説明

焼成食品のカビを生じない保存期間の延長および風味特性の改良のための方法

本発明は、焼成および冷却の後、焼成食品(baked goods)の表面に生酵母を適用し、その後、焼成食品を閉じた袋内に包装してこの包装された焼成食品を周囲温度で保存することによる、焼成食品のカビを生じない保存期間の延長および風味の改良のための新規な方法を提供する。この方法は、食パン、ロールパン、ベーグル、ピザクラスト、小麦粉トルティーヤ、クロワッサン、ケーキ、マフィン、ドーナツ、およびピタパンを含むあらゆる種類の焼成食品に用いることができる。この方法を用いて、生プロバイオティクス酵母(サッカロマイセス・セレビシエ・バール・ブラウディ)を含む焼成食品を作製することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、いずれも2008年1月28日に出願された米国特許仮出願第61/023,968号および第61/023,959号の優先権を主張するものである。すべての関連する出願は、それら全体で参照として本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の分野
本発明は、包装された焼成食品(baked goods)のカビを生じない保存期間の延長およびプロバイオティクス特性の拡張のための新規な方法に関する。本発明は、焼成食品の味および風味の改良、ならびにさらには包装された焼成食品の所望の風味の保持、のための方法にも関する。本発明は、本発明に従う方法を用いて作製された焼成食品にも関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
焼成食品の保存期間は、主として微生物による腐敗の速度に依存している。水分活性(A)、pH、酸化還元電位、抗菌剤(保存剤)、焼成食品の化学的および生物学的組成などの食品自体の特性、ならびにそれが保存される環境(温度、湿度、および包装容器内の気体組成)の両方が、微生物による腐敗の種類および速度に影響を及ぼす。食パンをオーブンで焼くことにより、一部の胞子形成細菌を除いたすべての微生物が死滅することから、主な微生物汚染源は、焼いた後、食パンを冷却および/またはスライスする間の空気中のカビ胞子による食パンの汚染である。さらに、食パン、ロールパン、ベーグル、小麦粉トルティーヤ、ピザクラスト、ドーナツ、クロワッサン、およびピタパンなどの酵母発酵された焼成食品のほとんどは、比較的低い水分活性および5.0近辺のpHを特徴とするため、食パンの腐敗を引き起こす主な微生物はカビである。
【0004】
従来から、焼成食品に人工添加物を添加することによるその保存期間の延長が行われてきた。現在、食パンおよび食パン様の食品のカビの発生を抑制するために用いられる主な添加剤は、プロピオン酸カルシウムのような有機酸およびその塩である。焼成食品にプロピオン酸塩、ソルビン酸塩、および安息香酸塩などの化合物を用いて焼成食品の保存期間を延長する例は、本技術分野で十分に確立されている(例えば、米国特許第3,900,570号、第4,416,904号、および第6,123,973号、を参照)。プロピオン酸塩および関連する化合物は、カビの成長を抑制し、それによってそれが使用された焼成食品の保存期間を延長するのに効果的であるが、この化学的保存剤の使用には重要な制限および欠点が存在する。
【0005】
第一に、これらの化合物は、比較的低いレベルであっても、望ましくない異味、異風味、または異臭を引き起こす場合がある。当業者であれば理解されるであろうように、味とは、通常、舌の味蕾によって感知される基本的な味覚を意味し、すなわち、塩味、甘味、苦味、酸味、および旨味である。同様に、香りとは、品物の臭いを嗅ぐことから来る、我々の鼻を揮発性の風味化合物を含む空気が通過する際の、我々の鼻にある様々な多くの感覚器官による知覚を意味する。食品を食べると、味と香りの組み合わせが知覚される。この味と香りの組み合わせが、風味として知覚される。この知覚を、参照品の知覚と比較することができる。強すぎる苦味、強すぎる塩味、強すぎる酸味を例とする、味が期待されるものと異なる場合、その食品は異味を有すると表現することができる。香りが期待されるものと異なる場合、その食品は異臭を有すると表現することができる。異味または異臭の組み合わせは、異風味と表現することができる。食品が十分な味または風味を持たない場合、それは薄味であると表現することができる。
【0006】
第二に、プロピオン酸塩は、練り生地(dough)の発酵に用いられる酵母の活性を阻害するだけでなく、練り生地の気体保持能力も低下させ、その結果、ローフ(loaf)の体積が低下し、内相(crumb)構造が不良となる。第三に、焼成食品へのプロピオン酸塩の使用可能量が多くの国で制限されている。最後に、プロピオン酸塩は人工の化学物質とみなされ、主として天然のラベル表示しやすい(label‐friendly)成分を含む食パンの添加剤として、消費者はそれほど望ましいものではないと考えている。亜硫酸塩、安息香酸塩、ソルビン酸塩、メチルおよびプロピルパラベンなどのその他の化学保存剤も焼成食品にある程度使用されているが、これらは、プロピオン酸塩よりも効果が低いか、混合中にグルテンタンパク質構造中のジスルフィドブリッジと反応するソルビン酸塩もしくは亜硫酸塩などのように練り生地の作製プロセスを妨害するか、または食パン以外の焼成食品へのこれらの使用が法律で制限されている。
【0007】
プロピオン酸塩およびその他の化学保存剤の使用の制限のいくつかを克服するいくつかの試みが、保存剤を練り生地中に組み込むのではなく、保存剤を含有するスプレーで焼成食品の表面を処理することによって行われてきた(Pyler,Baking Science & Technology Vol I page 231,1988 ISBN 0‐929005‐00‐7参照)。しかし、このような方法は、焼成食品の表面を完全に被覆することが本質的に困難であることから、決して広く使用されてはこなかった。被覆に存在する隙間が、カビの成長が依然として阻害されずに発生し得る領域を提供する。化学保存剤に加えて、殺菌用紫外線が、焼成食品におけるカビの問題に対抗するために用いられてきた。しかし、この方法は、焼成食品のカビを生じない保存期間を、そのような製品が通常保存される期間を超えて延長するのに通常は十分ではなく、および多大な設備投資を必要とする。
【0008】
低酸素雰囲気を有する特別な包装容器内に焼成食品が保存されるガス置換包装(Modified atmospheric packaging)(MAP)は、化学保存剤を用いることなくカビを生じない保存期間を延長するための主たる代替法である。しかし、この方法は、特別な包装材および焼成食品から酸素を除去するための特別な設備が必要であるため、ほとんどの焼成食品に対しては高価過ぎる傾向にある。このプロセスは、包装された焼成食品へ、真空引き、ならびに窒素ガスおよび二酸化炭素ガスなどの不活性ガスによるフラッシングを(繰り返し)適用して、焼成食品中に残留する酸素のほとんどすべてを除去することによって行われる。数ある欠点の中で、この方法は、食パン製造ラインのような高速のラインにおいて、ラインスピードおよび生産量を大きく低下させることなしに容易に使用することができない。
【0009】
食パンを含む食料品の保存期間を延長するための別の公知の方法は、密閉包装容器内に保存された食品上にグルコースオキシダーゼ/カタラーゼ酵素製剤を、その包装容器内の酸素のレベルを5日間以内に1%未満まで低下させるのに十分な量で適用することである(米国特許第4,996,062号参照)。この方法の主たる欠点は、多量のグルコースオキシダーゼを要することであり、そのため、商業的観点からこのプロセスには桁違いのコストがかかり、スプレーによって適用する場合は、吸入アレルギーを引き起こす場合がある。このプロセスには、包装容器内の残留酸素レベルを低く維持するために、酸素透過度の低い特別の包装材も必要である。
【0010】
食料品をカビおよび酸化から保護するためのさらなる方法および包装材は、米国特許第2,987,403号に開示されている。この方法は、食料品に酵母のような好気性生物を植え付けること、および前記食料品を缶、ブリキ製ビン、またはラップのような酸素不透過性閉鎖容器中に密封することを含む。この参考文献は、食パンのような焼成食品へのこのプロセスの適用は開示しておらず、食パンおよびその他の焼成食品の包装に用いられる従来のポリエチレン製プラスチック袋とは異なり、酸素透過度の低い特別の包装材が必要である。一般に、カビの成長を停止させるには、1%未満の低い残留酸素レベルが必要であり、これは、強力な酸素吸収剤を、包装された食品中の残留酸素を低いレベルに維持するための特別な包装材と組み合わせることによってしか達成することができない。
【0011】
カビの成長を抑制するための別の方法は、米国特許第7,198,810号に開示されている。この参考文献は、カビの成長を抑制するための手段として、特別の酵母株の使用および/または練り生地(および得られた食パン)中のエタノールのレベルを高いレベル(0.8%〜1.5%)へ上昇させるプロセスを開示している。食パン内のアルコールのレベルが高いことは、カビの成長を抑制する手助けとなり得るが、この方法は、食パンの品質に影響を与え、生産コストを著しく上昇させるプロセスおよびレシピの大きな変更を必要とするため、実施することは困難である。さらに、この方法によって得られるカビを生じない保存期間の増加量は、比較的小さい。
