説明

焦電型光検出器、焦電型光検出装置および電子機器

【課題】焦電型光検出器の検出出力を高めること。
【解決手段】焦電型光検出器は、基板10と、基板上に支持される支持部材215と、支持部材に接して形成されている焦電型光検出素子251と、を有する。焦電型光検出素子251は、支持部材側に設けられる第1電極234と、第1電極と対向して設けられ、平面視における面積が、第1電極より小さい第2電極236と、第1電極234と第2電極236との間に設けられる焦電体232と、を含むキャパシター230を有する。焦電型光検出素子251はさらに、キャパシター上に形成されている光吸収層270を含む。平面視における光吸収層の面積を受光部面積Aaとし、平面視における第2電極の面積をキャパシター面積Acとし、Aa/Acは、2.0<Aa/Ac<49.0を満足する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焦電型光検出器、焦電型光検出装置、電子機器等に関する。
【背景技術】
【0002】
光センサーとして、熱型光検出器が知られている。熱型光検出器は、物体から放射された光を光吸収層によって吸収し、光を熱に変換し、温度の変化を熱検出素子によって測定する。熱型光検出器としては、例えば、光吸収にともなう温度上昇を熱起電力として直接検出するサーモパイル、電気分極の変化として検出する焦電型素子、温度上昇を抵抗変化として検出するボロメータ等がある。熱型光検出器は、測定できる波長帯域が広い特徴がある。
【0003】
熱型光検出器の一例である焦電型光検出器では、物体から放射された光の一例である赤外線を、例えば赤外線吸収層によって吸収し熱に変換する。その熱を焦電体に与えることによって、焦電体の自発分極量の変化が生じる。その変化量に基づく焦電流によって赤外線量を検出する。
【0004】
近年、半導体製造技術(MEMS技術等)を利用して、より小型の焦電型光検出器を製造する試みがなされている。特許文献1の図2には、焦電膜を備えた赤外線センサーが記載されている。この焦電膜を備えたセンサーでは、基板に支持された絶縁膜上に絶縁膜と同じ幅で下部電極が形成され、さらに下部電極上に下部電極と同じ幅で焦電膜が形成されている。この焦電膜の上には焦電膜の約80%の幅の上部電極と、一部が上部電極の上に形成され、焦電膜と同じ幅の光吸収膜が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−187917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、焦電型光検出器の検出出力を高めることが求められている。本発明の少なくとも一つの態様によれば、焦電型光検出器の検出出力を高めることができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の焦電型光検出器の一態様では、基板と、前記基板上に支持される支持部材と、前記支持部材上に形成されている焦電型光検出素子と、を有し、前記焦電型光検出素子は、前記支持部材側に設けられる第1電極と、前記第1電極と対向して設けられ、基板厚み方向からの平面視における面積が、前記第1電極より小さい第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に設けられる焦電体と、を有するキャパシターと、前記キャパシター上に形成されている光吸収層と、を含み、平面視における前記光吸収層の面積を受光部面積Aaとし、平面視における前記第2電極の面積をキャパシター面積Acとし、Aa/Acは、2.0<Aa/Ac<49を満足する。
【0008】
熱検出用のキャパシターは、焦電体を、第1電極(支持部材側)と、第2電極層(支持部材とは反対側)とによって挟んだ構造を有する。焦電型光検出器の出力電圧Vsは、出力電流量とキャパシターの抵抗値との積に応じて変動する。
【0009】
焦電型光検出器の出力電圧Vsを大きくするためには、受光部面積Aaを大きくし、かつ、キャパシターの抵抗(インピーダンス)Rpを大きくする必要がある。
【0010】
キャパシターの抵抗(容量リアクタンス)は、キャパシターの容量値をCとしたとき、Rp=1/Cで表される。容量値Cが増えるほど、Rpは小さくなる。容量値Cを減らすと、Rpは増大するが、一方、キャパシターのサイズが小さくなったことに伴い、受光部面積Aaが小さくなる。このように、AaとRpが相反し、両立がむずかしい。
【0011】
しかし、キャパシターの容量値や抵抗値に関係するのは、第2電極(支持部材とは反対側の電極)および焦電体であることから、まず、「第2電極と焦電体」の平面視における面積を「小さく」してRpを増大させ、一方、第1電極(支持部材側の電極)の平面視における面積(キャパシター面積Ac)は「大きく」し、そして、第1電極の面積に合わせて光吸収層を、広がりをもって形成することによって受光部面積Aaを増大させる。これによって、受光面積の増大と、キャパシターの容量の増大抑制、すなわち、キャパシターの抵抗値が小さくなることの抑制と、を両立することができる。
【0012】
受光部面積Aaをキャパシター面積Acで除算して得られる比Aa/Acは、2.0<Aa/Ac<49.0を満足するように設定するのが好ましく、より好ましくは3.0<Aa/Ac<34.0を満足するのが好ましく、さらに好ましくは、5.0<Aa/Ac<22.0を満足するのが好ましい。焦電型光検出器の出力電圧Vsは、Aa/Acに対して単調増加した後単調減少するという最大値をとる特性(複数点のAa/Acに対して最大値をとる場合、一点のAa/Acに対して最大値をとる場合の双方を含む)を示し、したがって、Aa/Acを適切な値に設定することによって、少なくとも所望レベルの出力電圧Vsを得ることができる。Aa/Acの値は、必要とされる出力電圧Vsと、許容される素子面積、レイアウトルールならびに製造上の制約等とを比較考慮して適宜、決定することができる。
