説明

焼成食品の離型方法及び焼成食品離断器具

【課題】タコ焼きなどの焼成食品を焼成する際に、焼型からの被焼成物の離型を行うためのものにおいて、被焼成物の焼き付き部分を被焼成物を圧縮することなく焼型の型部内面から離断できるようにして、焼型からの被焼成物の離型をより確実に行うことができるようにした焼成食品離断器具を提供する。
【解決手段】焼成食品離断器具(A)は、焼型(4)の平面視円形の型部(40)に向けて進退させることができると共に型部(40)の周方向に回転させることができる回転基体(1)と、回転基体(1)が回転することにより、型部(40)の内面(41)に沿って回転できるように回転基体(1)に設けられている所要数の刃体(2)とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼成食品の離型方法及び焼成食品離断器具に関するものである。更に詳しくは、タコ焼きなどの焼成食品を焼成する際に、被焼成物の焼き付き部分を被焼成物を圧縮することなく焼型の型部内面から離断できるようにして、焼型からの被焼成物の離型をより確実に行うことができるようにした、焼成食品の離型方法及び焼成食品離断器具に関する。
【背景技術】
【0002】
タコ焼きなどの焼成食品は、店頭で焼成して販売される他、焼成装置で焼成したものを冷凍した冷凍食品としても販売されている。焼成食品の焼成に使用される焼成装置は、一般に大掛かりなもので、大量の焼成食品を自動的に焼成することができる。このような焼成装置としては、例えば特許文献1に記載の食品焼成装置がある。
【0003】
この食品焼成装置は、無端の移送路と、移送路上を循環しながら移送される焼型と、焼型に注入された液状生地を加熱し焼成する加熱手段と、焼型に塗油する塗油手段と、生地供給手段を備えており、加熱手段の終端部には回転ピンを有する食品回転手段を備え、焼き上がる前の状態の食品を焼型内で数回転がして全表面を万遍なく球状に焼き上げるもので、球形の食品の表面に帯状の線や合わせ目跡が残らず、手焼きに近い状態に焼き上げて商品価値を高めるというものである。
【0004】
また、前記焼成においては、食品が食品回転手段に到達する前に、食品を焼型と椀型の食品押さえ型本体で圧縮してほぼ球形に成形するようになっており、この際同時に食品押さえ型本体によって食品の焼き付き部分の離断が行われる(特許文献1の図9、図10参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平7−147879号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来の食品焼成装置には次のような課題があった。
すなわち、被焼成物である食品が焼型から離型しやすいようにするために、前記したように食品押さえ型本体によって食品の焼き付き部分の離断をするが、反面、食品が圧縮されることによって密度が一旦高くなり、圧縮力が解除されて食品が膨らむときに焼型との密着が強くなって、かえって離型しにくくなるという課題が生じていた。
【0007】
なお、前記以外にも、例えば回転体の回転中心とは偏心した位置に複数のピンを設け、これを被焼成物に突き刺して回転させ、これにより被焼成物を焼型と互いの表面をずらして離型しやすくする方法も考えられるが、被焼成物の焼きが不十分であればピンが利かないため被焼成物が回らず、焼きが過ぎればピンにくっついて焼型から脱落してしまうことが想定され、焼き加減の制御が極めて難しくなる。
【0008】
(本発明の目的)
本発明の目的は、タコ焼きなどの焼成食品を焼成する際に、焼型からの被焼成物の離型を行うものにおいて、被焼成物の焼き付き部分を被焼成物を圧縮することなく焼型の型部内面から離断できるようにして、焼き加減の緻密な制御を要することなく、焼型からの被焼成物の離型をより確実に行うことができるようにした、焼成食品の離型方法及び焼成食品離断器具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明が講じた手段は次のとおりである。
【0010】
本発明は、
