説明

焼成体用の加圧成形体、緻密質セラミックス部材、及び緻密質セラミックス部材の製造方法

【課題】金型を用いて粉体原料で緻密質セラミックスを製造できる方法でありながら、金型に加工を施したり、煩雑な作業を要する施工をしたり、得られた加圧成形体や焼成物に対して後加工を必要としたりすることなく、微細で有用な凹凸面を有する緻密質セラミックス、及び該セラミックスを直接得ることができる製造方法の提供。
【解決手段】焼成することで、微細な凹凸が形成された平坦面が設けられている相対密度90%以上の緻密質セラミックス部材が得られる焼成体用の加圧成形体であって、平均粒径40〜120μmの造粒粒子原料粉末(一次粒径0.3〜2μm)が加圧されてなり、かつ、その形状が、植物性繊維を原料とする紙、又は、植物性繊維を原料とする紙或いは布を基材とする一方の基材面に多数の粒子が接着されてなるシート、のいずれかの表面模様が転写された平坦な面を有する焼成体用の加圧成形体、緻密質セラミックス及びその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼成体用の加圧成形体、緻密質セラミックス部材及びその製造方法に関する。さらに詳しくは、例えば、広い接着面積が求められるセラミックスタイルとして、或いは、反応性に富む電子部品を焼成する際に使用され、電子部品との接触面積を下げる必要があるセラミックスプレートとして有用な、表面に微細な凹凸が形成された平坦面が設けられてなる相対密度90%以上の緻密質セラミックス部材を得るための焼成用の加圧成形体、緻密質セラミックス部材、及び緻密質セラミックス部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高性能なセラミックス部材を金型を用いて製造する場合には、製品の緻密化を図るために、通常、数ミクロン単位の微細な原料粉末を40〜120μmに造粒した造粒粒子原料粉末(一次粒径0.3〜2μm)を用いている。このため、金型を用いて原料粉末を成形する成形工程において、粉末と型の付着を防止する目的で、型表面を鏡面(算術平均粗さRa<0.02)に仕上げる必要がある場合が多い。このような成形体を焼成してなる焼成体の表面は、鏡面に近い表面粗さ(材質により異なるが、例えば、Ra0.5μm程度)を示す。その一方で、用途によっては、平坦でありながら表面に数μm程度の微細な凹凸が施されている相対密度90%以上の緻密質セラミックス部材が要求される場合も多くある。
【0003】
例えば、耐磨耗や保護用として金属壁や構造体に接着する必要のある緻密質セラミックスタイルでは、エポキシ系やアクリル系などの接着剤を介在させて施工されるため、その接着強度が重要な問題になる。このため、接着強度を高めることを目的として、アンカーコート効果が期待でき、広い接着面積が得られる微細な凹凸が設けられた緻密質セラミックスタイルが求められる。また、別の場合として、反応性に富む電子部品(例えば、チタン酸バリウム:BaTiO3や、チタン酸ジルコン酸鉛:PZT)や、基板や素子の電極として用いる銀等の金属電極有する部品を焼成する際のセッターとして使用されるセラミックスプレートにおいても、表面に微細な凹凸を設けることが求められている。すなわち、上記の場合には、焼成の際に生じる、セラミックスプレートと、その上に乗せた電子部品との反応や熔着を避けるために、或いは、焼成の際に、原料中に含有されるバインダーの揮発等を促進させるために、電子部品成形体とプレートとの間にわずかな隙間を設ける目的で、表面に凹凸が設けられたセラミックスプレートの利用が進んでいる。
【0004】
従来より行われている表面に微細な凹凸面が設けられてなる緻密質セラミックスの製造方法としては、下記に挙げるような種々の方法がある。例えば、金型を用いて粉体原料で緻密質セラミックスを製造した場合には、前記した製造上の理由から、成形体或いは焼成体には鏡面に近い平滑な面が形成されるが、この平滑な面に、機械加工を施すことで凹凸を形成することがしばしば行われている。しかし、成形体や焼成体に対する機械加工は、得られたセラミックス部材のコストを上昇させる大きな要因となるため、焼成後に行う加工工程を省略或いは軽減することが望まれる。
【0005】
これに対して、金型内の表面に凹凸加工を施すことで、直接、成形体表面に凹凸面を形成することが試みられている。しかし、先に述べたように、相対密度90%以上の緻密質セラミックス部材の製造にはミクロン単位の微細な原料粉末が用いられることから、金型への原料粉末の付着が発生し、工業的には好ましい方法とは言い難い。これに対し、凹凸面を有する金型と微細な原料粉末の間に極めて薄い剥離シートを挟み込み、型表面への付着を抑制し、緻密なセラミックス部材に凹凸面を形成するといった様々な方法の提案がある(特許文献1乃至4参照)。しかしながら、いずれの提案においても金型表面に凹凸を形成する必要があるため、金型の加工費が増大する上、場合によっては金型への原料粉末の付着を防止するための剥離シートを特別に用意する必要があり、セラミックス部材のコストを押し上げる要因となっている。さらに、内部表面を凹凸加工した金型を用いるこれらの方法では、所望する凹凸形状を有する平坦面をセラミックス表面に形成させるには、その都度、微細加工を施した平坦面を有する金型を作る必要があり、簡易な方法ではない。
