説明

焼結物処理システム

鉄焼結物を処理するための装置および方法が提供される。鉄焼結物を冷却するために冷却システムが炉の下流側に配置される。冷却システムは、エアを鉄焼結物へ強制的に流し込むための対流冷却システムと、流体を熱い焼結物へと方向付けるための蒸発冷却システムとを含む。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
[001]この特許出願は、参照することにより本願に組み入れられる2007年4月30日に出願された米国仮特許出願第60/926,930号および2007年5月7日に出願された米国仮出願第60/927,979号の利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
[002]この特許開示は、一般に鉄処理に関し、特に、処理鉄の製造で使用される焼結物を効率的に且つ効果的に処理するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
[003]スチールの製造は、鉄含有原鉱および粒子が鉄金属へと精錬される多くの処理ステップを伴う。そのプロセスにおいて非常に重要な1つのステップは、酸化鉄を多数の形態で消費してこれらの入力材料を金属鉄へと還元するために高炉を使用することである。酸化鉄は、原鉱、ペレット、または、焼結物の形態で高炉へ供給することができる。原鉱は、採掘された後に約0.5〜約1.5インチ直径の大きさの断片にされる鉄鉱石(ヘマタイト(Fe)またはマグネタイト(Fe)を含む。そのような原鉱は、約50%〜70%の比較的高い鉄含有量を有することができる。この原鉱は、更なる処理を伴うことなく一般にそれを高炉内へ直接に供給できるため、高品質を有すると考えられる。
【0004】
[004]鉄含有量が低い鉄鉱石は、一般に、廃棄材料を排除して鉄含有量を増大するように処理される。特に、時として脈石と呼ばれる廃棄材料を排除できるように鉄含有量の低い原鉱を粉末へと押し潰して粉砕することにより鉄リッチなペレットを製造することができる。その後、残存する粉末が小ペレットへと形成されて炉内で焼成される。完成したペレットは約60%〜65%の鉄含有量を有する。
【0005】
[005]前述したように、鉄焼結物は、高炉に供給するために使用されてもよい。焼結物は、不規則な多孔質材料であり、一般に、粒状原鉱、コークス、および、石灰石と鉄含有スチール処理廃棄材料との組み合わせを焼成することによって生成される小断片の形態を成す。コークスは、処理された石炭の微粒子形態であり、また、石灰石は、混合物から不純物を除去するためにフラックスとして使用される鉱物である。これらの材料は、所望の割合で混合されて焼結製造ラインへ導入される。
【0006】
[006]高炉のための3つの供給タイプのうち、焼結物が一般に一番安価であり、したがって、可能であればより多くの焼結物を高炉供給混合物中で使用することが望ましい。また、完成した鉄製品の冶金を調整するためには幾らかの量の焼結物が一般に望ましい。しかしながら、焼結物の使用に関する1つの重大な制限は、焼結プロセスの効率および有効性である。特に、既知の焼結物処理システムは、焼結物製造速度を遅らせ且つ焼結物の品質に悪影響を及ぼす制限を有する。これらの制限の結果として、そうであれば望ましいであろう程度の量で高炉に供給するために焼結物を使用することができない。
【0007】
[007]前述した背景の説明は、単に読者を助けることを目的としているだけである。それは、本発明を限定しようとするものではなく、したがって、従前のシステムの任意の特定の要素が本発明の範囲内での使用に適さないことを示唆するように解釈されるべきではなく、また、動機となる課題を解決することを含む任意の要素が本明細書中で説明される技術革新を実施する際に欠くことができないことを示唆するように意図されるべきでもない。本明細書中に記載される技術革新の実施および適用は添付の特許請求の範囲によって規定される。
【発明の概要】
【0008】
[008]以上を考慮して、本発明の一般的な目的は、処理鉄の製造で使用される焼結物を処理するための、より効率的で、したがって更に経済的なシステムを提供することである。
【0009】
[009]本発明の関連する目的は、より経済的で且つより高い品質の処理鉄をもたらす高炉における供給材料間でより多くの焼結物を使用できるようにする焼結物処理システムを提供することである。
【0010】
[0010]本発明の更なる目的は、品質が向上した焼結物を製造する焼結物処理システムを提供することである。
【0011】
[0011]本発明の更に特定の目的は、焼結物が更に急速に且つ均一に冷却される焼結物処理システムを提供することである。
【0012】
[0012]開示されるシステムおよび方法の更なる別の特徴および態様は、以下の説明から理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】例示的で基本的な酸化鉄還元プロセスの概略的な流れ図である。
【図2】本発明に係る焼結物処理ラインまたはシステムを使用して鉄焼結物を製造するために使用できる出発材料の組み合わせを大まかに示す概略的な流れ図である。
【図3】図2の例示的な焼結物処理ラインを更に詳しく示す概略図である。
【図4】図3の焼結物処理ラインのカルーセルコンベアを含む焼結物冷却システムの平面図である。
【図5】蒸発冷却ユニットを示す図4のカルーセルコンベアの断部分平面図である。
【図6】蒸発冷却ユニットのうちの1つのスプレーノズルの幾つかの配置を示す図4のカルーセルコンベアの拡大断部分平面図である。
【図7】本発明に係る蒸発冷却ユニットのうちの1つのスプレーノズルを示す図4のカルーセルコンベアの下側のエアチャンバの斜視図である。
【図8】蒸発冷却ユニットのうちの1つのスプレーノズルを示す図4のカルーセルコンベアの下側のエアチャンバの横断面図である。
【図9】図5−7の蒸発冷却ユニットの支持ランスおよびスプレーノズルのうちの1つの側面図である。
【図10】本発明に係る蒸発冷却ユニットで使用される例示的なエア噴霧スプレーノズルの縦断面図である。
【図11】蒸発冷却ユニットのためのエアマニホールドおよび液体マニホールドの供給を示す図4のカルーセルコンベアの断部分斜視図である。
【図12】図5−7の冷却システムの蒸発冷却ユニットのための制御ルームの断平面図である。
【図13】本発明に係る蒸発冷却ユニットのための例示的な制御パネルを示す概略図である。
【図14】複数の冷却領域に分けられる本発明に係る例示的な焼結物冷却システムの概略図である。
【図15】図13の焼結物冷却システムを制御するための典型的なプロセスのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[0028]ここで、特に図面を参照すると、図1には、多数の酸化鉄源から金属鉄12を製造するための既知の鉄処理システム10が示されている。システム10は、主に、高炉13、および、酸化物に富んだ出発材料を炉13内へ搬送し且つ結果として生じる金属鉄12を炉13から除去するためのコンベア、車などを備える。例示されるシステムにおいて、酸化物に富んだ出発材料は、ペレット14と、焼結物15と、原鉱16とを含む。無論、焼結物15は最低のコストのものであるが、任意の特定の混合物で使用されるペレット14、焼結物15、および、原鉱16の割合は、望まれる出力製品に大きく依存する。
