説明

焼き菓子類製品用油脂組成物及び焼き菓子類製品の製造法

【課題】
本発明は、焼成した焼き菓子に浸透性の良好な油脂をスプレーすることで、焼き菓子内部まで油脂が浸透し、菓子の水分活性、組成、ストラクチャー等を変化させることなく風味が良好である。更に、焼き菓子、スポンジなどの咀嚼中のほぐれ感が良好でかつ口溶け感、喉越し感が良好な今までにない食感の焼き菓子製品を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明は、対称型トリグリセリド(1,3位に飽和脂肪酸残基、2位に不飽和脂肪酸残基)の含有量が30重量%以上の油脂にHLBが3〜13の乳化剤を添加してなる焼き菓子類用油脂組成物であり、好ましくは、乳化剤のHLBが5〜10、対称型トリグリセライドの含有量が55重量%以上95重量%以下である焼き菓子類用油脂組成物であって、当該油脂組成物を菓子製品表面に接触することを特徴とする焼き菓子類製品の製造法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼き菓子類製品用組成物及び焼き菓子類製品の製造法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、製菓、製パン業界においてスプレー油の用途は大きく2つあり、1つ目は焼成した商品の表面にスプレーし、艶出しによる外観の改良や、油脂風味の付与、シーズニングの固着を行うために使用される。一般的には作業性や風味安定性の点から液状油、あるいは液状油の部分硬化油が用いられてきた。これまでに、バターの様に溶かす作業をせず、直接スプレーでき、菓子やベーカリー製品の生地へのしみ込みが適度であって、バター等を溶かして使った場合と同様の食感を与えることができる流動状油脂組成物(特許文献1)が提案されている。これは、組成物中の結晶油脂の粒子径を1〜20μmにすることで、生地表面に残存する油脂量としみ込む量をコントロールしバターを溶かした場合と同様の食感にしている。しかし結晶油脂の粒子径をコントロールするのは難しいこと、更には液状油を使用するため、焼き菓子の表面はべたつくといった問題がある。
【0003】
スプレー油の用途の2つ目は、生地焼成時に焼き型や天板にスプレーし型剥がれを良くするために使用されてきたが、これについては、例えばオーバースプレーがなく、菓子類やパン類を焼成する際、天板や焼き型に均一に塗布でき、離型性に優れた油脂組成物(特許文献2)が提案されている。これは、静電塗油装置のノズルから離型油微細粒子をマイナスに帯電させ焼き菓子に噴霧するというスプレー方法である。必要最小限度の量をスプレーすることで、余分な離型油の重合で天板や焼き型に付着物が発生して作業性を低下することはないと思われるものであるが、スプレー油は液状油であるため、焼成した生地のべたつきを解消できるものではない。
【0004】
以上のように、スプレー油は液状油が主であった。これは、固体脂成分が多いスプレー油を使用すると、菓子等の食品の表面で固体脂が結晶化し、白色化または白色斑点を生じるためである。
【0005】
また、焼き菓子にスプレーすることで、風味、食感を良好にし、べたつきのない焼き菓子用のスプレー用油脂組成物(特許文献3)が提案されている。これは、パーム系油脂とハイエルシン菜種極度硬化油とをエステル交換したスプレー油脂の特許であるが、焼き菓子の内部まで浸透することはなく、食感を改質する効果は期待できない。現状、菓子の食感を大きく変える方法としては、菓子原料及び配合を変えることに頼るしかなく、スプレー油での有効な食感改良方法はなかった。
【0006】
スポンジの場合食感を変えるために卵、油脂の含量を多くすると、弾力がなくなってしまい、弾力を出す方法としてスポンジ中の水分含量を減少させることがあるが、水分含量が減少するとスポンジがぱさついて、口溶けが悪化してしまう。また、食感をソフトにするために比重を下げると、ソフト感は出るが、しっとり感がなくなるなどの問題点があった。
【0007】