【0013】
また、第1電極(第1電極上に設けられた少なくとも一層の焦電体を含めることができる)は、光吸収層側から入射する光を反射する光反射層(光反射膜)としての効果を有することから、より多くの入射光を熱に変換させることができるという効果も得られる。また、第1電極は熱伝導性が良好であることから、周囲に広く延在していても、遠くで発生した熱を、キャパシターまで効率的に運ぶことができるという効果も得ることができる。
【0014】
(2)本発明の焦電型光検出器の他の態様では、前記Aa/Acは、3.0<Aa/Ac<34.0を満足する。
【0015】
本態様では、Aa/Acを、3.0<Aa/Ac<34.0を満足するように設定するのが好ましい。これによって、上記(1)に示す範囲のうちの、本態様で示す範囲以外の値にAa/Acを設定した場合よりも、出力電圧Vsのレベルを高くすることができる。
【0016】
(3)本発明の焦電型光検出器の他の態様では、前記Aa/Acは、5.0<Aa/Ac<22.0を満足する。
【0017】
本態様では、Aa/Acを、5.0<Aa/Ac<22.0を満足するように設定するのが好ましい。これによって、上記(2)に示す範囲のうちの、本態様で示す範囲以外の値にAa/Acを設定した場合よりも、出力電圧Vsのレベルを高くすることができる。
【0018】
(4)本発明の焦電型光検出器の他の態様では、前記第1電極の端部は、前記光吸収層で覆われている。
【0019】
本態様では、第1電極(支持部材側の電極)の端部(側面、上面のいずれかを少なくとも含む)が光吸収層で覆われている。光吸収層は、第1電極が光反射層と機能した結果として生じる広範囲の反射光を吸収して熱に変換することができる。光吸収層は、第1電極の終端部付近まで広がりをもって形成されるのが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0020】
(5)本発明の焦電型光検出器の他の態様では、平面視における前記光吸収層の形状ならびに平面視における前記第2電極の形状は、四角形である。
【0021】
これによって、第2電極上に形成される光吸収層の平面視での面積を拡大することができ、光吸収によって生じる熱を増大させることができる。
【0022】
(6)本発明の焦電型光検出器の他の態様では、前記光吸収層の、前記支持部材とは反対側の面は、前記第1電極の、前記支持部材に接する面とは反対側の面に対して平行(略平行も含む)である。
【0023】
光吸収層の上面が平坦であれば、光吸収層の表面側から到来する光の散乱が減少する。また、第1電極の表面で反射した光が、光吸収層で吸収されずに第2電極の裏面にまで到達したとき、その光が、第2電極の裏面で再び反射して第1電極側に向かう効果が得られる。したがって、無効光を減らすことができる。
【0024】
(7)本発明の焦電型光検出装置の一態様では、上記いずれかの焦電型光検出器が複数、2次元配置されている。
【0025】
これによって、複数の焦電型光検出器(焦電型光検出素子)が2次元に配置された(例えば、直交2軸の各々に沿ってアレイ状に配置された)、焦電型光検出装置(焦電型光アレイセンサー)が実現される。
【0026】
(8)本発明の電子機器の一態様は、上記いずれかの焦電型光検出器と、前記焦電型光検出器の出力を処理する制御部と、を有する。
【0027】
上記いずれかの焦電型光検出器は、光の検出出力が高い。よって、この焦電型光検出器を搭載する電子機器の性能が高まる。電子機器としては、例えば、赤外線センサー装置、サーモグラフィー装置、車載用夜間カメラや監視カメラ等が挙げられる。
【0028】
(9)本発明の電子機器の他の態様は、上記の焦電型光検出装置と、前記焦電型光検出装置の出力を処理する制御部と、を有する。
【0029】
上記の焦電型光検出装置は、光の検出出力が高い。よって、この焦電型光検出装置を搭載する電子機器の性能が高まる。電子機器としては、例えば、赤外線センサー装置、サーモグラフィー装置、車載用夜間カメラや監視カメラ等が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】焦電型光検出器、焦電型光検出装置等の各種のセンサーの構造例を示す図である。
【図2】図2(A)〜図2(C)は、各種のパラメータの数値を示す図である。
【図3】図1に示すデバイスの特性図である。
【図4】焦電型光検出装置(焦電型光検出アレイ)の回路構成の一例を示す回路図
【図5】焦電型光検出器または焦電型光検出装置を含む赤外線カメラ(電子機器)のブロック図である。
【図6】赤外線カメラを含む運転支援装置(電子機器)を示す図である。
【図7】示す赤外線カメラを前部に搭載した車両を示す図である。
【図8】赤外線カメラを含むセキュリティー機器(電子機器)を示す図である。
【図9】セキュリティー機器の赤外線カメラ及び人感センサーの検知エリアを示す図
【図10】センサーデバイスを含む、ゲーム機器に用いられるコントローラーを示す図である。
【図11】コントローラーを含むゲーム機器を示す図である。
【図12】赤外線カメラを含む体温測定装置(電子機器)を示す図である。
【図13】センサーデバイスをテラヘルツセンサーデバイスとして用い、テラヘルツ照射ユニットと組み合わせて特定物質探知装置(電子機器)を構成した一例を示す図である。
【図14】図14(A)、図14(B)は検出器を二次元配置した検出装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0032】
(第1の実施形態)
図1は、熱型センサーの一種である焦電型光検出器は焦電型赤外線検出器(焦電型赤外線センサー)200の平面図および断面図である。図1において、下側には焦電型光検出器の平面図が示されており、上側には、下側の図のA−A’線に沿う焦電型光検出器の断面図が示されている。図1では、単独の焦電型光検出器を示しているが、複数の焦電型光検出器を、例えばマトリクス状に配置して、焦電型光検出器アレイ(すなわち焦電型光検出装置)を構成することもできる。