【0012】
焼成食品中へ微生物を植え付けることも、本技術分野にて公知である。例えば、PCT出願公開番号WO94/0019には、保護マトリックス中の生存微生物、特にプロバイオティクス乳酸菌を、焼成食品中へ注入することにより、健康に役立つ可能性のある生微生物を焼成食品へ添加するための方法について記載されている。米国特許第6,835,397号は、食品および飼料用途に使用するためのプロバイオティクス乳酸菌および酵母を含む脆弱な生物活性化合物の保護および放出制御を開示している。両参考文献ともに、食料品および飼料品中でのプロバイオティクス微生物の脆弱性、ならびに、加工中だけでなくそれに続くそのような食料品または飼料品の保存中もその生存能力を保護する必要性、を示している。
【0013】
カビの発生とは別に、食パンおよびその他の焼成食品の保存中に発生する食パンの新鮮さの喪失に関連するその他の望ましくない変化が存在する。長期間保存する間に、食パンの内相は固くなっていき、同時に焼きたてパンの風味が徐々に失われていく。マルトジェニックアミラーゼに基づく保存期間を延長させる酵素の導入および使用量の増量が、食パン内相の固化の問題の解決に大きく貢献してきたが、その結果として、カビの防止および食パンの風味喪失の防止に対するより効果的な対策がより強く求められるようになってきた。特別の包装材を用いて、酵母発酵、および焼成中のメイラード褐変反応によって生成される揮発性化合物の喪失を防止しない限りは、食パンを従来のポリエチレン製プラスチック袋に保存すると、発酵風味の多くはプラスチック袋を通してゆっくり放散して失われ、その結果風味が薄くなってしまう。非常に多くの特許が、焼きたてパンの味および風味の改良ならびに増大のための方法または組成物を開示しているが、これらの方法および組成物は、通常、食パンの保存中における揮発性風味化合物の喪失の防止には効果的ではない。従って、保存中にカビの成長を防止し、焼きたてパンの風味の喪失を阻止するためのより優れた、費用対効果のより高い方法が強く求められている。
【0014】
酸素の存在下にて酵母によってエタノールから生成されるアセトアルデヒドを含む多くの天然の揮発性物質が、抗真菌性および抗細菌性を有することが知られている。アセトアルデヒドを含む植物由来揮発性物質(plant volatiles)がカビを含む腐敗性微生物(decay microorganisms)の成長を阻害する効力が、Made S.et al(J.Agric.Food Chem. 2002,50,6371‐6377)によって報告されている。しかし、アセトアルデヒドは、その高い揮発性のために空気中へ急速に拡散することから、この目的に対する効果は限定的である。Almenar E. et al(J.Agric.Food Chem. 2007,55(17),7205‐7212)は、ベータ‐シクロデキストリンからのアセトアルデヒドの徐放および放出制御に基づく収穫後腐敗性真菌(post harvest decay fungi)を阻害する効果的な系について報告している。従って、徐放系に基づいて連続的にアルデヒドを発生させる効果的なカビ防止系が非常に興味深い。
【発明の概要】
【0015】
本発明は、焼成食品のカビを生じない保存期間を延長する方法であって、生酵母を焼成食品または焼成食品に用いられる包装材料に添加することを含む、方法に関し、ならびに、本発明の方法を用いて作製された焼成食品に関する。
【0016】
より詳細には、1つの態様では、本発明は、カビを生じない保存期間が延長された焼成食品を作製するためのプロセスに関し、このプロセスは、前記焼成食品を焼成し、前記焼成食品を酵母が生存するのに十分な低い温度まで冷却する工程;焼成後、前記焼成食品に生酵母を適用する工程;ならびに、前記焼成食品を閉じた袋内に包装して保存する工程、を含む。
【0017】
1つの態様では、カビを生じない保存期間の日数は少なくとも15日間である。別の態様では、カビを生じない保存期間の日数は15日間から25日間である。さらに別の態様では、カビを生じない保存期間の日数は25日間より長い。さらなる態様では、カビを生じない保存期間の日数は35日間より長い。別の態様では、カビを生じない保存期間の日数は40日間より長い。
【0018】
別の態様では、本発明は、改良された風味を有する焼成食品を作製するためのプロセスに関し、このプロセスは、前記焼成食品を焼成し、前記焼成食品を酵母が生存するのに十分な低い温度まで冷却する工程;焼成後、前記焼成食品に生酵母を適用する工程;前記焼成食品を閉じた袋内に包装して保存する工程、を含む。
【0019】
別の態様では、本発明は、カビを生じない保存期間が延長された焼成食品を作製するためのプロセスに関し、このプロセスは、前記焼成食品を焼成し、前記焼成食品を酵母が生存するのに十分な低い温度まで冷却する工程;焼成した後、生酵母溶液であってこの酵母によって発酵された糖を含有する溶液、を前記焼成食品に適用する工程;ならびに、前記焼成食品を閉じた袋内に包装して保存する工程、を含む。本発明の焼成食品は、様々な形態を取ってよい。前記焼成食品としては、これらに限定されないが、食パン、ロールパン、ピタパン、ドーナツ、クロワッサン、トルティーヤ、ベーグル、およびピザクラストが挙げられる。本発明の焼成食品は、様々な方法で作製することができ、オーブンで焼成すること、または油揚げ器(fryer)で揚げることを含む。本発明の焼成食品は、酵母発酵されていてよく、または化学発酵されていてもよい。1つの態様では、本発明の焼成食品は、包装される前にスライスされる。
【0020】
本発明のさらなる態様では、本発明の焼成食品は、非酵母主体のカビ防止剤をさらに含む。このようなカビ防止剤は、本技術分野で公知のいかなるカビ防止剤を含んでいてもよく、これらに限定されないが、プロピオン酸塩、ソルビン酸塩、安息香酸塩、パラベン、および培養細菌化合物が挙げられる。1つの実施形態では、培養細菌化合物は、サワードウ化合物であってよい。
【0021】
本発明の方法の1つの態様では、生酵母材料の適用は、焼成後に、酵母溶液を前記焼成食品の表面にスプレーまたは刷毛塗りすること、乾燥酵母を前記焼成食品の表面に刷毛塗りすること、包装後に焼成食品と接触する閉じた袋の内部もしくは上部に乾燥酵母または液体酵母溶液を吸着させること、焼成食品中に酵母溶液を注入すること、または、焼成食品の包装に用いられる閉じた袋内に含まれる別個のキャリアもしくは支持体中に生酵母溶液を含有させること、を含むいずれの数の方法によっても行われる。代表的な実施形態では、閉じた袋は、ポリエチレン製プラスチック袋である。
【0022】
生酵母は、焼成後に前記焼成食品に適用されるエッグウォッシュ(egg‐wash)、チョコレートフィリングもしくはカバー、ゼリーもしくはクリームのフィリングまたはカバー、の一部として適用することができる。
【0023】
本発明の方法の好ましい実施形態では、生酵母は、好ましくは、100cmあたり0.5から10mlの範囲の量で用いられる100mlあたり0.01〜20グラムの生酵母を含有する酵母溶液として、より好ましくは、100cmあたり1.5から2.5mlの範囲の量で用いられる100mlあたり0.1〜1グラムの生酵母を含有する酵母溶液として、焼成食品に適用される。
【0024】
本発明のさらなる態様では、生酵母は、ワイン酵母、ビール酵母、醸造用(distillers)酵母、パン酵母、およびプロバイオティクス酵母として用いられるサッカロマイセス属の酵母株を含む。
【0025】
本発明の焼成食品は、生酵母が生存能力を維持する従来のいかなる温度でも保存することができる。1つの実施形態では、焼成食品は、周囲温度で保存される。
【0026】
本発明の方法は、焼成食品を越えて飼料品およびその他の食料品を含むように拡張することができる。別の態様では、本発明は、食料品または飼料品のカビを生じない保存期間を延長するためのプロセスを含み、このプロセスは、前記食料品または飼料品中の実質的にすべての植物性微生物細胞(vegetative microbial cells)を死滅させる手段として前記食料品または飼料品を加熱処理する工程;生酵母溶液であって、この酵母によって発酵された糖を含有する溶液を前記食料品または飼料品に適用する工程;ならびに、前記食料品または飼料品を閉じた袋内に包装して保存する工程、を含む。
【0027】
本発明は、焼成後に焼成食品に生酵母を適用することによって処理された焼成食品も含む。1つの実施形態では、本発明は、焼成後に、前記焼成食品50グラムあたり10億CFU未満の量で生酵母を適用することによって作製された焼成食品を含む。別の実施形態では、本発明は、焼成後に、前記焼成食品50グラムあたり100万から10億CFUの量で生酵母を適用することによって作製された焼成食品を含む。代表的な実施形態では、酵母は、サッカロマイセス・セレビシエ・バール・ブラウディ(Saccharomyces cerevisiae var boulardii)である。
【0028】
別の態様では、本発明は、焼成食品であって、焼成後に前記焼成食品のカビを生じない保存期間を改善するための手段として前記焼成食品の表面に生酵母を適用すること、前記焼成食品を閉じた袋に包装すること、および前記焼成食品を周囲温度で保存すること、によって作製された焼成食品を含む。
【0029】