【0006】
微細な凹凸を有する平坦面が設けられたセラミックス部材の作製方法としては、上記した以外にも、下記に挙げるような種々の方法の提案がある。例えば、ガラス状のビーズや、加熱することで消失する材料(例えば、スチレン樹脂やクルミの殻)からなる微小粒を接着させたテープやシートを、型と成形体との間に挟み込むことで、成形体に凹凸のある面を形成する方法が提案されている(特許文献5参照)。また、セラミックス基板をコーティングするスラリー材料中に、加熱することで消失する材料を分散させることで、表面に陥没或いは突起のあるセラミックスを得る製造方法の提案もある(特許文献6参照)。上記に挙げた方法は、いずれにしても製造工程が煩雑になり、簡便で経済的な方法ではなかった。
【0007】
一方、近年における電子部品の技術革新により電子部品の多層化が進み、材料中のバインダーの添加量は増加する傾向にある。これに対し、電子部品からのバインダー除去を効率的に行うことを目的とした貫通孔を有するハニカム状のセラミックスプレートの提案がなされており(特許文献7参照)、広く使用されるようになってきている。しかし、この場合には、生産工程において、プレートをハニカム状に加工する工程が必要であり、より簡便な製造方法を可能にするという点では、改善の余地がある。また、電子部品の著しい微小化と、厳しいコストダウンの必要性から、電子部品を大量に同時焼成した場合に、歩留りよく良好な状態で行うことが従来に増して必要になってきている。このため、増大傾向にある電子部品材料中のバインダーの除去が効率的になされ、微細な電子部品がプレートの孔部(凹部)に入り込むことがない、より厚みの薄いセラミックスプレートが、より安価に提供されることへの要望が高まっている。上記の要望に加えて、電子部品が基板等である場合には、絶縁層であるセラミックスと、その上に設けた電極の金属を同時に焼成することが要求されているが、焼成時に、電子部品を乗せたセッターやプレートの材料と、電極材料との間の反応がしばしば問題になっている。このため、電子部品等の製品と、これを乗せるセッターとの接触面積を下げるというニーズがある。
【0008】
【特許文献1】特開昭60−240408号公報
【特許文献2】特開昭62−233203号公報
【特許文献3】特開平10−230505号公報
【特許文献4】特開平11−077647号公報
【特許文献5】特開平09−278517号公報
【特許文献6】特開平09−295872号公報
【特許文献7】特開2002−145672号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記したように、金型を用い粉体原料で凹凸面を有する焼成体用の加圧成形体を直接に得、これを用いて緻密質セラミックスを製造する従来の方法では下記のような課題があった。すなわち、金型の内部に微細な凹凸面を形成するための加工が必要であったり、さらには原料粉末の金型への付着を防止するための剥離性のあるフィルムやシートを必要としたり、或いは、加圧成形体に、特殊な微小粒を接着させたり微小粒を分散させる煩雑なコーティング工程が必要であったりした。また、別の方法を採用した場合には、一旦、平坦な鏡面を有する緻密質セラミックスを作製した後、中間工程もしくは最終工程で、平坦な鏡面上に、凹凸形状の加工を施すことが必要であった。
【0010】
したがって、本発明の目的は、微細で有用な凹凸を有する平坦面が設けられた緻密質セラミックスを、簡便な方法で得ることのできる製造方法を提供することにある。具体的には、金型を用いる製造方法でありながら、金型に加工を施したり、煩雑な作業を要する金型表面への施工をしたり、さらに、得られた加圧成形体や焼成物に対して後加工を必要としたりすることなく、緻密質セラミックスを得ることができる技術を提供することにある。より具体的には、安価に調達できる材料を用い、極めて容易な手段で、基本的な金型構成を変更したり、後加工したりすることなく、微細な凹凸面を有する相対密度90%以上の緻密質セラミックスを得ることができる緻密質セラミックス部材の製造方法を提供することにある。本発明の別の目的は、広い接着面積を有し、施工した場合に高い接着強度が得られる微細な凹凸面を有する緻密質セラミックスタイルや、電子部品との接触面積が小さく、焼成時に電子部品との反応や熔着を生じにくく、しかも電子部品成形物に含有されるバインダーを効率よく除去することができる、といった目的に適う微細な凹凸面を有する緻密質セラミックスプレートなどの、微細で多様な凹凸を有する平坦面が設けられた相対密度90%以上の安価な緻密質セラミックス部材の提供を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した目的は、下記の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、焼成することで、微細な凹凸が形成された平坦面が設けられている相対密度90%以上の緻密質セラミックス部材が得られる焼成体用の加圧成形体であって、平均粒径40〜120μmの造粒粒子原料粉末(一次粒径0.3〜2μm)が加圧されてなり、かつ、その形状が、植物性繊維を原料とする紙、又は、植物性繊維を原料とする紙或いは布を基材とする一方の基材面に多数の粒子が接着されてなるシート、のいずれかの表面模様が転写された平坦な面を有するものであることを特徴とする焼成体用の加圧成形体である。
