説明

焼き餡菓子

【課題】焼成直後同様の焼き餡菓子の絶妙な食感を何時でも確実に体験できる焼き餡菓子を提供すること。
【解決手段】焼き餡と可食容器焼成菓子とを組み合わせる焼き餡菓子において、上記焼き餡と上記可食容器焼成菓子とを別個に焼成し、別個に包装することを特徴とする焼き餡菓子を提供する。これにより、焼成後の可食容器焼成菓子は、消費者の手元に渡るまでに時間が経過したとしても、当該可食容器焼成菓子はサクサク感を失うことがない。その結果、消費者は、上記可食容器焼成菓子の上に上記焼き餡を乗せて食し、焼成直後同様の焼き餡菓子の絶妙な食感を確実に体験することが可能となる。また、焼き餡菓子が転々流通する場合や長期間保存される場合でも、当該焼き餡菓子は別個に包装されているため、上記焼き餡菓子の保存性も優れるとともに焼成直後同様の焼き餡菓子の絶妙な食感を何時でも体験することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼き餡菓子に関し、詳しくは、焼成直後と同様の焼き餡菓子の絶妙な食感を何時でも確実に体験できる焼き餡菓子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、しっとりとした焼き餡とサクサク感を有する可食容器焼成菓子(例えば、サブレ、クッキー、ビスケット、パイなど)とを組み合わせた焼き餡菓子は、消費者に広く親しまれている菓子のひとつである。広く親しまれる理由として、焼き餡のしっとりとした口当たりと可食容器焼成菓子のサクサクとした食感とのバランスが絶妙な食感を生み出すからである。
【0003】
上記焼き餡菓子は、一般的に、当該可食容器焼成菓子の生地に当該焼き餡の生地を乗せた状態で同時に焼成する方法が、採用さられている。この方法で上記焼き餡菓子が製造されると、焼成直後、すなわち出来立ての当該焼き餡菓子では、上記可食容器焼成菓子はサクサク感を有しているため、上記絶妙な食感を十分に体験することが出来る。
【0004】
しかし、上記焼き餡菓子の焼き餡の含水率は高く、且つ、当該焼き餡と上記可食容器焼成菓子とが常に接触した状態である。そのため、しばらくすると、上記焼き餡に含まれている水分が接触部分を介して上記可食容器焼成菓子へ浸透し、当該可食容器焼成菓子は湿気てしまう。そのため、上記可食容器焼成菓子はサクサク感を失い、消費者は焼成直後の焼き餡菓子が有する絶妙な食感を味わうことが出来ないという問題があった。
【0005】
また、上記方法で製造された焼き餡菓子が市場で販売される場合、上記焼き餡も上記可食容器焼成菓子も同一の包装材に密封されることとなる。その場合に日にちが経過すると、上記焼き餡に含まれている水分が密封された包装材の中で発散することとなり、この発散した水分は包装材内部の空気を介して、上記可食容器焼成菓子に吸収され、結果として、上記焼き餡菓子は絶妙な食感を失うという問題があった。
【0006】
上記のような問題を解消するために、例えば、具体的アプローチとしては、以下のものが開示されている。
【0007】
特許文献1から特許文献3に記載の技術では、水気の多い餡を乾燥した煎餅(皮)で挟んで食する最中菓子において、当該餡と当該煎餅とが別個に包装された最中が開示されている。ここでは餡と上記煎餅とが別個に包装されているので、長期間保存していても当該餡に含まれている水分が煎餅に浸透することがない。そのため、消費者が上記最中菓子を食する際は、上記餡を上記煎餅とを挟んで当該最中菓子を整えるという手間が生じるものの、当該餡の持つしっとり感と当該煎餅の持つパリパリ感とを堪能することが可能であるとしている。
【特許文献1】特許第2614592号公報
【特許文献2】特開2003−245043号公報
【特許文献3】特開平10−243770号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記最中菓子の場合、上記餡と上記煎餅とが別個の工程を経て製造されるが、上記焼き餡菓子は、上記焼き餡も上記可食容器焼成菓子も同一の焼成工程を経て製造される。従って、両者は全く異なる種類の菓子であり、そこに生じる問題も異なることになる。