【0015】
[0029]本発明を理解するために必要ないが、高炉13が酸化鉄を化学的に還元して溶融金属鉄へと物理的に変換することにより作用することは言うまでもない。一般に、原料は、炉13の上端へ取り込まれ、数時間にわたって炉を通じて底部へと降下する。原料が炉13の底部に達するまでに、原料は、廃棄または更なる処理のために定期的に排出されて除去されるスラグ(廃液)および溶融鉄へと変換される。
【0016】
[0030]前述したように、焼結物15は、高炉における最もコストが低い供給材料であり、完成した鉄製品の冶金の調整に関して望ましい原料である。したがって、使用に適した焼結物15を製造できる速度および効率は、鉄製造プロセス10全体の製造速度および効率にかなりの影響を与える。
【0017】
[0031]本発明によれば、高炉用の鉄焼結物15は、高品質鉄焼結物のより効率的で効果的な製造のために適合される焼結物処理システム18によって製造することができる。例示される焼結物処理システム18は、図2では、非常に概略的な形態で示されている。一般に、焼結物処理システム18は、多数の材料製品19−22を入力として取り込み、多量の鉄焼結物15をその出力として供給する。入力材料19−22は、一般に、原鉱19および鉄廃棄物20などの酸化物源を含む。更に、石灰石21などのフラックス材料およびコークス22などの燃料材料も含む。一般に、原鉱19、石灰石21、および、コークス22は、反応性を高めて溶融・混合速度を上げるために、細かく粉砕されて押しつぶされる。出力焼結物15は、再利用または廃棄のために小さい粒子(直径0.5”未満)を除去するべく濾過され或いは分離される。
【0018】
[0032]典型的な焼結物処理システム18が図3に更に詳しく示されている。図示の実施形態において、未加工焼結物入力材料19−22は、最初に一緒に混合されて、収納容器24内に収納される。焼結物混合物は、その後、供給ステーション25を介して、収納容器24から、このケースでは点火炉28を含む処理システムの加熱ステージ26へと供給される。供給ステーション25は焼結物混合物をコンベア30上に堆積させ、コンベア30は点火炉28の燃焼室を通じて焼結物混合物を搬送する。図示のコンベア30は多数のペレットカー31から成り、各ペレットカーは、焼結物混合物の層を所望の深さまで受けることができる。既知の方法において、入力材料の混合物19−22は、それが点火炉28を通じて移動する際に、燃焼コークスの熱によって点火されて溶融され、更に大きな断片の状態となる。
【0019】
[0033]加熱ステージ26を通じて材料を移動させることができる速度は、コークスを点火して入力材料201−204を加熱できる炉28の能力に大きく依存する。一般に、加熱速度に関する構造的または冶金学的な制限は無く、むしろ、最大加熱温度に関してのみ構造的または冶金学的な制限がある。すなわち、入力材料を急速に加熱することが望ましいが、700℃などの特定の上限温度を超えないことが望ましい。
【0020】
[0034]図示の点火炉28には、燃焼ガスを炉28から離間するように搬送してそれらの燃焼ガスを大気へ放出できるように洗浄する燃焼ガス洗浄システム32が更に設けられる。また、点火炉28は、炉によって生成される廃棄燃焼ガスの一部を取り込んでそれらをその効率を高めるために元の炉内へと再循環させる排ガス再循環システムも含むことができる。
【0021】
[0035]焼結物は、それが点火炉28を通過した後に冷却されるまで更に処理し或いは使用することができない。したがって、熱い焼結物34は、排出シュート33を通じて点火炉28の端部から出る際、この場合には冷却ユニット36を備える冷却ステージまたはシステム35へと搬送される。図示の冷却ユニット(図4および図5にも示される)は、コンベアの周囲のレール上を走る複数の冷却トラフを含むカルーセルタイプの環状コンベア38から成る。カルーセルコンベア38は、冷却トラフのためのレールを支えるベース40上に支持される(図7および図8参照)。当業者であれば分かるように、他のタイプのコンベア/冷却システムが冷却ステージにあってもよい。例えば、セルラー型、水平テーブル型、または、直線吸引型の冷却ユニットを使用できる。
【0022】
[0036]図示の実施形態において、熱い焼結物34は装填システム42(図3参照)によってカルーセルコンベア38上に供給され、装填システム42は、熱い焼結物を排出シュート33から受けて、それを冷却トラフ内で十分均一に分配する。焼結物は、それが十分に冷却されると、カルーセルコンベア38から、収集ホッパへと排出され、あるいは、スクリーニング領域へ搬送して最終的に収集領域へ搬送するための更なるコンベアへと排出される。
【0023】
[0037]本発明によれば、焼結物処理ラインの冷却システムは、焼結物処理プラントで現在使用される冷却システムよりもかなり急速に且つ均一に熱い焼結物を冷却する。当業者であれば分かるように、焼結された材料を可能な限り急速に冷却して高いスループットを促進することが有益である。これまで、焼結物を冷却できる速度に関する制限は、焼結処理システムのスループットを高めること、ひいては、高炉に装填するために使用される焼結物の量を最適化することをかなり妨げてきた。特に、現在のシステムを用いると、熱がコンベアシステムへの損傷をもたらし得るため、焼結温度の上端が制限される。これは、生産の渋滞を生み出す可能性がある。本発明の冷却システム35は、焼結物処理システム18がかなり高い製造速度をもって動作できるようにすることによりこの生産の渋滞を排除するのに役立ち、したがって、プロセスによって製造される結果的な焼結物はより経済的である。また、冷却システム35は、高い耐破砕性および大きい焼結物断片の対応する高い歩留まりなどの有益な冶金学的特性を促進させる速度および均一性で焼結物を冷却する。本発明は焼結物処理ラインとの関連で説明されるが、ペレット処理において有利な効果を得るためにも本発明の冷却システムを使用できると考えられる。
【0024】
[0038]この目的を達成するため、焼結物冷却システム35は、対流冷却および蒸発冷却の両方を使用する。対流冷却を行なうため、図4に示されるように、カルーセルコンベア38の周囲にわたって複数のファンユニット44、この場合には5つのファンユニット44が周方向に離間した関係を成して配置される。カルーセルコンベア38のベース40によって形成されるエアチャンバ45がコンベアの下側で延びている。各ファンユニット44は、排出プレナム46を通じてエアをエアチャンバ45内へ方向付ける大きいファンから成る。動作中、ファンユニット44は、エアをエアチャンバ45内へ流し込んで、そこから、エアを上方へ押し進めてカルーセルコンベア38上の熱い焼結物34に通過させ、対流冷却を促す。
【0025】
