説明

焼却灰の処理方法及びシステム

【課題】焼却灰に含まれる塩素を水洗処理により確実に一定濃度以下まで低減することができる焼却灰の処理方法及びシステムを提供する。
【解決手段】焼却灰30を水洗処理して該焼却灰に含まれる塩素分を除去する水洗設備100を備えた焼却灰の処理システムにおいて、水洗設備100の前段側に、焼却灰の未燃分残存率を測定する未燃分測定手段1と、該未燃分残存率に基づいて焼却灰を分別する分別手段2とを備え、分別手段2にて分別された焼却灰のうち未燃分残存率が所定の閾値より低い焼却灰32のみを水洗設備100に送給するようにし、好適には、未燃分残存率が所定の閾値以上の焼却灰31を、加熱炉に投入するか若しくは焼却炉に返送して再加熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼却灰を水洗処理して塩素分を除去する焼却灰の処理方法及びシステムに関し、特に、水洗処理後における焼却灰の塩素濃度を常に一定濃度以下まで低減することができ、焼却灰を資源化に適した処理灰とすることが可能な焼却灰の処理方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、都市ごみや下水汚泥等の一般廃棄物又は各種工場から排出される産業廃棄物は、減容化及び無害化のために焼却により処理されている。一般に、焼却炉から排出される焼却灰の処理方法としては、埋め立て処理、溶融スラグ化、建築資材への再資源化などが挙げられる。特に近年では、これらの灰をセメント原料、人工骨材、植栽用土、路床材、路盤材、焼成タイルなどの製品に加工して有効利用することが求められている。しかし、焼却灰を再資源化するに際して、焼却灰には塩素分が含まれているため、灰の用途に応じて、塩素濃度を基準値以下まで低減する必要がある。
【0003】
一般的な焼却灰の処理方法としては、金属片等の異物を除去した後、焼却灰を水洗することにより塩素分を低減する方法が用いられている。しかしながら、大部分の塩素分は水洗で除去可能であるが、高品質の再資源化原料として付加価値を与えるためには、単に水洗するのみでは塩素低減は不十分であった。そこで、水洗にて洗浄水のpHを酸性若しくは6〜10に調整したり、粉砕したり、或いは洗浄回数を複数回に増加することにより対応している。
【0004】
例えば、特許文献1(特許第3368372号公報)には、焼却灰を粉砕した後、複数回洗浄を行うようにした焼却灰のセメント原料化方法が開示されている。このとき、洗浄時の液pHが6〜10、好適にはpH8〜10となるようにし、これにより焼却灰の重金属の溶出を抑制しつつ塩素分を溶解除去するようにしている。
また、特許文献2(特開2005−288328号公報)には、複数設置した洗浄槽で焼却灰を洗浄し、さらに洗浄槽に二酸化炭素ガスを導入して洗浄するとともに、洗浄槽が具備する循環配管路に設けられた湿式破砕機により焼却灰を破砕するようにした構成が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特許第3368372号公報
【特許文献2】特開2005−288328号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したように、焼却灰中の塩素分を除去する際には水洗処理が一般に多く用いられており、焼却灰に含まれる大部分の塩素分は水洗で除去可能であるが、水洗処理のみでは不十分であったため、特許文献1、2に記載されるように、洗浄槽にてpH調整をしたり、粉砕したり、洗浄回数を複数回に増加するなどして対応していた。
しかしながら、焼却灰に含まれる塩素分には水に溶出し難い塩素分が存在し、この溶出し難い塩素分を多く含む場合には、水洗処理のみでは十分な塩素除去効果が得られなかった。特に、焼却灰をセメント原料等として再資源化する場合には、厳しい塩素濃度の基準があるため、確実に焼却灰中の塩素分を一定濃度以下まで除去することが求められる。
【0007】
