説明

焦電体を備えた発電装置

【課題】焦電体を用いた発電装置であって、より効率よく電気エネルギーに変換できる、エネルギー回収効率のよい発電装置を得ること。
【解決手段】発電装置は、温度の変化によって分極電荷が変化する焦電体1と;焦電体1に生じた電荷を回収する電荷回収手段と;回転軸12を中心に自転する回転体11であって、焦電体1が、回転体11の回転に連動して移動し、焦電体1を加温する熱源側と前記熱源側の反対側との間を移動するように、回転軸12を中心に自転するように構成された回転体11とを備える。電荷回収手段は、回転軸を中心に自転する電荷転写ロール4であって、焦電体1を介して回転体11と対向する位置に配置され、焦電体1に接触する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発電装置に関し、特に焦電体を備えた発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
焦電体とは、温度の変化により誘電体の分極が変化する物質をいう。自発分極を有する極性結晶では、その表面電荷は、通常表面に付着したイオン等により中和されている。しかし、温度が変化すると自発分極の大きさもそれに応じて変化し、この変化分に相当する電荷が結晶表面に現れる。このように結晶の温度を変えたときに自発分極の温度依存性に由来してその変化分に相当する電荷が結晶表面に現れ、それによる起電力が生じる物質を焦電体という。
【0003】
焦電体を用いた発電装置として、特許文献1には、光エネルギーを電気エネルギーに変換する焦電型光電エネルギー変換装置が開示されている。具体的には、例えば特許文献1の図11において、回転可能とする円筒形状のドラム42の側面外周に、フィルム状に形成した焦電素子43を貼り付ける。このドラム42の上部側から太陽光等の光源の光が照射されると、ドラム42の回転により焦電素子43に照射状態と遮光状態が繰り返され、温度変化が与えられる(特許文献1、5頁段落左下〜6頁段落左上)。この温度変化により、焦電素子43に電荷が発生する。
【0004】
焦電体を用いた発電装置として、特許文献2には、製造工場や産業施設等から排出される熱エネルギーを電気エネルギーに変換する発電装置が開示されている。具体的には、例えば図1において、回転軸12を支点として回転するドラム状の回転体13と、該回転体13の外周面に取り付けられた焦電素子14aと、回転体13がそれぞれの内部で回転することにより焦電素子14aの温度を上昇及び下降させる加熱槽15及び冷却槽16等から構成された発電装置が開示されている(特許文献2、段落0009、図1)。すなわち、回転体13を回転させ焦電素子14aが加熱槽15と冷却槽16を行き来することにより、焦電素子の温度を周期的に変化させて該焦電素子から連続的に電力を取り出す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭60−257780号公報
【特許文献2】特開平11−332266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のようなエネルギーの有効利用を目的とした焦電型光電エネルギー変換装置や発電装置では、より効率よくエネルギーを回収できることが望まれる。
そこで本発明は、焦電体を用いた発電装置であって、エネルギー回収効率のよい発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための、本発明の第1の態様に係る発電装置は、例えば図8、図11に示すように、温度の変化によって分極電荷が変化する焦電体1と;焦電体1に生じた電荷を回収する電荷回収手段と;回転軸12を中心に自転する回転体11であって、焦電体1が、回転体11の回転に連動して移動し、焦電体1を加温する熱源側と前記熱源側の反対側との間を移動するように、回転軸12を中心に自転するように構成された回転体11とを備え;電荷回収手段は、回転軸を中心に自転する電荷転写ロール4であって、焦電体1を介して回転体11と対向する位置に配置され、焦電体1に接触する。
【0008】
このように構成すると、回転体の自転により焦電体を加熱・冷却でき、連続して容易に電力を得ることができる。また、電荷回収手段として電荷転写ロールを用いているため、焦電体フィルムを正負電極で挟む等のフィルムの加工をする必要がなく、焦電体に生じた電荷を容易に回収することができる。また、電荷転写ロールが焦電体に接触することにより電荷が回収されるので、回転体および電荷転写ロールの自転を利用して、焦電体の全面積に電荷転写ロールが接触するような構成とすると、焦電体に生じた電荷をロスなく回収でき、効率よく電気エネルギーを得ることができる。
【0009】
本発明の第2の態様に係る発電装置は、上記本発明の第1の態様に係る発電装置において、焦電体1は、連続する1枚のフィルムである。
【0010】
このように構成すると、焦電体は連続した1枚のフィルムで形成されるため、フィルムをカットする必要がなく、製造が容易である。なお、焦電体を用いた発電装置の発生電力は焦電体の面積に比例して大きくなる(特許文献1、3頁段落右下)。よって、より大きな電力を得るための一の方法としては、焦電体の面積をより大きくすればよい。焦電体を連続した1枚のフィルムに形成することにより、カットした複数の焦電体フィルムを用いる場合に比べて、加熱および冷却する焦電体の面積をより容易に広くできる。その結果、より広領域で焦電効果を生じさせ、発電量を増加させることができる。なお、本発明は、連続した1枚のフィルムであっても、焦電体は絶縁体であり、加熱→冷却される領域と、冷却→加熱される領域から別々に電力を取り出すことができる、という焦電体フィルムの特徴を利用したものである。