[0039]本発明を踏まえて、焼結物の最適な冷却を行なうため、本発明に係る冷却システム35は1つ以上の蒸発冷却ユニット48を更に含む。図示の実施形態において、冷却システム35は全部で3つの蒸発冷却ユニット48を含み、各蒸発冷却ユニットは、図5−8に示されるようにカルーセルコンベア38上で運ばれる熱い焼結物へ向けて液体、好ましくは水を放出するための複数のエア噴霧スプレーノズル50を含む。特に図7および図8に示されるように、各蒸発冷却ユニット48のスプレーノズル50は、カルーセルコンベア38の下側に、この場合にはエアチャンバ45内に配置されており、コンベアによって運ばれる熱い焼結物へ向けて上方へ放出するように配置される。各蒸発冷却ユニット48のスプレーノズル50は、水が熱い焼結物と接触する際に過熱蒸気が形成されるように十分な水を放出することが望ましい。過剰な水が放出される場合には、焼結物が過剰に湿気を帯びる可能性があり、これは、焼結物の更なる処理に関して問題となる可能性がある。また、過剰な水を用いると、冷却システムの近傍の領域が過剰に湿気を帯びる可能性があり、これも困難を引き起こす可能性がある。また、過剰な水は、カルーセルコンベア38よりも下流側のスクリーンで詰まりを引き起こす可能性もあり、これにより、時間のかかる洗浄作業が必要となる可能性がある。
【0026】
[0040]当業者であれば分かるように、本発明の蒸発冷却ユニットは、図示の環状カルーセルコンベア冷却器以外のタイプの冷却ユニットと共に使用することができる。他のタイプの冷却ユニット(例えば、セルラー、水平テーブル、直線吸引)の場合には、熱い焼結物よりも(エア流れ方向に関して)上流側のエア通路またはダクトにスプレーノズルが設置されることも好ましい。
【0027】
[0041]熱い焼結物の適切なスプレーカバレッジを確保するため、各蒸発冷却ユニット48のスプレーノズル50は、この場合には図5−8に示されるように互いに対向するエアチャンバ45の内外壁53、54に沿って分布される一対の配列を含む複数の配列52に分けられる。スプレーノズル50は、スプレーノズルの対向する配列52間で液体がカルーセルコンベア38の全幅にわたって方向付けられるようにする放出パターンを有して配置されて向けられている。図示の実施形態において、各蒸発冷却ユニット48は、カルーセルコンベア38の下側のエアチャンバ45内に周方向に離間する関係を成す2対の対向するスプレーノズル配列52を含む(図5参照)。この場合、スプレーノズル50の各配列は、エアチャンバ45のそれぞれの壁53、54に沿って延びて該壁に支持される共通の液体マニホールド56に接続される10個のスプレーノズルを含む(図5および図7参照)。また、各配列52のスプレーノズル50は、エアチャンバ45のそれぞれの壁53、54に同様に支持される共通のエアマニホールド57にも接続される。この場合、図6に示されるように、対向する配列52のスプレーノズル50は、カルーセルコンベア38の十分なカバレッジを達成するのに役立つように周方向に千鳥状にされる。使用される特定数のスプレーノズルおよび配列、並びに、それらの配置は、カバーされるべき面積および所望の液体流量によって決まる。
【0028】
[0042]図9に示されるように、各スプレーノズル50は、液体マニホールド56に接続される支持ランス58の端部に配置される。この場合、ランス58は、ランス、したがってスプレーノズルの組み立ておよび位置決めを容易にする調整可能なボール取付具59によって液体マニホールド56に接続される。ランス58は、液体マニホールド56から離れるように垂直に延びる細長い略真っ直ぐな本体部60と、本体部60の下流側の屈曲部61とを含む。この場合、ランス58の本体部60から上方へとエア接続ポート62が延びており、このエア接続ポートに対しては、エアをスプレーノズル50に供給するために、エアマニホールド57へと延びるエアライン63を接続することができる。図示のエアライン63は、エアマニホールド57に接続されるエルボー取付具64と連通する柔軟な導管である。既知の方法で、ランス58は、液体およびエアをスプレーノズル50へ運ぶための内部通路を含む。
【0029】
[0043]スプレーノズル50自体は、ランス58の屈曲部61の下流側端部に配置される。一実施形態によれば、この屈曲部61は、蒸発冷却ユニット48のセットアップおよび調整中に最大の柔軟性を与えるのに役立つように手動または別の方法で調整することができる。ランス58の屈曲部61の望ましい角度は、スプレーノズル50によって形成される放出パターンの角度、カルーセルコンベア38の幅、カルーセルコンベア38の縁に対するスプレーノズルの位置(例えば、図8参照)、および、ノズルとカルーセルコンベアとの間のエアチャンバ内に存在し得る任意の機器または他の障害物を含む幾つかの要因に基づいて決定される。前述したように、スプレーノズル50の位置、傾き角度、および、放出パターンは、スプレーノズルの対向する配列52がカルーセルコンベア38の幅全体の完全なカバレッジを達成するように選択されるべきである。言うまでもなく、スプレーノズル50は、それらが搬送される熱い焼結物の適切なカバレッジを達成する限り、カルーセルコンベア38の下側において特定の場所に或いはパターンで配置される必要はない。例えば、スプレーノズル50は、エアチャンバ45の内外壁53、54に配置されるのではなく、エアチャンバの更に中心の方へ配置することができる。
【0030】
[0044]蒸発冷却ユニット48の効率を最大にするのに役立つように、最小量の圧縮エアを使用して液体を効果的に霧化して分解するべくスプレーノズル50を構成することができる。圧縮エア要件の最小化は、システムのエネルギ消費を減らすことにより、蒸発冷却ユニットの全体の部品コストおよび該ユニットの動作コストを低減するのに役立つ。この場合、図10に示されるように、スプレーノズル50は、基本的に、ノズル本体66と、下流側スプレーチップ67と、ノズル本体とエアガイドとの間に介在されるエアガイド68とを備える。この場合、ノズル本体66は、軸方向に延びる内側液体供給チューブ70と、液体供給チューブ70の周囲のエアチャンバ72と連通する周方向に離間された軸方向に延びる複数のエア通路71とを有する。ノズル本体とランスとの間の緊密なシールを容易にするために、ランス58に接続するノズル本体66の下流側端部には環状シールリング73が設けられる。
【0031】
[0045]スプレーチップ67は、エアガイド68がスプレーチップ67の上流側端部とノズル本体66の下流側端部の座ぐり穴との間に保持された状態で、結合ナット74によってノズル本体66に固定される。液体供給チューブ70の下流側端部およびエアガイド68の中心孔にはそれぞれのテーパ面が形成され、これらのテーパ面は、内側に収束する環状エア通路76を形成する。この環状エア通路76は、環状エアチャンバ72からの加圧エアをスプレーチップ67内の拡大チャンバ77へと方向付け、これと同時に、液体が液体供給チューブ70の下流側排出オリフィス78を通じて方向付けられて出る。排出する液体は、スプレーチップ67内の直立する衝突ピン81によって形成される横断衝突面80に衝突し、該横断衝突面は、該液体が衝突面80に対して横方向に分散される際に機械的な破壊およびエア噴霧液体粒子破壊の両方を促進させる。横方向の液体分散は、衝突ピン81を取り囲む関係を成して配置される複数の周方向に離間される放出オリフィス82を通じたスプレーチップ67からの放出前に環状のエアフローストリームによって更に破壊されて霧化される。図示のスプレーノズル50は、本出願の譲受人によって所有され且つ参照することより本願に組み入れられる米国特許第7,108,203号に開示されるノズルと略同様である。無論、図示のノズルはエア消費の減少に関して利点を有するが、蒸発冷却ユニットは他のタイプのエア噴霧スプレーノズルを使用できる。放出液体の焼結物への適切な浸透を依然として達成しつつ加圧エア要件を最小にするのに役立つように、エアガイドと液体供給チューブの下流側端部とによって形成される環状エア通路は、そのようなスプレーノズルでこれまで使用されたものよりも比較的小さい。