ところが、水に溶出し難い塩素分は、単純に焼却灰に含まれる塩素濃度から推定することは難しく、従来は焼却灰中の難溶性塩素分が定量できなかったため、水洗処理後の塩素濃度を常に一定値以下まで確実に低減することは困難であった。
一方、水に溶出し難い塩素分の存在を考慮して、全ての焼却灰に対して、例えば加熱等の水洗処理以外の方法、或いは水洗処理と他の処理方法を組み合わせた方法を採用すると、処理コストが嵩む上に装置が大型化するという問題があった。そこで、可能な限り水洗処理のみで塩素を一定濃度以下まで除去することが望まれている。
従って、本発明は上記従来技術の問題点に鑑み、水洗処理により焼却灰に含まれる塩素分を確実に一定濃度以下まで低減することができる焼却灰の処理方法及びシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明者らは前述の目的を達成するため、鋭意研究を行なった結果、図6に示すように、焼却灰中の未燃分残存率と、水に溶出し難い塩素分の含有量に一定の相関関係があることを見出した。この相関関係は図6に示されるようになった。図6は、焼却灰の未燃分残存率を示す熱灼減量(%)と、水洗処理後の焼却灰の塩素濃度(mg/kg)の関係を示すグラフである。同グラフに示されるように、熱灼減量が高いと処理後の塩素濃度が高く、熱灼減量が低いと水洗処理後の塩素濃度が低くなることがわかる。即ち、焼却灰の未燃分残存率が高いと、水に溶出し難い塩素分が多く含まれ、水洗処理後も塩素濃度が高く、十分な塩素除去率が得られないということになる。図6より、熱灼減量が5重量%以下であれば、塩素濃度を2000〜3000mg/kg以下にできると推定される。より確実な範囲でみれば、熱灼減量が2重量%以下と推定される。
【0009】
本発明はかかる知見に基づき、焼却灰を水洗処理し、該焼却灰に含まれる塩素分を除去する焼却灰の処理方法において、
前記焼却灰を水洗処理する前に、前記焼却灰の未燃分残存率を測定し、該測定された未燃分残存率に基づいて焼却灰を分別し、該焼却灰のうち未燃分残存率が所定の閾値より低い焼却灰のみを水洗処理することを特徴とする。
また、前記未燃分残存率の所定の閾値は、予め求めておいた焼却灰の未燃分残存率と水洗処理後の焼却灰の塩素濃度との関係に基づいて、前記水洗処理により所望の塩素濃度が得られる未燃分残存率の値として設定されることが好ましい。
【0010】
本発明によれば、焼却灰中の未燃分残存率が高いと、塩素が水に溶出し難くなる傾向があることに基づき、焼却灰を水洗処理する前に、焼却灰の未燃分残存率を測定し、未燃分残存率が所定の閾値より低い焼却灰のみを水洗処理することにより、水洗による塩素低減効果を安定して得られ、水洗処理灰の塩素濃度を常に低く抑えることが可能となり、延いては、焼却灰をセメント原料等の再資源化原料として好適に用いることが可能となる。
また、未燃分残存率が高く、水に溶出し難い塩素分を多く含む焼却灰については、他の灰処理を施し、未燃分残存率が低く、水洗処理のみにより確実に塩素低減が可能な焼却灰のみを水洗処理するようにしているため、効率的な処理が可能となり、且つ装置の小型化が可能となる。
【0011】
また、前記分別された焼却灰のうち前記未燃分残存率が前記所定の閾値以上の焼却灰を、加熱炉に投入するか若しくは焼却炉に返送して再加熱することを特徴とする。
これは、未燃分残存率が高い焼却灰を加熱炉若しくは焼却炉で加熱処理し、未燃分残存率を低減することにより、搬入される焼却灰の全てにおいて、適した処理を施すことが可能となり、また装置の小型化が可能となる。このとき、加熱処理して塩素濃度が低減した焼却灰は、未燃分残存率が低い焼却灰とともに水洗処理することが好ましく、これにより水洗処理後の焼却灰を、確実に塩素濃度が低いものとすることができる。
【0012】
さらに、前記未燃分残存率の所定の閾値が、前記焼却灰に対して5重量%であることを特徴とする。
