説明

焼き菓子の製造方法、製造装置およびその焼き菓子

【課題】 形状に特徴がある焼き菓子を連続生産することを可能とする焼き菓子の製造方法、製造装置およびその焼き菓子の提供。
【解決手段】生地載置位置と吐出装置とを相対移動させながら、吐出装置のノズルから吐出した液状生地により所望形状の輪郭を描画形成する第1工程と、前記第1工程で形成した輪郭の内側を、吐出装置のノズルから吐出した液状生地で満たして成形生地を得る第2工程と、を含む焼き菓子の製造方法並びにそれに関する装置および焼き菓子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼き菓子の製造方法、製造装置およびその焼き菓子に関し、例えば、マカロンなどの形状に特徴がある焼き菓子の製造方法、製造装置およびその焼き菓子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クッキー、クラッカー、ビスケット、パイなどの成型が容易な焼き菓子は、業務用焼成装置により工場規模の大量生産がなされているが、模様が描画されていたり突起が形成されているなど形状に特徴がある焼き菓子については、熟練した菓子職人の手作業により作製されていた。
【0003】
近年、多様な形状の焼き菓子が作製可能な機械が提案されており、例えば特許文献1には菓子粗材の自動成型機械が開示されている。特許文献1の装置は、半液体状の菓子粗材を平面的あるいは立体的な形状に自動的に成形する装置において、ホッパーの下部に回転弁とノズルを設け、回転弁に隣接して定量押し出しピストンを設けてなり、焼こうとする形状の型に生地を型込めすることなく、星形、ハート型などに成型することを可能とするものである。
【0004】
また、流体、流動物(例えば、液体、クリーム状物またはペースト状物)を計量しながら抽出するための装置としては、例えば特許文献2に、混練メレンゲを少量ずつ正確に計量しながら供給する装置において、タンク内に導かれた混連メレンゲに圧力を与えてタンク下部に形成された開口から抽出され、ノズルと共同するようになっているバルブにより制御する流動物計量抽出装置が開示される。
【0005】
特許文献3には、高い粘弾性を具備する液状材料を間欠的に定量供給する装置において、材料を貯えるホッパーに設けられた輸送ポンプから輸送管を介して吐出バルブより吐出するもので、圧力検知装置の検知結果を基に輸送ポンプを制御する食品材料の間欠定量吐出装置が開示される。
【0006】
焼き菓子の製造製造方法及び該製造方法によって得られる焼き菓子としては、例えば特許文献4に、マカダミアナッツの破砕物を含む形状や大きさが均一化されたマカロン様の焼き菓子の製造方法が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−130832号公報
【特許文献2】特開平6−194206号公報
【特許文献3】特開平8−107780号公報
【特許文献4】特開2004−329008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1には、ホッパーをXYZ方向へ動かすことにより、ハート型、星形、ピラミット型、円錐型、人形のような複雑な平明形状に成型できることが記載されている。しかしながら、特許文献1の装置は、立体的な形状を成型することを可能とするものではない。
【0009】
本発明は、形状に特徴がある焼き菓子を連続生産することを可能とする焼き菓子の製造方法、製造装置およびその焼き菓子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決し目的を達成するために、本発明の吐出装置は次のように構成されている。すなわち、第1の発明は、生地載置位置と吐出装置とを相対移動させながら、吐出装置のノズルから吐出した液状生地により所望形状の輪郭を描画形成する第1工程と、前記第1工程で形成した輪郭の内側を、吐出装置のノズルから吐出した液状生地で満たして成形生地を得る第2工程と、を含む焼き菓子の製造方法に関する。
第2の発明は、第1の発明において、前記第1工程において、前記輪郭を線状塗布により形成することを特徴とする。
第3の発明は、第1の発明において、前記第1工程において、前記輪郭をドットを重ねて形成することを特徴とする。
第4の発明は、第1ないし3のいずれかの発明において、前記第2工程において、ノズルの位置を固定して液状生地を吐出することを特徴とする。
第5の発明は、第1ないし3のいずれかの発明において、前記第2工程において、目標位置とノズルとを相対移動させながら、液状生地を吐出することを特徴とする。