【0032】
[0046]蒸発冷却効果を高めるのに役立つように、各蒸発冷却ユニット48を1つ以上のそれぞれのファンユニット44と関連付けることができる。例えば、図示の実施形態では、各蒸発冷却ユニット48は、それぞれのファンユニット44の排出プレナム46の近傍に配置される。ファンユニット44からのエアは、カルーセルコンベア38上で運ばれる焼結物へ向けて液体を上方へ推し進めるのを助けることにより、蒸発スプレーユニット48によって生成される噴霧液体スプレーと有益な方法で相互作用することが分かった。これは、焼結物への液体浸透を助け、それにより、蒸発冷却効果を高める。しかしながら、別の方法として、1つ以上の蒸発冷却ユニット48が任意のファンユニット44から離れて設置されることも考えられる。この場合、図5に示されるように図示の冷却システム35と関連付けられる3つの蒸発冷却ユニット38がそれぞれ中央の3つのファンユニット44のうちの対応する1つの近傍に配置され、また、最初および最後の或いは5番目のファンユニットが関連する蒸発冷却ユニットを有さない。カルーセルコンベア38の下側のエアチャンバ45への液体マニホールドおよびエアマニホールド56、57の経路付けを容易にするため、図11に示されるようにファンユニット44の排出プレナム46を通じてマニホールドに供給することができる。
【0033】
[0047]本発明を更に踏まえて、図13を参照すると、各蒸発冷却ユニット48は関連する制御パネル88も含むことができる。図示の実施形態において、各蒸発冷却ユニット48と関連付けられる制御パネル88は、カルーセルコンベア38の外周近傍に配置することができる制御ルーム93内に配置される(図12参照)。加圧エアをスプレーノズル50へ供給するため、制御パネル88は、図13に示されるように、様々なエアマニホールド57と連通する関連するエアコンプレッサ89を有する或いは制御することができる。エアコンプレッサ89は、入力大気エアを取り込んで加圧エア流を出力するように既知の方法で機能する。制御パネル88は、個々のエアマニホールド57への加圧エアの供給を開放して遮断するために使用される適切なバルブを更に含んでその動作を指示することができる。図10に示される前述したようなエア消費量が最小のノズルの使用により、幾つかの蒸発冷却ユニット48が(例えば図12に示されるような)共通のエアコンプレッサを共有できる。この場合、蒸発冷却ユニット48のうちの1つ以上の制御パネル88によってコンプレッサの動作を行なうことができ、その場合、個々の制御パネルは、エアコンプレッサからその蒸発冷却ユニットに関連付けられる個々のエアマニホールドへの加圧エアの供給を制御するバルブの動作を指示する。
【0034】
[0048]図13に示されるように、各蒸発冷却ユニットの制御パネル88は、加圧水を液体マニホールド56を介してスプレーノズル50へ供給するために関連するウォータポンプ90を有する或いは制御することができる。ウォータポンプ90は、任意の適切な流体源から入力流体を得ることができるが、本発明の好ましい実施形態では、タンク91を介してポンプに水が供給される。この場合、各蒸発冷却ユニットがそれぞれのタンク91を有し、その場合、各タンクは図12に示されるように制御ルームに隣接して配置される。このようにすると、ポンプ90の入力部における水圧は、重力のみであり、現地の公共の給水源または他の給水源の圧力変動によって影響されない。制御パネル88は、その蒸発冷却ユニット48と関連付けられる個々の液体マニホールド56への流体の供給を開放して遮断するのに適したバルブを更に含んでその動作を指示することができる(図13参照)。圧縮エア供給の制御と同様に、複数の蒸発冷却システム48は、その蒸発冷却ユニット48と関連付けられる流体マニホールドへの流れを制御する個々の制御パネル88を用いて、単一のタンクおよびポンプ90、91によって供給されてもよい。蒸発冷却ユニット48のための制御パネル88は、無論、異なる形態および能力を有することができる。更に、複数の蒸発冷却ユニット48へのエア・流体供給を制御するために単一の制御パネル88が設けられてもよい。本発明の一実施形態によれば、1または複数の制御パネルは、イリノイ州のホイートンのSpraying Systems社から入手できるAutoJet Model 2250 Spray Controllersを備えることができる。
【0035】
[0049]図示の実施形態の場合のように制御パネル、ポンプ、タンク、および、エアコンプレッサのための中央の或いは共通の制御ルームを設ける代わりに、この設備を複数の場所に配置することもできる。例えば、それぞれの蒸発冷却ユニットと関連する設備をその蒸発冷却ユニットの近傍のクラスタ制御ルームまたは更に小型の制御ルーム内に配置することができる。他の配置も可能である。
【0036】
[0050]蒸発冷却ユニット48の動作を自動的に調整できる能力を与えるため、焼結物が所望のポイントまたは場所まで処理された後にカルーセルコンベア38上の焼結物の温度を検出するようになっている温度センサ92を設けることができる。図13に示されるように、温度センサ92は、例えば蒸発冷却ユニットを含む冷却システムの動作の様々な態様の操作を指示するプロセッサまたはコントローラ94と通信できる。コントローラ94は、蒸発冷却ユニット48のうちの1つの制御パネル88に組み込まれ或いは該制御パネルと関連付けられてもよく、あるいは、複数の制御パネル88と関連付けられてもよい。温度センサ92からの情報に基づいて、コントローラ94は、焼結物が非常に急速に或いは非常にゆっくりと冷却している場合にスプレーノズル50からの液滴サイズまたは流量を調整するために必要なステップ(例えば、流体マニホールド56を通じた液体の流れの調整)を実行することができる。任意の適したセンサが使用されてもよいが、本発明の一実施形態において、センサ92は、通過するカルーセルコンベア38に配置される焼結物へと向けられるIR(赤外線)センサを備える。
【0037】
[0051]本発明の更なる実施形態において、センサ92は、例えばコンベア38の幅に関して側方に並んで配置され、および/または、コンベア38の深さに関して上下に配置される個々のセンサの配列を備えることができる。このようにすると、センサ92は、平均温度の表示を生成することができ、あるいは、冷却の均一性を評価するために空間温度分布表示を生成してもよい。例えば、焼結物は、一方側で或いは他方側で急速に冷える場合があり、あるいは、上端または下端で急速に冷える場合がある。これらのエラーを検出することにより、エラーを適時に補正または調整することができる。