【0033】
この焦電型赤外線検出器200は、熱検出素子としての焦電型赤外線検出素子251を有し、焦電型赤外線検出素子251は、支持部材(メンブレン)215側の第1電極234と、支持部材(メンブレン)側とは反対の側に設けられる、平面視における面積が、第1電極234より小さい第2電極236と、第1電極234と第2電極236との間に設けられる材料層(例えば、焦電材料層、具体的には焦電体としてのPZT層:チタン酸ジルコン酸鉛層)を有するキャパシター230と、支持部材215上においてキャパシターに接し、かつ、第1電極234および第2電極236の上に形成されている光吸収層270と、を含む。光吸収層は、例えばSiO層あるいはSi等の無機膜からなる層である。光吸収層270は、支持部材215上においてキャパシター230に接し、かつ、第1電極234および第2電極236の上に形成されている。
【0034】
また、平面視における光吸収層270の面積を受光部面積Aaとし、平面視における第2電極236の面積をキャパシター面積Acとしたとき、受光部面積Aaをキャパシター面積Acで除算して得られる比Aa/Acは、2.0<Aa/Ac<49.0を満足するように設定するのが好ましく、より好ましくは3.0<Aa/Ac<34.0を満足するのが好ましく、さらに好ましくは、5.0<Aa/Ac<22.0を満足するのが好ましい。この点については後述する。Aa/Acを適切な値に設定することによって、少なくとも所望レベルの、焦電型光検出器の出力(ここでは出力電圧Vs)を得ることができる。Aa/Acの値は、必要とされる出力電圧Vsと、許容される素子面積、レイアウトルールならびに製造上の制約等とを比較考慮して適宜、決定することができる。
【0035】
(焦電型光検出器の構造)
まず、焦電型光検出器の構造について説明する。焦電型光検出器200は、ベース(ここではシリコンベースとする)10と、ベース10の主面(ここでは表面)上に形成された絶縁膜(ゲート酸化膜)INSと、絶縁膜(ゲート酸化膜)INS上に形成されている多層配線構造(最下層の絶縁層、2層以上の層間絶縁層、層間絶縁層間に形成されている少なくとも一層の導体層を含む)MESと、を有する。また、例えば、シリコン(Si)基板10の、平面視で熱検出素子(焦電型赤外線検出素子)251と重なる領域には、トランジスターや抵抗等の半導体素子を形成することができる。図1に示される焦電型光検出器200では、MOSトランジスター(ここではn型のMOSトランジスターとする)Q1,Q2が形成されている。MOSトランジスターQ1は、シリコンベース10に形成されたソース21aおよびドレイン22aと、シリコンベース10の表面上に形成されているゲート酸化膜INS、ならびにゲートG1を有する。MOSトランジスターQ2は、シリコンベース10に形成されたソース21bおよびドレイン22bと、シリコンベース10の表面上に形成されているゲート酸化膜INS、ならびにゲートG2を有する。これらのMOSトランジスターQ1,Q2は、熱検出素子(ここでは焦電型赤外線検出素子)251に電気的に接続されている。
【0036】
また、基板17上に支持される支持部材(メンブレン)215が設けられており、支持部材(メンブレン)215上(直上および一層以上の層を介する場合を含む)には熱検出素子251が設けられている。熱検出素251は、熱を電気信号に変換する。これによって、受光した光の強度に対応する検出信号(例えば電流信号)が得られる。
【0037】
熱検出素子251は、キャパシター(本実施形態では焦電キャパシター)230と、光吸収層270と、を有する。このキャパシター230は、支持部材側の第1電極234と、支持部材側とは反対の側に設けられる、平面視における面積が、第1電極234より小さい第2電極236と、第1電極234と第2電極236との間に設けられる材料層(具体的には焦電材料層)232と、を有する。
【0038】
また、光吸収層(例えばSiO層あるいはSi等の無機膜からなる層)270は、支持部材215上においてキャパシター230に接し、かつ、第1電極234および第2電極236の上に形成されている。
【0039】
支持部材(メンブレン)215は、焦電型光検出素子251を搭載する領域である素子搭載領域210と、素子搭載領域210を支持する第1アーム212aおよび第212bと、を有しており、基板17と、支持部材(メンブレン)の素子搭載領域210との間には空洞部(熱分離空洞)102が設けられている。焦電型光検出素子251は、支持部材(メンブレン)215によって、空洞部102上において支持されていることから、焦電型光検出素子251にて発生した熱が基板17に散逸することが抑制される。
【0040】
ここで、支持部材(メンブレン)215は、例えば、酸化シリコン膜(SiO)/窒化シリコン膜(SiN)/酸化シリコン膜(SiO)の3層の積層膜をパターニングすることによって形成することができる(但し、一例であり、これに限定されるものではない)。支持部材(メンブレン)215は、焦電型光検出素子251を安定的に支持する必要があり、よって、支持部材(メンブレン)215のトータルの厚みは、必要な機械強度を満足する厚みを有する。なお、支持部材(メンブレン)215の表面上には、配向膜(不図示)を形成して、この配向膜上に、焦電型光検出素子251の構成要素であるキャパシター(焦電キャパシター)230を形成することができる。但し、電極材料を配向膜と兼用することもできる。
【0041】
キャパシター(焦電キャパシター)230の下部電極(第1電極)234ならびに上部電極(第2電極)236は共に、例えば、3層の金属膜を積層することによって形成することができる。例えば、焦電材料層(PZT層)232から遠い位置から順に、例えばスパッタリングにて形成されるイリジウム(Ir)、イリジウム酸化物(IrOx)及びプラチナ(Pt)の三層構造とすることができる。また、焦電材料層232としては、上述のとおり、例えばPZT(Pb(Zi,Ti)O:チタン酸ジルコン酸鉛)を用いることができる。