第6の発明は、第1ないし5のいずれかの発明において、前記第2工程において、前記第1工程で形成した輪郭の内側に山部または谷部を形成することを特徴とする。
第7の発明は、第1ないし5のいずれかの発明において、前記第2工程において、前記第1工程で形成した輪郭の内側に山部および谷部を形成することを特徴とする。
第8の発明は、第6または7の発明において、前記第2工程において、山部または谷部を複数形成することを特徴とする。
【0011】
第9の発明は、第1ないし8のいずれかの発明において、前記第1工程と、前記第2工程で異なる液状生地を用いることを特徴とする。
第10の発明は、第9の発明において、前記第1工程で用いる液状生地は、縁取った輪郭の形状を保持する程度の高い粘性を有することを特徴とする。縁取った輪郭の形状を保持する程度の高い粘性とは、例えば、50000mPa・s以上、好ましくは100000mPa・sを超える粘性である。なお、生地載置位置に対する生地の濡れ性によっては、100000mPa・s以下の粘性の液状生地であってもその形状を保持できることはいうまでもない。
第11の発明は、第9または10の発明において、前記第2工程で用いる液状生地は、前記第1工程で用いる液状生地と同程度かもしくはそれよりも低い粘性を有することを特徴とする。
第12の発明は、第11の発明において、前記第2の液状生地は、高流動性を有する粘性であることを特徴とする。高流動性を有する粘性とは、例えば、10000mPa・s以下の粘性である。
第13の発明は、第9ないし12のいずれかの発明において、前記第2液状生地の水以外の成分が、前記第1の液状生地の水以外の成分と同じであることを特徴とする。
第14の発明は、第9ないし13のいずれかの発明において、搬送コンベア上に設定された生地載置位置に、前記第1工程および第2工程を繰り返し実施することにより、液状生地を連続成形することを特徴とする。
【0012】
第15の発明は、生地載置位置に液状生地を吐出する吐出装置と、吐出装置に液状生地を供給する貯留容器と、生地載置位置と吐出装置とを相対的に移動させる駆動装置と、吐出装置および駆動装置の動作を制御する制御部と、を備え、制御部が、第1ないし14のいずれかの発明に係る焼き菓子の製造方法を実施することを特徴とする焼き菓子製造装置に関する。
第16の発明は、第15の発明において、前記吐出装置が、液状生地を飛翔吐出するジェット式の吐出装置であることを特徴とする。
第17の発明は、第15または16の発明において、前記吐出装置が、前記第1工程を実施する第1の吐出装置と、前記第2工程を実施する第2の吐出装置と、を含んで構成されることを特徴とする。
【0013】
第18の発明は、第1ないし17のいずれかの発明に係る製造方法で製造された焼き菓子に関する。
第19の発明は、第18の発明において、外形がマカロン様であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、常に均一な成形をすることができ、ひいては形状および大きさの整った焼き菓子を連続生産することができる。
また、型枠を用いることなく平面的あるいは立体的な形状に成形することができる。
また、輪郭を液状生地で縁取りするから、焼き菓子の周縁に特別な効果を施しやすい。例えば、マカロンの輪郭をギザギザに塗布形成することにより、ピエにギザギザ感をもたらすことができる。
さらに、輪郭を形成する液状生地と、その内部を満たす液状生地を異なる生地とすることができるから、焼き菓子の周りの外観をデコレーションしたり、中央部分と異なる食感にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】焼き菓子の製造装置の第1の実施形態の斜視図
【図2】第1の実施形態の製造装置による土手形成工程を説明する説明図
【図3】第1の実施形態の製造装置による充填工程を説明する説明図
【図4】土手内部の液状生地の充填態様を例示する説明図
【図5】焼き菓子の製造装置の第2の実施形態の斜視図
【図6】第2の実施形態の製造装置による土手形成工程を説明する説明図
【図7】第2の実施形態の製造装置による充填工程を説明する説明図
【図8】焼き菓子の製造装置の第3の実施形態の斜視図
【図9】焼き菓子の製造装置の第4の実施形態の斜視図
【図10】土手をドット状塗布で形成し、土手内部を注入塗布する態様の説明図
【図11】山部と谷部を有する液状生地の充填態様を例示する説明図
