説明

焼成食品用艶出しクリーム

【課題】食パン、ロールパン等のパン類やパイ等の焼き菓子類の焼成食品の風味を劣化させること無く、安定性が良好で、生地表面への分散性が良く、しかも表示が義務化もしくは推奨されているアレルゲンを含まず、さらに食品添加物も含まない焼成食品用艶出しクリームを提供する。
【解決手段】蛋白純度が75%以上のえんどう蛋白を2〜10重量%含有し、クリーム全体中油脂を2〜30重量%含有し、20℃における粘度が20〜500cpsの水中油型乳化油脂組成物である焼成食品用艶出しクリームを生地に塗布して焼成し、食パン、ロールパン等のパン類やパイ等の焼き菓子類の焼成食品を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食パン、ロールパン等のパン類やパイ等の焼き菓子類などの焼成食品用生地に焼成前に塗布して用いる艶出しクリームに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、焼成食品の表面に艶を付与する方法として、焼成前の生地表面に溶き卵や糖類を塗布した後、焼成する方法や、焼成後に油脂を塗布又は噴霧する方法が行われていた。しかし、溶き卵を塗布した後に焼成する方法では、卵の品質のバラつきにより艶にムラが生じ均一な艶を安定して付与し難いという課題とともに、卵の持つサルモネラ菌による衛生面での課題があった。焼成前に糖類を塗布する方法や、焼成後に油脂を塗布又は噴霧する方法では、焼成食品の表面がべたつくという問題があった。
【0003】
これらの課題を解決するため、酵素分解タイプの分離大豆蛋白質、液状油脂を含有する水中油型乳化物からなる艶出し剤(特許文献1)、カゼイン含有蛋白、融点20℃以下の油脂を含み、蛋白質100重量部に対する糖類含量が120重量部以下である水中油型乳化物からなる艶出し剤(特許文献2)などが提案されている。しかし、特許文献1に記載の艶出し剤では、水への分散性が良く乳化力が強い酵素分解タイプの分離大豆蛋白を使用しているが、分離大豆蛋白は酵素分解により風味が劣化しているため、この艶出し剤を塗布した焼成食品の風味を損なう恐れがある。一方、特許文献2に記載の艶出し剤は、カゼイン蛋白を用いて薄膜を形成し且つ艶を出すためには溶融塩の使用が必要であるが、近年の消費者の安心・安全志向の高まりにより、溶融塩等の食品添加物を避ける傾向が強まっている。また、特許文献1の艶出し剤は食物アレルギーの原因(以下、「アレルゲン」という。)となる大豆蛋白を、特許文献2の艶出し剤は同じくアレルゲンである乳蛋白を使用しており、これらに対するアレルギーを持つ消費者は食することができないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−108616号公報
【特許文献2】特開2002−136258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、食パン、ロールパン等のパン類やパイ等の焼き菓子類などの焼成食品の風味を劣化させること無く、安定性が良好で、生地表面への分散性が良く、しかも表示が義務化もしくは推奨されているアレルゲンを含まず、さらに食品添加物も含まない焼成食品用艶出しクリームを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、えんどう蛋白を使用することで、焼成食品の風味を劣化させること無く、安定性が良好で、生地表面への分散性が良く焼成食品に使用した際に均一に付着でき、しかも表示が義務化もしくは推奨されているアレルゲンを含まず、さらに食品添加物も含まない焼成食品用艶出しクリームが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明の第一は、えんどう蛋白を含有し、さらにクリーム全体中油脂を2〜30重量%含有する焼成食品用艶出しクリームである。