さらなる態様では、本発明は、焼成食品であって、焼成後に前記焼成食品の風味を改良するための手段として前記焼成食品の表面に生酵母を適用すること、前記焼成食品を閉じた袋に包装すること、および前記焼成食品を周囲温度で保存すること、によって作製された焼成食品を含む。
【0030】
1つの実施形態では、本発明は、焼成後に焼成食品の表面に、1cmあたり酵母1CFU超の量で生酵母を適用することによって作製された焼成食品を含む。1つの態様では、酵母は、1cmあたり酵母50CFUから2億CFUの量で適用してよい。別の態様では、酵母は、1cmあたり酵母500CFUから2億CFUの量で適用してよい。さらに別の態様では、酵母は、1cmあたり酵母150,000CFUから250万CFUの量で適用してよい。
【0031】
さらなる実施形態では、本発明は、焼成後に、焼成食品の表面に、1cmあたり酵母1CFU超の量で、検出可能な量の生酵母を有する焼成食品を含む。1つの態様では、検出可能な酵母の量は、1cmあたり酵母50CFUから2億CFUであってよい。別の態様では、検出可能な酵母の量は、1cmあたり生酵母500CFUから20億CFUであってよい。さらに別の態様では、検出可能な酵母の量は、1cmあたり酵母5000CFUから2億CFUであってよい。さらに別の態様では、検出可能な酵母の量は、1cmあたり生酵母15,000CFUから250万CFUであってよい。別の態様では、検出可能な酵母の量は、1cmあたり酵母150,000CFUから250万CFUであってよい。代表的な実施形態では、焼成食品は、延長されたカビを生じない保存期間を有する。別の実施形態では、焼成食品は改良された風味を有する。
【0032】
1つの態様では、本発明の焼成食品は、1cmあたり生酵母5ナノグラムから20mgを含む量で生酵母を適用することができる表面を有する。別の態様では、1cmあたり生酵母0.5マイクログラムから20mgの量で生酵母を適用することができる。さらに別の態様では、1cmあたり生酵母15マイクログラムから0.25mgの量で生酵母を適用することができる。
【0033】
さらなる態様では、本発明は、焼成後に焼成食品の表面に検出可能な量の生酵母を有する焼成食品を含み、ここで、1週間の室温での保存の後、上昇したレベルの揮発性化合物が存在し、前記焼成食品の0.3から0.8%のレベルのエタノール、前記焼成食品1kgあたり25mg超のレベルのイソアミルアルコール、前記焼成食品1kgあたり10mg超のレベルのイソブチルアルコール、および焼成食品1kgあたり5mg超のレベルのアセトアルデヒド、を含む。
【0034】
さらなる態様では、本発明は、食料品または飼料品のカビを生じない保存期間を、エタノールも含有する生酵母溶液をそれにスプレーすることによって延長する方法を含む。さらなる実施形態では、エタノールは、発酵生酵母溶液を食料品または飼料品へ適用して食料品または飼料品を閉じた袋内へ包装する前に、糖を発酵することにより生酵母によって産生される。さらなる実施形態では、包装の前に生酵母およびエタノールを含有する溶液を食料品または飼料品へスプレーすることを用いることで、腐敗性微生物を阻害するアセトアルデヒド発生系として作用することにより、そのカビを生じない保存期間が延長される。
【0035】
さらなる態様では、本発明は、カビを生じない保存期間が延長された食料品または飼料品を作製するためのプロセスを含み、このプロセスは、生酵母および糖の溶液を調製して、糖の実質的な部分をエタノールへと発酵させる工程;前記発酵された生酵母溶液を前記食料品または飼料品に適用する工程;ならびに、前記食料品または飼料品を閉じた袋内に包装して保存する工程、を含む。
【0036】
このプロセスの1つの実施形態では、生酵母溶液は、1から10%の酵母および10%から20%の糖を含有し、発酵後に、0.1%から10%、より好ましくは0.5%から2.5%の量で食料品または飼料品へ適用される。代表的な実施形態では、生酵母溶液は、発酵後に、約10重量%のエタノールを含有する。別の実施形態では、生酵母溶液は、発酵後に、約5重量%のエタノールを含有する。さらに別の実施形態では、生酵母溶液は、約5重量%から10重量%のエタノールを含有する。他の実施形態では、生酵母溶液は、6重量%から10重量%のエタノール、7重量%から10重量%のエタノール、8重量%から10重量%のエタノール、または9重量%から10重量%のエタノールを含有していてよい。
【0037】
別の態様では、本発明は、食料品および飼料品の腐敗性微生物を阻害するためのアセトアルデヒド発生製品を含み、生酵母および糖の溶液を調製して、糖の実質的な部分をエタノールへと発酵させること;前記発酵された生酵母溶液を前記食料品または飼料品に適用すること;ならびに、前記食料品または飼料品を閉鎖容器内に包装して保存することを含む。
【0038】
1つの実施形態では、製品に適用される生酵母溶液は、1から10%の酵母および10から20%の糖を含有し、発酵後に、0.1から10%、または別の態様では0.5から2.5%の量で食料品または飼料品へ適用される。
【0039】
別の態様では、本発明は、オーブン、冷却機、スライサー、および袋詰め機(bagger)を持つ形式の、焼成食品を生産するための改良された生産ラインを含む。1つの代表的な実施形態では、この改良は、生酵母の溶液を焼成食品上へ適用するためのスプレー機を含む。別の態様では、本発明は、生産ライン上で焼成食品を生産するための改良された方法を含む。1つの実施形態では、この改良は、焼成食品がスライサーへ投入される前に、生酵母の溶液を焼成食品上へスプレーすることを含む。別の実施形態では、この改良は、焼成食品が袋詰め機へ投入される前に、生酵母の溶液を焼成食品上へスプレーすることを含む。
【0040】
別の態様では、本発明は、焼成食品のカビを生じない保存期間を延長するための、生酵母を含有する組成物を含み、ここで、この組成物は溶液であり、焼成食品の表面に適用される。別の態様では、本発明は、焼成食品のカビを生じない保存期間を延長するための、生酵母およびエタノールを含有する組成物を含み、ここで、この組成物は溶液であり、焼成食品の表面に適用される。1つの実施形態では、この組成物は、1重量%から10重量%の酵母を含有する。代表的な実施形態では、この組成物は、約10重量%のエタノールを含有する。別の実施形態では、この組成物は、約5重量%のエタノールを含有する。さらに別の実施形態では、この組成物は、約5重量%から10重量%のエタノールを含有する。他の実施形態では、この組成物は、6重量%から10重量%のエタノール、7重量%から10重量%のエタノール、8重量%から10重量%のエタノール、または9重量%から10重量%のエタノールを含有していてよい。さらに別の実施形態では、この組成物は、焼成食品に対して0.1重量%から10重量%の量で、または別の態様では、焼成食品に対して0.5重量%から2.5重量%の量で、焼成食品上に適用してよい。
【発明を実施するための形態】
【0041】
発明の詳細な説明
本発明の主たる目的は、食パン、ロールパン、ベーグル、ピザクラスト、小麦粉トルティーヤ、ケーキおよびマフィン、クロワッサン、ドーナツ、ならびにピタパンなどの焼成食品の保存中に、その品質を失うことなくカビの成長を阻害するための効果的な方法を提供することである。本発明のさらなる目的および利点は、特別の包装材、多大な設備投資、またはこのような焼成食品のプロセスおよびレシピの複雑な変更を用いることのない費用対効果の優れた方法でこれを達成することである。本発明の別の目的および利点は、焼成食品の味および風味を改良すること、ならびに通常このような焼成食品が保存される期間の間、魅力的な風味特性(flavor profile)を保持することである。本発明のさらなる目的および利点は、本発明の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【0042】
本発明は、食パン、ロールパン、ベーグル、ピザクラスト、小麦粉トルティーヤ、クロワッサン、ドーナツ、ピタパン、ケーキ、およびマフィンなどの焼成食品でのカビの成長を阻害するための新規な方法を提供する。本発明はさらに、このような焼成食品の風味を改良し、続いての閉じた袋内でのこのような焼成食品の保存中にこの風味を保持するための方法も提供する。驚くべきことに、焼成後の焼成食品の表面上に生酵母細胞を適用することによって、これらの成果を得ることができることが分かった。本発明の別の態様は、焼成後の生酵母の適用によって、カビを生じない保存期間が延長され、保存中の発酵風味が改良された焼成食品を作製するための方法を提供することである。本発明を用いることにより、いかなる閉鎖保存容器内においても、カビを生じない延長された保存を提供することができる。例えば、袋、箱(bin)、サイロ、貨車、またはその他の閉鎖保存容器における保存である。
【0043】
本発明を用いて広範囲にわたる種類の飼料品および食料品を保存することができるが、特に、食パン、ロールパン、ベーグル、ピザクラスト、クロワッサン、小麦粉トルティーヤ、およびピタパンを含む酵母発酵焼成食品に適している。このような焼成食品の作製は、小麦粉、水、塩、酵母、およびその他の原材料を混合して練り生地とし、これを分割してより小さいユニットに成形し、これらを発酵させてふくらませ(proofed)、オーブンで焼成して周囲温度まで冷却した後に(スライスして)閉じた袋内に包装することによって行われる。本発明は、保存中にカビの成長を抑制し、風味の喪失を阻止することによって、このような酵母発酵焼成食品の保存期間を延長する。本発明を用いて、プロピオン酸塩、ソルビン酸塩、安息香酸塩、またはパラベンのような化学保存剤と置き換えることができるが、既にカビ防止剤が添加されている焼成食品のカビを生じない保存期間をさらに延長することもできる。
