説明

焼結多孔性構造物及びその製法

多孔度の非常に高い構造物を製造する簡単で安価な方法を提供する。この方法は、構造物の所望の強度、多孔性、孔構造を与える複数の要素で構造物を製造することと、それから要素を共に焼結して構造物を得ることを含む。更に、焼結された非球形要素からなる新規な焼結された多孔性構造物を提供する。特定の実施形態においては、成形されたグリーン要素及び多孔性構造物が同時に焼結される。更に、焼結された非球形要素からなる新規な焼結された多孔性構造物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼結多孔性構造物及びその製法に関する。
【背景技術】
【0002】
[政府後援に関する記述]
本発明は、米国エネルギー省よりローレンスバークレイ国立研究所の管理及び運営のためにザ、リージェンツ、オブ、ザ、ユニバーシティ、オブ、カリフォルニアに与えられた契約DE−AC02−05CH11231によって完成されたものであり、政府が本発明に関する一部の権利を所有するものである。
[発明の背景]
多孔性構造物は濾過から電気化学装置に至る広範囲の応用に使用されている。固体酸化物燃料セルのような固体電気化学装置は、多孔性の複数の層と、少なくも一枚の高密度の層とから構成される。例えば、電極層(陽極及び陰極)は多孔性の層の内外への流体の流出入を可能とするように多孔性である一方、電解質層はガスの一方から他方の側へ移動するのを防ぐように高密度のイオン導体である。その他の層としては、高密度導電性相互連絡層と、該高密度の相互連絡層と多孔性の電極の間の多孔性電気的接触層とがあってよい。これら多層構造物の一部乃至全部を形成する方法に共焼成法がある。共焼成とは種々の層を同時に焼結する方法である。米国特許第6605316号には、金属又はサーメット層を電解質層と共焼成して、共焼成の後に金属又はサーメット層が多孔性となり、電解質層が高密度となる方法が開示されている。焼結後の多孔性層の孔の量及び種類は、装置の性能及び機械的性質に重大な影響を及ぼす。代わりに、多孔性層を高密度の電解質層と別個に焼成し、その後それらの層を組み合わせてもよい。高度に多孔性な構造物を焼結によって形成するのは時間と費用の嵩む工程である。
【0003】
焼結とは物質をその融点未満の温度で、叉は混合物の場合にはその主成分の融点未満の温度で行う熱処理のことである。これにより、典型的に物質の強度と高密度化が増加する。焼結法は粉体粒子が互いに結合するまで粉体をその融点未満で熱して粉体から物体を作成するのに使用される。
【0004】
焼結多孔性構造物は、従来、焼結可能な金属、セラミック又はガラス粉末にポリマー、粒子、流体、及び/又はガスの形態の孔形成剤を添加して製造されている。孔形成剤は種々の方法によって除去され、粉体は焼結されて強固な多孔性構造物が得られる。多くの場合において、多孔性構造物の製造を高価で時間のかかるものとするのはこの孔形成手段なのである。例えば、溶解、分解、焼失する孔形成剤が知られている。孔形成剤の焼失に伴う困難は、高多孔度が必要とされる結果、グリーン強度の低い材料となることである。例えば固体酸化物燃料セルのような多層構造物の共焼成の場合、グリーン強度の低い材料の存在は、電極及び/又は電解質等の後続する層の扱い及び/又は適用を困難にする。更に、必要とされる孔形成剤の体積の割合の大きいと、孔形成剤の除去に時間がかかると共に、汚染の原因となる可能性もある。
【0005】
多孔性金属の処理に、NaCl又はKClのような抽出可能な粒子が使用されており、かかる粒子は焼結の前或いは後に除去されている。しかし塩の除去は高価であり、また、アルカリ元素による汚染は問題である。
【0006】
多孔性構造物は多孔性ポリマーの泡をセラミック材料で含浸させて多孔性ポリマー泡の負性レプリカを形成するレプリカ法によって製造することも出来る。乾燥及びか焼工程が次に使用されてポリマーが除去され、セラミック材料が焼結される。この方法では時間の
かかる濾過及び乾燥工程が複数回必要とされる。更に、ポリマー分解の結果有害なガスが発生したり、ポリマーの除去に起因する欠陥による低密度かつ低強度の孔の開いたスポンジ状の泡体となる可能性もある。大きい粒子は多孔性泡体に付着しないので、この方法は更に微少粉体に限定される。
【0007】
多孔性構造物のその他の形成方法として、バブル形成技術が挙げられる。この技術は大量の液体中にバブルを生成し安定させることに基づいたものである。バブルは物理的又は化学的に生成されて、その結果スチームを含むガス成分となる。この方法には危険な薬品が伴うことがあり、高融点のセラミック及び金属には応用出来ないことが多い。
【0008】
フリーズカスティング法も使用可能であるが、この方法は緩慢であり、かつ高価な処理装置を必要とする。ワイヤ及び薄片が焼結され接合されて高度に多孔性な構造物が形成できる。これらのワイヤや薄片は処理中にほとんど収縮することなしに接触点で接合されるが、以下記載される焼結の相違により、多層構造物の形成には不適である。
【発明の概要】
【0009】
高度に多孔性な構造物を製造する簡単で安価な方法を提供する。これらの方法は、多孔性構造物の所望の強度、多孔性、及び孔形成を提供するように形成された複数の要素で多孔性構造物を作成することと、これらの要素を共に焼結することとを含む。焼結された非球形要素からなる新規な焼結された多孔性体を更に提供する。
【0010】
本発明の一態様は、多孔性ネットワークを製造する方法に関し、各々が粒子例えば粉体)から成るものである複数の非球形グリーン要素を準備する工程、非球形要素を多孔性ネットワークの所望形状に配列してグリーン多孔性体を形成する工程、及び粒子を同時に共に焼結して焼結された非球形要素を形成し、この非球形要素を共に焼結して多孔性ネットワークを形成する工程から成る方法である。非球形要素の例としては、星形要素、直線的、曲線的又はコイル状撚り糸要素、螺旋状要素、煉瓦形要素、リング形要素、筒状要素、トロイド形要素、サドル形要素、円板、シート、織物要素、及びジャック形要素がある。特定の実施形態において、形成されるグリーン体は追加の層を支持するために十分の強度を有する一方、低グリーン密度を有し、例えば30−45%未満(低焼結密度として要求)である。
【0011】
更に提供されるのは平面的薄シートの多孔性ネットワークを製造する方法であって、複数のグリーン非球形要素を準備する工程、この非球形要素を第一と第二主要面を有する平面内に配列してグリーン多孔性体を形成する工程、及び上記複数の非球形要素を共に焼結して上記多孔性ネットワークを製造する工程から成る方法である。特定の実施形態において、この非球形要素はグリーン要素と同時に焼成されてもよい粒子から成るものである。
【0012】
その他の態様において、本発明は共に焼結された非球形要素の多孔性ネットワークに関するものであり、この場合の各非球形要素は共に焼結された複数の粒子から成るものである。
【0013】
特定の実施形態において、ネットワークは平面的であり、及び/又はネットワークの主要面の間に複数の流路を定義する。種々の実施形態において、ネットワークの連結多孔度は例えば少なくとも40%、60%、或いは90%のように高いものである。本発明が更に提供するものは、第一及び第二主要面を有する、共に焼結された非球形要素の平面的多孔性ネットワークから成る構造物であって、上記多孔性ネットワークは第一主要面から第二主要面へ複数の流路を定義し、上記要素の大きさは5マイクロメートルと5センチメートルの間であり、上記ネットワークの連結多孔度は少なくとも30%である。
【0014】
その他の態様において、本発明は焼結された非球形要素の下地層を含む固体電気化学的装置構造物、非球形要素の焼結されたネットワークを含む流体濾過装置構造物、及びこれらの構造物を製造する方法に関する。
【0015】
本発明のこれら及びその他の利点は以下の詳細な記述によって図を参照して例示される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の種々の実施形態による焼結された多孔性構造物の製造工程の段階を示すフロー図である。
【図2】本発明の種々の実施形態による焼結された多孔性構造物の製造工程での処理を示す。
【図3】本発明の種々の実施形態による多孔性構造物の構成要素として使用される成型された非球形要素の製造工程の段階を示すフロー図である。
【図4】本発明の種々の実施形態による焼結された多孔性構造物の製造工程の段階を示すフロー図である。
【図5】低ランダム充填密度を有する蒸留型充填の例を示す。
【図6】(a)ランダムに充填された球体、及び(b)ランダムに充填された環状リングを模式的に示す。
【図7a】共焼結された球体の模式図である。
【図7b】共焼結された球形粒子の構造物の一部及び共焼結された均一断面を有する高密度の棒材の薄フィルム多孔性支持構造物の一部の模式図である。
【図7c】煉瓦形要素から成る支持構造物の断面部の模式図である。
【図8】二枚の多孔性シートの部分の断面図であり、一枚はフィルムの平面に垂直に向いた孔を有し、他の一枚はフィルムの平面に平行に向いた孔を有する。