図6に示すように、未燃分残存率が5重量%以下の焼却灰は、水洗処理により塩素濃度を2000〜3000mg/kg以下まで低減することが可能である。これにより一般的に再資源化材料として用いられる焼却灰の塩素濃度の基準値を満たすことが可能となり、再資源化材料に適した焼却灰を安定的に提供することが可能となる。
【0013】
また、焼却灰を水洗処理して該焼却灰に含まれる塩素分を除去する水洗設備を備えた焼却灰の処理システムにおいて、
前記水洗設備の前段側に、前記焼却灰の未燃分残存率を測定する未燃分測定手段と、該未燃分測定手段にて測定された未燃分残存率に基づいて焼却灰を分別する分別手段とを備え、前記分別手段にて分別された焼却灰のうち未燃分残存率が所定の閾値より低い焼却灰のみを前記水洗設備に送給することを特徴とする。
【0014】
また、前記分別手段にて分別された焼却灰のうち前記未燃分残存率が前記所定の閾値以上の焼却灰が供給され、該焼却灰を再加熱する加熱炉を備えたことを特徴とする。
さらに、前記分別手段にて分別された焼却灰のうち前記未燃分残存率が前記所定の閾値以上の焼却灰を焼却炉に返送する返送ラインを備えたことを特徴とする。
【0015】
また、前記未燃分残存率の所定の閾値が、前記焼却灰に対して5重量%であることを特徴とする。
さらに、前記未燃分測定手段が、前記焼却灰の熱灼減量若しくは前記焼却灰を加熱して得られるCO量を測定する手段であることを特徴とする。
さらにまた、前記未燃分測定手段が、前記焼却灰の重量と、該焼却灰を比重差分離して得られた浮遊物の重量とを測定し、これらの重量に基づいて焼却灰中の浮遊物含有率を求める手段であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
以上記載のごとく本発明によれば、焼却灰中の未燃分残存率が高いと塩素分が水に溶出し難くなる傾向があることに基づき、焼却灰を水洗処理する前に、焼却灰の未燃分残存率を測定し、未燃分残存率が所定の閾値より低い焼却灰のみを水洗処理することにより、水洗による塩素低減効果を安定して得られ、水洗処理灰の塩素濃度を常に低く抑えることが可能となり、延いては、焼却灰をセメント原料等の再資源化原料として好適に用いることが可能となる。
また、未燃分残存率が高く、水に溶出し難い塩素分を多く含む焼却灰については、他の灰処理を施し、未燃分残存率が低く、水洗処理のみにより確実に塩素低減が可能な焼却灰のみを水洗設備に導くようにしているため、効率的な処理が可能となり、且つ装置の小型化が可能となる。
【0017】
さらに、未燃分残存率が高い焼却灰を加熱炉若しくは焼却炉で加熱処理し、未燃分残存率を低減することにより、搬入される焼却灰の全てにおいて、適した処理を施すことが可能となり、また装置の小型化が可能となる。
さらにまた、未燃分残存率が5重量%以下の焼却灰は、水洗処理により塩素濃度を2000〜3000mg/kg以下まで低減することが可能であるため、焼却灰を分別する基準となる所定の閾値を未燃分残存率5%とすることにより、一般的に再資源化材料として用いられる焼却灰の塩素濃度を満たすことが可能となり、再資源化材料に適した焼却灰を安定的に提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
図1〜図5は本発明の実施例1〜実施例3に係るシステムの全体構成図を夫々示し、図6は焼却灰の熱灼減量と水洗処理灰の塩素濃度の関係を示すグラフである。
【0019】
本実施形態は、焼却炉から排出された焼却灰の未燃分残存率を測定し、該測定された未燃分残存率に基づいて焼却灰を分別し、該未燃分残存率が、予め設定された所定の閾値より低い焼却灰のみを水洗処理する構成となっている。これは、焼却灰中の未燃分残存率が高いと塩素分が水に溶出し難くなる傾向があるため、焼却灰を水洗処理する前に焼却灰の未燃分残存率を測定しておき、測定された未燃分残存率が所定の閾値よりも低い焼却灰のみを水洗処理することにより、水洗による塩素低減効果を安定して得られ、水洗処理後の処理灰(水洗処理灰と称す)の塩素濃度を常に低く抑えることを可能とした。