【0044】
本発明は、焼成食品の焼成後、しかし閉じた袋への包装前に、焼成食品へ生酵母を添加することを含む。「生酵母」という用語は、糖のアルコールおよび二酸化炭素ガスへの嫌気発酵、ならびに酸素を消費する糖の好気代謝の両方を行う能力を有する酵母を意味する。このような生酵母細胞は、酵母選択寒天培地(YEP+クロラムフェニコール)を有するペトリ皿上でのCFU(コロニー形成単位)として計数することができる。ワインおよびビール酵母株、パン酵母株(サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae))、およびプロバイオティクス酵母株(サッカロマイセス・セレビシエ・バール・ブラウディ)のようなサッカロマイセス属の酵母株を含む、多くの酵母株を本発明で用いることができる。市販されている酵母のほとんどは純粋な培養物ではなく、少量の乳酸菌を含有している場合があるが、本発明で用いた場合には結果に影響を与えない。生の酵母(ブロック、バッグ、またはクリーム酵母)および乾燥酵母(インスタント乾燥酵母または活性乾燥酵母)のいずれも用いることができる。
【0045】
生酵母細胞は種々の方法で添加することができる。例えば、生酵母含有溶液を焼成食品の表面へ刷毛塗りするかまたはスプレーすることによって、生酵母細胞を適用することができる。別の選択肢として、生酵母の溶液を焼成食品中に注入するか、または包装後に焼成食品の表面と接触する袋上へスプレーすることができる。焼成食品の表面に生酵母を接触させる別の方法は、焼成食品の表面上へ刷毛塗りすることができるか、または焼成食品の包装に用いられる袋上へ(静電)吸着させることができる微細粉末へ粉砕された乾燥インスタント酵母を用いることである。従って、酵母は、焼成食品の表面上へ、もしくは焼成食品の包装に用いられて包装された焼成食品の表面と接触する袋上へ(活性もしくは活性化包装材(active or activated packaging))適用される液体酵母溶液として、または乾燥酵母として適用することができる。生酵母は、袋内の焼成食品とは別に含ませることもでき、例えば、生酵母細胞の溶液でスプレーされる食パンスライスの形態、または生酵母細胞の溶液でスプレーされた食パン内相の形態である。焼成食品の表面上へスプレーすることが好ましい方法であり、それは、この方法であれば、多くの場合既に適切なスプレー設備を有しているほとんどの大型製パン所において容易に実施可能であるためである。生酵母含有溶液の過剰な液体は、焼きたて焼成食品の乾燥表面によって素早く吸収される。生酵母含有溶液は、水以外の成分を含有していてよく、安定化剤、または装飾目的で用いられるエッグウォッシュまたはアイシングに使用される種類の成分が挙げられる。別の選択肢として、生酵母は、クリーム(例:シュークリーム)、ゼリー(例:ゼリードーナツ)、またはチョコレートフィリング(クロワッサン)として、焼成食品中に組み込むことができる。
【0046】
本発明では、焼成食品の内部または上部へ適用された際に、酵母が生存しており、生存し続けることが重要であることから、酵母含有溶液は冷却された状態が維持され、熱過ぎない焼成食品へ適用されることが好ましい。酵母は冷蔵庫温度において最も安定であるが、125Fを超える温度では急速に不活性化される。従って、冷却されている生酵母を、焼成食品が周囲温度まで冷却された後に、焼成食品の内部または上部へ適用することが好ましい。本技術分野および焼成の科学の当業者であれば、生酵母を焼成食品へ適用する際に、いつ焼成食品が十分に冷却されて酵母の死滅が避けられるのかを判断することができるであろう。生酵母を適用する好ましい方法は、冷却された酵母溶液を、100cmあたり0.5〜10ml、より好ましくは100cmあたり1.5〜2.5mlの量で焼成食品の表面上へスプレーすることによるものであり、一方、この酵母溶液は、水100mlあたり0.01から20グラム、より好ましくは0.1から1グラムの圧搾酵母またはインスタント乾燥酵母を含有する。通常の酵母は1グラムあたり10(圧搾酵母)から300億CFUを含むため、これは、1cmあたり5000CFU(0.5マイクログラム酵母)から2億CFU(20mg酵母)、より好ましくは1cmあたり150,000CFU(15マイクログラム酵母)から250万CFU(250マイクログラム酵母)を適用したこととおよそ同等ということになる。
【0047】
生酵母細胞が本発明に従って焼成食品の内部もしくは上部へ適用される前または後、閉じた袋内に包装されて周囲温度で保存される前に、それはスライスされてもよい(食パン、バンズ(buns)、ロールパンの場合)。「周囲温度」という用語は、製造業者、流通業者、および消費者による流通および保存のために焼成食品が通常保存される環境の温度を意味し、ほとんどの場合は室温である。「袋」および「閉じた袋」という用語は、食パンのような焼成食品の包装に通常用いられる袋を意味し、プラスチック袋、カバーフォイル袋(cover foil bags)、コーティングした紙袋、またはその他の不透過性もしくは半透過性袋などである。焼成食品を包装するために用いられるプラスチック袋は、LDPE(低密度ポリエチレン)から作られることが多く、通常は、プラスチック製タイラップ(plastic tie wraps)または「Kwik‐Loc」プラスチック製クロージャー(plastic closures)で閉じられる。このような袋は、ガスおよび蒸気の透過に対して中程度のバリア性しか持たず、ガス置換包装(MAP)で用いられる高バリア性プラスチック袋とは異なる。
【0048】
驚くべきことに、本発明に従って作製された閉じた袋内の焼成食品の周囲環境下での保存の間、カビの成長が抑制され、焼きたてパンに伴う魅力的な発酵風味が発生することが分かった。通常は、一般的に用いられるポリエチレン袋内に包装された焼きたてパンの発酵風味は、この袋がこのような揮発性風味化合物を逃がしてしまうために、次第に消滅する。本発明に従って作製された食パンの保存の間、揮発性風味化合物のレベルの上昇が見られ、同時に、ヘッドスペースガスクロマトグラフィによって、またはNexxTech呼気中アルコール分析器を用いることによって測定することができるように、エタノール、アセトアルデヒド、イソアミルアルコール、およびイソブチルアルコールなどの袋内の風味化合物のレベルが上昇する。従って、本発明に従って作製された食パンの保存中の生酵母による発酵風味の発生は、この種類の風味の通常の喪失を相殺している。驚くべきことに、通常のポリエチレン袋に包装された本発明に従って作製された焼成食品のカビを生じない保存期間の延長は、閉じた袋内の残留酸素含有量が低いことでは説明することができない。Mocon Pac Check(商標)ヘッドスペースアナライザー(Head Space Analyzer)を用いて、焼成食品の保存に用いられたポリエチレン袋のヘッドスペース内の残留酸素を測定したところ、ヘッドスペース内の酸素含有量に僅かな違いしか見られず、同時に、通常の、および生酵母で処理した食パンのいずれについても、袋のヘッドスペース内の残留酸素含有量が高く維持されていた(通常の空気の20.7%酸素に対して>17%酸素)。さらに、本発明の抗カビ効果は、袋の開け閉めの後、または焼成食品を新しい袋に再度包装した後であっても失われないことが分かった。このことは、本発明に従う食パンにおけるカビ成長の抑制は、高バリア性プラスチックが用いられて袋内の残留酸素が通常1%近辺に維持されるガス置換包装(MAP)と同様の低い酸素含有量をもたらす生酵母による袋のヘッドスペース内の酸素の消失からは説明することができないことを示唆している。
【0049】
別の驚くべき発見は、本発明の方法を用いて得られる抗カビ効果が、実際には達成が困難である焼成食品を生酵母で完全に被覆することに依存していないことであった。生酵母をスプレーした食パン1ローフおよび未処理の食パン1ローフを1つの同一の閉じた袋に一緒に包装した場合、続いての保存の間、両方の食パンともに、同一の延長されたカビを生じない保存期間を示すことが分かった。しかし、生酵母でスプレーされた食パンが包装されず、保存期間の間中プラスチックで覆っておくだけであった場合、抗カビ効果は失われた。これらの結果は、本発明による抗カビ効果は、焼成後に適用される生酵母によって生成される揮発性化合物と関連していることを示唆している。このような揮発性化合物は、本発明に従って作製された食パン内の風味化合物に対して見ることができるように、閉じた袋内の雰囲気を通して食パンのローフ全体に容易に再分配される。
【0050】
