説明

焼きパンの製造における老化防止酵素混合物の使用

【課題】老化の防止されたパンの製造方法を提供する。
【解決手段】デンプン質生地を焼くことにより焼きパンを製造する方法であって、穀粉1kgあたり750〜75,000のマルトース生成型アミラーゼ単位(MAU)の量のマルトース生成型アミラーゼ(前記マルトース生成型アミラーゼは最適温度が50℃を超える)と、MAU活性1単位あたり0.01〜3.0のアミログルコシダーゼ単位(AGU)の量のアミログルコシダーゼとを含む2種以上の酵素の組み合わせを前記生地に持ち込む。マルトース生成型アミラーゼとアミログルコシダーゼとの組み合わせは、非常に有効な老化防止剤である。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
発明の詳細な説明
発明の技術分野
本発明は、焼きパンの老化防止に関する。より詳細には、本発明は、このような老化を防ぐための、マルトース生成型アミラーゼとアミログロコシダーゼとを含む酵素混合物の使用に関する。
【0002】
発明の背景
焼き食品(パンなど)の老化はよく知られた問題である。老化、または「老化してくる」とは、焼き食物におけるそのおいしさを減少させる化学的および物理的過程である。老化は、パンの中身の硬さの増加、パンの中身芯の弾性または弾力性の低下、およびパンの外皮が硬くなり革のようになる変化としてはっきりと表れるようになる。老化の最も重要な側面であると考えられるパンの中身の硬さの増加は、パン製品が別の面で消費に不適当となるよりはるかに前に、消費者に気付かれる。
【0003】
老化は、一般に考えられるように、水の蒸発に起因する単なる乾ききり過程ではない。パンは、湿った環境中でも老化する傾向があり、凍結温度のすぐ上の温度では最も急速に老化する。老化の正確な機構は依然として知られていないが、1つの重要な機構は、デンプン顆粒から間隙空間への水分の移動、ならびにデンプンのアミロースおよびアミロペクチン分子の再編成であると思われる。デンプン分子の再編成の過程は、老化と呼ばれる。老化の際、デンプン顆粒中に元々存在するものと同様の結晶様構造が形成することがあり、その過程は再結晶化と呼ばれる。老化は通常、パンの中身のテクスチャが硬くなり、弾力性が低下した、老化したパンをもたらす。
【0004】
デンプンは、焼き食品の必須成分である。焼きプロセスの間に、デンプンはゼラチン化し、大量の水を吸収する;その一方、タンパク質は変性する。焼いた直後、デンプンは老化し始める。パン芯の硬さは増加するが、これは最初の数時間ではまだ利点と見なされる。特に、パンの中身の切りやすさと咀嚼特性はこの期間中に改善される。
【0005】
さらなる保存中に、非分枝状デンプン画分であるアミロースが最初に老化した後、デンプンの分枝状画分であるアミロペクチンが老化すると推測される。同時に、パン芯はより硬くなり、時間の経過と共にますます弾性が低くなり、最終的には乾燥し、硬くなる、すなわちパンは老化してしまう。さらに、保存中に、パンの外皮はパリパリした食感を失い、革のようになる。これは、水が老化により放出され、パンの中身からパンの外皮に外に向かって拡散した結果であると推測される。
【0006】
これらの老化現象の全てに関する原因的な重要反応がデンプン老化であることは明白である。この現象を抑制または回避することが、多数の保護権および刊行物の主題である。
【0007】
保存中にパンの中身がかなり固くなることを少なくとも部分的に防ぐための1つの戦略は、既に長い間知られている。すなわち、パンの中身を最初からより柔らかくすることである。これを行うための選りすぐりの手段は、モノグリセリド/ジグリセリドなどの乳化剤であり、これを生地に添加し、最初から特に柔らかいパンの身の構造を作り出す。Aspergillus oryzaeなどの真菌に由来するα−アミラーゼの使用は同様の効果を有する。それは損傷したデンプン粒子に対して作用し、それによって、生地の粘度を低下させ、発酵可能性糖を作り出す。その結果、出来上がった焼き上げ品の体積が増すが、これはより柔らかいパンの中身と一致する。新鮮なパンが柔らかいという事実は別として、この戦略は、パンの中身が老化する際の、より固く、より低い弾性のコンシステンシーの発現を防止しないか、または不十分に防止する。
【0008】
さらなる戦略は、焼いている間に2つのデンプン部分の酵素媒介性部分的加水分解により老化を抑制させることである。パンの中身の酵素媒介性加水分解は、好ましくは、デンプンがゼラチン化した後に、すなわち、約65℃超で起こるべきである。その結果、焼き製品中のデンプンの構造は根本的に変化し、老化する能力が制限される。デンプンの部分加水分解により生成された断片は、短すぎて再結晶化できず、残存する高分子量デンプンと結合することにより、再結晶化の速度が低下する。Bacillus由来の熱安定性マルトース生成型アミラーゼは、商標名Novamyl 10,000(登録商標)(Novozymes A/S、デンマークの製品)で市販されており、デンプンゼラチン化温度でデンプンを加水分解することにより老化を抑制させる能力のおかげで、老化防止剤として製パン工業において広く使用されている(WO91/04669)。Novamyl 10,000(登録商標)は、60〜70℃で最も活性が高い(Christophersen, C.ら、1997, Starch, Vol. 50, No. 1, 3945)。
