説明

焼くだけの冷凍ドーを製造する新規の方法

本発明は、完全発酵された冷凍ドーを製造する新たな方法、その成分の配合、及び様々な種類のベーカリー製品を製造するプロセスに関する。本方法を用いて得られる完全発酵された冷凍ドーは、如何なる添加物の添加も必要とせず、また、さらなるプルーフィング工程を伴うことなく発酵された冷凍ドーを焼き上げることにより、高品質のベーカリー製品を提供することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インスタント活性ドライイーストを用いて、完全発酵された冷凍ドーを製造する方法に関する。本方法を用いて得られる完全発酵された冷凍ドーは、如何なる添加物の添加も必要とすることなく、また、さらなるプルーフィング工程(proofing step:二次発酵工程)を伴うことなく発酵された冷凍ドーを焼き上げることにより、高品質のベーカリー製品を提供することが可能である。
【背景技術】
【0002】
ベーカリー製品を製造する従来のプロセスは、成分を混合すること、ドーを捏ねること、ドーをより小さく分割すること、ドー・ピースの形を整え、成形すること、それを特定のボリュームまでプルーフすること、及び焼成することを含む。このプロセスは、面倒で時間がかかり、また、例えば焼き立てのパン特有の官能特性を有するパンを製造するための適切な設備及び有能なパン職人を必要とする。準備時間を最低限に抑え、さらに焼き立てのパンを提供するために、フードサービス、店舗ベーカリーの他、ホームベーキングにおいても、冷凍ドー製品が人気を得ている。
【0003】
製造方法に応じて、冷凍ドーは様々な形態で利用することができる。事前発酵された冷凍ドーは、冷凍前にプルーフされているのに対し、プルーフされていない又は不完全にしかプルーフされていない冷凍ドーは、焼き上げる前にプルーフすることを要する。完全発酵された冷凍ドー(FFF)は、完全に予めプルーフされており、焼き上げる前にプルーフすることを要しない。つまりこれは、製造施設では、冷凍前に、材料及び/又は成分を有益に配合させ、ドーを混合させ、形を整え且つ完全にプルーフさせることが好まれることを意味する。次いで、これらのFFFドーの受容者は、冷凍庫からドーを取り出し、それらをトレイに載せ、オーブン内で焼成すると考えられる。
【0004】
しかしながら、冷凍ドーの焼成効率は、冷凍貯蔵期間又は冷凍−解凍サイクルの回数が増大するにつれて低下する。さらに、冷凍ドーは、ドー及び焼成後に得られるベーカリー製品の官能特性の低下に結びつく。
【0005】
品質及び焼成効率の損失は、加工条件、配合、イーストの種類、小麦粉の種類を調節することによって、及び添加物を使用することによって制限することができる。したがって、文献に記載されている冷凍ドーは典型的に、イースト用量が従来のものよりも高く及び/又は小麦粉のタンパク質が豊富であり、及び/又は、グルテンの添加、及び/又はモノグリセリド及びジグリセリド、ガム、デキストロース、脂肪、化学膨張剤、エタノール、ADA等の添加物の添加を伴う。これらの成分は全て、当業者によって通常使用されるものよりも高い濃度で添加される。さらに、特定の小麦粉及び添加物と併せて大量のイーストを使用することは生産者にとって経済的に実現不可能である。
【0006】
添加物を必要とする方法は、冷凍前に如何なる発酵工程も行わないプロセスを伴うか、又は焼成前に制御温度での完全な解凍段階を必要とする。実際のところこの解凍段階がプルーフィング工程に対応するため、このようなドー製品は、プルーフする準備のできた(ready-to-proof)製品であるとみなされ得る。解凍後のプルーフィング工程がプロセスに含まれる場合、ドライイーストの使用は勧められない。
【0007】
典型的に、例えば液体イースト又は圧搾イースト等の利用可能な最も新鮮なイーストを用いて最高品質の結果が得られることが、ベーカリー分野において、また当業者によって知られている。また、生産者によっては、「冷凍イースト」又は「冷凍耐性イースト」等の冷凍用途での使用に好適な新たな種類のイーストを開発している人もいる。インスタントイーストは、寒冷ショックに弱いことが知られているため、冷凍ドーにはめったに使用されない。さらに、冷凍ドーは、通常のドーのよりもイーストの量を2倍必要とする。
【0008】