好ましい実施態様は、えんどう蛋白を2〜10重量%含有する上記記載の焼成食品用艶出しクリームである。より好ましくは、蛋白純度が75%以上のえんどう蛋白を含有する上記記載の焼成食品用艶出しクリームである。更に好ましくは、えんどう蛋白が酵素処理されたものでない上記記載の焼成食品用艶出しクリームであり、また、好ましくは、20℃における粘度が20〜500cpsである上記記載の焼成食品用艶出しクリームである。これら本発明の焼成食品用艶出しクリームは、水中油型乳化油脂組成物である。本発明の第二は、上記記載の焼成食品用艶出しクリームを表面に塗布後、焼成してなる焼成食品である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、食パン、ロールパン等のパン類やパイ等の焼き菓子類等の焼成食品の風味を劣化させること無く、安定性が良好で、生地表面への分散性が良く焼成食品に使用した際に均一に付着でき、しかも表示が義務化もしくは推奨されているアレルゲンを含まず、さらに食品添加物も含まない焼成食品用艶出しクリームを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明につき、さらに詳細に説明する。本発明の焼成食品用艶出しクリームは、えんどう蛋白を含有し、さらに油脂を焼成食品用艶出しクリーム全体中2〜30重量%含有することを特徴とする。
【0010】
本発明で用いるえんどう蛋白とは、えんどう豆の子実中に含まれる蛋白質のことを言い、一般的に使用されているものであれば特に限定されないが、黄色えんどう豆を原料として製造されたものが入手し易い点で好ましい。また、えんどう蛋白は、蛋白純度が75%以上であることが好ましい。蛋白純度が75%より低いと、えんどう豆の子実中に含まれるその他の成分の影響により良好な艶が得られない場合がある。蛋白純度を上げるには、大豆と同様に蛋白を分離し、精製すればよいが、一般的には原料となる完熟した黄色えんどう豆の子実を洗浄、乾燥し、外殻を取り除いた後、主に水を使用して蛋白質成分を抽出することにより得られる。
【0011】
本発明に使用するえんどう蛋白は、さらに濃縮後、噴霧乾燥や凍結乾燥等の乾燥処理を行い、粉末化したものが、作業性などの面から好ましい。
【0012】
前記えんどう蛋白の含有量は、焼成食品用艶出しクリーム全体中2〜10重量%が好ましく、3〜9重量%がより好ましく、4〜7重量%が更に好ましい。2重量%より少ないと、生地に塗布して焼成した際に均一に薄膜が形成されず良好な艶が得られない場合があり、10重量%より多いと、クリームの粘度が高くなり、やはり均一な薄膜の形成を阻害したり、薄膜が硬くなり焼成食品の食感を損なったり表面にヒビが発生したりする場合がある。
【0013】
本発明の焼成食品用艶出しクリームに使用するえんどう蛋白は、水への分散性・溶解性に優れ、乳化力も強いことから、大豆蛋白のように水への分散性・溶解性、乳化力の向上のために酵素分解処理を行う必要がない。通常、蛋白の酵素分解を行うと、苦味などが発生し風味が劣化する恐れがあるが、酵素分解処理を行う必要がないえんどう蛋白を使用することで風味の劣化が完全に防がれる。また、焼成食品に良好な艶を与えるためには、焼成食品表面で蛋白が均一な薄膜を形成することが必要であるが、蛋白の酵素分解を行うと低分子のペプチドやアミノ酸が生成し、均一な薄膜の形成を阻害する恐れがある。えんどう蛋白を焼成食品用艶出しクリームに使用すれば、酵素分解を必要としない為、均一な薄膜を容易に形成することができる。このように、本発明に使用するえんどう蛋白は酵素分解処理を行う必要はないが、酵素処理したものであってもよい。また、本発明で使用するえんどう蛋白は、大豆蛋白や乳蛋白のようなアレルゲンでないことから、より安心、安全である。