【0042】
焦電材料層(焦電体)232に熱が伝達されると、その結果、焦電材料層232に分極電荷量の変化がしょうじ、表面電荷量が変化する(焦電効果)。この分極電荷量の変化に伴う電流(焦電流)を検出することによって、入射した光のエネルギー量を検出することができる。
【0043】
この焦電材料層232は、例えば、スパッタリング法やMOCVD法等で成膜することができる。下部電極(第1電極)234および上部電極(第2電極)236の膜厚は、例えば0.4μm程度であり、焦電材料層232の膜厚は、例えば0.1μm〜3um程度である。
【0044】
また、キャパシター(焦電キャパシター)230の第1電極234の表面は、光吸収層270で覆われている。光吸収層270は、第1電極234が光反射層と機能した結果として生じる広範囲の反射光を吸収して熱に変換することができる。光吸収層270は、第1電極234の終端部付近まで広がりをもって形成されるのが好ましい。これによって、反射光を吸収できる領域を増大させることができる。但し、これに限定されるものではない。例えば、光吸収層270は、第1電極234の側面、上面の少なくとも一方を含む端部を覆うことができる。
【0045】
(レイアウト構成)
熱検出用のキャパシターは、材料層(PZT)を、第1電極(支持部材側)234と、第2電極層(支持部材とは反対側)236とによって挟んだ構造を有する。焦電型光検出器の出力電圧Vsは、出力電流量とキャパシターの抵抗値との積に応じて変動する。
【0046】
焦電型光検出器の出力電圧Vsを大きくするためには、受光部面積Aaを大きくし、かつ、キャパシターの抵抗(インピーダンス)Rpを大きくする必要がある。
【0047】
キャパシターの抵抗(容量リアクタンス)は、キャパシターの容量値をCとしたとき、Rp=1/Cで表される。容量値Cが増えるほど、Rpは小さくなる。容量値Cを減らすと、Rpは増大するが、一方、キャパシターのサイズが小さくなったことに伴い、受光部面積Aaが小さくなる。このように、AaとRpが相反し、両立がむずかしい。
【0048】
しかし、キャパシターの容量値や抵抗値に関係するのは、第2電極(支持部材とは反対側の電極)および材料層であることから、まず、「第2電極と材料層」の平面視における面積を「小さく」してRpを増大させ、一方、第1電極(支持部材側の電極)の平面視における面積(キャパシター面積Ac)は「大きく」し、そして、第1電極の面積に合わせて光吸収層を、広がりをもって形成することによって受光部面積Aaを増大させる。これによって、受光面積の増大と、キャパシターの容量の増大抑制、すなわち、キャパシターの抵抗値が小さくなることの抑制と、を両立することができる。
【0049】
受光部面積Aaをキャパシター面積Acで除算して得られる比Aa/Acは、2.0<Aa/Ac<49.0を満足するように設定するのが好ましく、より好ましくは3.0<Aa/Ac<34.0を満足するのが好ましく、さらに好ましくは、5.0<Aa/Ac<22.0を満足するのが好ましい。焦電型光検出器の出力電圧Vsは、Aa/Acに対して単調増加した後単調減少するという最大値をとる特性(複数点のAa/Acに対して最大値をとる場合、一点のAa/Acに対して最大値をとる場合の双方を含む)を示し、したがって、Aa/Acを適切な値に設定することによって、少なくとも所望レベルの出力電圧Vsを得ることができる。Aa/Acの値は、必要とされる出力電圧Vsと、許容される素子面積、レイアウトルールならびに製造上の制約等とを比較考慮して適宜、決定することができる。但し、これは一例であって、他の要因によってレイアウトルールが制約を受ける場合も有り得る。
【0050】
図2(A)〜図2(C)は、図1に示すデバイスの特性例を示しており、図2(A)において、Vsは、Rp、Ac、Aaの関数であることがわかる。なお、Gは熱コンダクタンスであり、ωは角振動数であり、τは熱的あるいは電気的時定数である。またηは光吸収層の熱エネルギーの変換効率に関係する定数であり例えば光吸収に関係し、βはフィルファクターであり、Pはキャパシターの特性を決定する係数であり、例えば熱変換係数であり、Rpは素子抵抗であり、Acはキャパシター面積であり、Aaは光吸収領域の面積である。
【0051】
図2(B)には、図2(A)に示される数値を導出する際の条件が示されている。また、図2(C)は、AcとAaとキャパシター(Capa)面積比との関係から出力(ここでは出力電圧Vs)を導出した計算結果を示している。ここで、AcとAaとCapa面積比とが所定の関係式による関係になっているときに、あるサイズのAaにおいて最大のVsが得られることがわかった。したがって、Aa/Acは、2.0<Aa/Ac<49.0を満足するように設定するのが好ましく、より好ましくは3.0<Aa/Ac<34.0を満足するのが好ましく、さらに好ましくは、5.0<Aa/Ac<22.0を満足するのが好ましい。
【0052】
この点について説明する。図3に面積比と出力(ここでは出力電圧Vs)との関係を示す。図3では、パラメータAaを350μm×350μmに固定して、焦電体の厚さdを1μm、2μm、0.5μm、10μmと変化させたときの面積比と出力との関係を示しているが、これに限定されるものではなく、種々のパラメータの設定が可能であり、そしてそのパラメータの設定は適宜、他の条件を加味してなし得るものである。つまり、パラメータAaと焦電体の厚さdとの関係は一例であって、焦電体の厚さdがどのようなものであっても上記1μmのときの関係性が得られる。なお、他のパラメータの設定とは、例えば、膜の種類を変更するというようなものであるが、この場合も絶縁体で共通していることから大きな減少や増大はみられない。
【0053】
