説明

焼却施設

【課題】例えば都市ごみ等を焼却するごみ焼却施設において、換気ファン室の設置場所、ダクトの引き回し、ファンの大型化やルーフファン設置による設備費および騒音の問題が解決できる小型で、設置場所の自由度が大きく、設備費と騒音が軽減できる焼却施設を提供する。
【解決手段】ごみ焼却炉の炉室1内の上部に水噴霧による冷却手段2が設置され、冷却手段は、ヘッダ管4に複数個の水噴霧ノズル3が取り付けられたものからなり、ヘッダ管には、加圧水供給装置5から加圧水が供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、焼却施設、特に、高い冷却効率を有するので小型化でき、従って、設置場所の自由度が大きいと共に、設備費と騒音が軽減できる冷却手段を備えた焼却施設に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、都市ごみ等のごみ焼却施設は、図3に示すようなごみ焼却施設によって焼却されていた。すなわち、ごみピット24内に集められた都市ごみ(S)は、ごみクレーン25によってごみ投入ホッパー26から炉室27内に設置されたごみ焼却炉28内に投入され、焼却されていた。このとき生じた焼却灰は、排出コンベア29によって炉外に排出され、一方、排ガスは、集塵機30等を備えた排ガス処理設備31によって処理された後、煙突32から大気に放出されていた。
【0003】
このようなごみ焼却施設において、ごみ焼却炉28が設置されている炉室27は、ごみ焼却炉28の高さに応じて複数階を吹き抜けにして構成され、各階には、作業用、見学者用等の通路、および、制御室等の各種設備が構築されていた。
【0004】
炉室27内の温度は、ごみ焼却炉28からの熱によりかなりの高温になるので、良好な作業環境の維持、各種機器の保護、および、各階の空気の清浄化を図るために、炉室27の各階の温度は、冷却手段により常時、適温に維持されると共に、炉室27の各階の温まった空気は、常時、炉室27外に排気されていた。特に、炉室27の上部、すなわち、最上階の温度は、特に、高温(外気温によっても異なるがおおむね45℃)になる。
【0005】
従来、上記冷却手段は、図4に示すように(ごみ焼却炉は、図示せず)、外気を取り込む換気ファン33と、換気ファン33により取り込んだ外気を吹き出す吹出し口34を有するダクト35とを備えていた。炉室27内の温まった空気は、炉室27の屋上に設けられたルーフファン36により炉室27外に強制的に排気される。
【0006】
なお、図4に示す炉室27は、1階と2階を吹き抜けにした場合であるが、これ以上の階を吹き抜けにして炉室27を構築した場合も同様である。すなわち、炉室27の各階が空気による冷却手段により冷却されていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記冷却手段を備えたごみ焼却施設によれば、換気ファン33により所定量の外気がダクト35を介して炉室27内の各階に取り込まれ、一方、炉室27内の温まった空気は、ルーフファン36により炉室27外に排出される。これによって、炉室27の各階の温度は、常時、適温に維持されると共に、炉室27の各階の空気の清浄化が図れるが、以下のような問題があった。
【0008】
(1)外気を取り込むために、換気ファン33が設けられる換気ファン室37は、炉室27の外部に面する場所に設置する必要があるが、ごみ焼却施設をコンパクトに収めるために、換気ファン室37を適切な場所に設置することが困難な場合があった。
【0009】
(2)換気ファン33により取り込んだ外気は、約1m角のダクト35を介して必要な場所まで送られるが、各種機器により込み合っている炉室27において、ダクト35を引き回すことが困難な場合があった。この問題は、特に、スペースが狭い炉室27の最上階において問題となっていた。
【0010】
(3)炉室27の冷却を比熱の小さい空気により行うので、吸気量が大きいファンが必要となる。これによって、換気ファン33が大型化し、その分、設備費が嵩むと共に騒音も大きい。
【0011】
(4)各階に設置したダクト35から吹き出された空気を炉室27外に強制的に排気する必要があるので、多数のルーフファン36が必要となり、その分、設備費が嵩むと共に騒音も大きい。
【0012】
