説明

焼き菓子用生地及びその製造方法

【課題】1種類の生地を型に入れて焼成するだけで、カスタード様のクリーム層とカステラ様のケーキ層の異なる食感の2つの生地を組み合わせたような新規な焼き菓子を製造することができる焼き菓子用生地とその製造方法を提供する。
【解決手段】液卵1質量部に対して、砂糖、小麦粉、及び乳化起泡剤を下記(a)〜(c)の割合で使用し、起泡させて生地比重を0.7以下に調製した焼き菓子用生地。
(a)砂糖 0.4〜1.1質量部
(b)小麦粉 0.03〜1.1質量部
(c)乳化起泡剤 0.01〜0.3質量部

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1種類の生地を型に入れて焼成するだけで、カスタード様のクリーム層とカステラ様のケーキ層の異なる食感の2つの生地を組み合わせたような新規な焼き菓子を製造することができる焼き菓子用生地とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
株式会社日本能率協会総合研究所が2007年に行った「スイーツに関する調査」では、男女とも最も好まれる洋菓子はチーズケーキ、次いでアイスクリーム・ソフトクリームであり、さらにその次は、男性ではショートケーキ、プリン、女性ではシュークリーム、プリンという結果であった。こうした結果から、日本人の好む洋菓子は、生クリーム、バニラ、カスタード風味で、なおかつ舌触りがなめらかな食感の菓子であるという傾向が読み取れる。
【0003】
ところで、日本に洋菓子が伝えられたのは、ポルトガル船が種子島に漂着した1543年のことである。鉄砲や火薬とともに、パンやビスケットなどの南蛮菓子が伝えられたとされている。1558年には南蛮菓子最古の文献「原城記事」が刊行され、カステーラやボール、有平糖、金平糖の製法が記されている。1681年には、長崎松翁軒でカステラの製造販売がなされており、カステラは日本で最も古いとされる洋菓子であるといえる。
カステラの原型とされるポルトガルの菓子、パンデローは、共立てまたは別立て法で調製され、スポンジケーキに近い菓子であったと考えられる。
【0004】
現在我々が食するカステラは、日本人の味覚にあうよう工夫がなされ、最初に伝えられたポルトガルの菓子とは全く違うものに変化してきた。カステラの生地は、卵と砂糖を起泡させた中に小麦粉とその他の原料を加える生地の調製が難しい共立て法である。さらにカステラ内部のキメを整えるため、焼成工程の途中の生地をオーブンから出して気泡を潰す泡切りと呼ばれる工程を複数回行う必要があり、製造に熟練した技術を要するものである。特許文献1では、泡切り工程が不要なカステラの製造方法が開示されており、現在にいたるまでカステラ製造に関する工夫が続いている。しかし、特許文献1は、カステラの風味改良に関するものでなく、泡切り工程が省略できるものの、簡便に作る方法までには至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−46670公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明者らは、熟練した技術を要することなく簡便な製造方法で、なめらかな舌触りを好む現代日本人の嗜好に合う新しい焼き菓子を考案することを課題とし、鋭意検討を行った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、液卵、砂糖、小麦粉、及び乳化起泡剤を特定の割合で使用した焼き菓子用生地を、型に入れて焼成することで、内部にカスタード様のクリームとカステラ様のケーキが形成された焼き菓子を製造することを可能であることを見いだした。また、この焼き菓子用生地は、1種類の生地を1回の焼成だけでクリーム層とケーキ層を形成することができる。
【0008】
すなわち、本発明の第1の発明は、液卵1質量部に対して、砂糖、小麦粉、及び乳化起泡剤を下記(a)〜(c)の割合で使用し、起泡させて生地比重を0.7以下に調製した焼き菓子用生地である。
(a)砂糖 0.4〜1.1質量部