Aa/Acが面積比を表す場合は、Aaは受光部面積に相当する光吸収層の面積を示し、Acはキャパシターの実効面積に相当する第2電極(上部電極)の面積を示す。ここで、特許文献1の図2では、Aa:Ac=1:0.8とするとAa/Ac=1.25となり、さらに上部電極面積を縮小してAa:Ac=1:0.64と仮定してもAa/Ac=1.56となり、従来技術ではAa/Ac<2と認められる。
【0054】
本実施形態にて49>Aa/Ac>2とすると、従来のAa/Ac=1.56のときの出力電位に対し20%程度の大幅向上を達成できる。また、本実施形態にて34>Aa/Ac>3とすると、従来のAa/Ac=1.56の出力値に比べて、出力電位の50%を超えるさらに大幅な向上を達成できる。さらには、本実施形態にて22>Aa/Ac>5とすると、従来のAa/Ac=1.56の出力値に比べて、出力電位を約2倍にすることができる。なお、2<d<10μmにおいては、焦電体の結晶配向に基づく焦電特性の向上も達成できるので、更なる出力電位の向上が達成される。
【0055】
図3において、焦電体d=10μmのとき、範囲α(2.0〜49.0)のときに出力(ここでは出力電圧Vs)は20mVを越え、この点で臨界的意義を有する。また、範囲β(3.0〜34.0)のときに出力はほぼ34mVを超得る。範囲γ(α>β>γ)のとき、γは5.0〜22.0であるが、このときに、出力は一応の目安である40mVを越える。しかしこれらに限定されず、さらに範囲を絞り込むこともできる。これらの考察から、上記のとおり、Aa/Acは、2.0<Aa/Ac<49.0を満足するように設定するのが好ましく、より好ましくは3.0<Aa/Ac<34.0を満足するのが好ましく、さらに好ましくは、5.0<Aa/Ac<22.0を満足するのが好ましく、そしてそれらを実験で確認することができた。よって、上記の好ましい範囲が確からしいと確認されたことになる。この場合には確からしい好結果が得られることが確定された。
【0056】
(第2の実施形態)
図4は、焦電型光検出装置(焦電型光検出アレイ)の回路構成の一例を示す回路図である。図4の例では、複数の光検出セル(すなわち、焦電型光検出器200a〜200d等)が、2次元的に配置されている。複数の光検出セル(焦電型光検出器200a〜200d等)の中から一つの光検出セルを選択するために、走査線(W1a,W1b等)と、データ線(D1a,D1b等)が設けられている。
【0057】
第1の光検出セルとしての焦電型光検出器200aは、熱形光検出素子5としての圧電コンデンサーZCと、素子選択トランジスターM1aと、を有する。圧電コンデンサーZCの両極の電位関係は、PDr1に印加する電位を切り換えることによって反転することができる(この電位反転によって、機械的なチョッパーを設ける必要がなくなる)。なお、他の光検出セルも同様の構成である。1つの光検出セルが占める領域のサイズは、例えば20μm×20μmである。
【0058】
データ線D1aの電位は、リセットトランジスターM2をオンすることによって初期化することができる。検出信号の読み出し時には、読み出しトランジスターM3がオンする。焦電効果によって生じる電流は、I/V変換回路510によって電圧に変換され、アンプ600によって増幅され、A/D変換器700によってデジタルデータに変換される。
【0059】
本実施形態では、複数の焦電型光検出器が2次元的に配置された(例えば、直交2軸(X軸およびY軸)の各々に沿ってアレイ状に配置された)、焦電型光検出装置(焦電型光アレイセンサー)が実現される。
【0060】
(第3の実施形態)
本実施形態では、電子機器について説明する。
【0061】
(赤外線カメラ)
図5に本実施形態の焦電型光検出器または焦電型光検出装置を含む電子機器の例として赤外線カメラ400Aの構成例を示す。この赤外線カメラ400Aは、光学系400、センサーデバイス(焦電型光検出装置)410、画像処理部420、処理部430、記憶部440、操作部450、表示部460を含む。
【0062】
光学系400は、例えば1又は複数のレンズや、これらのレンズを駆動する駆動部などを含む。そしてセンサーデバイス410への物体像の結像などを行う。また必要であればフォーカス調整なども行う。
【0063】
センサーデバイス410は、上述した本実施形態の焦電型光検出器200を二次元配列させて構成され、複数の行線(ワード線、走査線)と複数の列線(データ線)が設けられる。センサーデバイス410は、二次元配列された検出器に加えて、行選択回路(行ドライバー)と、列線を介して検出器からのデータを読み出す読み出し回路と、A/D変換部等を含むことができる。二次元配列された各検出器からのデータを順次読み出すことで、物体像の撮像処理を行うことができる。
【0064】
画像処理部420は、センサーデバイス410からのデジタルの画像データ(画素データ)に基づいて、画像補正処理などの各種の画像処理を行う。
【0065】
処理部430は、赤外線カメラ400Aの全体の制御を行い、赤外線カメラ400A内の各ブロックの制御を行う。この処理部430は、例えばCPU等により実現される。記憶部440は、各種の情報を記憶するものであり、例えば処理部430や画像処理部420のワーク領域として機能する。操作部450は、ユーザーが赤外線カメラ400Aを操作するためのインターフェースとなるものであり、例えば各種ボタンやGUI(Graphical User Interface)画面などにより実現される。表示部460は、例えばセンサーデバイス410により取得された画像やGUI画面などを表示するものであり、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどの各種のディスプレイにより実現される。
【0066】