【0020】
未燃分残存率の測定は、焼却灰の少なくとも一部を抜き取って測定してもよいし、全量を測定してもよい。未燃物残存率は、焼却灰の熱灼減量、焼却灰を加熱した時のCO量、或いは焼却灰を比重差分離した時の浮遊物含有率等を指標として用いることができる。
焼却灰の分別基準となる所定の閾値は、予め焼却灰の未燃分残存率と水洗処理灰の塩素濃度との相関関係を実験等により取得しておき、この相関関係に基づいて、水洗処理により焼却灰を所望の塩素濃度まで低減可能な未燃分残存率を設定しておくとよい。例えば、図6に示すように、焼却灰の未燃分残存率(熱灼減量)と水洗処理灰の塩素濃度との相関関係を実験により測定しておき、水洗処理後に焼却灰の塩素濃度を2000〜3000mg/kg以下まで低減したい場合には、熱灼減量5%を閾値とする。そして、熱灼減量が5%未満の焼却灰のみを水洗処理する。
【0021】
このように本実施形態によれば、焼却灰中の未燃分残存率が高いと、塩素分が水に溶出し難くなる傾向があることに基づき、焼却灰を水洗処理する前に、焼却灰の未燃分残存率を測定し、未燃分残存率が所定の閾値より低い焼却灰のみを水洗処理することにより、水洗による塩素低減効果を安定して得られ、水洗処理灰の塩素濃度を常に低く抑えることが可能となり、延いては、焼却灰をセメント原料等の再資源化原料として好適に用いることが可能となる。
また、未燃分残存率が大きく、水に溶出し難い塩素分を多く含む焼却灰については、他の灰処理を施し、未燃分残存率が小さく、水洗処理のみにより確実に塩素低減が可能な焼却灰のみを水洗設備に導くようにしているため、効率的な処理が可能となり、且つ装置の小型化が可能となる。
【実施例1】
【0022】
図1を参照して、本実施形態の具体的構成の一例として、実施例1に係る焼却灰処理システムにつき以下に説明する。
本実施例1のシステムは、焼却炉から排出された焼却灰30の未燃分残存率を測定する未燃分測定手段1と、該測定された未燃分残存率に基づいて焼却灰30を分別する分別手段2と、未燃分残存率が予め設定された所定の閾値よりも低い焼却灰32が投入される比重差分離装置4と、該比重差分離装置4にて金属類を除去された焼却灰が供給される水洗設備100と、を備える。
【0023】
前記未燃分測定手段1は、焼却灰30の少なくとも一部を抜き取り、抜き取った焼却灰中に含まれる未燃分残存率を測定する。未燃分残存率は、例えば、焼却灰30を600℃以上で所定時間(好ましくは15分以上)加熱した場合の熱灼減量で表す方法、若しくは1000℃以上(好ましくは1500℃)で所定時間(好ましくは1分以上)加熱し、炭素分をCOに変換したときのCO量を計測して、加熱した灰の重量あたりのCO量で表す方法などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
前記分別手段2は、未燃分測定手段にて測定された焼却灰の未燃分残存率に基づいて、該未燃分残存率が所定の閾値以上の焼却灰31と、該所定の閾値未満の焼却灰32とに分別する。所定の閾値は、予め未燃分残存率と難溶性塩素分との相関関係を実験等により取得しておき、この相関関係に基づいて、水洗処理により焼却灰を所望の塩素濃度まで低減可能な未燃分残存率として設定される。好適には、未燃分残存率(熱灼減量等)の閾値は5%とし、未燃分残存率が5%以上の焼却灰31と、未燃分残存率が5%未満の焼却灰32とに分別し、未燃分残存率が5%未満の焼却灰32のみを比重差分離装置4に送給する。
前記比重差分離装置4は、水等の分離液を介して、比重の大きい金属片や大径焼却灰等の異物(金属類と称す)と、比重の低い焼却灰とを分離する周知の装置である。
【0025】
前記水洗設備100は、少なくとも洗浄水により焼却灰を水洗する洗浄槽を備えた設備である。図1には、一例として前段側水洗処理装置と後段側水洗処理装置が直列に配設された2段構成の水洗設備100を示す。前段側水洗処理装置において、洗浄槽5には、水33と、硫酸タンク20から供給される硫酸とからなる洗浄水が貯留されており、該洗浄槽5内に、比重差分離装置4にて異物が除去された焼却灰が供給される。洗浄槽5は、焼却灰を撹拌する撹拌手段を備えていることが好ましい。尚、本実施例ではpH調整に用いる酸として硫酸を例に挙げて示したが、これに限定されるものではなく、他の酸であってもよい。