【0012】
本発明の焼成体用の加圧成形体のより好ましい形態としては、下記のものが挙げられる。上記平坦な面に、算術平均表面粗さRaが8μmよりも平坦な状態の微細な凹凸が形成されている上記の焼成体用の加圧成形体。上記基材表面に接着されている粒子サイズが、JISR6001で規定している100番〜1000番である上記の焼成体用の加圧成形体。
【0013】
本発明の別の実施形態は、上記いずれかの焼成体用の加圧成形体を焼成してなるものであることを特徴とする微細な凹凸が形成された平坦面が設けられた緻密質セラミックス部材である。
【0014】
本発明の別の実施形態は、少なくとも、内部に平坦な面が設けられている金型内に粉末原料を入れて加圧して成形体を得る成形工程と、該成形工程で得た加圧成形体を焼成する焼成工程とを有する相対密度90%以上の緻密質セラミックス部材の製造方法であって、上記成形工程で、平均粒径が40〜120μmの造粒粒子原料粉末(一次粒径0.3〜2μm)と、上記平坦な面に、植物性繊維を原料とする紙、又は、植物性繊維を原料とする紙或いは布を基材とする一方の基材面に多数の粒子が接着されてなるシートが接着されている金型とを用いて、上記の紙又はシートの表面模様が転写された平坦面を有する加圧成形体を得、上記焼成工程で、得られた加圧成形体を焼成して微細な凹凸が形成された平坦面が設けられた相対密度90%以上の緻密質セラミックス部材を得ることを特徴とする緻密質セラミックス部材の製造方法である。
【0015】
本発明の別の実施形態は、少なくとも、内部に平坦な面が設けられている金型内に粉末原料を入れて加圧して成形体を得る成形工程と、該成形工程で得た加圧成形体を焼成する焼成工程とを有する相対密度90%以上の緻密質セラミックス部材の製造方法であって、上記成形工程で、平均粒径が40〜120μmの造粒粒子原料粉末(一次粒径0.3〜2μm)と、上記平坦な面に、植物性繊維を原料とする紙、又は、植物性繊維を原料とする紙或いは布を基材とする一方の基材面に多数の粒子が接着されてなるシートの表面模様が転写された樹脂シートが、転写面を粉末原料側にした状態で接着されている金型を用いて、該転写面の表面模様が転写された平坦面を有する加圧成形体を得、上記焼成工程で、得られた加圧成形体を焼成して微細な凹凸が形成された平坦面が設けられた相対密度90%以上の緻密質セラミックス部材を得ることを特徴とする緻密質セラミックス部材の製造方法である。
【0016】
本発明の緻密質セラミックス部材の製造方法のより好ましい形態としては、下記のものが挙げられる。前記模様が転写された樹脂シートが、2液混合型又は紫外線硬化型の樹脂を用いて得られたものである上記の緻密質セラミックス部材の製造方法。前記基材表面に接着されている粒子サイズが、JISR6001で規定している100番〜1000番である上記いずれかの緻密質セラミックス部材の製造方法。
【0017】
さらに、本発明の別の実施形態は、上記いずれかの緻密質セラミックス部材の製造方法によって得られ、かつ、平坦面に、算術平均表面粗さRaが8μmよりも平坦な凹凸が設けられていることを特徴とする緻密質セラミックス部材である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、基本的な金型構成を何ら変更することなく、また、特別な加工を必要とすることなく、極めて簡便な製造方法で、平坦面に微細な凹凸形状が設けられている相対密度90%以上の多様な緻密質セラミックス部材を安価に提供することが可能となる。より具体的には、成形体若しくは焼成体とした後に、さらに加工を施す必要がなく、また、加工コストがかかる凹凸面が形成された金型を必要とすることなく、汎用されている材料を利用した極めて簡便な作業を付加する以外は従来の方法と同様にして、金型を用いて粉体原料で加圧成形体を得、これを用いて微細な凹凸を有する平坦面が設けられた緻密質セラミックスを製造することができる。このため、本発明によれば、表面の凹凸面の仕様が異なる多様な相対密度90%以上の緻密質セラミックス部材を安価に提供できるようになる。その結果、従来、そのコスト高を理由として、効果が認められているものの採用されていなかった業種にも、表面に凹凸面を有する緻密質セラミックス部材の用途が広がることが期待される。また、本発明によれば、機械加工をすることなく、緻密質セラミックス部材の表面に微細な凹凸面を形成することができるため、下記に述べるように、緻密質セラミックス部材を利用して製造される製品に対する品質における信頼性の向上に寄与することも期待される。