このように、1セル分の焦電型光検出器を赤外線センサー等のセンサーとして用いる他、1セル分の焦電型光検出器を二軸方向例えば直交二軸方向に二次元配置することでセンサーデバイス410を構成することができ、こうすると熱(光)分布画像を提供することができる。このセンサーデバイス410を用いて、サーモグラフィー、車載用ナイトビジョンあるいは監視カメラなどの電子機器を構成することができる。
【0067】
もちろん、1セル分または複数セルの焦電型光検出器をセンサーとして用いることで物体の物理情報の解析(測定)を行う解析機器(測定機器)、火や発熱を検知するセキュリティー機器、工場などに設けられるFA(Factory Automation)機器などの各種の電子機器を構成することもできる。
【0068】
(運転支援装置)
図6に本実施形態の焦電型光検出器または焦電型光検出装置を含む電子機器の例として、運転支援装置600の構成例を示す。この運転支援装置600は、運転支援装置600を制御するCPUを備えた処理ユニット610と、車両外部の所定撮像領域に対して赤外線を検出可能な赤外線カメラ620と、車両のヨーレートを検出するヨーレートセンサー630と、車両の走行速度を検出する車速センサー640と、運転者のブレーキ操作の有無を検出するブレーキセンサー650と、スピーカー660と、表示装置670とを備えて構成されている。
【0069】
この運転支援装置600の処理ユニット610は、例えば赤外線カメラ620の撮像により得られる自車両周辺の赤外線画像と、各センサー630〜650により検出される自車両の走行状態に係る検出信号とから、自車両の進行方向前方に存在する物体及び歩行者などの対象物を検出し、検出した対象物と自車両との接触が発生する可能性があると判断したときに、スピーカー660または表示装置670により警報を出力する。
【0070】
また、たとえば図7に示すように、赤外線カメラ620は、車両の前部において車幅方向の中心付近に配置されている。表示装置670は、フロントウィンドーにおいて運転者の前方視界を妨げない位置に各種情報を表示するHUD(Head Up Display)671などを備えて構成されている。
【0071】
(セキュリティー機器)
図8に本実施形態の焦電型光検出器または焦電型光検出装置を含む電子機器の例として、セキュリティー機器700の構成例を示す。
【0072】
セキュリティー機器700は、少なくとも監視エリアを撮影する赤外線カメラ710と、監視エリアへの侵入者を検知する人感センサー720と、赤外線カメラ710から出力された画像データを処理して監視エリアに侵入した移動体を検知する動き検知処理部730と、人感センサー720の検知処理を行う人感センサー検知処理部740と、赤外線カメラ710から出力された画像データを所定の方式で圧縮する画像圧縮部750と、圧縮された画像データや侵入者検知情報の送信や外部装置からセキュリティー機器700への各種設定情報などを受信する通信処理部760と、セキュリティー機器700の各処理部に対して条件設定、処理コマンド送信、レスポンス処理をCPUで行う制御部770とを備えて構成されている。
【0073】
動き検知処理部730は、図示しないバッファメモリーと、バッファメモリーの出力が入力されるブロックデータ平滑部と、ブロックデータ平滑部の出力が入力される状態変化検出部とを備える。そして動き検出処理部730の状態変化検出部は、監視エリアが静止状態であれば動画で撮影した異なるフレームでも同一画像データとなるが、状態変化(移動体の侵入)があるとフレーム間の画像データで差が生じることを利用して状態変化を検知している。
【0074】
また、たとえば軒下に設置されているセキュリティー機器700と、セキュリティー機器700に組み込まれている赤外線カメラ710の撮像エリアA1と、人感センサー720の検知エリアA2を側面から示したものを図9に示す。
【0075】
(ゲーム機器)
図10および図11本実施形態の焦電型光検出器または焦電型光検出装置を含む電子機器の例として、前述のセンサーデバイス410を用いたコントローラー820を含むゲーム機器800の構成例を示す。
【0076】
図10に示すように、図11のゲーム機器800に用いられるコントローラー820は、撮像情報演算ユニット830と、操作スイッチ840と、加速度センサー850と、コネクター860と、プロセッサー870と、無線モジュール880と、を備えて構成される。
【0077】
撮像情報演算ユニット830は、撮像ユニット831と、この撮像ユニット831で撮像した画像データを処理するための画像処理回路835を有する。撮像ユニット831は、センサーデバイス832(図5のセンサーデバイス410)を含み、その前方には、赤外線フィルター(赤外線だけを通すフィルター)833及び光学系(レンズ)834を配置している。そして、画像処理回路835は、撮像ユニット831から得られた赤外線画像データを処理して、高輝度部分を検知し、それの重心位置や面積を検出してこれらのデータを出力する。
【0078】
プロセッサー870は、操作スイッチ840からの操作データと、加速度センサー850からの加速度データおよび高輝度部分データを一連のコントロールデータとして出力する。無線モジュール880は所定周波数の搬送波をこのコントロールデータで変調し、アンテナ890から電波信号として出力する。
【0079】
なおコントローラー820に設けられているコネクター860を通して入力されたデータもプロセッサー870によって上述のデータと同様に処理されてコントロールデータとして無線モジュール880とアンテナ890を介して出力される。
【0080】
