説明

焼成用ペースト組成物

【課題】本発明は、レベリング性とスクリーン印刷における印刷性及び焼成性が共に優れたペースト組成物を提供する。
【解決手段】リン酸基を3〜100μmol/g含有し、重量平均分子量が15万以下であるアクリル重合体(A)、有機溶剤(B)と無機フィラー(C)を含む焼成ペースト組成物。ラジカル重合可能な不飽和二重結合を2個以上有する単量体を0.2質量%以上含有した単量体混合物を重合して得られた、体積平均粒子径が10μm以下のアクリル微粒子(D)を含むことが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属粉末、金属酸化物粉末、蛍光粉末、ガラスフリット等の無機粉末を賦形する際に使用される焼成用ペースト組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
陶磁器への絵付けや、電子材料等の分野においては、無機物による成形体やその成形体により形成されるパターン(例えば配線パターン、絶縁パターン等)が使用されることがある。このような成形体やパターンを形成する方法として、無機顔料、金属粉末、金属酸化物粉末、蛍光粉末、ガラスフリット等の無機粉末をバインダ樹脂と混合してペースト組成物を調製し、このペースト組成物を用いて所定の形状やパターンを形成した後、焼成してバインダ樹脂を熱分解する方法が知られている。
【0003】
その際に使用されるバインダ樹脂は、成形加工時の加工性向上や、移動時に損傷しないように無機粉末をつなぎ止める役割を果たす。このバインダ樹脂は、最終製品となる前に無機粉末を焼結させる際に熱分解により除去されるため、熱分解性が高く、各加工時の作業性に優れることが求められる。
【0004】
ペースト組成物の加工方法としては、スクリーン印刷する方法、ドクターブレード等によりシート状に成形する方法、ディップ法、ディスペンス法などが知られている。
【0005】
これらのうち、スクリーン印刷法を適用する場合、ペースト組成物は高せん断領域におけるチキソトロピー性が高いほど、印刷性が向上する。また、印刷後のレベリング性においては、低せん断領域におけるチキソトロピー性が低いほどよい。したがって、スクリーン印刷する場合には、ペースト組成物として、チキソトロピー性が高せん断領域で高く、低せん断領域で低いものが求められる。
【0006】
この要求に対し、特許文献1では、アルキル(メタ)アクリレートと、ラジカル重合可能な不飽和二重結合を2個以上有する化合物と、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートとが重合されたバインダ樹脂が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−183331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の重合体では、レベリング性とスクリーン印刷における印刷性とを共に十分満足させることが十分ではなかった。
【0009】
本発明は、レベリング性とスクリーン印刷における印刷性が共に優れ、焼成性にも優れたペースト組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の要旨は、リン酸基を3〜100μmol/g含有し、重量平均分子量が15万以下であるアクリル重合体(A)、有機溶剤(B)と無機フィラー(C)を含む焼成ペースト組成物にある。
【発明の効果】
【0011】
本発明のペースト組成物は、レベリング性とスクリーン印刷における印刷性が共に優れ、焼成性にも優れている。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の焼成用ペースト組成物は、リン酸基を3〜100μmol/g含有し、重量平均分子量が15万以下であるアクリル重合体(A)、有機溶剤(B)及び、無機フィラー(C)を含む。
【0013】
(アクリル重合体(A))
アクリル重合体(A)は、リン酸基を3〜100μmol/g含有していることが必要である。リン酸基含有量が3μmol/g以上で、焼成ペーストのレベリング性が向上し、100μmol/g以下であることで、焼成性が良好となる。好ましい範囲は15〜60μmol/gである。
【0014】
前記アクリル重合体(A)は重量平均分子量が15万以下であることが必要である。重量平均分子量は15万以下であるときに、レベリング性が良好となる。重量平均分子量の好ましい範囲は10万以下である。
【0015】
なお、本発明のアクリル重合体(A)は、アルキル(メタ)アクリレート単量体と、リン酸基含有単量体の単量体混合物を共重合することによって製造できる。
【0016】
アルキル(メタ)アクリレート単量体は、アルキル(メタ)アクリレートとは、アルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレートのことをいう。
【0017】
アルキルアクリレートとしては、好ましくは炭素数1〜18のアルキル基を有するものであり、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、2−エチルヘキシル、ドデシル、ステアリル等のアルキル基を有するアルキルアクリレートが挙げられる。
【0018】
アルキルメタクリレートとしては、好ましくは炭素数2〜18のアルキル基を有するものであり、例えば、エチル、n−プロピル、n−ブチル、2−エチルヘキシル、ドデシル、ステアリル等のアルキル基を有するアルキルメタクリレートが挙げられる。
【0019】