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、所望する形状の輪郭(土手)をノズルから吐出した液状生地で形成し、形成した輪郭の内側を液状生地で満たして粗型(成形生地)を形成し、粗型を焼成する技術に関する。本発明の技術を使うと、複雑な輪郭形状をつくることが簡単にできるし、その輪郭部の材料と、輪郭内部の材料を異なるものとすることもできる。つまり、特徴的な輪郭を形成しながら輪郭内部に形状制御が困難な豊かな食感を有する材料を用いることが可能となる。例えば、輪郭部分のみを粗くしてボソボソ感をだしたり、逆に滑らかに仕上げたりすることができる。
以下では、マカロンの製造方法の例で発明を実施するための形態を説明する。
【0017】
「マカロン」は、フランスの代表的な焼き菓子である。マカロンと名の付く菓子には色々な種類のものがあるが、一般には固く泡立てたメレンゲに砂糖、アーモンドプードル(パウダー)等を加えて混ぜて焼き上げた柔らかな2枚の生地にクリームやジャム、ガナッシュをはさんだものを指すようである。マカロンの生地(1枚)の外形は、カスタネットのような形状、つまり外縁が円形のものが広く知られているが、ハート形のものもあるようである。
マカロンの生地の辺縁部(2枚の生地を対向させる際の縁部)には、ピエ(「足」意味する)と呼ばれる盛り上がり(フリル)が形成される。ピエ表面が先に焼き固められることで、後から熱が入り膨張した生地が行き場所を失って、生地を持ち上げまわりにはみ出すことにより形成されるものであり、マカロンの形状的特徴を表す重要な部分である(これがないとマカロンと言わないという人もいると聞く。)。マカロンは、このピエを一様に形成することが難しく、職人による熟練した技術を要していた。
【0018】
本発明で使用する材料は、通常のマカロン製造に用いる材料と同じものを用いることができ、例えば、25個のマカロンを製造するための材料としては、卵白90g、アーモンドプードル90g、粉糖160g、特細目グラニュー糖30gを準備する。ここで、卵白とアーモンドプードルは、前日から冷凍しておいたものを使用する。
【0019】
マカロン用液状生地の作成方法も通常の手順と同様であり、例えば次のとおりである。まず、自然解凍した卵白をミキサーなどで撹拌し、メレンゲを作製する。ある程度メレンゲができてきたら、特細目グラニュー糖を3回位に分けて加え、さらに撹拌し、しっかりとしたメレンゲを作製する。アーモンドプードルと粉糖を一緒にふるいにかけ、ふるいを通過したものをメレンゲに加え、全体的に一体になるまで撹拌する。液状生地の泡をこすってつぶす工程(マカロナージュ工程)を実施して、液状生地を滑らかにする。できあがった液状生地を、吐出装置の貯留容器に投入する。
【0020】
ここで、好ましくは、輪郭(土手)を形成するための第1の液状生地と、輪郭(土手)内に充填するための第2の液状生地を準備する。第1の液状生地は縁取った輪郭の形状を保持する程度の高い粘性を持たせ、第2の液状生地は第1の液状生地と比べ低い粘性とすることこともできる。粘性の調整は、例えば、水で希釈することにより行う。
【0021】
本実施の形態では、液状生地の吐出装置を、天板に対しXYZ方向に相対移動させることにより、液状生地を描画塗布する。吐出装置は、例えば、ノズルに連通する流路の端部に設けられた弁座に弁体を衝突させてまたは弁体を弁座に衝突する寸前に停止させて液状生地をノズル先端より飛翔吐出させるジェット式の吐出装置、貯留容器内の液状生地に調圧されたエアを所望時間だけ印加してノズルから吐出を行うエア式、フラットチュービング機構またはロータリチュービング機構を有するチュービング式、先端にノズルを有する貯留容器の内面に密着摺動するプランジャーを所望量移動して吐出するプランジャー式、スクリューの回転により液体材料を吐出するスクリュー式、所望圧力が印加された液体材料をバルブの開閉により吐出制御するバルブ式、のものを用いることができるが、以下ではジェット式吐出装置の例で説明する。
【0022】
本実施の形態に係る製造手順を説明する。
制御部に予め入力された形状情報に基づき、所望とする形状の輪郭(土手)が天板と相対移動するノズルから吐出され形成される(土手形成工程)。この際、土手の高さを制御することにより、盛る材料の量をコントロールすることができる。
本発明では、吐出装置による線引きの描画線を乱すと、ピエのブツブツボソボソ感をうまく表現することができる。つまり、焼成によって形成させていたピエを、その外郭形状の描画形成によりある程度の形状を表現させてしまうことができる。従来はピエをきれいに形成するために、焼成時間を調整するなどの工夫が必要であったが、本発明では、機械的にピエを形成するため、職人が手作業で行う場合と比べ、より一様にピエを形成することが可能である。
