説明

焼鈍炉ロール軸受け構造

【課題】 連続式焼鈍炉内へのグリス侵入を防止できるロール軸受け構造の提供。
【解決手段】 炉内ロールの駆動側端部付近で、ロールの前記軸部を貫通させて、軸受けハウジングにカバーが取り付けられ、炉内ロールの非駆動側の端部には該端部を空間を残して覆うカップが軸受けハウジングに取り付けられる。炉壁と軸受けハウジングとの間には放熱板となる筒状スペーサーが着脱自在に設けられ、前記軸受けハウジングの上面にはグリス補給手段が接続されている。駆動側および非駆動側の各軸受けにおいて、軸受けシールが炉壁側のみに設けられる。カバーおよびカップの下部にグリス排出管が接続され、この下部を挿入させたシールポットが設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼鈍炉ロール軸受け構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
連続式焼鈍炉のロール軸受け部からのグリス等の潤滑材が炉内へ侵入すると溶融メッキラインでは不メッキ等表面欠陥の原因となる。従来の軸受け部の構造は次のようになっていた。即ち、対向する炉壁を水平に貫通して炉内ロールが、炉壁の外側で軸受けハウジング内の軸受けを介して回転自在に支持される。これらの各軸受けの軸方向両側には軸受けシールが設けられる。そして、前記炉内ロールの駆動側端部付近で、該ロールの前記軸部を貫通させて、前記軸受けハウジングにカバーが取り付けられる。また、前記炉内ロールの非駆動側の端部には該端部を空間を残して覆うカップが前記軸受けハウジングに取り付けられる。
【0003】
前記炉壁と前記軸受けハウジングとの間には放熱板となる筒状スペーサーが着脱自在に設けられ、前記軸受けハウジングの上面にはグリス補給手段が接続されている。軸受け上部より補給された潤滑材は、軸受け内をへて軸受けハウジング下部のリリーフ弁より、受け皿に排出される構造となっている。
【特許文献1】特開平6−47349号公報
【特許文献2】特開平10−9401号公報
【特許文献3】特開2000−27873公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そして通常は、軸受け上部より補給された潤滑材は、軸受け内を経てリリーフ弁より、受け皿に排出される。しかしながら、リリーフ弁での抵抗等により、実際には注入されたグリス等の潤滑材は軸受けシール部の隙間から漏洩し、軸方向に逃げる傾向にある。
【0005】
このような現象が継続して発生すると、カップ側もグリス等の潤滑材で満たされ、最終的には炉内方向にグリス等の潤滑材が逃げ、炉内に至るとススが発生し、不メッキ等の表面欠陥の原因となる問題があった。
【0006】
本発明は上記課題を解決し、連続式焼鈍炉における炉内へのグリス侵入を防止できる軸受け構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の課題解決手段は、対向する炉壁を水平に貫通して炉内ロールが、炉壁の外側で軸受けハウジング内の軸受けを介して回転自在に支持され、前記炉内ロールの駆動側端部付近で、該ロールの前記軸部を貫通させて、前記軸受けハウジングにカバーが取り付けられ、前記炉内ロールの非駆動側の端部には該端部を空間を残して覆うカップが前記軸受けハウジングに取り付けられ、前記炉壁と前記軸受けハウジングとの間には放熱板となる筒状スペーサーが着脱自在に設けられ、前記軸受けハウジングの上面にはグリス補給手段が接続されているものにおいて、前記駆動側および非駆動側の各軸受けにおいて、炉壁側のみに設けられた軸受けシールと、前記カバーおよび前記カップの下部に接続されたグリス排出管と、前記グリス排出管の下部を挿入させたシールポットとを含むことである。
【0008】
本発明の第2の解決手段は、第1解決手段に加え、前記駆動側における軸受けハウジングとスペーサーとの境界部に残された空間内で、シール円盤がバネにより炉壁側に押圧され、前記空間に不活性ガスを供給するガス管が設けられたことである。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、炉内へのグリス等の潤滑材の侵入が防止できることとなった。これこより、炉内への潤滑材の侵入により発生したススが原因となる不メッキ等の表面欠陥を減少させることができる。また、このススの堆積を除去するための炉内清掃作業の度数が低減できることとなった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に本発明の一実施例を図面にもとづき説明する。
図1において、対向する炉壁1を水平に貫通して炉内ロール2が、炉壁1の外側で軸受けハウジング9内の軸受け3a,3bを介して回転自在に支持される。前記炉内ロール2の駆動側端部(図示左端)付近で、該ロール2の前記軸部を貫通させて、前記軸受けハウジング9にカバー5aが取り付けられる。前記炉内ロール2の非駆動側の端部(図示右端)には、該端部を空間を残して覆うカップ5bが前記軸受けハウジング9に取り付けられる。前記炉壁1と前記軸受けハウジング9との間には、放熱板となる筒状スペーサー6が着脱自在に設けられ、前記軸受けハウジング9の上面にはグリス補給手段13が接続されている。
【0011】
さてここで、前記駆動側および非駆動側の各軸受け3a,3bにおいて、炉壁1側のみに軸受けシール4a,4b設けられる。前記カバー5aおよび前記カップ5bの下部にグリス排出管7が接続される。前記グリス排出管7の下部を挿入させたシールポット8が設けられる。
【0012】
前記駆動側における軸受けハウジング9とスペーサー6との境界部に残された空間内で、シール円盤11がバネ10により、炉壁1側に押圧され、前記空間に不活性ガスを供給するガス管12が設けられる。14はリリーフ弁である。
【0013】
以上において、図1に示すように軸受け部内の炉壁1側にのみシール4a,4bを設け、シールの反炉壁側を排除した。このため抵抗が減少し、炉内と反対方向側にグリス等の潤滑材が出てゆき、カップ5bおよびカバー5aに取り付けたグリス排出管7より系外へ積極的に排出させる。このとき、グリスシールポット8があるので、炉内雰囲気が系外に排出されない。また、軸受けハウジング9とスペーサー6との境界部に残された空間内に、ガス管12を通じて不活性ガスを圧入させ、炉内雰囲気が系外に逃げないようにする。
【0014】
本発明は前記した実施例や実施態様に限定されず、特許請求の範囲および範囲を逸脱せずに種々の変形を含む。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明は、溶融メッキラインなどにおける焼鈍炉ロールの軸受け構造に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施例のロール軸断面図である。
【符号の説明】
【0017】
1 炉壁
2 炉内ロール
3a 駆動側軸受け
3b 非駆動側軸受け
4a 駆動側軸受けシール
4b 非駆動側軸受けシール
5a カバー
5b カップ
6 スペーサー
7 グリス排出管
8 シールポット
9 軸受けハウジング
10 バネ
11 シール円板
12 ガス管
13 グリス補給管
14 リリーフ弁