【0014】
本発明で用いる油脂としては、食用油脂であれば特に限定はなく、例えば、菜種油、大豆油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、サフラワー油、綿実油等の植物性油脂、或いは魚油等の動物性油脂が挙げられ、これらを水素添加、分別、エステル交換等の手法を用いて適宜処理したものを少なくとも1種用いることが出来る。しかし、良好な艶を得るためには、例えば、菜種油、大豆油、コーン油、サフラワー油、綿実油等、常温で液状の油脂が好ましい。
【0015】
本発明における油脂の含有量は、焼成食品用艶出しクリーム全体中2〜30重量%が好ましく、5〜20重量%がより好ましい。油脂の含有量が2重量%より少ないと、艶出しクリームの粘度が低くなり、焼成食品に使用した際に表面に十分に付着せず艶が不十分となったり、液ダレが発生し艶にムラができたりする場合がある。30重量%より多いと、クリームの安定性が悪くなったり、得られる艶がくすんだ艶となったり、艶出しクリームの粘度が高くなり、焼成食品に使用した際に均一に付着せず艶にムラができたりする場合がある。
【0016】
本発明の焼成食品用艶出しクリームには、焼成食品への焼き色付与を目的として糖類を使用することができる。該糖類の含有量は、焼成食品用艶出しクリーム全体中1〜10重量%が好ましい。1重量%より少ないと焼き色付与の効果が十分得られない場合があり、10重量%より多いとくすんだ艶となる場合がある。前記糖類としては、ブドウ糖や果糖等の単糖類、ショ糖、乳糖等の二糖類や単糖が3個以上結合したオリゴ糖類、糖のカルボキシル基が還元された糖アルコール類、デキストリン、水あめ等が例示できる。
【0017】
本発明の焼成食品用艶出しクリームは、水中油型乳化油脂組成物である。本発明の焼成食品用艶出しクリームには、水中油型乳化油脂組成物に一般的に用いられるポリリンサン塩やメタリン酸塩等のリン酸塩やクエン酸塩等の蛋白溶融塩、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、グリセリンモノ脂肪酸エステル、グリセリンジ脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコールエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及びレシチン等の乳化剤、ペクチン、グアーガム、キサンタンガム、タマリンドガム、カラギーナン、ローカストビーンガム、ジェランガム等の増粘剤、クエン酸、乳酸等の有機酸、有機酸塩及び炭酸水素ナトリウム等のpH調整剤、着香を目的とした香料等の食品添加物からなる群より選ばれる少なくとも1種を、表示が義務化もしくは推奨されているアレルゲンを含まない限りは使用しても良い。しかし、近年の消費者の食品添加物を避ける傾向を考慮し、前記のような食品添加物を使用しないほうが好ましい。本発明の焼成食品用艶出しクリームであれば、食品添加物を使用しなくても、クリームの安定性に優れ、焼成食品の風味を損なわず、焼成食品表面に均一に付着でき、良好な艶を与えることが可能である。
【0018】
本発明の焼成食品用艶出しクリームは、20℃における粘度が20cps〜500cpsであることが好ましく、20cps〜300cpsがより好ましく、20cps〜200cpsが更に好ましく、20cps〜150cpsが特に好ましい。20cpsよりも低いと、焼成食品に使用した際に表面に十分に付着せず艶が不十分となったり、液ダレが発生し艶にムラができたりする場合がある。500cpsより高いと、焼成食品に使用した際に均一に付着せず艶にムラができる場合がある。ここで、粘度の測定はB型粘度計(株式会社トキメック製)を用い、60rpm、ローターNo.2の条件で測定して得られる値である。