従って、この発明の目的は、高い冷却効率を有するので小型化でき、従って、設置場所の自由度が大きいと共に、設備費と騒音が軽減できる冷却手段を備えた焼却施設を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者等は、上述した問題を解決すべく鋭意研究を重ねた。この結果、冷却手段の冷却媒体として、空気の変わりに水のミストを用いれば、水の気化熱は、空気の比熱0.2kcal/kgに対して、540kcal/kgと極めて大きいので、高い冷却効率が得られ、この結果、冷却設備を小型化できて設置場所の自由度が大きくなると共に、設備費と騒音を軽減できるといった知見を得た。
【0014】
この発明は、上記知見に基づきなされたものであって、下記を特徴とするものである。
【0015】
請求項1記載の発明は、炉室内に水噴霧による冷却手段が設置されていることに特徴を有するものである。
【0016】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記冷却手段は、前記炉室内の上部に設置されていることに特徴を有するものである。
【0017】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の発明において、前記水噴霧のミストの粒径は、10μm以下であることに特徴を有するものである。
【0018】
請求項4記載の発明は、請求項1から3の何れか1つに記載の発明において、前記炉室は、ごみ焼却炉の炉室であることに特徴を有するものである。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、高い冷却効率を有するので小型化でき、従って、設置場所の自由度が大きいと共に、設備費と騒音が軽減できる冷却手段を備えた焼却施設を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、この発明の焼却施設の一実施態様を、ごみ焼却施設を例にあげて図面を参照しながら説明する。
【0021】
図1は、この発明のごみ焼却施設を示す概略断面図、図2は、水噴霧ノズルを示す断面図である。
【0022】
図1において、1は、図3に示すような、ごみ焼却炉(図示せず)が設置されるごみ焼却施設の炉室であり、複数階を吹き抜けにすることにより構成されている。2は、水噴霧による冷却手段であり、後述する水噴霧ノズル3が取り付けられたヘッダ管4からなっている。ヘッダ管4には、加圧水供給装置5から配管6を介して高圧水が供給される。水噴霧による冷却手段2は、ごみ焼却炉からの熱により特に高温になる炉室1の上部、すなわち、最上階に設けられている。
【0023】
水噴霧ノズル3から噴霧されるミストの粒径は、10μm以下が好ましい。このように、ミストの粒径を10μm以下にすると、ミストがごみ焼却炉あるいは周辺機器を濡らして、これらに損傷を与える恐れがない。
【0024】
水噴霧ノズル3は、図2に示すように、円筒形状のハウジング7を有している。ハウジング7内には、配管6と連通する加圧水受け空洞8と弁収納空洞9と駒用空洞10と先端にオリフィス11Aが形成された漏斗状空洞11とが上流側から下流側に向けて順次、形成されている。加圧水受け空洞8と弁収納空洞9との間の仕切り12には、連通孔14が形成され、弁収納空洞9と駒用空洞10との間の仕切り13には、連通孔15が形成されている。弁収納空洞9内には、押し上げばね16を介して連通孔14を閉塞する球状遮断弁17が収納され、駒用空洞10内には、周囲に溝18Aが螺旋状に形成された円柱状の駒18が駒用空洞10内を移動可能に設けられている。
【0025】
加圧水受け空洞8内に加圧水が注入され、水圧が所定の値になると、遮断弁17が押されて加圧水は、連通孔14から弁収納空洞9内に流入する。次いで、加圧水は、連通孔15から駒用空洞10内に流入する。これによって、駒18は、漏斗状空洞11方向に移動し、加圧水は、駒18の螺旋状溝18Aを旋回しながら通って漏斗状空洞11の内面に衝突する。この結果、加圧水は、ミストとなってオリフィス11Aから噴霧される。
【0026】
上記水噴霧ノズル3において、ミストの粒径は、加圧水の圧力によって決まる。従って、ミストがごみ焼却炉あるいは周辺機器を濡らして、これらに損傷を与える恐れがないミスト粒径となるように、適宜、水圧を決める。
【0027】
19は、空気による冷却手段であり、最上階より下の各階に設けられ、外気を取り込む換気ファン20と、換気ファン20により取り込んだ外気を、各階に吹き出す吹出し口21を有するダクト22とを備えている。