図11に示すように、ゲーム機器800は、コントローラー820と、ゲーム機本体810と、ディスプレイ811と、LEDモジュール812Aおよび812Bとを備え、プレイヤー801が一方の手でコントローラー820を把持してゲームをプレイすることができる。そして、コントローラー820の撮像ユニット831をディスプレイ811の画面813を向くようにすると、ディスプレイ811の近傍に設置された二つのLEDモジュール812Aおよび812Bから出力される赤外線を撮像ユニット831が検知して、コントローラー820は、二つのLEDモジュール812A,812Bの位置や面積情報を高輝度点の情報として取得する。輝点の位置や大きさのデータがコントローラー820から無線でゲーム機本体810に送信され、ゲーム機本体810で受信される。プレイヤー801がコントローラー820を動かすと、輝点の位置や大きさのデータが変化するため、それを利用して、ゲーム機本体810はコントローラー820の動きに対応した操作信号を取得できるので、それにしたがってゲームを進行させることができる。
【0081】
(体温測定装置)
図12に本実施形態の焦電型光検出器または焦電型光検出装置を含む電子機器の例として、体温測定装置900の構成例を示す。
【0082】
図12に示すように、体温測定装置900は、赤外線カメラ910と、体温分析装置920と、情報通信装置930と、ケーブル940とを備えて構成されている。赤外線カメラ910は、図示しないレンズなどの光学系と前述のセンサーデバイス410を含んで構成されている。
【0083】
赤外線カメラ910は所定の対象領域を撮影し、撮影された対象者901の画像情報を、ケーブル940を経由して体温分析装置920に送信する。体温分析装置920は、図示しないが、赤外線カメラ910からの熱分布画像を読み取る画像読取処理ユニットと、画像読取処理ユニットからのデータと画像分析設定テーブルに基づいて体温分析テーブルを作成する体温分析処理ユニットとを含み、体温分析テーブルに基づいて体温情報送信用データを情報通信装置930へ送信する。この体温情報送信用データは体温異常であることに対応する所定のデータを含んでもよい。また、撮影領域内に複数の対象者901を含んでいると判断した場合には、対象者901の人数と体温異常者の人数の情報を体温情報送信用データに含んでもよい。
【0084】
(特定物質探知装置)
図13に本実施形態の焦電型光検出器または焦電型光検出装置を含む電子機器の例として、前述のセンサーデバイス410の焦電型光検出器の光吸収材の吸収波長をテラヘルツ域としたセンサーデバイスをテラヘルツ光センサーデバイスとして用い、テラヘルツ光照射ユニットと組み合わせて特定物質探知装置1000を構成した例を示す。
【0085】
特定物質探知装置1000は、制御ユニット1010と、照射光ユニット1020と、光学フィルター1030と、撮像ユニット1040と、表示部1050とを備えて構成されている。撮像ユニット1040は、図示しないレンズなどの光学系と前述の焦電型光検出器の光吸収材の吸収波長をテラヘルツ域としたセンサーデバイスを含んで構成されている。
【0086】
制御ユニット1010は、本装置全体を制御するシステムコントローラーを含み、該システムコントローラーは制御ユニットに含まれる光源駆動部および画像処理ユニットを制御する。照射光ユニット1020は、テラヘルツ光(波長が100μm〜1000μmの範囲にある電磁波を指す。)出射するレーザー装置と光学系を含み、テラヘルツ光を検査対象の人物1060に照射する。人物1060からの反射テラヘルツ光は、探知対象である特定物質1070の分光スペクトルのみを通過させる光学フィルター1030を介して撮像ユニット1040に受光される。撮像ユニット1040で生成された画像信号は、制御ユニット1010の画像処理ユニットで所定の画像処理が施され、その画像信号が表示部1050へ出力される。そして人物1060の衣服内等に特定物質1070が存在するか否かにより受光信号の強度が異なるので特定物質1070の存在が判別できる。
【0087】
以上、いくつかの電子機器の実施形態について説明したが、上記実施形態の電子機器は説明した構成に限定されず、その構成要素の一部(例えば光学系、操作部、表示部等)を省略し、あるいは他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
【0088】
(センサーデバイス)
図14(A)に図18のセンサーデバイス410の構成例を示す。このセンサーデバイスは、センサーアレイ500と、行選択回路(行ドライバー)510と、読み出し回路520を含む。またA/D変換部530、制御回路550を含むことができる。行選択回路(行ドライバー)510と読み出し回路520を駆動回路と称する。このセンサーデバイスを用いることで、図4に示す、たとえばナイトビジョン機器などに用いられる赤外線カメラ400Aなどを実現できる。
【0089】
センサーアレイ500には、例えば図4に示すように二軸方向に複数のセンサーセルが配列(配置)される。また複数の行線(ワード線、走査線)と複数の列線(データ線)が設けられる。なお行線及び列線の一方の本数が1本であってもよい。例えば行線が1本である場合には、図14(A)において行線に沿った方向(横方向)に複数のセンサーセルが配列される。一方、列線が1本である場合には、列線に沿った方向(縦方向)に複数のセンサーセルが配列される。
【0090】
図14(B)に示すように、センサーアレイ500の各センサーセルは、各行線と各列線の交差位置に対応する場所に配置(形成)される。例えば図14(B)のセンサーセルは、行線WL1と列線DL1の交差位置に対応する場所に配置されている。他のセンサーセルも同様である。
【0091】
行選択回路510は、1又は複数の行線に接続される。そして各行線の選択動作を行う。例えば図14(B)のようなQVGA(320×240画素)のセンサーアレイ500(焦点面アレイ)を例にとれば、行線WL0、WL1、WL2・・・・WL239を順次選択(走査)する動作を行う。即ちこれらの行線を選択する信号(ワード選択信号)をセンサーアレイ500に出力する。
【0092】
読み出し回路520は、1又は複数の列線に接続される。そして各列線の読み出し動作を行う。QVGAのセンサーアレイ500を例にとれば、列線DL0、DL1、DL2・・・・DL319からの検出信号(検出電流、検出電荷)を読み出す動作を行う。