【0011】
本発明の第3の態様に係る発電装置は、上記本発明の第1の態様または第2の態様に係る発電装置において、回転体11は、無重力空間で自転する。
【0012】
このように構成すると、回転体は無重力空間において慣性により自転する。よって、電力が供給されたモータ等を用いて回転体を回転させる必要がないため、焦電効果により得られた電力をロスなく利用することができる。
【0013】
本発明の第4の態様に係る発電装置は、例えば図11に示すように、上記本発明の第1の態様乃至第3の態様のいずれか1の態様に係る発電装置において、回転体11および電荷転写ロール4は、円筒状であり、回転体11を2つ以上備え、回転体11および電荷転写ロール4の回転軸が平行に配置され、焦電体1は、先端と終端が接続された周回形状に形成され、2つ以上の回転体11の外周面に順次接触して、2つ以上の回転体11を周回する。
【0014】
このように構成すると、回転体が1つのものと比較して、加熱・冷却される焦電体の面積を広くすることができる。その結果、より広領域で焦電効果が生じ、発電量を増加させることができる。さらに、回転体間を離間させればさせるほど、加熱・冷却される領域を広くすることができる。
【0015】
本発明の第5の態様に係る発電装置は、例えば図8に示すように、上記本発明の第1の態様乃至第3の態様のいずれか1の態様に係る発電装置において、回転体11を1つ備え、焦電体1は、回転体11の表面に固定される。
【0016】
このように構成すると、回転体の表面に焦電体1を貼り付ける等して配置するだけで、回転体の自転により、焦電体を熱源側と前記熱源側の反対側との間を移動させることができ、発電装置を容易に構成することができる。
【0017】
本発明の第6の態様に係る発電装置は、例えば図3に示すように、上記本発明の第1の態様乃至第5のいずれか1の態様に係る発電装置において、焦電体1から得られる電力量を測定する発電量測定器21と;発電量測定器21が測定した電力量の値に基づいて、電力量が最適値になるように回転体11の回転速度を調節する回転速度制御器22とを備える。
なお、最適値とは典型的には最高値であるが、これに限らず、得られる電力量に基づいて判断される値であればよい。例えば、電力需要に合わせて電力量を調節する場合は、需要量により近づく値が最適値となる。
【0018】
このように構成すると、焦電体の大きさや厚さがすでに決まっている焦電素子について、最適値を最高値として最も効率よく電気エネルギーを回収することができる。すなわち、焦電体の発電量は、加熱・冷却により得られる温度差と回転体の回転速度に依存する(後述の式(15)参照)。その上で、得られる温度差の範囲は発電体を設置する環境でほぼ決まる。さらに、回転速度が0では得られる電力量は0であり、回転速度が速くなればなるほど得られる温度差は0に近づくためやはり得られる電力量は0となる。したがって、回転速度制御器を用いて回転速度を制御することにより、焦電素子から得られる電力量が最高となる速度に調節することができる。また、回転速度を変更できることにより、得られる電力量を調節することができる。
【0019】
本発明の第7の態様に係る発電装置は、上記本発明の第6の態様に係る発電装置において、回転体11は、人工衛星であり、回転速度制御器22は、人工衛星が備える姿勢制御用ブースターの出力を制御する。
【0020】
このように構成すると、人工衛星の自転を利用して焦電素子を回転移動させることができ、さらに焦電素子から発生する電力が最適値になるように適切に自転速度を制御することができる。
【0021】
本発明の第8の態様に係る発電装置は、上記本発明の第1の態様乃至第7の態様のいずれか1の態様に係る発電装置において、焦電体1は、焦電性高分子である。
【0022】
このように構成すると、焦電体が高分子であるため、柔軟性に富み加工し易く、薄く成形することができる。また、焦電体がフィルム状であるため、軽量かつ広面積に成形することができる。さらに、セラミック等の焦電体と比べ、熱容量を小さくすることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、焦電体を用いてより効率よく容易に電気エネルギーを入手可能な発電装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る発電装置10の構成図である。
【図2】焦電体1、電極2、および保護フィルム3の位置関係を示す焦電素子13の構成図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る発電装置10であって、発電量測定器21、回転速度制御器22、回転駆動手段23を備えた状態の構成図である。
【図4】(a)は、焦電体に生じた電力を負荷(抵抗R)に供給する場合の簡略回路図である。(b)は、(a)の等価回路図である。
【図5】(a)(b)は、焦電素子を直列に接続した場合の発電装置10の構成図である。
【図6】発電装置10の変形例である発電装置20の構成図である。
【図7】発電装置10の変形例である発電装置30の構成図である。