【図9a】非球形要素と整列された多孔性構造物の配置の例を示す。
【図9b】非球形要素と整列された多孔性構造物の配置の例を示す。
【図9c】二峰性孔分布を有する多孔性構造物と段階的孔分布を有する多孔性構造物の断面の模式図である。
【図10a】本発明の特定の実施形態による長尺要素から多孔性構造物を製造する工程での処理を示す。
【図10b】本発明の特定の実施形態による充填配置に影響を与えるべく逃げ性孔形成剤を使用して多孔性構造物を製造する工程での処理を示す。
【図10c】本発明の特定の実施形態による壁を有する多孔性構造物を製造する工程での処理を示す。
【図11a】本発明の種々の実施形態による平面的多孔性構造物を示す。
【図11b】固体相電気化学装置の平面デザインを示す。
【図12a】本発明の一実施形態により形成された焼結された多孔性ステンレス鋼の土台(bed)の画像である。
【図12b】本発明の一実施形態により形成された焼結された多孔性セラミックの土台(bed)の画像である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
概論及び使用用語
本発明は焼結された多孔性構造物及びその製造方法に関する。新規な多孔性構造物のみならず、強固な多孔性構造物を製造する新規で効率の高い安価な方法が提供される。多孔性の金属、セラミック、サーメット、及びポリマーの構造物は、触媒付着用支持体、固体酸化物燃料セル又は電気化学ポンプ等の電気化学装置用多孔性支持構造物、高温ガス及び液体濾過用のフィルターとしてのガス分離又は濾過用の多孔性又は高密度の膜用の支持構造物、電気化学装置用の多孔性接触層、及び音響又は熱を絶縁する低密度絶縁材料として
など、多くの用途を有する。
【0018】
多孔性構造物の製造方法は多くあるが、多層構造物の形成には、追加的制約が加わる。多層構造物が形成される場合、種々の層の間で焼結特性が相違するため、層が反ったり割れたりすることがある。このことは、加工後に、少なくとも一つの層が低密度、高い連結した多孔度、高い透磁率、及び他の層を支持するための十分な強度を必要とし、第二の層が高密度を必要とする多層構造物の場合、殊に困難となる。従来例の粉末加工において、グリーン密度は理論的密度が約40−65%の範囲である。耐ガス電解質に要求されるような例えば95%を超える密度への焼結の間、線縮小率は約12−25%の範囲となる。多孔性電極層に要求されるような約30体積%多孔度(70%密度)を得るために、多孔性層の初期又はグリーン密度は最高で約30−45%の理論的密度の範囲でなくてはならない。従来例の粉末加工では、焼結後の密度を70%未満とする必要から、グリーン密度が30%未満のグリーン体を得ることが非常に困難である。更に、かような従来例の高多孔度の多孔性グリーン体は他の層を支持するための機械的強度に欠けている。
【0019】
終局的な連結多孔度が30体積%より遥かに大きい焼結構造物が望まれる場合が多い。本発明の方法は、理論的密度が30−45体積%未満であり、好調に制御された縮小率、高い連結多孔度を有し、結果として強固な焼結体となるグリーン多孔性層を形成する簡単で安価な方法を提供する。このグリーン多孔性層は、高い連結多孔度を得て他の層のための強固な機械的支持を提供するのに必要な低グリーン密度(高多孔度)を有する。
【0020】
本発明の方法は、成形された焼結可能な要素を共に焼結して多孔性構造物又はネットワークを形成することに関する。焼結とは構造物又は物質をその融点未満で熱して高密度とする構造物又は物質の熱処理のことである。焼結された構造物は構造物の構成要素(例えば粒子または要素)をそれらが結合するに至るまで焼結することで製造されてもよい。「共に焼結された要素」及び「共焼結された要素」とは焼結によって相互に結合した要素を意味する。同様に「共に焼結された粒子」及び「共焼結された粒子」とは焼結によって相互に結合した粒子を意味する。特定の実施形態によれば、多孔性ネットワークはそれ自身が共に焼結された粒子から成るものである共に焼結された要素から成る。
【0021】
焼結された多孔性構造物は、従来、焼結可能な金属、ポリマー、ガラス、或いはセラミックの粉末に孔形成剤を加えることによって製造されている。孔形成剤はポリマー、微粒子、液体、及び/又はガスの形態でよい。孔形成剤は種々の方法によって除去され、粉末はその後焼結されて強固な多孔性構造物が得られる。このように多孔性構造物を製造するのは、孔形成剤の組み込み、取り扱い、及び除去の理由で、費用と時間のかかる工程である。従来例の焼結された構造物はスポンジ状であり、即ちかなり均一な大きさの孔が物質じゅうに一様に分布されており、ボイド空間は焼結された粒子と同様の大きさである。
【0022】
本明細書に記載される方法では、一般的に多孔度が高く強固な構造物というような所望の性質が多孔性構造物に与えられるように、要素が成形されている。連結された孔の特徴、即ち形状、大きさ、及び分布などは、要素の形状と配置の両方によって決定される。要素を適当に成形し、配置することにより、孔の大きさ、形状、及び分布に関する柔軟性の度合いが従来例の方法による場合より著しく大きくなる。更に、この方法は実施が簡単であり、多孔性構造物の安価な製造を可能とする。
【0023】
下記の記述は主として多孔性構造物やネットワークの薄いシート及び薄フィルムの多孔性構造物の製造方法に関するものであるが、本発明は決してそれに限定されるものではない。一般的に、この方法及び構造物は、多孔性構造物が使用される任意の用途に適用可能であり、適当な鋳型或いはダイ型を使用してかかる用途に使用され得る。例えば特定の実施形態において、多孔性構造物はコップ型、ブロック型、或いは円錐形フィルターを形成
する。以下の記述において、本発明が完全に理解されるべく、数々の特定の詳細が記載されるが、本明細書に提示されるかかる特定の詳細に限定されずに本発明が応用可能であることは明白であろう。
【0024】
本書の中では以下の用語を使用する。明細書の理解のために説明を提供するが、これらは発明の範囲を限定するものではない。
要素とは、焼成される多孔性構造物の構成要素のことである。本明細書に記述される方法で使用される要素は一般的に非球形である。要素自体は通常、圧縮された粉末のような、より小さい表面積の大きな粒子から成る。典型的に要素は5μm−5cmの範囲にあり、大きさが0.1−100μm範囲にある粒子から構成される。
【0025】
多孔度とは、構造物の体積の中でボイド空間が占める割合、即ち構造物の全体積に対する孔の体積の比である。総多孔度は分離多孔度と連結多孔度とからなる。連結多孔度とは、構造物の外部に接続するボイド空間を指す。本明細書に記述されるような多孔性ネットワークの場合、要素間のボイドの全部又は大部分が接続されている。要素自体は高密度であっても、分離及び/又は連結した孔を含んでいてよい。大部分の場合、要素自体が多孔性であるならば、これらは微小孔であり、多孔性ネットワークの総多孔度或いは連結多孔度にあまり寄与しない。しかし、或る応用では、二峰性の孔サイズ分布例えば、より大きな要素間の孔と、より小さい要素内の孔)が有用である。
【0026】
充填密度は充填された固体粒子又は要素のネットワークの総体積に対する割合である。ネットワークの充填密度は固体粒子又は要素の形状、及び固体が共に充填される様相に一部依存して決定される。非常に秩序立った充填により最大充填密度となり、ランダムな充填だと充填密度は低下する。同一球体の最大充填密度は74%であり、これは球体が面中心立方体格子状に充填された場合に達成される。ランダムに充填された構造物の充填密度は、振動、攪拌、注入など、個体が充填される様相に一部依存して決定される。ランダムに充填された球体の充填密度は充填の様相に依存することであるが約64%−68%の範囲である。更に下記の如く、実施形態においては球形要素で達成可能な場合よりも低い充填密度の非球形要素を使用する。例えば平たいディスクは充填密度が約54%であり、蒸留カラムに使用されるタイプの充填だと2%もの低さであると示されている。要素又は粒子の大きさの分布が広いと、より小さい粒子がより大きい粒子により形成されたボイド空間の中に充填されるため、充填密度が増加する傾向がある。
【0027】
グリーン密度とは焼成されていない(グリーンの)物体の密度のことである。本明細書に記述される方法において、非球形要素は、グリーン多孔性構造物を生成するように整列され、それが焼成されて要素が共焼結され、焼成された多孔性構造物が得られる。本明細書で使用する場合、この多孔性構造物のグリーン密度は、充填された要素の密度、即ち充填密度のことである。焼成後、多孔性構造物は連結多孔性を有し、その中を流体が流れる。連結多孔度はグリーン密度及び焼成時の縮小量に依存する。例えば、グリーン密度45%の多孔性構造物の焼成密度は55%であり、連結多孔度は45%でもよい。構造物のグリーン密度又は充填密度は十分に低く、焼成による縮小と高密度化の後、構造物の連結多孔度は所望のものとなる。各々の要素にグリーン密度があってもよく、例えばもし要素がグリーン粉末のコンパクトから成るかグリーン粉末のコンパクトを含む場合にはそれを焼成して焼結された要素を形成することが出来る。この要素内グリーン密度は多孔性構造物全体のグリーン密度とは独立したものである。特定の実施形態において、要素のグリーン密度は少なくとも40%であり、構造物を形成する要素の共焼結を駆動するものである。焼結後、要素は高密度であってもよく、或る程度の多孔性を残してもよい。