例えば、精密な電子部品の製造の際にセラミックスプレートが使用されているが、下記のような問題があった。緻密質セラミックスの原料の多くは多結晶体であることから、従来の平坦面を有するプレートを機械加工して凹凸を形成する方法では、機械加工時にセラミックス表面内部に亀裂が導入されやすく、このようなプレートを使用すると、使用中にセラミックス粒子の脱落が起こりやすく、脱落した粒子が精密な電子部品に付着し、電子部品そのものの品質を損なうおそれがあった。しかし、本発明で提供される機械加工を施す必要のない緻密質セラミックスからなるプレートを用いれば、このようなことを生じることはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の好ましい形態を挙げて本発明を詳細に説明する。本発明者らは、前記した、金属や機械等の基材に接着することを要するセラミックスタイルや、電子部品の焼成に用いるセラミックスプレートとして好適な、表面に微細な凹凸が形成された平坦面を有する相対密度90%以上の緻密質セラミックス部材を、従来の製造方法の基本構成を変えることなく得られる、生産性の高い簡易な製造方法を開発すべく鋭意検討した結果、本発明に至ったものである。すなわち、本発明では、特殊な金型を作製したり、特殊なシートを用いることなく、基本構成において従来の製造方法と何ら変わることのない簡易な技術を提供する。
【0020】
本発明の特徴は、焼成することによって相対密度90%以上の緻密質セラミックス部材を得るための焼成体用の加圧成形体を下記のような構成としたことにある。すなわち、相対密度90%以上の緻密質セラミックス部材を得るために必要となる平均粒径40〜120μmの造粒粒子原料粉末(一次粒径0.3〜2μm)を加圧してなり、かつ、その形状を、植物性繊維を原料とする紙、又は、植物性繊維を原料とする紙或いは布の一方の面に多数の粒子が接着されてなるシート、のいずれかの表面模様が転写された平坦な面を有するものとする。本発明を特徴づける焼成体用の加圧成形体を構成する平坦な面に転写された表面模様は、紙繊維による非常に深さの浅い凹凸であったり、用いた粒子が押し当てられることで形成される深さの浅い凹凸である。そして、該加圧成形体を焼成すると、粉体原料が焼結して原料中の各粒子が一体化して焼成物となって、加圧成形体に形成された凹凸が固定され、焼成物の表面には、図1に示したような、凹部の深さが浅く、しかも丸みを帯びた鈍角な凹凸形状が形成される。
【0021】
本発明者らの検討によれば、例えば、近年における電子部品の著しい微細化に伴って、部品の熔着防止や、バインダーの揮発を良好なものにするために必要となるセラミックスプレート表面の凹凸形状は、より微細で、極めて微細な電子部品成形体が入り込まないように、凹部の深さはより浅く、その形状は丸みを帯びた鈍角の凹凸のものであることが好ましい。本発明の焼成体用の加圧成形体を焼成して得られる焼成体の平坦面に形成される凹凸形状は、上記したように、この目的によく合致したものになる。
【0022】
本発明の焼成体用の加圧成形体を焼成して得られた相対密度90%以上の緻密質セラミックス部材は、上記したような用途に特に好適な、例えば、平坦面に算術平均表面粗さRaが、8μmよりも平坦な状態の微細な凹凸が形成されたものとなる。本発明の焼成体用の加圧成形体を特徴づける微細な凹凸が形成されてなる平坦面は、下記に説明する方法によって容易に得ることができる。その一つは、通常、セラミックスタイル等の形成の際に使用されている内部に平坦な面を有する金型を用い、該金型内に入れた粉末原料を加圧して成形体を得る成形工程において、内部の平坦な面に下記のような簡易な細工をした金型を用い、特定の粉末原料を加圧成形する方法が挙げられる。すなわち、金型内の平坦な面に、植物性繊維を原料とする紙、又は、植物性繊維を原料とする紙或いは布を基材とする一方の基材面に多数の粒子が接着されてなるシート、のいずれかを接着した金型を用い、該金型内に、平均粒径が40〜120μmの造粒粒子原料粉末(一次粒径0.3〜2μm)を入れて、加圧成形する方法が挙げられる。このような方法によれば、紙や粒子を接着したシートの表面模様が転写された平坦面を有する加圧成形体が得られる。
【0023】
上記した方法に用いる粉末原料は、従来より、相対密度90%以上の緻密質セラミックス部材の材料として用いられている、一次粒径が0.3〜2μm程度の微粉末を造粒してなる平均粒径が40〜120μmの造粒粒子、さらに好ましくは50〜100μmのもの、をいずれも使用することができる。粉末原料の種類は、相対密度90%以上の緻密質セラミックス部材の用途にもよるが、例えば、アルミナ、シリカ、ジルコニア、マグネシア、ムライト、炭化珪素、及びその組み合わせ等を使用することができる。
【0024】
