説明

焼結鉱製造用の改質炭材及びその製造方法

【課題】低温度領域でのNOxの発生を抑制し、焼結機の生産性を阻害することのない焼結鉱製造用の改質炭材及びその製造方法を提供する。
【解決手段】炭材表面に、石灰系原料由来のCaを36質量%以上含有する被覆物を被覆した焼結鉱製造用の改質炭材であって、1mm以上の改質炭材の表面被覆物に含有するCaが4〜42g/mであり、かつ、1mm未満、0.25mm以上の改質炭材の表面被覆物に含有するCaが5〜20g/mであることを特徴とする焼結鉱製造用の改質炭材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼結鉱製造用の改質炭材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製鐵所の焼結鉱製造においては、燃料として使用する炭材の燃焼により排ガス中に窒素酸化物(NOx)が発生する。このNOxの低減は、大気汚染の改善において、重要な課題である。当該NOxを低減する手段として、アンモニアを還元剤とする排ガス脱硝技術がある。
しかし、当該技術に係る排ガス脱硝設備は建設費が高額で、またアンモニアが高価である為に操業費が高くなる。また、窒素の含有量が少ない無煙炭を使用する手段もあるが、窒素の含有量が少ない無煙炭は、資源枯渇により採掘環境が劣化してきており、その使用は制限をうける。
【0003】
一方、焼結鉱の製造方法によるものとして、触媒によるNOxの除去技術が開示されている(特許文献1参照)。CaO含有量が5〜50重量%であるCaO−FexO系複合酸化物を主成分とする触媒であり、窒素酸化物を還元または分解して窒素酸化物を除去する技術である。
粗コークス粒体の表面に上記触媒を被覆する造粒体(S型)によるものと、微細コークス粒体と微粉末の上記触媒を混合した造粒体(P型)によるものが開示されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−15174号公報
【特許文献2】特開平8−60257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記微細コークス粒体と上記微粉末触媒が混合した造粒体(P型)によるNOxの除去技術の場合、1,000℃以下の低温度領域でのNOxの低減効果が小さいという問題がある(特許文献2の図7参照)。この理由は、後述するように、コークスの燃焼によるNOxは、低温領域で多く発生する性質があるが、造粒体(P型)の中の微細コークス粒体は低温領域で燃焼してしまうために、NOxが多量に発生し、NOx除去の効果は小さくなるものと考えられる。一方、粗コークス粒体の表面に上記触媒を被覆した造粒体(S型)によるNOxの除去技術の場合、コークス表面を十分に被覆すると、コークスの燃焼速度が遅くなり、焼結機の生産性を阻害する弊害が生じる(特許文献2の図3参照)。
このため、コークスの表面が露出する程度に被覆せざるを得ず、NOx除去の効果が低下するという問題がある(特許文献2の図2、図4、請求項4参照)。
【0006】
本発明の目的は、(1)低温領域でのNOxの発生を抑制し、かつ、(2)焼結機の生産性を阻害することのない焼結鉱製造用の改質炭材及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)炭材表面に、石灰系原料由来のCaを36質量%以上含有する被覆物を被覆した焼結鉱製造用の改質炭材であって、
1mm以上の改質炭材の表面被覆物に含有するCaが4〜42g/mであり、かつ、
1mm未満、0.25mm以上の改質炭材の表面被覆物に含有するCaが5〜20g/mであることを特徴とする焼結鉱製造用の改質炭材。
(2)前記(1)に記載の焼結鉱製造用の改質炭材であって、
0.25mm未満の改質炭材が、全体の改質炭材の量に対し、17質量%以下であることを特徴とする焼結鉱製造用の改質炭材。