【0009】
例えば、上記最中菓子の容器の場合、食べるときに、皮に包み込むようになっている。そのため、餡は皮の形状に嵌まり込む一定の形状に密封すれば足りるが、焼き餡菓子は、餡が焼きあがったとき、可食容器焼成菓子とは別の形状をしており、しかも、餡を焼いたのであるからその形状は崩れやすい性質がある。これを、上記最中餡のように所定の形状に密封しようとしても、本来の形状が壊れてしまうことになり、また、焼き餡は菓子としてのデザインの一部でもあるため形状が崩れることはデザイン上も好ましくはない。
【0010】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、焼成直後同様の焼き餡菓子の絶妙な食感を何時でも確実に体験できる焼き餡菓子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、焼き餡と可食容器焼成菓子とを組み合わせる焼き餡菓子において、当該焼き餡と当該可食容器焼成菓子とを別個に焼成し、別個に包装することによって、焼成直後同様の焼き餡菓子の絶妙な食感を何時でも体験できることを見出し、これに基づいて本発明を完成した。
【0012】
上記において、焼き餡は所定形状の例えばプラスチック容器に入れて型崩れがしないように包装されるのが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る焼き餡菓子は、焼き餡と可食容器焼成菓子とを別個に焼成し、別個に包装するよう構成している。
【0014】
これにより、焼き餡と可食容器焼成菓子とが接触することがないので、上記焼き餡の表層も上記可食容器焼成菓子の表層も十分に焼成されることとなる。そのため、上記接触部分が焼成不十分ということもない。さらに、焼成後の可食容器焼成菓子は、消費者の手元に渡るまでに時間が経過したとしても、上記焼き餡の有する水分が当該可食容器焼成菓子に浸透することがないため、上記可食容器焼成菓子はサクサク感を失うことがない。その結果、消費者は、上記焼き餡菓子を食する際に、上記可食容器焼成菓子の上に上記焼き餡を乗せて食し、焼成直後同様の焼き餡菓子の絶妙な食感を確実に体験することが可能となる。
【0015】
さらに、上記焼き餡と上記可食容器焼成菓子とを別個に焼成することにより、当該焼き餡と当該可食容器焼成菓子とを焼成する際の焼成時間を従来の焼成時間の半分とすることが出来る。上記焼き餡と上記可食容器焼成菓子とを別個にすると、焼成工程にて焼成に必要な当該焼き餡と当該可食容器焼成菓子との体積が、従来の焼き餡菓子の焼成に必要な体積と比較して減少する。そのため、上記従来の焼成時間の半分で十分となる。全焼成時間は、従来の焼成時間と本発明における焼成時間とでは同一であるため、結果として、焼成コストは同一であるにもかかわらず、上記焼き餡等の表面の焦げすぎもなく、しかも上記可食容器焼成菓子のサクサク感を保つことが可能となる。
【0016】
また、焼き餡菓子が転々流通する場合や長期間保存される場合でも、当該焼き餡菓子は別個に包装されているため、決して上記可食容器焼成菓子は湿ることがない。そのため、上記可食容器焼成菓子は長期間サクサクとした状態を維持することとなり、その結果、上記焼き餡菓子の保存性も優れるとともに焼成直後同様の焼き餡菓子の絶妙な食感を何時でも体験することが可能となる。
【0017】
尚、焼き餡のデザインを保つためには、当該焼き餡の型崩れを防ぐ機能をもつ所定形状の容器にいれておくのが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明と以下の具体的実施例に基づき、より詳細に説明するが、本発明の内容はこれらにより制限されるものではない。
【0019】
(実施例1)
ふかしたさつまいも(鳴門金時さつまいも)を、市販の低速ミキサーを用いて、当該さつまいも独自の甘さを損なわない程度の少量の砂糖と水とを添加して混練りし、ペースト状の焼き餡の生地を得た。この焼き餡の生地を市販の成形充填機に充填し、焼成用金型上に渦巻き状に成形させ、未焼成の餡を得た。この未焼成の餡を180度前後の温度で15分程度焼成し、図1Aに示す焼き餡1を得た。