加えて、市場は、添加物を少量しか含有しない又はさらには全く組み込まないレシピをなお一層開発する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、如何なる添加物も必要とせず且つさらなるプルーフィング工程を伴うことなく焼き上げることが可能である、完全発酵された冷凍ドーを得る新たな方法、及びドー、並びにこのようなドーを用いて得られるパン製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、如何なる添加物の添加も伴うことなく完全発酵された冷凍ドーを得る方法を提供する。驚くべきことに、低濃度のインスタント活性ドライイースト、又は国際公開第2006/000065号パンフレットに記載のIADYを含む活性ベーカリー構成成分等の乾燥膨張剤を用いて、焼くだけの完全発酵された冷凍ドーを調製することが可能であることが見出された。完全発酵された冷凍ドーは、中間の冷凍期間を設けることなく製造される直接的なベークド製品に匹敵する、著しい容積の成長及び窯伸びを伴って焼き上げることができる。
【0011】
したがって本発明は、完全発酵された冷凍ドーを製造する方法であって、
(a)少なくとも小麦粉、水、及びIADYとを混合することによってドーを調製する工程、
(b)ドーを捏ねると共に成形する工程、
(c)完全なプルーフィングに達するまでドーをプルーフする工程、並びに
(d)ドーを冷凍する工程、
を含む、方法を提供する。
【0012】
前処理を行うことなく、好ましくは小麦粉に基づき0.5wt%〜2wt%の量で、インスタント活性ドライイーストを混合物に添加する。
【0013】
より好ましくは、本発明の方法は、完全発酵された冷凍ドーを解凍すると共に焼成する工程をさらに含んでいてもよい。加えて、本方法は、焼成前に完全発酵された冷凍ドーの上面に切り込みを入れる工程をさらに含んでいてもよい。
【0014】
好ましい実施の形態において、本発明の方法は、プルーフィング後及び冷凍前に平らにする工程をさらに含む。この平らにするプロセス中では、ドー製品の厚みを薄くするように冷凍前にドーを延ばすか又は加圧する。この工程は、ドー・ピースの貯蔵を最適なものにする。
【0015】
さらに、本発明は、本発明の方法によって得られる完全発酵された冷凍ドー及びパン製品に関する。
【0016】
本発明は、完全発酵された冷凍(FFF)ドー及びその製造方法に関する。冷凍後、本方法は、プルーフィング工程を経ることなく完全発酵された冷凍ドーを焼き上げることができる。本製品を製造する方法の重大な態様は、少量のインスタント活性ドライイースト(IADY)を使用することである。驚くべきことに、少量のIADYを使用する場合に、完全発酵された冷凍ドーを得ることができることが見出された。焼き上がると、著しい容積の成長及び窯伸びを特徴とするベーカリー製品を得ることができる。これらの特徴は、中間の冷凍期間を設けることなく製造される直接的なベークド製品に匹敵するものである。冷凍後にプルーフする必要がないため、本発明は、冷凍ドーから焼きたてのベーカリー製品を得るのに必要な時間を短縮する。さらに、冷凍及び/又は解凍後の最終プルーフのための高価なプルーフボックス(proofing boxes:ホイロ)に投資する必要がない上、さらに、中間の冷凍工程を設けることなく得られるものに匹敵する著しい品質を有する焼きたてのベーカリー製品が製造される。
【0017】
本発明のプロセスは、標準的な焼成プロセスの規則に従うが、特定の種類の膨張剤、即ち、インスタント活性ドライイースト(IADY)、又はIADYを含みサワードーをベースとするドライベーカリー構成成分、及び限定するものではないが、小麦粉、塩、砂糖、脂肪、アスコルビン酸等のパン作りにおける標準的な成分を用いたドーの調製を含む。完全発酵された冷凍ドーは、添加物の添加を伴うことなく得ることができる。したがって、本発明による方法は、ベーカリー製品を改善するものである。
【0018】
本発明中、用語「ベーカリー製品」は、例えば、最初の硬さが品質問題となるパン、ソフトロール、ベーグル、ドーナツ、デニッシュペストリ、ハンバーガロール、ピザ、ピタパン、チャバッタ、ケーキ、及び他のベークド製品を含む群から選択されるような、当該技術分野で既知のあらゆる種類のベーカリー製品、好ましくはパンを指す。柔らかい製品範囲の他に、バゲット、ロール、クラッカー、ビスケット、クッキー、パイクラスト、ラスク等の堅くパリパリとした製品範囲も存在する。より好ましくは、本発明は、当該技術分野で既知のあらゆる種類のパン製品について言及するものである。
【0019】
本発明中、用語「完全発酵された冷凍」即ち「FFF」ドーは、完全に予めプルーフされたベーカリー製品を指す。これらの製品は、冷凍前に、混合され、形が整えられ且つ完全にプルーフされる。これらのFFFドーの受容者は、冷凍庫からドーを取り出し、それらをトレイに載せ、オーブン内で焼成することを要する。