(3)前記(1)に記載の焼結鉱製造用の改質炭材の製造方法であって、
1mm以上の炭材の表面被覆物に含有するCaが4g/m未満、又は、
1mm未満、0.25mm以上の炭材の表面被覆物に含有するCaが5g/m未満の少なくともいずれかのときに、
炭材の量に対する石灰系原料の添加量を増加し、表面被覆物に含有するCaを増量することを特徴とする焼結鉱製造用の改質炭材の製造方法。
(4)前記(1)に記載の焼結鉱製造用の改質炭材の製造方法であって、
1mm以上の炭材の表面被覆物に含有するCaが42g/m以上、又は、
1mm未満、0.25mm以上の炭材の表面被覆物に含有するCaが20g/m以上の少なくともいずれかのときに、
炭材の量に対する石灰系原料の添加量を減少し、表面被覆物に含有するCaを減量することを特徴とする焼結鉱製造用の改質炭材の製造方法。
(5)前記(2)に記載の焼結鉱製造用の改質炭材の製造方法であって、
粉鉄鉱石、炭材、石灰系原料その他の副原料の混合、造粒において、
0.25mm未満の炭材が、全体の炭材の量に対し、17質量%を超えるとき、
混合、造粒の水分を増加し、かつ混合、造粒の時間を長くすることを特徴とする焼結鉱製造用の改質炭材の製造方法。
ここに粒子径は直径を用いて表記している。
【発明の効果】
【0008】
低温領域でのNOxの発生を抑制し、焼結機の生産性を阻害することのない焼結鉱製造用の改質炭材及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】NOx転換率と温度の関係を示す図。
【図2】コークス粒径とNOx発生量の関係を示す図。
【図3】焼結鍋試験装置の概略図。
【図4】1mm以上のコークスの表面被覆物に含有するCa量(g/m)とNOx転換率の関係を示す図
【図5】1mm未満、0.25mm以上のコークスの表面被覆物に含有するCa量(g/m)とNOx転換率の関係を示す図
【図6】0.25mm未満のコークスが、全体のコークスの量に占める割合とNOx転換率の関係を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
コークス燃焼によるNOx転換率と温度の関係を図1に示す。ここで、NOx転換率は、下記の式(1)により算出したものである。
【0011】
NOx転換率(mol%)
=100×NOx発生量(mol)/燃料窒素入量(mol)・・・・・(1)
【0012】
焼結で生成するNOxは、炭材中の窒素が酸化したものであり、図1に示されるように、1,000℃以下の低温で生成することが確認されている。したがって、NOx生成を抑制するためには、炭材を極力、高温燃焼させることが重要である。
ここで、炭材とは、コークス、無煙炭その他の焼結鉱製造に用いられる燃料をいう。
【0013】
また、炭材中の微粉は、低温で燃焼し、NOxを増大させる。コークス粒度とNOx発生量の関係を図2に示す。炭材中の微粉は、燃焼速度が速く、低温で燃焼が完了するため、NOxを増大させると考えられる。微粉炭材を除去することができれば、NOx発生量を低減できると考えられる。
【0014】
微粉炭材を除去したとしても、NOx発生を抑制するためには、炭材の低温燃焼を避け、高温燃焼させる必要がある。炭材表面を高温領域で溶融する被覆層で覆い、低温領域で周囲の大気中の酸素を遮断できれば、NOx発生を抑制することができる。
【0015】
特許文献1には、CaO含有量が5〜50重量%のCaO−FexO系複合酸化物を表面に被覆した炭材を用いてCaO−FexO系複合酸化物の触媒作用により、炭材の燃焼時に生成するNOxを還元または分解し除去することが開示されている。このCaO含有量を50重量%以下に制限したCaO−FexO系複合酸化物は、融点が低く、1200℃以上の高温域で溶融するため、これを炭材の表面に被覆することで、ある程度のNOx低減効果は期待される。
【0016】
