説明

焦電型赤外線センサ

【課題】 小型・広視野角・高出力の焦電型赤外線センサを提供する。
【解決手段】 シールドケース8に装着された赤外線透過フィルター7と表面電極2a、2bが対向する領域の少なくとも一部分に、赤外線が反射する反射膜9を少なくとも1箇所以上設け、赤外線透過フィルター7と表面電極2a、2bを極近で配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焦電型赤外線センサに関し、特に数mの範囲で十分な検知能力が得られる焦電型赤外線センサに関する。
【背景技術】
【0002】
焦電型赤外線センサは、赤外線センサの一種であり、焦電体基板の表裏に電極が設置されてなる焦電素子を検出画素として備えている。
【0003】
焦電体基板の表面には自発分極による表面電荷が存在する。通常は表面電荷が周囲の浮遊電荷を引き寄せるため、周囲温度が一定であれば焦電体基板の表面は電気的に中性の状態に保たれている。
【0004】
周囲温度が変化すると、それに伴い焦電体基板における自発分極の状態は変化する。自発分極の状態変化は焦電体基板の周囲に存在する浮遊電荷の応答よりも早いため、焦電体基板表面の電気的な中性状態が崩れて焦電体基板表面には表面電荷が生じる。この表面電荷を電極から出力信号として取り出すことで、焦電素子をセンサとして使用できる。焦電型赤外線センサの多くは、上記のような焦電素子を検出画素として複数個備えたセンサ素子群により構成されている。
【0005】
焦電型赤外線センサの例として、赤外線を検知する電極(受光主エレメント)と周囲の温度変化をモニターして温度変化を補正する電極(温度補償エレメント)を備えた、補償シングル型と呼ばれる焦電型赤外線センサが特許文献1で開示されている。
【0006】
特許文献1において、赤外線フィルターのシールドケース(外装缶)の窓部には、受光主エレメントのみに赤外線が入光するように赤外線を透過させるフィルターが設置されている。また、温度補償エレメントは外部から照射される赤外線の影響を受けないよう、遮蔽されている。
【0007】
また特許文献2には、分極方向が互いに異なる2つの集電素子を、直列または並列に接続したデュアル型の赤外線センサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実用新案登録第3043381号公報
【特許文献2】特開昭62−187277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような受光主エレメントおよび温度補償エレメントの構造(形状、寸法)は、シールドケースの大きさと、赤外線が透過する開口部の面積によって制限される。
【0010】
例えば、シールドケース上面部の開口部を大きくして赤外線の照射量を増やし、センサの視野角を拡げようとすると、温度補償エレメントに赤外線が回り込んでセンサの感度に影響を及ぼす可能性がある。逆に開口部を小さくすると、赤外線の照射範囲や照射量を制限してしまうだけでなくセンサの視野角も狭くなり、センサ出力が低下する。
【0011】
また、センサの視野角は、開口部の面積が同じであれば受光主エレメントと開口部との距離が長い程狭くなり、短い程広くなる。しかし、開口部とセンサ素子の空間にセンサ感度を向上させるための遮光板や集光ミラーを配置するため、シールドケースとセンサ素子の間には一定距離以上の空間が必要である。この空間が存在することは実際の設計において視野角の設定可能範囲を制限する要因であり、センサを小型化するための妨げとなっていた。
【0012】
そこで、本発明の課題は、小型、広視野角で十分な出力が得られる焦電型赤外線センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明による焦電型赤外線センサは、焦電体基板の受光面側となる一面に表面電極を配し、前記焦電体基板の他面の前記表面電極に対応する位置に裏面電極を配した焦電素子を少なくとも一つ備えるセンサ素子と、前記センサ素子を覆い、前記表面電極に対向する開口部を有するシールドケースと、前記開口部に設置される赤外線透過フィルターと、前記センサ素子の出力信号をインピーダンス変換して出力する出力回路を備えた焦電型赤外線センサであって、前記赤外線透過フィルターと前記表面電極が互いに対向する領域の少なくとも一部分に、外部から入射する赤外線を反射する反射膜を少なくとも1箇所備えたことを特徴とする。
【0014】
ここで、表面電極と裏面電極は焦電体基板を挟んで互いに対向して配置されるため、コンデンサが形成される。表面電極は、赤外線の受光量に応じて出来るだけ大きな表面電荷を得られるよう、電極面積を大きくすることが望ましい。電極面積を大きくすることで、センサ素子の静電容量が大きくなり、センサのS/N比が向上する。