【図8】(a)は、第1の実施の形態に係る発電装置10が備える回転体11の概略図である。(b)は、電荷転写ロール4と回転体11の、回転軸12に垂直な縦断面図である。
【図9】(a)は、第1の実施の形態に係る発電装置10が備える回転体11の概略図である。(b)は、(a)の、回転軸12に垂直な縦断面図である。
【図10】(a)は、第2の実施の形態に係る発電装置40が備える回転体11の概略図である。(b)は、(a)の、回転軸12に垂直な縦断面図である。
【図11】電荷転写ロール4を備えた状態の、第2の実施の形態に係る発電装置40の概略図である。
【図12】(a)は、回転体11を3つ備えた場合の縦断面図である。(b)は、回転体11を4つ備えた場合の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において互いに同一または相当する部分には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明は省略する。また、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0026】
本発明の発電装置は、焦電体を用いてより効率よく電気エネルギーを得る、という目的を、フィルム状の焦電体と回転軸を中心に自転する回転体との組合せに着目し、効率よく電気エネルギーを生じさせることができる構成により実現した。
【0027】
図1を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る発電装置10について説明する。発電装置10は、中心軸12を中心に自転する円筒状の回転体11と、回転体11の外周面に形成された焦電素子13を備える。焦電素子13は、フィルム状の焦電体1、電荷回収手段としての正負電極2から形成される(図2参照)。すなわち、回転体11の外周面に配置された焦電体1の両面を正負電極2で挟んだ部分が焦電素子13として機能する。
【0028】
図2に、焦電素子13について、回転体11の表面に対して垂直方向の断面である縦断面図を示す。焦電体1は、回転体11の表面に固定され回転体11の表面を覆う1枚のフィルムである。例えば図1では、円筒状の回転体11の外周面全体を周回して覆う連続した1枚のフィルムである。このフィルムの一部分に両表面から電極2を蒸着させ焦電素子13を形成する。すなわち、1枚のフィルムについて、電極2が蒸着された部分が焦電素子13を形成する。なお、焦電素子13は、焦電体1のどの位置でも形成することができる。例えば、図1に示すように電極2を分割して回転軸12に沿って蒸着させ、複数の焦電素子13を形成してもよい。このように、回転体11の表面は1枚の焦電体フィルムで覆われ、フィルムのどの位置にでも焦電素子13を形成でき、形成された焦電素子13の総面積をより広くすることができる。よって、より多くの電力を取り出すことができる。焦電素子13が回転体11と接触する面とは反対側の面には、さらに電極2を保護するための保護フィルム3を貼付することが好ましい。なお、図2に示すフィルムの厚さは誇張されており、実際の厚さを示すものではない。
【0029】
図1に戻り、発電装置10はさらに、回転する焦電素子13から電力を取り出すスリップリング14(回転部)と、スリップリング14に摺接するブラシ15(固定部)を、焦電素子13ごとに備える。スリップリング14は、回転体11の内部で焦電素子13の正負電極2と導通され、回転体11の外部でブラシ15に接触する。発電装置10はさらに、スリップリング14とブラシ15を経由して、焦電素子13に接続されるダイオードブリッジ16およびコンデンサ17から構成された回路を備える。図1では、各焦電素子13にそれぞれ接続されたダイオードブリッジ16は、1つのコンデンサ17に対して並列に接続されている。すなわち、図1に示す発電装置10は、焦電素子13と同数のダイオードブリッジ16を有し、1つのコンデンサを備えている。なお、電力を取り出す回路構成はこれに限られず、適宜変更してもよい。
【0030】
焦電素子13は、温度変化により電荷を発生させる。よって、回転体11の回転により焦電素子13が加熱側に移動して加熱される(すなわち温度が上がる)と電荷が生じ電流が流れる。さらに、回転体11の回転により焦電素子13が冷却側に移動して冷却される(すなわち温度が下がる)と電荷が生じ電流が流れる。焦電素子13から生ずる電流は、加熱時と冷却時で流れる方向が逆向きになる。そのため、整流用ダイオードを用いて直流電流に変換してもよい。特に、図1に示すようにダイオードブリッジ16を用いて全波整流を行なうことが好ましい。
【0031】
図3に示すように、発電装置10は、さらに焦電素子に発生した発電量を検知する発電量測定器21と、発電量に基づいて回転体11の回転速度を制御する回転速度制御器22と、回転体11を回転駆動させる回転駆動手段23とを備えてもよい。なお、図13では、ダイオードブリッジおよびコンデンサの図示を省略している。
また、回転体11に形成する焦電素子13の数は問わないが、複数の焦電素子13の総面積をより広くすることにより、より多くの電力を取り出すことができる。また、焦電素子13の形状は、図1のような長方形であっても他の形状であってもよい。
【0032】
以上のように構成された発電装置10では、図1に示すように、回転体11の外周面の一方を加熱し、前記一方とは反対側に位置する外周面の他方を冷却する。例えば、一方の外周面のみに太陽光等の光を照射して加熱し、他方の外周面は放熱により冷却する。回転体11に形成された焦電素子13は、回転体11の自転(例えば矢印方向)により加熱側と冷却側を周回する。その結果、焦電素子13が備える焦電体1は、加熱による温度変化により電荷を発生し、さらに、冷却による温度変化により電荷を発生する、を繰り返す。