【0019】
本発明の焼成食品用艶出しクリームは、水中油型乳化油脂組成物中の油滴の平均粒子径が0.3〜3.0μmであることが好ましい。平均粒子径が3.0μmより大きいと、艶出しクリームの乳化が不安定となり水相部の分離などが生じる場合や、焼成食品に使用した際に得られる艶が不十分となる場合がある。0.3μmより小さいと、クリームの粘度が高くなり焼成食品に使用した際に均一に付着せず艶にムラができる場合がある。ここで、平均粒子径の測定は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920(株式会社堀場製作所製)を用いて測定できる。
【0020】
本発明の焼成食品用艶出しクリームは分散性が良い為、カゼイン含有蛋白を使用した焼成食品用艶出しクリームとは異なり、水中油型乳化油脂組成物に一般的に用いられるポリリン酸塩やメタリン酸塩等のリン酸塩やクエン酸塩等の蛋白溶融塩の添加を必要としない。これは、えんどう蛋白は、カゼインのようにミセル構造を形成しないと考えられることから、蛋白溶融塩を使用せずとも焼成食品表面で均一な薄膜が形成でき、良好な艶が得られると考えられる。近年の消費者の安心・安全志向の高まりにより、蛋白溶融塩等の食品添加物を避ける傾向が強まっていることから、蛋白溶融塩を必要としないえんどう蛋白を用いた本発明の焼成食品用艶出しクリームは、消費者にとって好ましいものである。
【0021】
本発明の焼成食品用艶出しクリームを焼成前の生地表面に付着させる方法としては、特に限定はされず、例えば、塗布、噴霧、浸漬等が挙げられる。塗布は、刷毛等の塗布手段を用いて生地表面に艶出しクリームを塗る方法である。噴霧は、噴霧装置を用いて生地表面に艶出しクリームを吹き付ける方法である。浸漬は、生地の全部又は一部を艶出しクリームに浸けて付着させる方法である。
【0022】
本発明の焼成食品用艶出しクリームを製造する方法には、特に限定はないが、以下に例を示す。まず、えんどう蛋白を含む水相と油相を攪拌混合して予備乳化した後、通常の製造工程(均質化、殺菌又は滅菌、冷却)を経て製造する。各工程条件を例示すれば、以下のとおりである。予備乳化は、例えば50〜70℃で10〜30分間行うが、簡単な攪拌機による混合でも良いし、TKホモミキサーのような高速攪拌機を使用しても良い。均質化は、一般的なホモジナイザーを用いて、通常1.0〜30.0MPaの圧力下で行う。均質化は、殺菌又は滅菌の前、殺菌又は滅菌の後のどちらで行っても構わないが、殺菌又は滅菌の前及び殺菌又は滅菌の後の両方で行うことが乳化安定性の面で好ましい。殺菌又は滅菌の方法としては、インジェクション式、インフュージョン式等の直接加熱、プレート式、チューブラ式、ジャケット式等の間接加熱等を用いることができ、UHT、HTST、バッチ式、レトルト、ジュール加熱等の加熱殺菌(又は滅菌)により殺菌(又は滅菌)処理を行うことができる。このようにして殺菌(又は滅菌)した乳化物を通常5〜10℃に冷却して、水中油型乳化油脂組成物である本発明の焼成食品用艶出しクリームを製造することができる。
【0023】
本発明の焼成食品用艶出しクリームを使用できる焼成食品には特に限定はないが、食パン、ロールパン、あんパン、クリームパン等のパン類、パイ、クッキー、栗饅頭、月餅等の焼き菓子等が、本発明の焼成食品用艶出しクリームを塗布して効果のある焼成食品として挙げられる。
【実施例】
【0024】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例において、「部」や「%」は重量基準である。
【0025】
<蛋白溶解時の分散性の評価>