上記した方法に用いる植物性繊維を原料とする紙としては、具体的には、コピーやプリントに広く用いられている木材パルプからなる普通紙や、各種の和紙、ケナフ繊維を含んでなる紙等が挙げられる。また、ざまざまな材質の布でも同様である。上記した方法に用いる植物性繊維を原料とする紙或いは布を基材とする一方の基材面に多数の粒子が接着されてなるシートとしては、例えば、紙や布からなる基材面に微細な砥粒が接着されてなるサンドペーパーなどをいずれも使用することができる。最終目的とする相対密度90%以上の緻密質セラミックス部材の用途にもよるが、特に、紙や布の基材面に微細な砥粒が接着されてなるものであって、微細粒子の粗さが、JISR6001で規定している100番〜1000番程度であるものを用いることが好ましい。例えば、セラミックスタイルの場合は、接着強度を向上させる目的で凹凸面を設ける必要があるため、接着剤のアンカー効果が期待できる100番〜300番程度の比較的、大きい粒子を有するシートを用いればよい。電子部品成形体を焼成する際に使用するトレイとして有用なセラミックスプレートの場合は、乗せる電子部品成形体の大きさに応じて用いるシート(例えばサンドペーパー)の微細粒子(砥粒)の粗さを決定すればよい。具体的には、電子部品成形体の大きさに合わせて、部品が極めて小さい場合には、普通紙(例えばコピー用紙など)や、400番〜1000番、さらには、800番程度の目の細かい粒子のシート(サンドペーパー)を選択すればよい。なお、何れにしても、これらの材料は、いずれも、容易に入手でき、しかも安価な汎用品である。
【0025】
また、本発明の焼成体用の加圧成形体を特徴づける微細な凹凸が形成されてなる平坦面を形成する別の方法としては、下記のものがある。この方法においても、先に挙げたと同様に、通常、セラミックスタイル等の形成の際に使用されている内部に平坦な面を有する金型を用い、該金型内に入れた粉末原料を加圧して成形体を得るが、その際に、金型内部の平坦な面に下記のような簡易な細工をする点で異なる。すなわち、この方法では、金型内の平坦な面に接着させるものを、植物性繊維を原料とする紙、又は、植物性繊維を原料とする紙或いは布を基材とする一方の基材面に多数の粒子が接着されてなるシート、のいずれかの表面模様を転写した樹脂シートを形成し、該シートの転写面を粉末原料側にした状態で接着させた金型を用いる。具体的には、成形工程において、金型内の平坦な面に、上記のような樹脂シートを転写面が粉末原料側になるように配置して接着させた金型を用い、該金型内に平均粒径が40〜120μmの造粒粒子原料粉末(一次粒径0.3〜2μm)を入れて加圧成形することで、上記樹脂シートの転写面の模様が転写された加圧成形体を得る。上記したように、紙或いはサンドペーパーなどの模様を転写した樹脂シートを使用する構成とすれば、先に述べた紙或いはサンドペーパーをそのまま用いる方法に比べて、金型に接着させるシートの耐久性を格段に高めることができる。この結果、紙或いはサンドペーパーを新たなものに貼り替える煩雑さが軽減され、操作がより簡便なものになると同時に、生産効率を高めることができる。
【0026】
上記の方法で使用する、紙或いは紙や布を基材としたサンドペーパーの砥粒面の模様を転写した樹脂シートの作製に使用する樹脂としては、紙又はサンドペーパーの砥粒面の微細な凹凸模様を鮮明に転写することができ、加圧成形体を得る工程で加圧されても凹凸模様が損なわれることなく十分に耐えられる、機械的強度を有する樹脂であればいずれのものでもよい。さらに、作製の容易さから、硬化状態を容易にコントロールできる樹脂を使用することが好ましい。例えば、2液混合型のウレタン樹脂や、紫外線硬化型のウレタン樹脂を用いることが好ましい。
【0027】
紙やサンドペーパー、或いは、紙やサンドペーパーの模様を反転したウレタン樹脂等からなる樹脂シートを、金型内の平坦面に接着させる際に使用する接着剤としては、加圧成形体を得る工程で加圧された場合にも剥がれることがなければ、いずれのものも使用できる。使い勝手からすれば、例えば、市販されている金属面用のスプレー式の接着剤が好適である。
【0028】
上記した、金型内に入れた粉末原料を加圧して成形体を得る成形工程において、内部の平坦面に簡易な加工を施した金型を使用する構成の本発明の製造方法によれば、複雑かつ煩雑な工程や金型の加工を必要とした従来の製造方法と比較して極めて簡便に、平坦面上に凹凸をもつ相対密度90%以上の緻密質セラミックス部材を得ることができる。
【0029】
上記のようにして得られた平坦面上に微細な凹凸が設けられてなる加圧成形体を焼成する方法は、従来と何ら異なることはなく、材料に応じて決定される焼成温度や焼成雰囲気などの焼成条件で、常法にしたがって焼成すればよい。このようにして得られる相対密度90%以上の緻密質セラミックス部材は、加圧成形体を作製する際に形成した種々の形状の凹凸に応じて、使用目的に合致した多様な形状の微細な凹凸をもつ平坦面が形成されたものとなる。
【実施例】
【0030】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。なお、表面粗さとは、算術平均表面粗さを意味する。
[実施例1]