続いて、制御部に予め入力された形状情報に基づき、形成した土手の内側に所望量の液状生地を充填して山型を形成する充填工程を実施する。
【0023】
土手形成工程と、充填工程は、2台以上の装置により同時に行ってもよいし、先に土手形成工程を実行し、その後、充填工程を実行するようにしてもよい。具体的には、次の態様が例示される。
第1の態様は、2つの吐出ヘッドを有する塗布装置において、第1のヘッドで土手形成工程を行い、直後に第2のヘッドで充填工程を行う。このとき第2のヘッドが充填工程を行っている間に、第1ヘッドは次のマカロンの土手形成工程を行うようにしても良い。
第2の態様は、第1のヘッドで複数のマカロンに対し土手形成工程を行い、その後第2のヘッドでそれらに対し充填用工程を行う。
第3の態様は、土手形成用の塗布装置と、充填用の塗布装置の2台を用意し、ベルトコンベアで流れるシート上にまず土手形成用の塗布装置によって土手形成工程を施し、下流に位置する充填用の塗布装置で充填工程を行う。
第4の態様は、土手形成用の塗布装置と、複数台の充填用装置を用意し、ベルトコンベアで流れるシート上にまず土手形成用の塗布装置によって土手形成工程を施し、下流に位置する複数台の充填用装置で同時に液状生地を注入して充填工程を行う。
このように、都合に応じた生産の態様を採用することが可能である。
【0024】
以上に説明した本発明の製造方法によれば、ハート形、星形、ピラミット型、円錐型、人型を含む様々な外縁形状を有する焼き菓子を連続的に自動製造することが可能となる。
また、本発明の製造方法によれば、土手内部の高さを自由に設定することができるので、例えば図11に示すように、山部と谷部を有する焼き菓子を連続的に自動製造することも可能である。
さらには、焼き菓子やその器の表面に、チョコレートソース、水飴、蜂蜜、練乳、カスタード等の塗布描画を行うことも可能である。
【0025】
上記では、マカロンを主として例示し本発明を説明したが、生地を立体的に形成する他の焼き菓子に適用できることはいうまでもない。
本発明で言う焼き菓子とは、糖質として砂糖、麦芽糖、ブドウ糖、乳糖、オリゴ糖、糖アルコール、デキストリン等、油脂類としてバター、マーガリン、ショートニングなど、穀粉類として小麦粉、タピオカ澱粉、コーンスターチ、米粉、そば粉など、その他副原料として卵、乳製品、チョコレート、ココア、コーヒー、クリーム類、アーモンド粉末、果汁、フルーツソース、餡、抹茶、加工澱粉、食塩、保存料、蛋白質、アミノ酸、膨張剤、乳化剤、イースト、香料、着色料、水等を混合して焼き菓子生地を調製し、焼成して得られる菓子類を総称し、具体的にはクッキーやビスケット、メレンゲ菓子、メロンパンやシュークリームなどの上掛け菓子、クッキー生地を使用するタルトカップ、マドレーヌ、パウンドケーキ等を例示することができる。
【0026】
以下では、本発明の詳細を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0027】
実施例1の焼き菓子の製造装置は、種々の焼き菓子に用いることができるが、以下ではマカロンの製造方法を説明する。
《装置構造》
実施例1の焼き菓子の製造装置は、図1に示すように、液状生地を貯留する貯留容器10を着脱可能に搭載する卓上型ロボット50と、貯留容器10と接続チューブ20を介して連通し、貯留容器内の液状生地に所望時間、所望圧力を印加するディスペンスコントローラ30で構成される。
貯留容器10は、その上部に接続チューブ20が着脱自在に連結される接続部を有し、接続チューブ20が分離された状態で、その上部より液状生地が投入される。貯留容器10の下部は、ノズル15が着脱自在に接続されている。
ノズル15は、作成する形状に応じて所望の径、ノズル長など所望のノズルを使用することができる。本実施例では、断面が円形状のSUS製のノズル(外径0.8mm、内径0.5mm)を使用したがこれに限定されず、例えば、複数の吐出口を有するノズルや多角形状の吐出口を有するノズルも使用することができる。
【0028】
卓上型ロボット50は、ノズル15から吐出された液状生地を受け取るシート60を載置するテーブル51がY方向移動機構53によりY方向に移動するよう構成され、前記液状生地が貯留される貯留容器10をZ方向に移動するZ方向移動機構54を有するヘッド55が、X方向移動機構52によりX方向に移動するよう構成される。