加工澱粉を使用した軽い食感に優れたケーキの製造方法(特許文献4)がある。これは澱粉水溶液を予めpHを11.1〜11.3に維持しながら39℃で10時間反応させ、架橋澱粉を調製し、ケーキの配合に添加して焼成する方法であって、菓子原料を変えることで食感を改良するものである。しかし、pHを維持しながら10時間もの反応が必要であり、大変な手間と時間がかかってしまうといった問題が生じる。
【特許文献1】特開2002−95411号公報
【特許文献2】特開2000−184849号公報
【特許文献3】特開平11−262358号公報
【特許文献4】特開平7−75479号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、焼成した焼き菓子に浸透性の良好な油脂をスプレーすることで、焼き菓子内部まで油脂が浸透し、菓子の水分活性、組成、ストラクチャー等を変化させることなく風味が良好である。更に、焼き菓子、スポンジなどの咀嚼中のほぐれ感が良好でかつ口溶け感、喉越し感が良好な今までにない食感の焼き菓子製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、対称型トリグリセリド(1,3位に飽和脂肪酸残基、2位に不飽和脂肪酸残基)を含有する油脂に特定の乳化剤を添加した油脂組成物を加工・焼成した菓子表面に直接接触させることで、新規な食感の焼き菓子となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、
1.対称型トリグリセリド(1,3位に飽和脂肪酸残基、2位に不飽和脂肪酸残基)の含有量が30重量%以上(でかつ、上昇融点20℃以上)の油脂にHLBが3〜13の乳化剤を添加してなる焼き菓子類用油脂組成物。
2.乳化剤のHLBが5〜10である請求項1の焼き菓子類用油脂組成物。
3.対称型トリグリセライドの含有量が55重量%以上95重量%以下である請求項1の焼き菓子類用油脂組成物。
4.請求項1の油脂組成物を菓子製品表面に接触することを特徴とする焼き菓子類製品の製造法。
である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によって、焼成した焼き菓子に浸透性の良好な油脂をスプレーすることで、焼き菓子内部まで油脂が浸透し、菓子の水分活性、組成、ストラクチャー等を変化させることなく風味が良好である。更に焼き菓子、スポンジなどの咀嚼中のほぐれ感が良好でかつ口溶け感、喉越し感が良好な今までにない食感の焼き菓子製品が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明で言う焼き菓子類製品は、小麦粉、コーンフラワー、もしくは米粉等の穀粉、澱粉、加工澱粉等の澱粉性原料(これらの化工澱粉を含む)、必要に応じて油脂原料を使用した生地を加工・焼成したもので、加工・焼成とは、焼き菓子類の生地を最終製品の形状に成型し、オーブン等で加熱すること、及び膨化食品の加圧加熱押出成型等を言う。特に、焼き菓子組織がポーラスなもの、乾き菓子、軽い食感の焼き菓子類のほぐれ感、口溶け感、喉越し感を良好にする。例えば焼き菓子類製品として、ビスケット、クッキー、クラッカー(乾パン、プレッツェルを含む)等のビスケット類、パイ、スポンジ等のケーキ類、メレンゲ菓子、シリアル、ラスク、ウエハース、スナック菓子、小麦せんべい、米菓等が挙げられる。
【0013】
本発明の油脂組成物に用いられる油脂原料としては、例えば、パーム油、菜種油、大豆油、ひまわり油、コーン油、綿実油、サフラワー油、米ぬか油、ヤシ油、パーム核油等、食用油脂であれば特に限定はされない。また、本発明の油脂組成物に用いられる油脂は、前述の油脂原料を水素添加、エステル交換、分別等の処理をして、対称型トリグリセリド(1,3位に飽和脂肪酸残基、2位に不飽和脂肪酸残基)(以下SUS(S:飽和脂肪酸残基、U:不飽和脂肪酸残基)と言う)の含有量が30重量%以上95重量%以下であるもの、更に好ましくは55重量%以上95重量%以下であれば、特に限定されない。
【0014】