【0009】
焼きパン中の老化防止剤としてのマルトース生成型アミラーゼの使用にかなりの費用が伴うので、費用対効果のより高い老化防止剤が必要とされている。
【0010】
発明の概要
本発明者らは、極めて有効であり、使用時コストが現行の酵素性老化防止剤、特に熱安定性マルトース生成型アミラーゼより低い、焼きパンのための酵素性老化防止剤を提供することができた。
【0011】
本発明者らは、老化防止剤としての熱安定性マルトース生成型アミラーゼの有効性を、そのようなアミラーゼをアミログルコシダーゼと組み合わせることにより実質的に改善することができることを発見した。
【0012】
したがって、本発明の一態様は、デンプン質生地を焼くことにより焼きパンを製造する方法であって、
・穀粉1kgあたり750〜75,000のマルトース生成型アミラーゼ単位(MAU)の量のマルトース生成型アミラーゼ(前記マルトース生成型アミラーゼは、至適温度が50℃を超える)と;
・MAU活性1単位あたり0.01〜3.00のアミログルコシダーゼ単位(AGU)の量のアミログルコシダーゼと
を含む2種以上の酵素の組み合わせを生地に持ち込むことを含む方法に関する。
【0013】
本発明のもう1つの態様は、上記の方法により得られる焼きパンに関する。
【0014】
マルトース生成型アミラーゼとアミログルコシダーゼとの組み合わせの使用は、WO 2011/039324に記載されている。この国際特許出願は、1種以上のマルトース生成型アルファ−アミラーゼと、1種以上の生デンプン分解酵素と、少なくとも1種の脂肪分解性酵素とを用いて蒸しパンを製造するために使用される生地を作製する工程を含む、蒸しパン組成物を調製するための方法を記載している。WO2011/039324のExamples 7〜10は、Opticake(商標) 50 BG(マルトース生成型アルファ−アミラーゼ)とTrametes(商標)AMG(生デンプン分解酵素)との組み合わせを使用する蒸しパンの製造を記載している。
【0015】
さらに、Gerrardら(The Role of Maltodextrins in the Staling of Bread, Journal of Cereal Science 26(1997) 201〜209)は、パンの老化に対するアルファ−アミラーゼ(Novamyl(登録商標))の添加および/または非常に高レベルのグルコアミラーゼ(GA300N、Genencor)の添加の効果を精査した研究の結果を記載している。
【0016】
凍結し、発酵した層状生地における熱安定性アミログルコシダーゼと非熱安定アミラーゼとの組み合わせの使用が、US5,589,207に記載されている。より詳細には、この米国特許は、60℃の温度で不活性になる真菌アミラーゼを、約60℃を超えても活性状態を維持するアミログルコシダーゼと組み合わせて用いることを教示している。この特許の例は、真菌アミラーゼFungamyl(登録商標)Mg 35000とアミログルコシダーゼAMG 300 MGとの組み合わせの使用を記載している。この米国特許では、熱安定性アミログルコシダーゼの使用が、酵母活性が利用可能でなくなった後の単糖類の形成を確保し、それにより、これらの単糖類がパンの外皮の着色反応に関与し得ると説明されている。
【0017】
発明の詳細な説明
本発明は、デンプン質生地を焼くことにより焼きパンを製造する方法であって:
・穀粉1kgあたり750〜75,000のマルトース生成型アミラーゼ単位(MAU)の量のマルトース生成型アミラーゼ(前記マルトース生成型アミラーゼは至適温度が50℃を超える)と;
・MAU活性1単位あたり0.01〜3.0のアミログルコシダーゼ単位(AGU)の量のアミログルコシダーゼと
を含む2種以上の酵素の組み合わせを前記生地に持ち込むことを含む方法を提供する。
【0018】
用語「マルトース生成型アミラーゼ」は、ここで使用する限りにおいて、IUPAC分類番号がEC 3.2.1.1.であり、マルトトリオースをマルトースとグルコースとに加水分解することができるデンプン分解酵素(グルカン1,4−α−マルトヒドロラーゼ)を指す。
【0019】
用語「アミログルコシダーゼ」は、ここで使用する限りにおいて、IUPAC分類番号がEC 3.2.1.3.であるもう1つのデンプン分解酵素を指す。アミログルコシダーゼ(または1,4−α−D−グルカングルコヒドロラーゼ)は、アミロースとアミロペクチンとの非還元性末端の最後のα(1−4)グリコシド結合を切断してグルコースをもたらすだけでなく、α(1−6)グリコシド結合も切断する。