X方向にヘッド55が移動し、Y方向にテーブル51が移動することにより、ノズル15から吐出される液状生地は、シート60上の所望位置に所望量吐出される。貯留容器10内の液状生地に調圧されたエアを所望時間だけ印加してノズル15から吐出を行うエア式吐出装置である。
また、ディスペンスコントローラ30と卓上ロボット50は、ケーブル57で電気的に接続されており、卓上ロボット50から命令により、吐出の開始・停止を制御することができる。このような構成によりシート60上に液状生地で所望の形状を線状塗布描画することができる。卓上ロボット50は、PCと接続可能であり、PCでプログラムを作成することができる。
【0029】
《製造方法》
実施例1では、ノズル15とテーブル51を相対移動しながら線状塗布により土手を形成し、続いてノズル15を土手の略中央位置に移動し、土手の内部に液状生地5で満たすことでマカロンを製造する。
図2は、土手形成工程を説明する説明図である。この図は、ノズル15により液状生地5をAの位置から塗布描画を開始し、ノズル15から液状生地5の供給を連続的に続けながら円状に土手を描画し、一周してAの位置まで戻ってきたところを示している。
【0030】
土手形成工程により土手が形成された後、この土手内部を液状生地5で満たす。図3は、充填工程を説明する説明図である。まず、ノズル15を略中央に移動し、液状生地5を注入する。ノズル15をこの位置に保持して図3のように流下させるように塗布(注入塗布)しても良いし、ノズル15をテーブル51と相対移動しながら土手内部を埋めても良い。
【0031】
図4は、土手内部の液状生地の充填状態様を示す説明図である。充填する液状生地の盛り上げ方は種々可能であり、やや低めにしたり、同じ高さにしたり、盛り上げることもできる。
例えば、(a)のように、土手よりも低く充填することもできるし、(b)のように、ほぼ土手の高さと同じ高さまで液状生地で満たすこともできるし、(c)のように、土手高さよりも盛り上げることも可能である。ただし、液状生地の粘度を調整し、液状生地が土手を超えて大きく流れ出さないようにする。成形した生地をオーブンで焼成する。
【0032】
以上に説明した製造装置および製造方法により、通常のマカロン製造に用いる材料配合でマカロンを製造したところ、一様に形成されたピエのあるマカロンを得ることができた。
【実施例2】
【0033】
実施例2の焼き菓子の製造装置は、種々の焼き菓子に用いることができるが、以下ではマカロンの製造方法を説明する。実施例2では、ノズル15とテーブル51を相対移動しながら点状塗布により土手を形成し、続いてノズル15を土手の略中央位置に移動し、土手の内部に液状生地5で満たすことでマカロンを製造する。
【0034】
実施例2の焼き菓子の製造装置は、図5に示すように、ヘッド55に、液状体を飛翔吐出させるジェット式吐出装置70を搭載している。ジェット式吐出装置70は、ノズル15と連通する液室と、液室と連通する貫通孔と、貫通孔に挿通され、その先端部が液室内を進退動するプランジャー(弁体)と、プランジャーを進退動させるプランジャー移動機構とを備え、プランジャーを液室の弁座に着座させ或いは弁座に衝突する寸前に停止させることにより、液状生地に慣性力を与えて滴を形成して吐出する装置である。プランジャーを進退動させる際に、液室の内周面とプランジャーの外周面は非接触であることからプランジャーを高速移動することが可能であり、例えば、1秒間に100ショット以上の吐出を実現可能である。
ジェット式吐出装置70は、貯留容器10と着脱可能に接続され流体的に連通している。貯留容器10は、その上部に接続チューブ20が着脱可能に連結される接続部を有する。接続チューブ20には、所望圧に調圧された加圧エアが供給されており、貯留容器10内の液状生地を加圧し、当該液状生地をジェット式吐出装置70に送出する。
【0035】
図6は、本実施例の装置における土手形成工程を説明する説明図である。
ジェット式吐出装置は70は、液状生地を滴状にして飛翔吐出して土手を形成する。
(a)は、ドット状に最初の液状生地が吐出されシート状に着地し、ノズル15の先端からは第2ショット目の液状生地が吐出された状態である。ノズル15は上下動させることなく水平方向に連続的に円状に等速移動させ、このノズルの移動速度に応じて、ジェット式吐出装置70は液状生地を連続的に射出する。この際、吐出されたドットを重ねるようにして円を描き(b)、一周して最初の液状生地とつなげて土手形成工程を終了する(c)。
【0036】
次に、充填工程を行う。