テンパリング型チョコレート中の油脂の主要、構成成分であるSUSは口溶けが良好な油脂である。しかし、このチョコレートを加熱融解した後処理を行わず固化させると、経時的に口溶けの悪化を引き起こす。スプレー用油脂として使用する場合テンパリング処理は行えないが、焼き菓子にスプレーすることで焼き菓子の喉越し、口溶けをすることができる。詳細な機構については不明であるが、スプレーすることで、油脂が焼き菓子組織の表面に広がり、油脂密度が下がるため、油脂のみまたは、チョコレートで感じる口溶けとは異なる食感、口溶けになると考えられる。
【0015】
油脂組成物に用いられる油脂のSUS含有量が30重量%未満の場合、油脂組成物が軟らかくなり、焼成後の焼き菓子類製品に油脂組成物を直接接触した後、油脂組成物が焼き菓子類製品の下から染み出す問題や、焼き菓子類製品を持った際に手のべたつきが激しく、食した場合には油性感を強く感じるため、焼き菓子類製品の商品価値を低下させる問題が生じる。油脂組成物に用いられる油脂のSUS含有量が95%を超える油脂は現状工業的に製造することは困難である。
【0016】
本発明の油脂組成物は、SUS含有量が30重量%以上、95重量%以下の油脂に乳化剤を添加してなるものである。乳化剤は、HLBが3〜13のものを添加する必要がある。乳化剤は、特にモノグリセライド、有機酸モノグリセライド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレート、ショ糖脂肪酸エステルで、これらを少なくとも1種類添加することが好ましい。HLBが3以下であると、焼き菓子への浸透度合いが低いため、生地がべとつく。また、HLBが13よりも大きいものは、油脂への溶解性が低く本発明の効果が得られ難い傾向がある。乳化剤のHLBについては、5〜10が更に好ましい。
【0017】
乳化剤の添加量としては、油脂に対して0.4〜10重量%が好適である。0.4重量%未満では、油脂組成物の生地への浸透度合が低く、油脂組成物を直接接触した焼き菓子類製品の口溶け改善効果が現れ難くなる。また、10重量%を超えると、油脂組成物中の乳化剤の風味が直接接触した焼き菓子類製品に影響を与える問題がある。
【0018】
また、油脂組成物に調味料、例えば醤油、砂糖等の糖類、食塩、アミノ酸等の調味料の他、味噌、胡椒、唐辛子、山椒、ワサビ、ガーリック、セロリー、パプリカ、ビター等の香辛料や、ビーフ、ポーク、チキン、えび、かに等から得られた天然オイルフレーバー、また澱粉、色素、香料等、菓子の組織よりも細かい粒子の粉状ないし粒状または、液状の調味料を含有させて使用しても構わない。
【0019】
焼き菓子製品の配合や製法は常法に従えばよい。本発明の焼き菓子類製品においては、焼成した後の生地の表面に本発明の油脂組成物を接触させる。
【0020】
油脂組成物の接触させる方法としては、スプレー、刷毛塗り、浸漬、どぶ漬けなどがあり、作業に応じて又は最終製品の要望する食感や油性感によって、接触方法を選択すればよい。また、接触する時期は、焼成前、半焼成時に油脂組成物を接触すると焼成後の焼き菓子が焦げて製品価値を損なってしまう問題が生じることから、焼成後に接触する。
【0021】
油脂組成物の接触量は、焼き菓子類製品の生地重量比1〜30%が良く、焼き菓子類製品の油分により食感が変化するので、焼き菓子類製品の食感、油性感に合わせ、菓子表面からある程度内部に浸透するよう調整すればよい。
【0022】
本発明の油脂組成物に用いられるSUS含有量の分析は、高速液体クロマトグラフ(カラム:ODS、溶離液:アセトン/アセトニトリル=80/20、液量:0.9ml/分、カラム温度:25℃、検出器:示差屈折計)で、融点は日本油化学協会基準油脂分析試験法(1996年版)2.2.4.2融点(上昇融点)に規定の方法に準じて測定できる。
【0023】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明の実施例はこれに限られるものではない。
【0024】
油脂の調製