本発明は、生産ラインに組み込むことができる。当業者であれば、焼成食品を生産することができる設備、プロセス、およびレシピに無数の変更が存在することが理解されるであろう。本技術分野で公知の種類の卸売り用食パンのための基本的な製造ラインは、コンベヤーベルトで接続された種々の種類の設備を含むことができる。限定されない例として、製造ラインは、すべての原材料を合わせて混合し、よく練りこまれた練り生地(well‐developed dough)とするためのミキサー;練り生地を重量による均一片に分割し、この練り生地をボール状に丸め、次にこのボール状練り生地を短時間発酵させて、成形前にやわらかくする(relax)ための分割機(divider)/丸め機(rounder)/オーバーヘッド発酵基(overhead proofer);練り生地を焼成パン(baking pan)へ配置する前に、このボール状練り生地を円柱形状へと変形するための成形機;酵母が糖を二酸化炭素ガスへ変換することによってパン内の練り生地の体積を増加させるための発酵機(proofer);練り生地が膨張して許容される大きさの食パンへと焼成される高温のオーブン;焼成された食パンが、例えばスライスされるまでの1時間、冷却される冷却機;ならびに、食パンがスライスされ、閉じた袋へ収容されるスライサー/袋詰め機、を含むことができる。
【0051】
1つの実施形態では、本発明の生酵母溶液は、従来のスプレー設備によって焼成食品へ適用することができる。そのような設備は、生酵母の溶液を適用することができる(通常は、1.5ポンドの食パン1個あたり1%の酵母溶液を2〜5ml)。例えば、スプレー設備は、酵母溶液をスプレーノズルへ送るポンプ、および酵母溶液がノズルを通過する際にこれを微細に分散させるエアコンプレッサーを含むことができる。ノズルは、スプレーバー(spraying bar)上に搭載することができ、方向、容量などを調節して所望のスプレーパターンを得ることができる。ノズルは、ノズルの下を食パンが通過する時にのみスプレーが行われるように電気制御することもできる。スプレー設備は、生産ラインへ一体化することができ、または生産ラインのコンベヤーベルトの上に配置することができるカンチレバーを用いることで可動式とすることができる。好ましい実施形態では、食パンが冷却機から出た後、スライサーを通過する前に、生酵母溶液が食パンにスプレーされる。別の選択肢としての実施形態では、スライサーと袋詰め機との間で、生酵母溶液を食パンにスプレーすることができる。
【実施例】
【0052】
本発明を、以下に示す実施例でさらに十分に説明する。
【0053】
実施例1
食パンを、ノータイムストレート法(no‐time straight dough method)を用い、小麦粉(100%)、水(63%)、カノーラ油(2.5%)、砂糖(7%)、Eagleブロック酵母(Eagle block yeast)(3.5%)、塩(2%)、改良剤(improvers)(1.5% Fermaid XTR+0.25% Essential SOFT VI‐NS)、およびプロピオン酸カルシウム(0%または0.5%)を混合することによって作製した。これらの原材料をKemperスパイラルミキサーで混合(低速で2分間、高速で10分間)して練り生地とし(25℃)、これを15分間のフロアタイムの後、450グラムの練り生地片に分割し、これらを7分間のベンチタイム(bench time)の後に丸め、円柱形状に成形し、パンに入れ、112F/88%RHに設定した発酵箱内でその高さまで発酵させ(55〜65分間)、その後Nationalオーブンにて440Fで17分間焼成した。焼成後、ローフ(およそ375グラム)を室温にて1時間冷却し、25〜30℃の温度とした。ローフ体積を、ローフ体積測定器(loaf volume meter)により、菜種置換法を用いて測定し、これは再現性のあるパンカビによる汚染を得るためにも用いた。スプレーボトルを用いていくつかのローフに生微生物水溶液をスプレーした。すべてのローフをスライスし(スプレー後3〜5分以内)、ポリエチレン製プラスチック袋に入れてタイラップで閉じた。この食パンを室温(22℃)で保存し、4週間にわたって5〜10個のローフを調べることにより、カビの成長を評価した。
【0054】
生微生物を含有する溶液は以下のようにして調製した。インスタント乾燥酵母または凍結乾燥乳酸菌の1グラムを微温湯(100F)100mlでゆっくり湿潤させた。10分後、この溶液を攪拌し、完全に溶解させて溶液を均質化し、続いてこれを氷上で冷蔵温度まで冷却した。圧搾酵母の場合、ブロックまたはバッグ酵母1gを100mlの氷冷水に溶解した。この生微生物溶液をスプレーボトルに入れ、溶液3〜5ml(5ショット)を食パンの上部にスプレーし、約200cmの表面を被覆した。
【0055】
結果を次の表(表1)に示す。これらの結果は、試験したすべての酵母サンプルおよび種々の酵母株(パン酵母、ワインおよびビール酵母、ならびにプロバイオティクス酵母サッカロマイセス・セレビシエ・バール・ブラウディ)が、カビを生じない保存期間を延長させ、一方、純粋乳酸菌の凍結乾燥サンプルでは効果が無かったことを示している。結果はさらに、圧搾酵母の純粋培養物(無菌条件下にて糖蜜上で成長させ、遠心分離で回収した)が、少量の乳酸菌を含有する場合のある市販の酵母サンプルと同等の効果を有していたことも示している。これらの結果は、酵母がカビを生じない保存期間を延長する効果は、0.5%のプロピオン酸カルシウムを添加したものと同等であり、一方、生酵母スプレーと組み合わせて0.5%のプロピオン酸カルシウムを用いると、カビを生じない保存期間がさらに延長され、42日間を超える期間にわたって食パンのカビを防止するレベルであったことを示している。42日間の後は、食パンは、プラスチックバッグに包装されたものであっても、カビが成長しない状態まで完全に乾燥してしまう傾向にあることも分かった。
【0056】
【表1】

【0057】
実施例2
小麦粉トルティーヤの作製は、小麦粉(100%)、水(60%)、ショートニング(10%)、塩(2%)、砂糖(1%)、改良剤(1% Fermaid FLB)、SSL(0.3%)、およびベーキングパウダー(3%)を混合して練り生地とし(30℃)、これを55グラムの練り生地片に分割して12分間寝かせ、その後これらをプレスして直径約20cmのトルティーヤ形状とし、200℃に設定した家庭用トルティーヤホットプレスアンドオーブン(household tortilla hot press and oven)を用いて両面を焼成した。10個のトルティーヤを重ね、閉じたジップロック(Ziplock)袋へ入れた。包装する前に、重ねたトルティーヤのいくつかに、氷冷水100mlに対してEagleブロック酵母1グラムの溶液3〜5ccをスプレーした。他のトルティーヤのいくつかには、2.5%酵母および20%スクロースを含有し、30℃にて24時間発酵させてアルコールを生成させた生酵母溶液をスプレーした。包装したトルティーヤを周囲温度にて最大3週間保存し、カビスポットについて評価した。
【0058】
スポンジケーキの作製は、塩素化ケーキ用小麦粉(chlorinated cake flour)(100%)、砂糖(130%)、塩(2.5%)、粉末ホエー(10%)、ベーキングパウダー(4%)、全卵(140%)、卵黄(20%)、水(25%)、バニラパウダー(1.25%)のバッター(batter)を、Kitchen Aidブレンダー中、ワイヤアタッチメントを用いて、最大速で10分間泡立てることで行った。泡立てたバッター(0.5〜0.6cc/グラム)を円形のケーキパン(直径18インチ)中に秤量し(450グラム)、Nationalオーブンにて375Fで45分間焼成した。ケーキを冷却後、ケーキを閉じたプラスチック袋へ包装する前に、いくつかのケーキに、氷冷水100mlに対してEagleブロック酵母1グラムの溶液3〜5ccをスプレーした。他のいくつかのケーキには、2.5%酵母および20%スクロースを含有し、30℃にて24時間発酵させてアルコールを生成させた生酵母溶液をスプレーした。
【0059】
ケーキマフィンの作製は、塩素化ケーキ用小麦粉(75グラム)、パン用小麦粉(175グラム)、マーガリン(250グラム)、塩(5グラム)、卵(250グラム)、砂糖(250グラム)、ミルク(65グラム)、およびベーキングパウダー(8.5グラム)のバッターを、Kitchen Aidブレンダー中、パドルアタッチメントを用いて調製することで行った。カップをマフィン用パンに配置してこれに75グラムのバッターを入れ、Nationalオーブンにて410Fで16分間焼成した。焼成したマフィンを冷却後、マフィンを閉じたプラスチック袋へ包装する前に、いくつかのマフィンには、氷冷水100mlに対してEagleブロック酵母1グラムの溶液0.5〜1ccを各マフィンの上部へスプレーした。他のいくつかのマフィンには、2.5%酵母および20%スクロースを含有し、30℃にて24時間発酵させてアルコール(エタノール)を生成させた生酵母溶液0.5〜1ccを包装前にスプレーした。
【0060】
未処理の包装されたトルティーヤ、および酵母溶液をスプレーしたトルティーヤは、6日後にカビスポットを示したが、積み重ねたトルティーヤの上部に糖を発酵させた生酵母溶液をスプレーしたものは、袋内での15日間にカビスポットが出現することはなかった。
【0061】
未処理の包装されたスポンジケーキ、および生酵母溶液をスプレーしたスポンジケーキは、8日後にカビスポットを示したが、糖を発酵させた生酵母溶液をスプレーしたケーキは、3週間の間カビスポットを示さなかった。
【0062】
未処理のケーキマフィン、および生酵母溶液をスプレーしたケーキマフィンは、1週間以内にカビスポットを示したが、糖を発酵させた生酵母溶液をスプレーしたマフィンは、3週間超の間カビを生じなかった。
