、この素子は、サイズを小さくすることが制限される。サイズの減少は、典型的なFPA(焦点面アレイ)が一般に、512×512の画素アレイを有し得ることを考慮するとますます重要になる。
【課題を解決するための手段】
【0020】
強誘電/焦電センサは、このセンサの強誘電シーン素子の電荷出力を、同じ温度について特定の時間にわたってこのシーン素子のヒステリシスループ出力を複数回測定することによって求める技術を利用する。この強誘電シーン素子に外部交流信号を印加して、この素子からのヒステリシスループ出力が分極を切替える。出力コンデンサと演算増幅器の組合せなどの電荷積分回路を使用して、シーン素子からの電荷を測定する。好ましくは、このシーン素子の強誘電体は、経済的かつ応答性のよいSBT(ストロンチウムビスマスタンタル酸化物)またはその誘導体でできており、これを上部電極と下部電極の間に直接配設する。このセンサの周波数は外部交流信号によって生成され、その周波数特性のために、製造が難しい従来方式のエアブリッジによってこの素子をシリコン基板から熱分離する必要がないことがあり、その代わりに好ましくは、SOG(スピン・オン・ガラス)その他の適切な低熱伝導材料によって熱分離する。出力コンデンサ内で過剰な電荷が蓄積されることによってセンサの出力信号電圧が飽和しないように、好ましくはこのセンサは、シーン素子に電気的に並列に構成された基準強誘電素子を有する。交流信号の電圧が負のとき、出力コンデンサは、基準素子を通して電流を流すことによって放電し、それによって基準素子の分極を問い合わせ、これを各サイクルにシーン素子の分極と比較し、このシーン素子の分極から減算する。設定した時間にわたって各サイクルに測定した分極の差を積分増幅器によって加算して、信号出力電圧が得られる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の目的、特徴、および利点は、雑音対信号比および感度に優れ、そのため、焦電体用途向けに以前には考慮されなかった強誘電材料を使用し得る焦電センサを含む。このような強誘電材料は、室温に近いか、または室温よりもかなり高いキュリー温度を有し、比較的安価であり、処理するのに高温を必要とせず、環境に悪影響を及ぼさず、堅固である。
【0022】
さらに、本発明により、シリコン基板からのアレイ素子の熱分離の依存性が小さくなり、したがって、従来方式のエアブリッジが不要になることがあり、そのため、製造工程のステップが少なくなり、許容可能なアレイの歩留まりが高くなることによってコストが下がり、ウエハレベルの製作が可能になり、素子サイズが小さくなる。
【0023】
さらに、シーン素子および基準素子を、対応する回路とともに使用すると、必要な出力容量が小さくなり、そのため、チップ上に出力コンデンサを配置することができ、それによって、アレイおよび支持回路の全体的なサイズが小さくなり、サイクルの平均化回数を増やすことができ、そのため、信号対雑音比が大きくなり、信号出力電圧が飽和しなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下の説明および添付の図面の中で、本発明の現時点で好ましい実施形態を開示する。
能動型焦電センサシステムを対象とする好ましい実施形態の以下の説明は、本質的に単なる例であり、いかなる形でも本発明あるいはその応用例またはその利用法を限定するものではない。
【0025】
上記で論じた従来方式の受動型焦電センサ設計では、問い合わせ中にPsをその初期状態から切替えないので、ヒステリシスループによって特定される強誘電材料の大きなエネルギー積は一般に、当業界では完全には利用されていないことが、より厳密な分析から示唆される。完全に分極した状態での残余の分極Prと、このような残余の分極をすべて取り除くのに必要とされる抗電界Ecとの積は一般に、エネルギー積PrEcとして識別される。このPrEc積は、エネルギー密度の次元を有し、このような材料の「硬度」またはエネルギー蓄積能力を比較する働きをする。したがって、本発明ではひとつには、Ps切替えを利用することによって、所与の温度においてヒステリシスループ全体を多数回横断し、それによって信号対雑音比が高められた状態で静的測定を行うことを提案する。このPsのレイル・ツウ・レイル切替えは、上記で論じた従来の受動または受動に近い技術における極めて弱いレベルと異なり、かなりの電力レベルで強誘電材料を能動動作させることと等価である。センサの温度が変化すると、ヒステリシスループ内の面積が変化し、このセンサ設計の能動的な性質のために、この変化を迅速に監視することができる。
【0026】
ヒステリシスループ内の面積は、1励起サイクル当たりに放散されるエネルギーを表す。そのため、焦電性または強誘電性の材料を連続的に交流励起すると、ある種の平衡温度レベルでエネルギーが放散される。ただし、このレベルの放散は、センサに加えられ、またセンサから引き出される外部の熱に(シーンのエネルギー)よって連続的に変調され、平衡レベルにおけるこの変化が、センサシステムの電気出力に必要とされるセンサシステムの各シーン画素における温度変化を表す。異なる2つの温度T1およびT2に関連するループ面積の差は、強誘電性エネルギー蓄積装置によって送達される、またはこの蓄積装置のところで受け取られる蓄積された分極エネルギーを表す。この分極依存性のエネルギー変化は、循環V電界励起の結果の2つの放散エネルギーレベルの差である。本発明のセンサ回路の能動的な性質によって、この小さなエネルギー変化の測定精度は、測定の頻度、すなわち、帯域制限、信号加算、およびノイズ平均化によって高められる。
【0027】
本明細書で説明する発明では、焦電材料の原子構造内に蓄積される温度感受性エネルギーのすべてを完全に利用する。これは、飽和した主要ヒステリシスループ全体を能動的に横断する交流励起によって行われる。この搬送周波数により、時間τまたは1つのチョッパウィンドウ当たり信号を多数回加算することができる。本質的には、これは、外部交流励起を利用して、焦電材料の格子内に蓄積されたすべてのエネルギーを強く刺激するという点で、「能動」増幅プロセスであり、次に、この高レベルの電力は、入射する放射の小さな赤外摂動信号によって制御される。
【0028】
図6は、本発明の実施形態による焦電センサシステム32の概略図である。焦電センサシステム32は、従来の受動型焦電システムでは使用することができない強誘電層36の材料を使用して、上記で論じた能動型焦電素子励起を実現する。システム32は、2つの電極または容量性プレート38と40に挟まれた強誘電材料のブロックまたは層36を含む強誘電シーン素子34を備える。交流電流源42は、所定の周波数で電極38に交流電位を印加する。(図7に示す)チョッパ66は、シャッタが開いているときにシーンからの放射エネルギーを選択的にブロック36に当て、シャッタが閉じているときに強誘電シーン素子34に基準温度を所定の周波数で提供することができる。供給源42からの交流電位によって生成された電荷、および入射する放射から強誘電ブロック36によって生成された電荷は、電極40によって集められる。好ましくは、供給源42からの電位は、この電荷が、ループ全体からブロック36のヒステリシスループ出力を駆動するのに十分に大きい。焦電素子34に加えられる温度は、チョッパ66の動作に応答して変化するので、それに従ってヒステリシスループの形状および面積が、上記の考察と一致して変化する。
【0029】
電極40によって収集された出力電圧は、第1の整流ダイオード検出器44および第2の整流ダイオード検出器46に印加される。供給源42からの電位が正のとき、検出器44が電荷積分システム47に導通し、供給源42からの電位が負のとき、検出器46がシステム47に導通する。検出器44が導通すると、焦電素子34からの電荷は、増幅器50および積分または出力用のコンデンサ52を含むシステム47の積分器48に印加される。検出器44が導通するたびに、電荷がコンデンサ52に追加され、増幅器50によって増幅される。システム47の第2の積分器54は、増幅器56および積分コンデンサ58を有し、積分コンデンサ58は、検出器46が導通するときに電荷を蓄積し、そのため、これら2つの積分器48または54の組合せが連続して電荷を蓄積する。
【0030】
システム47の加算器60は、積分器48および54から電荷を連続的に加算して、加算された電荷出力Voを提供する。加算器60の出力はさらに、(図示しない)処理回路に送られて、画像の1画素を示す信号が得られる。(図示しない)リセット装置は、適用される場合には、チョッパ66の周波数と同期して加算器60をリセットすることになる。したがって、1つの温度についての特定の時間フレームについて、加算器60からの出力は、複数のループの振れにわたって蓄積された電荷である。すなわち、交流源42の周波数は、チョッパ66が閉じるたびに、温度T1についてのヒステリシスループを通じてシーン素子34によって生成された電荷が複数回測定されるように設定される。同様に、チョッパ66が開いているとき、温度T2についてのヒステリシスループを通じてシーン素子34によって生成された電荷が同じ回数測定される。一実施形態では、例えば、供給源42からの交流周波数は、1.5kHzに設定され、チョッパ周期は、15フレーム/秒に設定され、そのため、1つのチョッパウィンドウ当たりヒステリシスループを通じて100個の分極サイクルが得られる。加算器60は、これら2つの値を比較し得るように各時間τ後にゼロにされる。したがって、個々のチョッパ時間ウィンドウについてのヒステリシス区域全体で電荷が測定されるだけでなく、この時間全体にわたって複数回測定され、先行技術のところで先に述べた受動センサと比べて信号対雑音レベルが大きく増加する。
【0031】
供給源42からの交流信号の大きさは、焦電素子34からの利用可能な電荷全体が対象にされるように、レイル・ツウ・レイルからのヒステリシスループを駆動するように選択される。こうすると、各交流サイクルごとに、素子34の分極が完全に反転する。あるいは、交流信号の大きさは、ヒステリシスループの一部のみを対象とするように小さくし得るが、特定の時間フレームの間の複数回の電荷測定により依然として、当技術分野で周知の受動型焦電センサシステムと比べて信号がかなり平均化される。ヒステリシスループの一部のみを対象とすることによって、シーン素子34は、部分的にしか分極が反転しない。素子34に、交流信号に加えて直流バイアスを印加して、ヒステリシスループの異なる適用範囲を画定し得ることに留意されたい。交流信号の大きさがループの保持強度よりも大きいと焦電素子30を破壊することになるが、それよりも大きくならない限り、本発明の複数回信号平均化技術により、信号対雑音比が向上することになる。