【0020】
上記とは別に、小麦粉にバター、砂糖等を必要量配合して混練りし、サブレの生地を得、当該サブレの生地を成形充填機に充填し、舟形の焼成用金型上に所定量流し込んだ。流し込まれた上記サブレの生地を、圧縮機により圧縮し、舟形の形状の未焼成サブレを得、180度前後で15分程度加熱して焼成し、図1Bに示す舟形サブレ2を得た。
【0021】
出来上がった焼き餡1を舟形のプラスチックトレイ3に収容し、市販の包装装置に搬送して脱酸素剤5とともに、包装材4によって包装し、当該包装材の端部を熱圧着し、密封包装した(図2A、B)。また、上記のようにして出来上がった舟形サブレ2を舟形のプラスチックトレイ30に収容し、上記包装装置に搬送して脱酸素剤5とともに、包装材4によって密封包装した(図3A、B)。更に、上記密封包装された焼き餡1と船形サブレ2とを同じ数だけ箱容器にいれて、最終製品とした。尚、上記焼き餡1を主要するプラスチックトレイ3と、サブレを収容するプラスチックトレイ30は同じ形状とするのが、コスト面から好ましい。また、以下の比較例で説明するように、未焼成サブレに未焼成餡を入れて焼成する場合は30分焼成時間が必要であるが、この場合、サブレ、餡とも半分程度の時間で焼成可能である。
【0022】
消費者側ではこのように箱詰めされて販売された、サブレに焼き餡を入れて食することになる。
【0023】
ここにおいて、包装材4から上記焼き餡1と上記舟形サブレ2とをそれぞれ取り出してみると、当該焼き餡1はしっとり感を有し、当該舟形サブレ2はサクサク感を有していた。上記焼き餡1を上記舟形サブレ2の上に乗せて、焼き餡菓子として食してみたところ、さつまいも独自の甘さを味わえるとともに当該焼き餡1のしっとりとした口当たりと舟形サブレ2のサクサクとした食感とが絶妙な食感を生み出していた。結果として、焼き餡菓子の焼成直後同様の絶妙な食感を楽しむことができた。
【0024】
(比較例1)
実施例1に記載の方法で得られたサブレの生地を、舟形の焼成用金型上に所定量流し込んで、圧縮機により舟形形状の未焼成のサブレを形成した。続いて、上記舟形サブレの生地の上に、実施例1に記載の方法で得られた焼き餡の生地を渦巻き状に成形し、180℃前後の温度で、30分程度焼成し、図4に示す焼き餡1と舟形サブレ2とを組み合わせた焼き餡菓子を得た。
【0025】
出来上がった焼き餡菓子をその場で食してみたところ、舟形サブレ2がサクサク感を失っておらず、焼き餡菓子の絶妙な食感を楽しむことができた。
【0026】
続いて、上記出来上がった焼き餡菓子を舟形のプラスチックトレイ3に収容し、包装装置で脱酸素剤5とともに、包装材4によって密封包装した(図5A、B)。
【0027】
1日経過後、包装された焼き餡菓子から包装材4を取り除いて、当該焼き餡菓子を食してみたところ、焼き餡1のしっとり感は楽しめたが、当該焼き餡1の水分が舟形サブレ2に浸透し、サクサク感が失われており、全体として柔らかい食感であった。そのため、焼成直後同様の絶妙な食感を楽しむことが出来なかった。
【0028】
(比較例2)
実施例1に記載の方法で焼成した舟形サブレの表面に、温水で柔らかい状態としたチョコレートを薄く塗布して、しばらく放置し、上記チョコレートを固化させた。続いて、実施例1に記載の方法で焼成した焼き餡を上記チョコレートの上に乗せて、焼き餡菓子とした。上記焼き餡菓子を舟形のプラスチックトレイに収容し、包装装置に搬送して脱酸素剤とともに、包装材によって密封包装し、包装された焼き餡菓子を得た。
【0029】
1日経過後、上記包装された焼き餡菓子から当該焼き餡菓子を取り出して食してみたところ、焼き餡のしっとり感は楽しめたが、チョコレートが舟形サブレの表層に存在するものの、当該舟形サブレは湿った状態であり、焼成直後同様の絶妙な食感を楽しむことが出来なかった。
【0030】
(比較例3)