なお、回転体11は、円筒状に限らず球体等の他の形状であってもよく、表面に形成された焦電素子13が回転体11の自転により加熱側と冷却側を周回できる形状であればよい。
【0033】
焦電素子13を構成する焦電体1は、フッ化ビニリデン系高分子、シアン化ビニリデン系共重合体等、特に限定されず、周知の焦電性高分子を用いて形成することができる。焦電性高分子は、柔軟性に富み加工し易く、軽量であり、薄く成形することができる。そのため、焦電体の熱容量をより小さくでき温度変化しやすい焦電素子を製造できる、という利点がある。中でも、フィルム状に成形された、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)一軸延伸フィルムおよびフッ化ビニリデン−3フッ化エチレン共重合体(P(VDF‐TrFE))フィルムが好ましい。ポリフッ化ビニリデン一軸延伸フィルムでは、ポリフッ化ビニリデンを一軸延伸後に分極処理を施すことにより、焦電性を顕著に示す結晶が得られる。また、フッ化ビニリデン−3フッ化エチレン共重合体フィルムでは、フッ化ビニリデンを主成分とし(すなわち50%以上含有する)、フッ化ビニリデン−3フッ化エチレン共重合体を、延伸することなく分極処理することにより、焦電性を顕著に示す結晶が得られる。両フィルムとも大面積化が可能で、薄く成形でき、工業的生産に適している。さらに、耐候性に優れているため、太陽光に曝された場合でも他の樹脂に比べ耐用年数を長くすることができる。また、フッ化ビニリデン−3フッ化エチレン共重合体フィルムは、一軸延伸等の延伸工程を経ることなく製造できるため、延伸により生ずる収縮を抑制することができる。
【0034】
焦電素子13を構成する電極2は、カーボン電極が好ましい。カーボン電極とすると、電極の色を黒色にできるため、焦電素子13の加熱に太陽光等の光を用いた場合に光を吸収しやすくなる。また、蒸着された電極2を保護する保護フィルム3には、フッ素系のフィルムが好ましい。保護フィルム3により、冷却に水や海水を使用した場合であっても焦電素子13の耐水性を向上させることができる。保護フィルム3には、クレハエクステック株式会社製の、KFCフィルムやセレールF1550H(KFC/バリアー層/ホットメタル層)等を用いることができる。
なお、電極2にカーボン電極以外を用いた場合は、黒い塗料を表面に塗布することが好ましい。または、焦電素子13は、焦電体1の表面電極には光を入りやすくするための有機導電体を用い、背面電極(回転体11と接触する側)には黒色電極を用いて、焦電体1が光を吸収しやすくなるように構成してもよい。
【0035】
焦電素子13を構成する焦電体1としてのポリフッ化ビニリデン(PVDF)一軸延伸フィルムまたはフッ化ビニリデン−3フッ化エチレン共重合体(P(VDF‐TrFE))フィルムの厚さは、例えば40μmであり、フィルムの両面に蒸着されたカーボン電極の厚さは、それぞれ1μm程度であり、カーボン電極表面に貼付した保護フィルム3の厚さは、10μmである。したがって、保護フィルムを含めた焦電素子13の総厚は約50μm程度であり、熱容量をより小さくでき、さらに発電装置10自体の軽量化が可能となる。なお、焦電体、カーボン電極、保護フィルムの厚さは適宜変更してもよく、高分子フィルムであるポリフッ化ビニリデン(PVDF)一軸延伸フィルムまたはフッ化ビニリデン−3フッ化エチレン共重合体(P(VDF‐TrFE))フィルムの厚さをさらに厚くまたは薄くすることも可能である。
【0036】
ここで、焦電体の温度変化と回転体の回転速度について説明する。焦電体から電力を得る場合の簡易回路図を図4(a)に示す。
図4(a)において、
焦電体の比誘電率:ε’
真空の誘電率:ε
電極面積:S(m
厚さ:T(m)
静電容量:C(F)とすると

焦電体温度:Θ(K)
焦電体温度差:Θ(K)とすると
(j:虚数単位、:ω:角周波数(rad/s、ラジアン毎秒)、t:時間(秒))

焦電体の焦電係数(パイロ定数):p(C/mK)
発生電荷:Q(C)とすると

下記の式(5)(6)より(qはiに基づく電荷)

図4(a)の等価回路を図4(b)に示す。
図4(b)において、発生電流:i(A)とすると

発生電圧:V(V)
電力受給側抵抗:R(Ω)とすると

消費電力:P(W)とすると

以上から、

したがって式(8)、(10)より、

PをRで微分すると、

ω<1のとき、式(13)>0
ω=1のとき、式(13)=0
ω>1のとき、式(13)<0
すなわち、下図のとおり、ω=1のとき、Pは最大値をとる。

したがって、ω=2πfとすると

例えば、焦電体として、厚さTが40μm、面積Sが1mのポリフッ化ビニリデン一軸延伸フィルムでは、静電容量Cは3.1μFとなるので、焦電体温度差Θが50K、周波数fが50Hz(=3000rpm)を得られる環境では、R=1.03kΩの時に、Pmax=193W(振幅)、136W(実効値)となる。
【0037】
式(15)から明らかなように、入手可能な電力Pの大きさは、焦電体が回転する時の周波数f(回転速度)と焦電体温度差Θに依存する。すなわち、周波数fが大きければ大きいほどおよび焦電体温度差Θが大きいほど、より大きな電力が得られることになる。ところが、実際には周波数fが大きくなるにしたがって焦電体を加熱・冷却する時間が短くなるため、得られる焦電体温度差Θは小さくなる。よって、回転体が設置された環境で得られる温度差内で、最も発電効率のよい周波数(回転速度)で回転体を回転させることが好ましい。