【0028】
多孔性構造物の製造
上記の如く、既存の多孔性構造物の製造方法には、構造物からの孔形成剤の取り扱い並
びに除去及び多孔性構造物の性質の適合などに関して欠点がある。本発明の方法は、所望の多孔性構造物を与えるように成形された要素を準備する工程と、これらの要素を共焼結して多孔性構造物を形成する工程とを含むものである。この方法により、以前には孔形成剤を使用するかレプリカ法によって主要ボイド空間を準備しなくては得られなかった多孔度を有する焼結された構造物が製造される。
【0029】
図1−4はこれらの構造物の形成に使用される工程の大略を示すものであり、その更なる詳細は以下図5−11bを参照して説明される。図1は多孔性構造物を製造する工程の大略を示す工程フロー図である。この工程は成形された要素を準備すること(101)で始まる。この要素は最終的な多孔性構造物に所望の充填密度、強度、及び多孔度を得るように成形されている。多くの実施形態において、要素は低充填密度であるように成形される。好適な形状については以下説明されるが、その例には星型、コイル型、トロイド、煉瓦形、環状、管状、円盤状及びサドル形が含まれる。要素の形状は同一でなくともよく、多孔性構造物は複数の異なる種類の形状、例えば管状とサドル型、を含んでもよい。要素の大きさは特定の用途に依存して決定されるが、通常は5μm−5cmの範囲である。要素のサイズ分布は通常はピークが一つのみ(一峰性)であり、狭いものであるが、これは上記の如く、サイズ分布の幅が広いと充填密度が大きくなることが理由の一部である。しかし、特定の実施形態においては、広分布又は二峰性サイズ分布が例えば段階的多孔性構造物に使用される。要素は焼結可能な如何なる物質でもよく、その例には金属、セラミック、ポリマー、ガラス、ゼオライトなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。下記の如く、特定の実施形態においては、要素には焼結中に焼失可能な添加物が含まれてもよい。図2は多孔性構造物を形成する一例を図示するものである。図2の例では星型の要素が201において準備される。成形された要素の準備については下記にもさらに詳しく説明するが、一般的に要素はテープキャスティング、裁断、押し出し、射出成型、圧縮など適宜な方法で準備されてよい。
【0030】
図1に戻り、要素が準備されると、工程103において要素は多孔性構造物又はネットワーク製造のために配置される。多孔性構造物の境界を定義するのに、特定の実施形態においてはダイ型又は鋳型が使用されてもよい。要素はダイ型又は鋳型内へと設置され、振動され、供給されてよい。図2は203において星型の要素で一部充填された平面的多孔性ネットワークのためのダイを示す。組み立てられた構造物が205に示される。種々の実施形態によれば、構造物の組み立ては、ランダム充填、半ランダム充填、又は秩序充填を含んでもよく、補強用の棒など構造物のその他の成分の導入などを含んでよい。この時点において、多孔性構造物の基本的骨組みは、最終的多孔性構造物のものより大きい寸法ながら既に完成したものである。更に下記の如く、後続の接合及び/又は焼成工程の便宜上、各要素または組み立てた構造物をコーティングするために使用されるかまたは別の方法で添加される種々の添加物が、個々の要素の材料に導入されてよい。
【0031】
要素は整列された後、工程105において任意選択で接合されてもよい。焼結前のこの要素の接合は、要素をインタロックして、取り扱いに対する強度を増加させ、及び/又は電極又は電解質層のような追加層へ要素を接続するために行われ得る。この工程後、各要素は隣接する要素及び/又は別個の層に化学的又は機械的に結合されてよい。要素の材料により、この工程ではビスク焼成、圧縮、熱処理、溶媒中への浸漬、バインダ及び/又は粒子でのウォッシュコーティング、光線又は超音波への露出、又はその他の既知の方法が使用されてよく、要素を相互に及び/又は一枚以上の追加の層に接続する。この工程は取り扱いのための機械的完全性を材料に提供するものであるが、焼結のような実質的な寸法の変化はない。図2の星型要素は207において相互に連結される。この工程において、又はこの工程の後、ダイ型又は鋳型は207に示される如くに除去される。
【0032】
図1に戻り、多孔性構造物が製造され、もし実施された場合には要素が共に接合された
後、構造物は焼成されて要素は工程107において共焼結される。焼結とは、融解せずに加熱して密集体を形成する工程である。得られた構造物は縮小し、高密度となる。縮小量は材質、焼成の時間及び温度などに依存して決定される。焼成後の密度、及び従って連結多孔度は構造物のグリーン密度と相関する。種々の実施形態によれば、焼結された多孔性構造物の連結多孔度は少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%である。所望の連結多孔度は適宜に要素の形状を選択し、多孔性構造物を配置することで達成できる。構造物が添加剤(バインダー、孔形成剤など)を含む場合には、焼成によって通常はこれらは除去される。一度構造物が焼結されると、これは更なる工程に付されてもよく、又使用に供されてもよい。更なる工程の例としては触媒性材料でのコーティング、装置へのはめ込みなどがある。
【0033】
特定の実施形態の場合、成形された要素の準備は、成形されたグリーン粉末コンパクトを成形又は形成した後、このコンパクトを焼成して焼結された要素を製造することを含む。図3はグリーン粉末コンパクトを焼結することにより要素を形成する一例を示す工程フロー図である。図3に示される例では、粉末が工程301においてテープキャストされ、所定のグリーン密度に乾燥される。テープキャスティングは通常は大きく薄く平坦なセラミック又は金属の部品を製造するのに使用される処理である。キャスティングされ乾燥された粉末は工程303において細片やディスク形の所定の形状に切断され、成形されたグリーン要素が形成される。このグリーン要素は任意選択で工程305においてビスク焼成、溶媒への浸漬のような処理に供される。各グリーン要素は焼成で焼結され、工程307において成形された焼結要素が形成される。テープキャスティングと切断は成形されたグリーン要素を形成する方法の一例に過ぎない。成形されたグリーン要素の形成方法に依存せず、グリーン要素は焼成されて焼結要素が形成される。
【0034】
図3に示される工程のように要素が焼結によって形成される特定の実施形態において、各要素を構成する粒子と多孔性構造物を形成する要素とが同時に焼結されるように、多孔性構造物とグリーン要素とは同時に焼結されてよい。図4は図1を参照して説明された方法の実施形態を示す工程フロー図であり、ここではグリーン要素と多孔性構造物とは同時に焼結される。
【0035】
第一に、成形されたグリーン要素が工程401において準備される。これはテープキャスティング及び裁断、押し出し、射出成型、ダイ圧縮などで行われてよい。工程403では、例えば後続の振動、重力供給などの最中の取り扱い強度の向上のために、任意的処理が実行されてよい。ビスク焼成、熱処理、光線又は超音波への露出などがこの処理の例である。その後工程405においてグリーン要素は図1を参照して説明されたように配置される。その後工程407においてグリーン要素は上記の如く任意選択で接合される。工程209において多孔性構造物と要素とは焼結される。その結果、各グリーン要素の粒子又は粉末が同時に一緒に焼結されて焼結された要素が形成され、要素が一緒に焼結されて焼結された多孔性構造物又はネットワークが形成される。
【0036】
要素の形状
多孔性構造物は、焼結後に所望の多孔性構造物が得られるように、成形された要素を共に焼結することによって形成される。これらの要素は非球形であり、種々の実施形態の場合、高多孔度、高強度、ガス流の方向(フィルム面に垂直)に整列する孔を有すること、及び孔のサイズの平均又は中間値が粒子サイズの平均又は中間値より有意に大きいこと、などの特徴の全部又は一部を持つ多孔性構造物が得られるように成形されている。
【0037】
本発明の方法で使用可能な要素タイプの非排他的リストに含まれるものには、星形、ロゼット(rosette)型要素、直線的、曲線的又はコイル状撚り糸、螺旋形要素、スプリング型要素、煉瓦形要素、リング形要素、筒状要素、トロイド形要素、サドル形要素