【0038】
[0052]それが現在の焼結物処理ラインを用いて容易に達成されない或いは可能でない場合があるが、付加的に或いは代わりに、センサ92からの温度フィードバックを使用して、冷却システムを通じた焼結物の進行の速度を上げ或いは遅くすることもできると考えられる。そのような実施形態において、コントローラ94は、焼結物を運ぶカルーセルコンベア38の動作態様も制御し、また、例えば焼結物が均一に冷えているがそれにもかかわらず測定時に非常に熱い場合には、コントローラ94は、更なる冷却が移動単位毎に行なわれるようにカルーセルコンベア38の速度を調整することができる。
【0039】
[0053]焼結物の漸進的な更なる制御された冷却を行なうため、冷却システム35が複数の冷却領域に分けられてもよい。図示の実施形態では、冷却システム35を全部で5つの冷却領域に分けることができる。その場合、各冷却領域はそれぞれのファンユニットを有し、また、真ん中の3つの冷却領域(すなわち、冷却領域2、3、4)は関連する蒸発冷却ユニット48も有する。この場合、熱い焼結物がカルーセルコンベア38上に供給される場所の直ぐ下流側に配置される第1の冷却領域、および、焼結物がカルーセルコンベアから排出される直前に配置される最後の冷却領域は、関連する蒸発冷却ユニットを有していない。図示の実施形態は、蒸発冷却ユニットを有する3つの冷却領域を含み、全部で5つの冷却領域を含んでいるが、冷却システムがそれよりも多い或いは少ない冷却領域を備えることができ、また、それよりも多い或いは少ない冷却領域に蒸発冷却ユニットを設けることができることは言うまでもない。
【0040】
[0054]図14は、蒸発冷却ユニットが設けられた3つの冷却領域、すなわち、第2の冷却領域96、第3の冷却領域97、および、第4の冷却領域98の動作を示す概略的な流れ図を与えている。前述したように、熱い焼結物34は、点火炉から、蒸発冷却ユニットが設けられていない第1の冷却領域を介して冷却システム35に入る。その後、熱い焼結物は、第1の冷却領域から第2の冷却領域へと通される。熱い焼結物34が第2の冷却領域96を横切ると、熱い焼結物は、図5−8に関して前述した蒸発冷却ユニットなどの第1の蒸発冷却ユニット48aによって冷却される。各冷却領域が複数の蒸発冷却ユニットを備えていてもよく、また、1つ以上の冷却領域が対流冷却用のファンユニットを使用してもよいことは言うまでもない。焼結物34は、第2の冷却領域96内で第1の目標温度T1まで冷やされる。第1の蒸発冷却ユニット48aと関連付けられるコントローラ94(図13参照)は、第2の冷却領域96から出る焼結物がT1とほぼ一致する温度となるように(例えば、スプレーノズルへの液体の流れを調整することにより)冷却ユニット48aの動作を調整するために第2の冷却領域96の出力の温度を検出する。
【0041】
[0055]同様の方法で、第3の冷却領域97は、図14に示されるように焼結物の温度がほぼ目標温度T2となるように第2の蒸発冷却ユニット48bによって焼結物34を更に冷却する。この時点で、焼結物34が第4の冷却領域98に通され、この第4の冷却領域において焼結物の温度が第3の蒸発冷却ユニット48cによってT3まで減少される。T3は、蒸発冷却ユニットを有さない後段の第5の冷却領域から焼結物がそれにとって許容できる出力温度で出ることができるように十分に低くなければならない。特定の動作パラメータに応じて、冷却領域のうちの1つ以上が時々作動しない場合があっても構わない。第1の冷却領域およびその後の冷却領域における初期設定点は、焼結物が冷却システムに入るときの焼結物の温度と焼結物が冷却システムから排出された後の焼結物の浸透性の測定値とを使用して焼結物から除去されなければならない熱量を評価することによって決定することができる。
【0042】
[0056]前述したように、コントローラ94は、蒸発冷却ユニットの動作に加えて、焼結ラインの態様を制御してもよい。例えば、コントローラ94は、ファンユニット44からの情報を制御しおよび/または受けてもよく、また、例えば装填システム42の動作またはカルーセルコンベア38上の焼結物の通過を加速させ或いは遅くすることによって焼結物冷却システム35全体を通じた焼結物の動きを制御してもよい。コントローラ94は、プロセッサまたはコントローラと永久的に或いは一時的に関連付けられる揮発性メモリまたは不揮発性メモリなどのコンピュータ可読メモリに記憶されたコンピュータ可読命令(例えば、マシン、オブジェクト、または、他のコード或いはプログラミング)にしたがって動作することが好ましい。また、コントローラ94は、他のコンピュータまたはコンピュータシステム或いは携帯電話などの通信装置への搬送情報のネットワークリンクを組み込み或いは利用してもよい。リンクは、広域リンク(WAN)、ローカルエリアリンク(LAN)、セルラーリンクなどであってもよく、また、有線または無線であってもよい。本発明の一実施形態において、ネットワークリンクは、インターネットまたはワールドワイドウェブへの直接的な或いは間接的なリンクを備える。
【0043】
[0057]焼結物冷却システム35の制御は、コンピュータ可読媒体、例えば命令を含む揮発性メモリまたは不揮発性メモリ上のコンピュータ実行可能命令、例えばコンパイルされたプログラミング命令の実行によってコントローラ94を介して自動的に実行されるのが好ましい。命令は、本明細書中で説明した幅広い原理を踏まえて任意の適した制御方法をエンコードしてもよい。しかしながら、本発明の一実施形態において、命令は、図15のフローチャートに示されるプロセス100をエンコードする。プロセス100は、焼結物が既に冷却システムに入ったことを前提としているが、コントローラが図示のステップの前または後のステップを制御してもよいことは言うまでもない。
【0044】
[0058]プロセス100のステージ101において、コントローラは、冷却ステージ96における1つ以上の冷却領域の各領域内で焼結物の底面に噴霧水を噴射するように蒸発冷却システムに指示する。この噴霧スプレーは、一般に、各領域内で同様に焼結物へ向けられる強制エアに加えて適用されるが、必ずしもそうである必要はない。ステージ102において、コントローラ94は、各領域の出力で焼結物の温度を決定する。一般に、温度の検出は、前述したIRまたは他のEMF(電磁場)放射線センサなどの非接触手段を使用するとともに、そのような各出力で焼結物の複数のポイントの温度の測定値をもたらす。例えば、2つ以上の温度読取値が、焼結物の幅を横切る異なるポイントで取得されてもよい。あるいは、1つ以上の領域出力で単一のポイントが測定されてもよい。
【0045】