アルミナの粉体原料として、市販のアルミナタイル用粉末(商品名:AL92、ミノセラミック商事社製)を用意した。該アルミナタイル用粉末は、一次粒子の平均粒径が1.5μmの微細なアルミニウム粒子を主成分とする、バインダーとしてアクリル樹脂を1%添加した平均粒径100μmの造粒粒子であり、アルミナ含有量が92%のものである。
【0031】
上記の粉末を金型に入れ、加圧成形して焼成用の成形体を作製した。その際、成形体表面に凹凸を有する平坦面を形成するために、金型の加圧面(平坦面)に下記のような細工を施した。まず、凹凸を形成する目的で、金型の加圧面と同様の寸法に切断した市販のサンドペーパー(住友3M社製:粒度220番)を用意した。図1に、この際に用いたサンドペーパー表面の代表的な走査型電子顕微鏡写真を図化したものを示した。図1に示されているように、サンドペーパー表面には、砥粒により形成される鋭角状に近い、はっきりとした凹凸が認められた。この用意したサンドペーパーに、市販のスプレーのり(住友3M社製:スプレーのり55)を均一にスプレーした後、サンドペーパーの凹凸面が粉末原料に接触する側になるようにして金型の加圧面に接着した。
【0032】
加圧成形体の製造装置として、図2の模式図に示したような金型を有するものを用いた。金型には、型寸法が約120×120mmで、加圧面がRa0.1μmに研削加工された極めて平坦な、タイル或いはプレートの加圧成形体を形成するためのものを用いた。先に述べたようにして金型の加圧面(平坦面)に簡易な細工をした金型を用いて、成形圧100MPaで加圧して成形を行った。次に、上記のようにして得た加圧成形体を大気中ガス炉で1,600℃で焼成して、100mm×100mm×10mmのセラミックスタイル(焼成体)を作製した。
【0033】
図3に、得られたセラミックスタイル(焼成体)の代表的な表面形状が表れている走査型電子顕微鏡の写真を図化したものを示した。図3に示した焼成体では、図1に示されたサンドペーパーのはっきりとした凹凸が、成形体に転写し、その後に焼成することで、深さの浅い、全ての凹凸が鈍角状に近い状態で形成された丸みを帯びた凹凸となっていることがわかる。このセラミックスタイルの表面の粗さを測定した結果、表面粗さRa7.5μmを示す凹凸面を有していた。
【0034】
[比較例1]
実施例1で使用するために用意した金型の加圧面の上に、サンドペーパーを接着させなかったこと以外は、実施例1とまったく同様にして、100mm×100mm×10mmのセラミックスタイル(焼成体)を作製した。得られたセラミックスタイルの表面粗さRaを、実施例1と同様の方法で測定した結果、表面粗さRaは0.5μmであり、金型表面に近いほぼ鏡面を持つ表面であった。
【0035】
[評価]
(1)接着強度
実施例1及び比較例1のそれぞれで得られたセラミックスタイルを、市販の2液型の常温硬化型エポキシ樹脂接着剤で、耐摩耗評価用の金属板の表面に接着して2種類の評価用のサンプルを作製した。各サンプルのそれぞれについて、金属表面に対するセラミックスタイルの引っ張りせん断強さを測定した。従来の平坦面を有する金型を用いて作製した比較例1のセラミックスタイルの強度は、約1.5N/mm2であったのに対し、実施例1のセラミックスタイルの強度は約9.3N/mm2であった。この結果、従来のものに対して、本発明の方法で得られたセラミックスタイルでは6倍以上の接着強度を示すことが確認された。
【0036】
(2)使用耐久性
実施例1及び比較例1のそれぞれで得られたセラミックスタイルを、粉砕設備において、粉末の摩耗により設備の損傷を受けやすい箇所に、先に述べたと同様の方法で接着して取り付けて、設備の保護をした。そして、その状態で、粉砕設備の継続使用を行った。この結果、比較例1で得られたセラミックスタイルで保護した場合は、3ヶ月でセラミックスタイルの剥離が顕著に見られた。これに対して、実施例1で得られたセラミックスタイルで保護した場合は、半年を経過した時点でも剥離は見られなかった。
【0037】
[実施例2]
電子部品を焼成する際に使用するためのセラミックスプレートを、下記のようにして得た。原料粉末として、イットリアで完全に安定化した市販のジルコニア顆粒(第一希元素社製:一次粒子の平均粒径0.6μm、平均粒径70μmの造粒粉末:バインダー1.5%)を準備した。また、加圧成形体の製造装置として、型寸法が約85×85mmで加圧面を研削加工した平坦である、タイル或いはプレートの加圧成形体を形成するための金型を有する装置(図2参照)を用意した。そして、下記に述べるようにして、表裏面に微細な凹凸が設けられたセラミックスプレート用の加圧成形体を得た。上記の加圧面と同様の寸法に切断した市販のコピー用紙、砥粒の異なる2種類のサンドペーパー(住友3M社製:粒度400番、800番)の3種類のシートを用意し、市販のスプレーのり(住友3M社製:スプレーのり)を使用して、これらをそれぞれ上記の金型の加圧面の上に接着した。この際、サンドペーパーについては、凹凸面を粉末原料に接触する側になるように接着した。上記のようにして得た平坦面に簡易な細工を施したそれぞれの金型を用いて、上記ジルコニア粉末を加圧成形して成形体を得た。そして、得られた成形体を1,500℃で焼成して、65mm×65mm×2mmの大きさの3種類のセラミックスプレート(焼成体)を作製した。