【0015】
また、必要に応じて表面電極の表面に酸化チタンまたはカーボン等の赤外線吸収膜をコーティングすることにより、赤外線の吸収効率が向上する。すなわち、熱効率が高く、外来ノイズに強い、高感度の赤外線センサが得られる。
【0016】
焦電体基板の裏面には、裏面電極のほかにセンサの出力信号を引き出す出力電極が設けられる。出力電極は、表面電極で吸収された熱の放出を出来るだけ少なくするため、表面電極および裏面電極から出来るだけ離して配置することが望ましい。
【0017】
シールドケースは電磁シールド性能が高く線膨張係数の低い42アロイを使用することが望ましいが、その代用として安価なFe系金属または非磁性系の金属にNiメッキ等で表面処理を施したものを使用しても構わない。
【0018】
赤外線透過フィルターは、珪素やゲルマニウムなどの赤外線透過材に硫化亜鉛等の層を多層形成して得られる。透過させる赤外線の波長は5μm〜15μm程度とするのが望ましい。必要であれば、さらに反射防止膜を多層形成することで透過率を向上できる。
【0019】
出力回路は接合型電界効果トランジスタのみで構成されるのが望ましいが、基準電圧の変動を抑制するため、必要に応じて抵抗値の高い(数GΩ〜数十GΩ程度)抵抗器をセンサ素子と並列に接続しても構わない。このような構成とすることで、安定したセンサ出力が得られる。
【0020】
また、本発明による焦電型赤外線センサは、表面電極が複数の領域に分割され、かつ互いに接続されており、分割された表面電極同士を接続する接続パターンと対向する領域に反射膜が設けられることを特徴とする。検知領域を分割することで、デュアル型の赤外線センサとして使用できる。また、検知対象物の動きをより細かく検知できる赤外線センサが得られる。
【0021】
また、本発明による焦電型赤外線センサは、赤外線透過フィルターに形成される反射膜を、スパッタ法または真空蒸着法により形成することを特徴とする。スパッタ法または真空蒸着法により薄い反射膜を形成し、反射膜の熱容量を小さくすることで反射膜がセンサ素子の特性に与える影響をさらに低減できる。
【0022】
また、本発明による焦電型赤外線センサは、赤外線透過フィルターに形成される反射膜を、印刷法または塗布、転写、ディップ工法のいずれかにより形成することを特徴とする。
【0023】
また、本発明による焦電型赤外線センサは、赤外線透過フィルターに形成される反射膜を、前記シールドケースまたは前記赤外線透過フィルターと薄板を貼り合わせて形成することを特徴とする。
【0024】
さらに、本発明による焦電型赤外線センサは、表面電極を複数に分割して、隣り合った表面電極をペアにして接続し、一方を反射膜で遮蔽して温度補償電極として使用し、他方を赤外線検知電極として使用してもよい。このような構成とすることで、センサ素子は極性を反転させて直列に接続された状態と等価になり、外乱による影響をさらに低減できる。
【0025】
さらに、本発明による焦電型赤外線センサの赤外線透過フィルターに設ける反射膜は、前述のペアにして接続した表面電極の接続パターンと対向するように配置してもよい。各々のセンサ素子が赤外線を検知できる範囲(視野角)は、集電素子の各々の電極と反射膜との位置関係によって決まるので、このように反射膜を配置することにより、視野角が互いに交わらないように配置できる。
【発明の効果】
【0026】
上記のように、赤外線透過フィルターと表面電極が互いに対向する領域の少なくとも一部分に外部から入射する赤外線を反射する反射膜を設けて、赤外線透過フィルターと表面電極を極近で配置することにより、反射膜を赤外線の遮光板として使用できる。すなわち、赤外線の遮蔽が必要な補償電極に対しては、赤外線の回り込みを防ぎ、補償電極を赤外線から確実に遮蔽できる焦電型赤外線センサが得られる。
【0027】
さらに、赤外線の受光が必要な受光側電極に対しては、十分な視野角を持つ焦電型赤外線センサが得られる。さらに、シールドケースとセンサ素子のクリアランスを低減することで、小型化も容易な焦電型赤外線センサが得られる。
【0028】
また、赤外線透過フィルターと表面電極を極近距離で配置することから、視野角を自由にかつ高い精度で設定できる焦電型赤外線センサが得られる。例えば、デュアル型の焦電型赤外線センサにおいては、二つに分割され互いに接続された表面電極がそれぞれ検知可能な視野角を、互いに打ち消さないよう設定し、赤外線受光領域を各々の電極に分担できる。
【0029】