【0063】
これらの結果から、生酵母スプレーは、この酵母溶液が発酵された糖(アルコール)を含有する場合に、小麦粉トルティーヤ、スポンジケーキ、およびケーキマフィンのような化学発酵させた焼成食品のカビを生じない保存期間の延長に効果的であることが示される。
【0064】
実施例3
食パンを、実施例1で述べたプロセスおよびレシピを用いて作製し、100mlの水に対して0グラム、0.01グラム、0.1グラム、1グラム、10グラム、または20グラムの圧搾酵母を含有するEagleブロック酵母の溶液5mlをスプレーした。実施例1で述べたものと同一の手順を用いて、食パンをスライスし、包装し、カビスポットについて評価した。結果を以下の表2に示す。
【0065】
【表2】

【0066】
表の結果(表2)から、生酵母のレベルが低い場合であっても、カビを生じない保存期間の延長に効果的であることが示される。最適な結果は、0.1〜1グラムの酵母を含有する酵母溶液の3〜5mlをローフ上にスプレーして約200cmを被覆することによって得られると考えられる。0.1グラム/100ml以上の濃度の酵母溶液が、プロピオン酸カルシウムの0.5%溶液よりも優れた結果を示したことに留意されたい。
【0067】
実施例4
食パンを、実施例1で述べたプロセスおよびレシピを用いて作製した。100mlの氷冷水に対して1グラム(およそ100億CFU)のEagleブロック酵母の溶液5ml、または100mlの水に対して10グラムのLevucell SB(およそ2000億CFU)の溶液3mlを、実施例1で述べた手順を用いてこれらのローフにスプレーした。この結果、それぞれ5億CFU/ローフおよび60億CFU/ローフを有するローフが得られた。これらの食パンをプラスチック袋へ包装し、室温で保存し、カビの成長および生酵母細胞について評価した。1ローフあたりの生酵母細胞数を計数するために、スプレーによって被覆された外相領域200cmのうち合計で10cmを滅菌水中に均質化し、これをさらに滅菌水で希釈したものを調製した。生酵母細胞数を計数するために、滅菌条件下にて、外相領域の種々の希釈物1mlを、YEP+クロラムフェニコール寒天培地を含むペトリ皿に播種した。このプレートを30℃にてインキュベートし、2〜3日後に計数した。結果を以下の表3に示す。
【0068】
以下の結果は、水をスプレーしたローフ上(<1CFU/cm)では非常に少数の生酵母細胞しか検出できなかったのに対し、生酵母細胞をスプレーしたローフ上では高いレベルで検出することができた。第1日におけるローフ上の生酵母細胞の数は、食パンにスプレーされた生酵母細胞の数に近かった。最初の3日間の間に、生酵母細胞数はおよそ10倍の低下を見せるが、それ以降の食パンの保存の間には、さらなる低下はそれほど見られない。
【0069】
Levucell SBを用いる場合、このプロバイオティクス酵母株に対しては1食分の食パン(50グラム)あたり約10億CFUを達成することが可能である。驚くべきことに、この脆弱なプロバイオティクス酵母サッカロマイセス・セレビシエ・バール・ブラウディの大部分は食パンの外相上に生存し、食パン上への適用中およびその後の食パンの保存中にそのCFUはほとんど低下しないことが分かった。食パンに適用されたこのプロバイオティクス酵母の非常に優れた類似する生存率が、包装された食パンおよび包装されていない食パンの両方で観察された。
【0070】
【表3】

【0071】
実施例5
実施例1で述べたプロセスおよびレシピを用いて食パンを作製した。食パンをスライスし、生酵母をスプレーして種々の方法で包装し、実施例1で述べたものと同一の手順を用いてカビスポットの評価を行った。袋のいくつかを袋内部の残留酸素について、Mocon Pac Check(商標)ヘッドスペースアナライザーを用いて分析した。結果を以下の表4に示す。
【0072】
【表4】

【0073】
上記の表4に示した結果は、開放された袋内への包装または単に食パンをプラスチックで覆うだけでは、生酵母のスプレーによる抗カビ効果が著しく低下することから、食パンを閉じた袋内に包装することが、延長されたカビを生じない保存期間を得るために重要であることを示している。上部の外相領域のみにスプレーし、同時に抗カビ効果が食パンの全面で見られたことから、生酵母スプレーの抗カビ効果は、生酵母スプレーで食パンを完全に被覆することに依存しない。さらに、食パンの半分のみをスプレーすることにより、または、一方は未処理でもう一方は生酵母をスプレーした2個の食パンを1つの袋内に包装することにより、同一の食パンのすべての部分について、および同一の袋内のすべての食パンについて、カビを生じない保存期間が延長された。このことは、抗カビ効果が閉じた袋内の雰囲気を通して分配されることを示している。
【0074】
表5は、コントロール食パン(生酵母スプレーなし)および100ml中100グラムのEagleブロック酵母の1グラム溶液5mlをスプレーした食パンに対する袋内の残留酸素の結果を示す。
【0075】
【表5】

【0076】
生酵母でスプレーした食パンを収容する袋内の酸素含有量は、スプレーしていない食パンを収容する袋と比較して低い残留酸素含有量を示したが、その違いは小さく、残留酸素含有量は外気のそれに近かった。このことは、生酵母が多くの酸素を消費することができないこと、またはポリ袋の酸素に対するバリア性が低いことを示している。Age‐less(商標)酸素吸収剤を用いた別の実験では、食パンの包装に用いられる通常のポリ袋は、確かに酸素に対するバリア性が低いことが示された。いずれの場合でも、ガス置換包装(MAP)でのカビを生じない保存期間の延長には1%近辺の残留酸素含有量を要することから、袋内の酸素含有量は、生酵母による酸素の消費で抗カビ効果を説明するには高すぎると考えられる。
【0077】
実施例6
実施例1のプロセスおよびレシピを用いて食パンを作製し、すべての食パンにプロピオン酸カルシウムを用い、いくつかの食パン(試験)には5mlの生酵母溶液(水100mlに対して1グラムのEagleブロック酵母)をスプレーし、他の食パン(コントロール)にはスプレーを行わず、その後閉じたプラスチック袋内に包装した。ヘッドスペースGCを用いて、揮発性物質の組成、および閉じた袋内にこれらの食パンを保存する間のこれらの揮発性物質の変化を分析し、同時に、食パンの発酵風味を保存期間にわたって熟練した検査パネルにより比較した。食パン中のアセトアルデヒドを、Megazyme試験キットを用いて、またはGC‐MSにより測定した。ヘッドスペースGCの結果を次の表にまとめる(表6)。
【0078】
表6の食パン風味の表現は、1もしくは2人の検査員による食パン内相の発酵風味などの経時での風味強度の表現を表すものである。さらなる3点試験において、訓練していない15人の食味検査パネルが、周囲温度での7日間の保存の後、コントロールおよび試験食パンの風味の違いを認識することができた。結果は、非常に大きな違いを示し、通常「薄味で風味に欠ける」と表現されるコントロール食パンおよび「新鮮な発酵風味」と表現される試験食パンの風味の違いをほとんどすべてのパネリストが認識可能であった。従って、3点試験の結果から、表6に示す結果が確認される。
【0079】
表(表6)の結果は、コントロール食パンはその新鮮な発酵風味のほとんどを失い、一方試験食パンは魅力的な新鮮な発酵風味を23日間の保存期間にわたって維持したことを示している。コントロール食パンにおける発酵風味の喪失はヘッドスペースGCによっても示されており、イソアミルアルコールおよびイソブチルアルコールのレベルが、コントロール食パンでは保存期間の間に減少し、一方生酵母をスプレーした試験食パンでは、これらのレベルが一定もしくは僅かに上昇していた。類似の結果が、Megazyme試験キットおよびGC‐MSを用いたアセトアルデヒドでも見られ、試験食パンのアセトアルデヒドレベルは、コントロール食パンの20倍高いことが示された。食パン内相のエタノールレベル(食パン内相の水性抽出物にてHPLCにより測定)については、試験食パンのエタノールレベルが0.4%近辺にて一定で推移したのに対し、コントロール食パンのレベルは、23日間の保存期間にわたって半分を超える量が次第に減少したことが示された。試験食パンにおけるこのようなエタノールレベルは、米国特許第7,198,810号に記載のレベル0.8〜1.5%よりもかなり低いものである。
【0080】
【表6】

【0081】
イソアミルアルコール、イソブチルアルコール、アセトアルデヒド、およびこれらよりも低い度合いでのエタノールは、焼きたてパンの発酵風味の主成分であると考えられ、焼きたてパンにおけるこれらのレベルは、エタノールが3900mg/kg食パン、イソアミルアルコールが27.4mg/kg食パン、イソブチルアルコールが11.3mg/kg食パン、およびアセトアルデヒドが4.3mg/kgである(Maarse,1991 in Volatile compounds in Foods and Beverages,CRC Press)。これらの結果は、食パンの揮発性化合物の、このような化合物に対するバリア性の低い閉じたプラスチック袋を通しての保存中の喪失が発酵風味の喪失を引き起こし、一方生酵母をスプレーすることでこの喪失が阻止されることを示唆している。また、焼成後に適用される生酵母スプレーの抗カビ効果が、このような揮発性化合物の1もしくは2つ以上の生成と関連していることも示唆される。
