説明

焼菓子の製造方法

【課題】内部はソフトでしっとりしたケーキ特有の食感であるが、表面が硬くカリカリした食感であり、且つ経日的な食感の変化がない焼菓子を製造するための、焼菓子の製造方法を提供すること。
【解決手段】ケーキ生地の上面に、粉糖、卵白、及び、油脂を混合してなるペースト状生地を絞り、その後、焼成することを特徴とする、焼菓子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部はソフトでしっとりしたケーキ特有の食感であるが、表面が硬くカリカリした食感である焼菓子を得るための焼菓子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
焼菓子の生地は、水分含量の低い順に大まかにバッター、ドー、ペーストの3種に分類される。(非特許文献1参照)
ここで、スポンジケーキ生地やバターケーキ生地、マフィン生地、シュー生地等の水分が多く常温で流動性を有する焼菓子生地、すなわちバッターは、焼成時にカップ状の型展板やパウンドケーキ型、スポンジケーキ型などの金属製焼型や、カップケーキ型、マフィンケーキ型等の紙製の焼型を使用する。そして、得られた焼菓子も、水分が多く、油分が比較的少ないため、ソフトなしっとりした食感を有する。
【0003】
一方、クッキー生地、サブレ生地、ガレット生地、練パイ生地、タルト生地などの、油脂を多く含有し焼きあがりがサクサクした食感となるペースト状の焼菓子生地、すなわち、ショートペーストは、水分含量が少なく、常温で流動性がなく、膨張性がほとんどないため、成形した形状そのままの形で焼きあがるので焼型を使用することはほとんどなく、通常は平展板で焼成する。そして、得られた焼菓子も、水分が少なく、油分が比較的多いため、歯切れがよく、硬い食感を有する。
ところが最近は、焼菓子に対する要求が多様化し、内部はソフトでしっとりし、且つ表面がカリカリした食感であるような複数の複雑な食感を有する焼菓子も求められている。
【0004】
このような焼菓子の代表例としては、マカロンがある。このマカロンは、卵白と粉糖を主体とした焼菓子生地を、焼成温度を変えながら、ゆっくり低温で焼き上げることによって得られる焼菓子である。しかし、油脂分が含まれていたり、焼成条件が少しでも好ましい範囲から外れると焼成中にしぼんでしまい潰れた形状となってしまうなど、製造に熟練が必要であり、安定して製造することができないものである。
【0005】
一方、ケーキ生地を単独で使用し、その表面に各種食品素材を付着させてから焼成することで、上記目的を達成する方法も提案されている。
たとえば、穀粉及び粉糖を特定比で混合した粉末状素材を、ケーキ生地表面に付着させてから焼成する方法(例えば特許文献1参照)、粉糖を振りかけてから時間を置いて再度粉糖を振り掛けてから焼成する方法(例えば特許文献2参照)が提案されている。
しかし、これらの方法では、焼成当初は表面は硬い食感であるが、経日的にその食感が失われ、全体としてソフトでべとついた食感となってしまう問題があった。
【0006】
そのため単一の生地を使用するのではなく、複数の焼菓子生地を使用した複合焼菓子生地を使用する方法が考えられた。
例えば、外包材をクッキー生地、内包材をスポンジケーキ生地とした複合焼菓子生地を焼成して得られた複合焼菓子(例えば特許文献3参照)が知られている。
しかし、特許文献3に記載の複合焼菓子は、焼成時の生地漏れを防止するため、内包材に極めて多量のゲル化材を含有するケーキ生地を使用することが必要であるため、ケーキ生地部分の食感が極めて重く口溶けの悪いものとなってしまう問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平02−268647号公報
【特許文献2】特開昭62−195249号公報
【特許文献3】特開平08−308473号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】製菓理論 基本生地とその応用 松田兼一著 昭和62年11月1日刊 p20〜44
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は、内部はソフトでしっとりしたケーキ特有の食感であるが、表面が硬くカリカリした食感であり、且つ経日的な食感の変化がない焼菓子を製造するための、焼菓子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、上記目的を達成すべく、まず、従来のようにケーキ生地をショートペーストで包餡成型して焼成する方法ではなく、厚さが十分に薄く好ましくは柔軟性を有するショートペーストでケーキ生地を掩蔽するようにして焼成することにより、上記目的を達成可能であることを知見し、すでに、特願2009−210769号として出願している。