【0020】
酵素の「至適温度」をここで参照する場合はいつでも、酵素活性が最も高い温度を意味する。マルトース生成型アミラーゼについては、至適温度はpH5.0で好適に決定される。アミログルコシダーゼについては、至適温度はpH4.2で好適に決定される。
【0021】
酵素の「至適pH」は、酵素活性が最も高いpHである。至適pHは、60℃で好適に測定される。
【0022】
マルトース生成型アミラーゼ活性の1単位(MAU)は、37℃でpH5.0の0.1Mシトラートバッファー1mlあたりマルトトリオース基質10mgの濃度で1秒あたりに1ナノモルのマルトースを放出させるのに必要な酵素の量と定義される。
【0023】
アミログルコシダーゼ活性の1単位(AGU)は、37℃でpH5.0の0.1Mシトラートバッファー1mlあたりマルトース基質10mgの濃度で1秒あたりに1ナノモルのグルコースを放出させるのに必要な酵素の量と定義される。
【0024】
本発明の方法は、様々な種類のアミログルコシダーゼを好適に用いることができる。好ましくは、用いられるアミログルコシダーゼは、Aspergillus、RhizopusまたはTalaromycesの真菌株において見つかるDNA配列によってコードされているポリペプチドである。好適な真菌の例としては、Aspergillus niger、Rhizopus delemar、Rhizopus niveus、Rhizopus oryzaeおよびTalaromyces emersoniiが挙げられる。最も好ましくは、本発明に従って用いられるアミログルコシダーゼは、Aspergillus nigerの株において見つかるDNA配列によってコードされているポリペプチドである。
【0025】
本発明の方法において用いられるアミログルコシダーゼは、典型的には、至適pHが1.5〜5.5の範囲内、特に、2.0〜4.5の範囲内にある。
【0026】
有利には、アミログルコシダーゼは、穀粉1kgあたり40〜40,000AGU、より好ましくは、穀粉1kgあたり80〜23,000AGUの量で生地中に持ち込まれる。別の表現をすれば、アミログルコシダーゼは、好ましくは、MAU活性1単位あたり0.05〜0.50AGUの量、最も好ましくは、MAU活性1単位あたり0.10〜0.30AGUの量で生地中に持ち込まれる。
【0027】
本発明の方法において用いられるマルトース生成型アミラーゼは、好ましくは、至適温度が52〜90℃の範囲内、最も好ましくは、55〜85℃の範囲内にある。
【0028】
マルトース生成型アミラーゼの至適pHは、好ましくは、4.0〜7.5の範囲内、最も好ましくは、4.5〜7.0の範囲内にある。
【0029】
本発明者らは、アミログルコシダーゼの至適温度がマルトース生成型アミラーゼの至適温度よりも実質的に低い場合でも、老化を非常に効果的に最小化することができることを見出した。好ましくは、アミログルコシダーゼの至適温度は、マルトース生成型アミラーゼの最適温度よりも少なくとも10℃、より好ましくは少なくとも12℃、最も好ましくは少なくとも14℃低い。典型的には、アミログルコシダーゼの至適温度は、55℃未満である。
【0030】
本発明に従って用いられるマルトース生成型アミラーゼは、好ましくは、Bacillus株、最も好ましくはGeobacillus stearothermophilusの株において見つかるDNA配列によってコードされているポリペプチドである。
【0031】
マルトース生成型アミラーゼは、典型的には、穀粉1kgあたり1,000〜40,000MAU、最も好ましくは、穀粉1kgあたり1,500〜7,500MAUの量で生地中に持ち込まれる。
【0032】
1つの好ましい態様によれば、本発明の方法において用いられるパン生地は、ライ麦粉/小麦粉混合生地である。別の好ましい実施形態によれば、パン生地は小麦粉生地である。
【0033】
本発明の方法において、デンプン質生地は、典型的には、穀粉と、水と、酵母と、マルトース生成型アミラーゼと、アミログルコシダーゼと、任意の他の製パン成分とを組み合わせることにより調製される。マルトース生成型アミラーゼとアミログルコシダーゼとの他に、本発明の方法は、α−アミラーゼ、キシラナーゼおよびプロテアーゼなどの他の食品等級酵素を用いてもよい。
【0034】
デンプン質生地は、好ましくは、180℃を超える温度、より好ましくは200℃を超える温度で焼く。生地が酵母含有生地である場合、生地を、好ましくは、焼く前に発酵させる。
【0035】
本発明の方法の特に好ましい態様によれば、製パン改良剤を生地に持ち込むことによって生地を製造し、前記製パン改良剤は、
・乾燥物質1kgあたり7,500〜75,000,000のマルトース生成型アミラーゼ単位(MAU)の量のマルトース生成型アミラーゼ(前記マルトース生成型アミラーゼは至適温度が50℃を超える)と;
