説明

焼成食品用食物繊維、およびそれを配合した焼成食品用小麦粉組成物

【課題】粗挽きふすまからなる焼成食品用食物繊維、およびそれを配合した焼成食品用小麦粉組成物、さらにその焼成食品用小麦粉組成物を使用して製造したパン類または小麦粉焼成食品の提供。
【解決手段】小麦粒(原麦)を開披して粗い外皮と粗い胚乳に分離する製粉の初期段階で発生する表皮を含んだ大きな塊から挽砕および胚乳部の剥離の各工程を経て胚乳部分がほとんど取り除かれたふすま片となった段階で、該ふすま片を篩いで篩目を通過する小サイズと篩目を通過しない大サイズとに分別し、小サイズを取り除き大サイズのみを回収して製造した粗挽きふすまであることを特徴とする焼成食品用食物繊維。焼成食品が、パン類または小麦粉焼成食品からなる。焼成食品用食物繊維を好ましくは重量比で3〜7%小麦粉に配合して焼成食品用小麦粉組成物。さらに、該小麦粉組成物を使用して製造したパン類または焼成小麦粉食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粗挽きふすまからなる焼成食品用食物繊維、およびそれを配合した焼成食品用小麦粉組成物、さらにその焼成食品用小麦粉組成物を使用して製造したパン類または小麦粉焼成食品に関する。
【背景技術】
【0002】
小麦粉の旧来の製粉方法は、石臼で挽いたものを篩にかけ、篩をすり抜けたもの(スルー)が小麦粉になり、篩切れなかったものはオーバーとなり、それは再度石臼で挽かれるか、もしくはそのままふすまとして処理されていた。つまりこの製粉方法で得られる小麦粉は、基本的には1種類しか存在せず、オーバーまで全て挽き込んだものが、いわゆる「全粒小麦粉」であった。この方法は簡単であるが、反面大きな欠点があった。つまり胚乳も表皮も同じように挽いてしまうので、小麦粉の中に小さなふすま片が混入し、それが小麦粉の色調、食味、そして食感を損ね、その結果として二次加工製品の外観が劣り、さらに、青臭いふすま臭も呈する。また、ふすまの粉砕性の悪さが影響して粒度構成にばらつきが生じ、その結果として二次加工時の作業性の劣ったものであった。この小さなふすま片の混入という問題を解消したのが、現代の製粉工場で実践されている「段階式製粉方法」である。
そして、最近では、段階式製粉方法の改良として、精麦機によって小麦の表皮を剥離して、前もって胚乳部と表皮を分離する前処理を施し、次いで前記表皮を剥離した小麦を段階式製粉工程に送るという製粉方法(特許文献1)も試みられているが、現在のところは限定的な導入にとどまっている。この精麦機では、表皮を細かく削りとるので、粗挽きふすまは得られない。
【0003】
ここで、製粉工程で分離されるふすまには、通常、胚芽や皮に近い胚乳も一部混在しており、製粉段階に応じてふすま片の大きさも細かいものになっていくが、一般に粗いふすまと細かいふすまを混ぜた形で市販されている。ふすまの従来の用途は食品としてではなく主に飼料としてであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−13014号公報
【特許文献2】特開2003−319747号公報
【特許文献3】特開昭54−14540号公報
【特許文献4】特開平5−304915号公報
【特許文献5】特開平11−313627号公報
【特許文献6】特開2005−245321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、小麦ふすまの特質である食物繊維、ビタミン、ミネラルに富み、かつ、低カロリーであることを有効に利用することを目的とする。
すなわち、本発明は、食物繊維、ビタミン、ミネラルに富み、かつ、低カロリーである焼成小麦粉食品用食物繊維、製パンに用いたときに、食物繊維、ビタミン、ミネラルに富み、かつ、低カロリーであるパン類に焼き上がる焼成小麦粉食品用小麦粉組成物、および食物繊維、ビタミン、ミネラルに富み、かつ、低カロリーであるパン類の提供を目的とする。
ふすまは栄養的には、例えば小麦ふすま100g当たり、食物繊維約50g(約50%)、カルシウム約100mg(牛乳の含有量に相当)、鉄約15mg(ゆでたほうれん草約750g(約2.5束分)の含有量に相当)、マグネシウム約520mg、亜鉛約11mgが含まれ、他にビタミンBとEの含有量が多いことからも分かるように、繊維、ミネラル、ビタミンに富むものである。最近、小麦ふすまは、最も濃縮された効果のある形でしかも人体に合うダイエタリー・ファイバーであることが見出され、脚光を浴びている。その繊維質などの不消化性成分が整腸作用を有し大腸癌抑制作用を有すること、血中コレステロールの低下作用により高血圧などの予防に効果があると考えられており、注目に値する。また、近年、特に先進諸国の食生活では不足しているとされる食物繊維の摂取量を増すために、表皮(ふすま)や胚芽も含む全粒粉やふすまを使用した食品が世界的に増える傾向にある。
しかしながら、パン類にふすま等の食物繊維を含ませると食味食感とも劣り、外観や加工時の作業性も良くなくなることが知られており、クラッカー、クッキーやビスケットなどの小麦粉焼成食品においても、食物繊維本来の生理効果である保水力のため、製造上で種々の問題があった。これを改良するために、食物繊維等を加工する方法等が提案されている。例えば、ふすまを美味に食する方法として、ふすまを蒸煮後、酸及び糖を加えて加熱乾燥する方法(特許文献3)、ふすまを熱変成を起こさない粉砕機により微粉化する方法(特許文献4)、ふすまに加水し、かつ任意に穀粉や澱粉を加えて、水分含量および炭水化物含量を調整後、臼で粉砕する方法(特許文献5)などがある。しかしながら、これらはいずれも、食物繊維を加工する特殊な工程が必要であり、あまり効率的な方法ではなかったし、作業性、風味、食感などの点において十分満足のいくものではなかった。