しかしながら、CaO−FexO系複合酸化物は、石灰系原料と鉄鉱石を溶融成形して製造されるため通常の焼結で副原料として使用される石灰系原料に比べて高価である。本発明は、上記のような高価な酸化物を用いずに通常の焼結副原料として用いられる石灰系原料を炭材表面の被覆物として用い、被覆物層中のCaO成分の含有量をCa換算で36質量%以上とすることにより炭材燃焼時のNOx低減を可能とするものである。
【0017】
本発明において、炭材表面の被覆層は、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、石灰乳、ホタル石などの石灰系原料を含有していることが望ましく、これらの混合物でもよい。石灰系原料は溶剤としての機能を有しており、高温下で周囲に存在する鉄鉱石粉と容易に低融点物質のカルシウムフェライトを生成し溶融することで炭材の燃焼を促進し高温燃焼を可能とするためである。被覆層に含有する石灰系原料は水酸化カルシウムが特に望ましい。水酸化カルシウムはバインダーとなり炭材表面に密着した被覆層を形成するため、配合原料との混合時や、焼結機への原料装入までの搬送過程での炭材表面の被覆物の脱離が抑制できるためである。
【0018】
炭材表面の石灰系原料由来の被覆層中のCa含有量は、36質量%以上とした。
Ca含有量が36質量%未満では、溶剤量が少なく、周囲は鉄鉱石濃度が高い状態であり、炭材表面での溶融反応が遅くなり炭材の燃焼を促進させる効果が小さくなるためである。
【0019】
石灰系原料に水酸化カルシウムを用いる場合は、被覆層中の水酸化カルシウムの含有量を67質量%以上とすることがより望ましく、100質量%とすることが特に望ましい。さらに石灰系原料として炭酸カルシウムや石灰乳、ホタル石などを用いる場合は被覆層中のこれらの化合物の含有量を100質量%とすることが特に望ましい。
【0020】
焼結で生成するNOxは、炭材の1,000℃以下の低温燃焼で生成されるため、NOx生成を抑制するためには、炭材の低温燃焼を抑制し、極力高温燃焼させることが必要である。
炭材の燃焼初期である低温領域では炭材表面は被覆層で覆われているため、被覆層内の炭材の燃焼を抑えてNOxの発生を抑制するが、1,200℃以上の高温領域に到達すると、被覆層中の石灰系原料由来のCaOは、周囲の鉱石と反応し、低融点のカルシウムフェライトとして溶融し、溶け落ちる。炭材表面は、被覆層が消失して裸の状態になるが、裸の状態の炭材であっても、すでに、1,200℃以上の高温領域での燃焼であるため、NOx発生は少なく、活発な燃焼によって生産性を損なわない。
【0021】
以上のことより、焼結工程でNOxの発生を抑制するには、(1)粗粒炭材の表面を石灰系原料由来のCaを36質量%以上含有する被覆物で被覆することが必要であり、さらに(2)微粉炭材を除去することが好ましい。
【0022】
本発明に係る改質炭材においては、1mm以上の粗粒炭材の表面被覆物に含有するCaが4〜42g/mであり、1mm未満、0.25mm以上の粗粒炭材の表面被覆物に含有するCaが5〜20g/mであることを特徴とする。これらの粗粒炭材のCa付着量が少ないと、炭材表面の被覆物の層厚が薄くなり、一部の表面が露出し、低温域での大気中の酸素の遮断によるNOx低減効果が得られなくなるからである。又、粗粒炭材と鉄鉱石、返鉱等との混合工程又はその後のハンドリング工程で、粗粒炭材の表面被覆が剥離し、被覆層のNOx抑制効果が減少するからである。
粗粒炭材の表面被覆物が過多の場合、NOx抑制に支障をきたす。即ち、1mm以上の炭材の単位面積当りの被覆物に含有するCaが42g/mを超え、又は、1mm未満、0.25mm以上の炭材の表面被覆物に含有するCaが20g/mを超えるとき、高温域で石灰系原料からカルシウムフェライト生成が遅れることで高温域での炭材の燃焼を阻害し、焼結機の生産性を低下させるからである。
【0023】