、螺旋状要素、円板、シート、織物要素、円弧形要素、長尺要素、非球形固体(例えば多面体)、ジャック形要素、モビウス片、その他パスタ、麺類、鳥かご、スチールウール、織物マット、フェルト、充填ピーナッツ、延伸金属メッシュ、鶏かご用ワイヤ、ワッフル片又は千切り野菜、金属削りくず、及び雪片に似た要素などがある。これらの要素は対称形でも非対称形であってもよく、突出部が直線でも曲線でもよい。例えば星形、ロセット型、及びジャック型の要素のように放射部を有する要素の場合、放射部は長くても短くてもよい。要素は単一の放射部を有するものでもよく、星のように複数の放射部があってもよい。放射部は二次元的でも三次元的でもよい。曲がった要素には円弧型、鏃、馬蹄形要素が含まれる。立体形にはプラトニク及びアルキメディアン立体、例えば多面体、切頂多面体(truncated polyhedra)、複多面体形(multiple polyhedral shapes)などが含まれる。これらはボイドの所望のパターンを作成するのに組み合わせて使用することが出来る。
【0038】
長尺要素は直線的、折線的、曲線的、螺旋状又はコイル状であってよい。撚り糸は同じ長さでも異なる長さでもよい。撚り糸の繰返し単位の場合、最終的な焼結体に規則的又は不規則的なパターンのボイドを生成するために、撚り糸は他の糸と編まれ、マッティング、フェルティング、混合されてよい。撚り糸要素は螺旋的に巻かれたり、コイル状あるいは巣ごもり状にされてもよい。螺旋状要素には円筒形及び円錐形螺旋が含まれる。
【0039】
特定の実施形態において、非球形要素は筒状又は環状であり、即ち両側が空いたものでよい。その例としては、リング状、トロイド、Raschig(登録商標)リング図5、Pall(登録商標)リング、蜂窩形要素(図9)、その他がある。特定の実施形態において、非球形要素はサドル形である。Berl(登録商標)サドル及び Intalox
(登録商標)サドルは特定の例である。要素は更にこれらの特徴のうちの二つ以上を有するものであってよい。例えば図5に示されるIntalox(登録商標)リングは環状であり内側に曲がる突出部を有する。要素は平坦面、凹面、及び凸面(非球形)を有するものでよい。特定の実施形態において、要素はこれらの二種類以上を有するものであり、例えば凹面及び凸面(サドル状、管状要素)を有する。
【0040】
上記の如く、要素は種々の望ましい特徴を有する多孔性ネットワークが得られるように成形される。多くの実施形態において、高多孔性の構造物を形成するのに低充填密度が望まれ、そのために非球形要素が使用される。簡潔に上記したように、面中心立方体又は六面体の充填配置の球体の充填密度は74%である。その他の整列充填配置ではやや充填密度が低くなり、体中心立方体配置の場合には約68%となる。球体のランダム配置であると充填密度は約64%−68%と低くなる。
【0041】
種々の実施形態よれば、多孔性構造物の充填密度は最高で約70%、65%、60%、55%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、5%、又は2%である。例えば蒸留カラムに使用されるタイプの充填材では充填密度が非常に低い。図5では蒸留カラムに使用される形状の例が示されている。即ち、(a)Raschig(登録商標)リング,(b)Berl(登録商標)サドル、(c)Intalox(登録商標)リング、(d)Intalox(登録商標)サドル、(e)Tellerettes(登録商標)、及び(f)Pall(登録商標)リング。上記の如く、これらの充填のランダム充填密度は低いものである。Raschig(登録商標)リングのランダム充填密度は3%−38%の範囲と報じられており、Berl(登録商標)サドルは30%−40%、Intalox(登録商標)リングは2−3%の低さ、Intalox(登録商標)サドルは7%の低さ、Tellerettes(登録商標)は7%の低さ、そしてPall(登録商標)リングは3−10%の低さと言うことである(Perrys Chemical Engineers’ Handbook, Seventh Edition)。その他のランダム充填の例としてCascadeミニリング、Nutterリン
グ、VSP、Tri−Packリングなどがあり、これらのランダム充填密度は約2%の低さである。
【0042】
対照的に、上記の如く、球体の充填密度は少なくとも約64%である。図6は(a)球体と(b)Raschig(登録商標)リングの場合のランダム配置を示す。同図で見られる如く、焼結されたRaschig(登録商標)リング又はそれと同様に環状に形成された要素で形成された多孔性構造物は、焼結された球体よりも多孔度が非常に高い。要素は、例えば図6の環状リングのようにランダム配置でダイ型又は鋳型内に入れられるように設計されてもよく、非ランダムの規則的又は不規則的配置に配置されるよう設計されてもよく、及び/又は鋳型の寸法に合うように成形されてよい。
【0043】
特定の実施形態による粒子の別の特徴は、多孔性構造物の強度である。多孔性構造物が例えば固体酸化物燃料セル用の支持体である応用例の場合、構造物の強度は積み重ねられた電解質と電極の層を支持するに十分なものである。球状要素の焼結されたネットワークの強度は、粒子間のネックサイズに依存して決定される。図7aは焼結された球体の多孔性支持体の一部を模式に示している。球形の粒子701は焼結されて、粒子を結合するネック703を形成する。矢印は例えば固体酸化物燃料セル電解質又は流体からの、構造物に対する応力を示す。ネックは多孔性構造物の強度及び機械的特性を限定する。
【0044】
特定の実施形態において、要素の形状はその間に形成されるネックよりむしろ構造物を構成する要素によって制御される強度を持つように選択される。その一例として、図7bは強度がネックによって制御されている、共焼結された球状粒子の構造物の一部705を示している。その比較として、高密度の棒材の多孔性支持用構造物の部分707は、一様な断面を有する。断面積が均一であるため、この構造物の強度はネックの厚さでなく、棒材の厚さで制御される。図7cは煉瓦形要素で出来た支持用構造物の断面部を模式的に示したものである。煉瓦形要素は球形よりも非常に低充填密度で他の要素と接触し焼結可能であることに留意されたい。これらの接触点での焼結により強度は増加し、より強固になることに加えて、構造物は充填された球体から成るものより非常に高い多孔度を提供する。
【0045】
低充填密度と高強度とは図5−7に示された非球形要素に限るものではない。球形充填密度の高い理由の一つは、球形の表面積対体積の比が小さい−球形は所与の体積を包む面の中で一番表面積の小さい−からである。非球形要素では表面積対体積の比が大きく、従って結合の為に利用可能な表面積が大きい。粗面又は突起を有する要素も、要素間の機械的インタロッキングの機会を与える。結果として、所与の体積のグリーン構造物及び焼結された構造物の両方が、もし粗性又は非球形要素で製造されるならば、球形の要素で製造された場合よりも大きい多孔度及び強度であり得ると言うことである。
【0046】
多孔性構造物の特性は別法として、孔の形状及び方向によって制御できる。薄いシートの実施形態の場合、ガス流は一般的に多孔性構造物の平面を横切る方向である。図8は平面的薄シートの多孔性構造物の小部分820を示す。この部分820における2個の孔形成の例が、拡大断面図820a及び820bで示されており、図820aは薄シートの平面に垂直で、ガス流の方向に配置された孔を有し、図820bはシートの平面と平行な穴を有する。図820aに示された多孔性構造物はフィルム又はシートの平面と垂直な方向に、例えば燃料セルとか濾過装置を支持する強度を有し、その一方、図820bに示す孔の方向であると、シートに平行な方法に強度が与えられる。一般的に、薄い平面的な多孔性シートの平面に垂直な方向に整列された孔を有すると、孔が整列されていないか、シートに平行に整列された孔の場合より強度が大きい。要素の形状は更に所望のガス流特性を達成する観点から選択されてもよい。例えば820aに示される構造物のガス流に対する抵抗は弱い。特定の実施形態の場合、形状は非常に曲がりくねったガス流路を提供する観
点から選択される。(図8は断面図なので孔間の流路は図から明白でないが、矢印は互いに連結されている孔を通る流体の流路を示すものである。)
要素は孔の形状と大きさを制御するように成形されてもよい。一般的に構造物孔体積は個別要素の孔体積(要素内孔体積)より実質的に大きい。これは孔と粒子とのサイズが同様な範囲である焼結された同質の粉末の場合と異なる。
【0047】