型部を有する焼型で焼成した被焼成物の焼型に対する焼き付き部分に離断体を差し入れ、
離断体を型部の内面に沿って動かして、被焼成物の焼き付き部分を型部の内面から離断し、
焼型を反転し型部の開口部を下にして、被焼成物を落下させることにより焼型から離型させる、
焼成食品の離型方法である。
【0011】
本発明は、
型部を有する焼型で焼成した被焼成物において型部の内面近傍の焼き付き部分または被焼成物と内面との間に離断体を差し入れ、
離断体を型部の内面に沿って動かして、被焼成物の焼き付き部分を型部の内面から離断し、
焼型を反転し型部の開口部を下にして、被焼成物を落下させることにより焼型から離型させる、
焼成食品の離型方法である。
【0012】
本発明は、
平面視円形の型部を有する焼型で焼成した被焼成物において型部の内面近傍の焼き付き部分または被焼成物と内面との間に離断体を差し入れ、
離断体を型部の内面に沿って周方向へ動かして、被焼成物の焼き付き部分を型部の内面から離断し、
焼型を反転し型部の開口部を下にして、被焼成物を落下させることにより焼型から離型させる、
焼成食品の離型方法である。
【0013】
本発明は、
焼成食品の離型に使用する焼成食品離断器具であって、
焼型の平面視円形の型部に向けて進退させることができると共に型部の周方向に回転させることができる回転体と、
回転体が回転することにより、型部の内面に沿って回転できるように回転体に設けられている所要数の離断体と、
を備えている、
焼成食品離断器具である。
【0014】
特許請求の範囲及び本明細書にいう「離断体」の用語は、例えば刃、針金状のピン等を含むものである。離断体は、被焼成物と焼型の型部内面を離断できるものであれば、前記以外の形態を有していてもよい。
【0015】
特許請求の範囲及び本明細書にいう「焼成食品」としては、例えばタコ焼き、鯛焼き、今川焼きなど、小麦粉等を水で溶いて各種調味料や具を入れて焼型で焼いたもの、いわゆる乾熱調理によって焼成されたものがあげられる。
【0016】
(作用)
本発明に係る焼成食品離断器具の作用を説明する。なお、ここでは、説明で使用する各構成要件に、後述する実施の形態において各部に付与した符号を対応させて付与するが、この符号は、特許請求の範囲の各請求項に記載した符号と同様に、あくまで内容の理解を容易にするためであって、各構成要件の意味を上記各部に限定するものではない。
【0017】
焼成食品離断器具は、焼成食品を焼成する焼成装置において、焼成工程の後の離型工程に設けられている。
焼型(4)による被焼成物の焼成後、被焼成物(5)が入っている平面視円形の型部(40)に向けて焼成食品離断器具(A)を移動させ、焼型(4)の型部(40)の内面(41)に対する被焼成物(5)の焼き付き部分(50)に離断体(2)を所要深さに差し入れる。
【0018】
焼成食品離断器具(A)の回転体(1,3)を周方向へ所要角度で回転させ、離断体(2)を型部(40)の内面(41)に沿って周方向へ動かして、被焼成物(5)の焼き付き部分(50)を型部(40)の内面(41)から離断する。回転体(1,3)の周方向への回転は一方向のみとしてもよいし、往復させることもできる。周方向への回転角度は、各離断体(2)で焼き付き部分(50)を全周にわたり離断できれば、特に限定するものではない。
【0019】
焼成食品離断器具(A)を焼型(4)から離した後、焼型(4)を反転し、型部(40)の開口部(42)を下にして、被焼成物(5)を落下させることにより焼型(4)から離型させる。このとき、被焼成物(5)の焼き付き部分(50)は、あらかじめ型部(40)の内面(41)から離断されており、しかも、従来の装置と相違して被焼成物(50)を圧縮しないので、圧縮が解除されたときに被焼成物が膨らむことにより型部(40)内で引っ掛かることがなく、離型をより確実に行うことができる。また、離断体(2)による離断を行うには、被焼成物の焼き加減の緻密な制御も特に必要としない。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、タコ焼きなどの焼成食品を焼成する際に、焼型に対する被焼成物の焼き付き部分を、離断体によって被焼成物を圧縮することなく焼型の型部内面から離断できるので、被焼成物の焼き加減の緻密な制御も必要なく、焼型からの被焼成物の離型をより確実に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明を図面に示した実施の形態に基づき詳細に説明する。