[0059]ステージ103において、コントローラ94は、焼結物の温度を調整するために、1つ以上の冷却領域の蒸発冷却ユニットと関連付けられる1つ以上のノズルまたはノズル配列のスプレー動作を変更する。例えば、本発明の一実施形態において、1つ以上の冷却領域のそれぞれの蒸発冷却ユニット48またはスプレーノズル50の1つの配列などの蒸発冷却ユニットの一部は、その冷却領域の出力の温度に基づいて調整することができる。あるいは、下流側領域の蒸発冷却ユニットのノズルまたはノズル配列の動作を調整するために1つの冷却領域の出力の温度が代わりに或いは付加的に使用されてもよい。これを達成できる1つの方法は、所望の温度のために各冷却領域で加えられるべき水の量を決定する制御アルゴリズムを使用することによるものである。加えられるべき水の量は、その後、例えば、それぞれのウォータポンプ90を調整することによって設定される。測定された温度は、その後、定期的な基準に基づいて所望の温度と比較され、相違がある場合には、制御アルゴリズムを使用して新たな水流量が再計算され、それにしたがって、それぞれのウォータポンプが調整される。
【0046】
[0060]また、一例として、第1の冷却領域の出力の温度読取値は、焼結物の一方側の温度が所望の出力温度を上回るが同じ出力における焼結物の他方側の温度が所望の温度であることを示す場合がある。そのような場合、コントローラ94は、第1の側へ向けられるスプレーノズル配列がそこでの焼結物の温度を低下させるために更に多い流量および/または噴霧を有するように第1の蒸発冷却ユニットを調整してもよい。これに代えて或いはこれに加えて、コントローラ94は、温度の不釣合いを補正するために後段のステージで蒸発冷却ユニットの動作を調整してもよい。最後の領域が後段の領域を有しておらず、したがって、最後の領域の出力での焼結物温度に関する任意の所望の調整が最後のステージで或いは最後のステージの前に実行されなければならないことは言うまでもない。
【0047】
[0061]先と同様、それが現在の焼結物処理ラインを用いて容易に達成されない場合があるが、付加的に或いは代わりに、ステージ104で焼結物が再循環されてもよいと考えられる。例えば、最後の領域の出力における焼結物が所定の閾値温度を超える場合、コントローラ94は、冷却システム35を通じて焼結物を再循環させてもよい。焼結物が冷却システムの円形のカルーセルコンベア上にわたって移動する本発明の図示の実施形態において、コントローラは、焼結物を収集ホッパまたはコンベアへと移すことなく、焼結物をカルーセルコンベア上にとどまらせることができる。最後に、ステージ105では、焼結物が冷却システム35から除去される。
【0048】
[0062]図示の制御ステップが一般に焼結物冷却システム35が作動すると同時に連続的に実行されることは言うまでもない。したがって、コントローラ94は、一般に、各領域の出力を同時に測定するとともに、全ての必要な調整および転換を同時に行なう。しかしながら、理解を容易にするため、プロセス100ではステップが順次的に示されている。
【0049】
[0063]前述した動作は、特定の設置および実施に関する任意の適したパラメータ値を用いて実行されてもよい。しかしながら、本発明の一実施形態では、特定のパラメータ値が、一般に行き渡っており、および/または、望ましいと考えられる。例えば、1250トン/時の設備において、1つの完全な蒸発冷却ユニット48のスプレーノズル50からの放出によって影響される面積は、焼結物密度が約1.6t/mの本発明の一実施形態では、約400mとなり得る。熱い焼結物の温度は、一般に、特定の設置に依存するが、約700℃となる場合があり、その場合、冷却された焼結物の所望の出力温度は約130°〜140℃である。ファンユニット44の流量は、設計者の好みにしたがって変わるが、一般には35mbar圧および環境大気温度で約7000〜8000m/分である。
【0050】
[0064]蒸発冷却ユニット48および含まれるスプレーノズル50は、任意の適切な形態および動作を成すことができるが、本発明の一実施形態において、各蒸発冷却ユニットは、1ノズル当たり約17L/分の水流量(蒸発スプレーユニット毎に340L/分を超える総水流量)を約2.5barの圧力でスプレーノズルへ供給する。本発明のこの実施形態において各蒸発スプレーユニット48によりそのそれぞれのスプレーノズル50へ供給されるエア流は、約2bar〜約4barの圧力で約73kg/hである。前述した図10に示されるノズルを用いると、これが約120−160ミクロンの最大水滴サイズを与え、それは、冷却システム35の1つ以上の領域を冷却するのに適していることが分かった。
【0051】
[0065]従前のシステムと同じ製造速度において、単一の蒸発冷却ユニット48は、出口で約60−80℃の最大焼結物温度降下を与えるとともに、ファンユニットだけを有する冷却領域を使用するシステムと比べて出口で10−20℃の平均温度降下を与えることが分かった。これにより、出力温度を増大させることなく、焼結物製造ライン全体が25%更に急速に動作することができ、それに対応して、生産量がそのような従前のシステムを約25%上回って増大する。
【0052】
[0066]出力される焼結物は、小さい(<5mm)粒子含有量の僅かな(〜0.35%)減少および既知の断片指標(Shatter Index;SI)を使用して測定される断片強度の増大(〜0.6%)を示すことも分かった。処理された焼結物は、高炉供給として使用できるように、直径が約0.5〜2.0インチでなければならない。焼結プロセスによって製造される更に小さい断片は、使用することができず、再び焼結されるように再利用される。したがって、出力される焼結物の小粒子含有量の減少および断片強度の増大は、焼結プロセスの出力および効率を高める。また、これは、出力される焼結物が使用される高炉の出力および効率も高める。
【0053】
[0067]本明細書中で説明される冷却プロセスは、焼結物における亀裂形成を減らすと思われるが、更に重要なことには、亀裂伝播も減らすと思われる。亀裂は、存在するヘマタイトがマグネタイトへ変換する際に焼結物粒子中で始まる。このため、焼結物の気孔率の増大が、更に高いRDI(還元粉化指数)および断片抵抗の増大をもたらす可能性がある。本明細書中で説明される冷却プロセスは、このパラメータおよび他のパラメータに対してプラスの影響を及ぼし、それにより、使用できるサイズの焼結断片の歩留まりが増大すると思われる。これに関連して、ファンユニットによって生成されるエアと共に蒸発冷却ユニットによって生成される液体の均一な分布は、焼結物における応力を減少させるのに役立つソフトな冷却を生み出すのに寄与すると考えられる。
【0054】
[0068]出力される焼結物の金属学的性質は、前述の改良された冷却システムの使用によって高められる場合もある。前述したように、焼結プロセスは、原鉱、フラックス、および、添加物を高温で適切に反応させること、または、それらの材料が未反応のままである場合には当該材料を焼結物構造中に組み込むことを伴う。関与する反応は、複雑であるとともに、含まれる材料の化学的組成、鉱物性、サイズ、気孔率にかなり依存し得る。その最大温度まで加熱された熱い焼結物が冷却し始めると、液体成分が凝固し始め、それにより、多くの種類の鉱物が沈殿する。幾つかのモデルによれば、冷却段階中に沈殿する鉱物は、マグネタイト、ヘマタイト、カルシウムフェライト、および、カルシウムシリケートである。
【0055】
[0069]焼結反応の複雑度は、混合物中で使用される原鉱の増大に伴って高まる。鉄原鉱は、高温において全く異なる特性を与える。焼結反応の複雑さは、焼結によって再利用される冶金プロセス中に生成される産業廃棄物の量の増大によっても非常に影響を受ける。