【0032】
図7に、本発明による能動型焦電センサシステム64のブロック図を示し、上記で説明した本発明の動作を示す。チョッパ66により、上記で論じたやり方で、強誘電シーン素子70の一部である赤外吸収体68に放射が間欠的に加えられる。さらに、一定の大きさの周波数信号が、供給源42からシーン素子70に印加される。シーン素子70のヒステリシスループの全レイル・ツウ・レイル飽和についての電荷Q(t)が、上記システム47の積分器48および54を全体的に表すfcバンドパス演算増幅器及び積分器72に印加される。この積分器からの変調された搬送電圧信号は、上記の検出器44および46を表す全波整流器及び復調器74に、次いで、ローパスフィルタ76に印加され、それによって電気出力信号Voが得られる。
【0033】
図8は、本発明による焦電センサシステム80の概略図である。焦電センサシステム80は、上記で論じたセンサシステム32の電荷の能動増幅によって、センサのところで生成されるエネルギーをすべて利用する実施形態である。システム80は、シーン素子からの電荷を蓄積するコンデンサCFを含み、この電荷は、JFET演算増幅器TLO84CNなどの演算増幅器82によって増幅される。1対のダイオード検出器84は、交流供給源86によって生成されるこの素子からの電荷を検出する。演算増幅器または加算器88は、積分された電荷を加算する。センサシステム80は、交流信号の正負の成分について同じ電荷蓄積を行い、それによって、ヒステリシスループ全体にわたって電荷が複数回加算される。
【0034】
上記の検討では、焦電センサ内で信号対雑音比を向上させるために信号平均化を行う。さらに、センサ回路は多数の抵抗器を使用しないので、センサのジョンソンノイズ(Johnson noise)はさらに減少する。本発明の技術は、強誘電材料および焦電効果は利用しないが、ヒステリシスループ出力を示す他のタイプのセンサ、検出器、および装置に適用される。特に、ある種の材料が入力信号に対してヒステリシスループ応答を示す場合、これらのタイプのシステムに本発明の複数回信号平均化技術が適用可能なことがある。別のタイプのセンサは、歪みなどの外部刺激に対してヒステリシスタイプのループ応答を示す磁性タイプの材料を含むことがある。
【0035】
焦電センサの設計では、熱回路および電気回路をともに考慮することが必要とされる。図5に、従来の熱回路構造を示し、図10に、本発明の熱回路構造を示す。良好な信号対雑音比を得るために、熱時定数は、電気時定数よりもかなり小さくなければならない。
【0036】
図5を参照すると、焦電素子89の従来型焦電層90は、先に述べ、かつ表に記した材料のいずれか1つでできている。層90は、上部容量性プレート92と下部容量性プレート94の間に配設される。赤外吸収体96は、選択された光線98を吸収し、かつ焦電層90に熱を転送するために上部プレート92の上に配設される。シリコン基板100は、下に離して置かれ、素子アレイ全体を支持し、概ね無限ヒートシンクとして作用する。この空間は、従来方式ではエアブリッジ102と称し、素子89から信号電圧出力Voに電気的に接続すると同時に、焦電素子89の高レベルの熱分離を維持するという相反する要求を部分的に両立させる。横方向の熱伝導を最小限に抑えるために、素子間の金属相互接続部104を素子の面積よりもはるかに小さな面積に制限する。各素子89は、溶接可能な金属被覆によって下部プレート94と入力パッド108の間に付着する垂直熱絶縁体またはハンダ結合部106によって、シリコン基板に支持され、電気的に固定される。遺憾ながら、エアブリッジ102を使用すると、背景技術の項で先に述べた多くの製造上の難点が生じる。信号平均化による信号対雑音比の向上と同様に、強誘電素子材料の感度pは、以下のようにN(サイクル数)倍に向上すなわち増加する。
【0037】
p(実効)=N*p(従来の)
この実効感度の向上により、以前には焦電応用例には考慮されなかった強誘電材料を使用することができる。これらの強誘電材料の多くは、先に述べた好ましい基準温度である室温よりもかなり高いキュリー温度を有する。例えば、強誘電材料としてのSBT(ストロンチウムビスマスタンタル酸化物)の感度pは0.03μC/cm2Kであり、この値は従来方式では低すぎ、SBTのキュリー温度335℃は、基準温度として動作するには高すぎる。この感度をNサイクル倍に増加させると、図1の分極−温度曲線上で基準温度をこのキュリー温度から下方に移すことができる。さらに、好ましい形態のSBTは、SBTの焦電効果が実質的に線形である動作温度の範囲が広い薄膜である。他の好ましい強誘電材料およびSBTのドープは、バリウムビスマスタンタル酸化物およびランタンビスマスタンタル酸化物を含む。SBTの誘導体は、所与の基準温度における分極−時間曲線の傾きを変化させて、信号対雑音比および感度を向上させる効果を有し得る。
【0038】
本発明の図10を参照すると、「能動型」焦電センサおよび関連する画素切換えを用いることにより、極めて大きな電気時定数が得られる。これにより、受動型焦電センサには使用し得ないより大きな熱時定数を許容し得る。例えば、赤外放射110は、吸収体112に当たり、吸収体112は、素子116の白金容量性プレート114を介して熱を伝え、それによって強誘電体層118が分極する。好ましくは白金製の下部容量性プレート120は、先に述べたように、電荷積分システムに電流を流す。素子116は、容量性プレート120とシリコン基板122の間に付着した熱障壁124の連続的な層または被覆によってシリコン基板122から熱的に分離される。好ましくは、熱障壁124は、SOG(スピン・オン・ガラス)またはYSZ(イットリア安定化ジルコニア)である。例えば、SOG障壁124の熱時定数を計算する際に、熱時定数の式は、
τther=t2/K
である。ただし、tは厚さであり、Kは熱拡散率である。t=2μm、二酸化シリコンの密度を87%、熱伝導率を0.155W/m−k、(バルクの二酸化シリコンの)熱容量を44.77J/mol−Kと仮定すると、熱時定数は44μsに等しい。これを、例えば10MHzの画素切換えと比較すると、垂直方向の電気時定数は、熱時定数よりも400倍大きくなる。
【0039】
この簡単な解析から、(図5に示す)微細加工したエアブリッジ102その他の任意の膜タイプ構造のいずれも不要とするためには、低密度、低熱伝導率の(Dow社のXLKなどの)SOG熱障壁124上に構築された典型的な10μm×10μmの強誘電素子116で十分であることが明らかである。これは、「能動型」焦電センサを、少なくとも10MHzの周波数の外部交流電力源/信号で使用することを仮定している。
【0040】
図6および図8の、または米国特許第6,339,221号で教示されている「能動型」システムの能動型焦電センサシステム32および80を能動型複式素子焦電センサシステム130に改変して、信号電圧出力Voの飽和を防止し得る。システム130は、シーン素子134と電気的に並列に構成された基準素子132を有する。基準素子132は、固有容量Cf2を有し、一般に暗所で保持される。シーン素子132は、固有容量Cf1を有し、一般にシーン温度に曝される。交流電圧源136は、基準素子132およびシーン素子134と直列に構成され、そのため、外部的に印加される電圧が正のとき、シーン素子134およびダイオード検出器140を通って流れる電流は、電荷積分システム138の出力または蓄積用のコンデンサ137に吸い上げられる。同様に、同じサイクル中に外部的に印加される電圧が負のとき、電流は、出力コンデンサ136から、ダイオード検出器142を介して基準素子132に逆に流れる。この戻り電流は、基準素子132の分極を問い合わせる働きをする。電荷積分システム138の増幅器または加算器144は、1つのサイクルから次のサイクルへの分極の差を求め、所与の時間にわたってこれらの差を加算して、信号対雑音比を最適化する。
【0041】
図11〜図13に、図9の能動型焦電センサ130のシミュレーション結果を示す。図11では、シーン素子134のCf1および基準素子132のCf2は同じ温度下にあり、いずれも同じ自発分極Ps=9.25μC/cm2を有する。そのため、この場合にはサイクル数が100(N=100)よりも多い場合でさえ出力電圧は形成されない。
【0042】
図12を参照すると、シーン素子134の自発分極は、Ps1=9.25μC/cm2であり、基準素子132の自発分極を問い合わせると、Ps2=9.125μC/cm2になる。この分極の差は、素子132と134の間の7℃の温度差に相当する。加算器144は、全部で100個の差を加算して、約200mVの信号出力電圧Voを生成する。
【0043】
図13を参照すると、分極状態は図12と同じままであり、そのため、温度差も同じである。ただし、時間τまたはウィンドウは、10倍(すなわち、2msから20msに)増加し、これは、N=100からN=1000へのサイクルの増加に相当する。この解析によれば、信号出力電圧Voは、それがVDDに達しない限り飽和しないことが明らかである。加算器144は、τ=20ミリ秒にわたって全部で1000個の差を加算して、約2,300mVの信号出力電圧を生成する。これは10倍よりも大きく、そのため、N=100の図12と比べて信号対雑音比が向上することを意味する。
【0044】
本明細書で開示した本発明の形態は、現時点で好ましい実施形態であるが、他の多くの形態が可能である。本明細書では、本発明のすべての可能な等価な形態または派生物を記載することを制限するものではない。本明細書で用いる用語は、限定するのではなく単に説明するためのものであり、本発明の趣旨または範囲を逸脱することなく様々な変更を加えることができることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】垂直軸を自発分極とし、水平軸を温度としたグラフである。