液状生地の充填は、土手形成と同様に、ノズル15とテーブル51を相対移動しながらドットを重ねて土手内部に液状生地を塗布することにより行う。実施例1と同様に、種々の高さを設定することが可能である。図4(c)のように、土手高さよりも盛り上げるには、液状生地の粘度を調整し土手を超えて大きく流れ出さないようにすることも同様である。図7は、図4(c)のように盛り上げた充填工程の最後のショットにおける生地状態を例示する図である。
最後に、成形した生地をオーブンで焼成する。
【0037】
以上に説明した製造装置および製造方法により、通常のマカロン製造に用いる材料配合でマカロンを製造したところ、ギザギザ感のあるピエを有するマカロンを得ることができた。
【実施例3】
【0038】
実施例3の焼き菓子の製造装置は、実施例2の焼き菓子の製造装置において、貯留容器10を非搭載型の大型貯留容器(貯留タンク)11に置き換えたものである。すなわち、実施例3の焼き菓子の製造装置は、図8に示すように、ジェット式吐出装置70に、貯留容器10に代わり貯留容器10よりも多量の液状生地5を潮流可能な大型貯留容器11を接続して使用するものである。大型貯留容器11には、接続チューブ21を介して供給される加圧エアがレギュレータ23により所望の圧力に調圧されて供給される。この調圧された圧力により、大型貯留容器11に貯留される液状生地5は、パイプ25から接続チューブ20を介してジェット式吐出装置70に送出される。大型貯留容器11は、生産量等を考慮し適宜最適な容量を選択して使用することができる。
【実施例4】
【0039】
実施例4の焼き菓子の製造装置は、実施例3の焼き菓子の製造装置において、ジェット式吐出装置70と大型貯留容器11を2組備えるものである。すなわち、実施例4の焼き菓子の製造装置は、図9に示すように、卓上型ロボット50のヘッド55に、ジェット式吐出装置70とジェット式吐出装置B71を搭載する。ジェット式吐出装置70は、土手形成用の液状生地5を貯留する貯留タンク11と連通し、ジェット式吐出装置B71は、充填用の液状生地B8を貯留する貯留タンク12と連通する。
本実施例では、土手工程で使用する液状生地を第1の液状生地、充填工程で使用する液状生地を第2の液状生地の組成を異なるものとしている。例えば第2の液状生地を第1の液状生地を水でのばして低い粘度の生地として使用する。
【0040】
本実施例では、土手形成用の液状生地5と充填用の液状生地B8は、異なる粘度のものを使用するため、レギュレータを2組設け、ジェット吐出装置70への供給はレギュレータ23で、ジェット吐出装置71への供給はレギュレータB24で、それぞれ適切に調圧する。
生地の成形作業は、ジェット吐出装置70で土手を形成した直後にジェット吐出装置71で充填する工程を繰り返し行ってもよいし、所望数の土手をジェット吐出装置70で形成した後に、ジェット吐出装置B71で充填工程を土手が形成された数だけ行うようにしてもよい。
【0041】
なお、本実施例では、ヘッド55に搭載する吐出装置を両方ともにジェット式吐出装置として例示したが、実施例1のエア式吐出装置を併用できることはいうまでもない。
例えば、土手形成をジェット式吐出装置でドットを重ねて形成し、充填工程をエア式吐出装置の位置を固定して注入塗布した場合のイメージ図を図10に示す。
【0042】
また、土手形成工程と充填工程では、異なる径のノズルを使用してもよい。例えば、充填工程で使用するノズル内径を土手形成工程に使用するノズルの内径と比べ大径としたり、また複数の吐出口が略等間隔に配置されたノズルを使用したりすることで、充填時間を短縮することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、クッキー、クラッカー、ビスケット、パイ、マカロンなどの小麦粉、油脂、糖類、卵などを主要原料として、生地を練り上げた後に焼成してなる焼き菓子に好適である。また、本発明は、例えば、50〜300000mPa・sのソース類(チョコレートソース、水飴、蜂蜜、練乳、カスタード等)の塗布にも好適である。
【符号の説明】
【0044】
5 液状生地
6 土手部
7 充填部
8 液状生地B
10 貯留容器
11 大型貯留容器
12 大型貯留容器B
15 ノズル
20 接続チューブ
21 接続チューブB
23 レギュレータ
24 レギュレータB
25 パイプ
30 ディスペンスコントローラ
50 卓上型ロボット
51 テーブル
52 X方向移動機構
53 Y方向移動機構
54 Z方向移動機構
55 ヘッド
56 操作パネル
57 ケーブル
60 シート