・MAU活性1単位あたり0.01〜3.0のアミログルコシダーゼ単位(AGU)の量のアミログルコシダーゼと
を含む2種以上の酵素の組み合わせを含む。
【0036】
上記製パン改良剤は、典型的には、穀粉の0.1〜10重量%、特に、0.3〜5重量%の濃度でパン生地中で用いられる。
【0037】
典型的には、アミログルコシダーゼは、乾燥物質1kgあたり100〜120,000,000AGUの量、さらにより好ましくは、乾燥物質1kgあたり500〜30,000,000AGUの量、最も好ましくは、乾燥物質1kgあたり750〜4,000,000AGUの量で製パン改良剤中に存在する。
【0038】
マルトース生成型アミラーゼとアミログルコシダーゼとの他に、本発明の方法において用いられる製パン改良剤は好ましくは、以下の製パン成分のうちの1種以上、より好ましくは2種以上、最も好ましくは3種以上を含む:
・乳化剤;
・トリグリセリド油または脂肪;
・他の酵素、とりわけ、α−アミラーゼ、ヘミセルラーゼ、リパーゼ、プロテアーゼおよびこれらの組み合わせから選択される酵素;
・グルテン;
・アスコルビン酸;
・保存補助剤、例えば、プロピオン酸カルシウム;
・化学膨張剤;
・穀粉(cereal flour)。
【0039】
典型的には、上記の製パン成分は、全体として、製パン改良剤の少なくとも50重量%、より好ましくは、少なくとも70重量%に相当する。
【0040】
本発明の方法において用いられる製パン改良剤は、好ましくは、液体または粒子状製品である。より好ましくは、製パン改良剤は、質量加重平均粒径が10〜1000μm、より好ましくは50〜800μm、最も好ましくは100〜500μmの範囲内にある粉末または顆粒である。
【0041】
本発明のもう1つの態様は、ここで先に定義された方法により得られる焼きパンに関する。
【0042】
本発明を、以下の例によってさらに説明するが、本発明はそれらに限定されない。
【0043】

例1
ライ麦/小麦パン生地を、表1に示すレシピを基に、成分をDiosnaミキサー中で6分間ゆっくりと混合し、2分間速く混合することにより調製した。
【表1】

【0044】
2つの異なる生地を、以下の老化防止酵素を使用して調製した:
製品I: 80ppmのNovamyl(登録商標)10,000 BG:小麦粉1kgあたり6080MAU、
製品II: 60ppmのNovamyl(登録商標)10,000 BG:小麦粉1kgあたり4560MAU+20ppmのBakezyme(登録商標)AG 800 BG:小麦粉1kgあたり840AGU(DSM製、オランダ)。
【0045】
上記の市販の酵素調製物の活性を表2で特定する。
【表2】

【0046】
混合した後、生地を周囲温度で30分間休ませた。その後、1100gの生地片を成型し、缶に入れ、32℃で50分間発酵させた。発酵後、生地片をデッキオーブン中で50分間焼いた。オーブンの温度は、260℃で10分間維持した後、その後の40分間の間に260から230℃に直線的に低下するようにプログラムした。
【0047】
パンを、周囲温度で最大9日間、標準的なポリエチレン袋中で保存した。
【0048】
パンの中身の硬さを、Stable Micro SystemsからのTA.XT Plusテクスチャ分析装置により測定した。使用した方法は以下の通りであった:円筒状のパンの中身を焼きパンの中心から切り取った。円筒の直径は45mmであり、その長さは30mmであった。測定プローブの直径は50mmであり、試験速度は2mm/secであり、プローブはパンの中身に10mm進入した。これを行うのに必要な力をg単位で測定し、この力は硬さに等しい。
【0049】
4回の反復に基づいて2つの異なる製品について得られた結果を、表3に示す。
【表3】

【0050】
例2
小麦生地を、表4に示すレシピを基に、成分をDiosnaスパイラルミキサー中、2分間ゆっくりと混合し、6分間速く混合することにより調製した。
【表4】

【0051】
2つの異なる生地を、以下の老化防止酵素を使用して調製した:
製品I: 50ppmのNovamyl(登録商標)10,000 BG
製品II: 36ppmのNovamyl(登録商標)10,000 BG+7ppmのBakezyme(登録商標)AG 800 BG(DSM製、オランダ)。
【0052】
混合した後、生地を10分間休ませた。その後、550gの生地片を成型し、缶に入れ、32℃で50分間発酵させた。次に、生地片を240℃のWachtelデッキオーブン中で33分間焼いた。
【0053】
パンを周囲温度で最大9日間、標準的なポリエチレン袋中で保存した。
【0054】
パンの中身の硬さを、例1に記載のものと同じ方法を用いて測定した。4回の反復に基づいて2つの異なる製品について得られた結果を、表5に示す。