図1は本発明に係る焼成食品離断器具と焼型を示した斜視説明図である。
【0022】
焼成食品離断器具Aは、金属製の回転基体1と、回転基体1の下部に設けられている同じく金属製の刃体2を備えている。刃体2は離断体であり、刃体2の表面には、生地の付着を防止するために、テフロン(登録商標)による表面加工が施されている。なお、焼成食品離断器具Aは、同時に加熱が行われる多数の焼型4にそれぞれ対応して同数設けられる。
【0023】
前記回転基体1は、ほぼ逆有底円筒形状に形成されており、円形の天部10の中心部には回転軸3の下端が固着されている。回転基体1と回転軸3は回転体を構成している。回転軸3の上部は、図示していない駆動装置に接続されている。
【0024】
この駆動装置は、回転軸3を軸周方向へ所要の回転角度で往復回動させることができると共に、後で説明する焼型4の型部40に向けて進退させることができる構造である。
駆動装置において前記動きをさせる構造は特に限定されるものではない。また、回転軸3を回動させる構造については、例えばエアシリンダーのロッドの進退動を回転軸3の回転に変えるクランク機構、モーターによる回転軸3の直接的または間接的なドライブなどの各種公知手段があげられる。
【0025】
前記刃体2は、回転基体1の下端部に周方向へ等間隔で四箇所に設けられている。刃体2の数は特に限定するものではない。各刃体2は、回転基体1の周壁11と同じ曲率で曲がった、ほぼ長方形の板状に形成されている。また、各刃体2の両側部の縁辺部と下端部の縁辺部は、内面側が斜面となった片刃状の刃部20が形成されている。
【0026】
各刃体2の外周面の径は、焼型4の型部40の内径よりやや径小となるように形成されており、各刃体2を型部40に入れて回転基体1を回転させると、各刃体2は型部40内面に沿って回転でき、刃部20によって被焼成物5の焼き付き部分50を切断できる。なお、各刃体2は、前記回転軸3に直接設けることもできる。
【0027】
前記焼型4は金属製(鉄製)であり、焼成食品であるタコ焼きの生地を入れて焼成するための型部40を備えている。型部40は、上部側(開口側)の内部空間形状がほぼ円柱形状であり、下部側(底部側)の内部空間形状がほぼ半球状である。
【0028】
(作用)
図2は被焼成物の離型方法を示し、(a)は被焼成物が焼成されている状態の説明図、(b)は被焼成物を焼型から離断している状態の説明図、(c)は焼型に受型を被せている状態の説明図、(d)は焼型と受型を反転させ、被焼成物を焼型から離型している状態の説明図、
図3は被焼成物の焼き付き部分を焼型の型部内面から離断している状態を示す図2(b)の拡大説明図である。
【0029】
焼成食品離断器具Aは、例えば焼成食品であるタコ焼きを焼成する焼成装置(図示省略)において使用するものであり、焼成工程の後の離型工程に組み込まれている。
【0030】
(1)焼型4による被焼成物5の焼成後、被焼成物5が入っている平面視円形の型部40に向けて焼成食品離断器具Aを駆動装置によって移動させ、焼型4の型部40に対する被焼成物5の焼き付き部分50(図2(a)参照)に刃体2を所要深さに差し入れる(図2(b)、図3参照)。
【0031】
(2)焼成食品離断器具Aの回転基体1を駆動装置によって周方向へ所要角度で往復回転させ、刃体2を焼型4の型部40の内面41に沿って動かして、被焼成物5の焼き付き部分50を型部40の内面41から離断する(図2(b)、図3参照)。
(3)焼成食品離断器具Aを焼型4から離す。その後、焼型4に焼型4とほぼ同じ形状の受型6を上側から合わせて両型部40、60が通じるようにする(図2(c)参照)。
【0032】