実施例、比較例において焼成食品用艶出しクリームを作製した際、蛋白を水に添加し加熱溶解して水相部を作製した時の分散性を目視にて評価した。その際の評価基準は以下の通りである。○:容易に分散する、×:容易に分散しない。
【0026】
<蛋白溶解時の泡立ちの評価>
実施例、比較例において焼成食品用艶出しクリームを作製した際、蛋白を水に添加し加熱溶解した際の泡立ちを目視にて評価した。その際の評価基準は以下の通りである。○:泡立ちが少し認められるが、容易に消える、△:泡立ちが認められ、容易に消えない、×:泡立ちがかなり認められ、容易に消えない。
【0027】
<クリームの風味評価>
実施例、比較例で得られた焼成食品用艶出しクリームを5人の熟練したパネラーに試飲してもらい、風味を評価した。その際の評価基準は以下の通りである。○:風味が感じられるが、不快な風味は感じられない、△:不快な風味が少し感じられる、×:不快な風味が感じられる。
【0028】
<クリームの安定性評価>
実施例、比較例で得られた焼成食品用艶出しクリームを100ml容ガラスビーカーに80g移し、一晩静置した後のクリームの状態を目視にて評価した。その際の評価基準は以下の通りである。良好:固形分の沈殿や水相部の分離が認められない、沈殿:固形分の沈殿が認められる、分離:水相部の分離が認められる、ゲル化:一部ゲル化が認められ不均一である。
【0029】
<クリームの粘度評価>
実施例、比較例で得られた焼成食品用艶出しクリームの粘度を、B型粘度計(株式会社トキメック製)を用い、20℃温調、60rpm、ローターNo.2の条件で測定した。
【0030】
<ロールパン表面の艶評価>
実施例、比較例で得られたロールパン表面の艶の状態を目視で評価した。その際の評価基準は以下の通りである。◎:光沢が全卵よりも良好で且つ均一な艶がある、○:光沢が全卵と同等で且つ均一な艶がある、△:光沢が全卵よりも劣るが均一な艶がある、×:光沢が全卵よりも劣り不均一である。
【0031】
<総合評価>
各評価結果を基に、以下の基準で総合評価した。
○:クリームの安定性が良好で、他の評価項目が全て○以上のもの。
△:クリームの安定性が良好で、他の評価項目が全て△以上のもの。
×:クリームの安定性が沈殿、分離又はゲル化であるか、他の評価項目で×があるもの。
【0032】
(製造例1) えんどう蛋白酵素処理液Aの作製
水93.5部にえんどう蛋白(蛋白純度77%、オルガノ株式会社製「PP−CS」)6.5部を溶解させた水溶液(蛋白濃度5%)にプロテアーゼ(天野エンザイム株式会社製「プロテアーゼMアマノ」)0.005部を添加し、反応温度37℃で60分間反応を行った。その後、90℃で15分間の失活処理を行い、えんどう蛋白酵素処理液Aを得た。
【0033】
(製造例2) えんどう蛋白酵素処理液Bの作製
プロテアーゼ(天野エンザイム株式会社製「プロテアーゼMアマノ」)の使用量を0.025部にした以外は製造例1と同様にして、えんどう蛋白酵素処理液Bを得た。
【0034】
(製造例3) 大豆蛋白酵素処理液Aの作製
水94.1部に分離大豆蛋白(蛋白純度85%、株式会社KDMIインターナショナル製「ハーモニーJP200」)5.9部を溶解させた水溶液(蛋白濃度5%)にプロテアーゼ(天野エンザイム株式会社製「プロテアーゼMアマノ」)0.005部を添加し、反応温度37℃で60分間反応を行った。その後、90℃で15分間の失活処理を行い、大豆蛋白酵素処理液Aを得た。
【0035】
(製造例4) 大豆蛋白酵素処理液Bの作製
プロテアーゼ(天野エンザイム株式会社製「プロテアーゼMアマノ」)の使用量を0.025部にした以外は製造例3と同様にして、大豆蛋白酵素処理液Bを得た。
【0036】
(実施例1) 焼成食品用艶出しクリームの作製及び評価