(b)小麦粉 0.03〜1.1質量部
(c)乳化起泡剤 0.01〜0.3質量部
本発明の第2の発明は、液卵1質量部に対して、砂糖、小麦粉、及び乳化起泡剤を下記(a)〜(c)の割合で使用し、起泡させて生地比重を0.7以下に調製した生地に、溶解したチョコレートを混合した焼き菓子用生地である。
(a)砂糖 0.4〜1.1質量部
(b)小麦粉 0.03〜1.1質量部
(c)乳化起泡剤 0.01〜0.3質量部
本発明の第3の発明は、前記乳化起泡剤は、乳化剤、還元水飴、油脂を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の焼き菓子用生地である。
本発明の第4の発明は、前記小麦粉は、全生地質量中の1〜8.8質量%以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の焼き菓子用生地である。
本発明の第5の発明は、本発明第1〜4に記載のいずれか1つに記載の焼き菓子用生地を型に入れて、1回の焼成でクリーム状の層とケーキ状の層が内部に形成された焼き菓子の製造方法である。
本発明の第6の発明は、本発明第5に記載の焼き菓子の製造方法により製造されたクリーム状の層とケーキ状の層が内部に形成された焼き菓子である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の焼き菓子用生地は、1種類の生地を型に入れて焼成を1回行うだけで、カスタード様のクリーム層とカステラ様のケーキ層の異なる食感の2つの生地を組み合わせたような焼き菓子を得ることができる。また、本発明の焼き菓子の製造方法は、主原料すべてを混合し、起泡させて生地調製を行うオールインミックス法で簡便に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の焼き菓子用生地に使用する原材料を順に説明する。
(液卵について)
本発明の焼き菓子用生地に使用する液卵とは、鶏卵から卵殻、卵殻膜などを取り除いた卵の可食部のことをいう。液卵は、割卵した液状卵、凍結卵などの加工卵を用いることができる。液卵は全卵のみを用いてもよいし、全卵と卵黄を併用してもよい。全卵と卵黄を併用すると焼き菓子に好ましい焼き色とコク味が増して好ましい。液卵に卵黄を併用する場合は、液卵中の卵黄は10〜90質量%が好ましい。より好ましくは30〜80質量%、最も好ましくは50〜70質量%である。
【0011】
(砂糖について)
本発明の焼き菓子用生地に使用する砂糖は、製菓製パンに一般に用いられる砂糖を使用することができる。例えば、上白糖、グラニュー糖、三温糖、きび砂糖、黒砂糖、和三盆糖、粉糖などを挙げることができる。これらの中から1種または2種以上を組み合わせて使用することもできる。液卵1質量%に対して砂糖の使用量は、0.4〜1.1質量部である。より好ましくは、0.4〜0.7質量部、最も好ましくは0.45〜0.60質量部である。また砂糖の一部を蜂蜜やメープルシロップ、水飴等の甘味料に置き換えることもできる。砂糖以外の甘味料を置き換えて使用する場合は、砂糖中の5〜40質量部が好ましい。より好ましくは10〜30質量部、最も好ましくは10〜20質量部である。
【0012】
(小麦粉について)
本発明の焼き菓子用生地に使用する小麦粉は、製菓製パンに一般に用いられる小麦粉を使用することができる。例えば、薄力粉、中力粉、強力粉、フランスパン専用粉などを挙げることができる。これらの中から1種または2種以上を組み合わせて使用することもできる。液卵1質量%に対して小麦粉の使用量は、0.03〜1.1質量部である。
より好ましくは、0.03〜0.3質量部、最も好ましくは0.05〜0.2質量部である。また、本発明の焼き菓子用生地の小麦粉使用量は、生地中の1〜8.8質量%部が好ましい。より好ましくは2.5〜8.8質量部である。小麦粉の使用量が上記の範囲内にあると、焼き菓子のケーキ層の形状を保ちつつ、内部のクリーム層はなめらかな口当たりになる。
【0013】
(乳化起泡剤について)