【0006】
小麦の「全粒粉」は、小麦全体を丸ごと挽きこんだもので、全粒粉が脚光を浴びるようになった理由は、ふすまには食物繊維やビタミン、ミネラルなどが豊富に含まれるので、この表皮部分を取り込むことで、小麦粉に機能性を持たせることができるからである。しかし、全粒粉には、(1)全粒粉だけでパン等を焼くと十分に膨らまない、(2)小麦粉のみの食品に比べて食味が良くない、(3)保存性が悪い、などの問題点がある。この点を改良するため、小麦から胚乳部を除いた残部を乳酸菌等により発酵させて発酵体をつくり、これを製パン時に胚乳部からなる小麦粉に混入することを特徴にする全粒粉パンの製法(特許文献2)などがあるが、作業が複雑であり、膨らみ、風味、食感などの点においても十分満足のいくものではなかった。
そこで、本発明は、パン類や小麦粉焼成食品等の焼成食品に用いたときに、食感(サクサク感)を増強し、臭覚(風味)および味覚(うまみ)が劣らない焼成小麦粉食品用食物繊維、および食感(サクサク感)を増強し、臭覚(風味)および味覚(うまみ)が劣らない焼成食品に焼き上がる焼成食品用食物繊維、それを配合した焼成食品用小麦粉組成物、および食感(サクサク感)を増強し、臭覚(風味)および味覚(うまみ)が劣らない焼成粉食品、特にパン類およびクラッカー、クッキーやビスケットなどの小麦粉焼成食品の提供を目的とする。
【0007】
また、ふすまやぬかを焙煎することにより、ふすま、ぬかに残存している糖質含量を実質的にゼロとし、この焙煎ふすままたは焙煎ぬかとグルテン及びおおばこ種皮(サイリウム)粉末を主成分とし実質的に糖質(デンプン)を含有しない食品素材(特許文献6)も提案されているが、それは、主にふすまの健康に関与する機能にのみ着目するものである。
本発明は、長期保存が可能な保存性を付与した焼成食品用食物繊維、およびそれを配合した保存性の改良された焼成食品用小麦粉組成物、およびその焼成食品用小麦粉組成物を使用して製造した保存性の改良されたパン類およびクラッカー、クッキーやビスケットなどの小麦粉焼成食品の提供を目的とする。
さらにまた、本発明は、パン類や小麦粉焼成食品等の焼成食品に用いたときに、食感(サクサク感)を増強し、臭覚(風味)および味覚(うまみ)が劣らない焼成小麦粉食品用食物繊維、および食感(サクサク感)を増強し、臭覚(風味)および味覚(うまみ)が劣らない焼成食品に焼き上がるばかりでなく、長期保存が可能な保存性を付与した焼成食品用食物繊維、それを配合した焼成食品用小麦粉組成物、および食感(サクサク感)を増強し、臭覚(風味)および味覚(うまみ)が劣らないのみならず保存性の改良されたパン類およびクラッカー、クッキーやビスケットなどの小麦粉焼成食品の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、小麦を全粒粉にすることによって食味が落ちるのは、表皮部分が粉砕されてしまうことに大きな原因があると考えた。シリアル(コーンフレーク)を例にとれば、袋上部の大きな塊はサクサクして歯切れの良い食感であるのに対し、底の方になってくると破片や粉っ気が多くなりあまりおいしくない。そこで、ふすまは、小麦の表皮の部分は、できるだけ大きな塊で残して利用することを考えた。本発明者らは、前記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は、以下の(1)ないし(6)に記載の焼成食品用食物繊維を要旨とする。
(1)小麦粒(原麦)を開披して粗い外皮と粗い胚乳に分離する製粉の初期段階で発生する表皮を含んだ大きな塊から挽砕(ばんさい)および胚乳部の剥離の各工程を経て胚乳部分がほとんど取り除かれたふすま片となった段階で、該ふすま片を篩いで篩目を通過する小サイズと篩目を通過しない大サイズとに分別し、小サイズを取り除き大サイズのみを回収して製造した粗挽きふすまであることを特徴とする焼成食品用食物繊維。
(2)焼成食品が、パン類または小麦粉焼成食品からなる(1)に記載の焼成食品用食物繊維。
(3)篩がステンレス製スクリーンからなる(1)または(2)に記載の焼成食品用食物繊維。
(4)篩が、目開き0.75mmの篩目を有し、この篩目を通過させることにより小サイズを取り除き、通過しないものを大サイズとして分別し回収することからなる(1)、(2)または(3)に記載の焼成食品用食物繊維。
(5)大サイズのみを回収した後、焙煎処理して焙煎粗挽きふすまとしたことを特徴とする(1)ないし(4)のいずれかに記載の焼成食品用食物繊維。
(6)焙煎処理が、150〜250℃の温度で、ふすまの水分が3〜7%になるまで焦がさないように行ったものである、(5)に記載の焼成食品用食物繊維。
【0010】
また、本発明は、以下の(7)および(8)に記載の焼成食品用小麦粉組成物を要旨とする。
(7)小麦粉に、(1)ないし(6)のいずれかに記載の焼成食品用食物繊維を配合したことを特徴とする焼成食品用小麦粉組成物。
(8)小麦粉に、重量比で3〜7%配合したことを特徴とする(7)に記載の焼成食品用小麦粉組成物。
【0011】
また、本発明は、以下の(9)に記載のパン類または小麦粉焼成食品を要旨とする。
(9)上記の(7)または(8)に記載の焼成食品用小麦粉組成物を使用して製造したパン類または小麦粉焼成食品。
【発明の効果】
【0012】