このような構成とすることで、1つの電極で構成する視野角に比べて広範囲な視野角を持つ焦電型赤外線センサが得られる。さらに、各々の受光電極で検知可能な領域に、赤外線が検知されない領域、つまり不感帯領域を設けて受光範囲からの出入りを検知することで、さらに狭い範囲での移動を検知可能な焦電型赤外線センサが得られる。
【0030】
また、反射膜はスパッタ法または真空蒸着法により反射膜を形成してもよい。これらの方法を用いることで膜厚を薄くできる。膜圧の薄い反射膜は熱容量が非常に少なく、放熱性が向上するため、センサ素子に及ぼす熱的な影響を低減させた焦電型赤外線センサが得られる。
【0031】
また、赤外線透過フィルターに形成される反射膜を、印刷法または塗布、転写、ディップ工法により形成すれば、スパッタ装置や真空蒸着装置のような大掛かりな製造設備を用いることなく反射膜を形成できる。すなわち、安価な焦電型赤外線センサが得られる。
【0032】
また、上記方法に変えて、シールドケースまたは前記赤外線透過フィルターに、表面に反射膜を形成した薄板を貼り合わせることにより、より簡便に焦電型赤外線センサが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明による焦電型赤外線センサの実施形態を示す概略図であり、図1(a)は本発明による焦電型赤外線センサの動作説明図である。図1(b)はセンサ素子の平面図であり、図1(c)は赤外線透過フィルターの平面図であり、図1(d)は本発明による焦電型赤外線センサのブロック図である。
【図2】本発明による焦電型赤外線センサの第二の実施形態を示す概略図であり、図2(a)は本発明による焦電型赤外線センサの動作説明図である。図2(b)はセンサ素子の平面図であり、図2(c)は赤外線透過フィルターの平面図である。
【図3】本発明による焦電型赤外線センサの第三の実施形態を示す概略図であり、図3(a)は本発明による焦電型赤外線センサの動作説明図である。図3(b)はセンサ素子の平面図であり、図3(c)は赤外線透過フィルターの平面図である。
【図4】本発明による焦電型赤外線センサの第四の実施の形態を示す図であり、図4(a)はセンサ素子の平面図であり、図4(b)は赤外線透過フィルターの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0035】
図1は、本発明による焦電型赤外線センサの実施形態を示す概略図である。図1(a)は本発明による焦電型赤外線センサの動作説明図である。図1(b)はセンサ素子の平面図であり、図1(c)は赤外線透過フィルターの平面図であり、図1(d)は本発明による焦電型赤外線センサのブロック図である。図1(a)上部に示すように、測定対象物が視野角11aに図の左側から進入すると、表面電極2a近傍の電気的な中性状態が崩れ、Voutの電圧を基準としてマイナス側に電位が検出される。さらに移動を続けて視野角11bに進入すると、今度は表面電極2b近傍の電気的な中性状態が崩れ、Voutの電圧を基準としてプラス側に電位が検出されるので、測定対象物が出入りする際の方向検知として利用することが可能である。
【0036】
本実施形態において、センサ素子1は図1(b)に示すとおり、受光面側に表面電極2aおよび2bが互いに接続された状態で設置され、表面電極2aは温度補償電極、表面電極2bは受光電極としてそれぞれ使用される。また、センサ素子1の裏面には、焦電体基板を挟んで表面電極2aおよび2bとそれぞれ対向するように裏面電極3aおよび3bが設置される。
【0037】
裏面電極3aおよび3bに設けられた出力電極は導電接着剤5により回路基板6に接着される。回路基板6には、インピーダンス変換回路として、接合型電界効果トランジスタ4が実装されている。図1(d)に示すように、接合型電界効果トランジスタ4のゲート入力電極は裏面電極3aに、GNDは裏面電極3bにそれぞれ接続され、センサ素子1の出力信号をインピーダンス変換して出力する。
【0038】
回路基板6の外周はシールドケース8で覆われ、シールドケース8の受光面側に設けられた開口部10には、赤外線透過フィルター7が固着される。赤外線透過フィルター7には、図1(c)に示すとおり、赤外線透過フィルター7と表面電極2aが対向する位置に、赤外線を反射する反射膜9が設けられる。本実施形態においては、反射膜9として厚み0.5μmのAg膜を形成する。
【0039】
ここで、反射膜9は、センサ素子の高さに影響を与えないようにするため、スパッタ法または真空蒸着法等により1μm以下の厚みで形成する。反射膜9の熱容量はセンサ素子1の熱容量に比較して十分小さいため、センサ素子の特性に与える影響はきわめて小さい。なお、この反射膜を形成する工程は、赤外線透過フィルター7の製造過程における真空蒸着工程で、赤外線透過膜の形成と同時に実施できる。