本発明の焼き菓子用生地に使用する乳化起泡剤は、一般に、ケーキ用乳化起泡剤、製菓用乳化剤とも呼ばれている。一般的な乳化起泡剤は、乳化剤を糖アルコールや還元水飴、油脂、アルコール、水などに分散させた形状になっている。菓子生地を起泡させ、気泡を安定させる効果があるため、オールインミックス法のスポンジケーキなど大量生産される菓子類に広く使用されている。乳化起泡剤の市販品として、例えば、三菱化学フーズ株式会社「リョートーエステルSP」、日清オイリオグループ株式会社製「ジセル100」、理研ビタミン株式会社製「フレンジー70」、花王株式会社「ハイロフティ」、「マリッシュゴールド」などが挙げられ、本発明の焼き菓子にもこれらの製品を使用することができる。液卵1質量部に対して、乳化起泡剤の使用量は、0.01〜0.3質量部である。より好ましくは、0.01〜0.2質量%部、最も好ましくは0.01〜0.15質量部である。
【0014】
また、本発明の焼き菓子用生地に使用する乳化起泡剤は、乳化剤と還元水飴、及び油脂を含有する乳化起泡剤が好ましい。乳化剤が還元水飴と油脂に分散していることで、乳化剤の菓子生地への分散が向上し、起泡効果、気泡安定効果といった乳化剤の機能を充分に働かせることができる。
【0015】
(乳化起泡剤中の乳化剤について)
乳化起泡剤に含有される乳化剤は、菓子生地を起泡させ、気泡を安定させる効果のある食用に乳化剤であれば、特に限定されるものではない。例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸、レシチン、ポリソルベートなどが挙げられる。これらの乳化剤の中から選択された1種または2種以上の乳化剤を適宜配合することができる。乳化剤の添加量は、乳化起泡剤中3〜30質量%の範囲で含有するのが好ましく、より好ましくは5〜25質量%、最も好ましくは10〜20質量%である。
【0016】
(乳化起泡剤中の油脂について)
乳化起泡剤に含有される油脂は特に限定されるものではない。例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、大豆油、菜種油、ひまわり油、紅花油、米油、綿実油、コーン油、オリーブ油、牛脂、豚脂、乳脂、カカオ脂、シア脂、サル脂、マンゴー核油、イリッペ脂等の各種動植物性油脂、これらの各種動植物性油脂から選択された1種または2種以上の動植物性油脂を必要に応じて水素添加、エステル交換、分別等の加工をして得られる各種加工油脂、これら各種動植物性油脂及び各種加工油脂から選択された1種または2種以上の油脂を適宜配合することができる。乳化起泡剤に含有される油脂は、5〜50質量%の範囲で含有するのが好ましく、好ましくは5〜40質量%、最も好ましくは10〜30質量%である。乳化起泡剤に含有される油脂がこの範囲内であると、乳化起泡剤の菓子生地への分散が良好になり好ましい。
【0017】
(乳化起泡剤中の還元水飴について)
乳化起泡剤に含有される還元水飴は、乳化起泡剤に適度な硬さを与え、乳化起泡剤の菓子生地への分散が良好になり好ましい。還元水飴は乳化起泡剤中10〜80質量%の範囲で含有するのが好ましく、より好ましくは20〜70質量%、最も好ましくは30〜60質量%である。
【0018】
乳化起泡剤には、乳化剤、還元水飴、油脂等上記以外にも、他の食品や食品添加物を含有させることができる。例えば、調味料(砂糖、食塩、食酢や香辛料など)、香料、pH調整剤、酸化防止剤(トコフェロール、茶抽出物、アスコルビン酸など)、安定剤(寒天、カラギーナン、ペクチン、カゼインナトリウムなど)、着色料(β−カロテン、カラメル、紅麹色素など)、甘味料(ステビア、アスパルテームなど)が挙げられる。
【0019】
本発明の焼き菓子用生地は、液卵、砂糖、小麦粉、及び乳化起泡剤、これらの必須原材料以外にも、一般的に製菓製パンに使用される原材料を用いることができる。例えば、米粉、コーングリッツなどの小麦粉以外の穀粉、マーガリン、ショートニング、製菓用油脂、バターなどの油脂類、牛乳、濃縮乳、生クリーム、脱脂粉乳、練乳、チーズなどの乳製品、果実及び果実加工品、ココアやチョコレート類、ナッツ類、洋酒類、膨張剤や香料、酸味料、調味料、着色料、酸化防止剤などの食品添加物が挙げられる。