食物繊維、ビタミン、ミネラルに富み、かつ、低カロリーである小麦ふすまの特質を有効に利用した、焼成食品用食物繊維、およびそれを配合した焼成食品用小麦粉組成物、さらにその焼成食品用小麦粉組成物を使用して製造したパン類または小麦粉焼成食品を提供することができる。
本発明は、小麦粉を用いる二次加工食品が、パン類および小麦粉焼成食品である場合にその効果が顕著である。
胚乳の付着していないふすま片を篩いで篩い分け粒度調整した、粗挽きふすまの形態で用いることにより、パン類および小麦粉焼成食品製造に用いたときに、食感(サクサク感)を増強し、臭覚(風味)および味覚(うまみ)が劣らない焼き上がりを見せる焼成食品用食物繊維、およびパン類および小麦粉焼成食品製造に用いたときに、食感(サクサク感)を増強し、臭覚(風味)および味覚(うまみ)が劣らない焼き上がりを見せる焼成食品用小麦粉組成物、ならびに食感(サクサク感)を増強し、臭覚(風味)および味覚(うまみ)が劣らないパン類およびクラッカー、クッキーやビスケットなどの小麦粉焼成食品を提供することができる。
小麦ふすまとして、製粉工程で発生するふすま片のうち、できるだけ大きく、胚乳がほとんど付着していない粗挽きふすまを従来の小麦粉に配合することで、歯切れが良く食感に優れた美味なパン類および小麦粉焼成食品を製造することができる。粗挽きふすまとして、目開き0.75mmの篩目を通過させることにより小サイズを取り除き、通過しないものを大サイズとして分別し回収したものを使用したときに、より一層パン類および小麦粉焼成食品の品質が高まる。
【0013】
さらに、本発明の粗挽きふすまは、焙煎したふすまの形態で用いることにより、長期保存が可能な保存性を付与した焼成食品用食物繊維、およびそれを配合した保存性の改良された焼成食品用小麦粉組成物、およびその焼成食品用小麦粉組成物を使用して製造した保存性の改良されたパン類および小麦粉焼成食品を提供することができる。粗挽きふすまを焙煎して用いると、風味が増強され、焙煎による滅菌、害虫卵の死滅、含有水分の減少等により長期保存性が向上する。焙煎を150〜250℃の温度で、水分が3〜7%になるまで焦がさないように行ったふすまを使用するとより良好な効果が得られる。また、焙煎により香ばしい風味も加味されるので、より好ましい効果が得られる。
小麦ふすまの特質である食物繊維、ビタミン、ミネラルに富み、かつ、低カロリーであることを有効に利用することができ、小麦ふすまを焙煎することで保存性が改良されて長期保存が可能とすることができ、ふすまの粒度を調整することを併せて、食感(サクサク感)、臭覚(風味)および味覚(うまみ)を増強する小麦粉組成物の補助成分とすることができるのである。
焙煎粗挽きふすまは、焼成食品用、特にパン類および小麦粉焼成食品用の小麦粉組成物に好適であり、本発明の焙煎粗挽きふすまを添加した小麦粉組成物は製パン作業性が良好であるばかりでなく、保存性が良好であり、それを用いて作ったパンは、風味、外観、内相の色調が良好であり、食感上の欠点がなく、パンに要求される全ての性質を満たしている。特にサクサクとした食感にすぐれ、また噛みしめ感があり美味しい。そして、本発明のパン類は、小麦ふすまを含むため、食物繊維、ビタミン、ミネラルに富み、かつ、低カロリーであるので、健康に適した食品として有用である。クラッカー、クッキーやビスケットなどの小麦粉焼成食品においても同様である。
【0014】
すなわち、胚乳の付着していないふすま片の分別・粒度調整と焙煎処理を組み合わせた焙煎粗挽きふすまを用いることにより、パン類および小麦粉焼成食品製造に用いたときに、食感(サクサク感)を増強し、臭覚(風味)および味覚(うまみ)が劣らない焼き上がりを見せるばかりでなく、風味が増強され、焙煎による滅菌、害虫卵の死滅、含有水分の減少等により長期保存性が向上した、焼成食品用食物繊維、および焼成食品用小麦粉組成物、ならびに、食感(サクサク感)を増強し、臭覚(風味)および味覚(うまみ)が劣らない、かつ、風味が増強され、長期保存性が向上したパン類およびクラッカー、クッキーやビスケットなどの小麦粉焼成食品を提供することができる。
また、本発明の焼成食品用小麦粉組成物は、食塩、酵母、砂糖などの製パン用素材を添加し、パン用プレミクス粉とすることもできる。本発明の焙煎粗挽きふすま入り小麦粉組成物は、自動製パン器を利用するホームベーカリーにも好適に使用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】製粉工程の最初に採れる大きいふすま片とさらに挽砕(ばんさい)を進め、大きさは若干小さくなるものの、胚乳部分がほとんど取り除かれたふすま片のイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明における小麦とは、イネ科コムギ属の植物の頴果を指す。小麦は、大きく分けて胚乳(約83%)、表皮(約15%)、そして胚芽(約3%)の3つの部位に分かれる。小麦粉は、小麦から製粉により胚乳部分を取り出して粉にしたもので、さまざまな食品に加工して利用されている。小麦の表皮部分は「ふすま」と呼ばれ、主に飼料に、胚芽部分は健康食品もしくは飼料の一部に用いられている。
小麦の胚乳部分は小麦全体の83%程度あるが、これを表皮と完全に分離するのは困難で、実際に小麦粉になる部分は78%程度である。しかもこの約78%の部分もすべて同じ用途の小麦粉として利用されるものではない。胚乳の中心部はパンや麺にしたときに色調に優れ、食感もよいのでグレードの高い小麦粉とされ、一例を挙げれば、小麦粉となる部分は、大きく分けて、グレードの高い順に、1等粉(約62%)、2等粉(約12%)、3等粉(約4%)にとりわけられる。