【0020】
本発明中、用語「インスタント活性ドライイースト」即ちIADYは、活性化させるのにやや温かい(mildly warm)液体を必要としないドライイースト製品を指す。この種類のイーストは、最終製品の乾燥物を制御する特定のプロセスを介して得られる。IADYはまた、活性ドライイーストよりもより微細に粒状化されているため、初めに水に溶解させる必要がない。また、これを乾燥成分に直接添加してもよい。これに対して、活性ドライイーストの使用は、イースト製品をドーに添加する前の水中での水和工程を必要とする。この工程は「再水和」とも称される。
【0021】
本発明中、用語「生イースト」は、約27%〜35%の乾燥物を有するベーカリー用のイーストを指し、用語「活性ドライイースト」即ち「ADY」は、約92%〜94%の乾燥物を有するベーカリー用のイーストを指し、用語「インスタント活性ドライイースト」即ち「IADY」は、約94%〜97%の乾燥物を有するベーカリー用のイーストを指す。
【0022】
本発明中、用語「プルーフィング」は、ドーが膨らむ段階を指す。最初に膨らませた後に、ドーをガス抜きし(punched down)、最終的な形態に形を整える。その後、ドーを最終的に膨らませるために並べ、これが「プルーフィング」として知られている。
【0023】
本発明中、用語「平らにする」は、ドー製品の厚みを薄くするようにドーを延ばすか又は加圧するプロセス工程を指す。平らにすることによってドーの厚みが薄くなるため、このプロセス工程は、ドー・ピースの貯蔵を最適なものにすることができる。
【0024】
本発明中、国際公開第2006/000065号パンフレット(参照により本明細書中に援用される)に記載されているような、用語「サワードーをベースとする活性ベーカリー構成成分」は、インスタント活性ドライイーストを膨張剤として含有する粉末形態の製品を指す。供給業者の指示に従い、ドーに使用される量は、レシピにおける小麦粉の重量に基づき0.6%〜2.2%のIADYに等しい。「サワードーをベースとする活性ベーカリー構成成分」の例は、Puratos社(ベルギー)から販売されているO−tentic製品である。
【0025】
本発明中、用語「香味改良剤」は、「香味改良系」又は「パン香味改良系」又は「パン香味改良組成物」を指す。これらの用語は全て、サワードー若しくはサワードー製品、ベーカリー中種(sponge:パン種を入れた生パン)若しくは中種製品、又は別のパン香味改良組成物(以下を参照)を指す。「サワードー」とは、乳酸菌及び最終的にイーストによって発酵されたドーを意味し、主に乳酸、酢酸、及び幾らかの微量の化合物を生成する乳酸菌に起因する特徴的な酸性の香味、最終的には、イーストによって生成される典型的な香味のトップノートを有する。本文脈中「サワードー製品」は、この製品を通常のドーに添加することにより、ベーカリーで行われる事前発酵に取って代わり得るように、何らかの方法で(例えば、乾燥、低温殺菌、冷却、冷凍等によって)安定化された上記の製品を指す。「中種」又は「中種ドー」とは、イーストによって発酵されたドーを意味し、上記イースト発酵に起因する特徴的な香味を有する。これは、小麦粉の一部のイースト発酵に基づく事前発酵製品である。「中種製品」は、通常のドー中の香味を高めるために用いられるかかる通常のベーカリー中種発酵の安定した形態を指す。これは中種抽出物であってもよい。「他の香味改良剤組成物」又は「他のパン香味改良剤組成物」は、化学的芳香化合物及び/又は酸及び/又は酸性化剤(酸及び/又はガスを発生する)の配合物であってもよい。
【0026】
本発明中、用語「改良剤組成物」は、ドーの取扱特性及び/又は最終的なベークド製品の品質を改善するためにドーに添加される、化学添加物及び酵素を含み得る組成物を指す。
【0027】
本発明の第1の実施形態では、完全発酵された冷凍ドーを製造する方法であって、
(a)少なくとも小麦粉、水及びIADY又はIADYを含む活性ベーカリー構成成分とを混合することによってドーを調製する工程、
(b)ドーを捏ねると共に成形する工程、
(c)完全なプルーフィングに達するまでドーをプルーフする工程、並びに
(d)ドーを冷凍する工程、
を含む、完全発酵された冷凍ドーを製造する方法が提供される。
【0028】
本発明の別の実施形態では、完全発酵された冷凍ドーを製造する方法であって、
(a)少なくとも小麦粉、水及びIADY又はIADYを含む活性ベーカリー構成成分とを混合することによってドーを調製する工程、