そこで、本発明の第1の実施の形態に係る発電装置10は、図3に示すように、さらに焦電素子13から得られる発電量を測定する発電量測定器21と、測定された発電量に基づき回転体11の回転速度を制御する回転速度制御器22と、回転速度制御器22からの信号に基づき回転体11の回転を駆動させる回転駆動手段23とを備えてもよい。発電量測定器21により焦電素子13から得られる発電量を監視しながら、回転速度制御器22により回転体11の回転速度を変化させ、発電量が最適値(例えば最大)となる回転速度を、PID方式のフィードバック制御などを行なうことにより実現することができる。例えば、回転速度(周波数でもよい)を変化させながら、発電量を回転速度で微分して、微分値が正から0になった点を最適速度として定めてもよい。このように、発電量が最適値(例えば最大)となるような回転速度を回転体11に与えることができれば、発電装置10を最も効率よく作動させることができる。
【0038】
発電量の測定は、整流前後(交流または直流)のどちらを測定してもよい。直流を測定する場合は、発電量測定器21として周知の電力計を用いる。または、発電量測定器21として電圧計と電流計を用いて、図1の回路図の出力の先に任意の負荷(例えば、回転体11を回転駆動させるインバーターモータ等の回転駆動手段23)を接続し、電圧と電流の積により求めてもよい。または、交流を測定する場合は、発電量測定器21として電流の周波数、電圧、電力に対応した電力計を接続してもよい。
【0039】
焦電素子13の加熱には、太陽光を用いることが好ましい。すなわち、回転体11を回転可能に設置し、回転体11の外周面の一方に太陽光を照射させる。回転体11の自転により、焦電素子13が備える焦電体1は、太陽光が照射する側では加熱され電荷を発生し、照射しない側では放熱により冷却され電荷を発生する。
このような発電装置10を無重力空間のような慣性の法則を最も効率よく利用できる空間(例えば宇宙空間)に設置する。すると、本願の発電装置10は、モータ等の回転駆動手段を備えることなく回転体11が自然に自転し、焦電素子13が加熱側と冷却側を周回する。その結果、焦電素子13には加熱と冷却が繰り返され、焦電体1には連続的に電荷が発生する。
さらに、発電量測定器21と回転速度制御器22を備えた場合は、焦電素子13の温度変化に対して最も効率よく電力が得られる回転速度を初期回転として回転体11に与えることができる。また、発電量測定器21を用いて発生する電力を監視してフィードバック制御を行なうことができるので、必要に応じてその都度最適な回転速度を回転体11に与えることができる。
さらに、加熱により焦電素子13の温度が極めて高温になる(焦電性高分子の融点を超える)ような環境に発電装置10を設置した場合でも、回転体11の回転速度を制御する(すなわち加熱時間を短くする)ことによって、焦電素子13が加熱されすぎるのを回避できる。
【0040】
例えば、回転体11は人工衛星であってもよい。すなわち、人工衛星の表面に焦電素子13を装着し、太陽光と人工衛星の自転を利用して、焦電素子13を加熱・冷却してもよい。発電量測定器21と回転速度制御器22を備える場合は、回転速度制御器22は、回転駆動手段23としての姿勢制御用ブースターの出力を制御できるように構成されることが好ましい。姿勢制御用ブースターとは、人工衛星に回転力を与え、衛星の姿勢を安定させかつ太陽光による熱を回転により太陽光の反対側に逃がすものである。この姿勢制御用ブースターの出力を回転速度制御器22により制御して、人工衛星に初期回転力を与え、さらに必要に応じて回転速度を変更制御してもよい。このように、焦電素子13から発生する電力が最適値になるように回転速度を制御することができる。
【0041】
図1では、発生した電力を回転体11の外部で取り出しているが、人工衛星においては、発生した電力を自分自身の中で利用するように取り出してもよい。その場合には、図1に示すような集電のためのスリップリング14は必要なく、ブラシ15の接触による回転エネルギーの消耗もないので、人工衛星の回転を半永久的に利用できる。例えば、図5(a)に示すように焦電素子を導通させ、焦電素子13により発生した電力を回転体11の中で利用してもよい。図5(a)は、回転体11の回転軸に垂直な方向での縦断面を示す図である。回転体11の外表面には、2つの焦電素子13が回転体11を挟んで180°対抗する位置に配置されている。焦電素子13が図5(a)の上側で加熱され、焦電素子13の外表面が負(−)に帯電するとすると、焦電素子13は図5(a)の下側に移動した場合、外表面は正(+)に帯電する。この関係を利用して、対抗する2つの焦電素子13どうしを回転体11の内部で導通させ直列とすることにより、焦電素子13が1個の場合に比べて電圧が2倍になる直流電流を得ることができる。なお、2個の焦電素子13を回転体11を挟んで対向する位置に配置させた場合を説明したが、図5(a)に示すように、対向する焦電素子13の組を焦電体フィルムの表面積が許す限り、複数備えてもよい。なお、図5(a)では、出力端子18を便宜上回転体11の外側に記載しているが、内側に取り込んで、得られた電力を利用する。