特定の実施形態では、高度に整列された充填の為に要素が成形される。図9aは二つのそのような実施形態を示している。一実施形態においては、六角形要素901の軸方向両端部が開いており、示された方向に流路が出来る。これらの六角形要素901は蜂窩形構造物903を形成するように配置されている。要素は整列されて要素の土台を構築し、一層として配置されても複数の層として配置されてもよい。焼結された蜂窩形構造物は強固であり、低抵抗流路を提供する。一例では、焼結された構造体は、電気化学装置内の電解質又は電極層に結合される。焼結された蜂窩形構造物は機械的に層を支持し、例えば電気化学的反応物の通路となるように、シートへのアクセス面を大きくする。所望の孔構造を得るために複数の層が積み重ねられてもよく、例えば各層のボイドは隣接層のボイドと完全に又は部分的に重なってもよい。別の例ではリング形要素905が、焼結された多孔性構造物907の製造に使用される。非球形要素は正方形、矩形、八角形など、流れを許容するように開口端を有するその他の閉じたループ形要素であってよい。これらの要素は所望の構造物を形成するのに必要な任意の壁の厚さ及び高さを有するものでよい。このような開口端を有する閉ループ要素に加えて、多孔性構造物の作成には長尺要素が整列されてもよい。図9bは二つの例を示し、メッシュ状の構造物を作成するのにねじれ部(キンク)を有する長尺要素909が使用され、その一部は911に示されている。叉、メッシュ状構造物を作成するのに波形の長尺要素913が使用され、その一部が915に示される。長尺要素は所望の構造物を得るのに必要な任意の深さと厚さを有してよい。整列された要素による焼結された多孔性構造物は蜂窩、メッシュ、またはネットに似た様相でよい。特定の実施形態では、土台はFlexiPac(登録商標)、Flexiramic(登録商標)、Gempac(登録商標)、Intalox(登録商標)、Max−Pac(登録商標)などの蒸留カラムに使用される単一層又は複数層構成の充填材に類似するものでよい。上記の六角形、リング形、長手などの要素はランダムに組み立てられる多孔性構造物の作成にも使用可能であることに留意されたい。
【0048】
異なる形状の要素が多孔性構造物の形成に使用されてもよい。サイズ分布は通常はむしろ狭いものであるが、構造物の形成に二峰性又は多峰性分布又は段階的分布が使用されてもよい。例えば図9cの構造物917は、異なる要素サイズ分布を有する二つの部分921と923を有する二峰性構造物である。部分921はより大きな要素から成り、より大きな孔を有する一方、部分923はより小さな要素と孔を有する。例えば流体を効率よく濾過するために、多峰性構造物が使用されても良い。孔サイズの小さい部分は濾過媒体において汚染物に対する最大のサイズ遮断部となり、メッシュ、ウエブ、蜂窩、刻み目付きシート、延伸金属シート、泡体、充填床などの様相であってよい。図9cに見られる如く、多くの実施形態において、より小さい孔は、媒体中での圧力降下を最小限にとどめるために、媒体総体積の中の小部分にのみ使用されることが望ましい。或る応用例において、より小さい孔のサイズは一分散性であることが望ましい。より大きな孔が小さい孔よりよけい曲がりくねったものであることが望ましい場合もある。
【0049】
図9cでの構造物919は段階的多孔性構造物である。多くの場合、サイズ分布が広いとより小さい要素がより大きい要素の間のボイドに入り込んで多孔度を減少することとなり、望ましくないことになるのであるが、構造物を適切に配置および構築することにより、段階的多孔性構造物を得ることができる。要素及び孔のサイズは大から小へと構造物919の内部で遷移している。これは濾過装置などで有用である。別の実施形態では、孔の構造はより曲がりくねったものからより曲がりくねっていないものへと遷移する。
【0050】
要素の製造と配列
要素は共に焼結することが出来、焼結可能な金属、セラミック、ガラス、ポリマー、サーメット、ゼオライト、活性炭素などを含む好適な材料から成るものでよい。焼結に当たり、要素は高密度化及び隣接の要素との結合を可能とするように、少なくとも外面部が多孔性である。多くの実施形態において、要素の製造にはグリーン粒子コンパクトの焼結が含まれる。グリーン粉末コンパクトはテープキャスティング、押し出し、射出成形などの任意の適切な方法で形成されてよい。材料のシートは最終的の形状とするために裁断され曲げられてもよい。
【0051】
要素はバインダ、可塑剤、逃げ性(fugitive)孔形成剤、及び焼結中に消失されるその他の添加剤を含んで良い。特定の一例において、要素は所望の要素形状及び/又は充填配列を得るために逃げ性孔形成剤を使用して製造される。例えば、撚り糸要素を逃げ性孔形成剤本体に螺旋状に巻き付けて、孔形成剤を除去した後にコイル状要素を形成し得る。
【0052】
特定の実施形態において、非球形要素は多孔性構造物の形状とされる前に処理を受ける。この処理にはビスク焼成、溶媒処理、紫外線処理、超音波処理などが含まれてよい。要素は取り扱い、強度などの向上のために処理されてよい。
【0053】
要素のダイ型及び鋳型の中への配置は如何なる方法によってもよい。ランダム方向の要素がホッパー又はコンベイヤによりダイ型及び鋳型へと放り込まれ、振動され、射出され、重力供給され、放出散布され、あるいは押し出されてよい。例えば長尺要素が直接所望の配置に押し出されてもよい。充填された撚り糸はその後共に焼結されて多孔性構造物が形成される。撚り糸のような長尺要素はダイ型及び鋳型へ設置される間に曲げられたりコイル状に巻かれてもよい。図10aはダイに適合して所望の構造物を作成すべく、長尺要素1001がダイ型1003に供給される一例を示す。構造物1005を組み立てるのに複数の撚り糸が供給されている。焼結された構造物が1007に示されている。特定の実施形態にでは、ダイ型や鋳型を使用せずに要素が配置される。別の例では、グリーン織物シートの要素が互いに重ね合って設置されて要素が配置される。このグリーン織物シートはその後共に焼結されて多孔性構造物が形成される。整列された要素がダイ型又は鋳型に設置されてもよい。特定の実施形態では、要素がダイ型及び鋳型へ供給された後、所望の秩序または配置の程度となるまで振動される。
【0054】
充填密度は、要素の形状と、それから或る程度まで充填の方法とに依存して決定される。上記の如く、或る要素( Raschig(登録商標)リングなど)の形状は、非常に
ランダム充填密度が低い。或る要素のランダム充填密度が高過ぎたり低過ぎたりする場合には、半ランダム又は整列充填法を使用して所望の充填密度を得ることにしてよい。例えば煉瓦形要素を、非常に密に(例えば煉瓦塀のように)又は非常に粗に(例えばT型に)充填することが出来る。
【0055】
特定の実施形態では、所望の充填配列又は密度を達成するために、逃げ性孔形成剤が使用される。要素は孔形成剤と共に作成され、所望の構造物を形成するように配列され、その後孔形成剤は除去される。図10bは煉瓦形要素を使用するこの工法の一例を示す。煉瓦形要素と孔形成剤との複合物が1011に示される。この複合物は多くの実施形態の場合、この段階ではグリーン粉末コンパクトである煉瓦形要素1013と、逃げ性孔形成剤1015とを含む。要素1013は焼結された多孔性構造物の構成要素の一つである。逃げ性孔形成剤1015は最終的に焼結された構造物には残らないが、構造物1017の製造過程には存在する。この結果、グリーン粉末コンパクト要素は孔形成剤1015が不在の場合より粗に充填されることになる。逃げ性孔形成剤は例えば焼結処理又は焼結前処理
の間に除去される。焼結された多孔性構造物1019の充填密度は逃げ性孔形成剤を使用せずに煉瓦形要素をランダムに共に充填する場合に得られる充填密度より低い。少なくとも若干のグリーン粉末コンパクトは多孔性構造物の配列の間他の要素に露出され接触する筈である。要素の全部又は一部が逃げ性孔形成剤を使用して製造されてよい。除去される時に追加的にボイド空間を生成するのみならず、逃げ性孔形成剤は孔の形状及び方向に影響するように付与されてよい。
【0056】
図10bに示されるような逃げ性孔形成剤の存在は、従来例の焼結された多孔性構造物に使用される場合と極めて異なるものであると留意されたい。従来の焼結された多孔性構造物の場合、逃げ性孔形成剤は相互連結された孔の実質的に全部を生成するのに必要である。このことは上記の如く製造過程における難点となっている。非球形要素への添加剤として、孔形成剤は最終的ボイド空間を増加させるが、非常に低い程度であり、例えば逃げ性孔形成剤は最終的構造物における全連結ボイド空間の50%以下を生成するのみである。ボイド空間の大部分は非球形要素の配置によって生成される。孔形成剤の取り扱い及び除去は、孔形成剤がグリーン構造物の体積部分を多く占める従来例におけるほど困難ではない。
【0057】
多峰性又は段階的構造物(図9cを参照して上記において記述された如く)の形成には特定の充填方法が必要となることがある。例えば特定の実施形態において、要素は例えば設置(placing)篩い分けによってサイズの順にダイ型又は鋳型に供給される。サイズの
順に要素を分離するため、振動が必要となるかもしれない。特定の実施形態において、構造物の一部は順序たてした方法で製造され、別の部分はランダム充填で製造される。
【0058】