【0028】
23は、炉室1の屋上に設けられたルーフファンであり、炉室1の各階の温まった空気を炉室1外に強制的に排気する。
【0029】
なお、図1に示す炉室1は、1階と2階を吹き抜けにした場合であるが、これ以上の階を吹き抜けにして炉室1を構築した場合も同様である。すなわち、最上階が水噴霧による冷却手段2により冷却され、最上階より下の各階が空気による冷却手段19により冷却される。
【0030】
このように構成されている、この発明のごみ焼却施設によれば、加圧水供給装置5により配管6を介して送られた加圧水は、ヘッダ管4を通って各水噴霧ノズル3からミストとなって噴霧され、このときの水の気化熱によって最上階が冷却される。最上階より下の各階は、空気による冷却手段19により、図4におけると同様に冷却される。
【0031】
水噴霧による冷却手段2は、空気による冷却手段19に比べて高い冷却効率が得られ、この結果、冷却設備を小型化できて設置場所の自由度が大きくなる。すなわち、空気による冷却手段19のように約1m角の大口径ダクトを用いる必要がなく、50φ〜25φ程度の小口径の配管で済むので、ヘッダ管4および配管6の引き回しが自在に行える。この結果、任意の場所に水噴霧ノズル3を配することができるので、スペースが狭い炉室1の最上階においても容易に設置することができる。なお、水噴霧による冷却手段2は、必要に応じて最上階の下の階に設置しても、または、炉近傍の高温になる作業領域や炉室以外の高温になる諸室に設置しても良い。
【0032】
水噴霧による冷却手段2は、空気による冷却手段19のように、換気ファンが不要であり、これに代わる加圧水供給装置5も小型で、しかも、換気ファンのように炉室1の外部に面する場所に設置する必要がないので、機器配置の自由度が増す。しかも、換気ファンに比べて騒音が小さい。
【0033】
また、水噴霧による冷却手段2を用いた分、排気風量が減少するので、ルーフファン23の台数が減少する。この結果、設備費が低減すると共に騒音も減少する。
【0034】
以上は、この発明を都市ごみ等のごみ焼却施設に適用した場合であるが、これ以外の焼却施設に適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】この発明のごみ焼却施設を示す概略断面図である。
【図2】水噴霧ノズルを示す断面図である。
【図3】ごみ焼却施設を示す概略図である。
【図4】従来のごみ焼却施設を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1:炉室
2:水噴霧による冷却手段
3:水噴霧ノズル
4:ヘッダ管
5:加圧水供給装置
6:配管
7:ハウジング
8:加圧水受け空洞
9:弁収納空洞
10:駒収納空洞
11:漏斗状空洞
11A:オリフィス
12:仕切り
13:仕切り
14:連通孔
15:連通孔
16:ばね
17:遮断弁
18:駒
18A:溝
19:空気による冷却手段
20:換気ファン
21:吹出し口
22:ダクト
23:ルーフファン
24:ごみピット
25:ごみクレーン
26:ごみ投入ホッパー
27:炉室
28:ごみ焼却炉
29:排出コンベア
30:集塵機
31:排ガス処理設備
32:煙突
33:換気ファン
34:吹出し口
35:ダクト
36:ルーフファン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉室内に水噴霧による冷却手段が設置されていることを特徴とする焼却施設。
【請求項2】
前記冷却手段は、前記炉室内の上部に設置されていることを特徴とする、請求項1記載の焼却施設。
【請求項3】
前記水噴霧のミストの粒径は、10μm以下であることを特徴とする、請求項1または2記載の焼却施設。
【請求項4】
前記炉室は、ごみ焼却炉の炉室であることを特徴とする、請求項1から3の何れか1つに記載の焼却施設。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−209055(P2008−209055A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−45799(P2007−45799)
【出願日】平成19年2月26日(2007.2.26)
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)
【Fターム(参考)】