洗浄槽5には、焼却灰の水洗時に洗浄水のpH値を測定するpH計12が設置されており、該洗浄水のpHを逐次監視している。このpH調整は、バルブ11を制御して硫酸タンク20からの硫酸供給量を調整することにより行われる。
後段側水洗処理装置は、前記前段側水洗処理装置と同様の構成を備える。
【0026】
また、前記水洗設備100は、排水発生量を低減するために以下の構成を備えることが好ましい。前段側水洗処理装置の固液分離装置6にて分離された排水36を系外へ排出する排出ラインと、該排水36を洗浄槽5に返送する循環ラインとを備え、排出ライン上にはバルブ13が設置されている。また、排水36の電導度を測定する電導度計14を備えており、該電導度計14の測定値に基づいてバルブ13を制御し、洗浄槽5への循環量を制御するようになっている。即ち、水洗初期は排水36を循環して洗浄に用い、排水36中の不純物濃度、好適には塩素濃度が所定濃度以上となったらバルブ13を開放して系外へ排水34を排出するようにしている。排水34を系外に排出したときは、水33のバルブ10を制御して、新たに水33を補給する。
【0027】
同様に、後段側水洗処理装置においても、固液分離装置8にて分離された排水39を系外へ排出する排出ラインと、該排水39を洗浄槽7に返送する循環ラインとを備え、排出ライン上にはバルブ18が設置されている。また、排水39の電導度を測定する電導度計19を備えており、該電導度計19の測定値に基づいてバルブ18を制御し、洗浄槽7への循環量を制御するようになっている。即ち、水洗初期は排水39を循環して洗浄に用い、排水39中の不純物濃度が高くなったら系外へ排水37を排出する。排水37を系外に排出したときは、水40のバルブ15を制御して、新たに水40を補給する。
尚、水洗設備100の構成は、図1に示した構成に限定されるものではない。
【0028】
次に、上記した構成を備えた焼却灰の処理システムにおける処理フローを説明する。
焼却炉から搬入された焼却灰30は一旦貯留槽(不図示)に貯留され、貯留された焼却灰から少なくとも一部を抜き取り、未燃分測定手段1にて、抜き取った焼却灰の未燃分残存率を測定する。そして、分別手段2にて、測定された未燃分残存率が、予め設定した所定の閾値以上の焼却灰31と、所定の閾値未満の焼却灰32とに分別する。ここでは一例として、未燃分残存率の閾値を5%とする。未燃分残存率が5%以上の焼却灰31は、従来の灰処理装置3に送給し、処理する。未燃分残存率が5%未満の焼却灰32は、比重差分離装置4に供給し、該比重差分離装置4で金属類を分離除去した後、水洗設備100に送給する。水洗設備100では、前段側の洗浄槽5で、焼却灰を粗洗浄することにより塩素濃度を大幅に低下させた後、固液分離装置6にて焼却灰35と排水36とに分離し、焼却灰35は後段側の洗浄槽7で仕上げ洗浄することにより塩素濃度を低濃度となるまで洗浄した後、固液分離装置8にて処理灰38と排水39とに分離する。
【0029】
本実施例1によれば、焼却灰30を水洗設備100に導入する前に、焼却灰30の未燃分残存率を測定して分別し、未燃分残存率が所定の閾値未満の焼却灰32のみを水洗処理することにより、水洗による塩素低減効果を安定して得られ、水洗処理灰の塩素濃度を常に低く抑えることが可能となり、延いては、焼却灰をセメント原料等の再資源化原料として好適に用いることが可能となる。
また、未燃分残存率が高く、水に溶出し難い塩素分を多く含む焼却灰31については、従来の灰処理装置3に送給し、未燃分残存率が低く、水洗処理のみにより確実に塩素低減が可能な焼却灰32のみを水洗設備100に導くようにしているため、効率的な処理が可能となり、且つ装置の小型化が可能となる。