リン酸基含有単量体としては、2−アクリロイルオキシエチルリン酸、2−メタクリロイルオキシエチルリン酸、2−アクリロイルオキシエトキシエチルリン酸、2−メタクリロイルオキシエトキシエチルリン酸等を挙げることができる。
【0020】
前記アクリル重合体(A)の重合方法としては、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等の公知の方法によって製造できるが、中でも分子量の調整の容易さから、溶液重合が好ましい。溶液重合に用いる溶剤としては、ペースト組成物中の有機溶剤(B)を用いることが好ましい。
【0021】
また、前記アクリル重合体(A)がペースト組成物中に占める割合は、0.1〜15質量%が好ましい0.1質量%以上であれば、レベリング性が良好となり、15質量%以下であれば焼成性が良好となる。
【0022】
(有機溶剤(B))
本発明に用いる有機溶剤(B)は、アクリル重合体(A)を溶解可能なものが使用される。
【0023】
有機溶剤(B)としては、沸点が100℃以上のものが好ましく、120℃以上のものがより好ましい。沸点が100℃以上であれば、有機溶剤が蒸発しにくくなるので、得られるペースト組成物の印刷または塗工時の作業性が良好になる。なお、本発明において「沸点」とは、1気圧(1013hPa)における沸点である。
【0024】
沸点が100℃以上の有機溶剤としては、例えば、α,β,γ−ターピネオール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチル−3−エトキシプロピオネート、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート、イソホロン、3−メトキシブチルアセテート、ベンジルアルコール、1−オクタノール、1−ノナオール、2−エチル−1−ヘキサノール、1−デカノール、1−ウンデカノール、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、トルエン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられ。有機溶剤は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0025】
前記有機溶剤の中でも、溶解性に優れることから、α,β,γ−ターピネオール、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートが好ましい。
【0026】
有機溶剤(B)の含有量は、19.9〜79.9質量%が好ましい19.9質量%以上であれば焼成ペーストに流動性を付与でき、79.9質量%以下であれば高い印刷性を発現することができる。
【0027】

(無機フィラー(C))
本発明に用いる無機フィラー(C)は、焼成用バインダ樹脂に分散できるものであれば特に制限されない。
【0028】
無機フィラーとしては、アルミナ、ジルコニア、酸化チタン、チタン酸バリウム等の酸化物、窒化アルミナ、窒化珪素、窒化ホウ素等の窒化物、アルミニウム、銅、銀、ニッケル等の金属、低融点ガラス粉等のシリカ系粉体、陰極線やプラズマディスプレイ等に用いられる各種蛍光体、陶磁器の絵付けに用いられる各種顔料などが挙げられる。
【0029】
なかでも、本発明のアクリル重合体(A)を用いた場合の、レベリング性の発現のよさから、アルミニウム粉末をフィラーとして用いることが好ましい。
【0030】
無機フィラー(C)の含有量は、20〜80質量%が好ましい
20質量%以上であれば焼成後に目的の成形体やパターンを得ることができ、80質量%以下であれば高い印刷性を発現することができる。
【0031】
(アクリル微粒子(D))
さらに、本発明の焼成ペースト組成物には、ラジカル重合可能な不飽和二重結合を2個以上有する単量体を0.2質量%以上含有した単量体混合物を重合して得られた、体積平均粒子径が10μm以下のアクリル微粒子(D)を含むことが好ましい。
【0032】
このようなアクリル微粒子を含有することで、ペーストに高いチキソ性が発現しやすく、高い印刷性を発現しやすい。
【0033】
アクリル微粒子(D)の製造時に用いるラジカル重合可能な不飽和二重結合を2個以上有する単量体としては、例えば、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,3−ブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,4−ブタンジオール、ジ(メタ)アクリル酸1,6−ヘキサンジオール、ジ(メタ)アクリル酸ネオペンチルグリコール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリル酸エステル、ジ(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ポリテトラメチレングリコール、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリル酸エステル、エトキシレーテッドトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリル酸エステル、プロポキシレーテッドトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリル酸エステル、グリセリントリ(メタ)アクリル酸エステル、エトキシレーテッドグリセリントリ(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
【0034】