【図2】垂直軸を電荷とし、水平軸を電位としたグラフであり、温度T1およびT2についての強誘電素子のヒステリシスループ応答を示す。
【図3】公知の受動型焦電センサシステムの概略ブロック図である。
【図4】公知の別の受動型焦電センサシステムの概略ブロック図である。
【図5】エアブリッジによってシリコン基板から熱的に分離した公知の焦電素子の断面図である。
【図6】本発明の実施形態による、SBTまたはその誘導体からできている強誘電層を有する能動型焦電センサシステムの概略図である。
【図7】本発明の別の能動型焦電センサシステムのブロック図である。
【図8】本発明による別の能動型焦電センサシステムの概略図である。
【図9】本発明による改変された能動型焦電センサシステムの概略図である。
【図10】図5に示す従来型エアブリッジを用いずに示す能動型焦電センサシステムの素子の断面図である。
【図11】垂直軸を出力電圧とし、水平軸を時間とした、図9の改変された能動型焦電センサによって生成されたグラフであり、シーン素子の温度および分極は、基準素子の温度および分極に等しく、分極は9.25μC/cm2であり、サイクル数Nは100である。
【図12】シーン素子と基準素子の温度が7℃だけ異なり、基準素子の分極が9.125μC/cm2に減少している点を除き、図11に類似のグラフである。
【図13】サイクル数が1000に増加している点を除き、図12に類似のグラフである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に焦電(ピロ電気またはパイロ電気)センサに関し、より詳細には、分極が温度に依存するセンサの容量性強誘電素子に関する。この分極は、この素子に外部交流信号を印加することによって強められ、このセンサの電荷積分システムによって測定される。
【背景技術】
【0002】
本特許出願は、2003年2月21日出願の米国仮特許出願第60/449505号の特典を主張する。
画素化された容量性素子のアレイの形に構成されたある種のクラスのセンサは、強誘電材料およびその焦電効果を利用して温度変化を検出する。このタイプのセンサは、例えば、悪天候条件、夜間視界など、可視性が低い条件での画像化などに広範に応用される。強誘電材料は、自発電気分極が温度に依存する誘電体材料である。各画素は、画像化されるシーンの一部に温度を感知する。この材料は、シーンからの赤外エネルギーが増減することによって強誘電材料の温度が、好ましくは室温である基準温度から上下するように、熱的にバイアスされ、チョッパによって基準が与えられる。こうすると、強誘電材料の分極が変化し、この変化は、画素の温度に応じて、瞬時電流の変化、あるいは基準コンデンサの変化の状態が充電または放電であるときには電圧の変化として感知される。シーンから個々の画素に付与される赤外放射のためにこれらの画素の局所的な分極状態が変化するので、赤外による画像化が可能である。次いで、チョッパが閉じて、画素がシーンから遮断されると、熱的な冷却または加熱によって温度が基準温度にリセットされる。
【0003】
一般に、変化する放射エネルギーをセンサシステムの固有環境ノイズよりも大きい使用可能な電気信号に変換する公知の強誘電/焦電センサは、「受動モード」で動作する。すなわち、焦電素子は、(図1に最もよく示されているように)作為的に電気分極を反転させることなく、温度変化の関数である所与の分極状態で動作する。より具体的には、受動的な焦電検出では、典型的には、分極したコンデンサ構造の両端の正味電圧ΔQ(ΔQ=ΔP*A、Aは素子の面積)を測定することによって、または、材料の(分極状態の関数である)誘電率を求める小信号交流励振によって、あるいは、これら2つの方法の何らかの組合せによって強誘電材料の分極状態を問い合わせるだけである。
【0004】
強誘電/焦電センサを比較するための当業界での実務慣行は、焦電係数pを測定することであった。焦電係数pは、所与のバイアス電界Ebにおいて、温度Tに対する電気変位Dの偏導関数p=(ΔD/ΔT)と定義される。ただし、D=εE+P、εは誘電率である。上記が意味するのは、センサ面積がAの物理的な幾何形状に対して、温度T当たりクーロン電荷量Qが生成され、焦電係数pは、p=(1/A)[ΔQ/ΔT]と表されることである。遺憾ながら、この技法が表すのは、図2のヒステリシスループの面積によって表される利用可能な信号エネルギーの小さな部分の周りの単一サイクルだけである。
【0005】
図3に、従来の受動電荷生成技術を利用してセンサ素子の出力を求める公知の焦電センサシステム10の概略ブロック図を示す。センサシステム10は、シーンから焦電素子16の一部である赤外吸収体14への放射を選択的にゲート制御するチョッパ12を含む。焦電素子16は、図2に示すように温度に応じて変化するヒステリシスループを示す強誘電材料でできている。当技術分野ではよく理解されるように、焦電素子16は、センサシステム10の単一の画素を表し、(図示しない)他の画素と組み合わされて画像を生成する。本明細書での検討は、赤外画像化システムを対象とするが、このタイプのセンサシステムは、ミリ波およびマイクロ波を含めて他の放射波長を検出するように適用可能であることが当業者には理解されよう。
【0006】
チョッパ12は、焦電素子16に向かう放射を、所定の周波数で選択的に遮断し、また通過させ、それによって焦電素子16は、チョッパ12が閉じているときには基準温度を感知し、チョッパ12が開いているときにはシーンの温度を感知する。図2に示すように、基準温度とシーンの温度の差により、ヒステリシスループの形状が変化する。これら2つのループについて電荷Q(t)18の変化を別々に、当技術分野でよく知られているやり方で、サンプリングまたは出力用のコンデンサ20と増幅器22の両端の電圧として測定する。焦電素子16にはいかなる外部電界も印加しないので、これら2つのループについてコンデンサ20を充電する焦電素子16の電荷測定値は、温度T1についてヒステリシスループが正の縦軸と交差する電荷Q1であり、温度T2についてヒステリシスループが正の縦軸と交差する電荷Q2である。サンプリングコンデンサ20は、チョッパ12によってウィンドウが開くときのみ焦電素子16からの電荷を蓄積する。この設計での実効焦電係数pは、
p=(1/A)[Q1−Q2]/[T1−T2]
で与えられる。
【0007】
公知の代替設計では、温度T1およびT2について、焦電素子16によって蓄積された電荷間の小信号レベルの容量(すなわち、分極した、または分極していない強誘電材料のQ−V曲線の局所的な傾きの変化)を測定し、次いでそれらを比較する。図4に、チョッパ12、赤外吸収体14、焦電素子16、および増幅器22を含むセンサシステム26の概略ブロック図を示す。(図示しない)バイアス源から焦電素子16に小さなバイアス電圧を印加することがあり、容量メータ28を使用して、温度T1およびT2についてのヒステリシスループ上の位置間で、このバイアス電圧に対する相対的な容量の変化を測定する。この設計で、焦電素子16に小さなバイアス電圧を印加しても、動作モードは依然として受動的である。というのは、この小さなバイアス電圧は、強誘電材料の分極状態をまったく変化させず、単に容量の変化によって測定される局所的な誘電率の変化が測定されるからである。実効焦電係数pは、
p=[(Vmns/A)](ΔC/ΔT)
で与えられる。
【0008】
この検出方式では明らかに、ヒステリシスループの小さな部分しか使用しておらず、したがって、これらのセンサの、信号とノイズを区別する能力は制限される。上記で論じた技術のいずれも、強誘電材料が、その2つの自発的な分極状態Ps(+または−)の1つのままであるか、あるいは、それらの何らかの中間状態にあるかの状態に依存する。温度変化間で焦電素子16からの電力を測定する能力により、このシステムの感度が得られる。先行技術のセンサでは、信号対ノイズ比が比較的小さいので、この信号対ノイズ比がシステム全体の感度を確定する。チョッパ12および増幅器22などのシステムコンポーネントを堅固で比較的高価なものにしても、ノイズに対して信号を大きくすることはできず、単に、信号がさらに劣化するのを防ぐだけである。
【0009】
図2に示すように、強誘電材料中の分極の大きさおよび方向は、ヒステリシスループによって識別可能である。材料の分極の向きは、この材料に逆の外部電界を印加することによって変化させることができる。材料中の電気双極子により分極の向きが識別されるが、電気双極子は、外部電界が印加されると変化し、適切な回路配置ではヒステリシスループが生成される。自発分極は概ね温度に依存するので、強誘電材料は、温度を検出するのに焦電効果を利用することができる。
【0010】
ヒステリシスループの任意のエリアは、それが飽和したヒステリシスエリア全体であるか、単に全ループ中のどこかの動作領域であるかにかかわらず、特定の励起状態についての所与の温度における材料の原子格子構造を構成する双極子の一部または全部の分極状態を変化させるのに必要とされるスイッチングエネルギーを表す。強誘電材料に入射する放射が吸収される場合、この放射が変化すると温度が変化し、そのため、関連するループの面積が変化する。図2に、特定の焦電材料について、第1の温度T1および第2の温度T2における2つの電荷−電圧ヒステリシスループを示す。物理的な寸法に無関係にグラフにすると、水平軸は、外部的に印加される交流電界の大きさを示し、垂直軸は、電荷密度の形で分極を示す。強誘電材料の電荷−電圧ヒステリシスループの面積は、エネルギーの次元を有し、そのループ面積は、強誘電材料の温度の1次関数である。分極の大きさは、所与の電界について、焦電材料の温度の変化に応じて変化する。図2の2つのヒステリシスループを注意深く検討すると、異なる2つの温度T1およびT2(T1<T2)について、ループ内の面積が異なることが示されよう。その結果、主要ループ内のどこかの面積の変化の電気測定値は、材料の温度、したがって入射する赤外放射の変化に対応する電気信号になる。この効果は、焦電材料の分極状態が切り替わるために動的な性質のものであり、したがって、入射する放射を測定するときには、シーンに対して各ウィンドウを開く前に、放射を遮断して強誘電自発分極を基準とすることが必要とされる。