【0011】
しかし、あらかじめ、薄板状のショートペースト生地を製造して保管しておく手間があることから、製造がより容易である製造方法を求め、続いて、上記のように、表面が硬くカリカリした食感となるマカロン生地を、ケーキ生地の上に絞ってから焼成してみたが、この方法では、たしかに表面が硬くカリカリした食感にはなるが、経日的な食感の変化を防止されたものではなかった。
そしてさらに検討を続けたところ、上記マカロン生地に対し、マカロン生地には油脂は禁物、という常識に反し、マカロン生地に油脂を添加してペースト状とした生地を製造し、これをケーキ生地上面に絞ってから焼成したところ、上記目的に完全に合致した焼菓子が得られることを知見した。
【0012】
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、ケーキ生地の上面に、粉糖、卵白、及び、油脂を混合してなるペースト状生地を絞り、その後、焼成することを特徴とする、焼菓子の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、内部はソフトでしっとりしたケーキ特有の食感であるが、表面が硬くカリカリした食感であり、且つ経日的な食感の変化がない焼菓子を簡単な製法で安定して得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の焼菓子の製造方法について詳述する。
まず、本発明で使用するケーキ生地について述べる。
上記ケーキ生地としては、ブッセ生地、スポンジケーキ生地、バターケーキ生地、マフィン生地などの各種ケーキ生地などが挙げられるが、軽い食感でありながら、老化耐性があり、且つソフトでしっとりとしたケーキ様の食感が得られること、及びケーキ生地の中でも粘性が高く、絞り成形をした場合に一定の形状を保つことができるため、焼菓子生地の製造が容易である点から、ブッセ生地を使用することが好ましい。
【0015】
なお、上記ケーキ生地に使用する澱粉類としては、例えば、強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉、デュラム粉、全粒粉などの小麦粉類、ライ麦粉、大麦粉、米粉などのその他の穀粉類、アーモンド粉、へーゼルナッツ粉、カシューナッツ粉、オーナッツ粉、松実粉などの堅果粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、タピオカ澱粉、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、サゴ澱粉、米澱粉、モチ米澱粉などの澱粉や、これらの澱粉を酵素処理、α化処理、分解処理、エーテル化処理、エステル化処理、架橋処理、微細化、グラフト化処理などの中から選ばれた1種又は2種以上の処理を施した化工澱粉等が挙げられる。
【0016】
本発明では、澱粉類中、好ましくは小麦粉類を50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは100質量%使用する。
なかでも本発明では、上記澱粉類として、薄力粉を、好ましくは澱粉類のうちの50〜100質量%、より好ましくは澱粉類のうちの80〜100質量%使用することが、口溶けが良好で、軽い食感が得られる点で好ましい。
すなわち、本発明では、上記ケーキ生地に使用する澱粉類として、小麦粉のみを使用し、その小麦粉のうちの好ましくは50〜100質量%、より好ましくは80〜100質量%が薄力粉であることが好ましい。
【0017】
また、上記ケーキ生地は糖類を含有することが好ましい。
上記糖類としては、ブドウ糖、果糖、ショ糖、麦芽糖、酵素糖化水飴、乳糖、還元澱粉糖化物、異性化液糖、ショ糖結合水飴、オリゴ糖、還元糖ポリデキストロース、ソルビトール、還元乳糖、トレハロース、キシロース、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ラフィノース、ラクチュロース、パラチノースオリゴ糖等を用いることができる。本発明では、これらの糖類の中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