表1に示した配合に従い、水84.2部にえんどう蛋白(蛋白純度77%、オルガノ株式会社製「PP−CS」)5.8部を60℃で溶解して水相部を作製した。この水相部に菜種油10部を添加し、予備乳化を20分間行った後、UHT滅菌機にて142℃で4秒間滅菌処理した。その後、5.0MPaの圧力で均質化処理を行った後、冷却機にて5℃まで冷却して容器に充填し、焼成食品用艶出しクリームを得た。その際、蛋白溶解時の分散性及び蛋白溶解時の泡立ちと、得られたクリームの風味、安定性、粘度について評価を行い、結果を表1にまとめた。
【0037】
さらに、焼成食品に用いたときの艶を評価するため、表2に示す配合に従って、以下のようにロールパンを作製した。ショートニングを除く原料をミキサーボールに入れて低速で3分間、中高速で5分間混捏した後、ショートニングを投入して低速で3分間、中高速で5分間混捏した。捏ね上げ温度は27℃とした。この生地を27℃で80分間発酵させた後、40gに分割し、ベンチタイムを20分間とった後、バターロール型(長さ約15cm、最大幅約3cmに延ばした生地を端から巻いた形)に成型した。その後、38℃、湿度85%で50分間ホイロ発酵を行った。ホイロ後の生地表面に、艶出しクリームを刷毛で約0.2g(塗布前後の重量差)塗布し、オーブン中200℃で7分間焼成し、ロールパンを得た。得られたロールパンの艶の状態を評価し、結果を表1にまとめた。
【0038】
(実施例2、3) 焼成食品用艶出しクリームの作製及び評価
表1に示した配合に従い、水相部としてえんどう蛋白酵素処理液A90部又はえんどう蛋白酵素処理液B90部を用いた以外は実施例1と同様にして焼成食品用艶出しクリームを得た。得られたクリームの風味、安定性、粘度について評価を行い、結果を表1にまとめた。さらに、実施例1と同様にして、得られたクリームを塗布して作製されたロールパンを得、得られたロールパンの艶の状態を評価し、結果を表1にまとめた。
【0039】
(比較例1) 焼成食品用艶出しクリームの作製及び評価
表1に示した配合に従い、水84.7部に分離大豆蛋白(蛋白純度85%、株式会社KDMIインターナショナル製「ハーモニーJP200」)5.3部を60℃で溶解して作製した水相部を用いた以外は、実施例1と同様にして焼成食品用艶出しクリームを得た。その際、蛋白溶解時の分散性及び蛋白溶解時の泡立ちと、得られたクリームの風味、安定性、粘度について評価を行い、結果を表1にまとめた。さらに、実施例1と同様にして、得られたクリームを塗布して作製されたロールパンを得、得られたロールパンの艶の状態を評価し、結果を表1にまとめた。
【0040】
(比較例2、3) 焼成食品用艶出しクリームの作製及び評価
表1に示した配合に従い、水相部として分離大豆蛋白酵素処理液A90部又は分離大豆蛋白酵素処理液B90部を用いた以外は、実施例1と同様にして、焼成食品用艶出しクリームを得た。得られたクリームの風味、安定性、粘度について評価を行い、結果を表1にまとめた。さらに、実施例1と同様にして得られたクリームを塗布して作製されたロールパンを得、得られたロールパンの艶の状態を評価し、結果を表1にまとめた。
【0041】
(比較例4) 焼成食品用艶出しクリームの作製及び評価
表1に示した配合に従い、水84.5部に乳蛋白濃縮物(蛋白純度82%、KERRY INGREDIENTS製「MILK PROTEIN CONCENTRATE9066」)5.5部を60℃で溶解して作製した水相部を用いた以外は実施例1と同様にして焼成食品用艶出しクリームを得た。その際、蛋白溶解時の分散性及び蛋白溶解時の泡立ちと、得られたクリームの風味、安定性、粘度について評価を行い、結果を表1にまとめた。さらに、実施例1と同様にして、得られたクリームを塗布して作製されたロールパンを得、得られたロールパンの艶の状態を評価し、結果を表1にまとめた。
【0042】
(比較例5) 焼成食品用艶出しクリームの作製及び評価