【0038】
得られた3種類のセラミックスプレートは、いずれも微細な凹凸面を有するものであった。また、これらのセラミックスプレートの表面粗さRaを、実施例1と同様の方法で測定した。この結果、それぞれの表面粗さRaは、製造の際にコピー用紙を用いたセラミックスプレートの場合は2.0μmであった。また、製造の際にサンドペーパーを用いたセラミックスプレートの場合は、400番のものでは4.1μm、800番のものでは3.0μmであった。また、実施例1の場合と同様に、電子顕微鏡を用いて観察したところ、表面に、実施例1の場合よりもさらに深さの浅い、全てが鈍角で形成されている丸みを帯びた凹凸が形成されていた。
【0039】
[比較例2]
金型の加圧面の上に何も接着させずに、そのまま用いたこと以外は実施例2と同様にして、65mm×65mm×2mmの大きさのセラミックスプレート(焼成体)を作製した。得られたセラミックスプレートの表面粗さRaを、実施例1と同様の方法で測定した結果、表面粗さRaは0.5μmであった。
【0040】
[評価]
(1)反応性・耐熔着性
上記で得た実施例2の3種類のセラミックスプレート、及び、比較例2の平坦な金型で作製したセラミックスプレートのそれぞれを用いて、電子部品を製造する際の電子部品成形体の焼成時に、セラミックスプレートに対して部品の熔着が発生するか否かを調べた。その際に、セラミックスプレートとの反応性が最も高いと言われているチタン酸ジルコン酸鉛製の小型のセラミックス成形物を用いて検討を行った。具体的には、それぞれのプレートに、このセラミックス成形物を乗せて、1,300℃で焼成を行った。その結果、比較例2の平坦な金型で作製した従来のセラミックスプレートでは、チタン酸ジルコン酸鉛の熔着が認められた。これに対して、実施例2の3種類のセラミックスプレートでは、いずれも、焼成したチタン酸ジルコン酸鉛と、セラミックスプレートとの熔着は認められなかった。実施例2の3種類のセラミックスプレートについて、さらに詳細に調べたところ、セラミックスプレートへのチタン酸ジルコン酸鉛の拡散(反応によりセラミックスプレートに染み込む現象)は、表面粗さの値が大きいもの程、少ない傾向を示すことを確認した。しかし、表面粗さの値が比較的小さい、市販のコピー用紙を用いて作製したセラミックスプレートであったとしても、表面の化学組成分析結果から、比較例2の従来品と比較した場合に、セラミックスプレートへのチタン酸ジルコン酸鉛の拡散は、およそ100分の1程度に軽減されることがわかった。
【0041】
一方、セラミックスプレートの平坦面の表面粗さの差異が及ぼすチタン酸ジルコン酸鉛部品への影響として、表面粗さの大きいものでは、わずかに部品表面に凹凸が反転された模様が見られた。しかし、その程度は数μm以下にすぎなかった。さらに、表面粗さの小さいセラミックスプレートでは、このようなことが全くみられなかった。
【0042】
[実施例3]
本実施例では、実施例2で用いた粒度400番と800番の2種類の粗さのサンドペーパーを用い、これらのサンドペーパーの凹凸面をウレタン樹脂の表面に反転させた樹脂シートを作製し、該樹脂シートを金型の平坦面の細工に用いた。このようにして得られたウレタン樹脂シートを、金型の平坦な加圧面に実施例1と同様にして接着させ、得られた金型を用いて、実施例2と同一条件で、加圧成形体及びこれを焼成してなるセラミックスプレートを作製した。そして、得られたセラミックスプレートについて実施例1と同様にして表面粗さRaを測定し、さらに、実施例2の場合と同様にして、得られたセラミックスプレートについて、チタン酸ジルコン酸鉛製の小型のセラミックス成形物との反応性・耐熔着性について検討を行った。この結果、サンドペーパーをそのまま接着させた実施例2の場合よりも、チタン酸ジルコン酸鉛の成形物との反応がさらに低減する傾向を示すことを確認した。なお、実施例3で得たセラミックスプレートでは、400番のサンドペーパーを用いた場合は、表面粗さRaが3.0μmであり、800番のサンドペーパーを用いた場合は、表面粗さRaが2.2μmであった。
【0043】
[評価]
(1)製造効率
実施例2及び3で行ったそれぞれの方法で平坦面に簡単な細工を施した各金型を用いた以外は同様にして、それぞれの金型でセラミックスプレートを繰り返し製造した。その結果、実施例2で行った、サンドペーパーをそのまま平坦面に接着させた金型を使用した場合には、サンドペーパーを、セラミックスプレートを1000枚製造した段階で交換する必要があった。これに対して、ウレタン樹脂に反転させた樹脂シートを平坦面に接着させた金型を用いた実施例3の場合には、5,000枚製造した際にも、得られるセラミックスプレートの表面粗さに変化は認められなかった。この結果、実施例2の方法よりも、実施例3で示した方法の方が効率よく、良好なセラミックスプレートを製造できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の活用例としては、剥離に対する接着強度の高いセラミックスタイルや電子部品の焼成の際のセッターなどとして良好に用いることができる、安価で機能性にも優れるセラミックスプレートが挙げられる。さらに、従来、高価であるとして活用されていなかった金属の焼結工程に用いられるセラミックス製の反応防止用部材などを安価に提供できる有用な技術となる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】実施例1で使用した凹凸形状を有するシート(サンドペーパー)の代表的な表面の走査型電子顕微鏡の写真の図である。