【0082】
実施例7
実施例1のようにしてプロピオン酸カルシウムを含まない食パンを作製し、生酵母を焼成後に適用するための種々の方法を比較した。生酵母を適用しないコントロール食パンは、8〜9日後にカビを生じたが、圧搾酵母の1グラム/100cc溶液5mlをスプレーした食パンは、周囲温度での保存の25日後になってようやくカビスポットを示した。同量の生酵母を食パンへ注入した場合(小型シリンジを用いて10箇所の異なるスポットに、1グラム/100cc溶液10×0.5mlを適用)、カビを生じない保存期間はやはり25日間であった。同量の生酵母溶液(1グラム/100cc溶液5ml)を食パンの包装に用いたプラスチック袋の内部にスプレーした場合、カビを生じない保存期間は20日間であり、処理したプラスチック袋と食パンとの接触が抗カビ効果を得るのに十分であったことを示している。インスタント乾燥酵母を微細粉末へ粉砕し、刷毛を用いて食パンの表面に適用した場合、包装された食パンのカビを生じない保存期間は約17日間であった。同一の粉砕インスタント乾燥酵母粉末0.5グラムを用いて袋の内部を処理した場合(微細に粉砕された酵母粉末はプラスチック袋表面に吸着され、過剰の酵母は除去した)、カビを生じない保存期間は約14日間であった。食パンのスライス1枚(28グラム)に生圧搾酵母の10グラム/cc溶液1mlをスプレーし、このスライスをチーズクロス(cheese cloth)で包み、これを未処理食パンのスライスしたローフを入れたプラスチック袋内へ配置した場合、カビを生じない保存期間は約20日間であった。この処理食パンスライスの食パン内相20グラムを細かく崩し、未処理のスライスしたローフを入れたプラスチック袋内へ配置した場合、カビを生じない保存期間は約20日間であった。これらの結果はすべて、酵母溶液としてまたは微細に粉砕した乾燥酵母粉末として、食パンの表面もしくは内部に、または包装された食パンの表面と接触するプラスチック袋の表面に生酵母を焼成後に適用するこれらの代替方法が、カビを生じない保存期間の延長に効果的であることを示している。
【0083】
実施例8
実施例1で述べたプロセスおよびレシピを用いて食パンを作製し、生酵母をスプレーした食パンでレベルの上昇が見られた成分の1つであるアセトアルデヒドの抗カビ効果を試験した(実施例6参照)。アセトアルデヒドは非常に揮発性が高いが水溶性であることから、1%または10%の水溶液として食パン外相へ適用し、一方この食パンはその後直ちにプラスチック袋へ包装した。袋のいくつかを、密閉プラスチック容器内へはめ込んだ。この食パンを室温(22℃)で保存し、4週間にわたってカビの成長について評価した。
【0084】
【表7】

【0085】
この結果から、アセトアルデヒドは強いカビ防止効果を有するが、それは閉じた食パン袋を密閉容器内で保存する場合のみであって、閉じたプラスチック袋内に保存する場合はこの限りではないことが確認される。これらの結果より、通常の食パン用プラスチック袋のアセトアルデヒドに対するバリア性は良くなく、カビを生じない保存期間の延長を得るために密閉容器が必要である理由がこのことから説明されることが示される。酵母は、酸素が存在すれば、焼成食パン中に通常存在するアルコールを徐々にアセトアルデヒドに変換することができ、このことから、焼成後に生酵母を食パンにスプレーし、アセトアルデヒドに対するバリア性が完全ではないプラスチック袋内へ包装する場合に、カビを生じない保存期間が延長されることを説明することが可能である。
【0086】
実施例9
種々の市販の食料品および飼料品をプラスチック袋へ包装し、周囲温度で保存して、経時でのカビの成長を追跡した。製品のいくつかはそのまま包装し、いくつかには2.5%生酵母の溶液(製品100グラムに対して約1ml)をスプレーし、いくつかには、2.5%酵母および20%糖の溶液を30℃にて24時間インキュベートして糖の大部分をアルコールへ変換させることで得られた生酵母溶液(製品100グラムに対して約1ml)をスプレーした。30℃、24時間のインキュベーションにより、溶液内の実質的にすべての糖がエタノールへ変換された。従って、20%糖溶液が10%エタノールへと変換され、従って、スプレーは約10%(体積/体積)エタノールを含有していた。
【0087】
【表8】

【0088】
これらの結果は、試験したすべての食料品および飼料品のカビを生じない保存期間が、糖をアルコール(エタノール)へ発酵させた生酵母の溶液をスプレーすることで改善され、一方生酵母のスプレーは食パン以外には効果がないことを示している。食パンはアルコール(約0.4%エタノール)を含有する発酵食品であることから、生酵母溶液をスプレーすることで抗カビ効果を得るための重要な成分がエタノールであると結論付けられる。しかし、導入されるエタノールのレベルはそれ自体が抗カビ効果を有するには少なすぎ、従って、エタノールが酸素の存在下、生酵母により、カビ防止剤として20〜100倍の高い効果を有するアセトアルデヒドへ変換されることが示唆される。従って、生酵母は、酸素およびエタノールの存在下にて、種々の食料品または飼料品へ適用された場合に、カビの成長を阻害するアセトアルデヒド発生系として作用する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カビを生じない保存期間が延長された焼成食品を作製するためのプロセスであって、
a)前記焼成食品を焼成し、前記焼成食品を酵母が生存するのに十分な低い温度まで冷却する工程、
b)焼成後、前記焼成食品に生酵母を適用する工程、
c)前記焼成食品を閉じた袋内に包装して保存する工程、
を含む、プロセス。
【請求項2】
改良された風味を有する焼成食品を作製するためのプロセスであって、
a)前記焼成食品を焼成し、前記焼成食品を酵母が生存するのに十分な低い温度まで冷却する工程、
b)焼成後、前記焼成食品に生酵母を適用する工程、
c)前記焼成食品を閉じた袋内に包装して保存する工程、
を含む、プロセス。
【請求項3】
前記焼成食品が、オーブンで焼成されるか、または油揚げ器で揚げられる、請求項1または請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記焼成食品が、酵母発酵されるか、または化学発酵される、請求項1または請求項2に記載のプロセス。
【請求項5】
前記焼成食品が、食パン、ロールパン、ピタパン、ドーナツ、クロワッサン、トルティーヤ、ベーグル、およびピザクラストから成る群より選択される、請求項1または請求項2に記載のプロセス。
【請求項6】
前記焼成食品を包装前にスライスする工程をさらに含む、請求項1または請求項2に記載のプロセス。
【請求項7】
前記焼成食品が、プロピオン酸塩、ソルビン酸塩、安息香酸塩、パラベン、および培養細菌化合物から成る群より選択されるカビ防止剤を含有する、請求項1または請求項2に記載のプロセス。
【請求項8】
酵母溶液を前記焼成食品の表面にスプレーまたは刷毛塗りする工程、乾燥酵母を前記焼成食品の表面に刷毛塗りする工程、包装後に前記焼成食品と接触する閉じた袋の内部もしくは上部に乾燥酵母または液体酵母溶液を吸着させる工程、前記焼成食品中に酵母溶液を注入する工程、から成る群より選択される工程によって、前記生酵母が焼成後に適用される、請求項1または請求項2に記載のプロセス。
【請求項9】
前記生酵母材料が、前記焼成食品の包装に用いられる前記閉じた袋内に含まれる別個のキャリアまたは支持体中に含有される、請求項1または請求項2に記載のプロセス。
【請求項10】
前記生酵母が、焼成後に前記焼成食品に適用されるエッグウォッシュ、チョコレートフィリングもしくはカバー、ゼリーもしくはクリームのフィリングまたはカバー、の一部として適用される、請求項1または請求項2に記載のプロセス。
【請求項11】
前記生酵母が、好ましくは、100mlあたり0.01〜20グラムの生酵母を含有する酵母溶液として前記焼成食品に適用される、請求項1または請求項2または請求項7に記載のプロセス。
【請求項12】
前記酵母溶液が、100cmあたり0.5から10mlの範囲の量で用いられる、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記酵母溶液が、100mlあたり0.1〜1グラムの生酵母を含有する、請求項11に記載のプロセス。
【請求項14】
前記酵母溶液が、100cmあたり1.5から2.5mlの範囲の量で用いられる、請求項11に記載のプロセス。
【請求項15】
前記生酵母が、サッカロマイセス属の酵母株を含む、請求項1または請求項2または請求項7に記載のプロセス。
【請求項16】
前記焼成食品が、ポリエチレン製プラスチック袋に包装される、請求項1または請求項2に記載のプロセス。
【請求項17】
前記焼成食品が、周囲温度で保存される、請求項1または請求項2に記載のプロセス。
【請求項18】
食料品または飼料品のカビを生じない保存期間を延長するためのプロセスであって、
a)前記食料品または飼料品中の実質的にすべての植物性微生物細胞を死滅させる手段として前記食料品または飼料品を加熱処理する工程、
b)前記食料品または飼料品に生酵母を適用する工程、
c)前記食料品または飼料品を閉鎖容器内に包装および保存する工程、
を含む、プロセス。
【請求項19】
焼成食品であって、焼成後に、前記焼成食品50グラムあたり10億CFU未満の量で、サッカロマイセス・セレビシエ・バール・ブラウディを含む生酵母を適用することによって作製される、焼成食品。