そして、一般的なパン用小麦粉は、パン用小麦(硬質小麦)を製粉したものの中で、1等粉の部分が用いられている。
【0017】
現代の一般の製粉工場で実践されている「段階式製粉方法」は、最初は殻の部分が細かく砕けない程度に大きく割り、次にそれを目開きの大きなふるいにかけると、表皮を含んだ大きな塊はオーバーとなり、比較的小さな胚乳の塊だけがスルーとなる。つまりふすま片の混入を最小限に留め、胚乳を取り出すことができるのである。この一般的な製粉工程の要部は、ロール式粉砕と篩分けを多段階で組み合わせた工程の中で、胚乳と外皮部とを繰り返し分離し、製造するものである。原料となる小麦は、ロール挽砕の初期段階で、小麦粒(原麦)を開披して胚乳を粗い粒子の状態で取り出し、粗い外皮と粗い胚乳に分離するための段階、ついで粗い粒子の胚乳を細かく粉砕し、上がり粉と呼ばれる細かい粒子を得るための段階に大別され、さらにこれらの工程が多段階に細分化され、構成されている。そして細分化された各段階から得られた上がり粉をグルーピングにより多種類の小麦粉製品としている。通常1粒の小麦は40〜50種類程度の上がり粉に採り分けられ、それぞれの上がり粉の灰分量、たん白量、および二次加工適性などを勘案しながらグルーピングを行うことで、数種類の小麦粉製品が生産される。
【0018】
小麦粉は、概略で、原料の搬入、精選、調質、挽砕(ばんさい)、篩分け、純化、検査・包装・出荷の各工程を経て出荷される。以下必要な技術用語についてのみ説明する。
ストック(半製品):小麦から最終製品になる途中段階の原料。
ロール機 :小麦もしくは半製品を挽砕する機械。
シフター:1種類のストックを4〜6種類に篩分ける機械。つまり入口が一つで出口が4〜6ある。原則としてロール機を通過したストックは、シフターで篩分けられる。
次に、挽砕(ばんさい)工程とふるい分け工程、ならびに、ブランフィニッシャーについて説明する。
挽砕(ばんさい)工程:サイロに貯めておいた小麦あるいはストック(半製品)を、ロール機で砕いてゆく。ロール機を通して砕いた小麦は篩(ふるい)にかけられ、さらに何台もの複数種類のロール機にかけられる。この作業を繰り返すことで、小麦粉の粒がだんだん細かくなってゆく。
篩分け(ふるい分け)工程:ロール機で細かく砕いた小麦の粒は、シフターと呼ばれる大きなふるいにかけられる。但し小さなふすま片は軽いため、シフターではふるい分けきれないので、ピュリファイヤーという機械で風の力を利用して取りのぞく。その後また、ロール機、シフター、ピュリファイヤーと、この作業を何度も繰り返すことで、小麦粉が完成する。
ブランフィニッシャー:胚乳の付着したふすま片から胚乳を剥ぎとる機械。
ブランフィニッシャーは小麦のふすま片の内側に付いている胚乳部を、回転ビーターにより円周スクリーンに打ち付けながら剥離する機械である。上部入口より供給された原料は、回転ビーターにより円周スクリーンに打ちつけられながら、ふすまに付着している胚乳部を剥離する。ふすまはリード付ビーターにより排出口に送られる。剥離した胚乳部はスクリーンを抜け下部ホッパーを通って排出される。ここでのオーバーは他のロール機で処理されるか、もしくはそこでふすまとなる。またスルーはシフターで篩われる。小麦粒(原麦)を開披して粗い外皮と粗い胚乳に分離する製粉の初期段階で発生する表皮を含んだ大きな塊(これも「胚乳の付着したふすま片」と言えなくもないが)はもちろんのこと、胚乳の付着したふすま片は、製粉工程上は、付着している胚乳部分が多いときは再度ロール機で挽砕し、付着している胚乳が少なくなってくるとブランフィニッシャーで処理する。
【0019】
ふすまの特質について、ふすまは、上記したように、繊維、ビタミン、ミネラルに富み栄養学的に好ましいものである。しかし、特有の不快な臭い(青臭いふすま臭)を有し、通常ふすまを食品に加えると食感食味とも劣り、また、保存性も劣るとされてきた。
本発明において、「小麦製粉工程で発生する胚乳の付着していないふすま片」とは、小麦のふすま片の内側に付いている胚乳部を剥離しふすまと分離する装置として周知のブランフィニッシャー(剥離・選別機)を用いて胚乳部分を取り除く工程を経て得られる、胚乳がほとんど付着していない「ふすま」である。
そして、本発明の「粗挽きふすま」とは、ブランフィニッシャー(剥離・選別機)を用いて胚乳部分を取り除く工程を経て排出口に送られ、半円筒形のスクリーンを構成するステンレス製スクリーンで分別し、好ましくは目開き0.75mmの篩目を通過する小サイズと篩目を通過しない大サイズとに分別し、小サイズを取り除き大サイズのみを回収してなる粒度調整をした「ふすま」である。
ふすまは、小麦の表皮部を主体とした、小麦粉よりも粗粒の物質であり、通常、表皮部以外に胚芽及び製粉で粉にしきれなかった少量の胚乳も混入する。この従来のふすまの改質としては、市販のふすまを粉砕して粒径の細かいふすまとすることが技術常識であった(特許文献4,5など参照)が、本発明者は、これとは逆に、製粉工程で発生するふすま片のうち、できるだけ大きく、また胚乳がほとんど付着していない粗挽きふすまを小麦粉に配合することで、歯切れが良く食感に優れた美味な食品を製造することができることを発見したものである。
【0020】
本発明では、用いるふすま片に、胚乳がほとんど付着していないことが重要である。胚乳が付着しているものを用いると、焼き上がったときにその部分だけが固まり「コツコツ」とした硬い食感となり、食感を損ねる原因となるからである。