本発明に係る改質炭材は、0.25mm未満の微粉炭材が、全体の炭材の量に対し、17質量%以下であることが好ましい。前述のように、微粉炭材は、燃焼速度が速く、低温で燃焼が完了するため、NOxを増大させるからである。
【0024】
本発明における原料の混合、造粒方法を説明する。
なお、以下の説明では、表面被覆炭材は、表面被覆物として石灰系原料の他に粉鉄鉱石の原料を用いた実施形態を示したが、これに限定されるものではない。つまり、表面被覆物中の石灰系原料由来のCa含有量が36質量%以上であれば、石灰系原料以外の他の原料として、粉鉄鉱石その他の原料を用いることができる。なお、ここで、粉鉄鉱石その他の原料としては、粉鉄鉱石、石灰系原料以外の副原料(珪石、蛇紋岩、かんらん岩等)を意味する。
【0025】
表面被覆炭材は、粗粒炭材を核粒子として石灰系原料及び粉鉄鉱石を混合、造粒することで製造される。前記粉鉄鉱石は、製鐵所内の発生ダストが含まれていてもよい。粗粒炭材を粉鉄鉱石及び石灰系原料と混合、造粒する方法は、ドラムミキサー、遠心力利用造粒機その他の混合、造粒機であればよい。これにより、粗粒炭材を核粒子として、石灰系原料および粉鉄鉱石が被覆された表面被覆炭材が形成される。石灰系原料としてバインダー機能のない炭酸カルシウム、石灰乳、ホタル石などを用いる場合は、これらにバインダーを添加することが望ましい。バインダーは有機系バインダーのCMCやアラビアゴム、無機系バインダーの水ガラスなどがある。バインダー添加により炭材表面に密着した被覆層が形成されるため、配合原料との混合時や、焼結機への原料装入までの搬送過程で炭材表面の被覆物の脱離を抑制し、焼結時に発生するNOxをより安定的に低減することができる。
表面被覆炭材は、粗粒炭材と石灰系原料を混合、造粒することで製造してもよい。この場合は、表面被覆炭材の被覆層は、石灰系原料のみからなる。
【0026】
次に、表面被覆炭材は、別途、表面被覆炭材に用いられる原料以外の原料からなる配合原料に添加される。即ち、別途、表面被覆炭材に用いられる原料以外の原料をドラムミキサーその他の混合、造粒機により混合、造粒して製造した造粒物に、表面被覆炭材は添加され、混合される。別途、表面被覆炭材以外の原料を混合、造粒した造粒物に、表面被覆炭材を添加し、混合するのは、石灰系原料が炭材以外の配合原料の表面に付着するのを避けるためである。又、配合原料の混合、造粒の際に、改質炭材の被覆層が崩壊、剥離されてしまうことを避けるためである。
【0027】
本発明の1,2に規定する石灰の被覆状態を得るために、炭材と石灰源原料の比率や水分、造粒時間などの造粒条件を制御することになる。しかし、その適正値を事前に予測することは困難である。従って、実際の製造は試行錯誤的に行う。すなわち、ある条件で製造して得た表面被覆炭材を分析し、その結果を踏まえて操業条件を調整する。また、この手続きは日常の操業変動にともなう操業調整の場合も同様である。
具体的には、本発明の3〜5で規定した方法が好ましい。すなわち、
1mm以上の炭材の表面被覆物に含有するCaが4g/m未満、又は、1mm未満、0.25mm以上の炭材の表面被覆物に含有するCaが5g/m未満の少なくともいずれかのときは、炭材の表面に付着した表面被覆物の量が少なく、NOx生成を抑制する効果が小さい。このような場合は、炭材の量に対する石灰系原料の添加量を増加し、表面被覆物に含有するCaを増量することで、NOx生成を抑制することができる焼結鉱製造用の改質炭材を製造することができる。
【0028】
一方、1mm以上の炭材の表面被覆物に含有するCaが42g/m以上、又は、1mm未満、0.25mm以上の炭材の表面被覆物に含有するCaが20g/m以上の少なくともいずれかのときは、炭材に対する石灰系原料の表面被覆物の量が過多となり、炭材の燃焼の障害となる虞がある。このような場合は、炭材の量に対する石灰系原料の添加量を減量し、表面被覆物に含有するCaを減少することで、適切な焼結鉱製造用の改質炭材を製造することができる。