【0040】
また、反射膜9は、印刷法または塗布、転写、ディップ工法のいずれかにより形成することもできるし、表面に反射膜を形成した薄板を所定の形状にカットしたものを、シールドケースまたは前記赤外線透過フィルターに貼付してもよい。これらの方法によれば、スパッタ装置や真空蒸着装置のような大掛かりな製造設備を用いることなく反射膜を形成できるので、安価な焦電型赤外線センサが得られる。
【0041】
赤外線を検知可能な視野角は、この反射膜9と、シールドケース8の開口部10と、表面電極2aおよび2bの位置関係によって決定される。ここで反射膜9は、シールドケースの外側に配置しても構わないが、センサ素子1の受光側電極面に対向する側に配置することで、遮蔽が必要な電極である表面電極2aの視野角を狭くする一方、受光用の電極である表面電極2bの視野角を広くできる。そのため視野角が重複した場合でも、センサ出力が相殺される領域を極めて少なくできる。その結果、数mの範囲であれば十分な検知能力を有する焦電型赤外線センサが得られる。
【0042】
図2は本発明による焦電型赤外線センサの第二の実施形態を示す概略図であり、図2(a)は本発明による焦電型赤外線センサの動作説明図である。図2(b)はセンサ素子の平面図であり、図2(c)は赤外線透過フィルターの平面図である。図2(a)において、裏面電極3aおよび3bと表面電極2aおよび2bとが焦電体基板を挟んでそれぞれ対向している点は先の実施形態と同様であるが、焦電体基板の受光面側に設置された表面電極2aおよび2bは、いずれも受光電極として使用し、反射膜9は表面電極2aを覆うのではなく、図2(b)、(c)に示すように表面電極2a、2bの中間に存在する接続パターンを覆うように形成する点で異なる。
【0043】
以上の構成によれば、分極方向の異なる焦電体が二つ直列に接続された状態と等価になり、仮に外部温度の変化または外来光等で両焦電素子に電荷が発生したとしても、表面電極2aおよび2b上に存在する電荷の総量は一定であるから、各々の出力が相殺され、赤外線以外の影響が補償される。
【0044】
この焦電型赤外線センサの動作を、図2を用いて説明する。図2(a)において、仮に測定対象物が図の左側から視野角11bに進入すると、表面電極2a近傍の電気的な中性状態が崩れ、Voutの電圧を基準としてマイナス側に電位が検出される。さらに移動を続けて視野角11aに進入すると、表面電極2b近傍の電気的な中性状態が崩れ、Voutの電圧を基準としてプラス側に電位が検出されるので、測定対象物が出入りする際の方向検知として利用することが可能である。さらには反射膜の幅を変えることで、各視野角で検知されない中間の領域(不感帯領域)を容易に形成できる。この不感帯領域と視野角との間の出入りを検知することで、より測定対象物が狭い範囲で動く場合にもセンサを反応できる。
【0045】
本実施形態において、センサ素子表面電極で吸収した熱の放出を出来るだけ少なくするため、センサ素子1と回路基板6は一定の間隔を空けて実装すると良い。
【0046】
また、ノイズ対策として、赤外線透過フィルター7はシールドケース8の開口部に固着し、シールドケース8の一端を回路基板6のグランドへ電気的に接続しておくと良い。
【0047】
赤外線を検知可能な視野角は、この反射膜9と、シールドケース8の開口部10と、表面電極2aおよび2bの位置関係によって決定される。反射膜9を表面電極2a、2bの中間に存在する接続パターンを覆うように形成することにより、表面電極2a、2bが赤外線を検知可能な視野角が重なり合うことがなくなり、センサ出力が相殺されることはない。
【0048】
図3は本発明による焦電型赤外線センサの第三の実施形態を示す概略図であり、図3(a)は本発明による焦電型赤外線センサの動作説明図である。図3(b)はセンサ素子の平面図であり、図3(c)は赤外線透過フィルターの平面図である。図3(a)上部において、仮に測定対象物が左側の視野角11bに図の左側から進入すると、表面電極2a近傍の電気的な中性状態が崩れ、Voutの電圧を基準としてマイナス側に電位が検出される。さらに移動を続けて視野角11aに進入すると、プラス側の電位が検出される。さらに右に移動を続けて右側の視野角11bに侵入すると表面電極2b近傍の電気的な中性状態が崩れ、Voutからマイナスの電位が検出される。また、視野角11aと11bの間には、どちらの視野範囲にも属さない不感帯領域をつくることにより検知領域を細分化することが可能となり、各領域を横切った場合は勿論のこと、細かい動作においてもセンサ出力が得られる。