(b)ドーを捏ねると共に成形する工程、
(c)完全なプルーフィングに達するまでドーをプルーフする工程、並びに
(d)ドーを冷凍する工程、
から成る、完全発酵された冷凍ドーを製造する方法が提供される。
【0029】
ドーは、限定するものではないが、ブラスト冷凍(blast freezing)等の当該技術分野で既知の方法によって冷凍され得る。ドーを冷凍する場合、一様な冷却速度が望ましい。長期間の安定性のために、冷凍ドーは好ましくは、−5℃未満、好ましくは−10℃〜−25℃、最も好ましくは−15℃〜−20℃の温度で貯蔵される。冷凍状態で、ドー・ピースは所望期間貯蔵される。この貯蔵期間中にドーの品質が影響を受けることはない。
【0030】
ドーの調製に用いられる乾燥膨張剤は、IADY、及び/又は国際公開第2006/000065号パンフレットに記載のサワードーをベースとし且つIADYを含む活性ベーカリー化合物であってもよい。
【0031】
本発明の好ましい実施形態において、乾燥膨張剤、好ましくはIADYは、小麦粉の重量に基づき0.5%〜2%の濃度で用いられ、例えば、インスタント活性ドライイーストは、小麦粉の重量に基づき0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%又は2.0%の濃度で用いられる。
【0032】
本発明の好ましい実施形態において、インスタント活性ドライイーストは、小麦粉の重量に基づき0.5%〜2%の濃度で用いられ、例えば、同等のインスタント活性ドライイーストとして表される場合、乾燥膨張剤は、小麦粉の重量に基づき0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%又は2.0%の濃度で用いられる。本発明の別の好ましい実施形態において、乾燥膨張剤、好ましくはIADY又はIADYを含む活性ベーカリー構成成分は、ドーの調製において前処理を行うことなく添加される。
【0033】
加えて、平らにするプロセス工程を本発明の方法に含めてもよい。この平らにするプロセス中では、ドー製品の厚みを薄くするように、好ましくはプルーフィング後及び冷凍前にドーを延ばすか又は加圧する。平らにすることによってドーの厚みが薄くなるため、FFFドー・ピースの貯蔵を最適なものにすることができる。したがって、本発明は、平らにした後にドーの厚みが薄くなることに起因して、品物の貯蔵に際しパンの生産者が空間を確保する可能性を与える。驚くべきことに、冷凍前にドーを平らにすることでは、焼成後のベーカリー製品の特性が変わらないことが見出された。平らにされたFFFドー及びこのドーを焼き上げた後に得られるベーカリー製品のこれらの特徴は驚くべきことに、中間の冷凍期間、結果的に冷凍前の平らにする工程を設けることなく製造される直接的なベークド製品に匹敵するものである。
【0034】
好ましい実施形態において、本発明の方法は、プルーフィング後及び冷凍前に平らにする工程をさらに含む。
【0035】
本発明による方法は任意に、ドーの厚みを薄くするために発酵されたドーを平らにすること、及び所定期間冷凍庫中でドーを維持するためにこれらのドーの平らになったピースを冷凍することから成る。
【0036】
加えて、香味改良組成物及び/又は香味改良化合物(複数可)及び/又は塩を、ドーの調製に用いてもよい。香味改良化合物は、天然芳香化合物、化学的芳香化合物、酸、酸性化剤、又はそれらの2つ以上の混合物を含む群から選択され得る。香味改良組成物は好ましくは、サワードー、サワードー製品、ベーカリー中種、中種製品、又はそれらの2つ以上の混合物を含むか又はそれらから成る。
【0037】
好ましい実施形態において、本発明の完全発酵された冷凍ドーは、サワードー、サワードー製品、ベーカリー中種、中種製品、又はそれらの2つ以上の混合物を含むか又はそれらから成る香味改良組成物をさらに含有する。
【0038】
本発明のベーカリープロセスに用いられる香味改良化合物は、1つ又は複数の天然芳香化合物、1つ又は複数の化学的芳香化合物、1つ又は複数の酸及び/又は1つ又は複数の酸性化剤(酸及び/又はガスを発生する)、又はそれらの2つ以上の混合物を含み得るか又はそれらから成り得る。
【0039】
別の好ましい実施形態では、本発明の完全発酵された冷凍ドーは、天然芳香化合物、化学的芳香化合物、酸、酸性化剤、又はそれらの2つ以上の混合物を含む群から選択される1つ又は複数の香味改良化合物をさらに含む。
【0040】
加えて、改良剤組成物をドーの調製に用いてもよい。改良剤組成物は、