【0018】
上記ケーキ生地における糖類の含有量は、下記その他の原材料に含まれる糖分も含め、澱粉類100質量部に対し、糖の固形分として、好ましくは50〜180質量部、より好ましくは80〜150質量部である。50質量部未満では、得られる複合焼菓子の内部が良好な組織とならず、180質量部を超えると、焼成中に潰れてしまうおそれがある。
【0019】
また、上記ケーキ生地は、油脂類を含有することが好ましい。
上記油脂類としては、ショートニング・マーガリン・バター・ハードバターなどの可塑性油脂組成物や、サラダ油・流動ショートニング・溶かしバター・ケーキ用起泡性乳化脂などの流動状〜ペースト状の油脂組成物、及び粉末油脂などが挙げられる。また、油脂組成物が乳化物である場合、その乳化形態は、油中水型、水中油型、及び二重乳化型のいずれでも構わない。
【0020】
また、上記油脂類に使用する油脂としては、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、綿実油、大豆油、菜種油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、カカオ脂、サル脂、牛脂、豚脂、乳脂、魚油、鯨油等の各種の植物油脂及び動物油脂、並びにこれらに水素添加、分別及びエステル交換から選択された一又は二以上の処理を施した加工油脂や、MCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド)等があげられる。本発明では、これらの油脂の中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
【0021】
上記ケーキ生地における油脂類の含有量は、下記その他の原材料に含まれる油脂分も含め、澱粉類100質量部に対し、油脂純分として、好ましくは3〜120質量部、より好ましくは4〜50質量部、さらに好ましくは5〜25質量部、最も好ましくは5〜15質量部である。3質量部未満では、得られる複合焼菓子の内部の食感がぱさついたものとなり、ソフトでしっとりしたケーキ特有の食感が得られない。また、120質量部を超えると、焼成中に保型性が不足し、潰れた形状の複合焼菓子になってしまうことに加え、焼成中に生地が流れだしてしまうことがある。
【0022】
上記ケーキ生地には、一般の焼菓子材料として使用することのできるその他の原材料を使用することができる。該その他の原材料としては、例えば、全卵・卵黄・卵白・加塩全卵・加塩卵黄・加塩卵白・加糖全卵・加糖卵黄・加糖卵白・乾燥全卵・乾燥卵黄・凍結全卵・凍結卵黄・凍結卵白・凍結加糖全卵・凍結加糖卵黄・凍結加糖卵白・酵素処理全卵・酵素処理卵黄などの卵類、イースト、増粘安定剤、ステビア・アスパルテーム・スクラロース・アセスルファムカリウム等の甘味料、β−カロチン・カラメル・紅麹色素などの着色料、トコフェロール・茶抽出物などの酸化防止剤、デキストリン、カゼイン・ホエー・クリーム・脱脂粉乳・醗酵乳・牛乳・全粉乳・ヨーグルト・練乳・加糖練乳・全脂練乳・脱脂練乳・濃縮乳・純生クリームなどの乳や乳製品、コンパウンドクリーム、ホイップ用クリーム、ナチュラルチーズ・プロセスチーズ・クリームチーズ・ゴーダチーズ・チェダーチーズなどのチーズ類、原料アルコール、焼酎・ウイスキー・ウオッカ・ブランデーなどの蒸留酒、ワイン・日本酒・ビールなどの醸造酒、各種リキュール、水、グリセリン脂肪酸エステル・グリセリン有機酸脂肪酸エステル・ソルビタン脂肪酸エステル・ショ糖脂肪酸エステル・ショ糖酢酸イソ酪酸エステル・ポリグリセリン脂肪酸エステル・ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル・プロピレングリコール脂肪酸エステル・ステアロイル乳酸カルシウム・ステアロイル乳酸ナトリウム・ポリオキシエチレンソルビタンモノグリセリド・レシチン・リゾレシチンなどの乳化剤、無機塩類、食塩、ベーキングパウダー・イスパタ・重曹・重炭安などの膨張剤、イーストフード、生地改良剤、カカオ及びカカオ製品、コーヒー及びコーヒー製品、ハーブ、豆類、小麦蛋白や大豆蛋白といった植物蛋白、保存料、苦味料、酸味料、pH調整剤、日持ち向上剤、果実、果汁、ジャム、フルーツソース、調味料、香辛料、香料、野菜類・肉類・魚介類などの食品素材、コンソメ・ブイヨンなどの植物及び動物エキス、食品添加物などを挙げることができる。
【0023】