【0056】
[0070]前述した説明が開示されたシステムおよび技術の一例を与えていることは言うまでもない。しかしながら、開示内容の他の実施が前述した実施例と詳細が異なる場合があることは予期される。本発明および本発明の実施例に対する全ての言及は、その時点で議論される特定の例について言及しようとするものであり、より一般的には本発明の範囲に関する何らかの限定を示唆しようとするものではない。特定の特徴に関する差異および軽視の全ての言語は、それらの特徴における好みの欠如を示そうとするものであるが、専ら別に他に示唆されていなければ本発明の範囲からそのような特徴を排除しようとするものではない。
【0057】
[0071]本明細書中の値の範囲の列挙は、単に、本明細書中で別に他に示唆されていなければ、その範囲内に入るそれぞれの別個の値を個別に示す簡単な方法としての機能を果たすように意図されており、また、それぞれの別個の値は、あたかもそれが本明細書中に個別に列挙されているかのように明細書中に組み入れられる。本明細書中で説明される全ての方法は、本明細書中で別に他に示唆されていなければ或いは文脈によって明らかに矛盾しなければ、任意の適した順序で実行することができる。
【0058】
[0072]したがって、この発明は、適用できる法律によって許可されるように本明細書に添付された請求項に記載される主題の全ての変更および均等物を含む。また、前述した要素のその全ての可能なバリエーションでの任意の組み合わせは、本明細書中で別に他に示唆されていなければ或いは文脈によって明らかに矛盾しなければ、本発明によって包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄焼結物を処理するための装置において、
前記鉄焼結物を加熱するための炉と、
前記鉄焼結物を冷却するために前記炉の下流側に配置される冷却システムであって、エアを前記鉄焼結物へ強制的に流し込むための対流冷却システムと、流体を熱い前記鉄焼結物へと方向付けるための蒸発冷却システムとを含む、冷却システムと、
を備える装置。
【請求項2】
前記蒸発冷却システムが少なくとも1つの液体スプレーノズルを含む請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記液体スプレーノズルがエア噴霧スプレーノズルである請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記蒸発冷却システムが、前記冷却システムを通じた前記鉄焼結物の移動方向で長手方向に離間して配置される複数の液体スプレーノズルを含む請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記蒸発冷却システムが、それぞれが少なくとも1つの液体スプレーノズルを支持する複数のヘッダを含み、前記ヘッダのうちの少なくとも2つのスプレーノズルが前記冷却システムを通じた前記鉄焼結物における移動経路の両端に隣接して配置される請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記蒸発冷却システムが、前記対流冷却システムの強制エアの排出経路中に配置される少なくとも1つの液体スプレーノズルを含む請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記蒸発冷却システムが、タンクを備える液体供給源に接続される請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記冷却システムが複数の冷却領域を備え、各冷却領域が蒸発冷却システムを含む請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記冷却領域のうちの少なくとも1つが対流冷却システムを含む請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記対流冷却システムがファンユニットを含み、該ファンユニットが、前記鉄焼結物が前記冷却システムを通過するときに鉄焼結物と連通するエアチャンバ内へ放出する請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記蒸発冷却システムが、前記鉄焼結物からのエア流れ方向における上流側の前記エアチャンバ内に配置される少なくとも1つのスプレーノズルを含む請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記冷却システムが、該冷却システムを通じて前記鉄焼結物を搬送するためのコンベアを含み、前記エアチャンバが前記コンベアの下側に配置される請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記鉄焼結物の温度を検出するための温度センサと、前記温度センサによって検出される温度に応じて、所定の温度設定に基づき、前記対流冷却システムからの流体の流れを制御するためのコントローラとを更に含む請求項1に記載の装置。
【請求項14】
鉄焼結物を処理するための装置において、
前記鉄焼結物を加熱するための炉と、
前記鉄焼結物を冷却するために前記炉の下流側に配置される冷却システムであって、少なくとも1つのエア通路を通じて前記焼結物の方へと向けられるエアの流れを形成するための装置を有する対流冷却システムと、エアの流れを形成する前記装置の下流側で少なくとも1つのエア通路内に配置される少なくとも1つの液体スプレーノズルを含む蒸発冷却システムと、を含む冷却システムと、
を備える装置。
【請求項15】
前記液体スプレーノズルがエア噴霧スプレーノズルである請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記蒸発冷却システムが、前記冷却システムを通じた前記鉄焼結物の移動方向で長手方向に離間して配置される複数の液体スプレーノズルを含む請求項14に記載の装置。
【請求項17】
前記蒸発冷却システムが、それぞれが少なくとも1つの液体スプレーノズルを支持する複数のヘッダを含み、前記ヘッダのうちの少なくとも2つのスプレーノズルが前記冷却システムを通じた前記鉄焼結物における移動経路の両端に隣接して配置される請求項14に記載の装置。
【請求項18】
前記蒸発冷却システムが、タンクを備える液体供給源に接続される請求項14に記載の装置。
【請求項19】
前記冷却システムが複数の冷却領域を備え、各冷却領域が蒸発冷却システムを含む請求項14に記載の装置。
【請求項20】
前記冷却領域のうちの少なくとも1つが対流冷却システムを含む請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記冷却システムが、該冷却システムを通じて前記鉄焼結物を搬送するためのコンベアを含み、前記エアチャンバが前記コンベアの下側に配置される請求項14に記載の装置。
【請求項22】
前記鉄焼結物の温度を検出するための温度センサと、前記温度センサによって検出される温度に応じて、所定の温度設定に基づき、少なくとも1つのスプレーノズルへの流体の流れを制御するためのコントローラとを更に含む請求項14に記載の装置。