多孔性構造物は棒材、ワイヤ、ウエブ、板材、シート、その他のような補強材を含んでもよい。要素は補強材の回りを満たすものであってもよく、または構造物の製造中に補強材が設置又は添加されるのでもよい。例えば鉄筋コンクリートの場合のように棒材の配列の間、又はトーションボクスの場合のようにシートの列の間に要素が充填されてもよい。これらの棒材やシートはそのまま多孔性構造物の部分として残される。多孔性構造物は、要素と同様な物質で出来た壁又はハウジングに結合又は含まれてよい。図10cはそのような工程の一例を示す。成形された要素と壁とがそれぞれ工程1021と1023において準備される。要素と壁とは、焼結時に壁の縮小が要素の縮小と一致するように、同様な材料から形成されてよい。要素と壁とは所望によって異なる材料から形成されてもよい。その後要素は所望の如く壁に接触するように配列される(1025)。図10cに示される例において、壁は要素を囲う開口函体である。薄フィルム構造物の場合、このような壁は薄フィルムの四つの非主要面で多孔性構造物と接触する。その他の実施形態では、壁は構造物に一面又は複数面において、又は必要に応じたその他の配置で接触することがある。一例において、壁は床のような薄フィルムの主要面で構造物に接触する。構造物が製造された後、要素と壁とは任意選択で結合され(1027)、その後共に焼結される。その結果はハウジングに結合又は含まれた多孔性構造物である(1029)。
【0059】
壁は多孔性又は高密度であり、リング、管、函体、その他の形態でよい。かような壁は多孔性構造物に強度を与え、流通する媒体を含み、取り扱いを向上し、又は追加的フレーム若しくはハウジングへの結合若しくは密閉用の高密度の縁を供給する。電気化学装置への応用の場合、壁は電流収集部として機能出来る。
【0060】
要素の結合と焼結
要素及び/又は追加層は、結合処理を可能とする一種以上の添加剤を含んでよい。例えば粉末コンパクト要素は結合工程において硬化(curing)又は熱硬化されたポリマーを含んでよい。繰返し単位の間の結合の向上のために、追加的物質が添加されてもよい。例えば、スラリー、ペンキなどが、要素同士が接触する点に付与されてよい。かかる物
質は単に接触点にのみ付与されてもよいし、又はスラリーに浸漬させてウォッシュコーティングなどでより均一に付与されてもよい。構造物は一度組み立てられると、焼結の前に任意選択で処理される。この処理にはビスク焼成、溶媒による処理、紫外線の放射への露出などがある。
【0061】
焼結は、組み立てられた構造物を融点未満で加熱して要素を相互に結合することに関する。焼結の間、物質が要素間のネックに搬送されて強固な結合を作成する。焼結の駆動力は、焼結されている要素の表面自由エネルギーの減少である。この物質の源は要素表面又は要素の内部からで良い。物質を要素の中央から搬送出来るような要素からは、より強固な結合及び高密化が得ることが出来る。多くの実施形態において、粉末コンパクトのような高表面積粒子が要素の作成に使用される。微小粒子も焼結の駆動のために要素間の接触点に付与されてよい。
【0062】
各要素は組み立てられた構造物内の隣接した要素に結合される。構造物が高密度化するに従って縮小も起こる。温度は使用される物質に依存する。多くの実施形態において、成形された要素は、要素が共に焼結されると同時に焼結されるグリーン粉末コンパクトである。多孔性構造物は焼成されて、バインダ、孔形成剤、及びその他の添加剤が除去され、焼結されて強固で多孔性な部分を生成する。要素はフルの密度又はそれに近い密度に焼結され、強固な多孔体を提供してもよい。要素はまた焼結の後多孔性のままであり、高表面積と多峰性孔形成を提供してもよい。孔形成剤やバインダは、液体への溶解のようなその他の手段で除去されてもよい。
【0063】
焼結後、多孔性構造物の外部及び/又は内部の表面は、コーティングを加えて改変させてもよい。コーティングは多孔性でも高密度であってもよい。構造物の物理的、化学的、又は機械的特性の向上の為にコーティングを加えることが望ましい場合がある。若干の例には、化学的又は電気化学的反応を可能にする触媒性であり、多孔性構造物の表面上の流動媒体の濡れ性を変化させ、流動媒体から化学的又は物理的に汚染物を除去し、および流動媒体と多孔性構造物の間に熱バリヤを提供するコーティングの添加が含まれる。
【0064】
応用
多孔性構造物は流体を多孔性構造物の片側から他方の側に搬送することが所望される応用に使用され得る。応用対象には電気化学装置、濾過、クロマトグラフィ及び流量制御装置が含まれるが、それに限定されることではない。多くの実施形態において、多孔性構造物は薄手の平面シートである。図11aは薄手で平面な多孔性構造物1101の断面図である。このシートは二面の主要面1103及び1105と二面の非主要面1121及び1123がある。主要面の広さは非主要面の少なくとも10倍であり、数百万倍にもなる。流体の流路は一方の主要面から他方の主要面へである。多孔性構造物の接続された多孔性が流体流路を定義する。多孔性構造物に依存して、流体流路は直線でもあり、曲がりくねることもある。
【0065】
特定の実施形態において、多孔性構造物は平面的固体相電気化学装置用の多孔性支持体である。固体相電気化学装置は通常、二個の多孔性電極即ち陽極と陰極、それからこれらの電極間に位置される高密度の固体電解質膜を有するセルである。本明細書に記述される多孔性支持体は一般的にこれらの層の一枚以上を支持するものである。図11bは焼結された多孔性支持構造物を使用する多層電気化学装置の一実施形態を示す。この図は多孔性下地層1107の上の多孔性電極層1109の上の高密度電解質層1111の上の多孔性電極層1113を示している。電極1109は陽極か陰極かのいずれかであり、電極1113は他方である。その他の実施形態(図示せず)においては焼結された多孔性下地層が電極として機能するものであり、高密度電解質層は焼結された多孔性下地層/電極に接触する。焼結された多孔性下地層はインタコネクトに結合されていても良い。支持構造物の
典型的な厚さは約50・香|2mmの範囲である。
【0066】
固体酸化物燃料セルの場合、水素含有燃料が陽極に、空気が陰極に供給される。電極/電解質の境界面に生成される酸素イオン(O2−)は電解質内を移動して燃料電極/電解質境界面の水素と反応して水を生成し、これによって放出される電気エネルギーが相互接続又は電流コレクタによって収集される。これと同じ構成物は電位を二電極に印加することによって、電気化学的ポンプとして逆に作用する。陰極でガスから生成されるイオン(例えば空気からの酸素イオン)は電解質(所望の純粋ガスのイオンの伝導度によって選択されてある)を通して移動し、陽極において純粋ガス(例えば酸素)を生成する。もし電解質が酸素イオンを導通させるものでなく、陽子を導通させる薄フィルムであるならば、この装置は水素を例えばメタンのスチーム再生成(CH+H→O3H+CO)による他の不純物と混合した水素を含む供給ガスから分離するのに使用される。電極/薄フィルム境界面におけるH/CO混合物から形成された陽子(水素イオン)は電極間に印加された電位で駆動されて電解質内を移動し、他の電極において高純度の水素を生成する。かようにして、この装置はガス生成器/浄化器として機能する。
【0067】
上記の固体酸化物電気化学装置は多孔性電極/多孔性機械的支持体と接触する電解質の薄手で高密度のフィルムを有する。支持物質は、通常はサーメット、金属又は合金である。特定の実施形態において、かような構成物は電解質フィルムを非球形要素で出来た多孔体に焼結して製造される。
【0068】
特定の実施形態においては、多孔性支持体の焼結の前に、グリーン多孔性構造物が薄手の電解質又は膜層でコーティングされる。この電解質/膜物質はグリーン粉末物質の水又はイソプロパノルのような液体媒体の懸濁液として準備され、エアロソルスプレイ、ディップコーティング、電気泳動付着、真空浸漬、及びテープキャスティングのような種々の方法で下地層の表面に付着されてよい。この段階において、多孔性支持構造物と電解質膜物質の両方ともグリーンである。この組立体は下地層を焼結し、電解質を高密度化するのに十分な温度で焼成される。物質の焼結と共に、焼成された二層は縮小する。特定の実施形態において、薄手の電極層が電解質コーティングの前に支持体に添加されてもよい。この方法で考慮すべきことは、グリーン支持構造物のコーティングに当たって、多孔性構造物の焼結されていない要素間を架橋するセラミック物質があると有利であると言うことである。特定の実施形態においては、より小さい要素をコーティングされる表面に位置させて電解質の均一的なコーティングを得るために段階的又は多峰性孔形成(例えば図9cに示された)が使用される。この表面で孔はより小さいので、要素間の隙間の架橋に粉末又は懸濁液が使用可能である。これは多孔性構造物が物質でコーティングされるどの応用にも適応される。
【0069】
別の実施形態においては、非球形要素の土台(bed)が電解質又は電極層と接触させられる。焼結によってこの土台は電解質又は電極層と結合し、機械的支持を提供する。電解質及び電極層はテープキャスティング、エアロソル付着、ディップコーティング、その他のような安価な方法で好適に製造可能である。電解質及び電極層の一方あるいは両方とも、好適には無支持(free−standing)である。従って、これらの層は表面の上に位置された後非球形要素に載せられるか、又は代わりに層は既成の多孔性の土台の上に位置されてよい。この実施形態に従って使用するのに適当な多孔性構造物の例が図9aの903及び907に示される。電極又は電解質物質のシートは非球形要素の土台に接触されている。要素は秩序正しく位置され、単一層又は多層として位置されてよい。従って、連続的シートが秩序ある構造的支持と、例えば電気化学反応物を通過させるためのシートへの大きなアクセス面積を提供する土台に接触される。この実施形態においては多孔性構造物が電解質層の上に製造されているので、電解質コーティングが要素間の間隙を架橋するのに問題はない。