または、図5(b)に示すように焦電素子13を導通させ、焦電素子13により発生した電力を回転体11の中で利用してもよい。図5(b)も、回転体11の回転軸に垂直な方向での縦断面を示す図である。図5(a)と同様に、回転体11の外表面には、2つの焦電素子13が回転体11を挟んで180°対抗する位置に配置されている。図5(b)では、対抗する2つの焦電素子13を互いに回転体11の外部で導通させ直列とし、出力端子18を回転体11の内部に配置させている。
【0042】
または、図6に示すように、発電装置10の変形例である発電装置20は、第1の実施の形態に係る発電装置10に、さらにブレード(羽)26を備える。回転体11の中心軸12にブレードを取り付け、回転体11を風力により回転可能に大気中に設置する。焦電素子13の加熱には太陽光を用い、太陽光が照射しない側では放熱により冷却する。
発電装置20においても、発電量測定器21と回転速度制御器22と回転駆動手段23を備える場合は、最も効率よく電力が得られる回転速度を得ることができる。すなわち、風力が不足し当該回転速度に満たない場合には、回転駆動手段23により補助的に回転力を加え、所望の回転速度を維持することができる。また、ほとんど風力が得られないような場合には、もっぱら回転駆動手段23により回転体11を回転させることができ、継続して発電装置20から電力を得ることができる。なお、このように構成するときは、ブレード26は、回転体11を回転させるのに十分な大きさでよいので、風力発電用の大きなブレードとする必要はない。
【0043】
または、図7に示すように、発電装置10の変形例である発電装置30は、第1の実施の形態に係る発電装置10に、さらにワンウェイクラッチ31および浮力を供給するフロート32を備える。回転体11の中心軸12にワンウェイクラッチ31を取り付け、回転体11を一方向のみに回転可能にする。さらに、中心軸12の両側を支点として、回転体11を取り囲む程度の大きさのフロート32に回転体11を取り付け、回転体11を潮力により回転可能に海上に設置する。または、回転体11を河川に設置し水流により回転可能にする。焦電素子13の加熱には太陽光を用い、太陽光が照射しない側では海水(または川水)により冷却する。または、回転体11を波力により回転可能としてもよい。
発電装置30においても、発電量測定器21と回転速度制御器22と回転駆動手段23を備える場合は、最も効率よく電力が得られる回転速度を得ることができる。そのため、発電装置30を設置する際に、設置する地点に生ずる潮力等により所望の回転速度が得られるかどうかの判定が可能となり、より適した発電環境を選択することができる。また、潮力等が不足し回転速度が不十分な場合には、回転駆動手段23により補助的に回転力を加えることができる。なお、図7では、発電量測定器21と回転速度制御器22と回転駆動手段23の図示を省略している。発電により得られた電力は、発電装置30が備えるバッテリーに蓄電し、後に利用するように構成してもよい。例えば、その電気エネルギーの一部を、発電装置30が備えるソナーを用いて、海中または海底探査あるいは海中生物の生態調査に用いてもよい。
【0044】
または、発電装置10の変形例として、水の位置エネルギーを用いて回転体11を回転させてもよい。焦電素子13の加熱には太陽光を用い、太陽光が照射しない側では水により冷却が可能となる。なお、発電量測定器21と回転速度制御器22と回転駆動手段23を備える場合は、最も効率よく電力が得られる回転速度を得ることができるため、適切な回転速度となるように、回転体11を回転させる水量を調節可能な構成としてもよい。
または、発電装置10の変形例として、地熱を利用して焦電素子13を加熱し、空気中に放熱させて冷却してもよい。
または、発電装置10の変形例として、産業施設により排出させる熱を利用して、熱風と冷風を用いて加熱・冷却すると同時に、熱風と冷風を用いて回転体を回転させてもよい。この場合、回転駆動を補助する回転駆動手段23には、例えば同じく熱源により駆動されるスターリングエンジンを用いることができる。
このように、本願の発電装置は、回転体の表面に形成された焦電素子の加熱・冷却ができかつ回転体が自転できるような構成であればよい。
【0045】
または、図8に示すように、発電装置10の変形例として、電荷回収手段に正負電極2ではなく電荷転写ロール4を用いて電荷を回収してもよい。図8(a)は、第1の実施の形態に係る発電装置10(図1参照)が備える回転体11の概略図である。図8(b)は、図8(a)の、回転軸12に垂直な縦断面図、および、回転体11に焦電体1を介して接触するように配置された円筒状の電荷転写ロール4の縦断面図である。回転体11と電荷転写ロール4は、互いの回転軸が平行になるように配置され、互いに逆方向に回転する。回転体11の外周面には、中心軸12に平行に、例えばカーボン電極といった複数の電極5が適宜離間して配置され、さらに電極5を覆うように外周面全体にフィルム状の焦電体1が配置される。電荷転写ロール4の外周面には、例えばカーボン電極といった電極5が外周面全体に配置される。加熱により焦電体1の表面には負電荷、裏面には正電荷が生じるとすると、当該負電荷は電荷転写ロール4の電極5に接触することにより電化転写ロール4に移動し、正負電荷は、回転体11と電荷転写ロール4の各電極5により集電される。
【0046】
回転体11上の焦電体1を加熱する場合には電荷転写ロール4を同時に加熱し、焦電体1と電荷転写ロール4に温度差がない状態で、太陽光等の加熱により焦電体1に生じた電荷を回収してもよい。