【0029】
又、粉鉄鉱石、炭材、石灰系原料その他の副原料の混合、造粒において、0.25mm未満の炭材が、全体の炭材の量に対し、17質量%を超えるときは、炭材の造粒が不十分で、微粉炭材が過多である。このような場合は、混合、造粒の水分を増加し、かつ混合、造粒の時間を長くすることで、微粉の少ない焼結鉱製造用の改質炭材を製造することができる。
【実施例】
【0030】
次に、本発明における被覆厚み等の決定根拠および本発明の効果を実施例を用いて説明する。なお、本発明の実施の形態は、これに限られるものではない。
焼結NOx生成に及ぼす単位面積当りの被覆物に含有するCaの影響をコークス粒度毎に調査する実験を行った。実施に用いた焼結鍋試験装置の概略図を図3に示す。
この焼結鍋試験装置は、点火炉1、焼結鍋2、風箱3、ブロアー4及び分析計5を備える。
この焼結鍋試験装置では、焼結鍋2に試験体となる表面被覆炭材を装入し、点火炉1で点火して表面被覆炭材を加熱する。同時にブロアー4を起動して、風箱3を介して焼結鍋2で生じた排気ガスを排出し、この排気ガスを分析計5で分析する。
石灰被覆炭材は粉コークスと消石灰に水分を添加しながら混練造粒処理して製造した。消石灰配合量は粉コークスの質量に対して10〜40%(内数)、混練造粒時間は1〜4分、石灰被覆炭材の水分は8〜14.5%の範囲で変更し、種々の被覆厚みとなるものとした。
完成した前記炭材のCa分の被覆厚みを、次のように測定した。粉コークスの粒度分布データから表面積を計算し、石灰被覆炭材を分級して取り出した0.25mm以上1mm未満の粒子および1mm以上の粒子についてCaとCの成分分析を行う。以上の結果より、被覆量に対応するCa/Cの値を粉コークスの表面積で除して被覆厚みの指標を計算した。
焼結鍋2の直径は、300mm、層高600mmであり、排ガスはCO,CO,O,NOx,SOxを分析した。前記石灰被覆炭材と鉱石等に水分7.5質量%を外添し、直径1,000mmのドラムミキサーを用いて4分間、混合、造粒した。造粒に際しては石灰被覆炭材の造粒中の崩壊を防止するため、それ以外の原料をまず3分間造粒し、その後石灰被覆炭材を加えて1分造粒した。
混合、造粒した配合原料を焼結鍋試験装置に充填し、点火90秒、風量1.6Nm/分一定の条件で焼成した。焼成中は、層高の異なる3ヶ所で焼結層内の温度測定と排ガス中のNOxの濃度を測定した。試験に用いた原料配合を表1に示す。以下、表中の%は質量%を意味する。
【0031】
【表1】

【0032】
コークスは、平均粒径が、1.2mmのもの(粒度1)と、2.1mmのもの(粒度2)の2種類を用いた。粒度分布と表面積を表2に示す。粉コークス表面積は以下のように算出した。まず、粉コークスを0.25mm、0.5mm、1mm、3mmで分級し粒度区分ごとの質量比率を求めた。粒度区分ごとの粉コークスは粒度区分の代表径rを持つ球体と仮定し、1粒子あたりの表面積は4πr、体積は(4/3)・πrで計算した。これらの値と1mg/mmとした粉コークス密度を用いて重量あたりの表面積を求めた後、粒度区分ごとの質量比率を掛け合わせて全体の粉コークス表面積を算出した。
【0033】
【表2】

【0034】
NOx転換率(ηNO)は、式(2)により算出した。

ηNO=100×NOx/((CO+CO)・NCOKE/(CLPG+CCOKE+CLS))/10000
・・・・・・・・(2)
ただし、ηNO:NOx転換率(%)、NOx:排ガスNOx(ppm)
CO:排ガスCO(%)、CO:排ガスCO(%)、
COKE:コークス中N(mol)、CLPG:点火ガス中C(mol)、
COKE:コークス中C(mol)、CLS:石灰石中C(mol)
【0035】
1mm以上コークスの単位面積当りの被覆物に含有するCaとNOx転換率の関係を図4に示す。表面被覆していない通常のコークスの場合、NOx転換率は、26%を超える。表面被覆量が、4g/m未満の場合、又は42g/m以上の場合、NOx転換率は、24.9%を超えた。これに対し、4〜42g/mCaを被覆した場合は、NOx転換率は、24.9%未満であった。