【0011】
焦電技術におけるより最近の発展が、1999年2月1日出願の米国特許第6,294,784 B1号および1999年12月3日出願の米国特許第6,339,221 B1号に教示されている。これらの特許をともに参照により本明細書に組み込む。これらの特許は、先に述べた従来方式の「受動」モードではなく、「能動」動作モードを開示している。この能動モードでは、個々の素子は、その正分極状態と負分極状態を切替えるために、大きな電気変位切替え電流を得るのに十分な電圧レベルの外部電圧によって駆動される。
【0012】
能動モードでは、分極状態を切替えるたびに、
Qs=Pr*A
に等しい電荷Qsが、この外部電力源から供給されることになる。先に参照した特許で教示されているように、給電された電荷の量を、図6の電荷増幅器/積分器48によって測定し、整流し、積分し、増幅すると、あらかじめ設定された時間τについて蓄積される総電荷は(増幅率を除いて)、
Qtotal=(2*Qs)*f*τ
になる。外部電力源の周波数fと時間の積(f*τ)は、切替え数Nに等しい。分極状態は温度によって決まるので、Qtotalは、温度の1次関数である。各画素ごとの出力信号は、基準Qrefと、時間間隔τ後に取得されたQtotalとの差である。ただし、τはチョッパが開いている継続時間である。
【0013】
分極状態は複数回サンプリングされるので、焦電材料の実効感度はN倍に高められ、信号対雑音比により、ランダムノイズは、1/(f*τ)1/2のノイズ成分減少率で平均化される。遺憾ながら、信号出力電圧Voが飽和しないように、積分または出力用のコンデンサ52および58は、時間τ中に加算される総電荷を処理するのに十分な大きさにしなければならない。そのため、コンデンサ52の容量は、Nと、焦電素子34の固有容量との積よりも大きくしなければならない。十分な容量の出力コンデンサを使用すると、チップ上にこのコンデンサを配置しにくくなり、焦点アレイおよび支持回路が所望のものよりも大きくなる。
【0014】
材料の感度は、焦電係数pとして、
p=dPs/dT
で表されるので、感度を向上させるのに必要とされる基準温度は、図1に最もよく示されており、自発分極Psが急激に変化するところ、またはその付近に位置し、その温度範囲は狭い。このような温度は、材料に固有なものであり、キュリー温度Tcとも称する。キュリー温度は慣行的に、温度の関数としての逆誘電率のグラフから得られ、ゼロの逆誘電率に対する高温外挿点であり、これは、非強誘電性から強誘電性への材料中の相転移を表す。従来方式では、基準温度Trefは室温であり、したがってキュリー温度Tcが、室温からいくらか離れている場合、分極の変化を示す図1の線の傾きが小さくなり、そのため感度および焦電係数pが減少し、望ましくない。
【0015】
焦電体技術分野では、基準温度として用いられる場合に、様々な応用例の支持構造に適合し、焦電係数pによって所望の感度を満足し得るキュリー温度を有する様々な材料が知られている。ISAF“92:Proceedings of the Eighth IEEE International Symposium on applications of ferroelectrics(強誘電体の第8のIEEE国際シンポジュームの会報))」、1頁から公知の材料の表を参照して以下に示す。
【0016】
【表1】
【0017】
【表2】
遺憾ながら、キュリー温度が約22℃の室温に近い公知の材料はほとんどない。さらに、上記で列挙した材料は、高温処理を必要とし、コストのかかる製造工程を必要とする。BSTなど一部の材料は成長させるのが難しく、一部の材料は、環境に悪影響を及ぼす鉛を含み、さらに他の材料は、高価なスカンジウムを含む。
【0018】
図5を参照すると、赤外焦電法は、温度感受性の強誘電材料を必要とするので、画素の熱分離のレベルが高いことを表す熱時定数が望ましい。熱の移動、または画素間のクロストーク、あるいはシリコン基板への熱伝導または熱短絡は、熱時定数を下げるようにしか作用せず、したがって、感度および信号対雑音比が小さくなる。従来方式では、エアギャップまたはエアブリッジにより、素子と基板を連結する最低限の熱分離器またはSOG(スピン・オン・ガラス)だけで、シリコン基板と画素の間で必要な熱分離が得られる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
遺憾ながら、エアブリッジの考え方では、シリコン製造工程およびセラミック工程がともに必要とされる。さらに、この製造工程は、コストがかかり、良品アレイの歩留まりが低く、非効率な単一ユニットハンドリングを必要とし、ウエハレベルで製作することができない。さらに、この素子は、サイズを小さくすることが制限される。サイズの減少は、典型的なFPA(焦点面アレイ)が一般に、512×512の画素アレイを有し得ることを考慮するとますます重要になる。
【課題を解決するための手段】
【0020】
強誘電/焦電センサは、このセンサの強誘電シーン素子の電荷出力を、同じ温度について特定の時間にわたってこのシーン素子のヒステリシスループ出力を複数回測定することによって求める技術を利用する。この強誘電シーン素子に外部交流信号を印加して、この素子からのヒステリシスループ出力が分極を切替える。出力コンデンサと演算増幅器の組合せなどの電荷積分回路を使用して、シーン素子からの電荷を測定する。好ましくは、このシーン素子の強誘電体は、経済的かつ応答性のよいSBT(ストロンチウムビスマスタンタル酸化物)またはその誘導体でできており、これを上部電極と下部電極の間に直接配設する。このセンサの周波数は外部交流信号によって生成され、その周波数特性のために、製造が難しい従来方式のエアブリッジによってこの素子をシリコン基板から熱分離する必要がないことがあり、その代わりに好ましくは、SOG(スピン・オン・ガラス)その他の適切な低熱伝導材料によって熱分離する。出力コンデンサ内で過剰な電荷が蓄積されることによってセンサの出力信号電圧が飽和しないように、好ましくはこのセンサは、シーン素子に電気的に並列に構成された基準強誘電素子を有する。交流信号の電圧が負のとき、出力コンデンサは、基準素子を通して電流を流すことによって放電し、それによって基準素子の分極を問い合わせ、これを各サイクルにシーン素子の分極と比較し、このシーン素子の分極から減算する。設定した時間にわたって各サイクルに測定した分極の差を積分増幅器によって加算して、信号出力電圧が得られる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の目的、特徴、および利点は、雑音対信号比および感度に優れ、そのため、焦電体用途向けに以前には考慮されなかった強誘電材料を使用し得る焦電センサを含む。このような強誘電材料は、室温に近いか、または室温よりもかなり高いキュリー温度を有し、比較的安価であり、処理するのに高温を必要とせず、環境に悪影響を及ぼさず、堅固である。
【0022】
さらに、本発明により、シリコン基板からのアレイ素子の熱分離の依存性が小さくなり、したがって、従来方式のエアブリッジが不要になることがあり、そのため、製造工程のステップが少なくなり、許容可能なアレイの歩留まりが高くなることによってコストが下がり、ウエハレベルの製作が可能になり、素子サイズが小さくなる。
【0023】
さらに、シーン素子および基準素子を、対応する回路とともに使用すると、必要な出力容量が小さくなり、そのため、チップ上に出力コンデンサを配置することができ、それによって、アレイおよび支持回路の全体的なサイズが小さくなり、サイクルの平均化回数を増やすことができ、そのため、信号対雑音比が大きくなり、信号出力電圧が飽和しなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下の説明および添付の図面の中で、本発明の現時点で好ましい実施形態を開示する。
能動型焦電センサシステムを対象とする好ましい実施形態の以下の説明は、本質的に単なる例であり、いかなる形でも本発明あるいはその応用例またはその利用法を限定するものではない。
【0025】
上記で論じた従来方式の受動型焦電センサ設計では、問い合わせ中にPsをその初期状態から切替えないので、ヒステリシスループによって特定される強誘電材料の大きなエネルギー積は一般に、当業界では完全には利用されていないことが、より厳密な分析から示唆される。完全に分極した状態での残余の分極Prと、このような残余の分極をすべて取り除くのに必要とされる抗電界Ecとの積は一般に、エネルギー積PrEcとして識別される。このPrEc積は、エネルギー密度の次元を有し、このような材料の「硬度」またはエネルギー蓄積能力を比較する働きをする。したがって、本発明ではひとつには、Ps切替えを利用することによって、所与の温度においてヒステリシスループ全体を多数回横断し、それによって信号対雑音比が高められた状態で静的測定を行うことを提案する。このPsのレイル・ツウ・レイル切替えは、上記で論じた従来の受動または受動に近い技術における極めて弱いレベルと異なり、かなりの電力レベルで強誘電材料を能動動作させることと等価である。センサの温度が変化すると、ヒステリシスループ内の面積が変化し、このセンサ設計の能動的な性質のために、この変化を迅速に監視することができる。
【0026】
ヒステリシスループ内の面積は、1励起サイクル当たりに放散されるエネルギーを表す。そのため、焦電性または強誘電性の材料を連続的に交流励起すると、ある種の平衡温度レベルでエネルギーが放散される。ただし、このレベルの放散は、センサに加えられ、またセンサから引き出される外部の熱に(シーンのエネルギー)よって連続的に変調され、平衡レベルにおけるこの変化が、センサシステムの電気出力に必要とされるセンサシステムの各シーン画素における温度変化を表す。異なる2つの温度T1およびT2に関連するループ面積の差は、強誘電性エネルギー蓄積装置によって送達される、またはこの蓄積装置のところで受け取られる蓄積された分極エネルギーを表す。この分極依存性のエネルギー変化は、循環V電界励起の結果の2つの放散エネルギーレベルの差である。本発明のセンサ回路の能動的な性質によって、この小さなエネルギー変化の測定精度は、測定の頻度、すなわち、帯域制限、信号加算、およびノイズ平均化によって高められる。