限定するものではないが、アミラーゼ、キシラナーゼ、リパーゼ、オキシダーゼ、リポキシゲナーゼ、プロテアーゼ、デヒドロゲナーゼ及びラッカーゼを含むか若しくはそれらから成る群から選択される1つ若しくは複数の酵素、並びに/又は、
限定するものではないが、アスコルビン酸、グルタチオン、システイン等の1つ若しくは複数の酸化剤若しくは還元剤、並びに/又は、
限定するものではないが、DATEM(登録商標)、SSL(登録商標)、CSL(登録商標)、GMS(登録商標)、ラムノリピド、レシチン、スクロエステル、胆汁酸塩等の1つ若しくは複数の乳化剤、及び/又は、
限定するものではないが、マーガリン、バター、油、ショートニング等の1つ若しくは複数の脂質材料、及び/又は、
限定するものではないが、パントテン酸、ビタミンE等の等の1つ若しくは複数のビタミン、及び/又は、
1つ若しくは複数のガム、及び/又は、
限定するものではないがエンバク繊維等の1つ若しくは複数の繊維源、
を含み得るか若しくはこれらから成り得る。
【0041】
改良剤組成物はまた、列挙される構成成分の2つ以上の混合物から成っていてもよい。
【0042】
好ましい実施形態では、本発明の完全発酵された冷凍ドーは、
‐ アミラーゼ、キシラナーゼ、リパーゼ、オキシダーゼ、リポキシゲナーゼ及びプロテアーゼから成る群から選択される1つ若しくは複数の酵素、並びに/又は、
‐ 1つ若しくは複数の酸化剤若しくは還元剤、及び/又は、
‐ 1つ若しくは複数の乳化剤、及び/又は、
‐ 1つ若しくは複数の脂質材料、及び/又は、
‐ 1つ若しくは複数のビタミン、及び/又は、
‐ 1つ若しくは複数のガム、及び/又は、
‐ 1つ若しくは複数の繊維源、又は、
‐ これらの2つ以上の混合物、
を含む改良剤組成物をさらに含有する。
【0043】
本発明による方法は、外観及び味覚の観点から最も高い品質を有するベークド製品を製造するためにドーの冷凍ピースを焼成することからも成る。
【0044】
本発明の好ましい実施形態によれば、冷凍ドーは、ドーを解凍した後直ちに焼成される。別の好ましい実施形態では、冷凍ドーを焼成前に部分的に解凍する。「部分的に解凍」とは、ドー製品の表面の温度が少なくとも1℃になるまで完全発酵された冷凍ドーを解凍することを意味する。
【0045】
別の実施形態において、本発明の方法は、完全発酵された冷凍ドーを解凍すると共に焼成する工程を含む。
【0046】
この解凍工程は、解凍中にドーが膨らむわけではないためプルーフィング工程とみなされることはない。
【0047】
本発明による方法は、焼成して任意の非層状ベーカリー製品を得ることができる完全発酵されたドーの調製に特に好適である。好ましい実施形態では、ドーを焼成すると、上面に1つ又は複数の切り込みを有するベーカリー製品が得られる。
【0048】
さらに別の実施形態において、本発明の方法は、焼成前に、完全発酵された冷凍ドーの上面に切り込みを入れる工程をさらに含む。
【0049】
ドーに切り込みを入れることによって、焼成後に得られるベーカリー製品に切れ目がもたらされる。とりわけ、ベーカリー製品の表面の切れ目の幅は、冷凍工程を設けることなく生ドーから開始してパンを焼成した場合に得られるものと同程度である。
【0050】
さらに、本発明は、本発明の方法によって得られる完全発酵された冷凍ドーに関する。
【0051】
また、本発明は、本発明の方法によって得られるパン製品に関する。本発明はさらに、本発明の方法によって得られる切り込みの入ったパン製品に関する。
【0052】
本発明の好ましい実施形態では、ベーカリー製品、好ましくはパン製品を製造する方法であって、
(a)少なくとも小麦粉、水及び乾燥膨張剤を混合することによってドーを調製する工程、
(b)ドーを捏ねると共に成形する工程、
(c)完全なプルーフィングに達するまでドーをプルーフする工程、
(d)任意に、ドーを平らにする工程、
(e)ドーを冷凍する工程、
(f)任意に、ドーを解凍する工程、並びに
(g)ドーを焼成することにより、上記パン製品を得る工程、
を含む、ベーカリー製品、好ましくはパン製品を製造する方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0053】
実施例1:部分的にプルーフされた冷凍ドー
ドーを、小麦粉、塩、膨張剤、改良剤及び水で作る。プロセスに用いられる種々の構成成分の割合を表1にまとめる。改良剤は、乳化剤、グルテン、アスコルビン酸及び酵素を含有する。第1の組成物(試験1)は膨張剤として生イーストを含有するのに対し、第2の組成物(試験2)は膨張剤としてIADYを含有する。
【0054】
【表1】