表1に示した配合に従い、水84.3部に乳蛋白濃縮物(蛋白純度82%、KERRY INGREDIENTS製「MILK PROTEIN CONCENTRATE9066」)5.5部とクエン酸Na0.2部を60℃で溶解して作製した水相部を用いた以外は実施例1と同様にして焼成食品用艶出しクリームを得た。その際、蛋白溶解時の分散性及び蛋白溶解時の泡立ちと、得られたクリームの風味、安定性、粘度について評価を行い、結果を表1にまとめた。さらに、実施例1と同様にして、得られたクリームを塗布して作製されたロールパンを得、得られたロールパンの艶の状態を評価し、結果を表1にまとめた。
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】

【0045】
(実施例4) 焼成食品用艶出しクリームの作製及び評価
表3に示した配合に従い、水87.5部にえんどう蛋白(蛋白純度77%、オルガノ株式会社製「PP−CS」)7.5部とグラニュー糖3部を60℃で溶解して作製した水相部を用い、菜種油を2部添加した以外は実施例1と同様にして焼成食品用艶出しクリームを得た。その際、蛋白溶解時の分散性及び蛋白溶解時の泡立ちと、得られたクリームの風味、安定性、粘度について評価を行い、結果を表3にまとめた。さらに、実施例1と同様にして、得られたクリームを塗布して作製されたロールパンを得、得られたロールパンの艶の状態を評価し、結果を表3にまとめた。
【0046】
(実施例5) 焼成食品用艶出しクリームの作製及び評価
表3に示した配合に従い、水81部にえんどう蛋白(蛋白純度77%、オルガノ株式会社製「PP−CS」)6部とグラニュー糖3部を60℃で溶解して作製した水相部を用いた以外は実施例1と同様にして焼成食品用艶出しクリームを作製した。その際、蛋白溶解時の分散性及び蛋白溶解時の泡立ちと、得られたクリームの風味、安定性、粘度について評価を行い、結果を表3にまとめた。さらに、実施例1と同様にして、得られたクリームを塗布して作製されたロールパンを得、得られたロールパンの艶の状態を評価し、結果を表3にまとめた。
【0047】
(実施例6) 焼成食品用艶出しクリームの作製及び評価
表3に示した配合に従い、水72.5部にえんどう蛋白(蛋白純度77%、オルガノ株式会社製「PP−CS」)7.5部を60℃で溶解して作製した水相部を用い、菜種油を20部添加した以外は実施例1と同様にして焼成食品用艶出しクリームを作製した。その際、蛋白溶解時の分散性及び蛋白溶解時の泡立ちと、得られたクリームの風味、安定性、粘度について評価を行い、結果を表3にまとめた。さらに、実施例1と同様にして、得られたクリームを塗布して作製されたロールパンを得、得られたロールパンの艶の状態を評価し、結果を表3にまとめた。
【0048】
(実施例7) 焼成食品用艶出しクリームの作製及び評価
表3に示した配合に従い、水69部にえんどう蛋白(蛋白純度77%、オルガノ株式会社製「PP−CS」)11部を60℃で溶解して作製した水相部を用い、菜種油を25部添加した以外は実施例1と同様にして焼成食品用艶出しクリームを作製した。その際、蛋白溶解時の分散性及び蛋白溶解時の泡立ちと、得られたクリームの風味、安定性、粘度について評価を行い、結果を表3にまとめた。さらに、実施例1と同様にして、得られたクリームを塗布して作製されたロールパンを得、得られたロールパンの艶の状態を評価し、結果を表3にまとめた。
【0049】
(実施例8) 焼成食品用艶出しクリームの作製及び評価
表3に示した配合に従い、水82部にえんどう蛋白(蛋白純度77%、オルガノ株式会社製「PP−CS」)7.5部とクエン酸Na0.5部を60℃で溶解して作製した水相部を用いた以外は実施例1と同様にして焼成食品用艶出しクリームを作製した。その際、蛋白溶解時の分散性及び蛋白溶解時の泡立ち、得られたクリームの風味、安定性、粘度について評価を行い、結果を表3にまとめた。さらに、実施例1と同様にして、得られたクリームを塗布して作製されたロールパンを得、得られたロールパンの艶の状態を評価し、結果を表3にまとめた。