【実施例2】
【0030】
図2〜図4に、実施例2に係る焼却灰処理システムにつき以下に説明する。尚、以下の実施例2、実施例3において、上記した実施例1と同様の構成については、その詳細な説明を省略する。
本実施例2は、未燃分残存率に基づいて分別した焼却灰のうち、未燃分残存率が高い方の焼却灰31を加熱し、焼却灰中の未燃分を低減した後、水洗処理するようにしている。
【0031】
(実施例2−1)
図2を参照して、実施例2−1に係る焼却灰処理システムにつき説明する。
本実施例2−1のシステムは、焼却灰30に含まれる未燃分を測定した後、該焼却灰30に含まれる金属類等の夾雑物を取り除き、その後焼却灰を分別するようにしている。
焼却炉から排出された焼却灰30は、その少なくとも一部を引き抜き、未燃分測定手段1aにて焼却灰に含まれる未燃分残存率を測定する。そして焼却灰30は比重差分離装置4に投入され、金属類等の夾雑物を除去した後、一旦貯留槽21に貯留される。この貯留槽21は、後段の水洗設備100における処理量を調整する機能を有する。
【0032】
貯留槽21から供給される焼却灰は、分別手段2aにて、前記未燃分測定手段1aで得られた未燃分残存率に基づいて分別される。未燃分残存率が予め設定された所定の閾値未満の焼却灰32aは、水洗設備100に供給され、水洗処理される。
一方、未燃分残存率が所定の閾値以上の焼却灰31aは、貯留槽22に貯留された後、加熱炉23に供給される。貯留槽22は、加熱炉23における処理量を調整する機能を有する。加熱炉23では、未燃分残存率が高い焼却灰32aを所定温度で加熱処理する。加熱温度は、600℃以上、15分以上であることが好ましい。加熱処理した焼却灰32aは、未燃分が低減されて排出される。加熱炉23の後段には貯留槽24が設けられ、加熱処理後の焼却灰が貯留される。
【0033】
貯留槽24内の焼却灰は、少なくとも一部が引き抜かれ、未燃分測定手段1bにて焼却灰に含まれる未燃分残存率を測定する。そして、分別手段2bにて、前記未燃分測定手段1bにより得られた未燃分残存率に基づいて焼却灰を分別する。未燃分残存率が予め設定された所定の閾値未満の焼却灰32bは、水洗設備100に供給され、水洗処理される。未燃分残存率が所定の閾値以上の焼却灰31bは、貯留槽22に返送され、再度加熱炉23に供給される。尚、焼却灰を分別するための所定の閾値は、分別手段2a、2bで同一とする。好適には、未燃分残存率における所定の閾値は5%とする。
【0034】
本実施例2−1によれば、実施例1と同一の効果を有するとともに、未燃分残存率が高い焼却灰31aを加熱炉で加熱処理し、未燃分残存率が所定の閾値以下まで低減した焼却灰を水洗設備100で水洗処理するようにしているため、搬入される焼却灰30の全てにおいて、水洗処理による塩素低減効果が安定して得られ、水洗処理灰の塩素濃度を常に低く抑えることが可能となる。また、加熱炉23では、水に溶出し難い塩素分を多く含む焼却灰31aのみを加熱処理するようにしているため、加熱炉23を小型化できる。さらに、加熱炉23から排出された焼却灰の未燃分を再度測定し、未燃分残存率が高い焼却灰は返送して再度加熱処理するようにしているため、水洗設備100に未燃分残存率が高い焼却灰が供給されることを防ぎ、水洗設備100から出てくる水洗処理灰は、確実に塩素濃度が低いものとすることができる。さらに、本実施例2−1では、比重差分離装置4の上流側で焼却灰の未燃分を測定するようにしており、焼却炉出口から比重差分離装置4までの何れの場所で測定を行ってもよい。例えば焼却炉と水洗設備が離れた場所に立地する場合、焼却炉側設備で未燃分を測定することもできる。
【0035】
(実施例2−2)
図3を参照して、実施例2−2に係る焼却灰処理システムにつき説明する。