【0055】
プロセス方法を表2に記載する。
【0056】
【表2】

【0057】
表2に記載の方法に従い表1に記載の種々の成分を用いて種々のドーを調製する。所定の冷凍期間の後、ベーカリー製品を冷凍庫から取り出し、表3に記載のプロセスに従って処理する。
【0058】
【表3】

【0059】
比較試験の結果を表4及び表5にまとめる。
【0060】
【表4】

【0061】
「容積」は、生イーストで作られたパンを基準とした%単位の製品の容積を指す。各データは6つの測定値の平均である。
【0062】
【表5】

【0063】
「高さ」は、cm単位のパンの高さを指す。各データは6つの測定値の平均である。
【0064】
これらの結果は、インスタント活性ドライイーストに比べ、部分的にプルーフされたパンのドーを調製するのに生イーストが有利に用いられることを示す。部分的にプルーフされた冷凍ドーから得られるパンの容積及び高さは、生イーストをドーに用いたパンの方がより大きい。部分的にプルーフされた冷凍ドー中のIADYの使用は、最終的なパン製品の品質に対して悪い影響を有することが明らかである。
【0065】
実施例2:完全発酵された冷凍ドー
ドーを、小麦粉、塩、膨張剤及び水で作る。プロセスに用いられる種々の構成成分の割合を表6にまとめる。
【0066】
【表6】

【0067】
O−tenticは、インスタント活性ドライイースト、サワードー、酵素及びアスコルビン酸を含有する「サワードーをベースとする活性ベーカリー構成成分」である。ドー中の最終的なIADY濃度は小麦粉1kg当たり8gである。
【0068】
プロセス方法を表7に記載する。
【0069】
【表7】

【0070】
表2に記載の方法に従い種々の成分を用いて種々のドーを調製する。比較加工工程を表8にまとめる。
【0071】
【表8】

【0072】
平らにすることは、ドーをクロワッサンドー薄層加工機(laminatingmachine)に通すことによって行う。ドーの高さを約50%低減させる。
【0073】
所定の冷凍期間の後、ドーを冷凍庫から取り出し、表9に記載のプロセスに従って処理する。
【0074】
【表9】

【0075】
比較試験の結果を表10a及び表10bにまとめる。
【0076】
【表10a】

【0077】
「切れ目の開き(Cuts opening)」は、バゲットの上皮で測定されるmm単位の切れ目の幅を指す。各測定値は、バゲット上にある6つの切れ目の平均である。
【0078】
表10b(冷凍温度における貯蔵中のパンの容積の漸進的な変化を示す)
【表10b】

【0079】
%で表される容積全てに関して、100%は試験毎に、冷凍工程後直ちに冷凍ドーを焼成することによって得られるパンの容積に対応する。
【0080】
結果は、2つのプロセス間に有意な違いがないことを示す。したがって、平らにするプロセスは、焼成後の製品の最終結果に対して有意な影響を及ぼさないことが示される。また、パンの容積の漸進的な変化に対しても、平らにするプロセスの有意な影響はない。
【0081】
実施例3:完全発酵された冷凍ドー
バゲットドーを、小麦粉、塩、発酵媒体すなわち生イースト又はインスタント活性ドライイースト(IADY)及び/又はドライサワードー、及び改良剤、並びに水で作る。試験に用いられる種々の成分の割合を表11にまとめる。
【0082】
【表11】