胚乳の付着したふすま片は、製粉工程上は、付着している胚乳部分が多いときは再度ロール機で挽砕し、付着している胚乳が少なくなってくるとブランフィニッシャーで処理する。ふすまの分別・粒度調整に用いる篩は特に制限はないが、通常、ブランフィニッシャーの排出口の半円筒形のスクリーンを構成するステンレス製スクリーン使用して分別・粒度調整が実施される。ステンレス製スクリーンとして、好ましくは目開き0.75mmの篩目を有し、この篩目を通過させることにより小サイズを取り除き、通過しないものを大サイズとして分別し回収する。本発明の小麦粉組成物を製造するに際し、小麦のふすまとして目開き0.75mmのステンレス製スクリーンを通過する粉状のものを取り除いた粗挽きふすま、すなわち、目開き0.75mmのステンレス製スクリーンを通過しない粗挽きふすまを使用すると、一層良好な結果が得られる。このように、粒径の大きいふすまのみを添加することで、小麦粉組成物を使用して製造したパン類およびクラッカー、クッキーやビスケットなどの小麦粉焼成食品が、よりサクサクとして歯切れがよいユニークな食感とすることが可能である。これとは逆に、粒径の細かいものを使用するとネチャネチャとした重い食感を与え、食感として劣るものとなる。
【0021】
本発明の粗挽きふすまを製造するために用いるブランフィニッシャーの使い方を説明する。ロール機とシフターを多段階で組み合わせた工程の中で、ブランフィニッシャーにより胚乳と外皮部とを繰り返し分離し、製造するものである。たとえば、ブランフィニッシャーが複数台あるとして、Br1、Br2、Br3、Br4、Br5・・・と符号を付ける。そしてストック(半製品)のひとつの流れとして、「Br1→4BCロール機→シフター4BC→Br2→5Bロール機→シフター5B→Br4」(ロール名、シフター名は略称、以下同様。)が例示される。製粉のスタートロール機1B(1st Break)で挽砕されると、1Bシフターに送られ、ふるいのオーバーは2Bロール、2Bシフターに運ばれ、それで一番粗いストックは3BCに送られる。以下にBr1からBr4までのストックの流れを説明する。
(1)3BCロールで処理されたストックの内、一番粗いストック(16Wの金網ふるいを通過しなかったもの)がBr1へ送られ処理される。
(2)Br1のオーバーは、4BCロールへ送られる。
(3)4BCロールで処理されたストックの内、一番粗いストック(20Wの金網ふるいを通過しなかったもの)がBr2へ送られ処理される。
(4)Br2のオーバーは、5Bロールへ送られる。
(5)5Bロールで処理されたストックの内、一番粗いストック(24GGの絹ふるいを通過しなかったもの)がBr4へ送られ処理される。
(6)Br4のオーバーは、ふすまとして回収される(ふすまになるストックの中では一番粗い)。
ここにBr1とBr2には目開き1.2mm、そしてBr4には目開き0.75mmのスクリーンが入っている。
【0022】
小麦製粉工程で発生する胚乳の付着していないふすま片を、目開き0.75mmの篩目を有し、この篩目を通過させることにより小サイズを取り除き、通過しないものを大サイズとして分別し回収した「粗挽きふすま」は、Br4 のオーバーであり、これがふすまの採り口で一番粗いものである。ただし、同じ目開きであってもそこにやってくるストック(中間製品)の粒度、量によってそこに発生するオーバーは大きく左右される。この工程でトラップされるのは、すなわち、篩目を通過しない大サイズのものは、焙煎前の状態で10〜14%程度である。この工程における歩留まりの変動は、主として季節(気温)および小麦の粒径による。
製粉工程の最初では大きいふすま片が採れるが、これには胚乳も付着している。さらに挽砕(ばんさい)を進め、ふすまの大きさは若干小さくなるものの、胚乳部分がほとんど取り除かれる。これをイメージしたのが図1で、本発明で使用するふすま片は図1の右側にあるBr4のオーバー(Br1、Br4は上記に例示したブランフィニッシャー名の略語である。)である。
以上を基に、各実施例、および比較例で使用されたふすまは次のようになる。
実施例1で使用したふすまは、上記Br4のオーバーを焙煎処理したもの。
比較例3で使用した微粉ふすまは、ふすまとして処理される3つのストックの内、一番細かいもの。
比較例4で使用したふすまは、上記Br1のオーバーを焙煎処理したもの。
なお、Br1のオーバーは、Br1の処理によりある程度胚乳部分が剥離されているので、もしBr1で処理される前のストックを使用していたならば、実施例2との差はもう少し顕著になっていたはずである。
【0023】
焙煎の効果について、本発明では、粗挽きふすまを焙煎したものを用いることをさらなる特徴の一つとするものである。粗挽きふすまを焙煎することにより、ふすまの有する特異臭(青臭いふすま臭)がなくなり、焙煎による風味が増強されるばかりでなく、焙煎による滅菌、害虫卵の死滅、含有水分の減少等により長期保存性が向上する。
焙煎の手段について、焙煎処理は、通常の焙煎機、ホットプレート、オーブン、フライパンなどで行うことができる。焙煎温度は150〜250℃で、水分が3〜7%程度になるまで焦がさないように行うのが好ましい。焙煎時間は、小麦の種類や季節または製粉時の小麦の皮離れ向上の為の加水量等により変動する焙煎前のふすまの水分含有量や、処理量、焙煎装置等によって異なってくるが、例えば、150〜250℃で家庭用フライパンで約100g処理する場合、60〜100秒程度である。焦げると食味に悪影響を及ぼすのでよく撹拌しながら焦がさないように行うことが必要である。本発明での焙煎粗挽きふすまを配合することで、軽い食感や、香ばしい風味を好む日本人に好適な食品が製造できる。