(4)焼型4と受型6を一体にした状態で上下反転させ、焼型4の開口部42を下に向けて、被焼成物5を落下させることにより焼型4から離型させ、受型6の型部60に落として移行させる。このとき、被焼成物5の焼き付き部分50は、あらかじめ焼型4の型部40の内面41から離断されており、その工程において被焼成物5を圧縮しないので、従来の装置のように圧縮が解除されたときに被焼成物が膨らむことにより型部内で引っ掛かることがなく、離型をより確実に行うことができる。
【0033】
なお、本明細書で使用している用語と表現は、あくまでも説明上のものであって、なんら限定的なものではなく、本明細書に記述された特徴およびその一部と等価の用語や表現を除外する意図はない。また、本発明の技術思想の範囲内で、種々の変形態様が可能であるということは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る焼成食品離断器具と焼型を示した斜視説明図。
【図2】被焼成物の離型方法を示し、(a)は被焼成物が焼成されている状態の説明図、(b)は被焼成物を焼型の型部内面から離断している状態の説明図、(c)は焼型に受型を被せている状態の説明図、(d)は焼型と受型を反転させ、被焼成物を焼型から離型している状態の説明図。
【図3】被焼成物の焼き付き部分を焼型の型部内面から離断している状態を示す図2(b)の拡大説明図。
【符号の説明】
【0035】
A 菓子離断器具
1 回転基体
10 天部
11 周壁
2 刃体
20 刃部
3 回転軸
4 焼型
40 型部
41 内面
42 開口部
5 被焼成物
50 焼き付き部分
6 受型
60 型部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
型部(40)を有する焼型(4)で焼成した被焼成物(5)の焼型(4)に対する焼き付き部分(50)に離断体(2)を差し入れ、
離断体(2)を型部(40)の内面(41)に沿って動かして、被焼成物(5)の焼き付き部分(50)を型部(40)の内面(41)から離断し、
焼型(4)を反転し型部(40)の開口部(42)を下にして、被焼成物(5)を落下させることにより焼型(4)から離型させる、
焼成食品の離型方法。
【請求項2】
型部(40)を有する焼型(4)で焼成した被焼成物(5)において型部(40)の内面(41)近傍の焼き付き部分(50)または被焼成物(5)と内面(41)との間に離断体(2)を差し入れ、
離断体(2)を型部(40)の内面(41)に沿って動かして、被焼成物(5)の焼き付き部分(50)を型部(40)の内面(41)から離断し、
焼型(4)を反転し型部(40)の開口部(42)を下にして、被焼成物(5)を落下させることにより焼型(4)から離型させる、
焼成食品の離型方法。
【請求項3】
平面視円形の型部(40)を有する焼型(4)で焼成した被焼成物(5)において型部(40)の内面(41)近傍の焼き付き部分(50)または被焼成物(5)と内面(41)との間に離断体(2)を差し入れ、
離断体(2)を型部(40)の内面(41)に沿って周方向へ動かして、被焼成物(5)の焼き付き部分(50)を型部(40)の内面(41)から離断し、
焼型(4)を反転し型部(40)の開口部(42)を下にして、被焼成物(5)を落下させることにより焼型(4)から離型させる、
焼成食品の離型方法。
【請求項4】
焼成食品の離型に使用する焼成食品離断器具であって、
焼型(4)の平面視円形の型部(40)に向けて進退させることができると共に型部(40)の周方向に回転させることができる回転体(1,3)と、
回転体(1,3)が回転することにより、型部(40)の内面(41)に沿って回転できるように回転体(1,3)に設けられている所要数の離断体(2)と、
を備えている、
焼成食品離断器具。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−296950(P2009−296950A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−155780(P2008−155780)
【出願日】平成20年6月13日(2008.6.13)
【出願人】(000139344)株式会社ワールド精機 (3)
【Fターム(参考)】