上記その他の原材料は、本発明の目的を損なわない限り、任意に使用することができるが、好ましくは、上記澱粉類100質量部に対して合計で400質量部以下、より好ましくは300質量部以下となる範囲で使用する。
【0024】
なお、上記ケーキ生地の水分含量は、澱粉類100質量部に対し、好ましくは50〜150質量部、より好ましくは65〜120質量部、さらに好ましくは85〜110質量部である。50質量部未満では、得られる複合焼菓子の内部の食感が硬くなってしまい、ソフトでしっとりしたケーキ特有の食感が得られない。また、150質量部を超えると、焼成中に保型性が不足し、潰れた形状の複合焼菓子になってしまうことに加え、焼成中に生地が流れだしてしまうことがある。
【0025】
また、上記ケーキ生地の油分含量は、澱粉類100質量部に対し、好ましくは3〜150質量部、より好ましくは4〜65質量部、さらに好ましくは5〜35質量部、最も好ましくは5〜25質量部である。3質量部未満では、得られる複合焼菓子の内部の食感がぱさついたものとなり、ソフトでしっとりしたケーキ特有の食感が得られない。また、150質量部を超えると、焼成中に保型性が不足し、潰れた形状の複合焼菓子になってしまうことに加え、焼成中に生地が流れだしてしまうことがある。
なお、上記ケーキ生地の油分含量には、上記油脂類に含まれる油分以外に、上記その他の原材料に含まれる油分もあわせて算出するものとする。
【0026】
上記ケーキ生地の製造方法は特に限定されず、公知の方法によって得ることができる。
例えば、ブッセ生地やスポンジケーキ生地の場合は、別立て法、後粉法、あるいはオールインミックス法などの方法が挙げられ、バターケーキ生地の場合は、フラワーバッター法、シュガーバッター法、あるいはオールインミックス法などの方法が挙げられ、マフィン生地の場合は、後油法や、オールインミックス法や、フラワーバッター法、シュガーバッター法などの方法が挙げられる。
【0027】
次に、本発明で使用する粉糖、卵白、及び、油脂を混合してなるペースト状生地について述べる。
上記ペースト状生地で使用する粉糖としては、上記ケーキ生地で使用する糖類と同様のものであって、その性状が粉末状であればよいが、良好な食感の焼菓子が得られる点で、ショ糖の粉末を使用することが好ましい。なお市販の粉糖、あるいはドーナツシュガーと称されて販売されている粉末状の糖類には、吸湿防止用として数%のコーンスターチが含まれる場合もあるが、とくに問題なく使用可能である。
なお、上記ペースト状生地において粉糖以外の糖類、すなわち粒状の糖類や液糖については使用しないことが好ましい。
【0028】
上記ペースト状生地で使用する卵白としては、生卵白、加塩卵白、加糖卵白、乾燥卵白、凍結卵白、凍結加糖卵白、凍結加塩卵白などを用いることができ、これらの中から選ばれた1種または2種以上を用いることができる。
上記ペースト状生地における卵白の含有量は、粉糖100質量部に対し、生卵白に換算して好ましくは20〜100質量部、より好ましくは20〜55質量部である。
なお、上記ペースト状生地において卵黄については含有しないことが好ましい。
【0029】
上記ペースト状生地で使用する油脂としては、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、綿実油、大豆油、菜種油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、カカオ脂、サル脂、牛脂、豚脂、乳脂、魚油、鯨油等の各種の植物油脂及び動物油脂、並びにこれらに水素添加、分別及びエステル交換から選択された一又は二以上の処理を施した加工油脂や、MCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド)等があげられる。本発明では、これらの油脂の中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
【0030】
なお油脂の形態としては、上記ケーキ生地で使用する油脂と同様のものを使用することができるが、好ましくはショートニング・サラダ油・流動ショートニング・溶かしバター、ハードバターあるいは食用油脂そのものなどの水分を含有しない油脂を使用することが好ましく、さらには良好な表面の食感の焼菓子を得るためにはハードバターを使用することが好ましい。
なお、ハードバターにはテンパー型と非テンパー型があり、非テンパー型は、トランス酸型、ラウリン型、非トランス非ラウリン型に分類することができるが、本発明では、非テンパー型を使用することが好ましい。