【表5】

【0055】
例3
Spezyme GA 300 N(Genencor)の活性は1994年頃に判定された。測定された活性は460AGU/μlであった。
【0056】
Gerrardら(The Role of Maltodextrins in the Staling of Bread, Journal of Cereal Science 26 (1997) 201〜209)は、マルトース生成型アミラーゼ(Novamyl(登録商標))とグルコアミラーゼ(GA300N、Genencor)とを、それぞれ、穀粉1gあたり0.8mgの濃度と穀粉1gあたり20μlの濃度とでパン生地に添加した実験を記載している。マルトース生成型アミラーゼは、活性が1mgあたり11.4MAUであるため、この特定の実験において、アミログルコシダーゼが、MAU活性1単位あたり3AGUよりも非常に高い量で適用されたと算出することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デンプン質生地を焼くことにより焼きパンを製造する方法であって、
・穀粉1kgあたり750〜75,000のマルトース生成型アミラーゼ単位(MAU)の量のマルトース生成型アミラーゼと、前記マルトース生成型アミラーゼは至適温度が50℃を超える;
・MAU活性1単位あたり0.01〜3.0のアミログルコシダーゼ単位(AGU)の量のアミログルコシダーゼと
を含む2種以上の酵素の組み合わせを前記生地に持ち込むことを含む方法。
【請求項2】
前記アミログルコシダーゼは、Aspergillus nigerの真菌株において見つかるDNA配列によってコードされているポリペプチドである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アミログルコシダーゼは、至適pHが1.5〜5.5、好ましくは2.0〜4.5の範囲にある請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記アミログルコシダーゼを、穀粉1kgあたり40〜40,000AGUの量で前記生地に持ち込む請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記アミログルコシダーゼを、MAU活性1単位あたり0.05〜0.50AGUの量で前記生地に持ち込む請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記アミログルコシダーゼの至適温度は、前記マルトース生成型アミラーゼの至適温度より少なくとも10℃低い請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記マルトース生成型アミラーゼは、至適温度が55〜90℃の範囲にある請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記マルトース生成型アミラーゼは、Geobacillus stearothermophilusの株において見つかるDNA配列によってコードされているポリペプチドである請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記生地は、ライ麦粉/小麦粉混合生地である請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
穀粉と、水と、酵母と、前記マルトース生成型アミラーゼと、前記アミログルコシダーゼと、任意の他の製パン成分とを組み合わせることによって前記生地を製造する請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記生地を焼く前に発酵させる請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記デンプン質生地を180℃を超える温度で焼く請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
製パン改良剤を前記生地に持ち込むことにより前記生地を製造し、前記製パン改良剤は、
・乾燥物質1kgあたり7,500〜75,000,000のマルトース生成型アミラーゼ単位(MAU)の量のマルトース生成型アミラーゼと、前記マルトース生成型アミラーゼは至適温度が50℃を超える;
・MAU活性1単位あたり0.01〜3.0のアミログルコシダーゼ単位(AGU)の量のアミログルコシダーゼと
を含む2種以上の酵素の組み合わせを含む請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記製パン改良剤は、質量加重平均粒径が10〜1000μmの範囲にある粉末または顆粒である請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法により得られる焼きパン。