【0024】
ふすまの配合割合について、本発明の粗挽きふすまを、重量比で3〜7%を小麦粉に添加するのが好ましい。混入率が3%未満であると、ふすまを含有しない食品との差異が明確に出ず、8%以上だとふすまの影響が大きくなりすぎ、食味、食感とも劣るように感じられる傾向が強い。しかし、個人の嗜好により混入率は適宜変更し得るものであり、これに限定されるものではない。
なお、焙煎ふすまは焙煎により水分が減少しているので、含有される実質的なふすま量は、焙煎しないふすまを同じ混入率で使用した場合の量より多くなると考えられる。
【0025】
本発明の焼成食品用小麦粉組成物とは、本発明の粗挽きふすまを小麦粉に配合したものであることを特徴とし、小麦粉に重量比で3〜7%配合したものが好ましい。
パン用の穀粉としては強力小麦粉を使うことが多いが、製造するパン類および小麦粉焼成食品の種類によって、もしくは食感上の特徴を出すなどの目的で、中力小麦粉、薄力小麦粉、デュラムフラワー、さらにはデュラムセモリナなどの小麦粉を使用する場合もある。また、栄養成分の増強や特徴のある色調、食感などを出すといった理由で、特殊な小麦から製粉した小麦粉も使用できる。本発明の焼成食品用小麦粉組成物は、小麦粉と本発明の粗挽きふすまを混合する方法により得ることができる。
【0026】
パン類およびクラッカー、クッキーやビスケットなどの小麦粉焼成食品の食感や風味、色調などに特徴を出したり、加工性を改良したりといった目的で、小麦粉以外の穀粉、澱粉などを混ぜて使用することがある。前記穀粉としては、ライ麦粉、トウモロコシ粉、米粉、大麦粉、オート麦粉などが挙げられる。前記澱粉としては、小麦澱粉、トウモロコシ澱粉、モチ種トウモロコシ澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、うるち米澱粉、片栗澱粉等の生澱粉や、これらの加工澱粉などが挙げられる。
ミックス粉として食塩や糖、イーストなどを添加する場合にも、前記質量比の計算にはそれら資材の質量は加えない。
【0027】
本発明の焼成食品であるパン類および小麦粉焼成食品としては、パン類、クッキー、ケーキ、クラッカーやビスケット等の焼き菓子類が好ましい。本発明の食物繊維は、焼成小麦粉食品である場合にその効果が顕著である。例えば、小麦粉食品であるうどんに本発明の食物繊維を練り込んで試食した場合、肯定的な感想がある一方、粗挽きふすまであるため、「咽がイガイガする」といったものなど評価は分かれた。
【0028】
本発明におけるパン類とは、小麦粉を主体とする穀粉と水(牛乳などを代替として使用することもある)、イースト、及びその他の資材(通常の製パンに用いられるものは、本発明のパンにも全て使用できる)を加えて捏ねることで生地を作り、醗酵させて焼く(蒸したり、油で揚げたりする場合もある)ことで製造する食品を指す。
代表的なパンとしては、食パン、ロールパン(バターロールなど)、食卓パン(コッペパン、ハンバーガーバンズなど)、ハースブレッド(フランスパン、ドイツパンなど)、菓子パン(メロンパン、アンパンなど)、デニッシュ、ペストリー、クロワッサン、揚げパン(カレーパン、ピロシキなど)、イングリッシュマフィン、フラットブレッド、ベーグル、蒸しパンなどが挙げられるが本発明のパンはこれらに限定されるものではない。
【0029】
また、本発明は、機械化および合理化の必要性がますます増えてきている工業的生産のみならず、自動製パン器や家庭用オーブン等を利用するホームベーカリーにも好適に使用できるものである。例えば、パン製造等に際して必要となる小麦粉・イースト、および砂糖・食塩・油脂・乳化剤・脱脂粉乳等を水中油型に微細乳化した製パン用乳化組成物の混合物からなる製粉メーカー用プレミックスのみならず、ホームベーカリー用プレミックスに本発明の粗挽きふすまを配合することにより、長期間保存することができ、またこれを用いることにより、製造作業性を大幅に簡便化することができる。
【0030】
以下に本発明の詳細および効果を実施例、比較例で説明する。本発明はこれらの実施例等によってなんら限定されるものではない。
【実施例1】
【0031】
(焼成食品用食物繊維の調製)
原料小麦をロール機に投入、その後篩い機(シフター)、ピュリファイヤーで胚乳粒と分離したふすま(大きいふすま片)をブランフィニッシャーで胚乳部分を取り除き、次いで、分別・粒度調整をして粗挽きふすまを得た。すなわち、実施例1で使用したふすまは、上記Br4のオーバーを焙煎処理したものである。すなわち、上記した「Br1→4BCロール機→シフター4BC→Br2→5Bロール機→シフター5B→Br4」の流れで、分別し回収したBr4 のオーバーである。用いたブランフィニッシャーの中に入っている半円筒形のスクリーンを構成するステンレス製スクリーンは、目開き0.75mmの篩目を有し、この篩目を通過させることにより小サイズ(粉状のもの)を取り除き、通過しないものを大サイズとして分別し粗挽きふすまを回収した。これがふすまの採り口で一番粗いものである。
この粗挽きふすま約100gを、家庭用フライパンで、焦がさないように撹拌しながら150〜250℃、約60〜100秒焙煎し、水分約3〜7%のパン用小麦粉組成物用添加物である焙煎粗挽きふすまを得た。
【実施例2】
【0032】
(焼成小麦粉食品用小麦粉組成物の調製、およびパン類の製造)
実施例1で得た「焙煎粗挽きふすま」を配合した小麦粉組成物を用い、以下に従って、自動製パン器によりパンを製造した。用いる自動製パン器の構成・製パン工程は通常知られている一般的なものである。