【0049】
図3(b)において、表面電極2a、2bは、電極幅の比をおおよそ1:2:1とした焦電体受光面のほぼ中央に配置し、隣り合う電極同士を互いに接続する。すなわち、表面電極2aを焦電体のほぼ中央に、その両脇に表面電極2aと高さが等しく幅がほぼ半分の表面電極2bをそれぞれ配置する。さらに、焦電体基板を挟んで表面電極2a、2bと対向するように裏面電極3a、3bを配置する。
【0050】
先の第二の実施形態と同様に、図3(c)に示すように表面電極2a、2bの中間に存在する接続パターンを覆うように反射膜9を形成する。赤外線を検知可能な視野角は、この反射膜9と、シールドケース8の開口部10と、表面電極2aおよび2bの位置関係によって決定される。反射膜9を表面電極2a、2bの中間に存在する接続パターンを覆うように形成することにより、表面電極2a、2bが赤外線を検知可能な視野角が重なり合うことはなくなり、センサ出力の相殺はなくなる。
【0051】
図4は本発明による焦電型赤外線センサの第四の実施の形態を示す図であり、図4(a)はセンサ素子の平面図であり、図4(b)は赤外線透過フィルターの平面図である。図4において、表面電極はほぼ等しい面積で4つに分割され、表面電極2a、2bと表面電極2c、2dをペアにしてそれぞれ接続し、その表面電極にそれぞれ対向して形成された裏面電極3a、3cと裏面電極3b、3dおよび出力電極によって表面電極2a、2bと表面電極2c、2dが並列に接続されている。このような構成とすることで、電極が2つの場合に比べてより細かい位置の検知が可能となる。さらに細かい検知を必要とするような電極を複数並べるアレイ型の素子においても、これら同様、容易に対応できる。
【0052】
尚、これらの実施例に留まらず、請求の範囲内で様々な工夫を加えることも可能であり、様々な要求に応じて変形することでもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 センサ素子
2a、2b、2c、2d 表面電極
3a、3b、3c、3d 裏面電極
4 接合型電界効果トランジスタ
5 導電接着剤
6 回路基板
7 赤外線透過フィルター
8 シールドケース
9 反射膜
10 開口部
11a、11b 視野角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焦電体基板の受光面側となる一面に表面電極を配し、前記焦電体基板の他面の前記表面電極に対応する位置に裏面電極を配した焦電素子を少なくとも一つ備えるセンサ素子と、前記センサ素子を覆い、前記表面電極に対向する開口部を有するシールドケースと、前記開口部に設置される赤外線透過フィルターと、前記センサ素子の出力信号をインピーダンス変換して出力する出力回路を備えた焦電型赤外線センサであって、前記赤外線透過フィルターと前記表面電極が互いに対向する領域の少なくとも一部分に、外部から入射する赤外線を反射する反射膜を少なくとも1箇所備えたことを特徴とする焦電型赤外線センサ。
【請求項2】
前記表面電極は複数の領域に分割され、かつ互いに接続されており、前記反射膜は、前記分割された表面電極同士を接続する接続パターンと対向する領域に設けられることを特徴とする、請求項1に記載の焦電型赤外線センサ。
【請求項3】
前記反射膜は、スパッタ法または真空蒸着法により形成されることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の焦電型赤外線センサ。
【請求項4】
前記反射膜は、印刷法または塗布、転写、ディップ工法のいずれかにより形成されることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の焦電型赤外線センサ。
【請求項5】
前記反射膜は、薄板を前記シールドケースまたは前記赤外線透過フィルターへ貼り合わせて形成されることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の焦電型赤外線センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−177680(P2012−177680A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−14984(P2012−14984)
【出願日】平成24年1月27日(2012.1.27)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)
【Fターム(参考)】