または、電荷転写ロール4を冷却ロールとして機能させてもよい。太陽光等により加熱された焦電体1は、電荷転写ロール4に接触し急激に冷却される。その温度変化により、焦電体1に電荷が発生するため、その電荷を回収してもよい。
【0047】
電荷転写ロール4の円筒の長さは、フィルム状の焦電体1の幅(回転体11の中心軸12方向の長さ)と同じかまたはそれ以上であることが好ましい。このようにすると、焦電体1が回転体11の回転に合わせて移動し、焦電体1の全面積が電荷転写ロール4に接触するので、焦電体1に生じた電荷をロスなく回収でき、効率よく電気エネルギーを得ることができる。また、電荷転写ロール4を用いることにより、焦電体1の表面に電極を設ける必要がなく(すなわち、焦電体1を電極で挟む必要がなく)、フィルムの加工が不要になり製造が容易になる。
なお、電荷転写ロール4の直径は、回転体11と同じでもよく、より小さくても、大きくてもよい。
【0048】
他の電荷回収手段として、電荷転写ロール4の代わりに焦電体1に接触して電荷を回収する静電バーや、焦電体1に非接触で電荷を回収する回収針等を用いてもよい。
【0049】
図9、図10を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る発電装置40について説明する。図9(a)は、第1の実施の形態に係る発電装置10(図1参照)が備える回転体11の概略図であり、図9(b)は、図9(a)の、回転軸12に垂直な縦断面図である。発電装置40は、図10(a)に示すように、2つの回転体11を備え、回転軸12が互いに平行になるように配置され、平行状態を維持しながらそれぞれが自転するように構成される。2つの回転体11は、同期して同方向に回転する。フィルム状の焦電体1は、一枚のフィルムの先端と終端が接続された周回形状に形成され、一方の回転体11の外周面に沿って移動した後回転体11を離れ、他方の回転体11の外周面に接触し外周面に沿って移動する。すなわち、焦電体1は、2つの回転体11の外周面に沿って周回する。図10(b)は、図10(a)の、回転軸12に垂直な縦断面図である。
【0050】
図11に示すように、発電装置40は、2つの回転体11と回転体11を周回する焦電体1、さらに、電荷回収手段としての円筒状の電荷転写ロール4を備える。図11では、2つの電荷転写ロール4を備え、電荷転写ロール4が焦電体1を介してそれぞれ回転体11に接触する。電荷転写ロール4の外周面には、例えばカーボン電極といった電極5が施される。さらに、回転体11の外周面にも電極5が施される。さらに発電装置40は、電力を取り出すスリップリング14(回転部)と、スリップリング14に摺接するブラシ15(固定部)を備える。スリップリング14は、回転体11および電荷転写ロール4の内部でそれぞれ電極5と導通され、回転体11および電荷転写ロール4の外部でブラシ15に接触する。さらに、発電装置40は、発電装置10(図3参照)と同様に、発電量を検知する発電量測定器21と、発電量に基づいて回転体11および/または電荷転写ロール4の回転速度を制御する回転速度制御器22と、回転体11および/または電荷転写ロール4を回転駆動させる回転駆動手段23とを備えてもよい。
【0051】
図11に示すように発電装置40では、2つの回転体11により水平に維持された焦電体1の一方向を加熱し、前記一方向とは反対側に位置する焦電体1を冷却する。例えば、一方向のみに太陽光等の光を照射して加熱し、反対側を放熱により冷却する。焦電体1は、2つの回転体11の自転により加熱側と冷却側を周回する。その結果、焦電体1は、加熱と冷却が繰り返され連続的に電荷を発生する。電荷転写ロール4と回転体11は、互いに逆方向に回転する。例えば、加熱により焦電体1の外表面に負電荷、内表面に正電荷が生じる場合、これらの電荷は、図11の右側に配置された回転体11および電荷転写ロール4により回収される。焦電体1が冷却側に移動し冷却されると、焦電体1の外表面に正電荷、内表面に負電荷が生じ、これらの電荷は、図11の左側に配置された回転体11および電荷転写ロール4により回収される。このとき、焦電体1の加熱、冷却による温度差で生じた電荷を回収するためには、回転体11と電荷転写ロール4の接触の際に焦電体1に温度変化が起こらないことが好ましい。
または、図11の向かって右側に配置された電荷転写ロール4を冷却ロールとして機能させ、加熱された焦電体1を電荷転写ロール4に接触させ急冷却してもよい。その温度変化により、焦電体1の表面に電荷が発生し電荷転写ロール4で回収する。この場合は、図11の向かって左側に配置された電荷転写ロール4は不要である。または、図11の向かって左側に配置された電荷転写ロール4を加熱ロールとして機能させ、冷却された焦電体1を電荷転写ロール4に接触させ急加熱してもよい。その温度変化により、焦電体1の表面に電荷が発生し電荷転写ロール4で回収する。
【0052】
電荷転写ロール4の円筒の長さは、回転体11の外周面に配置された焦電体1の幅と同じかまたはそれ以上であることが好ましい。このように構成すると、焦電体1の全表面積が電荷転写ロール4と接触できるため、焦電体1に生じた電荷をロスすることなく回収でき、効率よく電気エネルギーを得ることができる。さらに、このように構成すると、回転体11が1つの場合と比較して、加熱・冷却される焦電体の距離をフラットな状態で長く(すなわち面積を広く)できる。その結果、より広領域で焦電効果が生じさせ、発電量を増加させることができる。また、電荷転写ロール4を用いることにより、電荷回収のためのフィルムの加工が不要となり製造が容易になる。