【0020】
(本発明の焼き菓子用生地のミキシング工程について)
本発明の焼き菓子用生地は、使用する全材料を混合、起泡させる一般的なオールインミックス法で調整することができる。起泡させる工程が効率よく行われるよう、乳化起泡剤を均一に分散させることが好ましい。例えばバッチ式のミキサーを用いる場合は、砂糖と乳化起泡剤を先に混合し、その中に液卵、小麦粉を投入すると、ミキシング時間の短縮を可能にすることができる。液卵、砂糖、小麦粉、及び乳化起泡剤以外の材料は、菓子生地の起泡性を損ねない限り、同時に加えてオールインミックス法で生地を調製することもできる。起泡させる工程は、バッチ式のミキサーのほか、連続式のプレッシャーミキサー等連続生産ラインで製造することもできる。
【0021】
本発明の焼き菓子用生地を製造するために、生地をミキシングして、生地比重を0.7以下まで起泡させる。生地比重は、より好ましくは0.36〜0.6、最も好ましくは0.37〜0.5である。生地の比重はこの範囲内であると、焼成することによって内部にクリーム層とケーキ層を形成され、ボリュームがあって食感が良好な焼き菓子となる。
【0022】
本発明の焼き菓子用生地に加える他の材料は、オールインミックス法で生地を調整する際に加える以外にも、起泡させた後の菓子生地に加えることもできる。ナッツ類やドライフルーツ、チップチョコ、チャンクチョコなど固形のままの食感を保ちたい材料は、菓子生地を起泡させた後に加えるのが好ましい。また、脂質含有量が高い材料は、菓子生地の起泡を妨げることがあるので、起泡させた後に加える方が好ましい。菓子生地の起泡を妨げる可能性がある脂質含有量が多い材料は、クリームチーズやバター、チョコレートなどを挙げることができる。
【0023】
本発明の焼き菓子用生地として、チョコレートを菓子生地に加えてチョコレート風味の焼き菓子用生地とすることもできる。菓子生地全体をチョコレート風味とする場合は、チョコレートを溶かして菓子生地全体と混ぜ合わせる。チョコレートは脂質含有量が高く、菓子生地の起泡性を妨げるため、菓子生地を起泡させた後に加えることが好ましい。
チョコレートは、菓子生地全体の50質量%以下とすることが好ましい。より好ましくは、20〜40質量%以上である。チョコレートが菓子生地の全体の50質量%以上である場合は、焼成後の焼き菓子のボリュームは小さくなり、クリーム層とケーキ層を形成することができなくなる。本発明の焼き菓子用生地に使用するチョコレートの種類は特に限定されない。スイートチョコレート、ミルクチョコレート、ホワイトチョコレート、カカオマス、フィリング用のチョコレート加工製品などを使用することができる。菓子生地とチョコレートを混合する時のチョコレート温度は45〜55℃程度が好ましい。チョコレートがこの温度であると、菓子生地との混合しやすく好ましい。
【0024】
(本発明の焼き菓子用生地の焼成工程について)
本発明の焼き菓子用生地は、生地を型に入れて焼成することを特徴とする。焼き型のサイズは特に限定されない。クリーム層とケーキ層を形成するためには、焼き型の高さは3cm以上が好ましく、より好ましくは5cm以上である。焼き型の直径は、24cm以下が好ましく、より好ましくは21cm以下である。また、焼き型の素材についても特に限定されない。金属製焼き型の底と側面に紙を敷いて焼成することが好ましい。また別の好ましい態様として、紙製のマフィンカップやアルミ箔素材の焼成カップなど自立する焼成容器が挙げられる。
【0025】
本発明の焼き菓子用生地の焼成温度は、一般的にスポンジケーキを焼成するのと同様な温度である160〜180℃で焼成することが好ましい。本発明の焼き菓子用生地は、菓子生地中の砂糖の量が一般的なスポンジケーキよりも多いため、スポンジケーキを焼成する温度以上の温度で焼成しないことが好ましい。焼成温度が高すぎる場合は、ケーキ層が形成される前に上部の皮が張るため、ボリュームが不足して火通りが悪くなる。また、上面が焦げて好ましくない風味となる。