これらは、チキソ性発現効果と熱分解性とのバランスに優れるとともに、高粘性化しても糸引きを起こしにくい。なお、これらは2種以上を併用してもよい。
【0035】
さらに、ラジカル重合可能な不飽和二重結合を2個以上有する単量体と共重合する単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のモノ(メタ)アクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、ケイ皮酸、コハク酸モノ(2−(メタ)アクリロイロキシエチル)、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等のカルボキシ基含有単量体、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のモノヒドロキシ含有(メタ)アクリレート、1分子中にヒドロキシ基が2個以上含有する1,2−ジヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1,2−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,2−ジヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,2−ジヒドロキシ5−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のジヒドロキシ含有(メタ)アクリレート、1,2,3−トリヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,2,3−トリヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,1−ジヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1,1−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,1−ジヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,1,2−トリヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,1,2−トリヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のトリヒドロキシ含有(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル等が挙げられる。これらの単量体は2種以上を併用してもよい。
【0036】
アクリル微粒子(D)の体積平均粒子径は10μm以下が好ましい。粒子径を10μm以下とすることで、高いチキソ性が発現しやすい。粒子径のより好ましい範囲は、5μm以下である。また、粒子径の下限に関しては、乳化重合による製造の容易さの点から、0.05μm以上が好ましい。
【0037】
ここで、体積平均粒子径は光散乱光度計を用いて測定した値である。なお、本発明における粒子径とは、ラジカル重合によって製造された時点の1次粒子径である。
アクリル微粒子(D)をラジカル重合で製造する際の重合方法としては、懸濁重合法、乳化重合法、ソープフリーシード重合法、分散重合法等の公知の方法が挙げられる。中でも、好ましい粒子径の調整の容易さから、乳化重合法、ソープフリーシード重合法が好ましい。
【0038】
アクリル微粒子(D)の含有量は、ペースト組成物100質量部中に1〜30質量部含まれることが好ましい1質量部以上であれば焼成ペーストのチキソ性を発現しやすく、30質量部以下であれば焼成性後の反りなど、焼成性が良好となりやすい。
【0039】
本発明の焼成ペースト組成物には、必要に応じて可塑剤、分散助剤、消泡剤などが含まれてもよい。
【0040】
本発明の焼成ペースト組成物は、スクリーン印刷での印刷性に優れており、基材上にパターンを形成する際に、スクリーン印刷を適用することが好ましいが、スクリーン印刷以外の方法を適用しても構わない。
【0041】
ペースト組成物の粘度が高い場合には、ディップ塗布法、ディスペンス塗布法を適用でき、粘度が低い場合には、ドクターブレード塗布法やキャスト塗布法を適用できる。
【0042】
ペースト組成物が印刷または塗布される基材としては、例えば、ガラス基盤、コンデンサ用等のセラミックス基板、太陽電池用等の結晶シリコン基盤、陶磁器等が挙げられる。
【実施例】
【0043】
以下、本発明について実施例および比較例により説明する。なお、以下の例における「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味する。
【0044】
以下の例における評価方法は、次の通りである。
【0045】
<リン酸基含有量>
熱分解ガスクロマトグラフィーにより、構成単量体の質量比を求め燐酸基含有単量体のmol数をポリマーの質量で割ることにより算出した。なお、以下の条件で測定し、モノマーの質量比の決定には、モデルポリマーによる検量線を用いた。
装置:ガスクロマトグラフィー:ヒューレット パッカード社製 GC HP5890
熱分解装置:フロンティアラボ社製 加熱炉型熱分解装置PY2010S
熱分解温度:590℃
供給試薬量:50μg(25mg/mlのテトラヒドロフラン溶液を2μl)インジェクション温度:300℃
検出部温度:300℃
カラムオーブンの昇温温度:35℃で5分間保持して、5℃/分で昇温して280℃で6分間保持する。
分離カラム:J&W社製DB−1701(30m×0.25mm I.D.膜厚0.25μm)