パーム油を溶剤分別して油脂A:パーム中融点油脂(PMFヨウ素価45.2、融点26.3℃、SUS含有量55.2%)、油脂B:パームオレイン(ヨウ素価57.5、融点21.1℃、SUS含有量34.7%)、油脂C:パームスーパーオレイン(ヨウ素価68.0、融点10.2℃、SUS含有量11.3%)を調製した。また、油脂D:やし油(ヨウ素価8.5、融点24.0℃、SUS含有量未測定)を得た。更に、シア脂を溶剤分別して油脂E:シアステアリン(ヨウ素価34.5、融点37.6℃、SUS含有量75.3%)を得た。これらの油脂に乳化剤を添加して、スポンジ生地にスプレーした。スポンジ生地配合を表1に示す。
【0025】
<表1>
スポンジ配合(部)
薄力粉 100
全卵 200
上白糖 100
蜂蜜 20
製菓用サラダ油 40
【実施例1】
【0026】
常法に従い、スポンジ菓子を焼成した。菓子を3cm×3cm×1.7cmにカットし、油脂Aに乳化剤(ジグリセリンモノオレイン酸エステル(HLB=8)(理研ビタミン(株)製)を1%添加したものを菓子に重量対比20重量%スプレー塗布した。20℃保存一日後菓子の食感、口溶けの評価を行うとともに、20℃一定、17℃(10時間)⇔30.5℃(10時間)(1サイクル/day)一ヶ月保存後で食感、口溶けの変化の有無も評価した。
【実施例2】
【0027】
常法に従い、スポンジ菓子を焼成した。菓子を3cm×3cm×1.7cmにカットし、油脂Bに乳化剤(ジグリセリンモノオレイン酸エステル(HLB=8)(理研ビタミン(株)製)を1%添加したものを菓子に重量対比20重量%スプレー塗布した。20℃保存一日後菓子の食感、口溶けの評価を行うとともに、20℃一定、17℃(10時間)⇔30.5℃(10時間)(1サイクル/day)一ヶ月保存後で食感、口溶けの変化の有無も評価した。
【実施例3】
【0028】
常法に従い、スポンジ菓子を焼成した。菓子を3cm×3cm×1.7cmにカットし、油脂Eに乳化剤(ジグリセリンモノオレイン酸エステル(HLB=8)(理研ビタミン(株)製))を1%添加したものを菓子に重量対比20重量%スプレー塗布した。保存一日後菓子の食感、口溶けの評価を20℃行うとともに、20℃一定、17℃(10時間)⇔30.5℃(10時間)一ヶ月保存後で食感、口溶けの変化の有無も評価した。
【実施例4】
【0029】
常法に従い、スポンジ菓子を焼成した。菓子を3cm×3cm×1.7cmにカットし、油脂Aに乳化剤(プロピレングリコールモノオレート(HLB=3.4)(理研ビタミン(株)製))を1%添加したものを菓子に重量対比20重量%スプレー塗布した。生地の食感、口溶けの評価を20℃保存一日後、行うとともに、20℃一定、17℃(10時間)⇔30.5℃(10時間)一ヶ月保存後で食感、口溶けの変化の有無も評価した。
【0030】
<比較例1>
常法に従い、スポンジ菓子を焼成した。菓子を3cm×3cm×1.7cmにカットし、油脂Cに乳化剤(ジグリセリンモノオレイン酸エステル(HLB=8)(理研ビタミン(株)製)を1%添加したものを菓子に重量対比20重量%スプレー塗布した。20℃保存一日後菓子の食感、口溶けの評価を行うとともに、20℃一定、17℃(10時間)⇔30.5℃(10時間)(1サイクル/day)一ヶ月保存後で食感、口溶けの変化の有無も評価した。
【0031】
<比較例2>
常法に従い、スポンジ菓子を焼成した。菓子を3cm×3cm×1.7cmにカットし、油脂Dに乳化剤(ジグリセリンモノオレイン酸エステル(HLB=8)(理研ビタミン(株)製)1%添加したものを菓子に重量対比20重量%スプレー塗布した。20℃保存一日後菓子の食感、口溶けの評価を行うとともに、20℃一定、17℃(10時間)⇔30.5℃(10時間)(1サイクル/day)一ヶ月保存後で食感、口溶けの変化の有無も評価した。
【0032】
<比較例3>
常法に従い、スポンジ菓子を焼成した。菓子を3cm×3cm×1.7cmにカットし、油脂Aを菓子に重量対比20重量%スプレー塗布した。20℃保存一日後菓子の食感、口溶けの評価を行うとともに、20℃一定、17℃(10時間)⇔30.5℃(10時間)(1サイクル/day)一ヶ月保存後で食感、口溶けの変化の有無も評価した。