【図2】本発明の製造方法で用いた金型を模式的に表した図である。
【図3】実施例1におけるセラミックスタイルの代表的な表面の走査型電子顕微鏡の写真の図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼成することで、微細な凹凸が形成された平坦面が設けられている相対密度90%以上の緻密質セラミックス部材が得られる焼成体用の加圧成形体であって、平均粒径40〜120μmの造粒粒子原料粉末(一次粒径0.3〜2μm)が加圧されてなり、かつ、その形状が、植物性繊維を原料とする紙、又は、植物性繊維を原料とする紙或いは布を基材とする一方の基材面に多数の粒子が接着されてなるシート、のいずれかの表面模様が転写された平坦な面を有するものであることを特徴とする焼成体用の加圧成形体。
【請求項2】
前記平坦な面に、算術平均表面粗さRaが8μmよりも平坦な状態の微細な凹凸が形成されている請求項1に記載の焼成体用の加圧成形体。
【請求項3】
前記基材表面に接着されている粒子サイズが、JISR6001で規定している100番〜1000番である請求項1又は2に記載の焼成体用の加圧成形体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の焼成体用の加圧成形体を焼成してなるものであることを特徴とする微細な凹凸が形成された平坦面が設けられた緻密質セラミックス部材。
【請求項5】
少なくとも、内部に平坦な面が設けられている金型内に粉末原料を入れて加圧して成形体を得る成形工程と、該成形工程で得た加圧成形体を焼成する焼成工程とを有する相対密度90%以上の緻密質セラミックス部材の製造方法であって、
上記成形工程で、平均粒径が40〜120μmの造粒粒子原料粉末(一次粒径0.3〜2μm)と、上記平坦な面に、植物性繊維を原料とする紙、又は、植物性繊維を原料とする紙或いは布を基材とする一方の基材面に多数の粒子が接着されてなるシートが接着されている金型とを用いて、上記の紙又はシートの表面模様が転写された平坦面を有する加圧成形体を得、上記焼成工程で、得られた加圧成形体を焼成して微細な凹凸が形成された平坦面が設けられた相対密度90%以上の緻密質セラミックス部材を得ることを特徴とする緻密質セラミックス部材の製造方法。
【請求項6】
少なくとも、内部に平坦な面が設けられている金型内に粉末原料を入れて加圧して成形体を得る成形工程と、該成形工程で得た加圧成形体を焼成する焼成工程とを有する相対密度90%以上の緻密質セラミックス部材の製造方法であって、
上記成形工程で、平均粒径が40〜120μmの造粒粒子原料粉末(一次粒径0.3〜2μm)と、上記平坦な面に、植物性繊維を原料とする紙、又は、植物性繊維を原料とする紙或いは布を基材とする一方の基材面に多数の粒子が接着されてなるシートの表面模様が転写された樹脂シートが、転写面を粉末原料側にした状態で接着されている金型を用いて、該転写面の表面模様が転写された平坦面を有する加圧成形体を得、上記焼成工程で、得られた加圧成形体を焼成して微細な凹凸が形成された平坦面が設けられた相対密度90%以上の緻密質セラミックス部材を得ることを特徴とする緻密質セラミックス部材の製造方法。
【請求項7】
前記模様が転写された樹脂シートが、2液混合型又は紫外線硬化型の樹脂を用いて得られたものである請求項6に記載の緻密質セラミックス部材の製造方法。
【請求項8】
前記基材表面に接着されている粒子サイズが、JISR6001で規定している100番〜1000番である請求項5〜7のいずれか1項に記載の緻密質セラミックス部材の製造方法。
【請求項9】
請求項5〜8のいずれか1項に記載の緻密質セラミックス部材の製造方法によって得られ、かつ、平坦面に、算術平均表面粗さRaが8μmよりも平坦な凹凸が設けられていることを特徴とする緻密質セラミックス部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−5901(P2010−5901A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−167510(P2008−167510)
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(391009419)美濃窯業株式会社 (33)
【Fターム(参考)】