【0070】
焼結された多孔性構造物が使用されるその他の実施形態は、濾過とクロマトグラフィを含む混合物の分離である。濾過においてはフィルターが流体−固体混合物に接触される。一般的に、多孔性構造物は固体を捕捉し保持する一方、流体を通過させるように設計されている。多孔性構造物は溶融金属の濾過、水の濾過、空気の濾過などに使用される。溶融金属フィルターは溶融金属から不純物を濾過するのに必要とされる高温および処理条件に耐えるセラミック材料又は高温ガラス(例えば石英)でしばしば製造される。曲がりくねらない流体流路を提供する蜂窩形又はメッシュフィルター(例えば上記図9aを参照して説明された)は殊に金属濾過に有用である。空気フィルターはしばしばガラス又はゼオライト材で、水フィルターは活性炭素で製造される。多くの実施形態において、フィルターは上記図9cで説明されたような段階的多孔性構造物である。孔のサイズは頂上から底部まで徐々に増加し、例えば頂上部分では物理的に粒子を除去し、底部は支持と効率的な排水を提供する。
【0071】
多孔性構造物はスラリー室又は濾過される流体の源であるその他の構造物の直接上に形成されてよい。同様に多孔性構造物は容器又は濾過液を容れる構造物の直接上に形成されてもよい。それ以外の実施形態において、フィルターは無支持の構造物として形成されてよい。多孔性構造物は上記図10cを参照して説明された如く、濾過組立体内での容易な位置付けのためにハウジングまたはフレームの内部に形成されてもよい。同様に、フィルターは取り外し自由なカートリジとして形成されてもよい。
【0072】

以下の例は本発明の種々の態様を説明するためのものであって、発明の範囲を限定するものではない。
【0073】
多孔性ステンレススチール製の土台
ステンレススチールの円筒形スリーブ要素の焼結された無支持の土台を製造した。充填された土台は以下のように製造した。ステンレススチール434(粒子サイズ38−45マイクロメートル)粉末を、アクリルバインダ(水中15wt%)、ポリエチレングリコール6000、及びポリメチレンメタクリレート孔形成剤球体(直径53−76マイクロメートル)と重量比10:3:0.5:1.5で混合した。混合物を加熱し、乾燥し、挽き、150マイクロメートル未満に篩い分けた。結果として得られた粉末を約1.38kPa(20kpsi)の低温定圧圧縮により管状に形成した。管を裁断して直径約1cm高さ1cmのスリーブを形成した。これらのスリーブを空気中525℃で脱結合させ、その後2時間1000℃の還元性雰囲気( アルゴン中4%H)中でビスク焼成を行った
。スリーブをアルミナ製の船形容器に堆積させ、1300℃で4時間還元性雰囲気で焼結した。無支持の一体化した土台が焼結後容易に容器から取り出された。この焼結された構造物の画像が図12aに示されている。このスリーブの形状により、孔のサイズが1cm程度の充填された土台が得られることに留意されたい。このスリーブは壁も多孔性であり、この孔のサイズは20−100マイクロメートルの範囲である。孔形成剤を除去し、適当な金属粒子サイズと焼結温度を選択することにより、この壁を高密度にすることも可能であることに更に留意されたい。
【0074】
多孔性セラミック土台
アルミナのリング形要素から成る焼結された無支持の土台を製造した。その画像は図12bに示されている。各リングは直径が約1cmである。土台のランダム充填により多孔性は極めて高く、各リングによる複数の接着点により良好な強度が得られる。
【0075】
充填された土台は以下のようにして製造した。アルミナ粉末(粒子サイズ1マイクロメートル)及びアクリルバインダ(水中42wt%)を、平底のプラスティク容器の中で混
合し乾燥させた。結果として得られたシートを容器から取り出し、細片に裁断した。細片を両端を手で押してリング状にし、両端のアクリルバインダが粘着するように十分の時間をかけた。リングを次いで互いに重ね合わせて順に種々の方向に堆積させた。少量の濡れたアルミナ粉末/アクリルバインダ混合物を新たなリングの各々と既に堆積されたリングとの接点に添加した。これにより、焼結の間にリング間の強固な結合が達成された。組立体を空気中で4時間1400℃で焼結した。この例において焼結された構造物のリングの壁は多孔性であるが、アルミナ対アクリルの比率、アルミナ粒子のサイズ、焼結温度などを調節することにより、高密度のリングの壁を得ることも出来る。
【0076】
結論
上記の発明は明確に理解さるべく詳細に記述されたものであるが、上述した好ましい実施形態の種々の適合および改変が本発明の範囲および趣旨から逸脱せずに可能であることは明白であろう。更に、本発明の記述された工程分布及び分類特性は一緒に実施されてもよいし、又は個別に実施されてもよい。従って、上記の実施形態は例示の為であり、限定的なものではなく、本発明は本明細書に呈示された詳細によって限定されるものではなく、以下の請求項及びその均等の範囲によって定義されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性ネットワークを製造する方法であって、
各々が粒子を備えた複数の非球形グリーン要素を準備する工程、
前記非球形要素を所望のネットワーク形状に配列してグリーン多孔性体を形成する工程、及び
粒子を同時に共に焼結して焼結された非球形要素を形成し、この非球形要素を共に焼結して多孔性ネットワークを形成する工程とから成る方法。
【請求項2】
前記非球形要素が共に焼結される前に共に結合される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記非球形要素を結合される工程が、非球形要素をビスク焼成する工程、非球形要素を圧縮する工程、前記要素をバインダ又は粒子でウォッシュコーティング又はスラリーコーティングする工程、及び前記非球形要素を熱、溶媒、光線、超音波のうちの少なくとも一つに露出させる工程のうちの少なくとも一つの工程から成る、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
非球形要素がポリマーを備え、前記非球形要素を結合される工程が、ポリマーへの硬化工程又は熱硬化工程から成る、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記配列された非球形要素に添加剤を適用して前記非球形要素間の結合を向上する工程から更に成る、請求項1−4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
非球形要素を配列する工程が、非球形要素を射出、重力供給、発射物スプレイ、及び押し出しの中の一つによりダイ型又は鋳型にはめ込む工程から成る、請求項1−5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
非球形要素を配列する工程が、非球形要素をランダムにダイ型或鋳型に充填する工程から成る、請求項1−5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
非球形要素がバインダ、可塑剤、及び逃げ性孔形成剤の少なくとも一つを含む、請求項1−7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記非球形要素を、粉末のテープキャスティング、粉末の射出成形、及び粉末の押し出しの少なくとも一つにより形成する工程からさらに成る、請求項1−8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
非球形要素が金属、セラミック、サーメット、ポリマー、ガラス、活性化炭素、及びゼオライトから選ばれる物質を含む、請求項1−9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記グリーン多孔性体の密度が約45%未満である、請求項1−10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記グリーン多孔性体の密度が約30%未満である、請求項1−10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記多孔性ネットワークの連結多孔度が少なくとも30%である、請求項1−12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記多孔性ネットワークの連結多孔度が少なくとも40%である、請求項1−12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記多孔性ネットワークの連結多孔度が少なくとも60%である、請求項1−12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記多孔性ネットワークの連結多孔度が少なくとも90%である、請求項1−12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