【0050】
(実施例9) 焼成食品用艶出しクリームの作製及び評価
表3に示した配合に従い、水85部にえんどう蛋白(蛋白純度77%、オルガノ株式会社製「PP−CS」)2部とグラニュー糖3部を60℃で溶解して作製した水相部を用いた以外は実施例1と同様にして焼成食品用艶出しクリームを作製した。その際、蛋白溶解時の分散性及び蛋白溶解時の泡立ちと、得られたクリームの風味、安定性、粘度について評価を行い、結果を表3にまとめた。さらに、実施例1と同様にして、得られたクリームを塗布して作製されたロールパンを得、得られたロールパンの艶の状態を評価し、結果を表3にまとめた。
【0051】
(比較例6) 焼成食品用艶出しクリームの作製及び評価
表3に示した配合に従い、水59.5部にえんどう蛋白(蛋白純度77%、オルガノ株式会社製「PP−CS」)7.5部を60℃で溶解して作製した水相部を用い、菜種油を33部添加した以外は実施例1と同様にして焼成食品用艶出しクリームを作製した。その際、蛋白溶解時の分散性及び蛋白溶解時の泡立ち、得られたクリームの風味、安定性、粘度について評価を行い、結果を表3にまとめた。さらに、実施例1と同様にして、得られたクリームを塗布して作製されたロールパンを得、得られたロールパンの艶の状態を評価し、結果を表3にまとめた。
【0052】
(比較例7) 焼成食品用艶出しクリームの作製及び評価
表3に示した配合に従い、水90部にえんどう蛋白(蛋白純度77%、オルガノ株式会社製「PP−CS」)6部とグラニュー糖3部を60℃で溶解して作製した水相部を用い、菜種油を1%添加した以外は実施例1と同様にして焼成食品用艶出しクリームを作製した。その際、蛋白溶解時の分散性及び蛋白溶解時の泡立ち、得られたクリームの風味、安定性、粘度について評価を行い、結果を表3にまとめた。さらに、実施例1と同様にして、得られたクリームを塗布して作製されたロールパンを得、得られたロールパンの艶の状態を評価し、結果を表3にまとめた。
【0053】
【表3】

【0054】
(実施例10) 焼成食品用艶出しクリームの作製及び評価
冷凍パイシート(株式会社カネカ製)を室温に戻した後、縦約7cm、横約3cmのリーフ型の金型で切り抜いた。切り抜いたパイ生地に、実施例5、実施例6で作製した焼成食品用艶出しクリームを刷毛で塗布し、オーブンに入れ、200℃で10分間焼成した。焼成したパイ表面の艶の状態を評価した。その結果、実施例5、実施例6で作製した焼成食品用艶出しクリームを塗布して焼成したロールパンの評価時と同様、全卵よりも良好な艶が得られることを確認した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
えんどう蛋白を含有し、さらにクリーム全体中油脂を2〜30重量%含有する焼成食品用艶出しクリーム。
【請求項2】
えんどう蛋白を2〜10重量%含有する請求項1に記載の焼成食品用艶出しクリーム。
【請求項3】
蛋白純度が75%以上のえんどう蛋白を含有する請求項1又は2に記載の焼成食品用艶出しクリーム。
【請求項4】
えんどう蛋白が酵素処理されたものでない請求項1〜3の何れか1項に記載の焼成食品用艶出しクリーム。
【請求項5】
20℃における粘度が20〜500cpsである請求項1〜4の何れか1項に記載の焼成食品用艶出しクリーム。
【請求項6】
水中油型乳化油脂組成物である請求項1〜5の何れか1項に記載の焼成食品用艶出しクリーム。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載の焼成食品用艶出しクリームを表面に塗布後、焼成してなる焼成食品。