【0027】
本明細書で説明する発明では、焦電材料の原子構造内に蓄積される温度感受性エネルギーのすべてを完全に利用する。これは、飽和した主要ヒステリシスループ全体を能動的に横断する交流励起によって行われる。この搬送周波数により、時間τまたは1つのチョッパウィンドウ当たり信号を多数回加算することができる。本質的には、これは、外部交流励起を利用して、焦電材料の格子内に蓄積されたすべてのエネルギーを強く刺激するという点で、「能動」増幅プロセスであり、次に、この高レベルの電力は、入射する放射の小さな赤外摂動信号によって制御される。
【0028】
図6は、本発明の実施形態による焦電センサシステム32の概略図である。焦電センサシステム32は、従来の受動型焦電システムでは使用することができない強誘電層36の材料を使用して、上記で論じた能動型焦電素子励起を実現する。システム32は、2つの電極または容量性プレート38と40に挟まれた強誘電材料のブロックまたは層36を含む強誘電シーン素子34を備える。交流電流源42は、所定の周波数で電極38に交流電位を印加する。(図7に示す)チョッパ66は、シャッタが開いているときにシーンからの放射エネルギーを選択的にブロック36に当て、シャッタが閉じているときに強誘電シーン素子34に基準温度を所定の周波数で提供することができる。供給源42からの交流電位によって生成された電荷、および入射する放射から強誘電ブロック36によって生成された電荷は、電極40によって集められる。好ましくは、供給源42からの電位は、この電荷が、ループ全体からブロック36のヒステリシスループ出力を駆動するのに十分に大きい。焦電素子34に加えられる温度は、チョッパ66の動作に応答して変化するので、それに従ってヒステリシスループの形状および面積が、上記の考察と一致して変化する。
【0029】
電極40によって収集された出力電圧は、第1の整流ダイオード検出器44および第2の整流ダイオード検出器46に印加される。供給源42からの電位が正のとき、検出器44が電荷積分システム47に導通し、供給源42からの電位が負のとき、検出器46がシステム47に導通する。検出器44が導通すると、焦電素子34からの電荷は、増幅器50および積分または出力用のコンデンサ52を含むシステム47の積分器48に印加される。検出器44が導通するたびに、電荷がコンデンサ52に追加され、増幅器50によって増幅される。システム47の第2の積分器54は、増幅器56および積分コンデンサ58を有し、積分コンデンサ58は、検出器46が導通するときに電荷を蓄積し、そのため、これら2つの積分器48または54の組合せが連続して電荷を蓄積する。
【0030】
システム47の加算器60は、積分器48および54から電荷を連続的に加算して、加算された電荷出力Voを提供する。加算器60の出力はさらに、(図示しない)処理回路に送られて、画像の1画素を示す信号が得られる。(図示しない)リセット装置は、適用される場合には、チョッパ66の周波数と同期して加算器60をリセットすることになる。したがって、1つの温度についての特定の時間フレームについて、加算器60からの出力は、複数のループの振れにわたって蓄積された電荷である。すなわち、交流源42の周波数は、チョッパ66が閉じるたびに、温度T1についてのヒステリシスループを通じてシーン素子34によって生成された電荷が複数回測定されるように設定される。同様に、チョッパ66が開いているとき、温度T2についてのヒステリシスループを通じてシーン素子34によって生成された電荷が同じ回数測定される。一実施形態では、例えば、供給源42からの交流周波数は、1.5kHzに設定され、チョッパ周期は、15フレーム/秒に設定され、そのため、1つのチョッパウィンドウ当たりヒステリシスループを通じて100個の分極サイクルが得られる。加算器60は、これら2つの値を比較し得るように各時間τ後にゼロにされる。したがって、個々のチョッパ時間ウィンドウについてのヒステリシス区域全体で電荷が測定されるだけでなく、この時間全体にわたって複数回測定され、先行技術のところで先に述べた受動センサと比べて信号対雑音レベルが大きく増加する。
【0031】
供給源42からの交流信号の大きさは、焦電素子34からの利用可能な電荷全体が対象にされるように、レイル・ツウ・レイルからのヒステリシスループを駆動するように選択される。こうすると、各交流サイクルごとに、素子34の分極が完全に反転する。あるいは、交流信号の大きさは、ヒステリシスループの一部のみを対象とするように小さくし得るが、特定の時間フレームの間の複数回の電荷測定により依然として、当技術分野で周知の受動型焦電センサシステムと比べて信号がかなり平均化される。ヒステリシスループの一部のみを対象とすることによって、シーン素子34は、部分的にしか分極が反転しない。素子34に、交流信号に加えて直流バイアスを印加して、ヒステリシスループの異なる適用範囲を画定し得ることに留意されたい。交流信号の大きさがループの保持強度よりも大きいと焦電素子30を破壊することになるが、それよりも大きくならない限り、本発明の複数回信号平均化技術により、信号対雑音比が向上することになる。
【0032】
図7に、本発明による能動型焦電センサシステム64のブロック図を示し、上記で説明した本発明の動作を示す。チョッパ66により、上記で論じたやり方で、強誘電シーン素子70の一部である赤外吸収体68に放射が間欠的に加えられる。さらに、一定の大きさの周波数信号が、供給源42からシーン素子70に印加される。シーン素子70のヒステリシスループの全レイル・ツウ・レイル飽和についての電荷Q(t)が、上記システム47の積分器48および54を全体的に表すfcバンドパス演算増幅器及び積分器72に印加される。この積分器からの変調された搬送電圧信号は、上記の検出器44および46を表す全波整流器及び復調器74に、次いで、ローパスフィルタ76に印加され、それによって電気出力信号Voが得られる。
【0033】
図8は、本発明による焦電センサシステム80の概略図である。焦電センサシステム80は、上記で論じたセンサシステム32の電荷の能動増幅によって、センサのところで生成されるエネルギーをすべて利用する実施形態である。システム80は、シーン素子からの電荷を蓄積するコンデンサCFを含み、この電荷は、JFET演算増幅器TLO84CNなどの演算増幅器82によって増幅される。1対のダイオード検出器84は、交流供給源86によって生成されるこの素子からの電荷を検出する。演算増幅器または加算器88は、積分された電荷を加算する。センサシステム80は、交流信号の正負の成分について同じ電荷蓄積を行い、それによって、ヒステリシスループ全体にわたって電荷が複数回加算される。
【0034】
上記の検討では、焦電センサ内で信号対雑音比を向上させるために信号平均化を行う。さらに、センサ回路は多数の抵抗器を使用しないので、センサのジョンソンノイズ(Johnson noise)はさらに減少する。本発明の技術は、強誘電材料および焦電効果は利用しないが、ヒステリシスループ出力を示す他のタイプのセンサ、検出器、および装置に適用される。特に、ある種の材料が入力信号に対してヒステリシスループ応答を示す場合、これらのタイプのシステムに本発明の複数回信号平均化技術が適用可能なことがある。別のタイプのセンサは、歪みなどの外部刺激に対してヒステリシスタイプのループ応答を示す磁性タイプの材料を含むことがある。
【0035】
焦電センサの設計では、熱回路および電気回路をともに考慮することが必要とされる。図5に、従来の熱回路構造を示し、図10に、本発明の熱回路構造を示す。良好な信号対雑音比を得るために、熱時定数は、電気時定数よりもかなり小さくなければならない。
【0036】
図5を参照すると、焦電素子89の従来型焦電層90は、先に述べ、かつ表に記した材料のいずれか1つでできている。層90は、上部容量性プレート92と下部容量性プレート94の間に配設される。赤外吸収体96は、選択された光線98を吸収し、かつ焦電層90に熱を転送するために上部プレート92の上に配設される。シリコン基板100は、下に離して置かれ、素子アレイ全体を支持し、概ね無限ヒートシンクとして作用する。この空間は、従来方式ではエアブリッジ102と称し、素子89から信号電圧出力Voに電気的に接続すると同時に、焦電素子89の高レベルの熱分離を維持するという相反する要求を部分的に両立させる。横方向の熱伝導を最小限に抑えるために、素子間の金属相互接続部104を素子の面積よりもはるかに小さな面積に制限する。各素子89は、溶接可能な金属被覆によって下部プレート94と入力パッド108の間に付着する垂直熱絶縁体またはハンダ結合部106によって、シリコン基板に支持され、電気的に固定される。遺憾ながら、エアブリッジ102を使用すると、背景技術の項で先に述べた多くの製造上の難点が生じる。信号平均化による信号対雑音比の向上と同様に、強誘電素子材料の感度pは、以下のようにN(サイクル数)倍に向上すなわち増加する。
【0037】
p(実効)=N*p(従来の)
この実効感度の向上により、以前には焦電応用例には考慮されなかった強誘電材料を使用することができる。これらの強誘電材料の多くは、先に述べた好ましい基準温度である室温よりもかなり高いキュリー温度を有する。例えば、強誘電材料としてのSBT(ストロンチウムビスマスタンタル酸化物)の感度pは0.03μC/cm2Kであり、この値は従来方式では低すぎ、SBTのキュリー温度335℃は、基準温度として動作するには高すぎる。この感度をNサイクル倍に増加させると、図1の分極−温度曲線上で基準温度をこのキュリー温度から下方に移すことができる。さらに、好ましい形態のSBTは、SBTの焦電効果が実質的に線形である動作温度の範囲が広い薄膜である。他の好ましい強誘電材料およびSBTのドープは、バリウムビスマスタンタル酸化物およびランタンビスマスタンタル酸化物を含む。SBTの誘導体は、所与の基準温度における分極−時間曲線の傾きを変化させて、信号対雑音比および感度を向上させる効果を有し得る。
【0038】