【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する炉壁を水平に貫通して炉内ロールが、炉壁の外側で軸受けハウジング内の軸受けを介して回転自在に支持され、
前記炉内ロールの駆動側端部付近で、該ロールの前記軸部を貫通させて、前記軸受けハウジングにカバーが取り付けられ、
前記炉内ロールの非駆動側の端部には該端部を空間を残して覆うカップが前記軸受けハウジングに取り付けられ、
前記炉壁と前記軸受けハウジングとの間には放熱板となる筒状スペーサーが着脱自在に設けられ、前記軸受けハウジングの上面にはグリス補給手段が接続されているものにおいて、
前記駆動側および非駆動側の各軸受けにおいて、炉壁側のみに設けられた軸受けシールと、
前記カバーおよび前記カップの下部に接続されたグリス排出管と、
前記グリス排出管の下部を挿入させたシールポットと、
を含むことを特徴とする焼鈍炉ロール軸受け構造。
【請求項2】
前記駆動側における軸受けハウジングとスペーサーとの境界部に残された空間内で、シール円盤がバネにより炉壁側に押圧され、前記空間に不活性ガスを供給するガス管が設けられたことを特徴とする請求項1記載の焼鈍炉ロール軸受け構造。


【図1】
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【公開番号】特開2006−170254(P2006−170254A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−360447(P2004−360447)
【出願日】平成16年12月13日(2004.12.13)
【出願人】(000004581)日新製鋼株式会社 (1,178)
【出願人】(591223149)日新工機株式会社 (26)
【Fターム(参考)】