本発明の焼き菓子用生地の焼成時間は、使用する焼き型のサイズや生地比重、焼成するオーブンによって異なる。中心部に完全に火が通り、すべてケーキ層になるまでの焼成時間を100とすると、その65〜90%、好ましくは70〜86%の焼成時間で焼成を完了することが好ましい。上面に皮が張り、好ましい焼き色がついて、中心部が固化されていない状態で焼成を終了する。中心部の温度は、クリーム層が適度な流動性と硬さを持つためには80℃に達することが好ましい。
焼成するオーブンは、バッチ式の固定窯、連続式のトンネルオーブンまたはリール式オーブンのいずれの種類を用いてもよい。
【0026】
焼成終了後の冷却工程は、焼き型の底と側面に紙を敷いて焼成した場合には、焼き菓子は型から出さずに、室温に置いて冷ます。型に敷いた紙は、焼き菓子が崩れない程度に冷めた後に取り去ることができる。また、自立する焼成容器を使用した場合には、冷却した後、焼き型から外さず商品として流通することができる。
【0027】
(本発明の焼き菓子について)
本発明の焼き菓子は、これまで述べてきた製造方法で製造され、しっとりとしたクリームとソフトなカステラを組み合わせた生菓子の趣のある現代日本人の嗜好に合う焼き菓子である。
【実施例】
【0028】
次に例を挙げ、本発明を詳細に説明する。しかしながら、本発明はこれらの例になんら制限されるものではない。実施例で使用した乳化起泡剤は、日清オイリオグループ株式会社製の「ジセル100」を使用した。
【0029】
〔実施例1・プレーン風味〕
(生地の調製と焼成)
卓上縦型ミキサーのミキサーボールに、ジセル100とジセルシフォン(日清オイリオグループ株式会社製 乳化タイプの製菓用油脂)各20gとグラニュー糖180gを入れて予備混合する。その後、全卵164g、卵黄205g、ブランデー10g、薄力粉45gを加え、ホイッパーでミキシングを行う。生地比重が0.4になるまで起泡させた。生地比重は、容器内の生地重量(g)/容器の体積(cc)で計測した。
直径21cm金属製焼き型の底と側面に紙を敷き、生地を全量充填して上火180℃、下火170℃のオーブンで25分間焼成した。焼成後に型のまま、網の上で室温程度まで冷ました。
(焼成した焼き菓子の評価)
上面は茶色の好ましい焼き色の皮が形成され、内部は上面からのおよそ半分がクリーム状で下部がカステラ様のケーキ層であった。食感、香りに優れた良好な焼き菓子が得られた。
【0030】
〔比較例1・プレーン風味〕
(生地の調製と焼成)
卓上縦型ミキサーのミキサーボールに、ジセル100とジセルシフォン(日清オイリオグループ株式会社製 乳化タイプの製菓用油脂)を除いた他は、実施例1と同様の方法で生地を調製した。生地を起泡させることができず、生地比重を下げることができなかった。この生地を実施例1と同様の方法で生地を焼成した。
(焼成した焼き菓子の評価)
上面に焼き色はつくものの、皮が形成されなかった。ボリュームがなく、内部はクリーム層とケーキ層は見られず、ゴム様の食感であった。
【0031】
〔実施例2・黒糖風味〕
(生地の調製と焼成)
黒糖パウダー96gに水20gを加えて溶かしておく。
卓上縦型ミキサーのミキサーボールに、ジセル100とジセルシフォン(日清オイリオグループ株式会社製 乳化タイプの製菓用油脂)各10.6gとグラニュー糖10gを入れて予備混合する。その後、全卵88g、卵黄112g、ホワイトラム5.6g、薄力粉34g、先に溶かしておいた黒糖パウダーと水を加え、ホイッパーでミキシングを行う。生地比重が0.41になるまで起泡させた。生地比重は、容器内の生地重量(g)/容器の体積(cc)で計測した。
直径18cm金属製焼き型の底と側面に紙を敷き、底にザラメ糖、刻んだクルミ各35gを入れて、生地を全量充填し、上火180℃、下火170℃のオーブンで25分間焼成した。焼成後に型のまま、網の上で室温程度まで冷ました。
(焼成した焼き菓子の評価)
上面は茶色の好ましい焼き色の皮が形成され、内部は上面からのおよそ半分がクリーム状で下部がカステラ様のケーキ層であった。食感、香りに優れた良好な焼き菓子が得られた。
【0032】
〔実施例3・ミルクチョコ風味〕
(生地の調製と焼成)
ミルクチョコレート250gは50℃に溶解しておく。