製パン材料組成:(重量部)
混合小麦粉100〔小麦粉(強力粉)93重量%+実施例1の焙煎粗挽きふすま7重量%〕
バター4、砂糖7、食塩2、ドライイースト1.2、水72
上記材料を混合後、自動製パン器にセットし、スタートボタンを押した。その後の作業工程は次の通りである。
(1) 混捏を約20分行った後、ドライイーストを投入。
(2) 35分間寝かせる。
(3) 混捏を更に10分間行う。
(4) 30〜35℃の温度帯にて135分間、発酵させる。
(5) 最後に発酵したパン生地を170℃程度で40分かけて焼き上げる。
【比較例1】
【0033】
製パン材料のうち、混合小麦粉100を「小麦粉(強力粉)100」のみとした以外は実施例2と同じ製パン材料組成で、同じ自動製パン器を用い、同じ作業工程によりパンを製造した。
【比較例2】
【0034】
製パン材料のうち、混合小麦粉100を「小麦粉(強力粉)55重量%+市販全粒粉45重量%」とした以外は実施例2と同じ製パン材料組成で、同じ自動製パン器を用い、同じ作業工程によりパンを製造した。市販全粒粉を45重量%にしたのは、実施例2と比較例2に含まれる食物繊維の割合をほぼ同じにするためであり、これにより両者の客観的な比較が可能となる。
【比較例3】
【0035】
製パン材料のうち、混合小麦粉100を「小麦粉(強力粉)93重量%+焙煎微粉ふすま7重量%」とした以外は実施例2と同じ製パン材料組成で、同じ自動製パン器を用い、同じ作業工程によりパンを製造した。比較例3で使用した微粉ふすまは、ふすまとして処理される3つのストックの内、一番細かいものである。すなわち、ここで使用した微粉ふすまの採り口は、次の通りである。つまり[0021](1)〜(4)までのストックの流れは同じであり、それ以降は次のようになる。
(5)5Bロールで処理されたストックの内、2番目に粗いストック(24GGの絹ふるいは通過するが、66GGの絹ふるいはオーバーとなるもの)がBr5へ送られ処理される。
(6)Br5のスルーは7Mシフターに送られる。
(7)7Mシフターで一番粗いストック(60GGの絹ふるいのオーバーとなるもの)がここで使用した微粉ふすまである。
【比較例4】
【0036】
製パン材料のうち、混合小麦粉100を「小麦粉(強力粉)93重量%+胚乳付焙煎粗挽きふすま7重量%」とした以外は実施例2と同じ製パン材料組成で、同じ自動製パン器を用い、同じ作業工程によりパンを製造した。比較例4で使用したふすまは、上記Br1のオーバーを焙煎処理したものである。製粉の初期段階で発生する大きな塊も「胚乳の付着したふすま片」と言えなくもないが、製粉工程上は、付着している胚乳部分が多いときは再度ロール機で挽砕し、付着している胚乳が少なくなってくるとブランフィニッシャーで処理する。そのため、比較例4の「胚乳付焙煎粗挽きふすま」は、上記した「Br1→4BCロール機→シフター4BC→Br2→5Bロール機→シフター5B→Br4」の流れのBr1で処理後のBr1のオーバー(図1の左側参照)であり、実施例1での「4BCロール機→シフター4BC→Br2→5Bロール機→シフター5B→Br4」処理をしないで、目開き1.2mmの篩目を通過させることにより小サイズ(粉状のもの)を取り除き、通過しないものを大サイズとして分別し回収した粗挽きふすまである。なお、Br1のオーバーは、Br1の処理によりある程度胚乳部分が剥離されているので、もしBr1で処理される前のストックを使用していたならば、実施例2との差はもう少し顕著になっていたはずである。
【実施例3】
【0037】
製パン材料のうち、混合小麦粉100を「小麦粉(強力粉)93重量%+未焙煎粗挽きふすま7重量%」とした以外は実施例2と同じ製パン材料組成で、同じ自動製パン器を用い、同じ作業工程によりパンを製造した。なお、この「未焙煎粗挽きふすま」は、実施例1での処理中、最後の焙煎処理のみを行っていない粗挽きふすまである。
【0038】
以下に、本願発明の具体的効果を示す。
(1)「パンとしての評価」
上記実施例2、比較例1〜4、および実施例3で製造したパンを、パン1(実施例2)、パン2(比較例1:小麦粉のみ)、パン3(比較例2:市販全粒粉入り)、パン4(比較例3:焙煎微粉ふすま入り)、パン5(比較例4:焙煎胚乳付粗挽きふすま入り)、パン6(実施例3:未焙煎粗挽きふすま入り)とし、それぞれ、食感(サクサク感)、味覚(うまみ)、臭覚(風味)を比較した。
「評価基準」
パン2(比較例1:小麦粉のみ)の食感(サクサク感)、味覚(うまみ)、臭覚(風味)を基準(3点)とし、他のパンをそれと比較して、5段階評価(1〜5点)で採点した。
テスター8人による個々のパンの評価結果を表1に、テスター8人の評価の平均を表2に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【0041】
「パンとしての評価の結果」
表2に示されるようにパンとしての、食感(サクサク感)、味覚(うまみ)、臭覚(風味)もその総合的評価も、本発明の焙煎粗挽きふすまからなるパン用小麦粉組成物用添加物を添加したパン用小麦粉組成物を用いて製造したパン(パン1:実施例2)が、最高点であった。
評価の順位は、パン1>パン6>パン5>パン2>パン4>パン3であった。
個々のパンについてのテスターの代表的なコメントは以下のようであった。
パン1(実施例2:焙煎粗挽きふすま入り)・・小麦の風味が強く、噛みごたえがある。(サクサクと感じるというテスターがいる一方、もっちりと粘りがあると表現するテスターもいた。)