【0036】
1mm未満、0.25mm以上のコークスの単位面積当りの被覆物に含有するCaとNOx転換率の関係を図5に示す。5〜20g/mCaを被覆した場合は、NOx転換率は、24.9%未満であった。
【0037】
図4及び図5に示す実施例におけるNOx転換率のデータを表3に示す。1mm以上の炭材の表面被覆物に含有するCaが4〜42g/mであり、1mm未満、0.25mm以上の炭材の表面被覆物に含有するCaが5〜20g/mの場合に、NOx転換率が小さいことを示している。
【表3】

【0038】
0.25mm未満のコークスの全体の被覆コークスに対する割合とNOx転換率の関係を図6に示す。0.25mm未満のコークスの全体の被覆コークスに対する割合が17質量%以下の場合、NOx転換率は、低下した。
さらに、図4〜図5においてコークスの元の粒度の違いによる適正被覆厚みの差は認められないことから、本発明の規定が石灰被覆炭材の幅広い粒度構成に亘って適用できることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0039】
低温領域でのNOxの発生を抑制し、焼結機の生産性を阻害することのない粉コークス燃焼制御による焼結NOxの低減を図ることができる。
【符号の説明】
【0040】
1…点火炉、2…焼結鍋、3…風箱、4…ブロアー、5…分析計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭材表面に、石灰系原料由来のCaを36質量%以上含有する被覆物を被覆した焼結鉱製造用の改質炭材であって、
1mm以上の改質炭材の表面被覆物に含有するCaが4〜42g/mであり、かつ、
1mm未満、0.25mm以上の改質炭材の表面被覆物に含有するCaが5〜20g/mであることを特徴とする焼結鉱製造用の改質炭材。
【請求項2】
請求項1に記載の焼結鉱製造用の改質炭材であって、
0.25mm未満の改質炭材が、全体の改質炭材の量に対し、17質量%以下であることを特徴とする焼結鉱製造用の改質炭材。
【請求項3】
請求項1に記載の焼結鉱製造用の改質炭材の製造方法であって、
1mm以上の炭材の表面被覆物に含有するCaが4g/m未満、又は、
1mm未満、0.25mm以上の炭材の表面被覆物に含有するCaが5g/m未満の少なくともいずれかのときに、
炭材の量に対する石灰系原料の添加量を増加し、表面被覆物に含有するCaを増量することを特徴とする焼結鉱製造用の改質炭材の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の焼結鉱製造用の改質炭材の製造方法であって、
1mm以上の炭材の表面被覆物に含有するCaが42g/m以上、又は、
1mm未満、0.25mm以上の炭材の表面被覆物に含有するCaが20g/m以上の少なくともいずれかのときに、
炭材の量に対する石灰系原料の添加量を減少し、表面被覆物に含有するCaを減量することを特徴とする焼結鉱製造用の改質炭材の製造方法。
【請求項5】
請求項2に記載の焼結鉱製造用の改質炭材の製造方法であって、
0.25mm未満の炭材が、全体の炭材の量に対し、17質量%を超えるとき、
混合、造粒の水分を増加し、かつ混合、造粒の時間を長くすることを特徴とする焼結鉱製造用の改質炭材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−172067(P2012−172067A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−35740(P2011−35740)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】