【請求項23】
鉄焼結物を処理するための装置において、
前記鉄焼結物を加熱するための炉と、
前記鉄焼結物を冷却するために前記炉の下流側に配置される冷却システムであって、該冷却システムが前記鉄焼結物を複数の冷却領域に通し、各冷却領域が、鉄焼結物がそれぞれの冷却領域を通過する際に前記鉄焼結物の少なくとも一部へと流体を方向付けるための少なくとも1つの液体スプレーノズルを有する蒸発冷却システムを含み、各冷却領域が、それぞれの冷却領域で前記鉄焼結物の温度を検出するためのそれぞれの温度センサを含む、冷却システムと、
前記各冷却領域の前記温度センサによって検出される温度に応じて、所定の温度設定に基づき、1つ以上の前記冷却領域の少なくとも1つのスプレーノズルの動作を独立に制御するためのコントローラと、
を備える装置。
【請求項24】
前記冷却領域のうちの少なくとも1つが対流冷却システムを含む請求項23に記載の装置。
【請求項25】
前記対流冷却システムが、焼結物へと向けられるエアの流れを形成するための装置を含む請求項24に記載の装置。
【請求項26】
前記対流冷却システムを有する前記冷却領域のスプレーノズルが、エアの流れを形成するための前記装置の下流側であって前記鉄焼結物からのエア流れ方向における上流側に配置される請求項25に記載の装置。
【請求項27】
前記冷却システムが、前記複数の冷却領域を通じて前記鉄焼結物を搬送するためのコンベアを含む請求項23に記載の装置。
【請求項28】
前記液体スプレーノズルがエア噴霧スプレーノズルである請求項23に記載の装置。
【請求項29】
前記蒸発冷却システムが、前記冷却領域を通じた前記鉄焼結物の移動方向で長手方向に離間して配置される複数の液体スプレーノズルを含む請求項23に記載の装置。
【請求項30】
前記蒸発冷却システムが、それぞれが少なくとも1つの液体スプレーノズルを支持する複数のヘッダを含み、前記ヘッダのうちの少なくとも2つのスプレーノズルが前記冷却領域を通じた鉄焼結物における移動経路の両端に隣接して配置される請求項23に記載の装置。
【請求項31】
前記蒸発冷却システムが、タンクを備える液体供給源に接続される請求項23に記載の装置。
【請求項32】
前記コントローラが、前記各冷却領域の前記温度センサによって検出される温度に応じて、それぞれの温度センサが配置される冷却領域のスプレーノズルの動作を制御する請求項23に記載の装置。
【請求項33】
前記コントローラが、前記各冷却領域の前記温度センサによって検出される温度に応じて、それぞれの温度センサが配置される冷却領域の下流側の冷却領域のスプレーノズルの動作を制御する請求項23に記載の装置。
【請求項34】
前記コントローラが、前記冷却領域のうちの少なくとも1つの前記温度センサに応じて、前記対流冷却システムの動作を制御する請求項24に記載の装置。
【請求項35】
前記コントローラが、該コントローラの所定の温度設定に基づいて、1つ以上の前記冷却領域の少なくとも1つの前記スプレーノズルからの流体の流れを制御する請求項24に記載の装置。
【請求項36】
鉄焼結物を処理するための方法において、
前記焼結物を加熱するステップと、
加熱された前記焼結物を複数の冷却領域を通じて所定の経路で方向付けるステップであって、前記各冷却領域内で冷却流体が加熱された前記焼結物へ向けられるステップと、
加熱された前記焼結物の温度を前記各冷却領域内で検出するステップと、
それぞれの前記冷却領域内で検出された温度に基づいて、1つ以上の冷却領域内の冷却流体の方向を独立に制御するステップと、
を備える方法。
【請求項37】
前記冷却領域のうちの少なくとも1つにおいてエアを加熱された前記焼結物へ強制的に流し込むことを含む請求項36に記載の方法。
【請求項38】
加熱された前記焼結物へエアが強制的に流し込まれる冷却領域において、前記冷却流体が、強制エア源の下流側の位置から加熱された前記焼結物へと方向付けられる請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記冷却領域のうちの少なくとも1つで検出される温度に基づいて少なくとも1つの冷却領域内で強制エアを方向付けることを含む請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記各冷却領域内における冷却流体の方向の制御が、それぞれの前記冷却領域で検出される温度に基づいている請求項36に記載の方法。
【請求項41】
前記冷却領域のうちの少なくとも1つにおける冷却流体の方向の制御が、加熱された前記焼結物の前記経路を通じた移動方向における前記冷却領域の上流側の冷却領域で検出される温度に基づいている請求項36に記載の方法。
【請求項42】
前記冷却領域のうちの少なくとも1つにおいて熱い焼結物経路の横幅にわたる異なる点で温度を検出することを含む請求項36に記載の方法。
【請求項43】
前記熱い焼結物経路の横幅にわたって温度が検出される少なくとも1つの冷却領域で前記熱い焼結物経路の横幅にわたって流体の方向を制御することを含む請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記冷却領域それぞれで検出される温度に基づいて1つ以上の前記冷却領域で前記冷却流体の流れを独立に制御することを含む請求項36に記載の方法。
【請求項45】
前記冷却流体が、前記各冷却領域において1つ以上のスプレーノズルにより加熱された前記焼結物に向けられる請求項36に記載の方法。
【請求項46】
鉄焼結物を処理するための装置において、
前記鉄焼結物を加熱するための炉と、
前記鉄焼結物を冷却するために前記炉の下流側に配置される冷却システムであって、該冷却システムを通じて前記鉄焼結物を搬送するためのコンベアと、該コンベアの下側に配置され且つ前記コンベア上で運ばれる前記鉄焼結物へと流体を上方へ向けるように方向付けられる少なくとも1つのスプレーノズルを含む蒸発冷却システムとを含む、冷却システムと、
を備える装置。
【請求項47】
前記蒸発冷却システムが、前記コンベアの移動方向で長手方向に離間して配置される複数の液体スプレーノズルを含む請求項46に記載の装置。
【請求項48】
前記蒸発冷却システムが、それぞれが少なくとも1つの液体スプレーノズルを支持する複数のヘッダを含み、前記ヘッダのうちの少なくとも2つのスプレーノズルが前記コンベアの両側縁に隣接して配置される請求項46に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2010−526275(P2010−526275A)
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−506610(P2010−506610)
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【国際出願番号】PCT/US2008/062053
【国際公開番号】WO2008/134739
【国際公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(595170502)スプレイング システムズ カンパニー (18)
【Fターム(参考)】