キャリアーガス:He 1ml/min(定流量制御)
スプリット比:1/40
ガスクロマトグラフィー検出器:FID
<重量平均分子量>
GPC法によるポリスチレン換算値であり、以下の条件で測定した。
装置:東ソー(株)製、高速GPC装置HLC−8020
カラム:東ソー(株)製、TSKgelGMHXLを3本直列に連結
オーブン温度:38℃
溶離液:テトラヒドロフラン
試料濃度:0.4質量%
流速:1mL/分
注入量:0.1mL
検出器:RI(示差屈折計)
<体積平均粒子径>
アクリル微粒子の体積平均粒子径を、光散乱光度計 FPAR−1000型(大塚電子株式会社製)を用いて測定した。
【0046】
<焼成性>
アクリル重合体(A)を105℃のオーブンで2時間乾燥させた後、アルミ皿に0.1g秤量した。これを600℃に加熱した焼成炉で10秒間焼成し、焼成後の残渣の割合を質量%で表した。残渣が少ないほど焼成性に優れる。
残渣が0.5%未満:◎
残渣が0.5%以上1%未満:○
残渣が1%以上:×
<レベリング性>
焼成用ペーストの粘度を、粘弾性測定装置Physca MCR300(アントンパール社製)を用いて、コーンプレート0.5°/25mm、測定温度23℃の条件で測定した。せん断速度1(1/s)のときの粘度をη1、せん断速度10(1/s)のときの粘度をη10とした際のη1/η10の値を求めた。そして、以下の基準で、レベリング性を評価した。η1/η10の値が小さい程、レベリング性に優れる。
η1/η10が2.5未満:◎
η1/η10が2.5以上5未満:○
η1/η10が5以上:×
<製造例1>
加熱および冷却が可能な重合装置に、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート80部を投入した。回転数150rpmで攪拌しながら90℃に昇温し、イソブチルメタクリレート(IBMA)99.7部、リン酸基含有単量体としてカヤマーPM21(日本化薬社製)0.3部、重合開始剤としてAMBN(大塚化学社製)1部、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート20部の混合物を4時間かけて滴下した。さらにAMBN0.5部を追加投入し、90℃で3時間撹拌することでアクリル重合体(A−1)の溶液を得た。
【0047】
<製造例2〜8>
滴下するモノマー、開始剤組成を表1の組成とすること以外は、製造例1と同様の方法でアクリル重合体(A2〜A8)を得た。
【0048】
【表1】

<製造例10>
2リッターの4つ口フラスコに、純水600部、過硫酸カリウム1.2部を投入し、窒素ガス置換後、窒素ガス気流下130rpmで撹拌しつつ、80℃に昇温した。次に、イソブチルメタクリレート(IBMA)184部、メチルメタクリレート(MMA)182部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート32部、多官能単量体としてジメタクリル酸エチレングリコール2部、乳化剤としてジアルキルスルホコハク酸ナトリウム(花王(株);商品名ペレックスOTP)8.0部の混合物を、前記フラスコ中に4時間で滴下しラジカル重合した。
【0049】
その後、80℃で1時間保持し、重合を終了させ、乳白色のエマルション重合体(固形分40.0%)を得た。この1次粒子の体積平均粒子径は0.4μmであった。得られたエマルション樹脂を、噴霧乾燥装置(大河原化工機(株)製;商品名L−8型)を用いて、チャンバー入口温度130℃、チャンバー出口温度70℃、アトマイザー回転数30000rpmに設定し、噴霧乾燥を行い、アクリル微粒子(D−1)を得た。
【0050】
(実施例1〜5、比較例1〜3)
アクリル重合体(A)0.8部、有機溶剤(B)としてジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート52部、無機フィラー(C)としてアルミニウムペースト(旭化成社製:MH8801)40部、アクリル微粒子(D−1)7.2部となるように計量し、自転・公転ミキサー(シンキー社製:ARV−200)にて混練した。評価結果を表2に示す。
【0051】
【表2】

アクリル重合体としてリン酸基を2μmol/g含有した(A−6)を用いた比較例1では、焼成性はよかったものの、レベリング性が悪かった。
アクリル重合体としてリン酸基を133μmol/g含有した(A−7)を用いた比較例2では、レベリング性はよかったものの、焼成性が悪かった。
【0052】
アクリル重合体の重量平均分子量が15万より大きい(A−8)を用いた比較例3では、焼成性はよかったものの、レベリング性が悪かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン酸基を3〜100μmol/g含有し重量平均分子量が15万以下であるアクリル重合体(A)、有機溶剤(B)と無機フィラー(C)を含む焼成ペースト組成物。
【請求項2】
ラジカル重合可能な不飽和二重結合を2個以上有する単量体を0.2質量%以上含有した単量体混合物を重合して得られた、体積平均粒子径が10μm以下のアクリル微粒子(D)を含む請求項1記載の焼成ペースト組成物。

【公開番号】特開2011−219649(P2011−219649A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−91296(P2010−91296)
【出願日】平成22年4月12日(2010.4.12)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】