本発明の図10を参照すると、「能動型」焦電センサおよび関連する画素切換えを用いることにより、極めて大きな電気時定数が得られる。これにより、受動型焦電センサには使用し得ないより大きな熱時定数を許容し得る。例えば、赤外放射110は、吸収体112に当たり、吸収体112は、素子116の白金容量性プレート114を介して熱を伝え、それによって強誘電体層118が分極する。好ましくは白金製の下部容量性プレート120は、先に述べたように、電荷積分システムに電流を流す。素子116は、容量性プレート120とシリコン基板122の間に付着した熱障壁124の連続的な層または被覆によってシリコン基板122から熱的に分離される。好ましくは、熱障壁124は、SOG(スピン・オン・ガラス)またはYSZ(イットリア安定化ジルコニア)である。例えば、SOG障壁124の熱時定数を計算する際に、熱時定数の式は、
τther=t2/K
である。ただし、tは厚さであり、Kは熱拡散率である。t=2μm、二酸化シリコンの密度を87%、熱伝導率を0.155W/m−k、(バルクの二酸化シリコンの)熱容量を44.77J/mol−Kと仮定すると、熱時定数は44μsに等しい。これを、例えば10MHzの画素切換えと比較すると、垂直方向の電気時定数は、熱時定数よりも400倍大きくなる。
【0039】
この簡単な解析から、(図5に示す)微細加工したエアブリッジ102その他の任意の膜タイプ構造のいずれも不要とするためには、低密度、低熱伝導率の(Dow社のXLKなどの)SOG熱障壁124上に構築された典型的な10μm×10μmの強誘電素子116で十分であることが明らかである。これは、「能動型」焦電センサを、少なくとも10MHzの周波数の外部交流電力源/信号で使用することを仮定している。
【0040】
図6および図8の、または米国特許第6,339,221号で教示されている「能動型」システムの能動型焦電センサシステム32および80を能動型複式素子焦電センサシステム130に改変して、信号電圧出力Voの飽和を防止し得る。システム130は、シーン素子134と電気的に並列に構成された基準素子132を有する。基準素子132は、固有容量Cf2を有し、一般に暗所で保持される。シーン素子132は、固有容量Cf1を有し、一般にシーン温度に曝される。交流電圧源136は、基準素子132およびシーン素子134と直列に構成され、そのため、外部的に印加される電圧が正のとき、シーン素子134およびダイオード検出器140を通って流れる電流は、電荷積分システム138の出力または蓄積用のコンデンサ137に吸い上げられる。同様に、同じサイクル中に外部的に印加される電圧が負のとき、電流は、出力コンデンサ136から、ダイオード検出器142を介して基準素子132に逆に流れる。この戻り電流は、基準素子132の分極を問い合わせる働きをする。電荷積分システム138の増幅器または加算器144は、1つのサイクルから次のサイクルへの分極の差を求め、所与の時間にわたってこれらの差を加算して、信号対雑音比を最適化する。
【0041】
図11〜図13に、図9の能動型焦電センサ130のシミュレーション結果を示す。図11では、シーン素子134のCf1および基準素子132のCf2は同じ温度下にあり、いずれも同じ自発分極Ps=9.25μC/cm2を有する。そのため、この場合にはサイクル数が100(N=100)よりも多い場合でさえ出力電圧は形成されない。
【0042】
図12を参照すると、シーン素子134の自発分極は、Ps1=9.25μC/cm2であり、基準素子132の自発分極を問い合わせると、Ps2=9.125μC/cm2になる。この分極の差は、素子132と134の間の7℃の温度差に相当する。加算器144は、全部で100個の差を加算して、約200mVの信号出力電圧Voを生成する。
【0043】
図13を参照すると、分極状態は図12と同じままであり、そのため、温度差も同じである。ただし、時間τまたはウィンドウは、10倍(すなわち、2msから20msに)増加し、これは、N=100からN=1000へのサイクルの増加に相当する。この解析によれば、信号出力電圧Voは、それがVDDに達しない限り飽和しないことが明らかである。加算器144は、τ=20ミリ秒にわたって全部で1000個の差を加算して、約2,300mVの信号出力電圧を生成する。これは10倍よりも大きく、そのため、N=100の図12と比べて信号対雑音比が向上することを意味する。
【0044】
本明細書で開示した本発明の形態は、現時点で好ましい実施形態であるが、他の多くの形態が可能である。本明細書では、本発明のすべての可能な等価な形態または派生物を記載することを制限するものではない。本明細書で用いる用語は、限定するのではなく単に説明するためのものであり、本発明の趣旨または範囲を逸脱することなく様々な変更を加えることができることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】垂直軸を自発分極とし、水平軸を温度としたグラフである。
【図2】垂直軸を電荷とし、水平軸を電位としたグラフであり、温度T1およびT2についての強誘電素子のヒステリシスループ応答を示す。
【図3】公知の受動型焦電センサシステムの概略ブロック図である。
【図4】公知の別の受動型焦電センサシステムの概略ブロック図である。
【図5】エアブリッジによってシリコン基板から熱的に分離した公知の焦電素子の断面図である。
【図6】本発明の実施形態による、SBTまたはその誘導体からできている強誘電層を有する能動型焦電センサシステムの概略図である。
【図7】本発明の別の能動型焦電センサシステムのブロック図である。
【図8】本発明による別の能動型焦電センサシステムの概略図である。
【図9】本発明による改変された能動型焦電センサシステムの概略図である。
【図10】図5に示す従来型エアブリッジを用いずに示す能動型焦電センサシステムの素子の断面図である。
【図11】垂直軸を出力電圧とし、水平軸を時間とした、図9の改変された能動型焦電センサによって生成されたグラフであり、シーン素子の温度および分極は、基準素子の温度および分極に等しく、分極は9.25μC/cm2であり、サイクル数Nは100である。
【図12】シーン素子と基準素子の温度が7℃だけ異なり、基準素子の分極が9.125μC/cm2に減少している点を除き、図11に類似のグラフである。
【図13】サイクル数が1000に増加している点を除き、図12に類似のグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の周波数で交流電圧を生成する交流電圧源と、
前記交流電圧に応答し、焦電シーン素子のヒステリシスループ出力の少なくとも一部にわたって前記シーン素子を駆動する前記交流電圧に応答してヒステリシスループ電荷出力を生成し、前記交流電圧により、前記交流電圧の正負の変化に応答して前記シーン素子内で双極子の分極反転が生じるように構築され配置された、焦電シーン素子と、
前記シーン素子からの前記電荷出力に応答して、前記ヒステリシスループ出力によって画定される前記ヒステリシスループ内の面積を求め、前記シーン素子からの前記電荷出力を示す信号を生成する電荷積分システムと、
SBT(ストロンチウムビスマスタンタル酸化物)、バリウムビスマスタンタル酸化物、およびランタンビスマスタンタル酸化物からなる群から選択される、前記シーン素子の強誘電層と、
を備える焦電センサシステム。
【請求項2】
前記システムは、赤外画像化システムであり、前記シーン素子は、シーンから前記シーン素子に向かう赤外放射を吸収する赤外吸収体を有する、請求項1に記載の焦電センサシステム。
【請求項3】
前記強誘電層は、前記シーン素子の第1の容量性プレートと第2の容量性プレートの間に配設され、
前記交流電圧は、前記交流電圧により、前記交流電圧の正負の変化に応答して前記焦電シーン素子内で双極子の分極反転が生じるように前記第1の容量性プレートに印加され、
前記電荷積分システムは、前記シーン素子の前記第2の容量性プレートからの前記電荷出力に応答する、請求項1に記載の焦電センサシステム。
【請求項4】
熱ヒートシンクとして作用するシリコン基板構造と、
前記第2容量性プレートと前記シリコン基板の間に直接付着した連続熱障壁被覆とを備え、前記熱障壁はエアブリッジを含まない、請求項3に記載の焦電センサシステム。
【請求項5】
前記シーン素子に電気的に並列に構成された強誘電基準素子を備え、
前記基準素子は、前記交流電圧に応答し、前記基準素子のヒステリシスループ出力の少なくとも一部にわたって前記基準素子を駆動する前記交流電圧に応答してヒステリシスループ電荷出力を生成し、前記素子は、前記交流電圧により、前記交流電圧の正負の変化に応答して前記基準素子内で双極子の分極反転が生じるように構築され配置され、
前記電荷積分システムは、前記基準素子からの前記電荷出力に応答して、前記基準素子の前記ヒステリシスループ出力によって画定される前記基準素子の前記ヒステリシスループ出力内の面積を求め、前記シーン素子と基準素子の前記ヒステリシスループ出力の差を示す信号電圧出力を生成する、請求項1に記載の焦電センサシステム。
【請求項6】
前記電荷積分システムの演算増幅器を備え、
前記電荷積分システムの前記信号電圧出力は、前記ヒステリシスループ出力の差を複数回加算したものを示す、請求項5に記載の焦電センサシステム。
【請求項7】
前記複数の加算される差の数は、シーン測定の所定の時間と前記外部交流信号の周波数の積に等しい、請求項6に記載の焦電センサシステム。
【請求項8】
前記電荷積分システムは、前記外部交流信号電圧が正のとき、前記シーン素子から電流を受け取り、前記外部交流信号電圧が負のとき、前記基準素子に電流を戻して、前記基準分極の問い合わせを行う、請求項7に記載の焦電センサシステム。
【請求項9】
前記電荷積分システムの出力コンデンサと、
前記出力コンデンサに並列に構成され、前記シーン素子と基準素子の前記ヒステリシスループ出力の差を複数回加算する加算器として働く前記電荷積分システムの演算増幅器とを備え、前記加算された差は前記信号電圧出力を示し、前記焦電センサシステムはさらに、
前記外部交流電圧が正のとき、前記シーン素子から前記電荷積分システムに電流を流して、前記出力コンデンサを充電するシーンダイオード検出器と、
前記外部交流電圧が負のとき、前記電荷積分システムから前記基準素子に電流を流して、前記出力コンデンサを放電させ、前記基準素子の分極を問い合わせる基準ダイオードとを備える、請求項5に記載の焦電センサシステム。