複数の共に焼結された非球形要素を備えた多孔性ネットワークであって、各々の非球形要素が複数の共に焼結された粒子を備えている、多孔性ネットワーク。
【請求項18】
前記ネットワークが実質的に平面である、請求項17に記載の多孔性ネットワーク。
【請求項19】
前記ネットワークがネットワークの主要面の間の複数の流路を区画形成する、請求項18に記載の多孔性ネットワーク。
【請求項20】
前記非球形要素が星形要素、直線的、曲線的又はコイル状撚り糸要素、螺旋状要素、煉瓦形要素、リング形要素、筒状要素、トロイド形要素、サドル形要素、円板、シート、織物要素、及びジャック形要素から成るグループより選ばれる、請求項17−19のいずれか一項に記載の多孔性ネットワーク。
【請求項21】
前記非球形要素が撚り糸要素である、請求項17−19のいずれか一項に記載の多孔性ネットワーク。
【請求項22】
前記非球形要素が少なくとも一面の平坦面を有する、請求項17−19のいずれか一項に記載の多孔性ネットワーク。
【請求項23】
前記非球形要素が少なくとも一面の凹面を有する、請求項17−19のいずれか一項に記載の多孔性ネットワーク。
【請求項24】
前記非球形要素が凸面、凹面、及び平坦面のうちの少なくとも二面を有する、請求項17−19のいずれか一項に記載の多孔性ネットワーク。
【請求項25】
前記非球形要素が金属、セラミック、サーメット、ポリマー、ガラス、活性化炭素、及びゼオライトから選ばれる物質を備える、請求項17−24のいずれか一項に記載の多孔性ネットワーク。
【請求項26】
前記多孔性ネットワークの連結多孔度が少なくとも40%である、請求項17−24のいずれか一項に記載の多孔性ネットワーク。
【請求項27】
前記多孔性ネットワークの連結多孔度が少なくとも60%である、請求項17−24のいずれか一項に記載の多孔性ネットワーク。
【請求項28】
前記多孔性ネットワークの連結多孔度が少なくとも90%である、請求項17−24のいずれか一項に記載の多孔性ネットワーク。
【請求項29】
前記要素の大きさが5マイクロメートルと5センチメートルの間である、請求項17−28のいずれか一項に記載の多孔性ネットワーク。
【請求項30】
前記要素の大きさが実質上均一である、請求項17−29のいずれか一項に記載の多孔性ネットワーク。
【請求項31】
前記要素の大きさ分布が二峰性である、請求項17−29のいずれか一項に記載の多孔性ネットワーク。
【請求項32】
前記非球形要素が多孔性である、請求項17−31のいずれか一項に記載の多孔性ネットワーク。
【請求項33】
前記非球形要素が高密度である、請求項17−31のいずれか一項に記載の多孔性ネットワーク。
【請求項34】
前記多孔性ネットワークの大きさ及び多孔度がネットワークの容積に亘って均一である、請求項17−29のいずれか一項に記載の多孔性ネットワーク。
【請求項35】
前記多孔性ネットワークが段階的孔構造を有する、請求項17−29のいずれか一項に記載の多孔性ネットワーク。
【請求項36】
前記多孔性ネットワークの上に位置される多孔性電極を更に備える、請求項17−35のいずれか一項に記載の多孔性ネットワーク。
【請求項37】
第一主要面及び第二主要面を有する、共に焼結された非球形要素の平面的多孔性ネットワークを備えた構造物であって、
前記多孔性ネットワークは第一主要面から第二主要面へ複数の流路を区画形成するものであり、
前記要素の大きさは5マイクロメートルと5センチメートルの間であり、
前記ネットワークの連結多孔度が少なくとも30%である構造物。
【請求項38】
前記非球形要素が共に焼結された粒子を備える、請求項37に記載の構造物。
【請求項39】
多孔性ネットワークを製造する方法であって、
複数の非球形グリーン要素を準備する工程、
非球形要素を第一主要面と第二主要面を有する平面内に配列してグリーン多孔性体を形成する工程、及び
前記複数の非球形要素を共に焼結して前記多孔性ネットワークを製造する工程とから成る方法。
【請求項40】
前記非球形要素の各々が粒子を備える、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
粒子を焼結して焼結された非球形要素を形成する工程から更に成る、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記粒子と前記非球形要素が同時に焼結される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記ネットワークが平面状の薄いシートの多孔性ネットワークである、請求項39に記載の方法。
【請求項44】
焼結された非球形要素の焼結された多孔性ネットワークを備えた流体濾過装置であって、該要素の大きさが約5マイクロメートルから5センチメートルまでであり、該ネットワークの連結多孔度が少なくとも30%である流体濾過装置。
【請求項45】
前記ネットワークが実質的に平面であり、前記ネットワークが平面的ネットワークの主
要面の間に複数の流路を区画形成する、請求項46に記載の流体濾過装置。
【請求項46】
非球形要素の各々が複数の共に焼結された粒子を備える、請求項46および47のいずれか一項に記載の流体濾過装置。
【請求項47】
共に焼結された非球形要素の焼結された多孔性下地層、固体電解質、及び多孔性第二電極を備えた固体電気化学的装置であって、前記下地層の連結多孔度が少なくとも30%である、固体電気化学的装置。
【請求項48】
各非球形要素が複数の共に焼結された粒子を備える、請求項478に記載の固体電気化学的装置。
【請求項49】
前記固体電解質が下地層に焼結されたものである、請求項47−48のいずれか一項に記載の固体電気化学的装置。
【請求項50】
多孔性第一電極をさらに備える、請求項47−49のいずれか一項に記載の固体電気化学的装置。

【図2】
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【図7a】
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【図7b】
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【図7c】
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【図9b】
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【図9c】
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【図10a】
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【図10b】
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【図10c】
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【図11b】
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【図12a】
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【図12b】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9a】
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【図11a】
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【公表番号】特表2011−520740(P2011−520740A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−539408(P2010−539408)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【国際出願番号】PCT/US2007/088703
【国際公開番号】WO2009/082402
【国際公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(500210903)ザ、リージェンツ、オブ、ザ、ユニバーシティ、オブ、カリフォルニア (31)
【氏名又は名称原語表記】THE REGENTS OF THE UNIVERSITY OF CALIFORNIA
【Fターム(参考)】