パン2(比較例1:小麦粉のみ)・・標準的で、素直な美味しさ。
パン3(比較例2:市販全粒粉入り)・・よく膨れるが肝心の味が良くなく、苦みがある。
パン4(比較例3:焙煎微粉ふすま入り)・・少しぱさついた感じがあり、少しふすま臭が残る。これといった特長が不足。
パン5(比較例4:焙煎胚乳付粗挽きふすま入り)・・食べた後に少し「コツコツ」とした食感が気になる。
パン6(実施例3:未焙煎粗挽きふすま入り)・・パン1とよく似たコメント。
なお、今回のパンとしての評価は「ふすま」として製粉直後のふすまを用いたため、パン1(焙煎粗挽きふすま入り)とパン6(未焙煎未焙煎粗挽きふすま入り)との、パンの食味上の差異はそれほど大きくないが、パン1の方がより良好であった。
次に、焙煎による保存性に関する効果を示す。
【実施例4】
【0042】
(焙煎による滅菌効果及び長期保存性)
(イ)焙煎による滅菌効果をみるために、香川県産業技術センターで行った焙煎前後のふすまの分析結果は下記表3の通りであった。
【0043】
【表3】

このように、焙煎することによって水分は減少し、菌数も減少するので長期保存による劣化が防止される。
(ロ)長期保存後のパン用小麦粉組成物を用いて製造したパンの評価
本発明の実施例2と同様な「小麦粉(強力粉)93重量%+実施例1の焙煎粗挽きふすま7重量%」からなるパン用小麦粉組成物(A)と、実施例3と同様な、「小麦粉(強力粉)93重量%+未焙煎粗挽きふすま7重量%」からなるパン用小麦粉組成物(B)を、7ヶ月保存後、実施例2と同様に自動製パン器を用いパンを製造し、食味等を評価した。(A)は、食味等の変化、劣化はみられず、ふすまを含有しても保存性が良好であり、好ましいパンが製造できることが認められた。
一方(B)は、パンの焼き上がり時に「饐えた臭い」がした。これは、未焙煎のふすまの水分、菌類等による劣化が影響したものと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、従来主に飼料や肥料原料にしか利用されなかったふすまを好適な食品原料として使用できるものであり、資源の有効利用に大きく貢献する産業上の利用可能性の大きいものである。
そして、本発明の焼成食品は、食物繊維、ビタミン、ミネラルに富み、かつ、低カロリーである小麦ふすまを配合したので、健康に適した食品として有用である。さらに、本発明の粗挽きふすまを配合した小麦粉組成物は作業性が良好であるうえ、それを用いて作ったパン類または小麦粉焼成食品は、食味、食感、風味、外観等が良好であり、食感上の欠点がない。特に、焙煎した粗挽きふすまの形態で配合することにより、本発明の小麦粉組成物は長期保存が可能な保存性を具備したものとなる。
そして、サクサクとして歯切れがよいユニークな食感を有し、美味しいパン類および/または菓子類等の焼成小麦粉食品提供できる。
また、本発明の焼成食品用小麦粉組成物に、食塩、酵母、砂糖などの常用の副素材を添加し、プレミクス粉とすることもできる。また、本発明の焼成小麦粉食品用小麦粉組成物は、自動製パン器や家庭用オーブン等を利用するホームベーカリーにも好適に使用できるものであるので、個人の嗜好にも対応できる、産業上有用なものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
小麦粒(原麦)を開披して粗い外皮と粗い胚乳に分離する製粉の初期段階で発生する表皮を含んだ大きな塊から挽砕(ばんさい)および胚乳部の剥離の各工程を経て胚乳部分がほとんど取り除かれたふすま片となった段階で、該ふすま片を篩いで篩目を通過する小サイズと篩目を通過しない大サイズとに分別し、小サイズを取り除き大サイズのみを回収して製造した粗挽きふすまであることを特徴とする焼成食品用食物繊維。
【請求項2】
焼成食品が、パン類または小麦粉焼成食品からなる請求項1に記載の焼成食品用食物繊維。
【請求項3】
篩がステンレス製スクリーンからなる請求項1または2に記載の焼成食品用食物繊維。
【請求項4】
篩が、目開き0.75mmの篩目を有し、この篩目を通過させることにより小サイズを取り除き、通過しないものを大サイズとして分別し回収することからなる請求項1、2または3に記載の焼成食品用食物繊維。
【請求項5】
大サイズのみを回収した後、焙煎処理して焙煎粗挽きふすまとしたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の焼成食品用食物繊維。
【請求項6】
焙煎処理が、150〜250℃の温度で、ふすまの水分が3〜7%になるまで焦がさないように行ったものである、請求項5に記載の焼成食品用食物繊維。
【請求項7】
小麦粉に、請求項1ないし6のいずれかに記載の焼成食品用食物繊維を配合したことを特徴とする焼成食品用小麦粉組成物。
【請求項8】
小麦粉に、重量比で3〜7%配合したことを特徴とする請求項7に記載の焼成食品用小麦粉組成物。
【請求項9】
請求項7または8に記載の焼成食品用小麦粉組成物を使用して製造したパン類または小麦粉焼成食品。



【図1】
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【公開番号】特開2011−177101(P2011−177101A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−43879(P2010−43879)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(502135668)木下製粉株式会社 (1)
【Fターム(参考)】