卓上縦型ミキサーのミキサーボールに、ジセル100とジセルシフォン(日清オイリオグループ株式会社製 乳化タイプの製菓用油脂)各13gとグラニュー糖120gを入れて予備混合する。その後、全卵109g、卵黄137g、ブランデー7g、薄力粉36g、ココア24gを加え、ホイッパーでミキシングを行う。生地比重が0.56になるまで起泡させた。生地比重は、容器内の生地重量(g)/容器の体積(cc)で計測した。
その後、溶解したミルクチョコレートを生地に加えて均一になるまで混合する。
直径18cm金属製焼き型の底と側面に紙を敷き、底に刻んだクルミ50gを入れて、生地を全量充填し、上火180℃、下火170℃のオーブンで30分間焼成した。焼成後に型のまま、網の上で室温程度まで冷ました。
(焼成した焼き菓子の評価)
上面は茶色の好ましい焼き色の皮が形成され、内部は上面からのおよそ半分がクリーム状で下部がカステラ様のケーキ層であった。食感、香りに優れた良好な焼き菓子が得られた。
【0033】
〔焼成テスト〕
(生地の調製と焼成)
縦型ミキサーのミキサーボールに、ジセル100とジセルシフォン(日清オイリオグループ株式会社製 乳化タイプの製菓用油脂)各200gとグラニュー糖1800gを入れて予備混合する。その後、全卵1635g、卵黄2055g、ブランデー100g、薄力粉450gを加え、縦型ミキサーで、生地比重が0.4になるまで起泡させた。生地比重は、容器内の生地重量(g)/容器の体積(cc)で計測した。
直径21cm金属製焼き型の底と側面に紙を敷き、生地を640g充填して上火180℃、下火170℃のオーブンで、焼成時間を変えて焼成し、焼き菓子を作製した。
焼き菓子の評価は表1の通りであった。
【0034】
【表1】

【0035】
焼成時間が25分〜30分では、内相にクリーム層とケーキ層が形成され、良好な食感と風味であった。35分では内相がすべてケーキになり、風味は良好なものの、従来のカステラ同様の食味であり、新規な焼き菓子ではなかった。また焼成時間が20分では、菓子の形を保つことが難しく、商品流通の点で不適当であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液卵1質量部に対して、砂糖、小麦粉、及び乳化起泡剤を下記(a)〜(c)の割合で使用し、起泡させて生地比重を0.7以下に調製した焼き菓子用生地。
(a)砂糖 0.4〜1.1質量部
(b)小麦粉 0.03〜1.1質量部
(c)乳化起泡剤 0.01〜0.3質量部
【請求項2】
液卵1質量部に対して、砂糖、小麦粉、及び乳化起泡剤を下記(a)〜(c)の割合で使用し、起泡させて生地比重を0.7以下に調製した生地に、溶解したチョコレートを混合した焼き菓子用生地。
(a)砂糖 0.4〜1.1質量部
(b)小麦粉 0.03〜1.1質量部
(c)乳化起泡剤 0.01〜0.3質量部
【請求項3】
前記乳化起泡剤は、乳化剤、還元水飴、油脂を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の焼き菓子用生地。
【請求項4】
前記小麦粉は、全生地質量中の1〜8.8質量%以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の焼き菓子用生地。
【請求項5】
請求項1〜4に記載のいずれか1項に記載の焼き菓子用生地を型に入れて、1回の焼成でクリーム状の層とケーキ状の層が内部に形成された焼き菓子の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の焼き菓子の製造方法により製造されたクリーム状の層とケーキ状の層が内部に形成された焼き菓子。

【公開番号】特開2012−29576(P2012−29576A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−169391(P2010−169391)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【出願人】(000227009)日清オイリオグループ株式会社 (251)
【Fターム(参考)】