【0093】
A/D変換部530は、読み出し回路520において取得された検出電圧(測定電圧、到達電圧)をデジタルデータにA/D変換する処理を行う。そしてA/D変換後のデジタルデータDOUTを出力する。具体的には、A/D変換部530には、複数の列線の各列線に対応して各A/D変換器が設けられる。そして、各A/D変換器は、対応する列線において読み出し回路520により取得された検出電圧のA/D変換処理を行う。なお、複数の列線に対応して1つのA/D変換器を設け、この1つのA/D変換器を用いて、複数の列線の検出電圧を時分割にA/D変換してもよい。
【0094】
制御回路550(タイミング生成回路)は、各種の制御信号を生成して、行選択回路510、読み出し回路520、A/D変換部530に出力する。例えば充電や放電(リセット)の制御信号を生成して出力する。或いは、各回路のタイミングを制御する信号を生成して出力する。
【0095】
以上、いくつかの実施形態について説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるものである。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。
【0096】
本発明は、種々の焦電型光検出器(例えば、焦電型素子等)に広く適用することができる。検出する光の波長は問わない。また、焦電型光検出器または焦電型光検出装置、あるいはそれらを有する電子機器は、例えば、供給する熱量と流体が奪う熱量とが均衡する条件下にて流体の流量を検出するフローセンサーなどにも適用できる。このフローセンサーに設けられる熱伝対などに代えて本発明の焦電型光検出器または焦電型光検出装置を設けることができ、光以外を検出対象とすることができる。
【0097】
以上説明したように、本発明の少なくとも一つの実施形態によれば、例えば、焦電型光検出器の検出出力を、格段に向上させることができる。
【0098】
以上、いくつかの実施形態について説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるものである。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。
【符号の説明】
【0099】
102 空洞部(熱分離空洞部)、
104a,104b 第1ポストならびに第2ポスト、
200 焦電型光検出器、210 支持部材の載置部、
212(212a,212b) 支持部材のアーム部(第1アーム部,第2アーム部)、215 支持部材(メンブレン)、
229a,229b 配線(アーム部上に形成される配線)、
226,228 コンタクト領域、
230 焦電キャパシター(キャパシター)、
232a,232b アーム部の端部、
234 第1電極、236 焦電体(PZT層等)、
236 第2電極、250 絶縁層、
252、254 第1コンタクトホールおよび第2コンタクトホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に支持される支持部材と、
前記支持部材上に形成されている焦電型光検出素子と、を有し、
前記焦電型光検出素子は、
前記支持部材側に設けられる第1電極と、前記第1電極と対向して設けられ、基板厚み方向からの平面視における面積が、前記第1電極より小さい第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に設けられる焦電体と、を有するキャパシターと、
前記キャパシター上に形成されている光吸収層と、を含み、
前記平面視における前記光吸収層の面積を受光部面積Aaとし、平面視における前記第2電極の面積をキャパシター面積Acとし、Aa/Acは、2.0<Aa/Ac<49.0を満足することを特徴とする焦電型光検出器。
【請求項2】
請求項1記載の焦電型光検出器であって、
前記Aa/Acは、3.0<Aa/Ac<34.0を満足することを特徴とする焦電型光検出器。
【請求項3】
請求項1記載の焦電型光検出器であって、
前記Aa/Acは、5.0<Aa/Ac<22.0を満足することを特徴とする焦電型光検出器。
【請求項4】
請求項1記載の焦電型光検出器であって、
前記第1電極の端部は、前記光吸収層で覆われていることを特徴とする焦電型光検出器。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の焦電型光検出器であって、
前記光吸収層の、前記支持部材とは反対側の面は、前記第1電極の、前記支持部材に接する面とは反対側の面に対して平行であることを特徴とする焦電型光検出器。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の焦電型光検出器であって、
前記平面視における前記光吸収層の形状ならびに前記平面視における前記第2電極の形状は、四角形であることを特徴とする焦電型光検出器。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれかに記載の焦電型光検出器が複数、2次元配置されていることを特徴とする焦電型光検出装置。
【請求項8】
請求項1〜請求項6のいずれかに記載の焦電型光検出器と、前記焦電型光検出器の出力を処理する制御部と、を有することを特徴とする電子機器。
【請求項9】
請求項7記載の焦電型光検出装置と、前記焦電型光検出装置の出力を処理する制御部と、を有することを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−96786(P2013−96786A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238551(P2011−238551)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】