【0033】
<比較例4>
常法に従い、スポンジ菓子を焼成した。菓子を3cm×3cm×1.7cmにカットし、油脂Aに乳化剤(大豆レシチン(ツルーレシチン工業(株)製 リン脂質60〜62重量%含有 )を1%添加したものを菓子に重量対比20重量%スプレー塗布した。20℃保存一日後菓子の食感、口溶けの評価を行うとともに、20℃一定、17℃(10時間)⇔30.5℃(10時間)(1サイクル/day)一ヶ月保存後で食感、口溶けの変化の有無も評価した。
【0034】
<比較例5>
スポンジを焼成する前の生地に油脂Aを生地重量対比20%添加し、スポンジ菓子を焼成した。焼成菓子の食感、口溶けの評価を20℃保存一日後行うとともに、20℃一定、17℃(10時間)⇔30.5℃(10時間)(1サイクル/day)一ヶ月保存後で食感、口溶けの変化の有無も評価した。
【0035】
<表2>

【0036】
以上の結果から、本発明に従って調製された油脂組成物(実施例1、2及び3)を使用することにより、水分活性を変化させることなく風味が良好でかつ、焼き菓子スポンジなどのほぐれ感が良好でかつ新規な食感の焼き菓子製品が得られた。
【実施例5】
【0037】
<表3>
ゴーフルの配合(部)
薄力粉 100
上白糖 50
全卵 105
重曹 1
製菓用サラダ油 2.5
脱脂乳 105
【0038】
表3の配合を用いて、常法に従いゴーフルを調製した。焼成後、油脂Aに乳化剤(ジグリセリンモノオレイン酸エステル(HLB=8)(理研ビタミン(株)製)を1%添加したものを生地重量対比20%スプレー塗布した後に、スプレーなしのゴーフルと食感、口溶けの比較評価を行った。スプレーしないゴーフル菓子は、口中の唾液を吸って口内に張り付く感覚があり、喉越し感が悪い。これに対し、スプレーしたゴーフル菓子は、口中で素早く菓子がほぐれ、口溶け、喉越しの良好な焼き菓子となった。
【0039】
<表4>
コーンパフ生地の配合
コーングリッツ 93.0重量%
グラニュー糖 4.7重量%
食塩 1.8重量%
炭酸カルシウム 0.5重量%
【0040】
表4の配合を用いて常法に従いコーンパフを調製した。作製後に油脂Aに乳化剤(ジグリセリンモノオレイン酸エステル(HLB=8)(理研ビタミン(株)製)を1%添加したものを、生地重量対比20%スプレー塗布した後にスプレーなしのコーンパフと食感、口溶けの比較評価を行った。スプレーなしの菓子は食した時に、口中の唾液を吸って口内に張り付く感覚があり、喉越し感が悪い。これに対し、スプレーしたコーンパフ菓子は、口中で素早く菓子がほぐれ、口溶け、喉越しの良好な焼き菓子となった。
【0041】
油脂組成物をスプレーしたゴーフル、コーンパフ菓子を20℃一定、17℃⇔30.5℃(1サイクル/day)一ヶ月保存後で食感、口溶けの変化の有無を調べたが、いずれもスプレーした直後と食感、口溶けに変化はなく、喉越し感、ほぐれ感も良好であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対称型トリグリセリド(1,3位に飽和脂肪酸残基、2位に不飽和脂肪酸残基)の含有量が30重量%以上の油脂にHLBが3〜13の乳化剤を添加してなる焼き菓子類用油脂組成物。
【請求項2】
乳化剤のHLBが5〜10である請求項1の焼き菓子類用油脂組成物。
【請求項3】
対称型トリグリセライドの含有量が55重量%以上95重量%以下である請求項1の焼き菓子類用油脂組成物。
【請求項4】
請求項1の油脂組成物を菓子製品表面に接触することを特徴とする焼き菓子類製品の製造法。

【公開番号】特開2006−271305(P2006−271305A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−98155(P2005−98155)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000236768)不二製油株式会社 (386)
【Fターム(参考)】