本実施例2−2のシステムは、焼却灰30に含まれる金属類等の夾雑物を取り除いた後に、焼却灰30の未燃分残存率を測定するようにしている。即ち、実施例2−1と異なる構成は、比重差分離装置4で焼却灰から金属類等の夾雑物を除去した後、貯留槽21に焼却灰を貯留し、該貯留槽21から焼却灰の少なくとも一部を引き抜き、未燃分測定手段1aで未燃分を測定し、後段の分別手段2aにて未燃分残存率に基づいて焼却灰を分別している。このように、金属類等の夾雑物を除去した後に未燃分残存率を測定することにより、より正確な焼却灰の未燃分残存率を測定することが可能となる。
【0036】
図4に、実施例2を応用させたシステムの全体構成図を示す。同図は、実施例2−2を応用させた図を示しているが、本構成は実施例2−1にも適用可能である。また、後述する実施例3にも適用可能である。
本構成は、焼却炉25と水洗設備100が同一敷地内に立地する場合に適用される。これは、分別手段2aで分別された未燃分残存率が所定の閾値以上の焼却灰31aを一旦貯留槽22に貯留した後、適宜焼却炉25に返送する構成となっている。焼却炉25で再加熱された焼却灰は未燃分が低減され、廃棄物を焼却処理して発生する焼却灰とともに比重差分離装置4に送給される。
本構成によれば、未燃分残存率が高い焼却灰を加熱するための加熱炉を新たに設置する必要がなく、装置コスト、設備面積を削減することが可能となる。
【実施例3】
【0037】
図5を参照して、実施例3に係る焼却灰処理システムにつき説明する。
本実施例3は、焼却灰の未燃分残存率と、比重差分離装置で分離した焼却灰中の浮遊物の含有率とが対応していることから、焼却灰中の浮遊物含有率に基づいて焼却灰を分別するようにしている。
本実施例3では、焼却灰30の重量を重量測定手段25で予め測定しておくとともに、比重差分離装置4で分離された浮遊物41の重量と、金属類の重量を重量測定手段25で測定する。そして、重量測定結果より焼却灰30の浮遊物含有率を算出して求めておく。浮遊物含有率は、比重差分離装置4に供給前の焼却灰30の重量から金属類の重量を差し引き、金属類を除く焼却灰の重量に対する浮遊物41の重量の割合を算出して得られる。
【0038】
この浮遊物含有率に基づいて分別手段2aで焼却灰を分別する。浮遊物含有率が低い焼却灰43は水洗設備100に送給して水洗処理し、浮遊物含有率が高い焼却灰44は、貯留槽22に送給し、加熱炉23で加熱処理する。浮遊物含有率が低い焼却灰43は未燃分残存率も低いため、水洗処理のみで十分に塩素除去が可能であり、浮遊物含有率が高い焼却灰44は未燃分残存率が高いため、加熱炉23で再加熱し、未燃分を低減する。尚、浮遊物含有率で焼却灰を分別する際に、予め所定の閾値を設定しておく。このとき、焼却灰の未燃分残存率と浮遊物含有率は略同一と見なせることから、実施例1、2で設定した未燃分残存率の閾値と同様に設定するとよい。好適には、浮遊物含有率の閾値を5%とし、浮遊物含有率が5%未満の焼却灰43は水洗設備100に送給し、浮遊物含有率が5%以上の焼却灰44は加熱炉23に送給する。
【0039】
本実施例3によれば、比重差分離装置4にて分離された浮遊物41の焼却灰30(金属類を除く)に対する割合(浮遊物含有率)を焼却灰の未燃分残存率とみなし、該浮遊物含有率に基づいて焼却灰を分別するようにしているため、焼却灰の未燃分を直接測定することなく、分別基準となる指標を簡単に導きだせ、処理時間の短縮化が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、焼却灰中の未燃分残存率が高いと塩素分が水に溶出し難くなる傾向があることに基づき、未燃分残存率が所定の閾値より低い焼却灰のみを水洗処理することにより、水洗による塩素低減効果を安定して得られ、水洗処理灰の塩素濃度を常に低く抑えることが可能であるため、焼却灰からセメント原料等の再資源化原料を製造する設備にて好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施例1に係るシステムの全体構成図である。
【図2】本発明の実施例2−1に係るシステムの全体構成図である。
【図3】本発明の実施例2−2に係るシステムの全体構成図である。