【0031】
上記ペースト状生地における油脂の含有量は、粉糖100質量部に対し、好ましくは10〜60質量部、より好ましくは10〜50質量部である。
【0032】
上記ペースト状生地における卵白:油脂の質量比は33:67〜80:20であることが好ましく、50:50〜67:33であることがより好ましい。上記質量比において33:67よりも卵白の割合が少ないと、硬い表面の焼菓子が得られないことに加え、焼成中に生地が流れ出したりするおそれがあり、上記質量比において80:20よりも卵白の割合が多いと、焼成中に一気に固化してしまい、ケーキ生地の膨張を阻害し、体積が小さな焼菓子となるおそれがあることに加え、割れが大きく、波打った表面になってしまうおそれがある。
【0033】
上記ペースト状生地における卵白と粉糖の合計量:油脂の質量比は60:40〜95:5であることが好ましく、75:25〜90:10であることがより好ましい。上記質量比において60:40よりも油脂の割合が多いと、硬い表面の焼菓子が得られないことに加え、焼成中に生地が流れ出したりするおそれがあり、上記質量比が95:5よりも大きい場合、すなわち油脂の割合が少ないと、焼成中に一気に固化してしまい、ケーキ生地の膨張を阻害し、体積が小さな焼菓子となるおそれがあることに加え、割れが大きく、波打った表面になってしまうおそれがある。
【0034】
上記ペースト状生地には、本発明の効果に影響がない範囲において、一般の焼菓子材料として使用することのできるその他の原材料を使用することができる。該その他の原材料としては、上記ケーキ生地で使用するその他の原材料における、イースト、増粘安定剤、甘味料、着色料、酸化防止剤、デキストリン、乳や乳製品、コンパウンドクリーム、ホイップ用クリーム、チーズ類、原料アルコール、蒸留酒、醸造酒、各種リキュール、水、乳化剤、無機塩類、食塩、膨張剤、イーストフード、生地改良剤、カカオ及びカカオ製品、コーヒー及びコーヒー製品、ハーブ、豆類、植物蛋白、保存料、苦味料、酸味料、pH調整剤、日持ち向上剤、果実、果汁、ジャム、フルーツソース、調味料、香辛料、香料、野菜類・肉類・魚介類などの食品素材、コンソメ・ブイヨンなどの植物及び動物エキス、食品添加物などを挙げることができる。
【0035】
なお、これらの「その他の原材料」は、上記ペースト状生地の中で粒状で残存するものは使用しないことが好ましい。
なお、上記ペースト状生地は気泡を含むもの(すなわち起泡されたもの)であってもいいが、好ましくは起泡することなく混合されたものが好ましい。
【0036】
上記ペースト状生地の製造方法は特に限定されず、粉糖、卵白、及び、油脂が均一に混合され、均質なペースト状となっていれば特に混合方法は限定されない。
例えば、生卵白の中に粉糖を徐々に添加・溶解し、ここに溶解した油脂を添加・混合し、均一のペースト状にする方法を挙げることができる。
【0037】
次に、本発明の焼菓子の製造方法について述べる。
本発明の焼菓子の製造方法は、上記ケーキ生地の上面に、上記ペースト状生地を絞り、その後、焼成するものである。
【0038】
ここで、ペースト状生地を絞る量は、ケーキ生地の表面を覆うだけの量であればとくに限定されないが、好ましくは厚みにして2〜10mm、より好ましくは3〜10mmになるように絞ることが好ましい。
具体的な質量比をあげると、たとえばケーキ生地がブッセ生地である場合は、ケーキ生地100質量部に対し、ペースト状生地25〜75質量部、より好ましくは35〜65質量部である。ここで、ケーキ生地100質量部に対しペースト状生地が25質量部未満であると焼成中にケーキ生地部分の水分がペースト状生地部分に吸収されてしまい、ケーキ生地部分の食感がぱさついたものとなってしまう。また、ケーキ生地100質量部に対しペースト状生地が75質量部超であると、ケーキ生地の膨張力がペースト状生地の重量に負けてしまい焼菓子の中央部が陥没した形態となってしまうおそれがある。
【0039】
焼成方法は、通常のべーカリー製品同様、好ましくは120℃〜250℃、より好ましくは160℃〜220℃で行なう。120℃未満であると火抜けが悪く、焼成時間が延びてしまいやすく、その場合、内部が、ソフトでしっとりした食感が得られないものとなってしまうおそれがある。また250℃を超えると表面に焦げを生じ、食味が悪くなりやすく、内部も、ソフトでしっとりした食感が得られないものとなってしまうおそれがある。