【請求項10】
所定の周波数で交流電圧を生成する交流電圧源と、
前記交流電圧に応答する焦電シーン素子とを備え、前記シーン素子は、前記シーン素子のヒステリシスループ出力の少なくとも一部にわたって前記シーン素子を駆動する前記交流電圧に応答してヒステリシスループ電荷出力を生成し、前記シーン素子は、第1の容量性プレートと第2の容量性プレートの間に配設された強誘電層を有し、前記交流電圧は、前記交流電圧により、前記交流電圧の正負の変化に応答して前記シーン素子内で双極子の分極反転が生じるように前記第1の容量性プレートに印加され、前記焦電センサシステムはさらに、
前記シーン素子の前記第2の容量性プレートからの前記電荷出力に応答する電荷積分システムを備え、前記積分システムは、前記ヒステリシスループ出力によって画定される前記ヒステリシスループ内の面積を求め、前記シーン素子からの前記電荷出力を示す信号を生成し、前記焦電センサシステムはさらに、
熱ヒートシンクとして作用するシリコン基板構造と、
前記第2容量性プレートと前記シリコン基板の間に直接被覆された連続熱障壁と、を備え、前記熱障壁はエアブリッジを含まない、
焦電センサシステム。
【請求項11】
前記熱障壁は、SOG(スピン・オン・ガラス)である、請求項10に記載の焦電センサシステム。
【請求項12】
前記熱障壁は、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)である、請求項10に記載の焦電センサシステム。
【請求項13】
前記システムは、赤外画像化システムであり、前記シーン素子は、シーンから前記シーン素子に向かう赤外放射を吸収する赤外吸収体を有する、請求項10に記載の焦電センサシステム。
【請求項14】
前記シーン素子の前記強誘電層は、SBT(ストロンチウムビスマスタンタル酸化物)、バリウムビスマスタンタル酸化物、およびランタンビスマスタンタル酸化物からなる群から選択される、請求項10に記載の焦電センサシステム。
【請求項15】
前記シーン素子に電気的に並列に構成された強誘電基準素子を備え、
前記基準素子は、前記交流電圧に応答し、前記基準素子のヒステリシスループ出力の少なくとも一部にわたって前記基準素子を駆動する前記交流電圧に応答してヒステリシスループ電荷出力を生成し、前記素子は、前記交流電圧により、前記交流電圧の正負の変化に応答して前記基準素子内で双極子の分極反転が生じるように構築され配置され、
前記電荷積分システムは、前記基準素子からの前記電荷出力に応答して、前記基準素子の前記ヒステリシスループ出力によって画定される前記基準素子の前記ヒステリシスループ出力内の面積を求め、前記シーン素子と基準素子の前記ヒステリシスループ出力の差を示す信号電圧出力を生成する、請求項10に記載の焦電センサシステム。
【請求項16】
前記電荷積分システムの演算増幅器を備え、
前記電荷積分システムの前記信号電圧出力は、前記ヒステリシスループ出力の差を複数回加算したものを示す、請求項15に記載の焦電センサシステム。
【請求項17】
前記複数の加算される差の数は、シーン測定の所定の時間と前記外部交流信号の周波数の積に等しい、請求項16に記載の焦電センサシステム。
【請求項18】
前記電荷積分システムは、前記外部交流信号電圧が正のとき、前記シーン素子から電流を受け取り、前記外部交流信号電圧が負のとき、前記基準素子に電流を戻して、前記基準分極の問い合わせを行う、請求項17に記載の焦電センサシステム。
【請求項19】
前記電荷積分システムの出力コンデンサと、
前記出力コンデンサに並列に構成され、前記シーン素子と基準素子の前記ヒステリシスループ出力の差を複数回加算する加算器として働く、前記電荷積分システムの演算増幅器とを備え、前記加算された差は前記信号電圧出力を示し、前記焦電センサシステムはさらに、
前記外部交流電圧が正のとき、前記シーン素子から前記電荷積分システムに電流を流して、前記出力コンデンサを充電するシーンダイオード検出器と、
前記外部交流電圧が負のとき、前記電荷積分システムから前記基準素子に電流を流して、前記出力コンデンサを放電させ、前記基準素子の分極を問い合わせる基準ダイオードとを備える、請求項15に記載の焦電センサシステム。
【請求項20】
所定の周波数で交流電圧を生成する交流電圧源と、
焦電シーン素子と、
前記焦電シーン素子に電気的に並列に構成された強誘電基準素子とを備え、
前記シーン素子および基準素子は、前記交流電圧に応答し、前記それぞれの素子のヒステリシスループ出力の少なくとも一部にわたって前記素子を駆動する前記交流電圧に応答してヒステリシスループ電荷出力を生成し、前記交流電圧により、前記交流電圧の正負の変化に応答して前記素子内で双極子の分極反転が生じるように構築され配置され、前記焦電センサシステムはさらに、
前記シーン素子および基準素子からの前記電荷出力に応答して、前記ヒステリシスループ出力によって画定される前記ヒステリシスループ内の面積を求め、前記素子の前記ヒステリシスループ出力の差を示す信号電圧出力を生成する電荷積分システムと、
を備える焦電センサシステム。
【請求項21】
前記電荷積分システムの演算増幅器を備え、
前記電荷積分システムの前記信号電圧出力は、前記ヒステリシスループ出力の複数回加算される差を示す、請求項20に記載の焦電センサシステム。
【請求項22】
前記複数の加算される差の数は、シーン測定の所定の時間と前記外部交流信号の周波数の積に等しい、請求項21に記載の焦電センサシステム。
【請求項23】
前記電荷積分システムは、前記外部交流信号電圧が正のとき、前記シーン素子から電流を受け取り、前記外部交流信号電圧が負のとき、前記基準素子に電流を戻して、前記基準分極の問い合わせを行う、請求項22に記載の焦電センサシステム。
【請求項24】
前記電荷積分システムの出力コンデンサと、
前記出力コンデンサに並列に構成され、前記シーン素子と基準素子の前記ヒステリシスループ出力の差を複数回加算する加算器として働く、前記電荷積分システムの演算増幅器とを備え、前記加算された差は前記信号電圧出力を示し、前記焦電センサシステムはさらに、
前記外部交流電圧が正のとき、前記シーン素子から前記電荷積分システムに電流を流して、前記出力コンデンサを充電するシーンダイオード検出器と、
前記外部交流電圧が負のとき、前記電荷積分システムから前記基準素子に電流を流して、前記出力コンデンサを放電させ、前記基準素子の分極を問い合わせる基準ダイオードとを備える、請求項20に記載の焦電センサシステム。
【請求項25】
前記シーン素子および基準素子の強誘電層は、SBT(ストロンチウムビスマスタンタル酸化物)、バリウムビスマスタンタル酸化物、およびランタンビスマスタンタル酸化物からなる群から選択される、請求項20に記載の焦電センサシステム。
【請求項26】
前記シーン素子および基準素子はそれぞれ、第1の容量性プレートと第2の容量性プレートの間に配設された強誘電層を有し、前記交流電圧は、前記交流電圧により、前記交流電圧の正負の変化に応答して前記シーン素子および基準素子内で双極子の分極反転が生じるように前記第1の容量性プレートに印加され、前記焦電センサシステムは、
熱ヒートシンクとして作用するシリコン基板構造と、
前記シーン素子の前記第2の容量性プレートと前記シリコン基板の間に直接付着した連続熱障壁被覆とを備え、前記熱障壁はエアブリッジを含まない、請求項20に記載の焦電センサシステム。
【請求項1】
所定の周波数で交流電圧を生成する交流電圧源と、
前記交流電圧に応答し、焦電シーン素子のヒステリシスループ出力の少なくとも一部にわたって前記シーン素子を駆動する前記交流電圧に応答してヒステリシスループ電荷出力を生成し、前記交流電圧により、前記交流電圧の正負の変化に応答して前記シーン素子内で双極子の分極反転が生じるように構築され配置された、焦電シーン素子と、
前記シーン素子からの前記電荷出力に応答して、前記ヒステリシスループ出力によって画定される前記ヒステリシスループ内の面積を求め、前記シーン素子からの前記電荷出力を示す信号を生成する電荷積分システムと、
SBT(ストロンチウムビスマスタンタル酸化物)、バリウムビスマスタンタル酸化物、およびランタンビスマスタンタル酸化物からなる群から選択される、前記シーン素子の強誘電層と、
を備える焦電センサシステム。
【請求項2】
前記システムは、赤外画像化システムであり、前記シーン素子は、シーンから前記シーン素子に向かう赤外放射を吸収する赤外吸収体を有する、請求項1に記載の焦電センサシステム。
【請求項3】
前記強誘電層は、前記シーン素子の第1の容量性プレートと第2の容量性プレートの間に配設され、
前記交流電圧は、前記交流電圧により、前記交流電圧の正負の変化に応答して前記焦電シーン素子内で双極子の分極反転が生じるように前記第1の容量性プレートに印加され、
前記電荷積分システムは、前記シーン素子の前記第2の容量性プレートからの前記電荷出力に応答する、請求項1に記載の焦電センサシステム。
【請求項4】
熱ヒートシンクとして作用するシリコン基板構造と、
前記第2容量性プレートと前記シリコン基板の間に直接付着した連続熱障壁被覆とを備え、前記熱障壁はエアブリッジを含まない、請求項3に記載の焦電センサシステム。
【請求項5】
前記シーン素子に電気的に並列に構成された強誘電基準素子を備え、
前記基準素子は、前記交流電圧に応答し、前記基準素子のヒステリシスループ出力の少なくとも一部にわたって前記基準素子を駆動する前記交流電圧に応答してヒステリシスループ電荷出力を生成し、前記素子は、前記交流電圧により、前記交流電圧の正負の変化に応答して前記基準素子内で双極子の分極反転が生じるように構築され配置され、
前記電荷積分システムは、前記基準素子からの前記電荷出力に応答して、前記基準素子の前記ヒステリシスループ出力によって画定される前記基準素子の前記ヒステリシスループ出力内の面積を求め、前記シーン素子と基準素子の前記ヒステリシスループ出力の差を示す信号電圧出力を生成する、請求項1に記載の焦電センサシステム。
【請求項6】
前記電荷積分システムの演算増幅器を備え、
前記電荷積分システムの前記信号電圧出力は、前記ヒステリシスループ出力の差を複数回加算したものを示す、請求項5に記載の焦電センサシステム。