【図4】本発明の実施例2を応用させたシステムの全体構成図である。
【図5】本発明の実施例3に係るシステムの全体構成図である。
【図6】焼却灰の熱灼減量と水洗処理灰の塩素濃度の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0042】
1、1a、1b 未燃分測定手段
2、2a、2b 分別手段
3 従来の灰処理装置
4 比重差分離装置
5、7 洗浄槽
6、8 固液分離装置
21、22、24 貯留槽
23 加熱炉
25 焼却炉
30 焼却灰
31 焼却灰(未燃分5%以上)
32 焼却灰(未燃分5%未満)
100 水洗設備

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼却灰を水洗処理し、該焼却灰に含まれる塩素分を除去する焼却灰の処理方法において、
前記焼却灰を水洗処理する前に、前記焼却灰の未燃分残存率を測定し、該測定された未燃分残存率に基づいて焼却灰を分別し、該焼却灰のうち未燃分残存率が所定の閾値より低い焼却灰のみを水洗処理することを特徴とする焼却灰の処理方法。
【請求項2】
前記未燃分残存率の所定の閾値は、予め求めておいた焼却灰の未燃分残存率と水洗処理後の焼却灰の塩素濃度との関係に基づいて、前記水洗処理により所望の塩素濃度が得られる未燃分残存率の値として設定されることを特徴とする請求項1記載の焼却灰の処理方法。
【請求項3】
前記分別された焼却灰のうち前記未燃分残存率が前記所定の閾値以上の焼却灰を、加熱炉に投入するか若しくは焼却炉に返送して再加熱することを特徴とする請求項1若しくは2記載の焼却灰の処理方法。
【請求項4】
前記未燃分残存率の所定の閾値が、前記焼却灰に対して5重量%であることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の焼却灰の処理方法。
【請求項5】
焼却灰を水洗処理して該焼却灰に含まれる塩素分を除去する水洗設備を備えた焼却灰の処理システムにおいて、
前記水洗設備の前段側に、前記焼却灰の未燃分残存率を測定する未燃分測定手段と、該未燃分測定手段にて測定された未燃分残存率に基づいて焼却灰を分別する分別手段とを備え、前記分別手段にて分別された焼却灰のうち未燃分残存率が所定の閾値より低い焼却灰のみを前記水洗設備に送給することを特徴とする焼却灰の処理システム。
【請求項6】
前記分別手段にて分別された焼却灰のうち前記未燃分残存率が前記所定の閾値以上の焼却灰が供給され、該焼却灰を再加熱する加熱炉を備えたことを特徴とする請求項5記載の焼却灰の処理システム。
【請求項7】
前記分別手段にて分別された焼却灰のうち前記未燃分残存率が前記所定の閾値以上の焼却灰を焼却炉に返送する返送ラインを備えたことを特徴とする請求項5記載の焼却灰の処理システム。
【請求項8】
前記未燃分残存率の所定の閾値が、前記焼却灰に対して5重量%であることを特徴とする請求項5乃至7の何れかに記載の焼却灰の処理システム。
【請求項9】
前記未燃分測定手段が、前記焼却灰の熱灼減量若しくは前記焼却灰を加熱して得られるCO量を測定する手段であることを特徴とする請求項5記載の焼却灰の処理システム。
【請求項10】
前記未燃分測定手段が、前記焼却灰の重量と、該焼却灰を比重差分離して得られた浮遊物の重量とを測定し、これらの重量に基づいて焼却灰中の浮遊物含有率を求める手段であることを特徴とする請求項5記載の焼却灰の処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−82523(P2010−82523A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−252774(P2008−252774)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(501370370)三菱重工環境・化学エンジニアリング株式会社 (175)
【Fターム(参考)】