【0083】
S500制御剤は、デキストロース、乳化剤、ガム、アスコルビン酸及び酵素を含有するパン改良剤である。Quick step crispyは、デキストロース、乳化剤、ガム、粉末モルト、グルテン、アスコルビン酸及び酵素を含有するパン改良剤である。
【0084】
成分及びドーを表12に記載するように加工する。
【0085】
【表12】

【0086】
表11のレシピ及びひいては表13に記載の付加的なプロセス工程を用いて種々の最終的なドーを得る。
【0087】
【表13】

【0088】
平らにすることは、ドーをクロワッサンドー薄層加工機に通すことによって行う。ドーの高さを約50%低減させる。所定の冷凍期間の後、ベーカリー製品を冷凍庫から取り出し、表14に記載のプロセスに従って処理する。
【0089】
【表14】

【0090】
比較試験の結果を表15a及び表15bにまとめる。
【0091】
【表15a】

【0092】
「切れ目の開き」は、バゲットの上皮で測定されるmm単位の切れ目の幅を指す。各データは、バゲット上にある6つの切れ目の平均である。
【0093】
表15b(冷凍温度における貯蔵中のパンの容積の漸進的な変化を示す)
【表15b】

【0094】
%で表される容積全てに関して、100%は試験毎に、7日間の貯蔵後の冷凍ドーを焼成することによって得られるパンの容積に対応する。
【0095】
結果は、生イーストの使用(試験F)がバゲットに大きな外皮の開きをもたらさなかったため、バゲットの品質が低いことを示す。より良好な結果は、IADYを用いた場合(試験E)及びO−tenticを用いた場合(試験A)で得られ、最良の結果は、改良剤と一緒にO−tenticを用いた場合(試験C)及びQuick Step Crispyと一緒にO−tenticを用いた場合(試験D)に得られる。本実施例はまた、平らにするプロセスが、焼成後の製品の最終結果に対して有意な影響を及ぼさないことを示す。180日間の貯蔵後の切れ目の開きは依然として、生イーストで作られるバゲットに得られる切れ目の開きよりも大きい。加えて、本結果は、貯蔵中のパンの容積の漸進的な変化が有意に変わらないことから、本発明のプロセスがパンの包括的なパラメータを変えるものではないことを示す。
【0096】
実施例4:完全発酵された冷凍ドー
バゲットドーを、小麦粉、塩、発酵媒体すなわち生イースト又はO−tenticに含まれるインスタント活性ドライイースト(IADY)又は活性ドライイースト(ADY)、及び改良剤、並びに水で作る。試験に用いられる種々の成分の割合を表16にまとめる。同量のイースト乾燥物が種々のレシピに添加されている。
【0097】
【表16】

【0098】
Quick step crispyは、デキストロース、乳化剤、ガム、粉末モルト、グルテン、アスコルビン酸及び酵素を含有するパン改良剤である。
【0099】
成分及びドーを表17に記載するように加工する。
【0100】
【表17】

【0101】
表16のレシピ及びひいては表18に記載の付加的なプロセス工程を用いて種々の最終的なドーを得る。
【0102】
【表18】

【0103】
平らにすることは、ドーをクロワッサンドー薄層加工機に通すことによって行う。ドーの高さを約50%低減させる。
【0104】
所定の冷凍期間の後、ベーカリー製品を冷凍庫から取り出し、表19に記載のプロセスに従って処理する。
【0105】
【表19】

【0106】
比較試験の結果を表20にまとめる。
【0107】
【表20】

【0108】
「容積(%)」は、同じレシピの0日目(即ち、冷凍工程後直ちに焼成されたもの)の容積と比較したバゲットの平均容積を指す。各データは3つの測定値の平均である。
【0109】
結果から、O−tentic又は生イーストで作られるバゲットの容積を比較すると、本発明のプロセスがバゲットの包括的なパラメータを変化させるものではないことが示される。ADYで作られるバゲットは、冷凍期間及び平らにするプロセス後に、O−tentic又は生イーストで作られるバゲットよりも小さい容積を示す。
【0110】
実施例5:完全発酵された冷凍ドー
チャバッタドーを、小麦粉、塩、発酵媒体すなわち生イースト又はO−tenticに含まれるインスタント活性ドライイースト(IADY)又は活性ドライイースト(ADY)、及び改良剤、並びに水で作る。試験に用いられる種々の成分の割合を表21にまとめる。同量のイースト乾燥物が種々のレシピに添加されている。
【0111】
【表21】