【実施例】
【0040】
以下に本発明の詳細を実施例によって例示する。また、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【0041】
〔実施例1〕
卵白(油分含有量0%、水分含有量90%)160質量部、グラニュー糖120質量部、増粘安定剤(「イナゲルC-300」伊那寒天工業製)1.5質量部をミキサーボウルに投入し、これをたて型ミキサーにセットし、ワイヤーホイッパーを使用して、低速10秒混合後、高速でツノが立つまでホイップした。次いで、卵黄(油分含有量30%、水分含有量50%)80質量部を加えて混合したのち、ここに、あらかじめ混合して篩っておいた、薄力粉100質量部、ベーキングパウダー1.5質量部の混合物を添加し、低速1分混合後、さらに中速で30秒混合し、ケーキ生地の1種であるブッセ生地を得た。
一方、卵白(正味)40質量部、及び、粉糖100質量部をミキサーボウルに投入し、これをたて型ミキサーにセットし、ビーターを用いて低速1分混合後、55℃で加温溶解したハードバター(株式会社ADEKA製:シャリオ#100DX(H)、使用油脂融点39℃)30質量部を投入して、低速1分混合し、ペースト状生地とした。
得られたペースト状生地における、卵白:油脂の質量比は57:43、卵白と粉糖の合計量:油脂の質量比は82:18であった。
平展板にロール紙を敷き、上記ブッセ生地を13g絞り、その上面に上記ペースト状生地(7g)を絞り、固定オーブンで、下展板1枚を敷き、上火190℃、下火190℃で8分間焼成し、本発明の焼菓子を得た。
得られた焼菓子は、内部はソフトでしっとりしたケーキ特有の食感であるが、表面が硬くカリカリした食感であった。なお、この焼菓子を袋にいれ、20℃で3日間保管したが、その良好な食感を保持していた。
【0042】
〔実施例2〕
ケーキ生地については実施例1と同様の配合・製法で製造した。
一方、卵白(正味)50質量部、及び、粉糖100質量部をミキサーボウルに投入し、これをたて型ミキサーにセットし、ビーターを用いて低速1分混合後、55℃で加温溶解したハードバター(株式会社ADEKA製:シャリオ#100DX(H)、使用油脂融点39℃)60質量部を投入して、低速1分混合し、ペースト状生地とした。
得られたペースト状生地における、卵白:油脂の質量比は45:55、卵白と粉糖の合計量:油脂の質量比は71:29であった。
平展板にロール紙を敷き、上記ブッセ生地を13g絞り、その上面に上記ペースト状生地(7g)を絞り、固定オーブンで、下展板1枚を敷き、上火190℃、下火190℃で8分間焼成し、本発明の焼菓子を得た。
得られた焼菓子は、内部はソフトでしっとりしたケーキ特有の食感であり、表面が硬くカリカリした食感であったが、実施例1で得られた焼菓子に比べ、若干表面の割れが大きく波打った外観であり、また体積もやや小さかった。なお、この焼菓子を袋にいれ、20℃で3日間保管したが、その良好な食感を保持していた。
【0043】
〔比較例1〕
実施例1のペースト状生地を油脂無添加とした以外は、実施例1と同様の配合・製法で、比較例の焼菓子を得た。
得られた焼菓子は、内部はソフトでしっとりしたケーキ特有の食感であるが、表面が硬くカリカリした食感であった。しかし、体積は実施例1及び実施例2で得られた焼菓子に比べ、体積が小さいものであった。なお、この焼菓子を袋にいれ、20℃で3日間保管したところ、表面の硬くカリカリした食感は失われ、べたついたものとなってしまっていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーキ生地の上面に、粉糖、卵白、及び、油脂を混合してなるペースト状生地を絞り、その後、焼成することを特徴とする、焼菓子の製造方法。
【請求項2】
上記油脂がハードバターであることを特徴とする請求項1に記載の焼菓子の製造方法。
【請求項3】
上記ケーキ生地がブッセ生地であることを特徴とする請求項1又は2に記載の焼菓子の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法により得られた焼菓子。

【公開番号】特開2011−234650(P2011−234650A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−107556(P2010−107556)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】