実施例1に記載の方法で焼成した舟形サブレの表面に、バターを薄く塗布して、しばらく放置し、上記バターを固化させた。続いて、実施例1に記載の方法で焼成した焼き餡を上記バターの上に乗せて、焼き餡菓子とした。この焼き餡菓子を舟形のプラスチックトレイに収容し、包装装置に搬送して脱酸素剤とともに、包装材によって密封包装し、包装された焼き餡菓子が得られた。
【0031】
上記包装された焼き餡菓子から当該焼き餡菓子を取り出して食してみたところ、焼き餡のしっとり感は楽しめたが、バターが舟形サブレの表層に存在するものの、当該舟形サブレは湿った状態であり、焼成直後同様の絶妙な食感を楽しむことが出来なかった。
【0032】
(比較例4)
比較例1に記載の方法で包装された焼き餡菓子を包装された直後に包装された状態で、―20℃の冷凍庫に保存した。二日経過後に、冷凍庫から取り出して、上記包装された焼き餡菓子から当該焼き餡菓子を取り出してレンジにて適度に加熱して食してみたところ、焼き餡のしっとり感は楽しめたが、舟形サブレは湿った状態であり、焼成直後同様の絶妙な食感を楽しむことが出来なかった。
【0033】
上述したように、本発明に係る焼き餡菓子によれば、焼き餡と可食容器焼成菓子とを別個に焼成し、別個に包装するよう構成している。
【0034】
以上説明したように、本願発明は、焼き餡と可食容器焼成菓子とが接触することがないので、上記接触部分が焼成不十分ということもないうえ、上記接触部分がないので、短い焼成時間で足りる。さらに、時間が経過したとしても、上記焼き餡に含まれる水分が上記可食容器焼成菓子へ上記接触部分を通過して浸透することがないため、上記可食容器焼成菓子はサクサク感を失うことがない。
【0035】
また、焼き餡はプラスチック容器に入れられた状態で、密封包装するようになっているので、搬送中に型崩れすることはない効果がある。
【0036】
さらに、上記焼き餡と上記可食容器焼成菓子とを別個に焼成する際の焼成時間を従来の焼成時間の半分としているため、焼き餡菓子を製造するためのコストは同一であるにもかかわらず、表面の焦げすぎもなく、しかも上記可食容器焼成菓子のサクサク感を保つことが可能となる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0037】
以上のように、本発明に係る焼き餡菓子は、しっとり感のある焼き餡とサクサク感のある可食容器焼成菓子とを組み合わせた焼き餡菓子に有用であり、焼成直後同様の焼き餡菓子の絶妙な食感を何時でも確実に体験できる焼き餡菓子として有効である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施例1の別個に焼成された焼き餡菓子を示す斜視図である。
【図2】実施例1の包装された焼き餡を示す斜視図である。
【図3】実施例1の包装された舟形サブレを示す斜視図である。
【図4】比較例1の同時に焼成された焼き餡菓子を示す斜視図である。
【図5】比較例1の包装された焼き餡菓子を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0039】
1 焼き餡
2 舟形サブレ
3 舟形のプラスチックトレイ
30 舟形のプラスチックトレイ
4 包装材
5 脱酸素剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼き餡と可食容器焼成菓子とを組み合わせる焼き餡菓子において、
上記焼き餡と上記可食容器焼成菓子とを別個に焼成し、別個に包装することを特徴とする焼き餡菓子。
【請求項2】
上記焼き餡と上記可食容器焼成菓子とを別個に包装する際は、同一の所定形状の容器に入れて密封することを特徴とする請求項1に記載の焼き餡菓子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−11219(P2009−11219A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−175792(P2007−175792)
【出願日】平成19年7月4日(2007.7.4)
【出願人】(592091471)株式会社ハタダ (3)
【Fターム(参考)】