【請求項7】
前記複数の加算される差の数は、シーン測定の所定の時間と前記外部交流信号の周波数の積に等しい、請求項6に記載の焦電センサシステム。
【請求項8】
前記電荷積分システムは、前記外部交流信号電圧が正のとき、前記シーン素子から電流を受け取り、前記外部交流信号電圧が負のとき、前記基準素子に電流を戻して、前記基準分極の問い合わせを行う、請求項7に記載の焦電センサシステム。
【請求項9】
前記電荷積分システムの出力コンデンサと、
前記出力コンデンサに並列に構成され、前記シーン素子と基準素子の前記ヒステリシスループ出力の差を複数回加算する加算器として働く前記電荷積分システムの演算増幅器とを備え、前記加算された差は前記信号電圧出力を示し、前記焦電センサシステムはさらに、
前記外部交流電圧が正のとき、前記シーン素子から前記電荷積分システムに電流を流して、前記出力コンデンサを充電するシーンダイオード検出器と、
前記外部交流電圧が負のとき、前記電荷積分システムから前記基準素子に電流を流して、前記出力コンデンサを放電させ、前記基準素子の分極を問い合わせる基準ダイオードとを備える、請求項5に記載の焦電センサシステム。
【請求項10】
所定の周波数で交流電圧を生成する交流電圧源と、
前記交流電圧に応答する焦電シーン素子とを備え、前記シーン素子は、前記シーン素子のヒステリシスループ出力の少なくとも一部にわたって前記シーン素子を駆動する前記交流電圧に応答してヒステリシスループ電荷出力を生成し、前記シーン素子は、第1の容量性プレートと第2の容量性プレートの間に配設された強誘電層を有し、前記交流電圧は、前記交流電圧により、前記交流電圧の正負の変化に応答して前記シーン素子内で双極子の分極反転が生じるように前記第1の容量性プレートに印加され、前記焦電センサシステムはさらに、
前記シーン素子の前記第2の容量性プレートからの前記電荷出力に応答する電荷積分システムを備え、前記積分システムは、前記ヒステリシスループ出力によって画定される前記ヒステリシスループ内の面積を求め、前記シーン素子からの前記電荷出力を示す信号を生成し、前記焦電センサシステムはさらに、
熱ヒートシンクとして作用するシリコン基板構造と、
前記第2容量性プレートと前記シリコン基板の間に直接被覆された連続熱障壁と、を備え、前記熱障壁はエアブリッジを含まない、
焦電センサシステム。
【請求項11】
前記熱障壁は、SOG(スピン・オン・ガラス)である、請求項10に記載の焦電センサシステム。
【請求項12】
前記熱障壁は、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)である、請求項10に記載の焦電センサシステム。
【請求項13】
前記システムは、赤外画像化システムであり、前記シーン素子は、シーンから前記シーン素子に向かう赤外放射を吸収する赤外吸収体を有する、請求項10に記載の焦電センサシステム。
【請求項14】
前記シーン素子の前記強誘電層は、SBT(ストロンチウムビスマスタンタル酸化物)、バリウムビスマスタンタル酸化物、およびランタンビスマスタンタル酸化物からなる群から選択される、請求項10に記載の焦電センサシステム。
【請求項15】
前記シーン素子に電気的に並列に構成された強誘電基準素子を備え、
前記基準素子は、前記交流電圧に応答し、前記基準素子のヒステリシスループ出力の少なくとも一部にわたって前記基準素子を駆動する前記交流電圧に応答してヒステリシスループ電荷出力を生成し、前記素子は、前記交流電圧により、前記交流電圧の正負の変化に応答して前記基準素子内で双極子の分極反転が生じるように構築され配置され、
前記電荷積分システムは、前記基準素子からの前記電荷出力に応答して、前記基準素子の前記ヒステリシスループ出力によって画定される前記基準素子の前記ヒステリシスループ出力内の面積を求め、前記シーン素子と基準素子の前記ヒステリシスループ出力の差を示す信号電圧出力を生成する、請求項10に記載の焦電センサシステム。
【請求項16】
前記電荷積分システムの演算増幅器を備え、
前記電荷積分システムの前記信号電圧出力は、前記ヒステリシスループ出力の差を複数回加算したものを示す、請求項15に記載の焦電センサシステム。
【請求項17】
前記複数の加算される差の数は、シーン測定の所定の時間と前記外部交流信号の周波数の積に等しい、請求項16に記載の焦電センサシステム。
【請求項18】
前記電荷積分システムは、前記外部交流信号電圧が正のとき、前記シーン素子から電流を受け取り、前記外部交流信号電圧が負のとき、前記基準素子に電流を戻して、前記基準分極の問い合わせを行う、請求項17に記載の焦電センサシステム。
【請求項19】
前記電荷積分システムの出力コンデンサと、
前記出力コンデンサに並列に構成され、前記シーン素子と基準素子の前記ヒステリシスループ出力の差を複数回加算する加算器として働く、前記電荷積分システムの演算増幅器とを備え、前記加算された差は前記信号電圧出力を示し、前記焦電センサシステムはさらに、
前記外部交流電圧が正のとき、前記シーン素子から前記電荷積分システムに電流を流して、前記出力コンデンサを充電するシーンダイオード検出器と、
前記外部交流電圧が負のとき、前記電荷積分システムから前記基準素子に電流を流して、前記出力コンデンサを放電させ、前記基準素子の分極を問い合わせる基準ダイオードとを備える、請求項15に記載の焦電センサシステム。
【請求項20】
所定の周波数で交流電圧を生成する交流電圧源と、
焦電シーン素子と、
前記焦電シーン素子に電気的に並列に構成された強誘電基準素子とを備え、
前記シーン素子および基準素子は、前記交流電圧に応答し、前記それぞれの素子のヒステリシスループ出力の少なくとも一部にわたって前記素子を駆動する前記交流電圧に応答してヒステリシスループ電荷出力を生成し、前記交流電圧により、前記交流電圧の正負の変化に応答して前記素子内で双極子の分極反転が生じるように構築され配置され、前記焦電センサシステムはさらに、
前記シーン素子および基準素子からの前記電荷出力に応答して、前記ヒステリシスループ出力によって画定される前記ヒステリシスループ内の面積を求め、前記素子の前記ヒステリシスループ出力の差を示す信号電圧出力を生成する電荷積分システムと、
を備える焦電センサシステム。
【請求項21】
前記電荷積分システムの演算増幅器を備え、
前記電荷積分システムの前記信号電圧出力は、前記ヒステリシスループ出力の複数回加算される差を示す、請求項20に記載の焦電センサシステム。
【請求項22】
前記複数の加算される差の数は、シーン測定の所定の時間と前記外部交流信号の周波数の積に等しい、請求項21に記載の焦電センサシステム。
【請求項23】
前記電荷積分システムは、前記外部交流信号電圧が正のとき、前記シーン素子から電流を受け取り、前記外部交流信号電圧が負のとき、前記基準素子に電流を戻して、前記基準分極の問い合わせを行う、請求項22に記載の焦電センサシステム。
【請求項24】
前記電荷積分システムの出力コンデンサと、
前記出力コンデンサに並列に構成され、前記シーン素子と基準素子の前記ヒステリシスループ出力の差を複数回加算する加算器として働く、前記電荷積分システムの演算増幅器とを備え、前記加算された差は前記信号電圧出力を示し、前記焦電センサシステムはさらに、
前記外部交流電圧が正のとき、前記シーン素子から前記電荷積分システムに電流を流して、前記出力コンデンサを充電するシーンダイオード検出器と、
前記外部交流電圧が負のとき、前記電荷積分システムから前記基準素子に電流を流して、前記出力コンデンサを放電させ、前記基準素子の分極を問い合わせる基準ダイオードとを備える、請求項20に記載の焦電センサシステム。
【請求項25】
前記シーン素子および基準素子の強誘電層は、SBT(ストロンチウムビスマスタンタル酸化物)、バリウムビスマスタンタル酸化物、およびランタンビスマスタンタル酸化物からなる群から選択される、請求項20に記載の焦電センサシステム。
【請求項26】
前記シーン素子および基準素子はそれぞれ、第1の容量性プレートと第2の容量性プレートの間に配設された強誘電層を有し、前記交流電圧は、前記交流電圧により、前記交流電圧の正負の変化に応答して前記シーン素子および基準素子内で双極子の分極反転が生じるように前記第1の容量性プレートに印加され、前記焦電センサシステムは、
熱ヒートシンクとして作用するシリコン基板構造と、
前記シーン素子の前記第2の容量性プレートと前記シリコン基板の間に直接付着した連続熱障壁被覆とを備え、前記熱障壁はエアブリッジを含まない、請求項20に記載の焦電センサシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2006−518836(P2006−518836A)
【公表日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−518094(P2005−518094)
【出願日】平成16年2月20日(2004.2.20)
【国際出願番号】PCT/US2004/005100
【国際公開番号】WO2004/076991
【国際公開日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(599023978)デルファイ・テクノロジーズ・インコーポレーテッド (281)
【出願人】(590006468)シメトリックス・コーポレーション (5)
【氏名又は名称原語表記】SYMETRIX CORPORATION
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年2月20日(2004.2.20)
【国際出願番号】PCT/US2004/005100
【国際公開番号】WO2004/076991
【国際公開日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(599023978)デルファイ・テクノロジーズ・インコーポレーテッド (281)
【出願人】(590006468)シメトリックス・コーポレーション (5)
【氏名又は名称原語表記】SYMETRIX CORPORATION
【Fターム(参考)】
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