【0053】
焦電体1としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)一軸延伸フィルムまたはフッ化ビニリデン−3フッ化エチレン共重合体(P(VDF‐TrFE))フィルムを用いた場合、フィルムの厚さは、例えば40μmであり、回転体11および電荷転写ロール4に例えばカーボン電極を蒸着した場合の厚さは、それぞれ1μm程度である。なお、焦電体1、電極の厚さは適宜変更してもよく、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)一軸延伸フィルムまたはフッ化ビニリデン−3フッ化エチレン共重合体(P(VDF‐TrFE))フィルムの厚さをさらに厚くまたは薄くすることも可能である。
【0054】
なお、電荷回収手段として電荷転写ロール4の代わりに焦電体1に接触して電荷を回収する静電バーや、焦電体1に非接触で電荷を回収する回収針等を用いてもよい。
【0055】
このような発電装置40を無重力空間のような慣性の法則を最も効率よく利用できる空間(例えば宇宙空間)に、回転体11と電荷転写ロール4のすべての回転軸が平行なるように、かつ回転体11と電荷転写ロール4の接触が維持できるように設置して、モータ等の回転駆動手段を備えることなく、回転体11および電荷転写ロール4を自然に自転させてもよい。
または、一方の回転体11の中心軸12にブレードを取り付け、回転体11を風力により回転可能に大気中に設置して、他方の回転体11および電荷転写ロール4が連動して回転するようにしてもよい。または、一方の回転体11を波力により回転可能としてもよく、水の位置エネルギーにより回転可能としてもよく、または、産業施設により排出させる熱風と冷風を用いて回転可能としてもよい。
【0056】
図12(a)は、発電装置40の変形例であり、回転体11を3つ備えた場合の縦断面図である。図12(b)は、回転体11を4つ備えた場合の縦断面図である。このように、回転体11を3つ以上組み合わせて発電装置を構成してもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 焦電体、PVDFフィルム
2 電荷回収手段、正負電極、電極、カーボン電極
3 保護フィルム
4 電荷回収手段、電荷転写ロール
5 電極
10、20、30、40 発電装置
11 回転体
12 中心軸
13 焦電素子
14 スリップリング
15 ブラシ
16 ダイオードブリッジ
17 コンデンサ
18 出力端子
21 発電量測定器
22 回転速度制御器
23 回転駆動手段
26 ブレード
31 ワンウェイクラッチ
32 フロート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度の変化によって分極電荷が変化する焦電体と;
前記焦電体に生じた電荷を回収する電荷回収手段と;
回転軸を中心に自転する回転体であって、前記焦電体が、前記回転体の回転に連動して移動し、前記焦電体を加温する熱源側と前記熱源側の反対側との間を移動するように、前記回転軸を中心に自転するように構成された回転体とを備え;
前記電荷回収手段は、回転軸を中心に自転する電荷転写ロールであって、前記焦電体を介して前記回転体と対向する位置に配置され、前記焦電体に接触する、
発電装置。
【請求項2】
前記焦電体は、連続する1枚のフィルムである、
請求項1に記載の発電装置。
【請求項3】
前記回転体は、無重力空間で自転する、
請求項1または請求項2に記載の発電装置。
【請求項4】
前記回転体および前記電荷転写ロールは、円筒状であり、
前記回転体を2つ以上備え、前記回転体および前記電荷転写ロールの回転軸が平行に配置され、
前記焦電体は、先端と終端が接続された周回形状に形成され、2つ以上の前記回転体の外周面に順次接触して、2つ以上の前記回転体を周回する、
請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の発電装置。
【請求項5】
前記回転体を1つ備え、
前記焦電体は、前記回転体の表面に固定された、
請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の発電装置。
【請求項6】
前記焦電体から得られる電力量を測定する発電量測定器と;
前記発電量測定器が測定した電力量の値に基づいて、前記電力量が最適値になるように前記回転体の回転速度を調節する回転速度制御器とを備える;
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の発電装置。
【請求項7】
前記回転体は、人工衛星であり、
前記回転速度制御器は、前記人工衛星が備える姿勢制御用ブースターの出力を制御する、
請求項6に記載の発電装置。
【請求項8】
前記焦電体は、焦電性高分子である、
請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−55824(P2013−55824A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193336(P2011−193336)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000001100)株式会社クレハ (477)