70 ジェット式吐出装置
71 ジェット式吐出装置B

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生地載置位置と吐出装置とを相対移動させながら、吐出装置のノズルから吐出した液状生地により所望形状の輪郭を描画形成する第1工程と、
前記第1工程で形成した輪郭の内側を、吐出装置のノズルから吐出した液状生地で満たして成形生地を得る第2工程と、を含む焼き菓子の製造方法。
【請求項2】
前記第1工程において、前記輪郭を線状塗布により形成することを特徴とする請求項1記載の焼き菓子の製造方法。
【請求項3】
前記第1工程において、前記輪郭をドットを重ねて形成することを特徴とする請求項1記載の焼き菓子の製造方法。
【請求項4】
前記第2工程において、ノズルの位置を固定して液状生地を吐出することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の焼き菓子の製造方法。
【請求項5】
前記第2工程において、目標位置とノズルとを相対移動させながら、液状生地を吐出することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の焼き菓子の製造方法。
【請求項6】
前記第2工程において、前記第1工程で形成した輪郭の内側に山部または谷部を形成することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の焼き菓子の製造方法。
【請求項7】
前記第2工程において、前記第1工程で形成した輪郭の内側に山部および谷部を形成することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の焼き菓子の製造方法。
【請求項8】
前記第2工程において、山部または谷部を複数形成することを特徴とする請求項6または7記載の焼き菓子の製造方法。
【請求項9】
前記第1工程と、前記第2工程で異なる液状生地を用いることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の焼き菓子の製造方法。
【請求項10】
前記第1工程で用いる液状生地は、縁取った輪郭の形状を保持する程度の高い粘性を有することを特徴とする請求項9記載の焼き菓子の製造方法。
【請求項11】
前記第2工程で用いる液状生地は、前記第1工程で用いる液状生地と同程度かもしくはそれよりも低い粘性を有することを特徴とする請求項9または10記載の焼き菓子の製造方法。
【請求項12】
前記第2の液状生地は、高流動性を有する粘性であることを特徴とする請求項11記載の焼き菓子の製造方法。
【請求項13】
前記第2液状生地の水以外の成分が、前記第1の液状生地の水以外の成分と同じであることを特徴とする請求項9ないし12のいずれかに記載の焼き菓子の製造方法。
【請求項14】
搬送コンベア上に設定された生地載置位置に、前記第1工程および第2工程を繰り返し実施することにより、液状生地を連続成形することを特徴とする請求項9ないし13のいずれかに記載の焼き菓子の製造方法。
【請求項15】
生地載置位置に液状生地を吐出する吐出装置と、
吐出装置に液状生地を供給する貯留容器と、
生地載置位置と吐出装置とを相対的に移動させる駆動装置と、
吐出装置および駆動装置の動作を制御する制御部と、を備え、
制御部が、請求項1ないし14のいずれかの焼き菓子の製造方法を実施することを特徴とする焼き菓子製造装置。
【請求項16】
前記吐出装置が、液状生地を飛翔吐出するジェット式の吐出装置であることを特徴とする請求項15記載の焼き菓子の製造装置。
【請求項17】
前記吐出装置が、前記第1工程を実施する第1の吐出装置と、前記第2工程を実施する第2の吐出装置と、を含んで構成されることを特徴とする請求項15または16記載の焼き菓子製造装置。
【請求項18】
請求項1ないし17のいずれかの製造方法で製造された焼き菓子。
【請求項19】
外形がマカロン様である請求項18の焼き菓子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−165704(P2012−165704A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−30031(P2011−30031)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(390026387)武蔵エンジニアリング株式会社 (56)
【Fターム(参考)】