【請求項20】
前記生酵母が、前記焼成食品50グラムあたり100万から10億CFUの量で適用される、請求項19に記載の焼成食品。
【請求項21】
焼成食品であって、前記焼成食品のカビを生じない保存期間を改善するための手段として焼成後に前記焼成食品の表面に生酵母を適用すること、前記焼成食品を閉じた袋に包装すること、および前記焼成食品を周囲温度で保存すること、によって作製される焼成食品。
【請求項22】
焼成食品であって、前記焼成食品の風味を改良するための手段として焼成後に前記焼成食品の表面に生酵母を適用すること、前記焼成食品を閉じた袋に包装すること、および前記焼成食品を周囲温度で保存すること、によって作製される焼成食品。
【請求項23】
前記焼成食品の表面上に1cmあたり1CFU超の酵母が適用される、請求項21または請求項22に記載の焼成食品。
【請求項24】
前記焼成食品の表面上に1cmあたり50CFUから2億CFUの酵母が適用される、請求項23に記載の焼成食品。
【請求項25】
前記焼成食品の表面上に1cmあたり500から2億CFUの酵母が適用される、請求項23に記載の焼成食品。
【請求項26】
前記焼成食品の表面上に1cmあたり150,000CFUから250万CFUの酵母が適用される、請求項23に記載の焼成食品。
【請求項27】
前記焼成食品の表面上に1cmあたり少なくとも1CFUの生酵母を検出することができる、請求項21または請求項22に記載の焼成食品。
【請求項28】
前記焼成食品の表面上に1cmあたり500CFUから20億CFUの生酵母を検出することができる、請求項27に記載の焼成食品。
【請求項29】
前記焼成食品の表面上に1cmあたり5000CFUから2億CFUの生酵母を検出することができる、請求項27に記載の焼成食品。
【請求項30】
前記焼成食品の表面上に1cmあたり15,000CFUから250万CFUの生酵母を検出することができる、請求項27に記載の焼成食品。
【請求項31】
前記焼成食品の表面上に1cmあたり150,000CFUから250万CFUの生酵母を検出することができる、請求項27に記載の焼成食品。
【請求項32】
1cmあたり5ナノグラムから20mgの量の生酵母が前記焼成食品の表面上に適用される、請求項21または請求項22に記載の焼成食品。
【請求項33】
1cmあたり0.5マイクログラムから20mgの量の生酵母が前記焼成食品の表面上に適用される、請求項32に記載の焼成食品。
【請求項34】
1cmあたり15マイクログラムから0.25mgの量の生酵母が前記焼成食品の表面上に適用される、請求項32に記載の焼成食品。
【請求項35】
室温にて1週間保存した後、上昇したレベルの揮発性化合物が存在する、請求項21または請求項22に記載の焼成食品。
【請求項36】
エタノールが、前記焼成食品の0.3から0.8重量%のレベルで存在する、請求項35に記載の焼成食品。
【請求項37】
イソアミルアルコールが、前記焼成食品1kgあたり25mg超のレベルで存在する、請求項35に記載の焼成食品。
【請求項38】
イソブチルアルコールが、前記焼成食品1kgあたり10mg超のレベルで存在する、請求項35に記載の焼成食品。
【請求項39】
アセトアルデヒドが、前記焼成食品1kgあたり5mg超のレベルで存在する、請求項35に記載の焼成食品。
【請求項40】
カビを生じない保存期間が改善された焼成食品であって、前記焼成食品の表面上に1cmあたり少なくとも1CFUの生酵母を検出することができる、焼成食品。
【請求項41】
前記焼成食品の表面上に1cmあたり500CFUから20億CFUの生酵母を検出することができる、請求項40に記載の焼成食品。
【請求項42】
前記焼成食品の表面上に1cmあたり5000CFUから2億CFUの生酵母を検出することができる、請求項40に記載の焼成食品。
【請求項43】
前記焼成食品の表面上に1cmあたり15,000CFUから250万CFUの生酵母を検出することができる、請求項40に記載の焼成食品。
【請求項44】
前記焼成食品の表面上に1cmあたり150,000CFUから250万CFUの生酵母を検出することができる、請求項40に記載の焼成食品。
【請求項45】
風味が改良された焼成食品であって、前記焼成食品の表面上にて、1cmあたり少なくとも1CFUの生酵母を前記焼成食品の表面上で検出することができる、焼成食品。
【請求項46】
前記焼成食品の表面上に1cmあたり500CFUから20億CFUの生酵母を検出することができる、請求項45に記載の焼成食品。
【請求項47】
前記焼成食品の表面上に1cmあたり5000CFUから2億CFUの生酵母を検出することができる、請求項45に記載の焼成食品。
【請求項48】
前記焼成食品の表面上に1cmあたり15,000CFUから250万CFUの生酵母を検出することができる、請求項45に記載の焼成食品。
【請求項49】
前記焼成食品の表面上に1cmあたり150,000CFUから250万CFUの生酵母を検出することができる、請求項45に記載の焼成食品。
【請求項50】
カビを生じない保存期間が延長された食料品または飼料品を作製するためのプロセスであって、
(a)生酵母および糖の溶液を調製し、前記糖の実質的な部分をエタノールへと発酵させる工程、
(b)前記発酵された生酵母溶液を前記食料品または飼料品に適用する工程、
(c)前記食料品または飼料品を閉鎖容器内に包装、および保存する工程、
を含む、プロセス。
【請求項51】
前記生酵母溶液が、1重量%から10重量%の酵母および10重量%から20重量%の糖を含有し、発酵後に適用される、請求項50に記載のプロセス。
【請求項52】
前記生酵母溶液が、前記食料品または飼料品の0.1重量%から10重量%の量で前記食料品または飼料品へ適用される、請求項51に記載のプロセス。
【請求項53】
前記生酵母溶液が、約10重量%のエタノールを含有する、請求項51に記載のプロセス。
【請求項54】
食料および飼料の腐敗性微生物を阻害するためのアセトアルデヒド発生製品であって、
(a)生酵母および糖の溶液を調製して、前記糖の実質的な部分をエタノールへと発酵させること、
(b)前記発酵された生酵母溶液を食料品または飼料品に適用すること、
(c)前記食料品または飼料品を閉鎖容器内に包装、および保存することを含む、
アセトアルデヒド発生製品。
【請求項55】
前記生酵母溶液が、1から10%の酵母および10から20%の糖を含有し、発酵後に適用される、請求項54に記載の製品。
【請求項56】
前記生酵母溶液が、食料品または飼料品上へ、前記食料品または飼料品の0.1から10重量%の量で適用される、請求項55に記載の製品。
【請求項57】
前記生酵母溶液が、食料品または飼料品上へ、前記食料品または飼料品の0.5から2.5重量%の量で適用される、請求項55に記載の製品。
【請求項58】
オーブン、冷却機、スライサー、および袋詰め機を持つ形式の、焼成食品を生産するための生産ラインであって、ここで、改良は、
生酵母の溶液を焼成食品上へ適用するためのスプレー機、
を含む、生産ライン。
【請求項59】
オーブン、冷却機、スライサー、および袋詰め機を持つ形式の生産ライン上で焼成食品を生産するための方法であって、ここで、改良は、
生酵母の溶液を焼成食品上へスプレーすること、
を含む、方法。
【請求項60】
さらなる改良が、
前記焼成食品がスライサーへ投入される前に、前記焼成食品上へ生酵母の溶液をスプレーすること、
を含む、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
さらなる改良が、
前記焼成食品が袋詰め機へ投入される前に、前記焼成食品上へ生酵母の溶液をスプレーすること、
を含む、請求項59に記載の方法。
【請求項62】
焼成食品のカビを生じない保存期間を延長するための、生酵母を含む組成物であって、ここで、前記組成物は溶液であり、前記焼成食品の表面に適用される、組成物。
【請求項63】
焼成食品のカビを生じない保存期間を延長するための組成物であって、
(a)生酵母、および
(b)エタノール、
を含み、ここで、前記組成物は溶液であり、前記焼成食品の表面に適用される、組成物。
【請求項64】
前記組成物が、1重量%から10重量%の酵母を含有する、請求項62または請求項63に記載の組成物。
【請求項65】
前記組成物が、約10重量%のエタノールを含有する、請求項62または請求項63に記載の組成物。
【請求項66】
前記組成物が、前記焼成食品上に、前記焼成食品の0.1重量%から10重量%の量で適用される、請求項62または請求項63に記載の組成物。

【公表番号】特表2011−510633(P2011−510633A)
【公表日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−544477(P2010−544477)
【出願日】平成21年1月28日(2009.1.28)
【国際出願番号】PCT/US2009/032240
【国際公開番号】WO2009/097333
【国際公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(507409966)ラルマン,インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】