【0112】
Quick step crispyは、デキストロース、乳化剤、ガム、粉末モルト、グルテン、アスコルビン酸及び酵素を含有するパン改良剤である。
【0113】
成分及びドーを表22に記載するように加工する。
【0114】
【表22】

【0115】
表21のレシピ及びひいては表23に記載の付加的なプロセス工程を用いて種々の最終的なドーを得る。
【0116】
【表23】

【0117】
平らにすることは、ドーをクロワッサンドー薄層加工機に通すことによって行う。ドーの高さを約50%低減させる。
【0118】
所定の冷凍期間の後、ベーカリー製品を冷凍庫から取り出し、表24に記載のプロセスに従って処理する。
【0119】
【表24】

【0120】
比較試験の結果を表25にまとめる。
【0121】
【表25】

【0122】
「容積(%)」は、同じレシピの0日目(即ち、冷凍工程後直ちに焼成されたもの)の容積と比較したチャバッタの平均容積を指す。各データは3つの測定値の平均である。
【0123】
結果から、O−tentic又は生イーストで作られるチャバッタの容積を比較すると、本発明のプロセスがチャバッタの包括的なパラメータを変化させるものではないことが示される。ADYで作られるチャバッタは、冷凍期間後に、O−tentic又は生イーストで作られるチャバッタよりも小さい容積を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドーを製造する方法であって、前記ドーが完全発酵された冷凍ドーであり、
(a)少なくとも小麦粉、水、及びインスタント活性ドライイーストとの混合物によってドーを調製する工程、
(b)前記ドーを捏ねると共に成形する工程、
(c)完全なプルーフィングに達するまで前記ドーをプルーフする工程、並びに
(d)該ドーを冷凍する工程、
を含む、ドーを製造する方法。
【請求項2】
前記インスタント活性ドライイーストが、該小麦粉の重量に基づき0.5%〜2%の濃度で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記インスタント活性ドライイーストを、前処理を行うことなく該混合物に添加する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
プルーフィング後及び冷凍前に、平らにする工程を実施する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
完全発酵された冷凍ドーが、サワードー製品、中種製品、又はそれらの混合物を含む香味改良組成物をさらに含有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
完全発酵された冷凍ドーが、天然芳香化合物、化学的芳香化合物、酸、酸性化剤、又はこれらの2つ以上の混合物を含む群から選択される1つ又は複数の香味改良化合物をさらに含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
完全発酵された冷凍ドーが、
− アミラーゼ、キシラナーゼ、リパーゼ、オキシダーゼ、リポキシゲナーゼ及びプロテアーゼから成る群から選択される1つ若しくは複数の酵素、
− 1つ若しくは複数の酸化剤若しくは還元剤、
− 1つ若しくは複数の乳化剤、
− 1つ若しくは複数の脂質材料、
− 1つ若しくは複数のビタミン、
− 1つ若しくは複数のガム、並びに/又は、
− 1つ若しくは複数の繊維源、又は、
− これらの2つ以上の混合物、
を含む改良剤組成物をさらに含有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記インスタント活性ドライイーストが、サワードーをベースとする活性ベーカリー構成成分中に存在する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記完全発酵された冷凍ドーを解凍すると共に焼成する工程をさらに含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
焼成前に前記完全発酵された冷凍ドーを部分的に解凍する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
焼成前に前記完全発酵された冷凍ドーの上面に切り込みを入れる工程をさらに含む、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法によって得られる、完全発酵された冷凍ドー。
【請求項13】
請求項9又は10に記載の方法によって得られる、パン製品。
【請求項14】
請求項11に記載の方法によって得られる、切り込みの入ったパン製品。

【公表番号】特表2011−517956(P2011−517956A)
【公表日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−505490(P2011−505490)
【出願日】平成21年4月21日(2009.4.21)
【国際出願番号】PCT/EP2009/054743
【国際公開番号】WO2009/130219
【国際公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(505090469)
【Fターム(参考)】